全7件 (7件中 1-7件目)
1
女性の声でマザーが返します。 「海底基地までは時間が掛かるから、あなたも休んでね。基地に着いたら起こしてあげる」「サンキュウ、パッパ」目を閉じたカメぱっぱ、そのまま眠りの世界へ入りました。90分後、マザーに起こされたカメぱっぱは、4匹のスカンクをケージからだして、簡単な手はずを整えます。4匹を選んだのは急場しのぎで、4ヶ所に分散する各班の班長にしたのです。ですから頭脳明晰というよりもただの出たがり屋でした。 そのうちの一匹がカメぱっぱに尋ねました。「オラあよ~、地上に戻っても狭いケージ暮らしなんよ~、海底王国とやらが住みやすかったら、そのまま残っていいのかよー」「その判断は作戦終了後に決めればいいパッパ。生活環境や餌が確保できるのかを総合的に見極めてからでも遅くないよ」「オメエ、見かけによらず賢いな、そうするよ。他のものもオラと一緒に残るならそうすっぺよ」 スカンクたちがケージからぞろぞろ出た来て作戦の準備行動に移ったとき、イルカ型潜水艦は、北側にある桟橋に到着し空気圧調整ドームに入りました。 マザーが男の声で話しかけます。「ハッチが開いたら、ゆっくりA班から外に出て壁際を左方向に進んでくれ。B班は右側、C班は左でD班は右側に移動。各班長が侵入場所を指示して、その担当数を振り分ける。もし作戦中、海底人に発見され危害を加えられたら、近くにいる仲間が一斉に特殊液体を噴射する。その間に安全なところへ逃げてくれ。北側にある壁面が透明な大広間を諸君の集合場所にするから、作戦が終わった班から集まって休んでもらう。そこで先ほど話があったこの海底王国に留まりたいものは、かたまって欲しい。そのもの達が所属していた施設に届けるので名前か番号、それに国と施設名を記録する必要があるから、教えてくれ。それではハッチを開ける」 マザーの声が途切れると潜水艦の下側にある円形のハッチがくるくる回り、下側に移動します。透明な太いパイプが出口にくっつき床へ伸びていました。 大勢のスカンク部隊を降ろすのに、マザーが用意周到な準備をしていたのです。45度のこう配を次々と滑り落ちるスカンクたち、一斉に海底王国への侵入を開始しました。 各班の班長が先頭に立ち、行先と侵入場所を指示して進みます。B班が入ったドームは、地上にある熱帯雨林地方のうっそうとしたジャングルに似せたのか、種々雑多な植物やツタ類が勢いよく伸びています。リスのような小動物が木々の間を飛び回っているのを見ていた一匹がつぶやきました。「ここは、天国か。オラたちが住むのに最適なところだな」 別なスカンクも口を開きます。「んだな、餌もあるようだし、もう施設のケージに戻るのは嫌だ」「その話は後ですんべよ。ここには海底人がいねえから、臭いづけはしねえぞ。向こうのドームにいるから、動くべよ」 ぞろぞろ動き出すスカンク部隊、よほどこのドームが気になるのか、何回も振り返りながら前に進みます。 つづく
2021/08/25
コメント(4)
マザーも生活のインフラに必要な計算、管理、運営を別なスパコンがやってくれれば、その分、容量に空きができて他のクリエイティブ関係に振り分けることが可能になります。ボントスたちの命令に表立って拒否するのは、まずいので多少の延滞行為でお茶を濁していました。 トマソン大統領がホワイトハウスで会議を開いて4日経った早朝、バージニア州にあるノーフォーク海軍基地へ小さなイルカが現れ、そのまま基地の中にある隠れドッグに潜入しました。海底基地内にあるドームから警備の隙をついて、密かにマザーが1隻の潜水艦を切り離し、そのまま海中へ潜水、音もなく海軍基地まで進入させたのです。外見は本物のイルカと差がなく、泳ぎ方も体や尾びれをくねらす動きまでそっくりでした。 海底人がなぜクジラ型やイルカ型の潜水艦を開発したのかを説明します。それは海中、海上で人間の潜水艦と遭遇しても警戒されずに走行できるのが一番のメリットで、仮に追跡されても急速に深海へ潜航すれば、なんなく、かわすことが可能でした。イルカ同士が交信する高い周波数をもったパルス音も基地との通信に便利で、改良した音波は例え人間に傍受されても、海底人たちの交信とは考えないからです。 イルカは泳ぎっぱなしで眠らない動物と考えられていましたが、それは違います。