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「私たちもすぐニューヨークへ出発しませんか、トムとメイのレジスタンスグループと協力して通信衛星基地や電子パルス砲がある位置を調べ、破壊しないと次の行動に移れませんからね」 澤登隆一が発言すると隣にいたサユリも大きくうなずきます。宮殿の侍女頭、ヒミメールが1m弱の身長を思いっきり伸ばしました。「クリサーラさま、地上に行くメンバーは前回と同じく少数の限られた動物にしてください。宮殿の修復や通路の整備、食料生産工場を一刻も早く稼働させねばなりませんから、大勢の動物が必要になるのです」 宙に浮いたままクリサーラが応えます。「ニューヨークに向かうのは、モグンバとモグシダ、それにガメリッチババローナ、バンバンジュウだけにします。ヒミメールは私の代わりに陣頭指揮をとってください。デルフミュームにお願いするのは、お味方の赤膚族から何人かを宮殿に寄こして頂けませんか、力仕事ではあなた方を頼りにしていますから」「承知しました。地下にいる反ブッチャー派に伝令を飛ばしていますので、宮殿には2日以内に24人が到着するはずです。第三地下層のドーム群やテント村に20人を向かわせ、弟の配下になった者には投降を呼びかけ、応じなければ制圧します。地表から戻る者にも同じようにして、できるだけ早い時期に元の平安な社会にしたいと思います。なお残りの4人と一緒に地下牢まで行った3人の計7人は宮殿に置いて、ヒミメールさまの指揮に従うよう言い伝えます」「ありがとう、デルフミュームとザビエスはニューヨークにいるグラシオラズをこちら側の味方にする手段は考えていますか」「ザビエスとも相談しましたが、彼は弟を崇拝していますから懐柔策を考えても無駄でしょう。殺さず生け捕りにするには、弟を捕まえた方法を再度使うしかありませんね。問題は天井までの高さが8mもある部屋では煙をたいても即効性はないので、どこか別な場所に連れ出さなくてはなりません。そこでニューヨークの隅々まで熟知しているネズボス、グラッチマウスの協力を仰ぎ、閉じ込めるのに適しているところを見つけてもらいます」「たしかグラッチマウスの部下が地上との伝令役として地下に来ているはずですが、どちらにいますか」 中央から離れた大広間の東口にいたドールとリンゾウ、それにイワチュウと大笑いしながら歓談していた地上ネズミが、クリサーラの声に反応しました。急いでクリサーラのもとに走り出すと、どういう訳か他の3匹もつられて一緒について行きます。 つづく
2020/02/27
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「クリサーラさま、まず人間族の一員としてここにいる皆さんに謝りますぞ。地球という大事な星を自分たちだけの欲望で汚し温暖化を招き、その上、度重なる戦争で多くの動植物を絶滅に追いやり、今回ブッチャーにじゅうりんされた結果、平和に暮らしていた地下生物の方々にまで迷惑をかけているのを、お許しくだされ。まずは身どもが考えたこれからの行動スケジュールを申し上げまする。ニューヨークを起点とする主要都市13か所における政治、経済、軍事の主導権をすみやかに人間へ取り戻すには、全ての通信衛星を奪還するのと電子パルス砲の破壊を優先するべきですぞ。その上でクローンロボットたちの誘導システムをデルフミュームどのに至急開発していただき、世界中のロボットをこちら側の味方にさせまする。ブッチャー配下の赤膚族もデルフミュームどのやザビエスどのがお仲間と一緒に行動して、排除するか味方にしてくだされ。早速、ニューヨークで待機しているレジスタンスのトム・ジェンダーとメイ・パッセンジャーに連絡をとり、ブッチャーを幽閉した朗報を知らせて次の協力体制を構築するように依頼するのが、最優先かと存じます」 クリサーラが手を挙げているガメリッチババローナに顔を向けます。「ババローナ、意見があればどうぞ」 全長6mの恐竜が首を持ち上げました。「国連があるニューヨークを解放すれば、なだれ現象で世界中の都市は人間族の手に戻るガメリッチ、オラは桐山さんの行動予定を全面的に支持するババローナ。具体的な手段を討議しようぜ」 大きく宙に浮かんだクリサーラがほほ笑みます。「それではすぐ足の速い小動物にニューヨークまで走ってもらいトム・ジェンダーにこの件を知らせてもらいます。