全10件 (10件中 1-10件目)
1

死因贈与について民法944条1項は準用されないとされた事例民法944条1項 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。平成11年4月4日 AはBに対し、自己の死亡を原因として、その所有にかかる本件不動産を贈与した。平成15年3月29日 B死亡平成19年4月7日 A死亡Bの相続人XがAの相続人Yに対して、前記死因贈与を原因として所有権移転登記の手続きを求めた。本件はYが不出頭であったが、死因贈与の効力について検討し、遺贈と死因贈与の相違及び民法941条1項を死因贈与に準用する旨の明文の規定がないことを考慮すれば、受贈者が贈与者より先に死亡したとしても、死因贈与の効力が失われることはないと判断してXの請求を認容した。死因贈与は、贈与者の死亡によって贈与の効力を生ずるものとされた契約であるが、贈与者が自己の死亡後のことを考慮してする財産の死後処分として、その社会経済作用において遺贈に類似しているところから民法544条は、死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用するものとしている。そして準用される範囲について、一般的には、遺贈が単独行為であることによる規定は準用がなく、遺贈の効力に関する規定は準用されるというのが多数説といえるが、細部につていは見解が分かれる。特に本件で問題とされている民法944条1項の準用の有無については、肯定すべきであるとする見解と否定する見解がある。以上のように学説の対立する状況の下において、本判決は受贈者の財産取得の期待権を重視し、死因贈与について、民法994条1項の準用を否定したものであり、理論的にはもとより実務的に重要な意義を有すると評されている。 判例タイムズ1271号181頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.21

歩行者同士の衝突事故 賠償責任を否定した事例東京高裁平成18年10月18日判決本件は交差点で91歳の女性歩行者Xと25歳の女性歩行者Yが衝突し、Xが負傷した事故について第1審が Yの注意義務違反を認めて779万円余(過失相殺3割)の賠償を命じたのに対し、本件控訴審判決がYの注意義務違反を否定したものである。第1審が認めた注意義務違反は2段の構成からなっている。すなわち、その第1は「道路を歩行する者は、自己の身体的能力に応じて、他の歩行者の動静を確認したうえで、歩行の進路を選択し、速度を調整するなどして他の歩行者との接触、衝突を回避すべき注意義務」であり、その第2は「歩行者の中には、幼児、高齢者、視覚等の障害者など一般の成人に比べて知覚、筋肉、骨格等の身体的能力が劣るため、歩行の速度が遅く、体のバランスを崩しやすく、あるいは、臨機応変に進路を変えることが不得手であり、ひとたび衝突、転倒すると重い傷害を負いやすいといった特質を備えるものが一定割合存在していることに鑑みると、健康な成人歩行者が道路を歩行するにあたっては、自己の進路上にそのような歩行弱者が存在しないかどうかも注意を払い、もし存在する場合には進路を譲ったり減速、停止したりして、それらの者が万一ふらついたとしても接触、衝突しない程度の関係を保つなどしてそれらの者との接触、衝突を回避すべき注意義務」である。本件控訴審判決は、Yが友人と並んで、人の流れに従ってゆっくり歩いて本件交差点の中央付近に至り、目指す店舗を探そうと首を左後方に向け歩みを止めかかった瞬間、Yの右肩から背中、腰にかけてXが接触したとの事実認定をもとにYの有責性を見出すことは困難であり、YがXを発見し、Xとの接触を回避することが可能であったという事実は認められず、Yに注意義務違反があったとはいえないとした。 判例タイムズ1271号171頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.20

