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August 26, 2023
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次の日学校に向かうと、事務職員だという男から声を掛けられた。

「キャサリン・クラークさんですね。治癒魔法の聞き取り調査をしているので、会議室Aに来てもらえますか?」
「あ、そういえば、先生にそんなことを言われていたっけ」

 友人たちと別れて、キャシーは事務職員に連れられて会議室Aに向かった。

 その頃、ジェフは州長から面会を受けていた。州長パトリック・スミスは、この学校のオーナーでもある。

「いつまでも魔獣の侵入が続いて申し訳ないね。君が水面下で動いてくれているおかげで騒ぎにはなっていないが。まったく、君には頭が上がらないよ。」
「それはいいけど、結界はまだ修復できないのか?」

 ソファに背中を預けて、ため息交じりに言う若者に、パットは眉尻を下げた。

「この前の州議会でやっと承認が取れてね、隣の州から術者を借りられることになったんだ。それから、治癒魔法が使えるメンバーを集めて、特待生として訓練していこうと思っている。先の魔獣の大量侵入では、若者が何人も命を落としてしまったからね。」


 答えながら、ジェフは自分の手のひらを見ていた。幼馴染を亡くしたアイツは、まだまだ伸びしろがあるのに、自分の力に気が付いていないのだ。それにしても、あの感覚はなんだったのか? 腕を掴んだ瞬間に伝わってきたビリビリするような胸騒ぎ。すぐには手を離せなかった。

「それから、君の耳に入れておかなければならないことがある。うちの密偵からの報告なんだが、他国から流れ込んできたある人物が、どうもおかしな動きをしているらしい。街中に占いの館なる物を建てて、若者を引き寄せているんだ。だが、その実態は、どうやら獣人の血を引く若者を見つけ出して、何かのサークルに登録させているらしい。」
「パティ爺と同じような動きじゃないか。」

 呆れた様に言われて、パットはゴホンと咳払いをした。

「しかしな。どうもこの人物、エゴール・ポルパノフの言うんだが、軍人崩れで、私設の軍隊を作ろうとしているようなんだ。隣国でも似たような動きをしていて、獣人の血を継いでいる若者を奴隷の様に扱っているらしい。」
「じゃあ、今度はこの州が狙われているってことか?」

 眉をしかめたイケオジが、悔し気に頷く。

「奴のやろうとしていることは、獣人の奴隷化だ。われわれの目指すことの正反対なんだよ。僕は、君のお父さんと約束している。あの時、多くの純血の獣人がバタバタと倒れる中で、君がまったく体調を崩さなかったのを見て、彼が懇願したんだ。もし、純血の獣人がいなくなったとしても、どうか獣人の血を消さないようにしてほしいと。今まで通り、獣人の血を持つ者も人間も支え合っていける世の中を保ってくれと。」
「父さん…。」

 ジェフは幼いながらも当時の事を覚えていた。父ジョニーは、魔獣対策本部の統括をしてたのだ。獣人や魔力を持つ人間を平等に扱い、協力して魔獣に立ち向かっていたのだ。その姿は凛々しく、社会でも尊敬される存在だった。そこで、政治家や富豪が自分の息子を魔獣対策団に入団させようと、画策していたが、すべてジョニーに寄って却下されていた。
ところが、あの疫病の災難が治まったあと、ジョニーの後に統括についた人間は、なぜか魔力無しで、魔獣の侵入が発生すると、獣人の血を持つハーフを極力戦地に向かわせるように仕向けていた。それに気づいた魔力持ちの人間達が、獣人の血を守るため、ハーフの子どもをジェフの様に養子に出して、獣人の血を持つことを隠して守っているのだ。




 パットと別れて教室に向かうジェフに、メグが泣きそうな顔で声を掛けて来た。

「あ、あの。キャシーを、キャサリン・クラークさんを見かけませんでしたか?今朝、治癒魔法の事で説明があると言われて、会議室に向かったまま戻ってこないんです。職員室に行っても、そういう説明の予定はないって言われるし。」

 会議室と言われて、先ほど感じた嫌な残滓が頭をかすめた。これは、まずいかもしれない。ジェフはすぐにパットに連絡を取って、街に飛び出して行った。
 人目がなくなったところで獣化し、焦る気持ちを抑えて気配を探る。

「どこだ? どこに行った?」


 州長の執務室を訪ねると、秘書官のデイビスが部屋に招いてくれた。

「ジェフ、さっきおかしな情報が入った。どうやらあの学校の講堂裏の道具入れから、不釣り合いな人物が出てくるのを見かけた生徒がいたらしい。」
「道具入れ?」

 確かに講堂の裏手には、大きな式典などで使う道具が収められた道具入れがある。しかし、普段は厳重に鍵がかかっているはずだ。

「とにかく行ってみるよ」
「頼んだよ。」

 どうか間に合ってくれ。 学校にそぐわない人物、道具入れ、あの異様な残滓、考えれば考えるほど、心配が募る。どうしてアイツが狙われるんだ。ジェフは唇をかみしめた。
 胸の奥から押し寄せるような焦燥感、これは一体なんだ?

 講堂の裏手の道具入れは、何事もなかったようにいつものままのように見えた。しかし、近づいたジェフは目を見開いた。明らかに南京錠はこじ開けられた跡がある。確かめようと手に取ると、ガラガラと音を立ててばらばらに崩れ落ちた。
 すぐさま扉を開けて飛び込むと、そこには殴られて手足を拘束された満身創痍のキャシーが倒れていた。頭のてっぺんから何かが突き刺さったような衝撃が走る。

「おい!大丈夫か!」

 しかしその瞬間、背後に人の気配がして振り向くと、情報通りのならず者の男が拳銃を構えて立っていた。


「ちっ、先に始末しておけばよかった。どうせ殺すならいたぶってからにしてやろうと思っていたのによ。」
「誰に頼まれた?!」

 ジェフが拳銃を蹴り飛ばし、掴みかかった瞬間、ドンっと鈍い音を立てて男が力を無くした。男の頭ががっくりと下がったその向こうに息を荒くしてやってきたシャーロットがいた。

「大丈夫ですか?なんだか怪しい人がいたので、驚きました。この前から、不審者が出ているって聞いていたけど、本当にいたんですね。こ、怖かった。」
「怖かった? お前は今、簡単に他人の命を奪ったんだぞ?」

 困惑するジェフに、シャーロットはポロポロと涙をこぼした。

「だって、だって、必死だったんだもの。憧れのキャシーさんが襲われているのかと思って…。」
「…」

 違和感を覚えながらも、ジェフはキャシーを抱き上げて医務室へと運んだ。

つづく





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最終更新日  August 26, 2023 08:49:08 AM
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