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ヒーター電源について回路図を示しておこう。低雑音パワーアンプを作る場合、ヒーターを直流点火する必要があるか、と問われれば、プッシュプルアンプではその必要はないと答えよう。本機は初段から全て交流点火である。ヒーターからのハム雑音は、カソードに混入するため、差動増幅では次段で打ち消されてしまう。また、ヒーターからのハム雑音を防ぐのに最も効果的なのは、ヒーターに正のバイアス電圧をかけることである。ヒーターから迷い出た電子がカソードに引きつけられないようにするわけだ。 第13回で説明したヒーター制御バランス回路を用いるため、初段と2段目の12AU7はヒーター電圧をそれぞれのユニットで±10%程度可変としている。また、初段への高周波雑音混入を防ぐため、途中にコイルを入れている。 この電源回路で少し問題があるのは、ヒーターカソード間耐圧であろう。初段のカソード電位はほぼ0Vだが、定電流回路では-60Vくらい、2段目は80V程度となる。ヒーターには30Vの正バイアスを掛けているので、初段と定電流回路ではカソードよりヒーターの方が電位が高い。ただ、定電流回路ではヒーターカソード間電圧は90Vに及ぶ。一応、定格耐圧の±100V以内にはぎりぎり収まるようにしている。
2012.08.24
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前段の電源は、初段が±150V程度、2段目は330V程度、カソードフォロワー段は±150V程度が必要である。前回説明した両波多倍圧整流回路を用いて+2E、±Eを発生させ、効率よく3種類の電圧を作っている。2倍電圧発生には片波整流ならダイオード2本ですむが、両波整流では4本必要になる。トランスの巻き線に直列にした抵抗は、コンデンサーインプット平滑回路にパルス的な電流が流れるときの雑音を軽減するためのもので、いわば整流管効果を狙ったものである。巻き線の直流抵抗くらいの値を入れてある。 そしてここでも、電源側と信号側のGNDを分離し、ホット側には全てチョークコイルを入れてある。チョークコイルはSELの普通のバンド型である。特にシールドケースなどはなくても、元々ほとんどリップルは乗っていないので、誘導雑音が問題になることはない。回路は以下の通りである。 初段とカソフォロ段の電源が共通であるが、これを完全に分離するため、この回路の先にオーディオ用のブロック型電解コンデンサー(ELNA セラファイン)を投入している。初段は正負電源それぞれに440uF350Vのもの、カソフォロ段にも200uF350Vのものを入れてある。2段目と出力段にも220uF500Vがそれぞれ入れてある。また、電解コンデンサーと並列に0.1uFのフィルムコンデンサーを入れている。発振が起きやすいカソフォロ段には、更に0.01uFを各真空管のプレートとGND間に直接入れてある。
2012.08.19
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さて、次に前段の電源部について説明しよう。初段が±150V程度、2段目は330V程度、カソードフォロワー段は±150V程度が必要である。これをまとめて電源トランスの一つの巻き線から取り出したい。もちろん、内部抵抗もリップル電圧も低くしたいのである。複数の電圧を効率よく取り出すには、多倍圧整流回路を用いるとよい。多倍圧整流回路というと、コッククロフト・ウォルトン回路が有名であるが、偶数倍の電圧しか出ないし、片波整流である。そこで、両波整流で±n倍圧の電圧を全て取り出せる回路を考えてみた。 まず、(A)は片波整流で±E、±2E、±3E、…の電圧を取り出す回路、(B)はそれを両波整流に拡張したものである。片波(A)で±Eを取り出す回路は普通両波倍電圧整流と呼ばれているが、+Eと-Eを別々に取り出せば片波整流なのである。両波(B)で±Eを取り出す回路はブリッジ整流に他ならない。この中から、自分の欲しい倍数の回路だけを抜き出せばよいので、利用価値の高い回路であると思う。
2012.08.12
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ここのところオリンピックを見るのに忙しくて、しばらく書き込んでいなかった。さて、回路については大体説明が終わったところである。あと残っているのは電源部だ。このアンプでは、低雑音を目指していることもあり、電源の設計にはかなり気を配っている。最大の特徴は、全ての電源にコイルを入れていることだ。信号部への電源供給において、電源部のGNDと信号部のGNDを分離し、ホット側はコイルで分離している。これによって電源側から混入するノイズをシャットアウトするためである。 まず、出力段の電源供給について説明しよう。出力段への供給電源はチョークインプット平滑回路を用いている。チョークインプットはダイオードに常に電流が流れ続けるため、その内部抵抗は電源トランスの巻き線抵抗とチョークコイルの直流抵抗の和に等しい。これに対して、コンデンサーインプット平滑回路ではダイオードに断続的にしか電流が流れないため、内部抵抗も巻き線抵抗の和よりもずっと大きくなるし、パルス性の雑音を発生しやすいのだ。従って、チョークインプットの方が遙かに優れているわけである。ただ、ダイオード整流の場合、スイッチ投入直後には高電圧を発生してしまうので、真空管がウォームアップするまでの間、タイマーリレーを使って供給電圧が低くなるようにしている。 さて、チョークインプットはコイルが入っているので、それで電源部と信号部の分離ができそうに思われるかもしれないが、チョークインプットの場合、チョークコイルの信号側のGNDにコンデンサーを通過したリップル電流が流れてしまうのである。このGNDは電源側につながなくてはならない。そこで、さらに小容量のチョークコイルを直列にしてその後コンデンサーを置けば、完全に信号側のGNDを分離することができる。そんなわけで、ずいぶん贅沢な回路になってしまった。
2012.08.06
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