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人間4人のうち高齢の木村トメさんは、ホテルの一室で待機するように澤登夫婦が説得しました。それでもガンコ婆さんの代表、トメさん、2日に1度は、部屋を抜け出しレジスタンス・グループと行動を共にします。ある時は、クローンロボットの集積所があるビルの外で隠れながら、吸い込まれていくロボットの数をカウンターに入力します。デルフミュームがシステム改ざんに成功すれば、その数を掌握しているのと、ないのでは大きな差があるのです。システムソフトの生産本数やニューヨークに6ヶ所ある集積所のロボット数によって人員配置数を変えなければならないからです。トメさんが素晴らしいのは、他のスタッフがロボットに見つからないよう、ビルの陰でチェックしているのに対し簡易椅子に腰かけ堂々と入力していることです。他の者が注意しても「もし監視ロボットが来てもロボットが好きだからこうやって眺めているの、どこが悪いのと言い返すよ」と、言い張るのでどうしようもないのです。いつしかトメさんはスタバーグランドママ(stubborn grandmama)と仲間からいわれるようになりました。日本語ではガンコ婆さんですからそのままですね。 カメぱっぱや新之助、ポンポンチッチたち生田緑地の動物は、まだ夜だけの行動に制限されています。なぜならおおっぴらに人前で顔をさらし、しゃべれば捕まって動物園に送り込まれるのを警戒しているからです。夜中にグラッチマウスの軍団と一緒に活動するのはよいのですが、彼らだけでなく地下道と太さが異なる配管の中から漂う強力な臭いには閉口しました。 緑地から来た動物たちは、冬でも水浴びをして体を清潔にするのが日課だったのです。ガマのビッグはグラッチマウスに頼んでハッカの錠剤を手に入れると仲間に配りました。「これを片方の鼻穴に詰めろゲロゲーロ、少しは嫌な臭いが薄れる。それに我々が今、やっているのはハッカーと同じ隠密行動だからな」 残念ながら最後のダジャレを理解したのは一匹もいません。受けないことでめげないのがビッグの強さで新之助を呼び寄せ、その首筋にしがみつきました。「トランプ・タワーにいるグラシオラズのところに行こうゲロゲロゲーロ」 つづく
2020/03/30
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人間社会の大きな脅威となっている、都市のインフラを破壊する電子パルス砲と人類絶滅を予測させる殺人ウイルスがある場所を探り出すのは、成功しました。いずれもレジスタンス・グループ<ホワイト・イーグル>の活躍で判明したのです。電子パルス砲はワシントン市郊外とニューヨーク郊外、他の都市に3ヶ所、計5ヶ所にあり、いつでも発射可能な状態でした。 それらを地元ネズミ軍団協力のもと、グラッチマウス配下2000匹が夜中に押し入り、かじれるところはガジガジ、ゴリゴリ、グッシャグッシャにして使用不能にしたのです。 殺人ウイルスだけはうかつに扱えないので、密かにトム・ジェンダーへ連絡をして出入口に見張りを立てました。ウイルスは4つの試験管に入れられペンタゴン(国防総省)にある地下の大金庫に隠されていたのです。それが発覚したのは、ブッチャー側に寝返り自分の利権を守ろうとした愚かな人間がいたからです。そいつは同じ種族を地球上から消し去る物を、敵対する者に対して脅迫の材料とする、あさましい奴でした。ブッチャーにしてもそいつさえ手のひらに乗せていれば、自分があまり表面にでなくても人間統治が楽にできるから重宝していました。そのジェームズ・ガーンの失敗は、寝床で妻と口論になったとき酔っていたせいもありますが、俺は一瞬で人類を絶滅させる恐ろしいものを毎日管理しているのだと大声で怒鳴ったことでした。 そのとき偶然、天井裏にいたネズ公が聞いて、地区ボスに連絡したのです。 