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交通事故 後遺障害併合3級に対し労働能力喪失率90パーセントを認めた例女子小学生の逸失利益の算定にあたり、全労働者、全年齢平均賃金を使用した例女子小学生 交通事故により高次脳機能障害(5級相当)醜状瘢痕(7級相当)併合3級が残った。1審判決は、総額6774万2147円の範囲で損害賠償を認めたが、控訴審は1億95万1344円の損害賠償を認めた。併合3級の場合、標準的な労働能力喪失割合は79パーセントであるところ、本判決は11パーセント高い90パーセントと認定した。これは醜状障害と高次脳機能障害を有する者の就業が実際に困難であること(就労意欲の減退、人間関係の維持の困難性、就業する職場の不在など)を総合考慮したものである。また、学生等の逸失利益については男女別全年齢平均の賃金額を基礎とするのが通例であるが、本判決は全労働者の全年齢平均賃金を基礎とするべきであるとした。女子の平均賃金が男子の平均賃金より低額であるところから、全労働者の全年齢平均賃金で算定する裁判例があり、本判決は、これら先例に従ったものであるが、そのような特別扱いをすべき理由が十分に論証されれいるかどうか疑問がなくはない。そのほか、高次脳機能障害が残った交通事故の被害者の損害賠償請求をめぐる問題についても参考になる判断がされている。と評されている。 大阪高裁平成19年4月26日判決 判例時報1988号16頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.02.29

「振り込め詐欺」の被害者が、振込先口座の名義人に対する不当利得返還請求権を保全するために、同口座名義人の有する預金債権の払い戻し請求権を代位行使することを認めた例本件は、いわゆる「振り込め詐欺」の被害者であるXが原告となり、被振込先口座の開設銀行であるY銀行に対し、Xの振り込んだ240万円のうち、同口座の名義人であるТに対する不当利得返還請求権を被保全債権とし、ТのY銀行に対する預金払い戻し請求権を被代位権利とする債権者代位権により同口座にかかる預金払い戻し請求を行った事案である。東京地裁平成19年10月5日判決は、以下のとおり判示した。本事案においては、振り込め詐欺の振込先口座の名義人は、所在不明であり、被害者の不当利得返還請求権を弁済するについて本件口座に係る預金払い戻し請求権のほかに十分な資産を有していないというべきであり、同預金払い戻し請求権のみが預金名義人の財産として判明しているという状況において、同預金払い戻し請求権を代位行使しなければ、被害者は、その被保全権利について満足を受けられなくなるおそれがあり、被害者の代位につき、保全の必要性があると認められ、口座名義人に対する不当利得返還請求権を保全するために、同口座名義人の有する預金債権の払い戻し請求権を代位行使することができる。 東京地裁平成19年10月5日判決平成19年12月21日に「犯罪利用預金口座等にかかる被害回復分配金の支払などに関する法律(一般的に振り込め詐欺被害者救済法)」が成立し、平成20年6月21日から施行される。この法律により、振り込め詐欺の被害者は、本判決のように裁判によることなく、被害額に応じて按分的に公平な救済を受けることができるようになるが、その運用については、いくつかの問題点が指摘されている。 金融法務事情1826号56頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.02.23