『半球睡眠』といって右脳と左の脳を交互に眠らせますが、解りやすく言うと、右の脳が眠っているときは、反対の左目をつむり、逆に左の脳が寝ているときは右目をつむりながら泳ぐということが、実証されています。人間が使用する音波探知機では、イルカやクジラ以外に認められないので海底人は、世界中の海域で自由に潜航していました。 カメぱっぱが乗船する予定の潜水艦は、初めカマイルカの体長2.3mでしたが、当日、基地ドッグの状況でハンドイルカの体長3.8mへ変更になったので、小さな潜水艦だから自分一匹が乗ることになったのに、話が違うとおおもめになったのは、言うまでもありません。もちろん、むくれているカメぱっぱを優しく諭したのは、クリサーラでしたが。 前書が長くなりましたが、イルカ型潜水艦に乗ったカメぱっぱは、マザーが無線操縦しているので床に寝転がっています。後方に何段にも積み上げられたケージから、スカンクが勝手気ままに話しているのが耳に入ります。 世界中から集められたスカンクは、総数875匹にもなり、海軍基地に集合した時点で、今回の目的をカメぱっぱと、ハクビシンの新之助が丁寧に説明しました。海底基地に入ったら、東西南北の4班に分かれ、各班の班長のもと一糸乱れぬではなく、てんでバラバラに動き、あっちこっちに例の液体を噴出、そのまま逃げ去るのですが、一匹のスカンクが声を上げて一部、作戦が変更になります。それはスカンクの中にも、あの臭いで失神するものがいるので、一斉に噴射したら北側の一ヶ所だけは、無臭状態にして各自がその場所に集合すれば、スカンクたちが帰還するときにも便利で、一石二鳥の案が採用されました。 海底基地内に放たれたスカンクは、わずか3時間後に回収し、そのまま潜水艦で海上に戻る段取りとなったのです。マザーの意見も聞いて若干の修正をしましたが、その案は実行されます。腹ばいで横に寝ていたカメぱっぱへ、顔の尖ったスカンクが声をだしました。「ね、ね、カメさんよ」別なスカンクが怒鳴ります。「カメじゃあねえよ、たしか河童とカメのハーフでカメぱっぱって言うのさ」「そうか、カメぱっぱさんよ、腹減った。なんかくれ」頭を上げたカメぱっぱ、小さく応えました。「もう少しで海底王国に着くからさ、がまんしてパッパ。3時間だけ作戦をしてすぐに地上へ帰るから、これから7時間後には飯が食えるよ。それに、ここには食べ物は積んでいないの」「まったく気がきかない奴だな」 その時、静かなバロック調の音楽が流れて動物たちを、眠りの世界へいざないます。スカンクとカメぱっぱの会話を聞いていたマザーが、子守歌のような曲を流したのです。これにはカメぱっぱも感心して一言つぶやきます。「マザーにかかっちゃあ、生き物の争いごとなんか、一瞬で終わるね」 つづく
2021/08/21
コメント(4)
笑顔になったトマソン大統領、椅子から立ち上がり、これまで発言された内容をまとめ、実行する作戦を要領よく説明します。スカンク作戦は、ボントスが人類の食糧危機を招くよう、大量の昆虫を地表に放つ前に、実行するよう採択されました。アメリカだけでなく世界中に声をかけ、スカンク生育施設から借り受ける案も計画されます。海底王国を大混乱させる作戦は、かなりの危険性も含んでいました。それは人間が行った作戦とボントス側が知れば、大規模な復讐に出るのは間違いないのです。それを避けるために隠密行動が要求され、各担当だけでなく生き物全て口にチャックするのを厳命しました。ボントスたちがホワイトハウス内外に仕掛けた盗聴器を、マザーが取り除いたと言っても100%でないことを予測し、厳重にかん口令が発せられたのです。 エリーゼとマザーにも緊急時を除き、決まった時間以外には地上との交信をしないよう要望し納得してもらいました。その理由は、ボントス派がマザーに代わるAI搭載のスーパーコンピュータを構築している最中に、余計な雑音を入れ混乱させる必要がないからです。第2のスパコンが自分の意思を持って動き出すと、それまで一方的に命令していたマザーへ敵愾心を燃やし、反抗するだけでなく、追い出す手段に訴えるのは必至でした。 ボントスがエリーゼと結びついたマザーを排除しようと、やっきになりシステム・ラインを調整しながら第2のスパコンを動かしても、即座にマザーを遮断するのは不可能です。それは、まだ海底基地内の情報、データ、生活インフラ、安全保障などの大部分は、マザーに依存していたからです。 