すぐにそれはグラッチマウスに伝えられ、トムにも伝達されたから緊急にペンタゴンの出入口全てに見張りを立て、いつでも盗めるようにしました。 これらの出来事は、14番街にある倉庫での会議が終わって3日以内に行われたのです。2日目にはクリサーラ一行がパーク・アベニュービルに到着し、これからの計画とすでに終了している作戦のレクチャーをザビエスとトムに受けました。 デルフミュームは別な倉庫で3人の仲間とクローンロボットのシステムを改造し、こちら側の味方になるよう、研究開発しています。 桐山清十郎、澤登夫婦、木村トメの人間4人は、昼間歩ける利点を生かし、レジスタンスグループと一緒に行動を共にします。それはネズミ族が赤膚族の連絡網をズタズタに寸断したのですが、まだ残っていた中継基地を奪ったスマホから探し出し、それらを片っ端から破壊しました。 つづく つづく
2020/03/27
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静かな口調でザビエスが応えます。「トム、悪く思うな、俺たちは地上と地下を別々に考えていない。地球全体として捉えているのだ。ブッチャーの野望は地球上の知的生命体、全ての君主になるのが目的だからな。だから人間と共闘して奴を叩き、正常な秩序を回復させるために、こうやって地上に来ているのだ」「なんか自分が情けない、あんた方の崇高な目的が理解できず、疑問をもったことをな。ザビエス、許してくれ、これで俺たちも命をかけてグラシオラズを倒し、治世権が人類の手に戻るまで闘うぞ」「俺もうれしいよ、こうやって本音で人間族と話せる機会が訪れるとは。こういうとき、握手か抱き合うのか」「抱き合うのは勘弁してくれ、俺の体はバラバラになる。そうだ、人差し指をだしてくれないか」 トムの手のひらよりも大きい指をそっと差し出すザビエスに自分の人差し指を押し付けます。「トム、これはなんの表現だ。それとも挨拶なのか」「昔、観たETという映画の中で、異星人と地球の子供が親愛を表現したときにやっていたのを思い出したのだ。これでザビエスと俺は友達になった。いいかな?」「こっちこそ、ヨロシク。さあ、俺はパーク・アベニュービルに行ってくる」「やはり地上よりも地下通路の方が安全だろう。道案内を一人つけるよ」 バタバタ駆け出したザビエスの後ろ姿を見つめるトムの表情は、以前に比べると、かなり柔らかくなっていました。 ブッチャー幽閉作戦の成功に続き、第二の司令官グラシオラズも閉じ込める計画は着々と進行します。まずグラシオラズが逗留するトランプタワーの地下街に陣取ったグラッチマウスを親玉とするネズミ軍団、赤膚族が10時間以上の睡眠を必要とする習性を利用しました。夜の9時過ぎにクッションのない特大ベッドに仰向けで倒れ、2分後にはイビキというよりも壊れたホラ貝に似た音を立て眠り込むのを見届けてから行動を開始します。携帯やPCの端末だけでなくADSLモデムや無線LANルーター、光回線終端装置、ターミナルアダプタ、各種チューナー、室内、室外の配線をガリガリかじって修復不能な状態にしました。同じ時間帯に通信衛星をコントロールする複数の基地にもネズミたちは潜り込み、デルフミュームに教えられた箇所をていねいにグジャグジャと噛み切り、1ヶ月程度の修理では回復できないくらいに破壊します。これでブッチャー側の赤膚族は、人間統治の連絡手段を失い制御がきかなくなるのです。 つづく
2020/03/23