マンションの階上の住戸からの子供が廊下を走ったり、跳んだり跳ねたりする音が階下の住戸に居住する住民が社会生活上受忍すべき限度を超えるとして上記住民の上記子供の父親に対する損害賠償請求が認容された例本件音は被告の長男(当時3歳から4歳)が廊下を走ったり、跳んだり跳ねたりするときに生じた音である。本件マンションの2階の床の構造によれば、重量床衝撃音遮断性能はLH-60程度であり、日本建築学会の建築物の遮断性能上やや劣る水準にあるうえ、本件マンションは、三LDKのファミリー向けであり、子供が居住することが予定されている。しかし、平成16年4月ころから平成17年11月17日ころまで、ほぼ毎日本件音が原告住戸に及んでおり、その程度は、かなり大きく聞こえるレベルである50~60デシベルとのものが多く、午後7時以降、時には深にも原告住戸に及ぶことがしばしばあり、本件音が長時間連続して原告住戸及ぶこともあったのであるから、被告は本件音が特に夜間及び深夜には原告住戸に及ばないように被告の長男をしつけるなど住まい方を工夫し、誠意のある対応を行うのが当然であり、原告の被告がそのような工夫や対応をとることに対する期待は切実なものであったと理解することができる。そうであるにもかかわらず、被告は床にマットを敷いたものの、その効果は明らかではなく、それ以外にどのような対策を採ったのかも明らかではなく、原告に対しては、これ以上静かにすることはできない。文句があるなら建物に言ってくれと乱暴な口調で突っぱねたり、原告の申し入れを取り合おうとしなかったのであり、その対応は極めて不誠実なものであったということができ、そのため原告は、やむなく訴訟等に備えて騒音計を購入して本件音を測定するほかなくなり、精神的にも悩み、原告の妻には、咽喉頭異常感、食思不振、不眠などの症状も生じたのである。以上の諸点、特に被告の住まい方や対応の不誠実さを考慮すると本件音は社会生活上、原告が受忍すべき限度を超えるものであったというべきであり、原告の苦痛を慰謝すべき慰謝料としては30万円程度が相当であるというべきである。判決は確定尚、本件については騒音問題の専門家が専門委員として関与している専門委員が有効に活用された一例である と評されている 東京地裁平成19年10月3日判決 判例時報1987号27頁頭注ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.02.19

預金債権の差押 同一銀行に対し「複数の店舗があるあるときは、本店次いで別紙記載の支店の順位による」とすることができるか大阪高裁平成19年9月19日決定債務名義(判決・公正証書・和解調書など)を有する債権者が債務者の銀行に対する預金債権を差押さえた事案債権者は、B銀行ほかの預金債権につき請求債権を割り付けて差押を申立てた。(例えば400万円の債権がある場合、А銀行関係は100万円 B銀行関係は100万円 C銀行関係は200万円と適宜割り付けた)その際、B銀行の預金債権について「複数の店舗に預金債権があるときは、本店、次いで別紙記載の支店の順による」と指定して申し立てていたため(いわゆる支店順位方式の申立)原審は、差押債権の特定に欠け不適法であるとしてその申し立ての部分を却下した。本件はその抗告審である。本決定は、支店順位方式によることをもって差押債権の特定がないとするのは相当でないと判断して原決定の申立棄却部分を取消し事件を原審に差し戻した。地裁の執行実務では、従前から預金債権を差し押さえる場合は取り扱い店舗の特定が必要であるとして支店順位方式の申し立てを認めておらず、この取り扱いは現在も維持されているようである。この問題は、債権の実現を図る債権者の利益と、第3者として差押命令への対応を強いられる金融機関の負担及びリスクをどのように調整するかという問題である。(銀行の全支店で債務者の預金を特定できるかの技術的問題) 判例タイムズ1254号 318頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.02.12

貸金業者が取引履歴を開示しなかったことについて民事訴訟法224条3項を適用して過払金の返還請求を認めた事例過払金変換請求訴訟で、貸金業者が文書提出命令を受けたにもかかわらず取引履歴を開示しなかった場合には、裁判所は民事訴訟法224条1項を適用して、顧客が、この履歴に記載されている貸付、弁済の経過を具体的に主張しているときは、この主張を真実と認めることができるし、具体的な主張がなくても、具体的に主張すること、取引履歴以外の証拠で経過を立証することが著しく困難であるときは、同条3項を適用して取引履歴の記載内容に関する主張のみならず取引経過に関する顧客の主張を真実と認めることができる。同条3項は裁判所が文書提出命令を発しただけでなく、提出義務がある文書を使用することができないようにした場合(同条2項)にも適用され得る。本庄簡易裁判所平成19年6月14日判決事案は、貸金業者が平成12年5月に締結したローンカードの会員契約に基づく取引(第3取引)の経過を利息制限法の利率で計算すると23万円の貸金が残っているとして、その支払を求めた訴訟において、被告は、この取引以前に平成6年12月に約165万を借り入れて平成11年12月に完済した取引(第1取引)平成8年8月に10万円借り入れて平成9年6月に完済した取引(第2取引)もあり、これらの取引の経過を一連のものとして利息制限法の利率で計算すると約98万円の過払金が生じているとして、その支払を求める反訴を提起した。貸金業者は第3取引の前から入金を受けていたことは認めたが、それは立替払契約に基づく可能性があると主張するだけで、裁判所からの釈明を受けても、既に削除、廃棄をして保管していないとして平成12年7月以前の取引を開示せず、取引履歴について立証もしなかった。本判決は借主の預金通帳などの証拠によると、第1取引を始めた際に基本契約が締結され、第1ないし第3の取引は一連の取引と認められるから、貸金業者にはこれを保存し、提出する義務があるとした。その上で、取引履歴があれば過払金の有無・額を容易に立証することができたのに、貸金業者が保存義務に違反して取引履歴を削除・廃棄したことは、借主の使用を妨げる目的があったというべきであり、借主が第1、第2取引に関して具体的主張をすること、この主張を他の証拠で証明することは著しく困難であるとして、民事訴訟法224条3項を適用して、第1ないし第3取引の経過についての借主の主張を真実と認めて反訴請求を認容し、貸金業者の請求を棄却した。 判例タイムズ1254号 199頁 頭注 控訴されているブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.02.10

