コロナ禍による観光需要激減に直面した旅行業界は、昨年に実施された「Go To トラベル」で需要が一時的に持ち直したほか、金融機関による資金繰り支援策、持続化給付金など一連の手厚い支援を受けてきた。また、コロナ禍による行動制約の緩和を受けた海外では、観光需要が反動で増加している国・地域もあることから国内でも先行き期待感が高く、そのため2020年中の倒産や廃業は増加しながらも比較的抑制されてきた。
しかし、新型コロナ感染の再拡大によるGo To トラベル事業の停止に加え、今年も渡航制限や国内の移動自粛が続き、旅行需要は冷え込んだままとなった。さらに東京オリ・パラの開催で需要が見込めた海外観客の受け入れもできないなど厳しさが続き、大手旅行会社でも大幅な赤字決算、人員整理など、コロナ禍のダメージは深刻さを増している。その中で、経営体力に劣る中小旅行会社では、先行きの需要回復への期待感が薄れたことで事業に対する「あきらめ」ムードが広がり、倒産や廃業が増加する要因となった。