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トムがゆっくりとメイの顔を見つめます。「メイ、なにか付け加えることがあればいってくれ」「大統領の居場所はわかっているから、監視ロボットを無力化するシステムを至急開発してください。それでは隣の大倉庫までデルフミュームさんを案内します」 ここに集まったものたち皆に早くしろとせかされたデルフミュームは、文字通り重い腰を上げメイの後を追いかけました。その様子を笑顔で見送ったザビエスが人間2人とネズミ1匹に口を開きます。「クリサーラさまご一行が到着したらすぐにパーク・アベニュービルに案内して作戦を開始する準備を始めようか。グラッチマウスもトランプタワーの地下にいって用意するだろうから、ここはいったん解散しよう」 その言葉を聞いたグラッチマウスは左隅で固まっていた護衛隊7匹にうなずくとむきだしの太い配管に跳びつくやいなや、天井に駆け昇ります。そのままの勢いで小さな穴から姿を消しました。それを見届けたザビエスはトムに声をかけます。「私もパーク・アベニュービルに移動して我々の基地とする準備をしよう。トムたちにはご苦労だが、デルフミュームさんから電気部品や用具のリストを渡されたら大至急手配してくれ。彼が本気で研究にぼっとうすれば、冗談ではなく2~3日以内にも結果がでるはずだ」「わかった、倉庫の周りをレジスタンスの仲間10人以上で護衛させる。グラシオラズの監視はグラッチマウスの軍団に任せて、変わった動きがあれば知らせてもらう。ザビエス、あんただから正直にいうが構わないか」 床に座り込んだ巨人は2m上からトムを見下ろします。「なんだ、改まって」「俺たち人間はブッチャーという途方もない奴に征服され、当初は抵抗すらできずに無力感と喪失感におおわれていた。時間が経つにつれ僅かな人数のレジスタンスが誕生したとき、地下から来たあんたたちと遭遇する。それも悪の帝王ブッチャーと同じ種族、赤膚族でこちらは我々の味方だという。それだけでも驚くのに訳のわからん動物たちまでもが登場し、それもしゃべるんだからまたまたビックリ。その上、宙に浮かぶ1m足らずの妖精までもが出て来て、どうもこの方が連中の統率者らしい。最初は半信半疑で様子をうかがっていたが、次から次へと困難な作戦を成功させる手際の良さ、動物の種類は違うが団結心の強さと一糸乱れぬ行動力、ほんと俺は心からあんたたちをリスペクトしているぜ。そこでだザビエス、直接、影響のない地上に来て人類を助けてくれる理由を知りたいのだ。このままブッチャーが人間を支配していても地下社会にはデミリットになるようなことはないと思うのだが」 つづく
2020/03/20
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トムが珍しく明るい声で応じます。「ここの大統領や有力な長官数人の居場所はつかんでいるから、そろそろ連絡の手はずを整えよう。監視ロボットの目をかいくぐりホワイトハウスに連れ戻す手順を考え実行しようと思う。人間社会の指揮系統を確保しないで各自バラバラに動いても、あまり効果はないだろうから。そういう訳でデルフミュームさんのロボット誘導システムが完成するのを首を長~くして待っていますよ」「トムまでも私をせっつくのですか、わかりました。クリサーラさまたちが到着する前に部品調達を済ませましょう。研究所はどこにしたらいいでしょうか」「まだ灯台下暗し作戦は続いている。ちょうどこの隣にあるどでかい倉庫が使われていないから、使ってくれないか。部品他必要なものはリストにしてくれればメイと手分けしてそろえ、至急運ぶよ」「それは心強いですね。ザビエス、他の仲間を呼び寄せてここに集めてください。クローンロボットが無力状態になれば、人間族は完全に息を吹き返し地表の実権を正式に取り戻すでしょう」 そろそろ机上での作戦が実践に移るのでザビエスもうきうきしています。「その前に地上にいる赤膚族をこちら側に寝返りさせるか、それがダメなときは、拘束する方法を考えましょうか」「彼らがブッチャーに洗脳されているのが短いなら、それを修復するのはたやすいのですが、長期間にわたる場合はむずかしいので監禁するしかありません。その時は臭いゴケを用います。我々赤膚族の人口減少を少しでも食い止めなければならないのでザビエス、殺すのだけは極力避けてくださいね」「承知しました。ブッチャーだけでなくグラシオラズまでも幽閉されたと聞けば彼らの戦闘意欲もかなり削がれるでしょう。