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下降するエレベーターから見える外の景色は、各フロア毎に違います。室内全体が、うっそうとした密林のようなところ、自動車の総合車庫なのか、同じ大きさの車が数百台並んでいるのや、背が高く細い人が20人くらいで鳥のように空中を漂う者たち、何かの工場なのか、大きさの異なる箱をベルトコンベアーへ運ぶ1m足らずのロボットたちが動いている様子など、それらが次々とフロア別に変わり、走馬灯みたいに現れました。 ここで注目するのは、たまにいる海底人が下降してくるエレベーターなんか無視していることです。それでなければポカーンと口を開けてアホ面して外を見ている一人と一匹を見逃す訳がありません。 20階になってもエレベーターは止まらず、そのまま下降しつづけます。ザビエスは両手を水平に挙げ手のひらを上に向け、肩をすくめてどうしようもないジェスチャーをしました。1階になっても止まらず地下4階でようやく止まりました。 左右に開いた扉の向こうにウエストが細く均整がとれた2mもある、髪の毛がないスキンヘッドの女性が立っています。「ザビエスとカメぱっぱ、ようこそ海底王国へと言いたいですが、私以外は、歓迎する雰囲気ではないので急いで私の後について来てください」 ザビエスは考える暇もなく、カメぱっぱを左手に抱えて女性の後につき早歩きになりました。大きな円形で左方向にカーブになっている廊下を2分程度走ると、右側の壁面に手をかざす女性。一瞬のうちに壁が左右に開きます。中に入るとそこは40平米の部屋で壁一面に埋め込まれた大型モニターが縦横に400台から500台ありました。 ドーム内の至る所に設置しているカメラの映像が映し出されているのです。一部にはドームの外側、ライトアップされた海中も何ヶ所か映っていました。 天井まで8mもあるので4mのザビエスも楽に立っていられますが、いつでも逃げられる態勢を保ち、女性を見つめます。 海底人の女性は薄いTシャツの上にさらっとした絹のような布を身にまとい、透明感のある椅子に座ります。「ザビエス、あなたも座りなさい。あなたがたがドームに侵入した時から、カメラは捕らえ、モニターに映し出されていました。世界中の海上にある無数のブイから電波を吸収、人間社会のあらゆる情報は入手しています。アメリカのホワイトハウス内にある盗聴器やペンタゴンのマスターPCからリアルタイムでデータを吸収、分析、解析をしているから、あなたがたの名前、生物形態、知能指数、思想などは、こちらのPCに蓄積されています。カメぱっぱ、あなたには特別な思いれがありました。一見、架空の生き物のように見えますが、なかなかどうしてその愛らしい姿の中身は、ウエットにとび冒険心がある知的生命体であると承知していますよ」 目の前にいる女性の声は、クラッシックの音楽を聴くとき感じる心地よさと共通しているので、ザビエスも警戒心を解きカメぱっぱを床に置き、自分は椅子に座りました。椅子全体が軟質性で出来ているから、体が下に沈み気持ちが良くなります。カメぱっぱはツルツルする床に腹ばいになって2人の顔を見上げていました。ザビエスが落ち着いた声を発します。「人間族どころか私の赤膚族よりもかなり進んだ科学と文明をお持ちと言われる海底人のドーム内にバレずに潜入するなど不可能でしたね。ところで先ほど、あなた以外は私たちを歓迎しないと言われましたが、見つかると拘束されますか、それとあなたのお名前を教えてください」「失礼しました。私はカスマヨル公国の皇女、エリーゼです。海底王国はもう一つの国、コルビース王国との連合国家です。現在はコルビース王国の9代目ボントスが統治者ですが、国の運営、管理は両国から選ばれた少数の者が行っています。私、エリーゼもその中に入っています。今回、初めて人類に海洋汚染の責任を求め、実力行使に出たのはボントスたち主流派の意見が通ったからです。彼らは人間に悪感情を持っているので、そのお仲間も例外ではありません。ここに侵入したあなたがたを捕らえれば尋問した上、どこかに閉じ込めるのは間違いないでしょう」 つづく
2021/02/27
