2017年6月8日20:45に欧州金融政策「ECB政策金利」が発表されます。
本発表後、21:30からはECB総裁の会見があります。発表から数分後にはそちらの会見を睨んだ動きに移行されがちです。
本指標の要点は下表に整理しておきました。
今回の市場予想は現状維持となっています。
調査期間において、2015年12月・2016年3月を除くと、市場予想通り現状維持でした。市場予想通り現状維持だったときだけの集計結果を下表に纏めておきます。
次に、本指標発表前後にポジションを持つときのポイントを整理しておきます。
本指標で取引する上での注意点です。
- 本発表後、21:30からはECB総裁の会見があります。発表から数分後にはそちらの会見を睨んだ動きに移行されがちです。これまでのECB総裁発言では金融緩和の早期解除に否定的です。否定を否定したりするとEUR買い、直前の報道で情勢に変化がなければ陽線か陰線かわからない、が基本スタンスです。
- 過去の傾向から反応方向は確率的に明確です。直前1分足は陰線(100%)、直後1分足・直後11分足は陽線(それぞれ81%・75%)です。
実際にこのようなポジションを取るか否かは、以前の緩和スタンスが最近では変化しつつある点をどう捉えるか、です。「変化した」と捉えるなら、反応方向は全て逆になる可能性があります。この点は過去データで陽線率や陰線率を求めても読み切れない部分です。
直前報道を見ても情勢変化がわからなければ以前の確率に従い、情勢が変化したようなら発表時刻を跨いで取引せずに追撃に徹する、のが良いと思います。
指標については、次の通りです。
- 直前1分足は、調査期間において陽線だったことがありません。過去平均では、跳幅平均が12pips・値幅平均が8pipsなので、ポジションを取って数pipsが狙えます。
但し、事前報道でECB総裁会見での金融緩和の早期解除の発言が見込まれるなら、陽線となる可能性があるのでご注意ください。 - 直後11分足は、直後1分足との方向一致率が81%です。方向一致時に直後1分足と直後11分足を比較して、跳値同士で反応が伸びたことは69%、終値同士で反応が伸びたことは46%となっています。
- 反応一致性分析の結果では、直前1分足・直後1分足・直後11分足の反応方向は、それぞれ陰線・陽線・陽線となっています。
シナリオは次の通りです。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
- 直後1分足は陽線と見込みます。
- 直後11分足は、反応方向が確認できたら追撃ポジションを取得して短期利確、2回目以降の追撃は直後11分足終値が伸びたことは2回に1回未満なので深追いしない、が基本スタンスとなります。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正している、というのが実情です。
【1. 指標概要】
以前、黒田日銀総裁が言ったように金融政策の手段は多岐に亘り、我々が子供の頃に学校で習った公定歩合は金融政策ではなくなっています。
まず「政策金利」とは、中銀が市中銀行に対して融資をする際の金利のことを指しており、日本の場合には「無担保コール翌日物金利」を指しています。
以前は金利政策のことを指して「公定歩合」と呼ばれていました。がしかし、現在は金利が自由化されているため、公定歩合による金利操作を行うことができません。それで、日銀が無担保コール翌日物市場という短期金融市場に直接介入して短期金利を操作しているのです。
公定歩合(「基準割引率および基準貸付利率」)というものは残っているものの、これは短期金融市場における金利上限として機能しているだけであり、政策金利ではありません。
そして、ECBの「預金ファシリティー金利」とは日銀における「付利」に相当します。
市中銀行の貸出金利は、付利の水準が貸出金利下限として機能するため、付利の上げ下げが中銀金融政策の手段たり得ます。
但し、日欧のように付利がマイナスになることを「マイナス金利」といい、これは自国資金が他国通貨での運用に流れるため、通貨安を招くと批判を受けています。
更には、米日欧の中銀が相次いで実施した中銀による国債等の買い入れ施策は、買入にせよ売却にせよ、そのペース(規模)を制御することで金融政策たり得ています。
かつてのような金利操作だけでは政策効果が薄まってしまい、何だかこうした中銀金融政策の多様化が進んでいます。がしかし、その本質が緩和か引締のどちらかに過ぎない以上、多様化は弊害の少ない規模拡大を模索しているだけなのです。
以下の調査分析範囲は2015年1月分以降前回までの19回分のデータのうち、「市場予想通り現状維持」だった17回のデータに基づいています。