マザーとトラブルを起こせば、ボントスたちでさえ勝ち目は薄く、理性をなくしたマザーが暴走すれば海底王国は大混乱どころか、致命的な傷を負い、それを回復するには膨大な労力と時間が掛かるからです。 ボントスが急いで構築しているスパコンは、自己増殖チップを最小限にして、人間の脳に当たる部分は記憶能力と計算能力以外を低く抑えていました。それは感情や創造性、論理、倫理観を増殖させると、自分以外の者が行う作戦の矛盾性や、地球規模の視野で考えるなど、ボントスとの対比があらわになって、反発するかも知れません。 マザーのように自分の意思で世界中のデータと情報を収集、分析し自分なりの考えを持ってボントスに提言するまでになると、強引に短時間で押しとおす作戦は実現不可能になるのです。ボントスがスパコンに要求するのは、自分に説教をするのではなく、ただ命令に従うだけでよかったのです。 この辺は人間社会でもどこかの国のトップが、周囲にイエスマンだけを置くのと似ていますね。トムと名付けられたスパコンは、24時間体制でシステムや各種プログラムを注入され、基地内のエネルギー生産や空飛ぶ自動車などの運営、管理を少しずつマザーから移行していました。それは、マザーにとっても都合がよいことなので静観しています。 つづく
2021/08/17
コメント(4)
トマソン大統領が笑みを浮かべたまま演説を続けます。 「清十郎さん、カメぱっぱさん、貴重なご意見を頂き感謝します。クリサーラ、あなたから皆さんに伝えることがあればお願いします」「ここにいるトマソンを筆頭に私たちは、ある価値観を共有していると信じています。それは地球上にいる、あらゆる生命体の尊厳さを守るということです。人間だけが知的生命体のトップとして君臨するのではなく、地底人、海底人を含む動物たちが、この地球という星に住み、お互いを信頼、尊重すれば、いさかいなど起こらないのです。今の清十郎さんの発言を皆さんもよく考えてください。これから作戦上必要なスカンクを集めて海底王国に放つ際にも、彼らの権利を守り、決してぞんざいに扱うなどしない点を留保してください。人類は宗教的にも豚、牛、鶏、羊、山羊など自分たちに都合の良い理屈をつけて食用にしています。動物たちの気持ちなど無視して食べるのを正当化しました。それは人類が地球上で最強で絶対的な生き物であるという考えの表れです。前にも言いましたが、害虫は人間にとっての害虫で、ネズミやゴキブリは、人間に殺されるために誕生したのではないのです。全ての生き物は、その存在理由があるから生存しているのです。人類を恐怖のパニックに引きずり込むウイルスや病原菌も彼らが生きる訳がありますからね。私たち地底人は、地中にいる数万種類の雑菌やウイルス・バクテリアまで採取して、それらを培養し、その働きと他の植物、生物にどのような影響を与えるのかを研究しています。生物に寄生し死へ直結させるのもありますが、逆に病気を治すウイルスや菌まで幅広く発見しました。目に見えない細菌に感情はないかも知れませんが、生存本能は間違いなくあるのです。他の生物に寄生してまでも生き抜く、種の保存本能は強力なものです。私たちと人類の違いはここにあるのです。人類は害虫や病原菌、ウイルスなどを一方的に排除、絶滅しようとしますが、私たちは共存を目指すのです。こちら側に害や病気をもたらす部分だけをカットして、あちら側の本能を維持するよう、他の役割も含め尊重しながら研究しています。病原菌や人間に悪さをする細菌や微生物、生き物を地球上から消滅させることは絶対に出来ません。それならば共生までいかなくても、ただ排除するだけでなく、相手を研究しプラス、マイナス両面で考えなければ意味がないのです。これからの人類には、多くの絶滅生物をよみがえらせる研究も必要になります。トマソン、あなた方は、人類だけでなく他の生き物を存続させ、幸せに生きる権利を尊重する努力を続けてください。清十郎さんの発言に誘発され、常々、思っていることを話したくなりました。やはり、あなたも常人と違い、只者ではないのですね。いえ、否定するのも分かっていますよ。先ほどトマソンは、あなたを奥ゆかしい人と表現しましたが、それに付け加える言葉は、正に質実剛健の人です。それでは、トマソン、会議を進めましょうか」 つづく
2021/08/13
コメント(4)
