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図書館に予約していた『米中ハイテク覇権のゆくえ』という本を待つこと3ヶ月でゲットしたのです。アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。【米中ハイテク覇権のゆくえ】NHKスペシャル取材班、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より国家戦略のもと、ハイテク分野で急速な成長を遂げる中国。アメリカの強さの源泉であった「情報」や「金融」、そして「AI」などの分野で、その“覇権”に迫らんとしている。激しさを増す二つの大国の競争は、世界をどこへ導くのか?選択を迫られる日本の運命は?米中攻防の真実に迫る取材で大反響を呼んだNHKスペシャルを新書化。「新冷戦」の今後を読み解く一冊!<読む前の大使寸評>アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。<図書館予約:(6/30予約、9/25受取)>rakuten米中ハイテク覇権のゆくえ第3章「次世代通信5G攻防戦」でファーウェイの技術開発について、見てみましょう。p137~140 <加速する5Gの技術開発> 目下、研究開発の最前線になっているのが、次世代通信規格「5G」だ。5G製品の責任者を務める楊超ヒン総裁は2019年3月の記者会見で、こう述べて技術力の高さをアピールした。「ファーウェイは5Gの技術研究を10年以上行なっており(技術面で)同業他社よりも12ヶ月から18ヶ月先を進んでいる。ファーウェイが北米市場に参入できれば、その地域の5Gの整備費を15%以上削減できるだろう。世界では3Gを5億人のユーザーが使うのに10年かかったが、4Gでは5年に短くなり、5Gではたった3年で普及すると見ている」 この言葉通り、ファーウェイの5Gの技術開発は勢いを増している。ファーウェイが取得した5G関連の特許は2750件を超え、2019年5月時点で、ヨーロッパや中東、アジア太平洋の通信事業者と42件の契約を結び、10万の基地局を整備したという。 5Gの通信設備ではスウェーデンのエリクセンやフィンランドのノキアも有力企業だが、コストなどの競争力ではファーウェイがリードしているとされている。これが、各国がアメリカによる製品の締め出し要請に素直に応じない由縁でもある。 ファーウェイと取引がある、日本企業のある担当者と雑談していた際、「ファーウェイの性能は優れていて、他社よりも安いのが魅力だ。アメリカとの関係で今後は使いづらいが、他国がファーウェイ製品を使っていく中で、日本だけがコストが増えて整備が遅れることになりはしないだろうか」と心配そうに話していたのが、印象に残った。 <自動運転のAIも開発中> ファーウェイが研究開発を強化しているのは5Gにとどまらない。AIの開発にも力を入れていて、報道公開では2012年に社内で設立された「ノアの箱舟研究所」と呼ばれるAIの研究所も案内された。この名称は、デジタル社会のビッグデータの洪水に飲み込まれあいよう、人類を救うノアの箱舟の逸話になぞらえて、任CEOが名付けたものだという。世界各地で計300人の技術者が研究に従事している。 ここも撮影不可だったが、研究所では、スマートシティの取り組みとして、AIを使って街全体の消費電力を抑えたり、写真を自動補正して色鮮やかにしたりする技術の開発が行なわれていた。このうち印象に残った事例は、「自動運転」の技術だ。ファーウェイはこの研究所で開発したAIを使って、ドイツのアウディと連携し、自動運転車の開発を行なっているという。 現場で見せられたデモ映像では、上海の街なかを自動運転車が走行し、無人で車庫入れする様子が映し出されていた。すでに自動運転の技術で、上から2番目の「レベル4」を実現したということで、スムーズな走行に見えた。今後、5Gやスマートフォンなど通信分野だけではなく、AIの分野でも競争力を高め、米中の技術対立の局面が増えていくのかもしれない。 <アメリカを挑発、そして提訴> 2019年1月に任CEOが日本を含め国内外メディアに姿を現わして以降、ファーウェイは積極的な対外発信に舵を切り、反撃のボルテージを上げている。2月にはアメリカの主要紙に全面広告を出し、「あなたが聞くすべてのことを信じないで、私たちに会いに来て下さい」とアピールした。 また同月にスペイン・バルセロナで開かれた大規模展示会「Mobile World Congress 2019」の基調講演では、郭平副会長は、皮肉たっぷりのスピーチを披露した。「ファーウェイにかつてないほど関心が集まっていますが、これはきっと我々が何か正しいことをやっているからなのでしょう。プリズムよ、プリズム。この世で一番信頼できる国はどこ? これは重要な質問です。この質問を理解できないのなら、エドワード・スノーデン氏に尋ねてみて下さい。最高のテクノロジー、そしてより高いセキュリティーを考えるなら、ファーウェイを選んでください」「プリズム」とは、アメリカ政府の情報機関、NSA(国家安全保障局)が、大手インターネット関連企業を対象に、大量の個人情報の収集を秘密裡に行なってきたとされる監視システムのことだ。CIAの元職員で、ロシアに亡命したエドワード・スノーデン氏がその存在を暴露した。『米中ハイテク覇権のゆくえ』3:拡大するAIの軍事利用『米中ハイテク覇権のゆくえ』2:中国製AIの脅威『米中ハイテク覇権のゆくえ』1:「中国製造2025」の問題
