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ブッチャーと海底人2人の会話は続きます。「これからいう俺の部下も岩牢から連れ出して、ここに運んでくれ」 3m70㎝の巨体を長いソファーに投げ出している岩石人間は、海底人の前でも横柄な口を聞き、相変わらず態度は大きいのです。ワイヤレントはそんな巨人を嫌いではありません。「さすがや、ワイたちの企みなんか百もお見通しや、決まっているやん、あんさんを助け出したのは、こっちの戦力にしようと考えたさかい。そろそろ働いてもらう時期にきたのよ。部下をこっちに運ぶプランを立てるから安心しなはれ。モハイヤベリー、いいやろ」 一歩後ろにいるひょろ長い男が落ち着いた声をだします。「国王の許可がでれば、すぐに手配する。それよりもお前はストレートに話し過ぎるぞ。この地底人をどこまで信用できるのか、まだ分からないのだ」「そんな流ちょうなことを言ってる暇はないのや、ワイはな、ブッチャーはんは自分と赤膚族の利益になることなら喜んで協力すると、読んでいるのよ」 薄笑いを浮かべたブッチャーが手を叩く動作はしますが、音はしません。「うまい、うまい。一人が俺に反発し、もう一人は俺のふところに跳び込み心を通わせるって、心理学の初級レベルだな。まあ、いいだろう、俺は、なにをすればいいのだ」「あんさんが心理学までマスターしているなんて、かなわんな~、ほな、正直にいいますやん。これから人間を制圧するのにタイム・スケジュールを作り、その手順にそって進めたいのや。我々も赤膚族と同じで数が少ないから間接統治にする予定よ。ブッチャーはんの要求をすんなりと受け入れるので、あの時と同じようにニューヨークの摩天楼から世界を動かしてみなはれ。ただし今回は我々と共同ですがな。あんさんが地上で行った赤膚族の減少を止めるため、人間との掛け合わせをした研究なんて、あんなケチなやり方はここではしまへん。海底王国の最適人口をコントロールするため、動き続けている生命体生産工場の一部を貸すから思う存分、作こうてつかあさい。人類の科学よりも200年以上進化した海底人は、遺伝子さえも創り、新たな生命体を誕生させるシステムもあるのよ。それ以外に地上へ進出した目的があれば聞きまっせ」「人間族よりも進化した俺たちが、地球の次は太陽系宇宙とそれを包括する銀河系宇宙に興味を持つのは自然だろう。過去においてそっちは海底で、俺の方は地底に住んでいたからな、ロケットを飛ばすにしても地上に出て発射場を作る必要があった。そのためにその都度、人間族に許可を求めるなんて七面倒臭い手続きは嫌だったのだ。これからは奴らが飛ばしたチャチなロケットよりも高度なものを短時間で開発して、宇宙に行く準備に入ろうと思う。それらの企画開発を共同で進めるのは、どうだ」「おもろい、いいな、それ、ワイも昔から宇宙に興味があったんや・・・」 つづく
2021/04/29
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「ワイヤレント、お前はたまにずば抜けた策を思いつくな」「たまには、余計でっしゃろ。モハイヤベリーと一緒にブッチャーはんと会って話を進めてかめへんか」「モハイヤベリー、どうする、こいつと喧嘩せずに行動できるか」「私はかまいません。彼が海底王国のメリットになると考えるならばね、ただし、間違いをするのが玉に瑕です。その時は、私が注意します」「ケ、なに気取っているのや そうと決まったら早うブッチャーはんに会ってこれからの作戦を立てようや」 海底王国の西側に地表から持ち込んだ樹木と種から育てた花と果物がバランスを考え茂っています。それらの温度や湿度を管理するために中型の透明ドームに包まれた中にゲストハウスがありました。 異なる知的生命体を歓迎するゲストハウスは、過去に2回使用され、2回とも海中に水没した円盤から救出した異星人たちが利用したのです。 人類よりも遥かに進化した海底人との交流に異星人は、感動し帰還してから約14年後に生命体の細胞を活性化させる菌をお礼に持ってきました。 