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「私が言いたいのは、地底人も海底人も自分たちが居る世界では一生、観ることのない素晴らしい地表での光景と自然な風と空気。それらを手にするだけでなく人類との共存が不可能なら彼らを制圧して傘下に置くしか選択肢はないのです。そして次の段階では・・・」 言い淀むザビエスにクリサーラが優しく声を掛けます。「なんですか、ザビエス」「彼らの卓越した科学水準から、当然、太陽系とその他の銀河系宇宙へ進出を狙います。その足場になるロケットを打ち上げる基地、地上が必要でそれの建設と資材の確保、人材養成を人間に命令するシナリオですな。それならば好奇心旺盛なブッチャ―も協力し、あわよくば未開の星をひとつほど頂戴して、自分が独裁者として君臨したいのかも知れませんね」 それまでみんなの意見を黙って聞いていたクリサーラの体が、白く光りました。「デルフミューム、ザビエスの意見は筋が通っています。ブッチャーはデルフミュ―ムの弟うんぬんよりも、赤膚族として彼の権威、征服力があれだけのことを短期間でやり遂げたのは事実です。海底人の力を利用して再度、地上侵略をすれば次に地球の外を狙うのは自然の流れですね。ほとんどの知的生命体が持つ欲望は、際限がないのです。ただし彼の目論見は海底人の方も万事承知していますから、お互いに利用できる間は、良好な関係ですが、そのバランスが崩れれば手を切るかも知れません。いずれにしても人類やここにいる私たち生命体が平和を求める気持ちをないがしろにして、自分たちだけの欲望を叶えるために地上侵略を果たすなら、黙って見ている訳にはいかないのです。そこで海底人側のウイークポイントを探りますが、カメぱっぱさんは、何か気が付きましたか」 いつの間にかザビエスの左肩にピョコタンと座り、短い両足をブラブラ揺らしていたカメぱっぱが応えます。「ワイヤレントの右側下にある大きな黒い箱から、霧状の水蒸気が威勢よく噴出されているパッパ。あれは強力な加湿噴射器だね。前にザビエスと海底王国に忍び込んだとき、僕らの味方、エリーゼさんが教えてくれたよ。海底人は乾燥した空気に弱く、いつも湿った空気が必要だってね。あの箱は、ワイヤレントたちが持ち込んだのに違いない。人間社会では筋肉ムキムキマンがもてはやされるが、それに反して海底人は手足が長くひょろっとしているパッパ。人間の子供とぶつかっても彼らが倒されると思う。頭の中身は別だが海底人の体は、人類が進化したときの姿に近いかも知れないね」 クリサーラは出来の悪い子が、たまに名解答をしたときに褒めるような笑みを浮かべました。「ザビエスと短期間、海底王国へ潜入した時間は無駄ではなかったようです。人間が乾燥肌を嫌がる次元とは違い、彼らは命がかかっているのでしょう。それでなければ、わざわざホワイトハウスに強力な加湿器を持ち込み、自分たちのウイークポイントを教える必要はないのです。人類や私たち地底人にとって酸素がないと生きていけないと、同じくらい、海底人も高い湿度が生きるための条件の一つでしょう・・」 つづく
2021/05/27
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トマソン大統領は、海底人との交渉が始まる前に会議場の天井3ヶ所に超小型のカメラ付き盗聴器を仕掛けました。会議内容をリアルタイムでクリサーラたちにも観てもらい知恵を借りたいと事前に連絡したのです。盗聴器製造のプロ、モハイヤベリーも今回は、調べる時間がなかったので発見されません。 大型モニターに映し出されるトマソンと海底人の丁々発止な話し合いを黙って見ていましたが、後半はダレて各々が気ままな意見を言っています。 赤膚族ザビエスが発言した内容は、皆の声を代表しているようです。「海底人のワイヤレントが一見、怪しげで柔らかそうな言葉を使っているが、それを分析すると自分たちの要求に逆らえば、人類へ未曾有の災害を与えると、完全に脅かしている事実だ。それの裏付けとなる軍事力や総合科学力は、海底人のほうが人類よりもはるか上をいっているのも本当だから、ただのはったりではない。当分の間、あちら側の命令通りに行動し、実行が不可能なときには、早めに知らせて善処を願うしかないだろうな。