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ドーム内の光景を説明しますと、その中心に高い塔があってそこから一直線に伸びる空中通路が12本、内壁にある数多い階段の踊り場に接続していました。それは各5段ずつにありますから100段の階段があれば、空中通路は20もあるのです。塔の下側には円柱形の建物がたくさんあり、その周囲を自動車が飛び交っていました。この景色は人間が住んでいる街を多少、縮小したものがそのままスッポリ、ドームの中にあるのを想像してください。 自然な植物かどうかは不明ですが、至る所に緑の木が植えられて目の保養になっています。人類が21世紀で考える未来都市が海底王国には詰まっていました。ザビエスがノソノソごそごそ両肘を使い進んでいましたが広い廊下にぶつかり止まります。そこは直線ではなく左にカーブする曲線で先が見えません。輝きを放っている銀色の床と、同じ色の天井までは7mの高さがあります。壁面の色だけが薄い緑になっていますが、その壁を触りながらカメぱっぱが口を開きました。「なんか奇妙だパッパ、まだ海底人らしきものを1回も見ていないよね」「街の大きさからいっても、それほど人口は多くなさそうだ。この時間帯は働いているところか自宅にいるので、あまり外には出ないかもしれない。さっき見た空を飛ぶ自動車も100台はいなかった」 ゆっくり進むカメぱっぱとザビエスの壁面の一部が半透明で扉になっています。そばに近づき軽くタッチすると、左右に開きました。 円形の内部は約半径で6mあって、入口そばの小さなタッチパネルには、-12から99までの数字が並んでいます。「ニューヨークの高層ビルにあったエレベーターというものと同じかもしれない。カメぱっぱ、ここまで来たら乗るしかないな」「着いて扉が開いたら銃を構えた海底人がいて、そのまま牢獄に直行パッパ」「それでもいいさ、まだオレたちは海底人とも会っていない。捕まればじっくり向こうを観察できる」「殺されるかもしれないよ」「その点は心配ない。人間よりも知能が高い生物は、まず相手を調べることから始める。自分たちが吸収できるものがあれば、貪欲に奪い取る」「ブッチャーは反逆者をすぐに殺したパッパ」「あいつは、人類の生体や思考経路などを長期間調べてから地上へ侵略したのだ」「なんかボクたちは、すでに海底人に捕まるのを前提で話しているよね、おかしくない」「誰にも会わないので、飽きてきたのさ。宙に浮かぶクリサーラさまが懐かしい」「この寂しがり屋の地底人め、よし、覚悟を決めた、乗ろうパッパ」 一人と一匹、床と天井が円形になっているエレベーターに乗り込みました。床以外は透明なアクリル板のようなもので、触ると柔らかいのです。 ようやく4mの身長が立ち上がり、膝の屈伸運動をするザビエスにカメぱっぱが尋ねます。「何階を押したらいいの」「88にしよう」「どうして?」「カメぱっぱだから」「・・・・・?」「パッパ、イコール88」「ザビエス、面白くない、ここの階は70とあるから下にするよ」「20階あたりにすれば」 うなずいたカメぱっぱ、20の数字に軽く触れました。音もなく扉が閉まりエレベーターは下降します。1秒間に3mの下降をする間に各フロアの景色は目まぐるしく変化しました。エレベーターの速度は分速で表し、今のところ人間社会で一番早いのは中国にあって分速1260mですが、一般的には分速30~60mです。 つづく
2021/02/23
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ドーム内にある数多い監視カメラは、人間社会と違い、1㎝四方の小さなもので天井の境目や壁面、階段のすき間等目立たないところに設置していました。 その目的は一般海底人の動向を監視するのではなく、数十年に1回程度、劣化したパーツが引き起こすと見られるロボットやアンドロイドの暴走を防ぐためです。48年前、脳神経に異常をきたしたアンドロイドが海底人を襲い、4人が重軽症を負ったのがきっかけで導入されました。 それに広大なドームの外と内側に多くのカメラがあるのは、3層で防御されている遮断フィールドが万が一、不慮の事故で破壊されるのを探る意味もあるのです。各パーツは約200年の耐久年数が近づくと、順繰りに10m四方を切り離し、新しいものに変えますが、ドームの内圧や外圧が高いので圧力を年中、一定にするためにも見張っていました。 海底王国の生活環境と様子はひとまずこの辺でやめますが、機会があれば再度ご案内しましょう。 カメぱっぱと赤膚族、ザビエスがドーム内壁にある張り巡らしているうちの一つの階段をそろりそろり昇り、ようやく20段目の踊り場にやってきました。 5段目ずつの区切りからドーム中央に真っすぐ伸びる半透明で半円球の通路、入口が目に入ります。眼下には青いカスミがかった円錐形の中にある街並みが一望でき、今いる踊り場からドーム全体の様子が分かります。 