問題はいつどのタイミングで発表するかです」「まずクローンロボットを無力化して、人間族の秩序を回復するのが先です。彼らのインフラをおびやかす電子パルス砲も同時に破壊しないと意味がありません」 トムが思い出したように口を開きました。「私たち人類を一番恐怖に陥らせるものは、空気拡散するといわれる殺人ウイルスの使用だ。ブッチャーが最初の演説でそれを発表し、人間の抵抗心をそぎ落とすのに十分、成功したからな。そのウイルスがどこにあるのか探り出そうと大勢レジスタンスが動いている。しかしまだ発見していない。それを消滅させないと切り札は敵側にあるのだ」 デルフミュームは大きくうなずきます。「我々も味方になった者から情報をとり、殺人ウイルスがどこにあるのか探しますよ」「あれはブラフ(はったり)との説もあるが、同じ赤膚族としてデルフミュームさんは、どう思う」「弟の頭脳があれば、人類だけを殺すウイルスを作るのは、それほど難しくないのです。実存するのは間違いないでしょう」「了解した。レジスタンス・グループにも気を引き締めて探すように伝える。たとえ発見しても取り扱いには厳重に注意するよういう」 つづく
2020/03/17
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「グラシオラズはブッチャーが司令塔として使っていたミッドタウン5番街にあるトランプ・ワールド・タワー最上階ペントハウスにいるとの情報を今しがた掴んだ。どうだ、そこの地下街全てをネズミ軍団が占拠するってのは、灯台下暗しで、そこからじっくりグラシオラズを見張っていれば、奴が動いたとき、こちらの皆さんにリアルタイムで伝える利点もあるわけだ」「いやお見事、さすが親分、先の先までお見通しって憎いすね。それではアッシはこれにて」 ネズミ族特有の早口で話す言葉を全部は理解できなくても、2匹がシャープな頭脳を持っているのには、人間族2人と赤膚族2人も感心します。 デルフミュームが会議進行の合図をして近くに呼び寄せました。「グラッチマウスたちの本部は、9年前に死んだトランプの名が残っているトランプタワーの地下に決定ですが、私たちとこれから一両日中にいらっしゃるクリサーラさまと生田緑地動物の仲間、それに4人の人間族が集まる本部をどこにするか決めましょう」 トム・ジェンダーが声をだします。「グラッチマウスの発想を真似して、パーク・アベニュービルの地下と3フロアほどを前線本部として使うのはどうだろうか、あそこは94階から96階までを改造してグラシオラズは住んでいて、今はもぬけのカラだからな」 右手で膝を叩いて小さな岩石を飛び散らしたザビエスもうなずきます。「そりゃあいい、94階上を我々反ブッチャー派、赤膚族の拠点にすれば通信が復活した時に連絡基地としても活用できる。グラッチマウス、あんたの灯台下暗し作戦のアイデアいただき、いただき」 子猫ほどの大きなネズミが応えます。「どちらもセントラルパークに近いから次の行動へ移るのに都合がいいな。トム、通信基地を攻撃する場所は決まったが、市内にあるロボット集積所は分かったのか」「6ヶ所のうち4ヶ所は判明した、残り2ヶ所は今日中に分かるよ」 ザビエスがデルフミュームに尋ねます。「AIロボットの回路システムを変えて、こちらの味方にするソフトはいつごろ開発できますか」「あとから合流する予定の仲間3人と研究室に1週間ほどこもり没頭すればなんとかなるでしょう」「頭脳明せきなデルフミュームさまなら、3日もあれば充分ですよ」「おだてても、だめです。しかし全力を尽くします」 メイ・パッセンジャーが小さいハスキーな声をだしました。「今回の作戦が成功した時、次の展開を具体的に考える必要があります。なぜならレジスタンス・グループ<ホワイト・イーグル>はニューヨークだけで3500人もの大所帯になりました。アメリカ全土では5万人を超しますから、この人たちに希望を与えるためにも、人間が実権を取り返したのを見せつけるのが重要です」 つづく
