『福島の歴史物語」

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2012.06.21
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カテゴリ: 安積親王と葛城王


 神亀六・ 天平元(729)年、大事件が発生した。『長屋王の変』である。

 二月十日、漆部造君足(ぬりべのみやつこきみたり)と中臣宮処連東人(なかとみのみやこのむらじあづまびと)より『長屋王は密かに左道を学びて国家を傾けんと欲す(呪術で聖武天皇を呪った)』との密告があり、それを受けて藤原宇合らの率いる六衛府の軍勢が長屋王の邸宅を包囲して捕らえ、 次第に藤原氏寄りに傾斜していた舎人親王などによる糾問の結果、長屋王はその妃・吉備内親王と子の膳夫王らを縊(くび)り殺されて服毒自殺をした。讒言(ざんげん)であったとする説が強い。これにより、この陰謀を企図した藤原四兄弟の発言力が強化されたが、その後、災害や疫病が多発し、巷では『長屋王の崇り』がささやかれていた。政治的な対立もさることながら、天皇と安積親王に何かがあった場合には長屋王が男系皇族での皇位継承の最有力者であったことも、藤原氏による『長屋王排除』の理由として注目すべき点であろう。

 聖武天皇は勅を下して光明子(安宿媛)を皇后とした。光明皇后である。藤原四兄弟は、亡父・不比等と三千代の間の娘の光明子を、皇族出身でもないのに、つまり臣下の出の最初の皇后に据えた。三千代はわが娘・光明子の立后を見届けたことになった。

 天平五(733)年、皇室を巡って藤原氏の同盟者として、またときには競争者として藤原氏の前に立ちはだかった光明皇后の生母の三千代が亡くなった。三千代が亡くなったあとでは小心で神経質な聖武天皇に代わって光明皇后が主導権を握ることになる。しかしそれが、安積親王を排除しようとする藤原四兄弟の策であることを見抜いた反藤原派の怒りを買うこととなった。そのために反藤原が『親安積派』として結集することになるのであるが、親安積派が擁立しようとする肝心の安積親王は、まだ二歳に過ぎなかった。なおこの『安積派』とは、筆者の造語である。

 天平九(737)年、疱瘡の流行によって、さしもの権勢を誇った藤原武智麻呂、房前、宇合、麻呂の四兄弟が相次いで亡くなったため、藤原氏の勢力は大きく後退した。再び『長屋王の祟り』が噂された。その上、舎人親王を初めとして多くの高官が死亡したため議政官がほぼ全滅し、出仕出来る公卿は葛城王と鈴鹿王のみとなってしまった。葛城王と鈴鹿王、それに大伴道足(大伴旅人の死後、一時的に大伴一族の総帥になった)が任命されて応急的な体制が整えられた。藤原四兄弟の子どもたちの中で、最年長は豊成(武智麻呂の長子)で、まだ三十三歳であった。参議にもなっていず、再建政権に入ることはできない状態であった。そこで藤原氏抜きで再建政権が組まれることになり、安積派の勢力が拡大した。

 天平十(738)年、聖武天皇と光明皇后の皇女・阿倍内親王(のちの四十六代・孝謙天皇)が皇太子に冊立された。しかし阿倍内親王の弟の基王のときは生後二ヶ月で立太子させながら、安積親王は十歳でも幼いとされて二十歳の阿倍内親王が皇太子とされた。伊勢にあった二十一歳の井上内親王は、実弟の安積親王が皇太子であるべきであるとして強力に反対した。内親王の立太子は前例がないが、藤原氏の強力な巻き返しの結果であり、皇室としても当面の安定策として採用したものと思われる。

 この年、藤原宇合の嫡男・広嗣は大養徳(大和)守から大宰少弐に任じられ、大宰府に赴任した。広嗣はこれを左遷と感じ、強い不満を抱いた。当時、災害が頻発していたが、それは天皇の人格・資質に対する天の警告であるという理由で 天平十二(740)年、九州に挙兵した。(藤原広嗣の乱)しかし戦いに敗れた広嗣は、弟の綱手と共に処刑された。

 天平十四(742)年、塩焼王配流事件が発生した。塩焼王の母が藤原不比等の姉であったことから、裏で『安積派』の策謀があったのかも知れない。伊豆の三島に流されたが後に許され復帰している。復帰と同時に不破内親王は親王の名を削られた。
 天平十五(743)年、聖武天皇は紫香楽宮(信楽宮・滋賀県甲賀市信楽町)に行幸した。さらに天平十六(744)年閏一月、聖武天皇は難波宮に行幸に際して、恭仁宮の留守官に鈴鹿王と藤原仲麻呂を任命した。この聖武天皇の難波行幸に同行した安積親王は、途中の桜井頓宮で脚の病により引き返し、その日のうちに恭仁宮へ戻って来た。そしてその二日後、わずか十七歳にて薨去されたのである。ともかく、死の病とは思われない脚の病によるこの安積親王の早過ぎる死は、恭仁京に留守で残っていた藤原仲麻呂か、もしくはその妻である藤原宇比良古によって暗殺されたのではないかという説になっている。この間、安積派の人たちはどこにいたのであろうか? 誰が留守居役であったかは知っていたはずなのに、なぜ安積派の誰かが供に付かなかったのか? 藤原四兄弟没後六年。藤原の力を甘く見て親王が殺されるとは想像もしなかったのであろうか? はたまた天皇に供奉していたからやむを得なかったのか? これらの解答は歴史書の中からは見えてこない。

 井上内親王は、弟・安積親王の死を受けて伊勢神宮斎王の任を解かれて奈良に戻された。その理由は分からないが、実妹の不破内親王とともに反藤原となっていったことは、十分に理解できよう。安積親王の葬儀の監護には、大市王(天武天皇の孫)と紀飯麻呂があたり、恭仁京の東北、和束香山(京都府相楽郡和束町白栖)に葬られた。ここに安積派はその柱を失うことになったのである。そして安積親王の姉たちのその後の人生も、波乱に満ちたものであった。いずれも不幸な死に方をしている。しかし聖武天皇にとっては、阿倍内親王も井上内親王も不破内親王もそして安積親王も我が子であることに変わりはない。自分の意志とはかけ離れたところで起こるこの皇嗣をめぐる争いを、聖武天皇はどう感じていたのであろうか? 

 では、『安積派』のどのような人たちが、安積親王にどのように関わっていたのであろうか。重複を恐れず、次に何人かの人を挙げてみる。






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最終更新日  2012.06.21 13:22:22
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