2019.09.30
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図書館に予約していた『米中ハイテク覇権のゆくえ』という本を待つこと3ヶ月でゲットしたのです。アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。【米中ハイテク覇権のゆくえ】NHKスペシャル取材班、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より国家戦略のもと、ハイテク分野で急速な成長を遂げる中国。アメリカの強さの源泉であった「情報」や「金融」、そして「AI」などの分野で、その“覇権”に迫らんとしている。激しさを増す二つの大国の競争は、世界をどこへ導くのか?選択を迫られる日本の運命は?米中攻防の真実に迫る取材で大反響を呼んだNHKスペシャルを新書化。「新冷戦」の今後を読み解く一冊!<読む前の大使寸評>アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。<図書館予約:(6/30予約、9/25受取)>rakuten米中ハイテク覇権のゆくえ第2章2の「拡大するAIの軍事利用」について、見てみましょう。p89~94 <グーグルの離反・・・難しい連携> アメリカ政府や議会に比べると、中国のハイテク覇権に対する民間企業の警戒度はおいなべて低い。それどころか、政府の規制が強化されて中国からの投資が受けられなくなることを懸念するアメリカ企業も少なくない。 とりわけDIU(国防イノベーションユニット)に衝撃が走ったのが、国防総省がアメリカの大手IT企業グーグルと進めてきた「メイブン計画」から、その当のグーグルが2018年に撤退を決断したことだった。「メイブン計画」は、アメリカのドローンが上空から撮影した膨大な量の動画をAIに学習させ、標的かどうかをより正確に分析させるものだ。(中略) ただ中国の巨大な市場と優秀な人材は、アメリカのIT企業にとってかなり魅力的なのも事実だ。グーグルに批判が集中したが、実は、他の大手IT企業のマイクロソフトもアマゾンも、2018年に上海にAI研究センターの開設をそれぞれ発表している。 国防総省内で強まる懸念とは裏腹に、アメリカのIT企業の中国への進出が目立っているといえる。民間企業との連携を期待されて民間企業から引き抜かれたブラウン氏だが、その対策に頭を悩ませている。 「アメリカ政府や議会では中国に対する警戒心が強まっているが、アメリカの民間企業の間ではまだ弱いのが実態だ。中国とハイテク覇権争いが起きているという危機感が薄い。我々はそれを伝えるおとから始めなければならない。貴重な技術を守るには企業自身が警戒を強めて対策を取ることが必要なのに・・・」 <AIが戦場を制する日> 一方で、DIUに積極的に協力するアメリカの企業も確かに存在する。 私たちはその一つ、テキサス州オースティンの通称「シリコンヒルズ」にあるAI開発企業「スパーク・コグニション」を訪れた。同社は、ボーイング社と連携して「空飛ぶ無人タクシー」「無人旅客機」の構想を進めている企業として、メディアの注目を集めている。「空飛ぶ無人タクシー」は、2019年1月、南部バージニア州で試験飛行が行なわれ、最初の一歩を踏み出した。同社が手掛けるのは、AIとブロックチェーンの技術を使い、大量の無人旅客機を同時に安全に飛行させる空の管制機能の確立だ。 スパーク・コグニションは、パキスタン系アメリカ人のアミール・フセイン氏が立ち上げた企業だ。ジョン・アレン退役海兵隊大将が取締役会の代表を務めてるほか、国防総省の高官などを務めたウェンディー・アンダーソン氏が軍事・安全保障の責任者となっている。 フセイン氏とアレン退役大将は、共著『ハイパーウォー』で「AIの登場が戦争の有り方を根本的に変える」と予測している。ただし、アメリカ国防総省は、映画『ターミネーター』で登場した殺人ロボットのような完全自立型のAI兵器は認めていない。完全自立型とは、人間の意志が介在することなくAIが自ら標的を決め攻撃を実行する兵器だ。(中略) しかし、AIの軍事利用は拡大している。スパーク・コグニションはアメリカ国防総省と契約を結び、空軍の部隊や海軍の潜水艦が大量のデータをAIで分析することを支援している。『米中ハイテク覇権のゆくえ』2:中国製AIの脅威『米中ハイテク覇権のゆくえ』1:「中国製造2025」の問題
2019.09.30
