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保証会社に対する保証料が、貸金業者のみなし利息に該当する場合みなし利息とは、金銭消費貸借においては、原則として、債権者が受け取る元本以外の金銭は、名義のいかんを問わず利息とみなすことである(利息制限法3条本文)。その趣旨は、貸主が、利息以外の名義を用いて、利息の制限を潜脱することを防止する点にある。Xが、貸金業者に対するYに対し、利息制限法の制限利率に引きなおして計算した過払金の返還などを求めたところ、控訴審である原判決は、Xが保証会社Aに対して支払った保証料全額が利息制限法3条のみなし利息に当たると判断し、過払い金の請求を一部認容した。原判決の判断の根拠は、1 出資法5条2項所定の上限利率が引き下げられるのと同時にAが設立され、Yと信用保証基 本契約・業務委託契約が締結されたこと、2 その後、YはXに対する貸付に際し、Aの保証を条件とし、各貸付の度にAに対する保証 料を徴収していたこと、3 Xが支払う約定利息と保証料の合計額は利息制限法の制限利率のみならず、出資法5条2項 所定の上限利率も超えていること、4 Yは、回収不能となったときは、Xが支払った保証料を原資として保証債務の履行を受け ることができること、5 AとYの密接な関係からすればAが制限超過利息の支払いを拒むことは考えられないこと 等である。福岡高裁平成20年8月21日判決は、以下のとおり判示して、過払金の返還を求める部分について原判決を破棄し、原審に差し戻した。すなわち、保証会社に対する保証料の支払いがみなし利息に当たるとされるのは、保証料の支払いが形式的には保証会社になされているものの、最終的にはその利益が貸金業者に還流するなど保証料の支払いによる実質的な利益を貸金業者が取得していると認められるからである。本件において、原審が認定した事実からは、Yにおいて保証料について何らかの利益の還流を受けているのではないかと考えられる。しかし、AとYは別個独立の法人であり、Yが徴収した徴収した保証料の全額が一旦はAに送金されていることからすれば、Aにおいても、保証料から現に利益を得ていることが強く推認され、少なくともAが保証料から現に利益を得ている部分についてはみなし利息として計上できないが、保証料の配分について原審は十分な解明をしていない。保証会社に対する保証料の支払いがみなし利息に当たるか否かの点について先例となるのは、最二判平15・7・18判時1834号3頁である。 本判決は、この先例に沿った判断と評されている。判例時報2029号23頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.04.17

平成16年の民法改正により、保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じないとの規定(446条2項)が追加された。保証契約の書面性が要求された趣旨は、改正前は、保証人において自己の責任を十分に認識していなかったことが少なくなかったことから、保証を慎重に行わせるため、保証意思が外部にも明らかになっている場合に限り、その法的拘束力を認めるのが相当と考えられた点にある。保証人が名義貸しによって借主欄に署名押印した金銭消費貸借契約書は民法446条2項所定の書面に当たるとされた事例(事案の概要)Xが、Yに対し金銭を貸し付けたとして、貸金返還請求訴訟を提起したところ、Yは、自分は保証人に過ぎず、真実の借主は契約書上保証人とされているZであると主張した。これに対し、Xが、保証債務の履行を求める訴えを選択的に追加したところ、Yは、Xを貸主、Yを借主とする金銭消費貸借契約書が民法446条2項所定の書面に該当しないと反論した。(判旨)大阪地裁平成20年7月31日判決は、Yが主債務者として金銭消費貸借契約書に署名押印することにより、主債務者であるZと同じ債務を連帯して負担する意思が明確に示されていることに違いがない以上、保証意思が外部的に明らかにされていると解されるとし、保証人が名義貸しによって借主欄に署名押印した金銭消費貸借契約書も民法446条2項所定の書面に該当すると判断した。その上で、選択的に追加された保証債務履行請求について、Xの請求を認容した。(名義貸しについて)名義貸与者は、虚偽の外観作出について表見責任を免れないとされているが、相手方において名義貸しであることを知っていた場合には保護する必要がないから民法93条但し書きを類推適用して名義貸与者の責任が否定されるとするのが判例である(最二小判平成7年7月7日金法1436号31頁) 判例タイムズ1288号97頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく! <
2009.04.07

