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福岡高裁平成19年6月21日判決A女には相続人として子XとYがいる。遺産は13階建の建物とその敷地 評価4億2700万円その他資産を含め4億3231万円の積極財産 一方負債は長期借入金約4億0523万円とその他の債務1959万円を合わせた約4億2483万円の消極財産Aは生前に公正証書遺言により全財産をYに相続させると遺言Aが死亡 XがYに遺留分減殺請求をしたXの主張は、「4億3231万円ー4億2483万円」×1/2×1/2+「4億2483万×1/2」で2億1428万円となるとして、13階建建物及びその敷地について4億3231万分の2億1428万分の共有持分の登記を求めた。Yは{「4億3231万-4億0523万」-1959万円}×1/2×1/2で187万円となるとして争った。Xの主張は相続債務は法定相続分により各自が相続するので相続債務は控除されないというものである。原審も福岡高裁も共に、相続人の間では相続債務は全財産を相続したYに帰属するのであるから、積極財産から消極財産を控除した額を基礎に遺留分侵害額を算定するものとしてYの主張を認めた。上告されている。 判例タイムズ1263号68頁尚、債権者からは法定相続分に応じてXに半額の債務の履行を求めることもできるし、遺言を援用してYに全額を請求することもできる。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.05.21

厚生年金保険法41条1項は、保険給付を受ける権利は差し押さえることができない旨定めており差押禁止債権である。差押禁止債権に対する差し押さえ命令は無効であって、差押命令に基づく取立権は発生しないと解されている。ところで、年金など差押禁止債権が預金、貯金とされた場合、右預金など債権が差押禁止となるか否かについては、旧法当時から肯定、否定の見解が対立しており、新法制定の段階において立法的に解決すべきかどうかも検討されたが、結局特別の規定が設けられなかった。したがって、新法の下においても、旧法時と同様解釈が分かれることとなるが、新法では153条に差押禁止債権の範囲の変更の規定が設けられたことからすれば、預貯金債権に対し、法152条を適用する必要はなく153条で賄えば足りると解されている。(判例時報)年金が入った貯金については、裁判所に差押禁止債権の範囲の変更申し立てをなすと年金部分相当については容易に差押禁止債権とする旨の決定を得ることができる。議員歳費についても給与でないことから全額の差押が認められるが、歳費で生活している人の場合は、給与に準じて4分1については容易に差押禁止債権にしてくれる(私見)大阪地裁平成19年9月20日判決 差押禁止債権である厚生年金が受給者の郵便貯金口座に振り込まれた場合、右貯金債権は差押禁止債権とはならず、債権者はその貯金債権を差し押さえることができる。 判例時報1996号58頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.05.15

取調べ警察官が犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録は、刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となりうる 最高裁平成19年12月25日 第三小法廷判決偽造通貨行使の事実で起訴被告人は偽札であることの認識を争った事件は期日間公判手続きに付され、検察官は犯行状況等を立証趣旨として被告人の警察官に対する供述調書を証拠請求としたが弁護人はこれを不同意として任意性を争い、公判期日においてすることを予定している主張として、警察官による自白を強要する威嚇的取調べ、利益誘導による自白の誘引などを明示し、「被告人の取調べにかかる取調べ警察官作成の取調べメモ(手控え)備忘録等」の開示請求をした。検察官は、請求にかかる取調べメモ等は本件証拠中に存在せず、取調べメモ等は証拠開示請求の対象となる証拠に該当しないと回答したことから弁護人が開示命令の請求をした。(刑訴法316条)1審は 請求にかかる取調べメモ等は本件一件操作記録中には存在せず、そのような取調べメモ等は個人的な手控えのたぐいであって、性質上開示の対象となる証拠に該当しないとして請求を棄却した。これに対し弁護人が即時抗告したところ高裁は検察官が容易に入手することができ、かつ、弁護人が入手することが困難な証拠であって、弁護人の主張との関連性の程度及び証明力が高く、被告人の防御の準備のために開示の必要性が認められ、開示による具体的な弊害が生ずるおそれがないものは、検察官の手持ち証拠に準じ、証拠開示の対象となるとして、1審決定を変更して証拠開示を命じた。これに対し検察官が特別抗告したところ最高裁は、これを棄却したものである。 判例時報1996号157頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.05.13