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朝日新聞の吉岡記者といえば、チャイナウォッチャーとして個人的に注目しているわけで・・・・その論調は骨太で、かつ生産的である。中国経済がらみで好き勝手に吹きまくる経済評論家連中より、よっぽどしっかりしていると思うわけです。朝日のコラム「多事奏論」に吉岡桂子記者の記事を見かけたので紹介します。*****************************************************************************2019年9月28日(多事奏論)米国の「代理人」脱却の機会により 散らばったジグソーパズルの最後のピースのかたちは竜か、象か。長く続いた交渉の鍵を握るのは、中国とインドだ。 アジアの経済協力の新たな枠組み「東アジア地域包括的経済連携」。英語の頭文字をとって「RCEP(アールセップ)」と呼ばれる。タイなど東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランドにインドを加えた16カ国が、2013年から話し合いを続けている。年内の協定妥結を目指して今週も、ベトナム中部の港湾都市ダナンに交渉官が集まった。 交渉の曲折は、中国の台頭を受けてアジアで唯一の経済大国ではなくなった日本が、地域で生きる道を模索し、迷い、築こうとする姿と重なる。 * RCEPは、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な自由貿易圏をつくる。米トランプ政権の「一国主義」に対する防波堤として期待する声もある。 大国が均衡するてんびんの軸でありたいASEANは、すべての交渉相手国と類似の協定を持つ。つながりがない主な組み合わせは日中、日韓、中印。歴史や領土問題で対立が絶えず、関係が不安定な組み合わせだ。製造業のサプライチェーンや人々の往来を通じて経済のつながりは深いのに、政治的な障害が大きい。RCEPはこれらの経済パワーに連携を促す意味が大きい。 協定の礎である関税の撤廃水準をめぐって激しい抵抗を示すのは、インド。日本円にして20兆円近い貿易赤字の約3割を占めるのが、スマホなど中国製品である。 ブレーキを踏むインドに業を煮やしたマレーシアの長老政治家マハティール首相は今夏、印豪などを外す「(ASEANと日中韓の)10+3の方がとりあえずは良い」と述べた。 通商交渉で独自の立場を貫くことが多いインド抜きで、まずは結びたがっているアジアの国は多い。日本政府の高官も中国政府の交渉担当者から「インド外し」を非公式に打診されたことを明かす。 日本は退けた。交渉の難度が増すのは承知で彼らを引き込んだのは、日本だから。 21世紀初頭のこと。ASEANと日中韓で東アジア共同体構想が語られ始めた。その一部として自由貿易圏作りも提案された。だが、日本は中国の存在感が突出し、ルール作りを主導されかねないことを恐れた。逆提案した印豪などを含めた「10+6」が、RCEPの源流である。 日本は途中、寄り道をした。中国の膨張と日中関係の悪化から、同盟国の米国を含む環太平洋経済連携協定(TPP)を先行させて足場を固める戦略だった。米国が離脱したとはいえ、残る国々と協定を仕上げた後、RCEPに軸足を戻した。 * おりしも米国との対立が深まる中国は、日本など近隣諸国との関係をより重視するようになった。地政学的にはインドを引き込むことを嫌っているが、対米牽制からRCEPの完成を急ぐ。インドの警戒を解こうと個別に動いている。日中の波長が符合し、交渉のエンジンが動き始めた。 アジアの国々は中国に対して複雑な思いを抱えながらも、関係の安定抜きで地域の将来を語れないことを知り抜いている。日米をとるか中国をとるかの踏み絵を嫌う。日本は、中国と覇権を争う米国の代理人を超えてどんな役割を果たせるか。米国と同じ立場しかとらないのであれば、アジアにおいては米国に代わる資金源でしかない。 日韓の対立は、あきれられている。本来なら市場経済体制の先進国としてルール作りに協力できたはずの両国が、政治的な対立を繰り返し、自らサプライチェーンを崩そうとしているからだ。 日本は、韓国を含む他国とうまく連携しながら対中関与の枠組みを幾重にも築き、中国とも共有できるルールを増やすべきだ。地域の秩序の端境期に始まったRCEPの交渉は、そのレッスンとも言える。 (編集委員) *****************************************************************************多事奏論一覧に吉岡記者の中国論が載っています。<吉岡桂子記者の渾身記事29>:2019年8月31日<吉岡桂子記者の渾身記事28>:2019年7月27日
2019.09.30
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図書館で『梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)』という本を手にしたのです。ぱらぱらとめくると・・・梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪【梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)】雑誌、新潮社、2019年刊<商品の説明>より◆緊急追悼特集◆今年1月に93歳亡くなった梅原猛が伝えたものは何だったのか?未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』も特別掲載!<読む前の大使寸評>梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪amazon梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)「93年の歩みをたどる」という年譜から気になったところを、見てみましょう。