\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}(#1)}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Colim}{\mathrm{colim}}
\newcommand{\CommaCat}[2]{(#1 \downarrow #2)}
\newcommand{\Func}[2]{\mathrm{Func}(#1,#2)}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mb}[1]{\mathbf{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Nat}{\mathrm{Nat}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{\Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Sub}{\mathrm{Sub}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
\mathscr{E} = \Func{\Opp{\Ms{C}}}{\Mb{Set}} \quad (\text{†2})
\end{equation*} がトポスになることの証明を追っている.
†1: Michael Barr, Charles Wells, "Toposes, Triples and Theories"
†2: ここで $\Ms{E}$ の対象となる関手のソースの圏として $\Ms{C}$ ではなく逆圏 $\Opp{\Ms{C}}$ を指定している. だから, 考えている関手は共変関手 (covariant functor) ではなく反変関手 (contravariant functor) ということになる. どうしてこうするのかまだ実感できていないが, 本には応用上便利になるからであって $\Func{\Ms{C}}{\Mb{Set}}$ で共変関手による議論を進めても全く同様の結果が得られる, と書いてある. なお, 本書においては, 圏の間の写像 $F : \Ms{C} \rightarrow \Ms{D}$ で,
(i) $\Ms{C}$ の射 $f : A \rightarrow B$ に対して $Ff : FA \rightarrow FB$ は $\Ms{D}$ の射である;
(ii) 任意の対象 $A \in \Ob{\Ms{C}}$ に対して $F(\Id{A}) = \Id{FA}$ が成り立つ;
(iii) $\Ms{C}$ の射 $g : B \rightarrow C$ に対して $F(g \circ f) = F(g) \circ F(g)$ が成り立つ.
を満たすものを $\Ms{C}$ から $\Ms{D}$ への共変関手, または単に関手と定義する. その上で関手 (= 共変関手) $F : \Opp{\Ms{C}} \rightarrow \Ms{D}$ を $\Ms{C}$ から $\Ms{D}$ への反変関手と定義している.
その中で
\begin{equation*}
\Sub(\Colim\, D) = \lim \Sub(D)
\end{equation*} という命題が出てくる. ここで $D : \Ms{I} \rightarrow \Ms{E}$ は任意の $\Ms{E}$ 内の図式, $\Sub : \Ms{E} \rightarrow \Mb{Set}$ は部分対象関手である.
非常にきれいな結果だと思う.
この命題の証明を追いかける中で, 圏論の基礎的な部分, 特に集合の圏 $\Mb{Set}$ の性質に関わるいくつかの事柄を再確認した.
自分の理解が充分でなかったためである.
せっかくなので復習したことをまとめておく.
ここではまず引き戻しについて.
定義 (引き戻し).$\,$ 図式 $D$:
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
~ & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*} に対して, 対象 $P$ と 2 つの射 $p_1 : P \rightarrow A$, $p_2 : P \rightarrow B$ の組で次の条件 (i), (ii) を満たすものを図式 $D$ に対する 引き戻し(または ファイバー積 (fiber product)) と呼ぶ.
(i)$\,$ 図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である;
(ii)$\,$ 対象 $T$ と 2 つの射 $h : P \rightarrow A$, $k : P \rightarrow B$ の組で図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{h} \ar[r]^{k} & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にするものに対して, 射 $(h, k) : T \rightarrow P$ で図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=22pt {
T \ar@/_/[dddr]_{h} \ar[dr]|{(h, k)} \ar@/^/[drrr]^{k} & ~ && ~ \\
~ & P \ar[dd]_{p_1} \ar[rr]^{p_2} && B \ar[dd]^{g} \\
~ & ~ & ~ & \\
~ & A \ar[rr]_{f} && C
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にするものが一意的に存在する.
集合の圏 $\Mb{Set}$ における引き戻しとは具体的にどのような集合になるのか.
少し考えると $\Mb{Set}$ における図式 $D$ に対しては, 次の集合 $P$ が引き戻しとなることがわかる.
\begin{align*}
P &= \left\{\, (x, y) \in A \times B \mid f(x) = g(y) \,\right\} \\
&= \bigcup_{z \in C}^{~}\, (f^{-1}(z) \times g^{-1}(z)) \\
&= \bigcup_{z \in C}\, (f^{-1}, g^{-1})(z).
\end{align*} ここで 2 行目 (または 3 行目) は各 $z \in C$ に対して定まる $A \times B$ の部分集合 $f^{-1}(z) \times g^{-1}(z)$ (または $(f^{-1}, g^{-1})(z)$) の $C$ 全体にわたる和集合である.
一般的には引き戻しは圏における極限の一種であり, 図式 $D$ に対して
\begin{equation*}
P = \lim\, D
\end{equation*} とも書かれる.
では, 圏における極限とは何だったろうか.
これについては別の文章で書く.
タグ: 圏論
数学
引き戻し (pullback)
トポス (topos)
共変関手 (covariant functor)
反変関手 (contravariant functor)
ファイバー積 (fiber product)
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