円錐形の内側まで空中に浮かぶ通路は、ドームの内壁から中央に向かって12本ありました。カメぱっぱたちがいる20段目の階段にも通路があり、半透明のベルトがゆっくりと中心に動いています。ザビエスへ目で合図したカメぱっぱ、そのベルトに乗りました。ここまで来て乗らない選択肢はありません。 半円柱の上部は透明になっているので上を見ると、同じように宙に浮かぶ通路が何層に重なって見え、高いところはかすんで見えないのです。 ぼうっとしながら上を見ていると、いつの間にかザビエスがうつ伏せ状態のままそばにいました。「しっかりしろ、これからが大事だからな、オレはこの体で目立つからそれほど動けない。建物に入ったら目的はただひとつ、海底人のウイークポイントとどんな武器を持っているか、それにブッチャーがどこにいるのか、それが分かればすぐにここを脱出し、さっき上陸した入口まで戻り潜水艇に乗って海面に浮上すればいい」「ずいぶん簡単にいうパッパ、目的もひとつじゃなくて3つもあるよ。それにザビエスとボクのコンビは、どこにいても目立つよね、だから・・・」「それはしょうがない、だからどうした」「このまま、戻って帰ろうよ」「ここまで来たんだ、もう少し探ろうぜ、ほら、動く通路もそろそろ終着駅に着きそうだ」 青いカスミ状の層が目の前に現れます。霧のように見えたのは微小な光の粒で空中に漂っていました。その数は数十万にも及びます。光のカーテンの中を突っ切ると、動く通路はどでかい円柱形の建物に吸い込まれました。 下に見える低い建物の周りには、20台くらいの箱型自動車が宙を飛んでいます。 つづく
2021/02/18
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これまで海底人の生活様式や老後の暮らしなどを紹介してきましたが、勤労はどうしているのかを説明しましょう。ドーム内での交通手段や食料生産とその供給システムは<マザー>が管理、運営していますから、海底人はサブで手伝いをするだけで、それほどの人手は必要としません。 17歳から34歳まで1日4時間<マザー>が指示したした仕事、デスクワーク以外の動きを伴う作業を行います。気分が乗らないときや、体調が思わしくない時には、断るのも自由ですし週4回だけの労働ですから、人間社会と比較すれば楽なものです。残った時間は前に述べたような自分の趣味などで有意義に過ごしました。おのれに合った生き方を選択し、楽しむ余裕が海底人には満ちあふれています。 それでも地底人、赤膚族メルトン・ブッチャーと同じで、地上に出て自然の風や空気を吸い、風光明媚で圧倒される景観を観たいという者も出現します。 人間の行動心理学を掌握している者たちは、自分たち海底人にもろ手を挙げて受け入れないのも承知していました。なぜなら人間以外の知的生命体を見たことのない彼らが、まず自分たちを隔離し生体検査をし、その結果、知能等が人類よりも上と分かれば脅威を感じ閉じ込めるしかないのです。人間の歴史が証明しているのは、口では平和を唱えても、お互いを殺戮、傷つけ抹殺を図る愚かな生物だということです。海底人のごく一部には、それならば自分たちが地球全体を支配した方が、人類にとっても幸せな生活を営むだろうという考えでした。この点は地底人、赤膚族のブッチャ―と何ら変わらないのです。 統治と制圧方法はブッチャ―と異なりますが、地球を総合管理、運営するのは同じです。 カスマヨル公国4891人、コルビース王国2480人、計7371人の人口は、食料事情や空気生産、他の理由で適正な人口を計算、維持していました。 それに比べると人類は、人口の調整どころか飲料水や食料の奪い合い、ウイルス等の疫病すらも管理できないで毎年莫大な死者をだしています。 自分たちの手でコントロールすら出来ない原子力発電を安易に作り、事故を起こせば想定外の出来事だったとぬかす知能の低い生物は、海底人が征服し保護すれば窮極の平和に繋がるという発言が出てくるのも無理はありません。 もう少しドーム内の様子を説明しましょうか。宙を飛ぶ自動車の走行運営と管理システムは<マザー>が24時間休まず動かしているので、海底人が自分の手で運転することはないのです。例えば「Eブロックの4次元バーチャールセンターへ3時10分までに行って」と、音声入力すれば即座に自動運転を開始します。 地上道路から上、3mの高度エリアが緊急用車両の通路で、その上から約3mの幅をもって6層に分かれていました。その目に見えない立体通路はドーム内に張り巡らされ、走行する車の使用目的で高度が1番低いところから1層2層と区分けされ全部で7層あります。それも<マザー>が指令、管理していました。 つづく