その菌は動植物を病原菌から守るだけでなく、本来持っている寿命を2倍から3倍に高める成分も入っているのです。海底王国の歴代の王は、自然を崇拝していたので海底人だけには、この菌の飲用を禁止していました。 地球上にある細菌ならば問題はないのですが、他星からの菌は、外来種に当たるので細心な注意が必要だったのです。そんな最適な環境のドーム内にいるブッチャー、タブレットを使い地上の情報はこまめに仕入れチャンスがあれば、再度人間支配の隙をうかがっていました。毎日2度の食事内容は申し分なく、サービスや待遇も合格点ですが、赤膚族同士の話し相手がいないのでストレスがたまる一方です。第三地下層の別な岩牢にいた部下のグラシオラズは助けられずに、そのままなのは合点がいかないので明日にも交渉しようと考えていました。国王のボントスが2人の側近を連れ、1回だけ挨拶に来て約1ヶ月は経っていました。今朝も食べたことのない甘酸っぱい果物をむしゃむしゃ口に入れ、人間が作った怪獣映画を観ています。都市を破壊するシーンは迫力があって立体画面に身を寄せましたが、ストーリーも怪獣のキャラも不十分で自分が創れば、これの何倍も楽しい映画にするのにと思っていました。ちなみに映画のタイトルは<ゴジラ>です。(一説によるとゴリラとクジラを合体させたらしい) 半透明のドアが左右に開き。2m以上ある海底人が2人、にこやかに入って来ました。「ブッチャーはん、あんさんが退屈でイライラしていると聞いたさかい、どうでしゃろ、そろそろ地上に行って人間どもを、おちょくるなんて企画は乗りまっか」 口先が軽いだけでなくアゴそのものが前にとび出している者が大げさなジェスチャーで話かけます。海底人が見かけによらず高い知能を持っているのを知っているので用心しながら応えました。「俺を岩牢から救い出したのは、海底王国の利益に繋がるからだろう。それの一発目が人間族との折衝か、どうせお前らのお供で行き、向こうにプレッシャーを与えるのが目的だろうよ。俺を利用するからには、それ相応の見返りも必要なのは承知しているはずだ」 つづく
2021/04/25
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モハイヤベリーが珍しく声を荒げます。 「あ奴は見掛けに寄らず、知能や洞察力が優れ我々の見張りの者を手なずけ海底王国の正確な緯度や内部構造、科学水準までリサーチし入手していますぞ。直近では私の判断によって偽情報を渡すように細工をしたが、どういう訳か薄笑いを浮かべ受け取らないそうです」「岩石人間の知能は人類よりもかなり高く、ここに運んで来たとき寝ている間に脳波を光に変換しスペクトル分析したら、創造力と応用力は我々よりもやや劣るが、記憶力はほぼ互角という数値がでた。微量だがテレパシーの念波まで出せる。そのブッチャーを再度、人間統治の代理として活用すれば海底王国にとって大きな利益となるのだ」 ワイヤレントが不満の声を上げました。「すんなりとブッチャーはんが、我々の命令を効くとは思わへん」「地底人、赤膚族が地表に出て人類を支配した目的は何だと思う、ワイヤレント」「たしか赤膚族の大幅な人口減少を食い止めるのには、種族保存の方法を人間と掛け合わせる研究で解決しようとしたやん、それらが途中で挫折したままや」「そうだ、私は赤膚族を消滅させない最良の方法を考えた。ここにある海底人、生産工場の一部を使用して彼らの赤ん坊を作ってやれば、ブッチャ―だけでなく兄のデルフミュームもこちら側の味方になるかもしれない」「するとクリサーラたちとデルフミュームは分断し、こっちには有利に働きますな」 モハイヤベリーが満足そうな声を上げました。ボントスが鋭い目つきに変わります。「それには、もっとDNAを含む生体サンプルが必要になる。そこでブッチャーとの交渉はモハイヤベリー、お前に任せる」 不満な顔つきになったワイヤレントの方にボントスは顔を向けます。「ワイヤレント、お前を全権大使にするから人間との交渉にあたれ、いいな、実力行使はまだ早い。マザーとエリーゼが結託して人間側に立てば、私たちは勝負にならない。かといってわざと交渉を伸ばせば足元を見られる。