全2件 (2件中 1-2件目)
1

破産手続開始決定がされた場合の執行手続取消しの可否(積極)事例Xは、Yに対する執行力のある判決正本に基づき、YのZに対する敷金返還請求権について債権差押命令の申立をし、執行裁判所により債権差押命令が発令された。その後、Yについて破産手続開始決定がされ、破産管財人が、本件差押命令の取り消しを求める旨の上申をしたため、執行裁判所は、Yについて破産手続開始決定がされたことを理由に、本件差押命令を取り消す旨の原決定をしたところ、Xがこれを不服として執行抗告をした。破産法42条2項は、債務者に対して破産手続開始決定がされた場合、破産財団に属する財産に対して既にされている強制執行は「破産財団に対してはその効力を失う」と規定する。抗告審(東京高裁平成21年1月8日決定)の要旨破産法42条2項は相対的無効を定めた規定であるから、本件差押命令は破産財団に対してのみ効力を失うにとどまり、破産財団が消滅した場合にはその効力を当然に回復するし、民事執行法上、破産手続開始決定がされた場合に、強制執行を取り消しうる旨の明文の規定が存在しないことから、破産手続開始決定がされたことにより、既に発令されている債権差押命令を当然に取り消すべきであるとはいえず、民事執行法40条の適用はない。債権差押命令では第三債務者にとっては、権利関係が必ずしも簡明であるとは言い難く、破産管財人による権利行使の観点から執行手続を取り消すことについて事実上の必要性があること、破産管財人が執行裁判所に対し、執行手続の取消しの上申をするのは、破産財団が消滅して強制執行手続の効力が回復することがほとんど想定し得ない場合に限られるから、差押債権者が不利益を被る可能性は限りなく小さいので、破産管財人が執行手続の取消しを上申した場合に限り、債権差押命令を取り消すという原審の取り扱いも是認しうる。本決定は、破産管財人の上申があった場合に、債権差押命令を取り消すという東京地裁民事21部(民事執行センター)の運用を是認しうるとしたものとして、実務上も参考になる。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.06.23

抹消予告登記のある不動についてなされた取引に民法94条2項の類推適用が否定された例抹消予告登記のある不動産の所有(共有)名義人から根抵当権の設定を受けた者が、真実の所有者に対し、民法94条2項の類推適用の保護を主張することができないとされた事例(名古屋高裁平成21年2月19日判決)本件は、係争地の登記名義人であったAとBに対し、Bの兄弟であるXが遺言等により単独で相続したとして真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求訴訟を提起し、確定勝訴判決を取得した後、登記未了にしていたところ、BがYのために根抵当権を設定し、その旨の登記をしたので、XがYに対して、根抵当権登記の抹消登記手続を求めた事案である。Yは、Xが前訴で勝訴したにも関わらず、係争地の登記について放置していたことから、Yに対し、民法94条2項の類推適用により、AB名義の登記が不実の登記であることを主張できないとして争った。原審は、Xは虚偽の外観をあえて作出したとは言えない等として、民法94条2項を類推適用することはできないとして、Xの請求を認容した。控訴審である本判決は、前訴による抹消予告登記が存在していたから、登記の外観上は、権利者は提訴したXか、訴えられた名義人のAB夫婦か、択一的な浮動状態にあり、係争地の登記を全体として観察すれば、所有者がAB夫婦であるとの積極的に虚偽の外観を示す外観はなかったと言うべきであるとして、本件は、外観を信頼した者について民法94条2項を類推適用することによって保護すべき場合には該当しないと判示して、控訴を棄却した。予告登記の制度について抹消登記請求等の裁判が提起されたことを、登記簿を閲覧するものに知らせて不動産取引の安全を図る趣旨で設けられていたが、濫用の弊害等を理由に、平成17年3月17日施行の不動産登記法により廃止された。ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.06.13
全2件 (2件中 1-2件目)
1