2020/03/14
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4番街の倉庫に着いた2匹のネズミ、グラッチマウスとコロッチはすぐにトム・ジェンダーとメイ・パッセンジャーに現在の計画を知らせます。 それはデルフミュームたちがニューヨークに到着する前に、通信基地とその施設がある所在地を最優先で調べるのを求めていることです。トムの動きも早く、市内と郊外にある基地に少人数のレジスタンスを送り込み、内部の設計図を入手するように画策しました。トムたちもクリサーラたちがブッチャーを地下に誘導し幽閉する計画を聞いてから、ニューヨークだけでなく国内のレジスタンスと手を結び着々と人間統治に戻す準備をしていたのです。その中には通信衛星基地の掌握やクローンロボットの集合施設がどこにあるかを探り、いつでも攻撃できるよう用意万端ととのっていました。 コロッチが地上に着いてから18時間後にデルフミュームとザビエスも地下通路を駆け抜けて深夜、倉庫に到着します。簡単な挨拶を済ませるとトムやグラッチマウスとの会議に参加しました。床一面、青色のエポキン樹脂塗料が塗られていますが、所々剥げているからかなり古い建物のようです。その床に大きな紙が広げられています。通信施設内部の詳細な設計図面でトムが長い棒を持って説明します。「主な通信センターは4ヶ所で市内に3ヶ所、郊外に1ヶ所ある。その中でもここがグラシオラズたち赤膚族専用の基地で、これを破壊すればスマホやPC端末は繋がらなくなるだろう。それに別動隊が通信衛星をコントロールする施設がある場所を探し、そろそろ見つかりそうだ」 デルフミュームが図面の一部を指さします。「設備のすべてを破壊する必要はありません。人間族が実権を取り戻したときのために最低限度の配線と設備をかじるだけでよいのです。まずこの中ではここは触らずに隣にある小さな箱と配線に絞ってガリガリしてください。あとは、こことこの配線、そうだ、この部分もかじれば使用不可能になりますよ」 膝を折って長い足をたたみ床に座り込んだ巨人の長い指先が移動するたび、4人と2匹の顔が釣られたように一斉に動きます。 一通りの説明が終了するとグラッチマウスがコロッチに指令をだしました。「お前は4ヶ所ある通信基地を攻撃する部隊を編成しろ。この1ヶ所が本命だがもし何かの手違いで他に移動したときの用意をするからな。本命のここには2000匹、他は1000匹でいい。集中して攻撃するところを部隊長へ詳しく教えるのだ。お前の優れた記憶力を思う存分使え、こんな図面、5~6枚程度は頭に叩き込んでいるだろうからな」「へ~い、分かりやした。親分との連絡は足の速い奴を使いやす。部隊長の選別もアッシがやってよござんすか」「そうしろ。ブルックリン地区で小さな小競り合いがあったので兵隊を2000送ったばかりでな。コロッチ、今回の成果次第で、お前をマンハッタン地区の司令官に任命する予定だ」「親分、こんなちっぽけなアッシをそこまで買ってくださるんですか、もったいないでがんす。それでは各地からの兵隊はとりあえず、いったんセントラルパークに集合させ、4ヶ所に分散しまっす。あっちこっちに伝令をだすのでここからひとまず消えますが、軍団の本部はどちらに置きやすか」 目を細めたグラッチマウスは、周りにいたネズミ族が目線を外すほどの冷笑を浮かべました。 つづく
2020/03/11