マザーに代わるスーパーコンピュータが完成するまで我慢しろ。ワイヤレント、お前の口調でのらりくらり相手をし、かつイニシアティブはこっちで持つように考えてくれ」「あんさんは、さすがお目が高いのう、ワテを交渉係にすれば、こっちが有利になるよう策を立てるがな。それにサプライズとしてぜひ連れて行く者がいまっせ」「誰だ、まさかエリーゼか」「そんな訳ないでっしゃろが、毎日至れり尽くせりの接待に飽きてきたデカ巨人のブッチャーはんや。少し前はニューヨークの高層ビルで人間支配の指揮をとっていた奴が、なんの因果か再び、人間を制圧するための片棒をかつぐ訳や。本人にはワテが説得するさかい、安心しなはれ」 つづく
2021/04/21
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「かなり前からエリーゼはマスタールームで作業をしていた形跡がある。彼女がマザーを手なずけたのだろうな・・それは我々が予定してる活動の脅威になる。マザーが敵になったら、こちらには勝ち目はない。王国の心臓部といっても過言ではない力を持ち、ひとつの兵器と考えればそれに対抗できる武器はない。残された手段はエリーゼを奴から遠ざけるのが理想だが、彼女を軟禁状態にすればマザーが黙ってはいまい」 ワイヤレントが薄笑いを浮かべます。「ワテに良いアイデァがありまっせ。エリーゼはんは、母親を慕っているから週に1回は見舞いに行っているやん、そこを利用するのや、カスマヨル公国の宮殿に入る寸前に拉致して、コルピース王国だけにある牢獄に閉じ込めれば万事上手くいくと思うがの~」 モハイヤベリーが首を振りました。「彼女の側近が3人、常にそばにいるのと、拉致している現場をマザーに見つかれば、手痛いしっぺ返しが待ってます。実力行使は危険だと思うが」「他に考えがなければやるしかあらへん。ボントスはん、どうするのや」「モハイヤベリーが言うとおり、エリーゼを拉致、監禁するのは、完全にマザーを敵に回すときだ。我々がそれまでに奴をシャットダウンする方法を探し出すか、スーパーコンピュータを作っていないと、この王国は、大混乱を生じ致命的な破壊に繋がる。ワイヤレント、マザーに代わるものを考え開発するのに、どのくらいの時が掛かると思う」「そうやな、半年は掛かるやろ」「4人のスタッフがすでに開発を進めているが、約2年と言っている。それまでマザーには表立って逆らわず、ことを進めるしかないのだ」「人間どもに有利な情報を与え、ワイたちが不利になってもしょうがないというわけや」「止むを得ないだろうな、ここは一旦、実力行使を避けるため、人間たちの回答を呑んだ形にするしかない。私には、まだ秘策があるからな」「なんや、早う教えてくんさい」「聴きたいか、ワイヤレント」「もったいぶらずに早う」「お前の真似をしているだけだ。どうしようかな」「いい加減にしなはれや、あんさんは、王様で威厳ってもんが必要やんか、ワイとは違う」「都合が悪くなるとワイヤレントは、正論を押し付けるな。ま、秘策かどうかは別だが、ゲストルームで毎日、酒池肉林の接待を受けている赤膚族、ブッチャ―を利用するのだ」 つづく
2021/04/17
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ボントスはワイヤレントの性格を幼いときから知っているので下手にでます。「お前とモハイヤベリーは私が腹を割って話せる唯一の友だ。もったいぶらないで早く話せ」「すまんのう、ワテの癖なんや、最高にイイ話って格好つけたいやんか、そんで、エリーゼがマザーと喋りだしたらワイは飛び上がったぜ。それはそうとエリーゼが最近、急に輝いて見えるのは気のせいかな、ボントスはん」「ワイヤレント、私もそろそろ・・」「だめやでぇー怒っちゃあーー、マザーは、エリーゼだけに人間情報、それもホワイトハウス内の会議内容を分析したものを、しっかり報告しているのや、それもワテらが聴いているのと違う内容やで、と言うことは、マザーの奴、エリーゼと手を組んだということやんか、しかし、あいつのスイッチを切るなんて到底不可能や、ここは今までどおりに扱って大事な事柄は隠しあんじょう良く働いてもらうしかないと思うが、どうよ」「薄々、そんな気がしてはいたがな。