交通事故の加害者Yが被害者Xに賠償すべき人的損害の額の算定に当たり、Xの父が締結していた自動車保険契約の人身傷害補償条項に基づきXが支払を受けた保険金の額を控除した原審の判断に違法があるとされた事例本件は、事故当時12歳のXが運転する自転車とY運転の普通貨物自動車が交差点において衝突し、Xが重傷を負った交通事故について、XがYらに対し損害賠償等を求めた事案である。Xの父は、本件事故当時、A保険会社との間で、Xも補償の対象に含む人身傷害補償条項のある自動車保険契約を締結していた。Xは、人身傷害補償条項に基づき567万5693円の保険金の支払いを受けた。原審は、XとYの過失割合をいずれも5割と認定した上、損益相殺の見出しの下、過失相殺後の残額から上記人身傷害保険金等を控除して、Yが賠償すべき損害の額を認定した。最高裁平成20年10月7日第三小法廷判決は、上記人身傷害保険金の支払いをもってYの損害賠償債務の履行と同視できないこと、上記保険契約にはいわゆる代位に関する約定があり、上記保険会社は上記保険金の支払いによってXのYに対する損害賠償請求権の一部を代位する可能性があるが、原審が確定した事実関係からは、人身傷害補償条項を含む上記保険契約の具体的内容が明らかでないなど判示の事情の下では、Yが賠償すべき額を算定するに当たり、上記保険契約の具体的内容等について審理判断することなく、Xの過失割合による減額をした残損害額から上記保険金の額を控除した原審の判断には違法があると判示し、X敗訴部分を破棄し、同部分を原審に差し戻した。人身傷害保険においては、被害者の過失の有無、割合にかかわらず、人傷基準によって積算された損害額について、契約保険金額の限度で保険金を支払うこととされており、人傷基準は、訴訟における損害額の算定基準とは異なる。そのため、被害者側に過失がある場合に、人傷保険金を支払った保険会社がどの範囲で被害者の損害賠償請求権を代位取得するかが問題となる。代位の成否及び範囲を判断するに当たっては、少なくとも、約款の定め等保険契約の内容を正確に確定した上で、必要な限度で約款解釈を行う必要がある。 判例タイムズ1288号59頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.04.03

転売代金に対する物上代位Aは商品をBに売却し、BはCに転売した。代金はC→B→Aと順次払われるが、C→Bの代金が払われない状態のときにBが倒産した。この場合、一定の条件の下に、AはCに直接代金を請求できる場合がある。破産にも打ち勝つ手法である。対象は転売代金が典型例であるが、転売と同視できる請負代金に対し、どこまで認められるかが論点となっている。東京高裁平成20年5月26日決定は否定例債務者は第三債務者に対して請負契約の履行として本件各商品(家具類)を納入しており、また、請負代金債権の全部又は一部を本件各商品の転売による売買代金債権と同視するに足りる特段の事情も認められないとして、債権者の動産売買の先取特権(物上代位)に基づく債権差押命令の申立を却下した原決定が維持された事例抗告人は、債務者に対して本件各商品(机、いす、ロッカー等の家具類)を売却したことによる動産売買の先取特権(物上代位)に基づき、債務者の第三債務者に対する本件各商品の転売代金債権の差押えを申し立てた。これに対し、原審は、本件各商品の納入・設置は、債務者・第三債務者間の建物新築工事の請負契約の履行として行われたもので、債務者・第三債務者間の転売の事実は認められず、また、請負代金債権の全部又は一部を本件各商品の転売による売買代金債権と同視するに足りる特段の事情も認められないとして、これを却下した。抗告審(東京高裁平成20年5月26日決定)は、以下のような理由により、抗告人の主張を排斥した。 1 本件各商品の納入・設置は ア 本件工事全体の完成と第三債務者への引き渡し前に行われており イ 一部の商品については他の関連する工事との整合性をも考慮して差し替えられる など、明らかに本件工事の一部として行われたものであって、動産売買とその据 付工事として行われたと認めることは困難である。 2 請負代金全体に占める本件各商品の価額の割合は約2.48%にすぎないことからすると、 本件各商品の転売による売買代金債権と同視するに足りる特段の事情も認められず、 本件事案の下では家具工事部分を他から切り離して取り扱うのも相当とは言えない。動産売買の先取特権については公示方法が不十分であることと相まって、動産売買の先取特権(物上代位)に基づく転売代金の差押えについては、執行実務上、担保権の存在については高度の証明が要求されている。本決定は、最高裁決定(平成10年12月18日民集52巻9号2024頁)の判断枠組みに沿ったものであり、従来からの執行実務の運用に沿うものであると評されている。 判例タイムズ1287号261頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.04.02
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