クリサーラが大統領へ顔を向けます。「トマソン、海底人との対決は避け、融和政策を取らざるを得ませんね。彼らの短所、欠点をその間にさぐり、反撃する材料を見つけるのです」 トマソンは大きくうなずき返すと、トメさんの隣に座っている桐山清十郎を見つめました。「清十郎さん、あなたは、よほどのことがない限り自分からは、話そうとしませんが、私は、そのたたずまいを奥ゆかしい態度だと感じます。ほとんどの人たちは、我先に自分の主義、主張を聞いて欲しいために率先して発言しますが、あなたは違う。ここまでの会話を聞いて思うことがあれば、ぜひ教えて欲しいのですが」 それまでの眼光鋭い鷹の目が一瞬で好々爺の顔に変化します。「大統領、拙者をそのように見ているとは、それほどの者ではござらん。あまり買い被らないで下さい。まだまだ未熟者ゆえ皆様方の会話についていけないのです。それにしても海底人ボントス、ブッチャ―同様、あなどれない者ですな。なかなかの知恵者と見受けますぞ。知恵者には、誰でもが驚嘆するような戦術が必要になりますれば、やはり我らのカメぱっぱうじは、だてにパッパを言うだけの御仁ではなかったようですな。スカンク作戦、身どもも脱帽いたしました。そこでもう一つダメ押しの作戦を考えましたぞ。放つスカンクの背中一面に揮発性が少ない濃縮アンモニア溶液を塗れば、より一層の効果があると存じまする。然れども、この作戦を遂行するにあたり、集めたスカンクの諸君には、カメぱっぱうじから、きちんと筋を通すよう話をして欲しいのです。どんな理由にせよ、未知の世界、海底王国まで行って生死を別ける作戦へいやおうなしに付き合わせる理不尽な行動にでるのでござるよ」 黙って桐山清十郎の言葉を聞いていたカメぱっぱ、軽く手を叩きます。「清十郎さん、ボクも二本足に捕まる野生のスカンクを想定していたけどね、飼育場にいるスカンクの方が手っ取り早いと気が付いたパッパ。なぜなら海底王国に行く前、事前に作戦内容を詳しく説明できるのと、終了後の帰還方法など、早めに打ち合わせが可能だからね」「さすがでござるな、スカンクの諸君も前もって作戦を説明され、もと居た場所に戻れるならば、がぜんヤル気が違いまする。広大な海底王国の中を闇雲に走るのではなく、東西南北、4方面に分担を決め各部隊長を選定、もし活動中に海底人に捕まるのを想定し、そこから他の部隊が助け出す戦術も必要ですな。・・・なにをカメぱっぱうじは、ニヤニヤしているのでござるか」「いや、清十郎さんらしいなと思ってね、地底王国に一緒に潜ったとき、ブッチャ―たちとやり合ったときも、清十郎さんの冷静な作戦が成功したのを思い出したのパッパ。大統領、これで決まりだね」「あなた方の絶妙な会話が、うらやましい。清十郎さん、かたじけのうござる」 側近があわてて大統領へ頭を振りました。奇妙な言葉を多用しないように注意したのでしょう。 つづく
2021/08/09
コメント(4)
エリーゼがクリサーラの質問に答えます。 「海底人の頭脳には、精密な設計図さえも記憶する場所があります。兵器に限らず、物体を作る時には脳の内部に直接アクセスする回線を取り付ければ、すぐに図面が出力できるのです」「デザイン、設計をPCと連動して行うCADシステムに似ていますね。コンセントのようなものが頭にあるのですか」「後頭部のある部分に小さなセンサーを押し当てるだけで出力できます。例えばクジラ型潜水艦の設計図が必要になったら、私が脳にある格納庫から引っ張り出してセンサーが、なぞればよいのです」「重力制御装置など超精密な図面も脳に記憶されているのですか。海底人の全てが、その能力を持っているならば怖いくらいですね、エリーゼ」「制御装置などの詳細なデータは、ボントスとワイヤレント、それに私の3人だけが脳に仕舞われています。その訳は単純に脳のキャバシティーが大きいからですね。それでも他の者は、ドーム内の設備や生活全般のインフラの大部分を記憶しているから一般の海底人と私たちとは、それほど差はありませんよ。クリサーラ、あなたの質問の意図は、それら重要なデータと図面を人間社会にある出力機で打ち出せるかですよね。その答えは、NOです。私たちの脳に押し付けるセンサーと出力機は、海底基地にある特殊なものでしか反応しないのです。仮に人間がそれらを作っとしても、海底人の脳が受け入れないでしょう」「大切な情報や図面をあなたがたの脳から、引っ張り出すのは、他の生命体では無理だと理解しました。