注文者の工場内において作業に従事していた請負人の従業員との間に実質的使用従属関係があるとして注文者に請負人の従業員に対する安全配慮義務を認め損害賠償請求が認容された事例注文者(Y2)の工場でY1に雇用されたAが高さ90センチ足場面積40センチ四方の作業台の上に立ってライン上を流れる缶の蓋を検査する作業(検蓋作業)に従事していたが検蓋作業に従事中、作業していた作業台から転落し工場床面に頭部を強打して3か月後に死亡した。Aの遺族は請負人と注文者に対し損害賠償請求をした。本判決は、亡AはY2を注文者、Y1を請負人とする請負契約に基づきY1の従業員としてY2の工場において検蓋作業に従事していたことを前提にして、注文者と請負印の従業員との間における請負という契約の形式をとりながら、注文者が単に仕事の結果を享受するにとどまらず請負人の雇用する労働者から実質的雇用契約に基づいて労働の提供を受けているのと同視しうる状態が生じていると認められる場合、すなわち、注文者の供給する設備、器具等を用いて、注文者の指示のもとに労務の提供を行うなど、注文者と請負人の雇用する労働者との間に実質的に使用従属の関係が生じていると認められる場合には、その間に雇用契約が存在しなくても注文者と請負人との請負契約及び請負人とその従業員との雇用契約を媒介として間接的に成立した法律関係に基いて特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、注文者は当該労働者に対し、使用者が負う安全配慮義務と同様の安全配慮義務を負うものと解するのが相当であると判断した。 東京地裁平成20年2月13日判決 判例時報2004号110頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.14

少年Aが少年B及び少年Cから暴行を受けて死亡したことについて暴行が行われている現場に居た少年Y1、Y4及びY7がAを救護するための措置をとるべき法的義務を負っていたとはいえないとされた事例最高裁第1小法廷 平成20年2月28日判決少年Y1、Y4及びY7(被告少年らという いずれも15歳以下)は暴行の実行行為や凶暴に加わったことはないから基本的には被告少年らが暴行を制止せず救護のための措置を採らなかったという不作為について、その作為義務を負っていたかどうかが問題となる。第1小法廷は、関係者の人的関係、暴行にいたる経緯や暴行の経過、これらにより被告少年らが加害少年に対して恐れを抱くのも無理からぬ状況にあったことなどに照らし、被告少年らの暴行を制止する法的義務を否定した。次に救護義務いついても多数意見はこれを否定した原審を支持したが反対意見が付されている。 判例時報2005号19頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.13

貸金業者が期限の利益喪失特約により債務者が期限の利益を喪失したと主張するのは信義誠実の原則により許されないとされた事例平成11年10月29日 450万円貸付返済約束 平成11年11月から平成16年10月まで毎月28日限り元金各7万5000円及び経過利息を支払うという約束で利息は年29.8%、損害金は年36.5%の各割合で計算するものとされていた。また借主が各分割弁済日に支払うべき元金の支払を怠ったときは通知催告なくして期限の利益を失い、残債務全額及び及び残元金に対する遅延損害金を即時に支払う旨の特約があった。借主が過払い金の返還請求訴訟を提起したところ、被告は次のような主張をして争った。「借主は2回目の支払日である平成11年12月28日に支払うべき金員を2日送れた同月30日に支払っていることから、借主は本件期限の利益喪失特約に基づき期限の利益を喪失し、その後の支払は任意になされた損害金の支払いであって、貸金業法43条1項に基づく弁済とみなされるから法律上の原因があるので不当利得にあたらない」これに対し、原告は被告の主張は信義則に反するか権利の乱用であるとし、また本件においては貸金業法43条1項の要件を満たさないと反論した。原審は原告の請求を全部認容したので被告は控訴した。本判決は、まず、期限の利益喪失の有無の点について、原告は平成11年12月28日に元金7万5000円及び利息制限法び制限利率15%により計算した利息の合計12万7062円を払うべき義務があり、これを怠ったので本件期限の利益喪失特約に該当する事由が生じたということができるとした。しかし本判決は、本件の具体的な状況のもとで、期限の利益を喪失したと主張するのは信義則に反して許されないと判断した。その根拠とした事実は 1 借主は本件支払期間中を通じて貸主から一括弁済を求められたことも、一括弁済すべき義務が発生している旨知らされたこともなかった2 借主は平成11年12月28日の支払をわずか2日遅れたにすぎないこと、同日に支払うべき金額は12万7062円であったところ借主は約定のとおり17万9769円を支払うべき義務があると誤信しており、本来支払うべき金額を知っていれば支払えた可能性もあったといえること 3借主は第3回目以降も毎月28日の支払日に遅れて支払ったことがあったが貸主は遅れて支払われた分については同月29日から現実に支払った日までの間だけを年36.5%の割合で利息計算しその余を元金に充当計算しており借主は貸主のこのような取り扱いから遅れた日数分のみ利率の高い利息などを払えばよいと信じ切っていたこと4 貸主は借主が3のような誤信をしていることを知りながら一括弁済を求めるなどその誤解を解く努力をせず借主の誤信をそのまま放置して高利率の利息などの支払いを受けてきた などが挙げらている。また本判決は上記のとおり貸主が借主に対して期限の利益喪失を主張することは信義則に違反するから借主は貸主に損害金を支払う関係にないから領収書兼利用明細書の損害金の記載は事実と相違している等の理由により本件では貸金業法43条1項のみなし弁済規定は適用されないとした。 大阪高裁平成20年1月29日判決 判例時報2005号19頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.12

