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執行役員の法的地位執行役員制度とは、一般的に、取締役会が決定した基本方針に従ってその監督の下で業務執行にあたる代表取締役以下の業務執行機能を強化するために、取締役会によって選任される執行役員が、代表取締役から権限委譲を受けて業務執行を分担し、それぞれが担当する領域において代表取締役を補佐する制度とされている。わが国においは、平成10年にソニーに導入されたのが嚆矢とされ、東京証券取引所の調査結果によれば、平成17年の時点で回答社数1317社のうち半数の649社の会社において執行役員制度が導入されている。なお、執行役員は会社法において設けられた執行役(404条、418条以下)とは異なり会社の機関ではない。執行役員の法的性質については、委任契約説、雇用契約説、両者の混合契約説の対立がある。そして、その法的性質のいかんは、執行役員に対する民法上の委任に関する規定の適用の有無、商法上の取締役に関する規定の適用ないし準用の有無、労働基準法の規定の適用の有無、就業規則や従業員退職金規定の適用の有無などに影響を与え得る事項である。もっとも、執行役員は会社の機関ではなく企業がその業務上の必要性などに鑑み任意に設ける役職であるから、会社においてこれを委任型、雇用型、又は両者の混合型の制度として導入することは、強行法規に反しない限り事由に許されてよいと考えられるのであって、その法的性質は個別事案毎にその実施に即して判断されるほかなく一般論としてこれを論じることはあまり意味がないと考えられる。会社の執行役員が会社に対し退職慰労金を請求した事案 最高裁平成19年11月16日第二小法廷判決 判例時報1991号 157頁 頭注ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.21

原告は東京第二弁護士会に所属する弁護士であるが、懲戒請求を受け、弁護士会の綱紀委員会が弁護士としての品位を失うべき非行にあたるなどとして懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をし、弁護士会が同議決に基づいて懲戒委員会に対し事案の審査を求め被告を委員長とする懲戒委員会が右事実を審査対象行為として審査手続きを開始し審査期日を開き、右審査対象行為について原告を戒告に処するとの議決をした。原告は被告において審査期日に弁明を述べさせないなどの違法行為があり、議決書において判断を示さない違法があったなどと主張し、右懲戒手続きにおける被告の行為が不法行為にあたるとして損害賠償を請求した。東京高等裁判所平成19年11月29日判決は弁護士が弁護士会懲戒委員会委員長に対して懲戒手続において違法行為があると主張する損害賠償請求は、国家賠償法第一条一項にいう「公共団体の公権力の行使にあたる公務員」に対する請求であり、懲戒委員会委員長が個人として損害賠償責任を負うものではない と判断した。 判例時報 1991号78頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.16

地方公共団体が、第3セクターの借入金債務について金融機関との間で締結した損失補償契約が、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条に違反し、無効であるとされた事例横浜地裁平成18年11月25日判決 確定法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条は、政府または地方公共団体が、法人の債務について民法上の保証契約、およびこれに類し同様の機能、実質を有する合意をすることを禁じており、川崎市が第3セクターの借入債務について金融機関との間で締結した損失補償契約は民法上の保証契約とは言えないまでも、それと同様の機能、実質を有するものであり同条に違反する参照条文 地方自治法242条2項 同法242条の2第1項4号 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第3条 金融法務事情1793号39頁裁判例では福岡地判 平成14年3月25日判決及びその控訴審である福岡高裁判決が本件のような損失補償契約を適法としているが、違法と判断した裁判例は見当たらない。なお、碓井光明「地方公共団体による損失の補償について」自治研究74巻6号3頁が、本判決と同様、損失補償契約は財政援助制限法3条に違反するとしていう。 金融法務事情1793号41頁最高裁平成19年9月21日 第2小法廷福岡高裁の判決に対する上告事件、上告受理申し立て事件上告棄却 上告受理申し立て 不受理福岡高裁判決要旨損失補償契約は、経済的効果の面において保証契約と類似するが、損失補償契約と債務保証契約は、法的にはその内容及び効果の点において異なる別個の契約類型であり、また、会社その他の法人のために地方公共団体が損失補償契約をし債務を負担することは法の予定するところであるといえる。(地方自治法221条3項参照)から、損失補償契約の締結自体をもって法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条に違反するものではない。 金融法務事情1830号 23頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.14