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2匹が走り去るのを見届けたクリサーラは、デルフミュームに顔を向けます。「ザビエスと2人、あなたがたも出発してください。私たちも後を追いかけます。お2人が先にニューヨークに着いてレジスタンスの人たちと行動を共にしていれば半日程度、日数を短縮できますからね」 大巨人2人は顔を見合わせると軽くうなずき、右手を挙げハイタッチをします。人間ならパチンと音を立てますが、赤膚族は岩石がぶつかる<ガツン>と音がしてから小さな岩が4個ほどこぼれ落ちました。ネズミ族2匹を追いかけるように2人も宮殿を駆け出します。 その様子を目の隅でとらえたクリサーラは、生田緑地連合会が集まっているところまで移動しました。「人間族の4人と動物の皆さんは、バンバンジュウとガメリッチババローナの上に分乗してください。その前に確認しますが、あなた方はわざわざニューヨークまで行かなくても生田緑地に戻る選択肢もありますよ。桐山さん、それにガマのビッグさん、どうしますか」 1人と1匹が声を合わせたかのように大声を発します。「行きま~~~す」 笑顔のままクリサーラが応えます。「あなたがたの勇気は称賛しますが、今回もブッチャーと同じくらい悪賢いグラシオラズというのが相手です。場合によっては命を落とすはめにもなりますよ」 すかさずビッグが甲高い声を発しました。「私たち生田緑地の動物たちは、一回こうだと決めたことは最後までやり通す覚悟だゲロゲロゲーロ」 負けじと桐山清十郎も押しの強い声をだします。「ここにいる人間族4人も同じでござる。途中で投げ出すような者は1人もいないので一緒に行きますぞ」「わかりました。もうこの件は2度と触れません。それでは恐竜2匹に分散して乗ってください。小動物は降り落とされないようにしっかりと、体毛や皮、皮膚に爪を立てなさい。バンバンジュウが先に行き、ババローナは距離をおいて後に続き、もし動物たちが落ちていたらブレーキをかけ止まり拾ってくださいね。それでは準備して出発しましょう」 デルフミュームとザビエスが駆け出してから8分20秒後には、クリサーラと緑地連合の仲間たちは地上に向かって動きだします。ヒスイ宮殿に残るヒミメールを含む白肌族と多くの地下動物は軽く手を振ってそれを見送りました。 宮殿を出発してから21時間28分後にニューヨークに着いたネズミのコロッチは、すぐさまボスのグラッチマウスにヒミメールとデルフミュームからの伝言を報告します。それを聞いたボスの反応は早く、レジスタンスのトム・ジェンダーがいる4番街の倉庫に向かって迷路のような地下通路を走り出しました。 当然、部下のコロッチも一緒です。長い距離を地下から走りっぱなしで疲れているはずなのに、大量のアドレナリンを分泌しているせいか高揚感が先にたち疲れなんか感じません。 つづく
2020/03/08
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カメぱっぱが笑顔で声を上げました。「急にどうしたのパッパ、クリサーラさんが簡単に料理できるなんて言葉を使うなんて」「私もたまに少しは乱暴な言葉を使いたくなるのですよ」 クリサーラもほほ笑みながらバンバンジュウを呼び寄せます。そしてカメぱっぱを肩に乗せ、広間の東隅で話をしているデルフミュームとコロッチのもとへ運ぶように頼みました。 宙を飛び一足先にやって来たクリサーラは、今しがたカメぱっぱと話した内容を1人と1匹に説明します。途中からカメぱっぱも加わり要点を補足説明しました。デルフミュームが口を開きます。「グラシオラズが1人で地下牢まで走ってくれれば、効率は良いし、弟を眠らした手段をまた用いれば楽だが、彼の持っている交信網を完全に切るのは非常にやっかいですよ」「グラッチマウスのネズミ軍団がスマホの端末だけでなく、ルーターや通信基地を破壊すれば彼らの通信網はガタガタになるパッパ、ただし手あたり次第はダメで二本足が自分たちの社会を取り戻したときを考えて、計算して壊すの」「通信基地の場所が分かれば中に入ったネズミが、どこの設備と部品をかじれば妨害できるか教えることができますよ。それには多くの戦闘員が必要だがコロッチは、仲間の数を知っていますか」「先日、地上動物の猫族たちの協力でニューヨークの化け猫2匹を退治してからよ、グラッチマウスさまの名声は一段と高くなって、子分になる奴がワンサカワンサカ増えているっす。