エリーゼがマザーを手なずけたに違いない」 モハイヤベリーが小さな声をだします。「この中は、大丈夫ですかね」 ワイヤレントが大きな声で応えました。「盗聴器製造の天才、ワイがここを定期的に調べているのや、それにもしあれば、ワイの腕に仕込んだ警報装置が鳴りだすやん、安心せい。エリーゼだけがマザーとツウツウなんておかしいやろ、どうするんやボントスはんよ」「2人には黙っていたが、先月からプロジェクトを作りマザーを遮断する手段かあれ以上のスーパーコンピュータを考えている。最近、私の呼びかけに反応がわずかだが遅くなっていた矢先、2日前に他の者へ人間情報を伝えている証拠をつかんだ」 出っ張った口先からツバを飛ばしてワイヤレントが詰め寄ります。「あんさん、さっきワテらを腹を割って話せる刎頚之友とぬかしたのに、そんな大事なこと、なんで黙っていたのや」「すまん、ワイヤレント、それにモハイヤベリーも。プロジェクトといっても4人のプログラマーにチームを組ませ、マザーに探知されない部屋で作業をしている。まだ確固たる証拠がないのにお前たちに言えば、すぐ行動に移るからな、それだけは避けたかった。マザーには当分、現在のままでいて欲しいから。ワイヤレント、刎頚之友とは言っていないぞ」 モハイヤベリーが軽くうなずきました。「ボントス王の判断は正しかったです。ワイヤレントがそれを聞いたらマザーを破壊するか電源を強引に切って、この王国を危機に陥るはめにしたでしょうから」「こら、モロヘイヤのバカたれェー、ワイはそこまでアホと違うわい。マザーを壊そうと武器やハンマーを持って近くに行ったら、高圧電流を流され感電死するやんか、それに電源を切ろうにも何百のスイッチを決まった順番で切らないと攻撃され、黒コゲになるワイ」「私はモロヘイヤではない。モハイヤベリーだ。それに先日、エリーゼとその部下がマザーのスイッチを切って点検作業をしたとの報告があったのです。スイッチを切る順番は、毎日変更になるので不可能と思っていたが、エリーゼだけは関係なさそうですな」 ボントスはワイヤレントが話そうとするのを手で制します。 つづく
2021/04/13
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クリサーラが透き通った声を発します。 「先ほどまでは、私たちの発言を海底王国が盗聴している心配があったので多少は控えめにしていましたが、味方のマザーが聴いているだけならば、本気でストレートに話しても大丈夫でしょう」「そうですね、それでは正直に話します。地底人、赤膚族のブッチャーが地上へ進出を果たしたときは、電子パルス砲やクローンロボットで脅迫、監視を行いました。海底人ボントスが人類を制圧するときに用いる最大の兵器は、重力を制御する恐ろしい兵器です。これに対応するものは現在の人類では考えられません。もし使用されればなすすべもなく敗北するしかないのです。もしボントスとの交渉が長引き、その過程で海底人のウイークポイントを見つけて、そこを攻撃する武器を開発するにしても時間が掛かるでしょう。交渉ができることすら希望的な観測です。次から次へと矢継ぎ早に難問を我々に投げかけてギブアップさせる気なら、最初の回答後にボントスは、アクションを起こすはずです。そこで考えられるのはブッチャーと同じで人類社会を治めるには、間接統治が予測できます。その理由はザビエスやカメぱっぱの報告で海底人も人口がかなり少ないだろうと、聞いているからです。彼らが地表にある資源を望むのか、人間の労働力を必要とするのか、レアメタルのような希少金属を要求するのか、今は、まだ分かりません。海底人の地上侵略が完了したあと、敗戦を受け入れられない世界中の愛国者が無謀な闘いを挑み、大勢の命が失われないようにするのが、私の責務です。それでは、ボントスの命令書に回答する内容を具体的に検討します。