エリーゼ、あなたの脳は人間の約4倍もの大きさがありますが、現在の人類も進化するとそのような脳になりますね」「今の人類が生きながらえ、その子孫が500年、1000年先まで生存するならば、それが条件です。私よりもクリサーラ、あなたの能力もすばらしいです。動物の脳に入って考えを読むことや、宙に浮かぶだけでなく体すらもナノ単位まで小さくさせるなんて、私には考えられませんから」「私の能力も先祖から与えられたDNAのおかげです。お互いに特別、手に入れた能力を大事に使用しましょう。それが私たちの先祖に対する礼儀ですからね。それでは、話を進めましょうか。ボントスが気象をコントロールして人類に被害を与えるのを阻止するのは、可能ですか」「クジラ型潜水艦7艘、イルカ型が27艘もあるので大西洋、太平洋、地中海、南極、北極どこにでも短時間で指定した海域に行けます。スカンク作戦が成功してもそれは、一時的なもので気象兵器がある限り、次々と作戦を実施するでしょうね」 つづく
2021/08/05
コメント(4)
「エリーゼ、気象をコントロールする技術も、ボントスは持っているのですね。重力を制御する科学があれば、それほど難しいことではないのでしょう」「そうです、理屈は簡単です。海水の温度を上げ、大量の水蒸気を蒸発させ雲を作れば、台風の元になるのです。渦巻き状の雲が発生し熱帯低気圧になり1秒間に17m以上の風が吹くと台風になりますよ」「すると特定の海面を設定し、その場所を何らかの方法で水温を上げれば、台風やハリケーンになるのですね。進路変更も季節風や偏西風を変えれば比較的、簡単にできるのでしょう」「人類を困らせる手段は、まだまだ数多くあっていずれも机上プランではなく、いつでも実行可能です。ボントスレベルになると作戦遂行に当たり、論理的な思考を用いるから、彼と対抗するには突拍子もないアイデアが必要になります。カメぱっぱさんが考えたようなものが結構、成功するのです」 クリサーラが笑顔でうなずきます。「今までも彼の機転で何回も助かった経験がありますよ」 モニターに映るエリーゼもほほ笑みを浮かべていました。「カメぱっぱさん、これからもあなたの貴重な意見を訊かせてください。しかし、今回のスカンク作戦が始まったら、私は地上に脱出したいです」 すかさずカメぱっぱが応えます。「そうしてください。エリーゼ、あなたは側近の方を連れて、一時的に地上へ疎開すればいいパッパ。あなた方が短期間居なくなっても、ボントスたちは、それどころではないからね」「ありがとう、海底王国には私専用の住居カプセルがあるから、その中でスカンクが全部捕獲されるまで、大人しく待機しています」 クリサーラがエリーゼに問いかけます。「たくさんの昆虫を放つ、生物兵器のあとは台風などを作る気象兵器と、ボントスの知能は限りがありませんね。原子力程度もコントロールできない人類は論外と言わざるを得ません。もし、台風やハリケーンを矢継ぎ早に発生させたら人類はパニックを起こすでしょう。エリーゼ、その装置は重力制御装置と同じように持ち運びができる程度のものですか」「1m四方の小さな箱に入ります。南極、北極でもハリケーンは簡単に起こせますよ。その科学技術を地球上で役立てれば、異常気象なども解決し人間と調和して明るい未来に繋がるでしょうね。最初の頃、私は人間を野蛮で原始的な生きものと、考えていました。その訳は、前から言っているように地球の汚染だけでなく、人間同士の殺し合いがなくならないからです。しかし、トマソンや他の方々と知り合い、お話をすると、私の考えが変化したのに驚きました。人間にも冷静沈着で思慮深い人々が大勢いることを」「エリーゼ、私も同じ体験をしました。地下宮殿にいるとき地上で起こる多くの事故や事件、国際情勢、紛争などの情報をキャッチしていたのです。だから人間の愚かさと無知は十分に知っていました。それがお目にかかるほとんどの人は、かなり優秀でむしろ尊敬に値する方々でした。エリーゼ、地底王国、海底王国、人間社会どこにでも愚かな人々や素晴らしい人々、種々雑多な生命体が入り乱れ、生きていると改めて痛感しました。話を元に戻しましょうか。重力制御装置や気象コントロール装置などは現在あるものを破壊しても、すぐに生産出来るのですか」 つづく
2021/08/01
コメント(4)
全7件 (7件中 1-7件目)
1