交通事故による損害のうち、死亡の場合や後遺障害の場合、将来の得べかりし利益の喪失(逸失利益)に対して一括計算して損害を算定していたが新民事訴訟法により定期金として請求できる可能性ができた。将来の逸失利益を一括計算する場合には将来利息を控除しなければならず、通常はライプニッツ方式という複利計算をする。10年後の100万円を現在の価額に直すのに現在の価額をxとすればxを年5パーセントで複利運用したら10年後に100万円となる現在価額を算定するのである。しかし被害者としては、賠償金を貰っても年5パーセントで運用することは普通できないから賠償額を抑えられて結果となっている。これに対し定期金賠償は、10年後に100万円払えという判決である。40歳で事故にあったら41才から毎年67歳まで年収の損害率の割合による金員を払えというものであって、この複利計算による損害の抑制から開放される。重度後遺障害の場合の介護費用については最適の制度であるといえると評されているが、死亡逸失利益については定期金賠償請求は否定されているのが現在の多数であるが後遺障害については否定例は見当たらないとされる。慰謝料については当然適用は否定される。 参考 判例タイムス1260号5頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.05.12

配偶者からの暴力の帽子及び被害者の保護に関する法律が改正され、保護命令の発令要件が拡充されるとともに、新たな保護命令の制度が設けられるなどした。同法律に基づく保護命令手続を担当する東京・大阪両地裁の保全部は、今次改正にあたって、改正法下における保護命令手続きの運用のあり方などについて検討協議を行い、その結果を判例タイムズ1259号5頁において紹介した。申立書の書式も紹介されている。改正法のポイント生命等に対する脅迫を発令要件とする保護命令(改正DV防止法10条1項)電話禁止命令(改正DV防止法10条2項)被害者の親族等への接近禁止命令(改正DV防止法10条4項5項)被害者の同居の子への接近禁止命令の内容の整備(改正DV防止法10条2項)配偶者暴力相談支援センターの長への保護命令発令の通知(改正DV防止法15条4項)ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.05.07

建て貸しの店舗 長期契約 途中解約 違約金の定め原告が被告のために店舗用建物を建築して賃貸(いわゆる建て貸し)中に被告が相当の理由があって中途解約をし、これが認められる場合に、原告が被告に対し中途解約によって被る損害の填補金額が算定された例被告Y 九州一円にうどん屋のチェーン店を展開する会社 その店舗は、ほぼ同一の形状をした建物になっている平成6年9月14日 原告の所有する土地に被告の仕様の建物を建築した上、これを賃貸する契約を締結した 期間 本件建物が完成し被告が開店してから満15年 敷金800万円特約 契約期間内は原則として契約解除をすることができず、借主が契約期間内に解約する場合は、解約時の本件建物の償却残高を違約金として貸主に支払うものとし敷金は違約金に充当する平成7年6月本件建物完成 平成7年7月 被告開店平成7年10月 地盤沈下の影響で、店舗の中央部分に落ち込みが見られるようになったため、被告が苦情を述べたところ建物を建築した建築会社が責任を認めてその費用で相当大掛かりな修繕をした。平成14年2月 被告は建物がゆがんで営業ができないので休業すると連絡し同月18日閉店した。被告はその後調査をし要修繕箇所を指摘し、同年3月28日に同年4月末までに本件建物を修繕することを求め、それがなされないときは賃貸借契約を解除する通知をした。これに対し原告は本件建物の現状は店舗運営ができないほどのことは考えられないと回答し、その後は弁護士が介入するなどして交渉を重ねたが被告は同年8月末日限りで賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。原告は主位的には契約期間満了までの賃料の損害賠償を求め、予備的に被告の解除、退去により賃貸借契約が終了したとしても中途解約の場合の違約金の支払義務があるとして、所定の違約金から敷金を控除した残金の支払を求めた。福岡高裁は、原告には本件建物の修繕義務があり、その違反があるものの、そのために本件建物が飲食店としての営業を継続することが困難な状態であったとまでいうことはできないとして被告による解除は許されないと判示した。そして本件建物の賃貸借契約においても中途解約を想定した規定もあることから相当の理由がある場合には一方的な解約を許し、建て貸し契約であることから中途解約された場合に発生する損害を違約金の支払義務という形で填補することにより賃貸人の利益を保護するのが相当であるとし、本件においては営業に影響があると思われる床面の落ち込みがあることや修繕要求に対する原告の対応を考慮し、特約上の解約を認めた。その上で違約金条項に基づき解約時の本件建物の償却残高から敷金を控除した金額を請求できるとし、その額を算定した上、原告が修繕義務を履行しなかったことを考慮し3割の過失相殺をし、被告に賠償金の支払を命じた。 福岡高裁平成19年7月24日判決 上告不受理確定 判例時報1994号50頁 頭注ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.05.03
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