p68~69 1925年3月20日、 仙台で生まれる。実の父親は、後にトヨタで活躍する技術者となるが、東北大学の学生時代、下宿先の娘との間にできたのが梅原だった。しかし、母親は梅原を生んだ1年4ヶ月後に結核で亡くなり、結局、梅原は愛知県の伯父夫婦に引き取られることになった。ふたりは梅原を実の子のように愛情を注いで育ててくれたが、それでも中学生(旧制)の時、梅原はみずからの出自に疑問を持つようになる。そして養父に聞いて、実の父母について知ることになる。 軍隊時代。 梅原は、みずからを「最後の戦中派」と呼ぶ。大学の入学式を終えて帰省すると、そこには赤紙が届いていた。名古屋にある野砲兵部隊に入り、すぐに中国へ赴くはずだったが、輸送船が敵に次々と沈没させられ、本土防衛隊として内地にとどまることになった。部隊は国内のあちこちを転々として、熊本県で終戦を迎えた。死について考えてばかりいた青春時代だったという。25歳で結婚。 1951年、ふさ夫人と。お見合いで、ひと目見て、この人しかいないと直観した。この頃、梅原はニヒリズムにどっぷりと浸かっていて、家庭を持つことで、そこからの脱却を図るという自己救済の意味合いもあった。京都大の哲学科で学んだ梅原は、特にハイデッガーに夢中だった。卒業後は特別研究生の立場で大学に残り、その後、龍谷大の専任講師を経て、立命館大へと移った。柿本人麿研究のため、 海底調査に赴く。1977年のこと。法隆寺も人麿も、その研究は突然のひらめきで始まったという。笑いの哲学研究から、仏像の共著執筆へと、日本研究のほうに舵を切った梅原は、67年に初の書き下ろし単著『地獄の思想』を刊行し、これがベストセラーとなった。 そして学園紛争が起こると、大学を辞めて、古代三部作「神々の流竄」「隠された十字架」「水底の歌」を立て続けに執筆。40代半ばを過ぎてから、いよいよ“梅原日本学”の快進撃が始まったのである。『隠された十字架』1:法隆寺像の崩壊『梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)』2:横尾忠則さんとの関わり『梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)』1:未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』
2019.09.29
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図書館で『梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)』という本を手にしたのです。ぱらぱらとめくると・・・梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪【梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)】雑誌、新潮社、2019年刊<商品の説明>より◆緊急追悼特集◆今年1月に93歳亡くなった梅原猛が伝えたものは何だったのか?未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』も特別掲載!<読む前の大使寸評>梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪amazon梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)横尾忠則さんとの関わりを、見てみましょう。p64~65 <幻視者であり預言者、そんな梅原さんの存在に創造力を引き出された> 梅原猛に狂言の脚本を依頼したのは、茂山千之丞と国立能楽堂だ。しかし引き受けてはもらえたものの、脚本はなかなか完成しない。しびれを切らした千之丞は国立能楽堂での上演日程を決めてしまった。追い込まれた梅原は、ようやく脚本を仕上げ、そこに梅原と旧知の横尾忠則も参加することになった。横尾が語る。「まずはポスターを頼まれて。それで稽古を見に行こうと誘われ、それを見ているうちに、怨霊の装束もやってくれ、という話になりました」 1作目は『ムツゴロウ』。干潟が埋め立てられてできたゴルフ場で、なぜかホールインワンが次々と出る。そこに死んだムツゴロウの怨霊たちが現れて・・・という内容だ。狂言の舞台にゴルフが登場するという意外性が笑いを誘う。「日本の現状に対する批判精神が強烈に含まれていますが、理屈で批判するのではなく、創造で批判している。笑いを通して訴えたほうが、説得力がありますよね」(横尾)。 この作品が好評を博し、続いて2作目のスーパー狂言『クローン人間ナマシマ』が誕生した。マツキ、キヨウミ、タカガワをメリケン国のチームに奪われそうになったジャイガンツが、往年の名選手ナマシマのクローン人間を7人つくるという話だ。この作品は、長嶋茂雄も観劇し、横尾が案内役を務めた。 3作目『王様と恐竜』は、太陽の国の王トットラーが水爆のボタンを押そうとしているところに、トットラーの先祖だという恐竜が現れ、世界に糞尿をまき散らすボタンを押させてしまう。