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2017年06月26日
通訳稼業の思い出話(六月廿三日)
オロモウツに住んでいる日系企業の方の誘いで、以前通訳として仕事をしていたときにお世話になった別の街の日系企業の方と三人でお酒を飲みに行った。ややこしい書きぶりで申し訳ない。一応匿名性は維持したいと思っているので、わかる人にはわかるんだろうけれども、固有名詞は出さないことにしている。そうなると、こんな書き出しになってしまうのである。
夕方の六時ぐらいに集まって夕食がてらお酒を飲み始めて、気が付いたら十時という、話のかみ合う人たちと少人数で濃密な会話を交わしながら飲むお酒は美味しいとうことを十分に感じさせてくれる幸せなお酒だった。誘ってくれた方には、感謝の言葉しかない。
あれやらこれやらいろいろなことについて話したのだけど、えっやめてよと思うような話が一つあった。以前通訳をしていた工場では、十年ぐらい前に仕事をしていた連中がまだ残っていて、日本から英語もよくわからない人が来て話が通じないときに、そいつらがグーグル翻訳を使うらしいのだけど、その時にあの人に聞いてみようと言って、昔の通訳、つまり俺の名前を使うらしいのである。
あいつらに忘れられていないというのは、嬉しいことであるけれども、グーグル翻訳と一緒にしてくれるなというのが正直な気持ちである。何せ、今は知らず、かつてその工場で通訳をしていたころのグーグル翻訳というのは、チェコ語で「prosím(お願いします/どうぞ)」と入れると、日本語で「くそしてえ」と出てくるような代物だったのだ。お前ら俺の通訳なんてそんなレベルだと思っていたのかとついひがんでしまう。
このグーグル翻訳の素晴らしい翻訳を発見したのが、オロモウツまでのみに来てくれた人なんだけど、あのときは、もう一人の日本人と三人で、この「prosím」が「くそしてえ」になる論理を探して盛り上がったものだ。結局、ある状況では、つまりもれそうになってこらえきれない状態で、トイレを貸してほしいとお願いするときにだったら、「くそしてえ」と言う意味で「prosím」を使えるんじゃないかということでまとまったのだったか。
この手の技術は日進月歩で進化しているから、今ではそんなひどい訳は出てこないと思いたいけれども、自分では使わないからなんとも言えない。書式の決まった文書の翻訳ならともかく、言葉にされない部分まで読み取って訳さなければならない通訳の場合には、今後も機械に頼りきるというわけにもいくまい。
それで、思い出したのが、工場の借り手と貸し手の間の話し合いを通訳したときのことだ。チェコ人スタッフを通じて話をしてもあんまり話が通じないからきてくれと言われて行ったら、トイレをどうするかの話をしていた。日系企業が借りた工場のトイレがあまりにひどすぎ、貸し手に改修をお願いしてもなかなかやってくれないので、自社でお金を出して新しくきれいなトイレを設置したらしい。
それに対して、貸し手側が賃貸契約が終わって出て行くときには、元に戻す、つまり新しいトイレを撤去してくれと言っていたのかな。借り手の日系企業にお金を払ってトイレを買い取るのは、経済的に難しいとか言い出したのに、日系企業の社長が、そんなケツのアナの小さいことは言いませんよと言って笑いを取ったあと(それをそのまま訳してしまう通訳も通訳だけどさ)、トイレなんて持って帰るわけにもいかないんだからただで差し上げると、寄贈することを申し出た。
そうしたら、それも税金の問題があるから困るという。最終的には、1コルナというとりあえず買い取りましたという言い訳の立つ最低限の価格で譲るということで話がついたのだったかな。通訳しながら、チェコにはややこしいルールがあるんだなあと思っていたのだけど、日本にも同じような決まりはあるかもしれない。まっとうな社会人として仕事したことがないからよくわからないのだよ。
それから、電気、ガス、水道なんかの料金請求に関する通訳もしたことがある。一般家庭でもそうなのだが、チェコでは、月々の使用量に基づいて料金を払うのではなく、前年の使用量に基づいて、毎月一定の額を支払っておき、年末に一年間の実際の使用量を基に金額を調整する形になっている。追加で払うこともあれば、お金が戻ってくることもあるのである。
日系企業の側が、それだと月々の実際の生産コストが算出できないから、毎月検針した上で、使用量に基づいた料金を請求する形にしてほしいと申し入れたのだ。財政的には、毎月支出が一定していた方が有利なはずなのに、何でそんなことを言い出すのかと、なかなか理解してくれず話がこじれたところに通訳として呼ばれたのだ。
電気会社などがこちらは善意で毎月一定額の契約を申し入れているのに、その善意をないがしろにするなんてと不満そうな顔をしているのを、毎月の経費を知ることの重要性を強調し、請求の仕方が変わることで手間が増えるなら多少料金が上がってもいいからとか何とかなだめて、要求を呑んでもらったのだったかな。
通訳ってのは言葉だけの問題じゃないのである。せっかく思い出したから、この手の話もいくつか書いてみることにする。
6月24日17時。
いや、真面目な話もしたんだよ。ケンタウルスとか、パンダとか、現場力とか。6月25日追記。