よくよく考えてみれば彼らの要求は、汚した地球を正常に戻せという当たり前のことだから、それに従うのは悪いことではない。しかし海底人が、それだけの理由で地上へ出てきたのかは、疑問だ」この声が大多数を占めていました。 もじもじ体を揺らせながら、久しぶりにカメぱっぱが口を開きます。「地底人のブッチャーが海底人と組むだけでなく、人間との交渉する場まで対等な地位で登場するには、なんか意味があるよパッパ。兄ちゃんのデルフミュームは、どう思うの」「弟は、海洋汚染の浄化よりも自分の欲望を優先するはずです。海底人と共同して人間を支配するのが彼の願望ですからね」「と、いうと」「まず赤膚族の数を増やすのが最大の目的で、海底人の科学と知能を借りるなら比較的、簡単だと考えたのでしょうね。それにニューヨークで滞在したときに彼は、高層ビル街の魅力を十分に味わっていたから、あそこの生活に憧れたのでしょう。ザビエス、あなたはどう思いますか」「確かにニューヨークの摩天楼は、あらゆる知的生命体を引きつけます。私もその中の一人ですから。しかしブッチャーと海底人が手を組むには、もっと他の野望があるような気がします」「例えば?」「私たちのような地底人は人間社会の流す電波から、モニターへ映し出される壮大な風景や生き生きとした野生動物を見て感動を覚えました。地底や海底にいる生命体は、一生、じかに見る機会もないのです。かと言って人間が支配する地上へ出れば、我々は捕縛されるか殺されるかのいずれでしょう。人間が否定しても彼らの歴史と生態学から必ずそうするのは、間違いないのです。宇宙人を描く書物や映画の大部分は、地球への侵略者で悪者になっているのも人類の愚かさを表していますね。常に地球人は自分たちを中心として考えるから、それ以外の異星人を宇宙人と呼びますが、自分たちも宇宙人の一部なのを忘れているようです。・・・」 デルフミュームがしびれを切らしたように、せっつきました。「ザビエス、人間考察は別なときで。海底人の真の狙いがどこにあるのか、それにブッチャ―は、どんな役割なのか、話を絞りましょうか」 話の途中で水を差されたザビエスは、不愉快な顔を浮かべ声が大きくなります。 つづく
2021/05/23
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頭脳明晰なトマソンも国務長官の顔をちらっと見て反撃しようとしますが、かなり一筋縄ではいかない相手です。「ワイヤレントさん、あなたの提案を拒否する権限は私には、ないのですか、もし拒否すればどうなるのですか」「前に言ったやんか、人類が有史以来起こした数々の大罪、特に地球全体をゴミ溜めにしたその結果、環境汚染と温暖化、森林破壊の山火事や洪水などを反省すると同時に悔い改めないと、我々が力の行使をしますやんとね。この会談は、あんさん方の顔を立て一見、対等の交渉な場としたが、それは見せかけでこっちが命令し、そちらはんは、それを実行すればええのや。もし人間の中で反逆する者がいて、あんさんが困るならこっちで片をつけてもかまへんで。人類ってのは、スケープゴードが必要な生き物だと承知しているさかい。ブッチャーはんも人間を支配する前に大掛かりなデモを行い、その結果、従ったのと違うの。ワイたちが先日、太平洋で海面を上昇させたデモ。あれで人類が恐怖を覚えないなら、人口密集地でやればもっと派手なイベントになるよってな。それで数万人が死んでもワテは知らんや。 重力制御装置は簡単にビル群を持ち上げるだけの恐ろしい兵器よ。トマソンはん、どうや、少しは理解してくれたかのう」「分かりました。問答無用ですよね。それでは、あなたの要求を全て飲むとして会議を進行しましょうか」「それがよろし、ほな、この会議も1日目の時間に入っているさかい、進めまひょう。まずこれから出す資料をもとに各種材料を集め、工場で精製する手順を教えますさかい、2ヶ月後には完成しなはれ。我々3人はその頃に来るから、ニューヨークに豪華ホテルを用意するのや。天井まで7m以上あるのもブッチャ―専用で頼んまっせ。そこから軍用ヘリでここまで飛ばせば安全や。さあ、次の議題に移りまひょうか」 ホワイトハウスから32キロ離れた6階建てのビルの一室に、クリサーラとデルフミューム、ザビエス、生田緑地動物連合、人間5人が大型モニターに映し出されたトマソンたちの会議を見つめていました。 つづく