その上で第一に通信衛星をコントロールする基地を抑えるか、破壊するように伝えます。第二は主要都市にある電子パルス砲の位置を調べ破滅させること。第三がブッチャーの側近ナンバーワン、グラシオラズの居場所を探り世界中とコンタクトできないように細工するよう依頼します。ネズボスのグラッチマウスの協力依頼も忘れないように。第四は、デルフミューム他赤膚族、4mの巨人10人程度が楽に作業できる大型研究所を確保することも伝えて下さい。彼らには世界中にいるロボットをこちら側の味方にさせるシステムを大至急開発してもらいます。ザビエスの話では、初期のロボット製造に関わったのが何人かいるので、それほど困難ではないとの感触を受けました。その作業が遅れると人間族だけでなく私たちにも甚大な被害がでる恐れがありますからね。澤登隆一さん、他に付け加えることはありますか」 つづく
2020/02/23
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クリサーラの演説は続きます。「ブッチャーが拘束されたことを知らない彼の部下たちを力ずくではなく、こちらの味方にするには知恵が必要になります。地表にいる人間族を以前の平穏な社会に戻さないと、私たち地下動物もおだやかな生活が送れません。これからは地上と地下を分けて考えず、地球全体としての環境と平和をあらゆる動物の意見を聞き入れ、取り込みをはからなければならないのです。それでは会議を開きますが、これだけ大勢の動物が各自ばらばらに発言すると収拾がつかなくなるので、私が指名します。その方の意見に異議があったりご自分の意見を発したい方は、発言者が最後まで述べたあとに合図をしてください。ここでは人間族が開く国会のようにヤジを飛ばすのは厳禁です。自分と異なる発言があっても、その方を尊重する気持ちを持てば不規則発言はできないはずですからね。自分だけの考えが正しい、他は間違っている精神構造が浸透すると、結局は違う者を強引に排除するという人間族の社会になりかねません。それは宗教や民族、国というイデオロギーの名のもとに相手を殺りくする戦争という形をとるのです。私たち地下生物にも今回のブッチャー騒動の前には、小さな戦乱がいくつも起こりました。そこでまず最初に犠牲となるのは力のない小動物です。そこからの教訓は、自分たちだけの幸福を求めると必ず他者が犠牲になるという当たり前の構図でした。犠牲になった種族はメラメラと復讐の炎を燃やし相手を殺す。するとやられた方もまた復讐する負のスパイラルに繋がるのです。なぜ会議の前にこのような話をしたかというと、人口が少ない赤膚族、ブッチャーたちがいとも簡単に約80億もいる人間族を短時間で席巻したのか、そのわけを究明すれば、次世界の平和に繋がる大きな糧となると思うからです。それは圧倒的な近代兵器や兵力だけではないのです。全ての生き物が持つ精神、心の弱さや愚かさが大事な要素になっています。これからの私たちは好き嫌い関係なしに地表の人間族と協調して地球平和を考えなければならないのです。そのために、もう、これから人間族の愚かさをあげつらうのは止めます。それでは会議に入ります。まずこれから実行する優先順位とその課題を述べます。最初に主要都市を牛耳っている少数の赤膚族と、クローンロボットを排除する方法です。桐山清十郎さん、ご意見をお願いします」 白髪混じる長髪を後ろに束ね、威厳のある顔立ちをした初老の男がすくっと立ち上がりました。 つづく
2020/02/20
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たくさんの地下生物たちがビッグを見つめています。「クリサーラさん、私を誉めすぎですぞ、ゲロゲロゲーロ、生田緑地というところは、あなたがたがいう人間族、私たちがいう二本足の管理する一大テーマパークなんです。中には昔建てられた民家園が25棟もあって一軒ずつ見て歩くのも楽しいのじゃが、他にも美術館や夜空の星を映し出すプラネタリウムというのや、緑地にいる動植物のミニ博物館までもあるが、夜は動物たちが自由に歩き回れるので天国なのじゃ。それにたくさんの樹木があって1年中草花が咲き乱れる別天地でな。小さな池が3つもあり自然を上手に生かした環境ですぞ。チャンスがあれば地下生物の方々をご案内したいほどの風光明媚なところですグァグァゲロゲーロ。