2021/02/14
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宙を飛んでいる車は<マザー>が端末を動かし自動運転走行を行うし、家庭内の家事はAI搭載ロボットがそつなくこなすので、海底人は住まいの中で自分の趣味、例えば創作家具や絵画、彫刻、ソフト・アプリの開発などを考え製作するのが、大部分の人が実践する生き方でした。 食べ物は1日2回各家庭と繋がっているチューブラインを通じてバランスを吟味した食料が送られてくるのです。年齢層を考慮した献立は、飽きがこないように味覚、色彩、材料も変化にとんでいます。生きる目的と生活するための糧は人類と多少異なるかもしれません。しかしまず豪華な生活と贅沢をするという概念はないので、各自が自分に合った生き方を学び、そこそこ努力すれば良いのです。歳をとりレクレーションルームで毎日4時間、立体画面やバーチャルゲームをする者、疑似体験でロケットに乗り異星探検を楽しむ者、気球から地表の雄大な景観を見て過ごす者もいます。 人間をはるかに凌駕する科学力は宇宙旅行も可能です。それでも海底基地から本物のロケットを飛ばせば、当然、人類に探知され、ドームの存在も発見されるので、これまで1回も発射されていないのです。 地上における創世記以来、人間社会の歴史を熟知している海底人は、家族、身内、親族、村や町、国、民族、宗教の仲間意識が、異なる者を排除、攻撃する卑しい心が生まれ争いごとが絶えないのを知っていました。 それだけの理由ではありませんが、血の繋がる家族さえ作らなければ同族意識が薄れ、もめごとがなくなると結論をだしたのです。各家庭に供給される赤ん坊の遺伝子は<マザー>が管理し、血縁関係、IQなどがばらつくように配慮していました。なお海底基地から太陽系以外の惑星にロケットを飛ばし、回収しようとすれば、それの準備期間はわずか2ヶ月もあれば充分です。 月に人間を打ち上げ地球に帰還させる人間の科学技術は、海底人から見ると幼児が遊んでいるおもちゃ程度でした。 ロケットやミサイルを飛ばすときのネックは効率よい燃料の確保です。大きなロスを生じる液体よりも固体燃料が基準になっていますが、それでもまだ改良の余地があります。その点、無限にあるマントルを凝縮し基本燃料を開発した海底人の科学力は人類のかなり先をいっているのです。 くしくも地底人、赤膚族もマントルを抽出しエネルギーの元として活用しているのも、豊富な地下資源を有効利用とする同じ考えのようです。 人間社会の電気は送電線から流され工場や各家庭に送られています。それは電気というものが蓄積されないハンデで常に電線から流さないと役に立たないからです。 反面、海底王国には電線はありません。それは・・各家庭で電気を作り、貯蔵できるのです。人間社会が電気を作る過程は、いたって単純な方法です。それは水を沸騰させその蒸気でタービンを回すのですが大部分です。水を温めるときに用いるのが重油や原子力なのです。(他に水力や風力で羽を回す方法と太陽光などがあります。太陽光は光が照射され電池を構成している半導体の電子が動き電気が起きます) 火力などからCO2が発生するから公害に繋がるのです。 しかし海底王国では、マントルだけが基本燃料ですから公害とは無縁の社会でした。 つづく
2021/02/10
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ドーム内の光景よりも海底人の生活の方が興味があると思われるので補足説明します。前にも述べましたが、彼らの平均寿命は461歳で30歳になると希望すれば<マザー>が異性を選び、お互いが気に入れば同棲するのです。 男女の生殖機能は退化しているので、育児体験を望めば、工場で生産された赤ん坊が提供されます。その赤ん坊が13歳になって独立を希望すると、新たな住居が与えられます。いずれも強制ではなく本人たちの意思が優先されますが、この制度を選ぶ家庭は、全体の54%にも及びました。 人間社会で必要な法律は、海底王国のシステムにそれほど重要な事柄ではなく、法律そのものが存在しません。相手を傷つけ殺すなど野蛮人と同じ発想はなく、常に冷静で論理的思考をする生命体でした。相手をだまし金品を搾取する考えも存在しないのです。海底人それぞれが、多少の誤差はあっても収入賃金に差がないことと、国から毎年、赤ん坊を含む1人ずつ、それぞれに一定の金が振り込まれるからです。