2021/05/19
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トマソンがワイヤレントに向かって第一声を放ちました。「人類が海洋汚染を長期間にわたり行ったことは事実です。その責任を認めたからこそ、こうやってあなた方との交渉を始めたのです。まず返書で明らかにしているように、汚染物質を除去する方法とその期間は、人間側のスケジュールで実施します。海底王国側が一方的に期限を決めて、それを我々に押し付けるやり方には断固、反対します。私たちとあなた方は、対等のパートーナーであって片方が命令者ではないはずですから。それに・・・」 ワイヤレントがトマソンの話をさえぎります。「ちょっと待ってつかあーさい、あんさんがトマソンはんやな、会議ってもんは、まずお互いの者を紹介して、当たり障りのないよもやま話でスタートするのが筋と違うの、あんさんみたいにストレートに本題に入ると、トゲトゲしい無味乾燥なものになりまっせ。それにもうひとつ言いまっさ。あんた方人類と我々海底人は、対等やないのや、こっちの要求に逆らえば、ワイたちはこのまま席を立って帰りますがな。その結果、どこかの街や地域が消滅しても知らんで。どうやのトマソンはん、わかってくれたかの」「それは交渉と言うよりも脅迫ですな。最初から人間を見下して話すなら会議にはなりませんよ。そこにいる巨人のブッチャーが地球を支配したときと同じですな」「劣等民族を支配するのは、あんさん方がよくやる手でっしゃろ、その手口を使わせてもらいましたやん、ブッチャーはんは、どう考えますの」「ワイヤレントの言うとおりだ。人間社会の歴史はジェノサイド、集団殺戮の連続だ。俺が地上へ進出したとき多少は人間を殺したが、その数は人間同士の戦争に比べると、比較にならないくらい少なかった。あんた達がよその国へ爆弾を無差別に落とし民間人を大勢殺しても、勝利すればそのことは、正義の闘いになる理屈は、今も当てはまるだろう。トマソン、あんたとは何回か会って話したが他の者と違いスタンドプレイをしない筋を通す数少ない奴だ。ワイヤレントも駆け引きなしに話した方が、無駄な時間を省けるだろうよ」「よっしゃあ~、2点だけは譲れないのや。まず汚染物質の除去期間は、そっちの要望に近い2年間に延ばすさかい、それのチーム編成はこっちの言うとおりにしてつかあさい。その指揮官は、すでに人類全体を統治した経験がある・・ここにいるブッチャーが適任や。2ヶ月後にまた来るから、それまでに高層ビルをニューヨークからひとつ提供してもらうわ。ワイたちのも丸々1棟頼んまっせ。ほいで世界中の基地へ届けておくれな。それは汚染物質を取り除き、海を浄化する自然界から採れる細菌や物質を教えるから手配しなはれ。別なチームは、現在も海に垂れ流している汚染物をただちに止めさせ、それに代わるシステムを構築するよう命令の権限を与えるのや。そのチームのリーダーは、モハイヤベリーとするさかいあんじょう頼むわ」 人類と会う前に周到な打ち合わせをしていた3人は、チェスや将棋ゲームのように相手の反応を見ながら詰める手段を練っていたのです。 つづく
2021/05/15
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「汚染物質の除去方法とその期間、他の打ち合わせをしたいから、3日後にホワイトハウスを訪れる。なお海底王国の潜水艦は人間の製造したものよりも速くて深く潜れるから、護衛の名目で近くにいることや、追尾するのを禁じる。半径30キロ以内に接近するものは、無条件で撃沈する。我々、海底王国の全権大使は、ゲバスチャン・ワイヤレントと、その補佐役、ジョーゼット・モハイヤベリーでその2名だが、潜水艦の乗務員は艦に留まる。エバレット海軍基地までは、こちらの潜水艦で行くので、それまでの海上警備と基地からの運送に対する安全保障は、人間側の責任とする。もし、事故やトラブルを生じ派遣団の生命がおびやかされたとき、会談は中止となり、海底王国への準宣戦布告と判断し、アメリカ合衆国にある2つの軍事基地を破壊することを宣言する。なお我々が地底にある岩牢から解放した、赤膚族、メルトン・ブッチャーを今回、派遣団の特別顧問として同行させる。