今回、ブッチャーという手に負えない悪ガキをあなた方と共同でやっつけたのは嬉しい限りですな。こんな事件がなければ、こうやって地下に来てみんなと知り合いになることもなかったと思えば、ブッチャーに感謝しますぞ。みなさんの顔や体を見回すと地上同様に様々なものがいますな。そういう私も地上では異形の代表として扱われ二本足の悪童に見つかると、追いかけられいじめられるのですぞ。どんな種族の生き物も姿形とDNAは自分で選べないまま誕生するが、その後の生き方は努力すれば変えることができるのですゲロゲロゲーロ。地上と地下社会で変わらないものがあるとすれば、自由という崇高な概念ですな。これは動物だけでなく生き物全般に共通する永遠のテーマですぞ。考え方や生き方、それに思想は他のものが干渉してはならない大いなる個の器で、この器をいじくりまわし、取り換えたがる権力者は二本足社会には大勢いるのじゃ。社会システムを守り自分たちに都合がよい体制で素直に上位下達に応じる教育をして反体制派を少なくすれば、権力者側にばくだいな利益を産むからな。その矛盾とぜいじゃくな精神構造をブッチャーに突かれ、いとも簡単に短期間で占領されたのですゲロゲロゲーロ。地球上で最強の生物と自負していた二本足が、こうもあっけなく席巻されたのには、赤膚族より劣る科学力と心の弱さもあったのじゃ。さて、そんな地上に行って元の静寂さを戻すには、かなりの時間が掛かるだろう。ゲロゲロゲロ、貴重な時間を割いていただき感謝します。そろそろ本題に入りましょうぞ、クリサーラさん、あとを宜しく」「ありがとう、ビッグさん。一部分かりづらい言葉もありましたが、要約すると人間族にもブッチャーにじゅうりんされる理由と弱さがあったということですね。・・・・」 つづく
2020/02/16
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クリサーラの声が一段と高くなります。「モグンバ、モグシダ、それにイワチュウも前に出てください。この3匹も第三地下層までいって獅子奮迅の活躍をしました。その勇気を称えます」 大広間に集まった動物から一斉に鳴き声と口笛が響きます。それは地下に生息する仲間もブッチャーを退治するのに一役かったとの安堵感からでした。「これから紹介するのは、地球平和のためにわざわざ地上から駆け付けてくれた仲間です。先日、ここで開催されたイベント<歌と踊りで楽しいひとときを>の企画、構成、出演を手伝ってくれた方々です。本来は1匹、1人づつ紹介しその功績を称えるべきですが、今回は割愛させていただきますね。それでは人間族の皆さんは前に出てください。澤登隆一さんとサユリさんのご夫婦、それに桐山清十路さんに木村トメさんを紹介します。特にサユリさんには、ブッチャーを眠りの世界に引きずり込む強烈な催眠効果のある薬を開発してもらいました。ドールちゃんとリンゾウさんバンバンジュウの頭に乗ってくださいね。この小さな動物はすばやく動けるだけでなく、ユーモアの精神をもち頭の回転も速いので、お仲間からも大いに頼られているのです」 急な紹介にややびっくりしたドールは、それでもアイドルスター並みの笑みを振りまき片手を上げ声援に応えました。残念ながら遠くにいる動物から見ると、小さな鼻くそがクネクネ体を揺らしている程度にしか見えませんが。「地上にある生田緑地という場所からは、他にも大勢の動物たちが、この緊急事態に駆けつけてくれたのです。まず猫族からヨシコさんとカッポウギンコさん、それにレディカカさんとエルメスグチコさん、タヌキ族のポンポンチッチさん、アライグマのスリスリさん。ハクビシンの新之助さんは何回も地下に来て大活躍しました。それに犬のゴロータさんは赤膚族が嫌がる臭いゴケをあきらめずに探してくれたので、澤登サユリさんの薬品製造につながりました。それでは会議を開く前に生田緑地の長老格、ガマのビッグさんをご紹介します」 のんびりとガメリッチババローナの頭上で油を売っていたビッグは突然の指名で驚きますが、ババローナはズシンズシン足音を立てて広間の中央に歩き出しました。沢山の生き物が一斉にビッグを見つめます。 つづく
2020/02/12