(2-1. 過去情報)
下図に過去の市場予想と発表結果を示します。
2015年12月と2016年3月を除くと、市場予想通り現状維持となっています。今回の市場予想は現状維持となっています。
週初め6月5日の値動きを見る限りでは、EURが仏国民議会選挙・英国総選挙を睨んで動きずらく、USDもロシアゲートでの前FBI長官の議会証言が予定されているので動きづらくなっているようです。
ただ、この日の英議会選挙で与党議席減や、ECB総裁会見での緩和縮小ガイダンスが発表される見込みが強まると、EUR上昇が見込まれます。
当日は、ロイターその他の前日までの配信記事を読み直しておくと良いでしょう。
記事判別のポイントは、これまでのECB総裁発言では金融緩和の早期解除に否定的だったことです。否定を否定したりするとEUR買い、情勢に変化がなければ陽線か陰線かわからない、が基本スタンスです。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
直前1分足は、調査期間において陽線だったことがありません。過去平均では、跳幅平均が16pips・値幅平均が9pipsなので、ポジションを取って数pipsが狙えます。
但し、事前報道でECB総裁会見での金融緩和の早期解除の発言が見込まれるなら、陽線となる可能性があるのでご注意ください。
【3. 定型分析】
(3-1. 反応性分析)
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
直後11分足は、直後1分足との方向一致率が81%です。方向一致時に直後1分足と直後11分足を比較して、跳値同士で反応が伸びたことは69%、終値同士で反応が伸びたことは46%となっています。
つまり、確率的には反応方向が確認でき次第、追撃ポジションを取得して短期利確、2回目以降の追撃は直後11分足終値が伸びたことは2回に1回未満なので深追いしない、が基本スタンスとなります。
(3-2. 反応一致性分析)
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
過去の傾向から反応方向は確率的に明確です。直前1分足は陰線(100%)、直後1分足・直後11分足は陽線(それぞれ81%・75%)です。
実際にこのようなポジションを取るか否かは、以前の緩和スタンスが最近では変化しつつある点をどう捉えるか、です。「変化した」と捉えるなら、反応方向は全て逆になる可能性があります。この点は過去データで陽線率や陰線率を求めても読み切れない部分です。
直前報道を見ても情勢変化がわからなければ以前の確率に従い、情勢が変化したようなら発表時刻を跨いで取引せずに追撃に徹する、のが良いと思います。
(3-3. 指標一致性分析)
指標一致性分析は、調査期間における政策変更が過去2回しかなく、データ不足のため行いません。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照ください。
以上
2017年6月8日20:45発表
以下は2017年6月8日21:37頃に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
発表結果は、各種金利に変更なし、です。
一方、声明では、金利が長期に亘って現行水準を維持する見込みと、量的緩和は年内実施し必要に応じて延長と、が示されました。
反応は、直前10-1分足が陽線、直前1分足が陰線、直後1分足が陽線、直後11分足が陰線でした。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
発表時刻を跨いだ直後1分足は、直前10-1分足と方向が一致し、利確できました。
直後11分足は、順張り短期利確というシナリオでした。がしかし、124円に達すると反転して、陰線へと転じました。最初の追撃はうまくいったものの、2回目の追撃は押し目と思ったポイントでそのまま下がり続け、損切となりました。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
直前10-1分足と直後1分足との方向一致率が高い点は、その通りになりました。
直後11分足は、短期利確すべき点を良しとするものの、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高い点は外しました。これは確率の問題なので仕方ありません。
(6-2. シナリオ検証)
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上