彼は海底人の客人として海底王国に居るので、人類もそれなりの待遇をするよう求める。彼の立場は、オブザーバーではなくて海底王国側のコメンテーターとして出席する。今回の会談にはクリサーラと地底生物、生田緑地から来た動物たちの参加は許可しないので、ホワイトハウス内に立ち入らないようにしてもらう。会談者メンバーは、トマソンを入れて3名、会談時間は、1回が4時間、2日間続けて都合8時間とする。我々の宿泊施設は、ホワイトハウスまで30分以内にある高級ホテルと天井まで5m以上ある部屋を用意するように。ホテルからの行き帰りに関する安全確保も人間側の責任とし、トラブルが生じたとき、会議は即刻中止する。その際のペナルティーは前に述べたことを即、実行する」 海底王国からの返書が届いた3日後に、ワイヤレントを代表にした一行は、ホワイトハウスに到着しました。海底人の要望でテレビ中継はなしにした上、形だけの歓迎式典もありません。世界の人々は、交渉の内容と人類の軍事力では勝負にならない旨を事前に知らされているだけでした。 手を振ることもしないでワイヤレントたちは会議室に入ります。隣にいるモハイヤベリー、それとブッチャーが続きます。アメリカ側は、トマソン大統領と国務長官のマーク・ボンベイ、国防長官、ロバート・マティオの6名が席に着きました。かなり前に説明しましたが、人類と違って知能水準が高い地底人や海底人は、相手側の言葉をリアルタイムで習得するか、瞬間自動翻訳機機で話すので会話には不自由しないのです。 派遣団が着く前にトマソン大統領の提案で、わざと大きな丸テーブルにしたのは意味がありました。海底人側にイニシアティブを取らせないためにも、同等の配置にしたつもりです。しかし4m近いブッチャーが座高の高い椅子へ座ると、他の者は見下ろされた感じになり、効果はなくなりました。 つづく
2021/05/11
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モハイヤベリーが再度、怒鳴ります。 「いいかげんにしろ、お前には勝手に決める権限はない。ボントス王の承認が必要だ」「あれェー、全権大使に任命されたさかい、いいと違いますの」「馬鹿をいうな、あれは人間相手に交渉するときだ。ここではお前に決定権はない」 にやにやしながらブッチャーが間に立ちました。「モハイヤベリー、海底人が地球表面を制圧する目的を教えてくれ」 急に質問されたモハイヤベリーは、数秒間考えます。「私ごときがボントスさまのお考えを全て理解できるわけがないので、私の推測で答える。地球から宇宙に飛び立つにも地上での基地が必要になるので、それを人間に手伝わせるのが一つ。それより最大の目的は海を汚し続けた人類へ、その落とし前をつけてもらうことだ。未来は当然だが、これまでに汚したものを取り除き海洋生物だけでなく地上生物にも恩恵をもたらすのだ。地球温暖化をストップさせるためには、CO2の排出を抑えるだけでなく、化石燃料の使用を完全に禁止する。なぜなら異常気象の要因はすべて人間がもたらしたのだから。我々が地表に出て監視、管理するのは、それらを矯正し早い時期に地球を正常化させるためだ。汚染物質をまき散らし、愚かにも戦争を繰り返す人類のエゴをいやってほど見てきた我々の当然の権利だと思うが」 ブッチャーは軽く手を叩きます。今度は前と違い音がして周囲の空気を引き締めました。「すばらしい、あんたの考えは。多分、ここの国王と同じだな。ワイヤレント、地上にはいつ出発する。それに簡単な打ち合わせを今、ここでしよう」 海底人2人と地底人、赤膚族1人の会議が終了した翌日、海底王国の派遣団はホワイトハウスへと出発しました。 49代目アメリカ大統領ジェームス・トマソンとそのスタッフが海底王国からの要望書(実質的な命令書)に対し期限前日までに回答書を送ります。 それから4日後に次のような返書が大統領宛に届きました。<まず我々の要望書に率直、かつ速やかに回答したことを評価する。ただし、これからの海中汚染防止策とその実行期間は、こちらの要求よりもかなり遅く、期限も先送りとなっているのは容認できない。現在の汚染された海中を基準値以下にする具体的な方法は、我々が送り込む指導員の命令のもと早急にチームを組み、指定した海上の27ヶ所で汚染物質除去の作業をスタートさせる。