・・・」 49代目アメリカ大統領ジェームス・トマソンが海底王国からの理不尽な要求に応えようと会議を開いているとき、その当事者である海底公国カスマヨル・海底王国コルピース連合政権代表ボントス・スミノエ・カナロアは、ごく親しい側近の2人とミーテングを開いていました。後頭部が異常に突き出ているモハイヤベリーがボントスへ進言します。「明後日の回答日、トマソンは海洋汚染の浄化期限を遅らせる、もっともな言い訳を考えるでしょうが、我々の解答はNOで統一してよろしいですね」 ボントスは床すれすれに低いソファーへ足を投げ出し、くつろいた姿勢のまま応えました。「もちろんだ、それよりも最近、マザーの調子がおかしい、ワイヤレント、何か気が付かないか」 左右の手のひらについている水かきで、中指と薬指の間が大きく広がっているワイヤレントがボントスを見つめます。他の海底人に比べると口の部分が前方に飛び出しています。「ボントスはん、あんさんも気がついたかのう、ワテもなあ、近ごろマザーが質問に答える間が気になるんや、一瞬やけど・・具体的には分からんがの~なんや不自然な気がするのや、で~、昨日、エリーゼがモニタールームに入ったから、前に仕掛けていた盗聴器を作動したんや、どうよ、この話、もっと聴きたいじゃろ~? たいぎいのぉ~なら、ねんでーたれるのやめてもええがんすよ」 つづく
2021/04/08
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トマソン大統領がFBI長官のジョン・チンドレンに声を掛けます。 「ジョン、すぐに確認してヨハンの息子を救出する部隊を派遣してくれ、ここではリアルタイムでの指令が難しいから本部に戻ってください。事件解決に関する権限を君に委譲するからね、私には事後報告するだけでいい。このチャンスに海底人ボントス派のシンパサイザーを一網打尽にしたいものだ」「大統領、了解しました。それでは本部に戻ります」 ヨハンが椅子から立ち上がりました。「申し訳ありません、大統領、私もFBI本部に同行してよろしいでしょうか」「そうしてくれ、ヨハン、ご子息の無事を祈っているよ」 長身の男2人は、足早に広間をでます。「国防長官のロバート、ペンタゴンに連絡をとって、マザーからデータが送られてきたか調べてください。もしデータがあったら、まずここの盗聴器を外し、次に国連本部にあるのも外してください」 そこで一呼吸おいてクリサーラの顔を見つめます。「私が不用意に発言したことが、失敗ではなく結果オーライになると良いのですが。まさかAIのマザーがここの話を聴いているなんて、予測しませんでした。まだこの会話があちらと繋がっているとして、私自身の正直な考えを言います。マザーを侮辱する気はさらさらなく、もしもエリーゼさんが失脚しボントスが人類制覇へと舵を切ったなら、その対策を早急に立てないと大統領の資格はないのです。我々は強力な味方を目の当たりにしました。マザーは感情もあり会話もする優秀なAIで、これから私は彼を一人の生命体として扱います。先ほどモニター画面に登場した中年、黒人男性の姿は、マザーからのメッセージなんでしょうね。まだ現実として残る人種差別への思いれかも知れません。クリサーラ、私の判断に誤りがあったなら正してください」「トマソン、間違っていませんよ。マザーがエリーゼ同様に人間の味方ならばこれから立てる方針は直接教えて支援を求めるのです。このままボントスの命令に応える会議を続行し具体案を作成するのが賢明でしょう」「そうですね、それでは会議を続けます。エリーゼさんが教えてくれた海洋汚染防止策と浄化方法を参考にして大至急、具体案をまとめ計画書に織り込みます。次にスケジュールですが、海洋浄化には最低でも5年以上かかると専門家からのアドバイスがあるので、それを正直に書き入れて我々が実行可能な期限を記入するのです。ボントスの命令する浄化期限には、とうてい不可能だからその理由も書くのです。それでもあちらが妥協せず、力ずくで人類を支配するならば・・・その時点で・闘いは宣言はしません。まだ様々な選択肢があるのでその時に応じて考えます」 つづく
2021/04/04
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