買収者の表明保証責任 東京地判平成19年9月27日本判決は、企業買収における買収者側の表明保証責任が問題となった、おそらく初めてのケースである。X社(買収対象会社)とY社(買収者)は、資本提携契約および業務提携契約を締結した。そして、Yは、第三者からXの株式を買取ったり、第三者割当ての方法によりXの新株を取得したりして、Xの株式の51%を保有するに至り、Xは、商号をYの商号を含むものに変更した。しかし、その後Yの粉飾決算が発覚し、Yの取締役3名が証券取引法違反により逮捕され有罪判決を受ける等したために、Yの株式は上場廃止となり、Xはその商号をYの商号を含まないものに変更することとなった。そこで、Xは、買収者は明示的な契約条項がなくても、信義則上企業の信用に深く関わる違法行為を行っていないことについて表明保証責任を負う等と主張し、YおよびYの取締役であった上記3名に対して、損害賠償請求した。 これに対し、本判決は次のような趣旨の判断基準を判示した。すなわち、企業買収において資本・業務提携契約が締結される場合、企業は対等な当事者として契約を締結するのが通常であり、そこでは私的自治の原則が適用されるから、買収にあたっての情報収集や分析は各契約当事者の責任において行うべきであり、情報収集や分析が不十分であったために契約当事者が不利益を被ったとしても、その不利益は各当事者が自ら負担するのが原則であって、特段の事情がない限り、私的自治の原則を修正して相手方当事者に情報提供義務や説明義務を負わせることはできない。 その上で、本件においては、資本提携契約の中でXの表明保証責任は財務状況を含めた多数の項目にわたっているのに対し、Yの表明保証責任の内容はわずか三項目にすぎず、その中に財務状況に関する事項は定められていないことや、Xの取締役会においてもYの財務状況が問題とされたことがないことからすれば、YはXに対し財務状況について表明保証する必要がないと理解されていたと解するのが相当であり、上記の「特段の事情」はないから、Yに粉飾決算の事実等に関する情報提供義務や説明義務は認められないと判断された。このような結論は、XがYの知名度や信用を利用することを期待していたとしても、変わらないとされている。結局、Xの請求はすべて棄却された。 これまで、企業買収において、買収対象会社やその株式の売主の表明保証責任が問題になった裁判例は、責任を否定したものとして大阪地判平4,9,17判タ832-146が、責任を認めたものとして東京高判平8,12,18金法1511-61、東京地判平15,1,17判時1823-82、東京高判平18,1,17判時1920-136があった。このうち、大阪地判4,9,17は株式の売主の信義則に基づく資産価値の開示義務を否定したが、東京高判平8,12,18は会社資産の健全性を保証した売主の責任を認めた。東京地判平15,1,17は、経営の健全性は全く問題ないと公言しながら、後に実質的には破綻状態になったにもかかわらず、その旨を相手方に告知しなかった当事者の責任を認め、東京高判平18,1,17は、買収対象会社の財務諸表が一般に承認された会計原則に従って作成されていること等を表明保証した、株式の売主の責任を認めている。冒頭で述べたとおり、これまで買収者の表明保証責任が問題になった事案はなく、それほど注目されてきたわけではないが、本判決を契機に買収者の表明保証責任についても議論が進むことになろう。 と評されている。 判例時報1987号134頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.02.08
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