弁護士報酬に対する否認本件は破産者Aの破産管財人Xが、Y(Aが破産手続申し立て前に事件を依頼した弁護士)に対して、AがYに支払った報酬のうち適正金額を上回る部分や支払義務がないものがあるとして支払行為について破産法の否認権を行使した事案である。対象となった報酬は、過払金回収についての報酬・破産申し立て手続きの中途解約の清算額についてであった。神戸地裁伊丹支部平成19年11月28日決定 判例時報2001号88頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.08

借地権譲渡許可申請 土地所有者の優先買受権借地権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を競売により取得した第3者が、借地借家法20条1項に基づき、賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申し立てをした場合において、借地権設定者が、同条2項、同法19条3項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申し立てをすることは許されないものと解するのが相当である。最高裁平成19年12月4日第3小法廷決定借地権者が、賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を第3者に譲渡するために、借地借家法19条1項に基づき、賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申し立てをした場合において、借地権設定者が、同条3項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申し立てをすることは許されないものと解するのが相当である。最高裁平成19年12月4日第3小法廷決定 判例タイムズ1262号80頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.07

業務上の過重負荷と基礎疾患とが共に原因となって従業員が死亡した場合において、使用者の不法行為を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり、使用者による過失相殺の主張が訴訟上の信義則に反するとして民法722条2項の規定を類推適用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例最高裁平成20年3月27日第1小法定判決判例タイムス1267号 156頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.06

抵当権に基づく妨害排除請求最高裁第1小法廷 平成17年3月10日判決 判例タイムズ1179号180頁抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権限の設定を受けてこれを占有する者についても、その占有権限の設定に抵当権の実行としての競売手続きを妨害する目的が認められ、その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときは、抵当権者は当該占有者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として上記状態の排除を求めることができる。東京高裁平成20年2月28日判決は、抵当権が設定された建物の屋上に建設されたプレハブ式建物に第3者名義の所有権保存登記をしたことが、抵当権の実行を妨害する目的でされたものであるとして、同保存登記の抵当権抹消請求権を保全するため、同プレハブ建物について処分禁止仮処分命令を発令した。 判例タイムズ1266号226頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.04

自賠責保険 被害者の請求と治療費の請求が限度額を超えた場合、どちらが優先するか傷害についての損害を填補する自賠責保険金額は120万円である被害者が健康保険を使用して3割負担分だけを支払った場合、健康保険組合は残りの7割を給付するが加害者にその7割を求償する。加害者に求償するということは自賠責に請求できるということである。一方、被害者には別途損害が生じているところ健康保険からの求償との合計が120万円を超える場合どちらが優先するのか通常、被害者の損害が確定するのに時間を要することから、健康保険を使用した場合の健康保険組合からの求償が先に自賠責になされることが多く、被害者は治療費を差し引いた残りの金額を受領しているのが実務であった。最高裁平成20年2月19日第3小法廷は、被害者の請求が優先すると判決した。実務に与える影響は大である。 判例タイムズ1268号123頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.08.02
全10件 (10件中 1-10件目)
1