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澤登夫婦と桐山清十郎、木村トメさんの人間族4人がクリサーラの近くに集まりました。次に生田緑地の動物たち、ヨシコとカッポウギンコ、エルメスグチコとレディカカの猫族が尻尾をピンと立て登場します。次にバンバンジュウの背中に乗ったハクビシンの新之助とカメぱっぱが入場しました。その後ろからのそのそやってきたのはタヌキのポンポンチッチとアライグマのスリスリ、その2匹の肩にちゃっかりと乗っているホンドリスのドールとリンゾウが辺りをキョロキョロ見回します。最後にガマのビッグがガメリッチババローナの頭に乗って登場しました。クリサーラが広間の中央で3mほど宙に浮かび上がります。「皆さんに良いお知らせがあります。地下だけでなく地上にまで侵略して傍若無人な振る舞いをしていたメルトンブッチャーを第三地下層にある岩牢に閉じ込めました。中からは絶対に開けられませんので安心してください」 大広間に集まっていた小動物から恐竜にいたる約3000匹の動物は、その大半がまだこのグッドニュースを知らなかったので、クリサーラの言葉が胸にしみます。「ワーーーー、ギャー、ギィエーー、グウー、ヒヒーン、バウバーウ、ウワンウワン、ニャーアー、ピーピー、グングン、モーモー、ドヒャーーー、ガツーン、チュウチュウ、バタバタ、ワイワイ、バーバー」一斉に床を踏み鳴らしながら声を 上げました。隣にいる動物に抱きつくもの、跳びはねるもの、短い手を振り回すもの、長い尾っぽをバタバタ揺らすもの、その中でヘビのようなものは、クネクネ体を丸めるだけでなく中型動物の首に巻きついて締め付けるから、やられた方は目を白黒して床に倒れます。歓声が一段落するとクリサーラの透明感あふれる声が広間に流れます。「今回のブッチャーを閉じ込める作戦には、多くの動物が協力して成功に導きました。自分たちの命をかけ仲間たちと一緒に連携し、地下社会だけでなく地上にある希望という平和の光を取り戻したのです。これから名前をいいますのでその方は前に出てください。あなた方はここにいる皆さんに称賛される価値を持った勇気ある生き物です。まずデルフミュームとザビエス、それに赤膚族4人の皆さん、特にデルフミュームは弟の暴虐をとめるために何回も命の危険に陥りました。それでは一歩前に出てください」 多くの生き物の前で喝采など浴びたことのない赤膚族6人は、おずおすと広間の中央に歩んで軽く両手を挙げます。その瞬間、耳をつんざくような歓声と口笛、床を踏み鳴らす音が室内に響きました。 つづく
2020/02/09
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ブッチャーの部下2人は、目線が定まらぬのかあらぬ方向を向いています。デルフミュームがザビエスに話しかけます。「終わったのかな、これで、弟を地下牢に閉じ込めて、地球に平和が戻るのを期待していいのでしょうね」 ザビエスは静かに応えます。「まだブッチャーの配下が人間社会を統治しています。これを排除しなければなりません。それに有力な先進国にある電子パルス砲や人間族のみを殺すウイルスを廃棄しないと、平和な社会には、ほど遠いでしょう」「世界中に散らばるクローンロボットも、早急に思考回路をこちらへ都合の良いシステムに改善する必要がありますよ。すぐに今の吉報をクリサーラさまに伝えて次のご指示を仰ぎましょうか」 ドールがザビエスの左肩に飛乗りました。「今回の作戦はイワチュウやアタイたち小動物と巨人連合との連携プレイで大成功やんやん。これで地上に戻れるよ~ん、早く太陽の光を浴びたいたいやきいもじょうちゅうはいはい、帰ろうね」 なにをいっているのか理解できないザビエスが、適当に応えます。「今まで小動物なんて眼中になかったけど、見直したよ。さあ、みんなの元に帰ろう」 ようやく長かった余震も収まり平常な生活を取り戻したヒスイ宮殿では、ガレキの山や壊れた建造物の後片づけでてんてこ舞いです。クリサーラとヒミメール、白肌族の侍女たち10名が陣頭指揮をして大中小の動物たちを動かし通路などに散乱している障害物を取り除いている最中でした。 デルフミュームから作戦の大成功を聞いたクリサーラは、満面の笑みを浮かべます。「ご苦労様でした。ドールちゃんやリンゾウさん、それにイワチュウさんも見事な活躍でしたね。閉じ込めたブッチャーを見張るには小動物が適しているでしょう。それに24時間後に起き出す彼の動向と食事を運ぶのには、別な中型動物に頼むことにします。ご苦労ですがモグンバとモグシダにその仕事をお願いしますよ。