就業規則の不利益変更に関し、その合理性の有無について判断した事例退職金の減額事由にはあたらないとされた事例就業規則の不利益変更については、秋北バス事件判決(最大判昭和43.12.25)が変更にかかる「当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由としてその適用を拒否することはできない」と判示して以来、いわゆる「合理性の基準」に沿って判例が積み重ねられてきたところであるが、最高裁は第四銀行事件判決(最高裁平成9年2月28日判決 判タ936号128頁)及びみちのく銀行判決(最高裁平成12年9月7日判決 判タ1051号109頁)で更にその内容を詳細に説示し「当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法規範性を是認するものであることをいい、特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである」とした。事案は私立高校を経営する被告Yが、就業規則を変更し、懲戒解雇以外でも「迷惑退職」した者については退職金の一部を至急しないことがある旨の規定を設けていた。迷惑退職とは、退職を承認されたものの、退職直前に懲戒の理由または解雇に該当する事由等の不都合な行為があって、Yに迷惑をかけた場合を指し、原告はかねて懲戒戒告処分を受けていたり、更に退職直前の1か月の間に不都合行為を繰り返したりしたため、上記就業規則の減額条項を適用して退職金を減額支給したものであるとYは主張した。(1256万の退職金から約300万円減額した)京都地裁平成17年7月27日判決は、就業規則の変更については合理性があるとしたが、退職金の減額事由の該当性について、Yの退職金制度は賃金の後払的な性格の強いものであって、そのような性格の退職金を「迷惑退職」理由として減額するためには、単に原告が不注意などによりYに迷惑をかけた上で退職したのみでは足りず、原告に、長年の勤続の功労を減殺ないし抹消してしまうほどの背信行為や不信行為が存在し、これによりYが相当程度被害を受けた場合が必要であるとし、原告の行為はこれにあたらないとして原告の請求を認めた。 控訴されたが控訴審で和解成立 判例タイムズ1233号239頁 頭注就業規則の変更について従業員に対し、実質的に周知されたとは認められないとして無効と判断された事例退職金規定が変更された事例 1074万円から288万円へ原審は有効としたが、東京高裁平成19年10月30日判決は、従業員に対し実質的周知がされたものといえないとして無効とした。一般論として、就業規則の効力発生要件として、届出、意見聴取、実質的周知の3要件を具備することを要するか、その一部だけでよいか(実質的周知だけ)について争いがあり、最低基準効の場合と契約内容規律の場合とでそれぞれ議論がある。 判例時報 1992号137頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.10

貸金業法施行前の金銭消費貸借取引において利息制限法を超える利率の利息を取るのは不法行為に該当する消費者より貸金業者に対する過払金の返還請求は、法律構成としては、不当利得返還請求によるのが先例である。本件事案では不当利得返還請求については10年の消滅時効にかかりそれが援用されたため、予備的に主張されていた不法行為構成では消滅時効(除斥期間)が20年となり、本件事案ではこの消滅時効にかからないことから不法行為構成が検討され、これが認容されたものである。近時、利息制限法所定の制限を超える利息の請求が架空請求として不法行為を構成したもの(札幌高裁平成19年4月26日判決 判例時報1976号60頁)もあるので参照されたい。不法行為となる理由としては貸金業法が施行されたのは昭和58年11月11月1日である。貸金業法附則6条1項は、貸金業者がこの法律の施行前に業として行った金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、この法律の施行後に債務者が利息として金銭を支払ったときは、当該支払については43条1項及び2項のみなし弁済の規定は適用されないとしている。それなのに高利の利息を受領することは、債務者の無知に乗じたものであり、それは社会的相当性を欠く違法な行為である。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく! 神戸地裁平成19年11月13日判決 判例時報1991号119頁
2008.04.09

人格権侵害を理由とする差止め請求平穏生活権としての人格権に基づき差止め請求を認めた事例として東京地裁平成11年8月27日判決判例タイムズ1060号228頁があり、有名女優に対し右翼団体が街頭宣伝車や拡声器を使用した執拗な街頭宣伝活動をした事案において差止め請求が認められた。また静岡地裁浜松支部昭和62年10月9日決定 判例時報1254号45頁では、周辺住民から人格権侵害を理由とする、建物の暴力団組事務所としての使用禁止の仮処分が認容されている。東京地裁平成19年2月13日判決は、私道の敷地所有者が設置した鉄柱、看板により平穏な生活を送る人格的な法益を侵害するとして私道に接する建物所有者の敷地所有者に対する鉄柱、看板の撤去請求を認容した。 判例時報1990号65頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.04

建て貸しの事案において中途解約制限条項を入れなかったことが宅地建物取引主任者の説明義務違反とされた事例本件はXがその所有建物をZの要望に従って増改築した上でZに賃貸する契約(建て貸し)の仲介を不動産仲介業を営むYにに依頼し、X・Z間に期間を9年間とする建物賃貸借契約が成立したが、中途解約を制限する条項が盛り込まれていなかったため、Zから中途解約されて損害を蒙った。XがYに対し、仲介契約の債務不履行による損害賠償を求めた。Xが主張するYの債務不履行の内容は、本件賃貸借契約はいわゆる建て貸し(借主であるzの要望に従って建物を増改築した上でzに賃貸するもの)であるから増改築に要した投下資本(360万円)を回収するためには一定期間賃料収入を確保する必要があり、借主が中途解約した場合には残余期間の賃料を保証する条項(中途解約制限条項)を盛り込む必要があったのにYはこれを怠ったというものである。これに対しYは本件賃貸借契約書案(中途解約制限条項の盛り込まれていないもの)をXに示してその内容を説明しXはその内容を理解した上で契約を締結したので債務不履行はないと主張した。福岡地裁平成19年4月26日判決は4割の過失相殺の上、Xの請求を認めた。 判例タイムズ1256号120頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.03

外国裁判所の離婚判決がわが国において効力を有しないことの確認の訴えオーストラリア国籍を有する夫と被告は平成12年に、わが国において婚姻平成13年長男が生まれた夫と妻は平成16年3月まで、わが国で同居していたが別居するに至った夫は平成17年4月オーストラリアにおいて離婚訴訟を起こし平成18年2月6日同国ニューサウスウエールズ州ニューキャッスル連邦治安判事裁判所で離婚判決を得て、同判決は確定した。夫は平成18年5月2日本件離婚判決に基づいて埼玉県鴻巣市長に離婚届を出し、戸籍にその旨記載された。日本人である妻が、その離婚判決は外国判決の承認の要件を欠いているとして離婚の無効確認を求めたものである。東京家庭裁判所平成19年9月11日判決は、妻の請求を認容した。 判例タイムズ1255号299頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2008.04.02
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