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May 6, 2022
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カテゴリ: REALIZE2
宿の部屋に荷物を運びこんで、久しぶりにちゃんとしたレストランで食事をとることになった。ウェイターが注文を聞きながらちらちらとヒカルの様子を気にしている。ヒカルは人好きのする笑顔で会釈しているが、ハワードは心配そうにウェイターの動向を見つめていた。

「こんばんは。旅の途中ですか?」

 不意に隣のテーブルの女性から声がかかって、「はいそうです」とハワードが返すと、突然女性は席を立って、ハワードの傍まで来ると、親し気に話しかけてきた。

「もし、こちらの宿に泊まられるなら、食事の後、一緒にラウンジにいきませんこと? お子様たちには先に休んでもらって、大人の時間をたのしみましょう?」
「いや、結構です」
「あら、遠慮なさらなくてもいいのよ。子供たちを連れての旅は大変でしょう?たまには羽根を伸ばさないと」
「お前たち、しつこいぞ。行かないと言ってるだろ!」

 堪り兼ねたリッキーが口をはさむと、女性はキッと睨みつけて言う。

「あんたには関係ないでしょ。食べ終わったらさっさと部屋に帰りなさい」



「あの、もう食べ終わったから部屋に帰りましょうか」

 ヒカルが遠慮がちに言うと、ハワードもすぐさま立ち上がった。そそくさとレストランを後にするが、行く先々で「あら、いい男」「おっと、かわいい子がいるねぇ」などと声がかかる。
 それまで黙っていたハワードは「ヒカル、失礼します」と、突然姫抱っこしてすたすたと速足で歩きだした。リッキーとベスはそんな二人を見てクスクス笑いながらついていく。

「え? あの…」
「大丈夫です。ヒカルの事は私が守ります」

 キリッとした表情でそう言い放つと、近くにいた店員から「ひゅー、かっこいい!」と声がかかる。しかし、ハワードはそんなことを気に留めることなく、いや、声がかかる度に抱き上げている腕に力を込めて、どんどん進んでいく。破壊力の強い美顔がすぐ目の前だ。耳元にその息がかかって、ヒカルはドギマギしてしまった。
そして、ヒカルたちの部屋の前まで来ると、はぁっと脱力したハワードが、そっとヒカルを下ろして自分の特異な容姿について忘れていたことを謝罪した。いつもの帽子やサングラスをつけていなかったのだ。つややかに流れる明るい金髪に誰もが目を奪われる涼やかな瞳。こちらの世界に来てからは、大人の色香も出てきて、一層周りを引き付ける。

「しばらく人里離れた場所にいて、すっかり忘れていました。申し訳ない。それに、ヒカルもこれからはおいそれとは外に出られませんね。これからはヒカルの服装も気を付けた方がいい…ん?」

 言いながら、ヒカルが下を向いて真っ赤になっていることに気が付いて、ハワードはそっと顔を覗き込んだ。

「ハワードさんのバカ!!」

 ヒカルは部屋に飛び込んで内側から鍵をかけてしまった。驚いて目を見開いている美丈夫に、仕方ないなとベスが間に入った。



 ドアの向こうからはベッドで暴れるような音がしているが、返事がない。リッキーは、戸惑うハワードを促して、隣の自分たちの部屋に落ち着いた。

「私は、なにか失礼なことをしてしまったのでしょうか。あ、いえ。突然抱き上げたのだから、もちろん謝罪する必要はあると思うのですが…」
「ふふ、ハワードさんって、ほんとに恋愛したことなかったんだね。好きな子を守りたかったら、やっぱり自分の気持ちをちゃんと伝えなくちゃ、誤解を生むばっかりだよ。まあ、さっきのは、嬉しすぎて混乱してたみたいだけどさ」

 はははと楽しげに笑うリッキーに、ハワードの眉間にしわが深く入った。

「どういうことですか? 嬉しすぎる? さっきはずいぶん気分を害してしまったように思うのですが」


 はぁ、と深いため息をついていると、隣でもドアの開く音がして、どうやらヒカルがベスを部屋に入れたようだった。少し頭を冷やそうと、ベランダに出たハワードは、隣から人の話し声が聞こえてはっとする。

「こんばんは、星がすごいよねぇ。君も旅の人?」

「え?」とヒカルのためらうような声が聞こえて思わず警戒する。しかし声の主はまるで能天気な様子で、観光地の話を始めた。

「もう平和の丘には行ったかい?あそこにある幸福の鐘をならすと幸せになれるというらしいよ。もしよかったら明日案内してあげようか?」
「いえ、結構です!!」

 気が付いたら、ベランダの柵越しに身を乗り上げて叫ぶ自分がいて、ハワードはそんな自分に驚いていた。しかし、動き出した思いは止められない。そのまま部屋を出て、ベスとヒカルの部屋のドアをノックすると、驚くベスをしり目に部屋を突っ切り、ヒカルのいるベランダに飛び込んだ。

「なぁんだ。彼氏持ちか。残念。まぁ、仕方ないね。君みたいにかわいい子が一人のはずないよね。幸福の鐘は彼氏と鳴らすといいよ。じゃあね」

 青年はあきらめたように部屋に戻っていった。

「ヒカル、気を付けてください!今のはナンパですよ!」
「ナンパ?」

 まるで分っていない風なヒカルにハワードは焦りを覚える。ヒカルの両肩を掴んで、深呼吸すると、改めて謝罪を口にした。

「ヒカル、さっきは私の突拍子もない行動のせいでご迷惑をお掛けしました。ですが、実際ヒカルだって多くの男たちの視線を集めていたのです。どうか、もう少し周りに気を配ってください。そうでないと…」

 言葉に詰まるハワードを見つめるヒカルは困惑気味に問いかけた。

「そうでないと?」

 ハワードは途端に顔を赤らめて黙ってしまった。ヒカルはモヤモヤした気持ちのまま、ベランダにあるイスに腰かけて深いため息をついた。

「私、今までナンパされたことなんて一度もないです。買いかぶりすぎですよ。お父さんやシルベスタ先生、ハワードさんみたいなキラキラしたオーラなんてない、ただの小娘です。さっきの人も観光地を教えてくださっただけだったし。旅に出るとみんな開放的になるのかもしれないですね」
「いや…」

 どう伝えたものかと考えるハワードの背後でノックが聞こえ、リッキーが入ってきた。

「今、ジーク団長と連絡が取れた。どうやら王宮魔術師団を解任された何人かがヒカルを出せと騒いでたみたいだ。自分の落ち度を棚に上げて、ヒカルのせいで解任されたと思い込んで、決闘を申し込んでいるそうだ。バカじゃないのか?どこの世界に王女様に決闘を申し込む魔術師がいるんだよ」

 呆れるリッキーをしり目に、ヒカルはすぐさま水晶玉を借りて、シルベスタに決闘を受けると連絡した。

「ヒカル、本当にあいつらの相手をするのかい?時間の無駄だと思うけど、それで君の気が済むなら、準備しよう。では3日後にこちらに転移してきてくれ」

 シルベスタは事も無げに告げた。

つづく





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最終更新日  May 6, 2022 08:25:06 AM
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