それらの経費は全て人類側が負担すること。なおこれからの交渉は、アメリカ大統領のトマソンだけとするので、例え各国の首脳が従わなくても、海底王国は関知しない。異分子を監視、コントロールするのはトマソン側の役目である。人間社会が国家、民族、宗教、文化の違いでイデオロギーが大きく異なるのは承知し、地球全体の視野で物事を考えられなくても、それらは人間側の問題であって、我々海底人には関係ないので、一切関知しないことを改めて宣言する。もし人間の一部で無謀にも我々に闘いを挑んだとしたら、ちゅうちょぜず瞬く間に抹殺することを教示する。海底王国の軍事力は、人類レベルの数百倍あるので通告する・・・・> つづく
2021/05/07
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「正直なところ、あんさんとは気が合うな。ワテのボス、ボントスはんも海の中はもう飽きたので、これからは銀河系宇宙へ旅をして気に入れば星の一つや二つ、自分のものにして新しい生命体を創る実験場にすると言っているのや、それには地上でさんざん我が物顔で威張っていた人間が邪魔くさくなってきたのよ。どうや、ワイも腹を割って話すからあんさんもそうしてくれへんか」「俺の配下で気を許せる奴がいてな、グラシオラズって名で、そいつがあんたと同じような話し方をする。あんたの名前を教えてくれ」「ほいな、わいはワイヤレントや、こいつはモハイヤベリー、ジョークが通用しないカタぶつだが気はいい奴だから頼むで」「いいコンビだな、これから俺のことはブッチャーと呼んでくれ、ワイヤレント、お前のボスは俺を地上へ出して何をやらせようとするのだ」「海底王国として人類に実現不可能な要求を突きつけ、早い時期に我々が地表に出て統治する腹だったのや。それがある事情でな、延期になったんや、そいで人間を支配したことのあるブッチャーの知識が必要になったのよ、あいつらを一時的にも支配したあんさんの知恵を貸してほしい。ここまではいいでっか」「ある事情ってなんだ」「それはな、・・・」 モハイヤベリーが怒鳴ります。「それ以上は言うな、ワイヤレント、まだブッチャーを全面的に信用するのは気が早い」「こっちもブッチャ―だけにブッチャけて話せば信頼してくれますがな。それにこの岩石人間は、相手の脳に入り込んで考えを読み取るのも出来るんやで、嘘を言ったらバレルやん」 黙ったモハイヤベリーに代わってブッチャーが声をだします。「俺が寝ている間に脳波を調べたな。よし、俺もストレートに言う。お前ら海底人は、・・・しゃくだが地底人より科学力、知能、応用力、創造力、すべて上だ。俺は人間族には文化水準を別にして勝っていると自負していたが上には上がいたな。よ~し、話を続けようぜ、その事情とやらを聴こうか」「この国はな2つの国が連合しているんや、カスマヨル公国とコルピース王国でな、公国の皇女エリーゼが地上進出に反対して良い顔をせんで、難儀しているのよ。政治権力のバランスシートはボントス王が圧倒的に上なんやが、この国における安全保障や管理、運営を仕切っている巨大スーパーコンピュータがいるんや。そいつは自らをマザーと呼び、絶対的な権力を持っていてな。当然、感情もあってワテたちよりも賢くて、もう、わかるやろ」「そうか、マザーとエリーゼが組んだな。するとあんたらも迂闊に手を出せないわけだ。マザーに代わるスパコンの完成までどのくらいかかる」「ほらみー、モハイヤベリーよ、ブッチャ―はんに隠し事なんか通用しまへん。完成までは超特急で半年と読んでいるのや、現在は4人体制だが、10人体制、24時間フルでも半年はかかる」「そうか、俺の役目がわかってきた。人間族を脅かしながら妥協案をちらつかせ、時間稼ぎをすればよいのだな。ワイヤレント、俺の報酬は何を考えている」「さっき言った、赤膚族の数を増やすのが最大の報酬と違いますの」「地表の一部を譲ってくれ、あとは海底人の自由だ」「どこよ、その一部って」「オーストラリア大陸だ。あそこの気象を熱帯雨林にして、動植物たちの楽園にする。そこへ俺も住む」「かまへん、かまへん、なんなら他の大陸もつけようか」 つづく
2021/05/03
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