食事内容とか回数はザビエスに尋ねてくださいね。デルフミュームとザビエス、澤登夫婦に桐山清十郎さん、木村トメさん、生田緑地の動物仲間たちとは、これから会議を開きます。ブッチャーが居なくなった地上社会で人間族と協力してすぐにやれる内容を検討しましょうか」 ザビエスが一歩前にでました。「クリサーラさま、少しの時間でけっこうですので横になりたいのですが、ずっとブッチャーを追いかけやっと閉じ込めて、宮殿まで走ってきたから体が悲鳴を上げているのです」「苦労してブッチャーを閉じ込め、ほっとする気持ちは理解できますが、まだクリアにする問題は山積み状態です。一気に勝負をかけるときには、なりふり構わず猪突猛進で進めなければなりません。それに気持ちが張っているときは良いアイデァも浮かぶものです。疲れているあなた方にも会議に出ていただきます」 隣にいるデルフミュームにザビエスが、うっかりつぶやきます。「見かけは優しいのに、彼女は鬼だ。冷血動物ですね、目的のためならば倒れるまでコキ使う」 デルフミュームが応える前にクリサーラがほほ笑みます。「熱い血液は流れていますよ、ザビエス。ただし血液の色は青いから心は冷たいのでしょうね」 床を見つめるザビエスの代わりにデルフミュームが明るい声を上げます。「さあ、それでは大広間に集まって、会議を開きましょうか」 つづく
2020/02/06
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「もうひとつ忘れているぞ、俺が勝ったら兄者は俺様の部下になり命をかけて仕えることをな。たしかにこの中は寝技しか使えない狭さだ・・・」 赤膚族だけが感じる鼻腔にツンとくる刺激臭、そのもとになる煙が牢の奥から立ちあがります。異変を知ったブッチャーは、とっさに出口に向かいますが、ドデッと右の肩から崩れ落ちました。2秒、3秒後にはグァーグアアアァー、大きなイビキが牢内に響き渡ります。デルフミュームも同時に倒れますが、なぜかブッチャーと違い温和な表情を浮かべています。その様子を駆け付けたドールがリンゾウと共に岩陰に隠れているザビエスへ知らせました。仲間たちと急いで牢に入り、まずデルフミュームを外に引っ張り出しました。ちょうどそのとき、クラリオタックスとサラリンパーラ、ブッチャー配下の2人が地下牢に着き、ザビエス目掛けて光線銃を向けます。彼らの死角となる岩陰から2人の赤膚族が飛びだし銃を持っている右手を叩くとポロリ、コロコロ、岩盤に落ちました。サラリンパーラは前からきた2人に取り押さえられ大人しくなりましたが、クラリオタックスは1人を背負い投げで下に叩きつけ、前にきたザビエスを右の拳で殴り倒そうとします。右ひじに力を入れずにそのまま前に出せばよかったのに、一発で仕留めようとひじを後ろに押し付け、目いっぱいの正拳突きを繰り出したのが、裏目にでました。その一撃を左にかわしたザビエスは、あごのした、喉ぼとけに右手のひらを押し付けました。目を白黒させたクラリオタックスは、そのまま仰向けにひっくり返ります。ナップザックから注射器を取り出したザビエスは、馬乗りになってズブズブと液体を上腕部に注入します。力が抜けていくのを確かめて隣で抑えつけられているサラリンパーラの肩口にもズブリと、注射するとガクッと首が垂れました。 ザビエスは肩を叩いているデルフミュームを振り返り声をあげます。「いつまで寝たふりをしているのですか、起き上がって歩いてくれたらこの2人に集中できたのに」「あなた方の力を信用しているので休んでいました。それに弟が倒れるとき私も倒れないと不自然ですからね」「いつ例のマスクをつけたのです」「煙に気が付いた弟が出口に向かったときですよ。少しでもタイミングがずれると私も煙を吸って、今頃は天国です」「牢の外に煙はもれていないでしょうね」「今のところは。吸ったら倒れるから早くここを離れましょう」「その前に大きな石を運ばないと」 6人の巨人は手分けしながら1トンはある石を転がし地下牢の扉まで運び、手前に小さな石を差し込みました。こうするとテコの原理で中からは開けられなくなるのです。一連の作業が終了し牢からかなり離れたところまで黙々と歩いていた一行、先頭にいたデルフミュームが突然立ち止まり、みんなの顔を見つめました。 つづく
2020/02/03
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