『福島の歴史物語」

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2011.04.11
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 長脛彦の末裔を称していた秋田氏の伝承は、日本神話や東日流外三郡誌とは重要な一点、つまり安日王や長脛彦の存在を肯定することで一致している。その上で現在の田村地域に、この秋田氏が主張する傍証と思われるものが、いくつか残されている。

 その一つは秋田氏の菩提寺である三春町の高乾院の山号・『安日』山である。この高乾院の木像釈迦如来座像は、秋田氏が十三湊から宍戸を経て三春へ移封された際、本尊として勧請したものである。高乾院前の案内板には、『安日(あっぴ)山』とふりがなが付けられており、本堂の 子(けいす)(鐘)には、『安日山高乾禅院・文政二年~』の文字が刻まれている。また瀬織津姫が、岩手県安代町のスキー場のある安比(あっぴ・安日?)高原の桜松神社に祀られている。安日王との関連が想像される。ところでこのアッピという単語、地元・岩手県の人たちは、この語感に日本語とは異質のものを感じるという。

 第二には、十三湊から移され、さらに三春に勧請された寺である龍穏院(りょういん)がある。この寺は、秋田実季が秋田から宍戸へ移される以前の安東家の菩提寺であった。それを実季が臨済宗妙心寺派に宗旨を替えたために、自分以前の先祖の菩提寺を龍穏院とし、自分以後の菩提寺を高乾院にしたと言われる。この寺の山門に『安倍萬世植福道場』という大きな扁額が掲げられているが、三春の大火の際のこととして、三春町史に『龍穏院門前で辛うじて食い止めたが』とあるので、このとき山門とともに扁額も焼失したと思われる。現在の扁額の署名は祥鳳とあるが、三春町史によると、祥鳳は龍穏院の第29世祥鳳忍瑞大和尚(天保四・1833年寂)とあるので、山門、扁額ともに再建したと考えられる。しかし時期は特定されていない。ただし千季の次男の謐季(やすすえ)が病のために七年間(寛政九・1797年~享和三・1803年)の短い期間藩主の座にあったが、謐季が『安倍家近年代々秘録』を編述しているので、扁額はこの間に掲げられたものと思われる。なお謐季は、秋田家としては只一人この寺に葬られている。

 第三に安倍貞任がこの地方の巡検をした折、自分の守り本尊を安置したという剛水山清凉寺『安倍』文殊堂が田村市船引町馬場川原にある。この安倍姓についてであるが、神護景雲三(769)年、安積に住む外従七位下の丈部継足(はせつかべのつぐたり)が、阿倍安積臣(あべのあさかのおみ)という姓を賜っている。安倍氏とは無関係の人物にこの姓を与えたと言うことは、安倍という姓に、秋田氏とはまた違った意味のあったことが推測できる。この『アベ』姓について、文献によっては安倍と阿倍の双方が使われているので、注意が必要である。なお貞任山清凉寺は、秋田氏が三春へ移封される以前からここにあったとの説もあるが、その勧請の時期はともかくとして、秋田氏が畏敬の念をもっていたことに意味があろう。その堂宇は、福島県の重要文化財である。

 第四に、田村地域の某神社に荒覇吐神が祀られている。そのことを公表しても良いかどうかを宮司に確認したところ、断られてしまった。それでもそのことについて、「神社関係の雑誌に掲載されたことがある」と言うので雑誌を見てみようとしてその名を尋ねたが、良い返事を貰うことができなかった。ともかくここの宮司の強い意向で、神社の名を明らかにすることができないのが残念であるが、これだけ嫌がるのであれば公にする訳にもいかないと思った。しかしこれを明らかにできないにしても、秋田氏が主張する安日王・長脛彦先祖説を補強する傍証とはなろう。ただし宮司の話から、荒覇吐神がその神社の客神(まろうどがみ)であることは間違いない。この他にも県内には、会津若松市に荒脛巾神社、荒祖神社の二社がある。

 第五に、三春町の旧家・湊家から、古い系図の写しを見つけた。ただしこの系図は湊家を中心に書かれたものである。湊家は十三湊時代の秋田氏から宍戸、幕末の三春秋田氏に至るまで仕えていたという家柄である。この『湊系図』の冒頭部分に線でこそ結ばれていないが、兄の安日王と弟の長髄(脛)彦と記されている。この関係もあってか、湊家の菩提寺は秋田氏のそれと同じ龍穏院である。秋田氏との強い関係が推測される。またこの系図は見方によっては、実季の主張した安日王・長脛彦先祖説とも見えるが、この安日王と長脛彦の書かれている位置、大毘古命から線がはじまっていることなどから考えて、俊季が主張した系図とも思われる。その末尾には、次のような記述がある。

   元禄三(1690)庚午年●(陰暦十二月)月吉
       旦 改写之
   嘉永六(1853)癸丑年孟春吉旦 再写之
       湊清 安倍季重主人(花押・明治の人)
   原巻 元禄庚午年(三年)改写
   嘉永六丑歳再写  早川捨彦●(耳り)持借
            更之写
            湊清   主人(花押)

 ここには『元禄三(1690)年脯月吉旦 改写之』とあるので、この年以前より保存されていたものから書き写した、と解釈できる。すると前述した『実季は、万治元(1658)年の秋、ようやく完成した系図 を盛季に与え』という文言から、実季が編纂したものからの写しとも思える。翌・万治二年に実季は死去した。しかしこの内容から類推するに、実季ではなく俊季が主張したものを筆写した可能性もある。ただし全てが焼失したと伝えられる天明五(1785)年の三春大火以前に書かれたものを書き写した、ということは間違いない。なお、実季の命により『寛永諸家図伝』中の安倍家系図を校訂した高乾院住持の一元紹碩は、『下国両家辯』をあらわした。これは俊季の弁明をしたとされることから、東日流外三郡誌とは別のものと考えられる。





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最終更新日  2011.04.11 06:34:44
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