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November 8, 2022
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エピソード 13

「いい子だね。」
「仲のいい姉妹だったんでしょうね」

 しみじみと見送る篠原に相槌を打っていた本田が、自分もそろそろと席を立とうとした。

「先輩、ちょうどいいじゃないですか。これから情報共有をしようと思っていたんです。先輩の手持ちのカードも出していただけませんか?」
「え?私はなにも持っていないよ。」

 うそぶく本田の肩に手を回して、微笑む藤森がそのままソファへと本田を誘う。

「君、副業でホストかなにかやってる? 誘い方がうますぎるよ」
「なんとでも。貴絵の事件で萌絵さんからもう聞き出す必要が無くなったって話でしたよね。その辺り、詳しくお願いしますよ、先輩」


 滑稽なほどに驚く本田を二人の後輩がにやにやと笑みを浮かべて見つめていた。

「ああ、本田君は奥平君とは初対面だったね。」

してやったりとニヤつく老人を、本田が睨む。そこに、軽い足どりの美月がやってきた。

「ごめんね、遅くなっちゃって。あれ?老人にコーヒーを淹れさせる先輩じゃないですか?お久しぶりです」

 ここぞとばかりにきらびやかな笑顔を見せる美月に、本田はあきらめたように腰を下ろした。

「それでどんな情報をお持ちなんですか?」
「そういえば、先輩はあの一宮製薬社員殺しの事件を担当されているんですよね?あの犯人、分かったのですか?」

 藤森と奥平がジワリと詰め寄ると、本田は居心地悪そうに咳払いした。

「君たちだから言うが、こういうことには秘守義務というものがあってだね…」
「ああ、分かっています。この研究所ではそういうの無しでお願いしますよ」

 弁護士としてあろうとする本田に、美月が邪魔くさそうに言い募ると、深いため息とともに本田は語り始めた。


「ええ、そうでしたね」

 藤森が頷くのを見て続ける。

「冴子から、つまり姉から勤務先の、これは奥平君の患者のことでよかったのかな?調べてほしいと連絡が来て、それがカームリーの王女のことだったんだが。そこから近隣の国についても少し調べてみたんだ。すると、どうもきな臭い状態だと分かってきてね。先日藤森君から、佐藤がサイエン王国に留学していたと聞いていたんで、ノーザンディあたりと佐藤が繋がっていなかったか調べてもらったんだよ。まあ、ここはいくつかある可能性を潰していくぐらいの気持ちだったんだが。すると、ノーザンディの政治家の息子と繋がりがあったことがわかった。どうやら諜報員として活動していたらしい。」

 奥平が藤森に視線をやると、納得したような顔が返ってきた。その横で、いつになく真剣な表情の篠原が頷いている。

「だけど、どうしてノーザンディの諜報員が製薬会社の一社員を狙うんだろう」



「ああ、それなら、一宮の新薬って言うのが、患者を一時的な脳死状態にしながら、細胞を維持できる薬だったからだ。ノーザンディはまだまだ内紛が続いていてな、先日私も行ってきたが、王宮内が大統領派と側近派に分かれていて、予断を許さない状況だった。あんな薬を手に入れたら、証拠も残さずにあっという間に今の政府を転覆させるだろう」

 確かめるように見つめる後輩に、深いため息で返事をすると、藤森は美月からの情報を促した。

「僕からの情報はさっき電話で話した通りだよ。橘製薬の社長の息子があの街中での通り魔事件の犯人さ。しかも、本当に狙っていたのは貴絵一人だ。自分との縁談に乗ってくれなかったというのが理由だそうだ。調べてみると、慣れない株に手を出してしくじった挙句、会社の金に手を付けてあっさりすってしまったってことだったよ。まさかとは思うけど、結婚したら相手の財産も食いつぶすつもりだったんだろうか。まったく、生産性のかけらもないね。」
「そんな奴にあの子は殺されたのかい?」

 篠原は、すっかり冷めたコーヒーをじっと見つめていた。
場の空気がぐんと冷え切ったその時、急にバイクの音が聞こえてきた。研究所の前でエンジン音が止まって、一同がドアの方を見ると、ライディングスーツに着替えた萌絵が興奮気味でやってきた。

「あの、さっきの研究員の人を呼んでください」

 隣の研究所から見えていたのか、牧野が慌ててやってくると、萌絵はバイクの後ろを指さした。

「あれです!迷惑ですので、お引き取りください!」
「健二?! あの、いったい何があったんでしょう?」

 後ろ手に縛られ、膝を曲げ蹲るように縛られて、バイクの荷台に荷物のように括りつけられた男が窓越しに見え、牧野はうろたえて尋ねた。

「ずーっとストーカーされていたんですが、今日、私を拉致しようとしたので、逆に拉致仕返ししてみました。」
「拉致だって?なんでまた…」

 驚きすぎて頭が回らない牧野に、いらだった様子で萌絵は言う。

「ああ、なんでも新薬のデータがどうとか言ってましたよ。親の家業だからって、なんでも知っているわけないのに。」

 それを聞いた藤森たちは一斉に立ち上がった。

「で、そいつはまだ生きているのかい?」
「そこのバイクに括り付けてきました。たぶん生きてると思うけど…」

 大胆な割にアバウトな彼女に苦笑いして、奥平が駐車場に向かうと、さるぐつわされた口からうーうーと何か文句を言っている健二がいた。

「それで、君の弟君は、サイエン王国辺りに渡航歴はあるのか?」
「ええ、高校生の時に交換留学で行ってましたが、それが何か?」

 状況が呑み込めないうえ、意図が分からない質問に牧野が答えると、、藤森は納得したように頷いた。その時、駐車場から奥平が牧野に声がかかった。

「あ~、大丈夫だな。で、牧野君、どうする?警察を呼ぶ? それとも、病院に連れて行く?」
「薬物やってそうだから、まずは病院がいいんじゃない?」

 ちらっと後ろから様子を見ていた美月がアドバイスすると、ロープをほどきながら、牧野も困り果てたまま頷いた。

「もし、伝手がありましたら、お願いします。それにしても…」

 改めて健二を見ると、あちらこちらに殴られた後があった。そっと萌絵に視線をやると、萌絵はぷいっとそっぽを向いた。

「い、いきなり私を誘拐しようしたんです。正当防衛だと思います!」
「ん?まえに貴絵が自慢してたよなぁ。妹は黒帯なんだって。いつでも守ってくれるんだって…」
「コホンっ、気のせいです。とにかく、そちらに引き渡しましたから。被害届は出さないでおきます。私からのお願いは、二度と私の前に顔を出させないこと。それだけです。では、失礼します。」

 それだけ言うと、萌絵はさっさと帰ってしまった。再び見送る篠原は、眉尻を下げてつぶやいた。

「貴絵さんも魅力的な人だったけど、彼女もとても興味深いね。」

「俺の知り合いの病院を紹介しようか。」

 しんみりする老人をよそに、若者たちは動き出した。奥平の紹介で健二の行先は決まり、背後の状況を調べるため、明智署の山田と本田が連携することになった。牧野が病院に弟を連れて行くと、研究所は落ち着きを取り戻した。

つづく





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最終更新日  November 8, 2022 08:19:05 AM
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