偐万葉田舎家持歌集

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2008.05.22

花を愛でつつ

(2)

カテゴリ：銀輪万葉

　　最近はこのブログのせいか、自転車で走っていても花が目に入ると、何の花だろうと、近づいてみたり、写真に撮ったりすることが多くなったが、野の花であれ、園芸種であれ、自身の花の名についての知識の貧しさを思い知らされている次第。

紫草(むらさき)は　灰さすものぞ　海石榴市(つばいち)の　八十の衢(ちまた)に　会へる子や誰（万葉集巻１２－３１０１）

たらちねの　母が呼ぶ名を　申さめど　道行く人を　誰と知りてか（万葉集巻１２－３１０２）

　　野の花にその名を尋ねても答えてくれる筈もなく、上記の歌の娘ように「道行く人を誰とも知らないのに名など教えられませんわ」とつれないのである。
　　人間は互いに名を名乗り合うところから交流が始まるのは今もそう。それと同じで名を知らない花とは何かよそよそしい感じになるのである。花の形も色も知っているのだから、その花を知っていると言ってもいいのに、名を知らぬ以上、やはりまだ知らない花なのである。
　　おそらく人間の記憶装置は色や形による仕分けは曖昧・不正確で、名前という言葉、ラベルを張り付けることによって、正確に仕分けされるようになっているのだろう。そして「知る」ということは、この「仕分け」ができたと脳が認識した状態をいうのでしょう。

　　という訳で、小生の銀輪散歩は毎度この仕訳未了の花々でいっぱいなのである。そんな中で名を知った花に出会うと「やあ」という感じで嬉しくなるし、それが万葉に歌われたりしている花だととても「幸せ」な気分になるのである。

　　昨日は「ほおのき」が花を咲かせているのを見た。「ほおばみそ」のホオノキである。万葉では、「ほほがしは」という。「かしは」とは「食器｝の意味であるから、昔は食品を包んだり、葉の上に食べ物を盛ったりして使ったということが、この名前から分かるのである。
ホオノキ.jpg

皇神祖(すめろぎ)の　遠御代(とほみよ)御代は　い布(し)き折り　酒(き)飲みきといふ　そこのほほがしは（大伴家持　巻１９－４２０５）

テイカカズラＡ.jpg

　　そして、万葉では「石綱」とか「つた」とか呼ばれている、テイカカズラ(定家葛)である。芳香が風に乗って運ばれて来る。秋には細長い褐色の実を弾けさせて、白い綿毛というか、冠毛を付けた種を風に飛ばすという、その様をまた見に来ようなどと思ったりも・・・。

　　今朝は桜の木陰で休憩していて見上げると、サクランボがたわわに実をつけているのが目に入った。ついこの間には桜の花が咲き匂っていたのに・・・。
　　かたわらでは菖蒲が朝風に吹かれてかすかに花びらを揺らす。そしてなぜか野良猫が妙な格好で一心不乱に水を飲んでいるのだった。時の移ろい、季節の移ろいを感じるひと時。

（さくらんぼ）
さくらんぼ.jpg

（あやめ）

（水を飲む野良猫君）
水を飲む猫.jpg

（ホタルブクロ）

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最終更新日 2008.05.22 23:42:13
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プロフィール

けん家持

養老２年（718年）の生まれゆゑ､年令1307才（養老元年生れ説だと1308才）。銀輪歌人、偐家持（ニセヤカモチ）｡若草の里の読書会に屯しています。時に「まっ黒の走子｣｡時に「偐定家」。時に「筆蕪蕉（不精者）」であります。また、時々は偐家持美術館のヤカモチ館長でもあります。自転車（銀輪）であちらこちらを気ままに散歩し、花を愛でたり、虫と遊んだり、万葉調の歌（と言っても大抵は戯れ歌）などを作ったりしています。

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