ざあっと30万匹はいるな」「それは心強い味方です。それだけ集まれば人間族の作った建物なんかどこでも潜り込めますね」「あたぼうよ、俺たちが入り込めないところなんてニューヨークにはねえな。そんでその場所はどこなんでがんす」「ご苦労ですが、レジスタンスグループに今の内容を伝えたら、次はあちらの指示に従ってくれませんか、通信基地やその施設の場所は詳しいはずですから」「合点承知のスケ、他には」「カメぱっぱさん、何か付け加えることはありますか」「ニューヨークにいる赤膚族とクローンロボットの数と所在地を調べるのも大切だパッパ」「それは私とザビエスが地上に居たとき、数少ない部下に調査を命令しました。上手くいけば今頃は、調べがついているはずです」「クリサーラさん、ここからは時間との勝負です。グラシオラズがブッチャーの幽閉を知れば、なりふり構わず全精力で救い出す作戦に移るでしょう。その前に彼の交信網を切るか妨害しないと手遅れになるパッパ」「コロッチさん、これまでの経緯は頭に入りましたね、すぐに出発してください。イワチュウは地表に出る近道まで案内したら、私たちのもとに戻ってください。あなたは大事なカーナビですから」 クリサーラの言葉が終わるやいなやコロッチとイワチュウは宮殿を飛び出しました。 つづく
2020/03/05
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丸々と太った地上ネズミが息せき切って広間の中央に飛び出します。「グラッチマウスさまの子分、コロコロッチでがんす。なにか急な伝言があればすぐに突っ走ってお伝えしやす」 宙に浮かんだクリサーラがデルフミュームを指さしました。「彼からあなたのボスに大至急伝える話を聞いてください。時間を無駄にしたくないので。グラッチマウスに私たちが地上へ到着する前に調べてもらう内容です。あなたの足でどのくらかかりますか」「へーい、アッシはここから地上にでる近道は知りませんが、そこにいるイワチュウさんがご存知のようなので案内してもらいやす。地表に出れば体内磁石が反応して真っすぐニューヨークに走るから1日半、いや1日で着きやすよ」「そうですか、それではデルフミュームに詳細を訊いてください。地上に出る他の皆さんはそれぞれの準備を始めましょう。ヒミメールは宮殿の修復プロジェクトを進めてくださいね」 クリサーラの言葉で宮殿にいた大勢の動物たちは、ヒミメールの近くに集まり、的確な指令を発する侍女たちの声に反応します。 その様子を頼もしく見守ったクリサーラは、西側にある太い柱の横にいたカメぱっぱに近づきました。「どうしました、元気がありませんね」「ブッチャーを一番崇拝しているグラシオラズを臭いゴケで眠らして地下牢まで運ぶとなると大変な労力だパッパ。4m以上で500キロもの巨人をどうやって運ぶの、やはりここはブッチャーと同じで自分の足で歩いてもらうしかないよ。それにはブッチャーを地下牢に閉じ込めたことを正直にいえば、彼はすべてを放り出して救出に駆けつけるパッパ」「もしグラシオラズが仲間を大勢連れて地下牢に向かえば、それを迎え撃つだけの戦力がデルフミュームになければブッチャーは逃げますよ」「グラシオラズが配下の者と連絡する通信を遮断すれば、彼ひとりだけが地下に向かうパッパ。至急、通信衛星をこちら側のコントロール下におくか破壊すれば大丈夫」「カメぱっぱさんの意見はもっともですね。それでも衛星破壊が間に合わないときを想定しなければなりません。その時は地下牢まで運ぶのではなくニューヨークにある大倉庫か使われていない地下街に彼を閉じ込める計画を練ります。それよりもまず最初に彼の通信網を断ち切ります。もしグラシオラズがひとりで来れば、デルフミュームたちは簡単に料理できますからね」 つづく
2020/03/01
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