この制度は人類も一部の国でテストマッチで行われていますが、まだ未完成なようです。(人間が考えるベーシック・インカムは、批判する者が多いようです) 生活を維持するために必要なお金を国が提供すれば、勤労意識が薄れるだけでなく競争力や向上心もなくなるから、やるべきではないという人間が多いのも事実です。だが好きな勉強をしたくても出来ない苦学生や子供を育て働くシングル・マザー、働きたくても親の介護で苦労している人、様々な障害を抱えている人などを国として毎月(毎年)お金を支払うのに反対する人は少ないでしょう。 そのような理想的な社会を創り上げたのが海底王国です。 ただし政治だけは、世襲制度が行われ現在も継続していますが、それに対して不平不満の声はほとんど上がりません。大切な政策は、感情論を排し冷静な判断をするAI搭載コンピュータ<マザー>が企画、実践するので大きな間違いがないことを承知しているからです。 人類に比べてはるかに進化した科学技術は、一般人の生活の中にも取り入れられ、衣食住にも反映されています。まず住宅は先ほど述べたように単身者や同居人数に応じてスペースは変化し提供されます。いずれも温度や湿度は最適に設定され、循環する空気は常に健康増進を目的に供給されているのです。 着るものは年中、温度が一定ですから下着の他は薄い長そでシャツ1枚で通します。シャツの色は46色から自由に選び、イラストや海底数字など着る者が遊び心を入れデザイン化していますから、同じものは全くありません。 それでも海底人の乳白色の肌には、やはり色鮮やかな原色が似合うようです。なおここ20年くらい流行しているデザインは、自分の顔を変顔にし、デフォルメしたイラストを背中に大きく描いているものでした。 海底人は手足が長く、ひょろっとした体形ですが、日常生活に支障はなく、もし力仕事が生じれば<マザー>が手配するアンドロイドが行います。 つづく
2021/02/06
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カメぱっぱやザビエスが地上と同じ空気、それよりも酸素濃度が高い空気を 吸っているのにもある理由がありました。海底人の寿命や知能指数が人間よりもはるかに高い訳は、老化やあらゆる病気を発症させる体内の活性酸素を少なくするための医学が発達しているからです。空気の中にマイナス・イオンを含む抗酸化物質を添付することで活性酸素の発生を抑えていたのです。 その酸素を吸いながらカメぱっぱは、周囲に気を付けながら、のそのそ、ぴょこたん、ぴょこたん進んでいます。亀のように床に這うと速度が遅くなるから短い足を甲羅から出して二本足走行をしていました。 7m遅れてザビエスも立ち上がって歩いていますが、10m歩くと一旦腰を降ろし周りに神経を巡らして誰もいないのを確かめてから前に進んでいます。 ようやく15段目の円形通路に着くと、ドーム内部の全景が見渡せます。 街全体がすっぽりと、青い霧状の円錐形に包まれていました。街の中には大きさの異なる円柱形をした建物が整然と並び、その数は1000を下らないでしょう。 各建物の屋上には円形の駐車場があって、約半分のスペースに地上でいう小型車が収まっていました。車の形は長方形のずんぐりむっくりした箱型が主流なようです。車全体は半透明になっていて内部までも透けて見えます。どの車にもタイヤはなくて現在、街中で走行しているのは・・・・宙を飛んでいました。 重力制御装置を簡素化した器具を取り付けることで、宙に浮かぶ車を開発したのでしょう。それもランダム走行ではなく、決められた高度エリアを水平に順序よく走っているからぶつかる心配はありません。<マザー>が決めた目に見えない7段階の走行通路は、各車の使用目的で分けられています。緊急用の車が走行するエリアは一番低い通路で住民用の通路も用途別で区分されているようです。 宙を走る車のスピードは、50キロ未満と決められている上、運転は各車に搭載されているAIが<マザー>の指令で運転しますので、最近14年間1度の事故も起こしていません。 円柱形の建物は大きさが違っても薄いグリーンとピンク、それにイエローの3色に分かれ、その色で個人住宅か行政関連、もしくは商業店に区別されているようです。上から見てすぐに見つけやすい工夫がなされていました。 カメぱっぱたちが口を開けてドームの内部にある街を見つめているので、まだ説明は続きます。 つづく
2021/02/02
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