『古事記』など日本の古典には糞尿の話が多く出てくるのでその伝統に従った、と梅原は言う。 2作目と3作目では、横尾は装束だけでなく、本来狂言にはない舞台美術も担当。ウォーホルのようなヘアスタイルの博士が登場したり、恐竜の着ぐるみが現れたり、賑やかで楽しい狂言だ。 そして不思議なことに、どの作品も、上演されると、その内容が現実とリンクしていったという。有明海のノリの不作問題が起きたり、クローン生物のニュースが流れたり・・・。『王様と恐竜』初公演の日は、イラク戦争の開戦直後になった。「梅原さんは幻視者であり、預言者のよう」と横尾は評する。『梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)』1
2019.09.29
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図書館で『梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)』という本を手にしたのです。ぱらぱらとめくると・・・梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪【梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)】雑誌、新潮社、2019年刊<商品の説明>より◆緊急追悼特集◆今年1月に93歳亡くなった梅原猛が伝えたものは何だったのか?未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』も特別掲載!<読む前の大使寸評>梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪amazon梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』を、見てみましょう。p24~25 <未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』>■第1章 同類の大量殺害を行なう動物種 数年前、『人類哲学序説』(2013年、岩波新書)という本を書いた。そこで私は、どこかの地域的立場に偏するのではなく、広く普遍的な人類の立場に立っての哲学とは何かを考える試みを行なった。そうした広い視野に立って、今後、人間はどう生きるべきか、いや、もっとはっきりいえば、このまま人類が生きながらえるためには、いかなる思想が必要であるかを論じたのである。 そして、その端的な答えとして、平安時代の日本で生れた天台本覚論の思想が今後の人類に必用であると説いた。天台本覚論とは、草や木はもちろん、鉱物はおろか、国土までもが生きていて、仏性を持ち、成仏できるものととする。「草木国土悉皆成仏」という言葉によって語られるこの天台本覚論は、鎌倉新仏教つまり浄土・禅・法華の共通の前提となった思想である。この思想が、人類の未来に明るい光を投げかけると私は考えた。 もちろん、そこでそう説いたことは私の信念であった。しかし、私は人類の将来について楽観視しているわけではない。人類のあるべき理想は、確かに天台本覚論の思想にあるにしても、そのことを認識するだけでは、必ずしも明るい未来は開けない。 今のままの状態が続いたならば、恐らく遠からぬ将来、それは一千年後か、あるいは一万年後かもしれないが、人類は確実に滅びざるをえない。人類の滅びの原因は、一つは環境破壊である。長い間、狩猟生活をして生きてきた人類は、農耕という新しい産業を発明して、以後、自らの命の根源を育む森の神を殺して、森を破壊し、そこに棲む多くの生き物を殺してきた。 このような事件が、人類最初の叙事詩というべき『ギルガメシュ叙事詩』には詳しく語られている。■森の神フンババ殺害が意味するところ『ギルガメシュ叙事詩』は、紀元前2000年紀初頭に成立した。シュメールにウルクという人類最初の都市国家を作った王ギルガメシュの人生を悲劇的に語った叙事詩である。 古代オリエントには、多くの叙事詩が残されているが、そのほとんどが宗教的なものである。あるいはギリシャ人によって語られるトロイア戦争の物語、あるいはユダヤ人によって記されたエジプト脱出の物語は、多くは残酷きわまる戦争のことといってよいであろう。 しかし、この『ギルガメシュ叙事詩』だけは、それらと違い、あくまで人間的感情を持つ主人公が思い悩みながら、高い哲学的、芸術的思想をもって、不死の生命探求を行なう物語であり、そういう意味では、エンターテインメントの要素も多分に含む、現代でも十分に読むに堪える優れた文学作品といえよう。 私はこの四千年以上前に書かれた壮大な叙事詩に大いに魅せられてきた。なぜ人類だけが知的な文明を発展させるにいたったのか、それによって何が犠牲となり、何を失ったのか、その根本的な答えを寓話的また象徴的に語る哲学が心躍らされる冒険譚のいたるところにちりばめられている。 特に私が着目したのは、このウルクの偉大な王ギルガメシュが、王となってまず最初に行ったのが森の神フンババの殺害だったという点である。森には、遠い太古以来の神が住んでいた。そのような森の神を殺す行為は、人類にとって犯すべからざるタブーであった。しかし、ギルガメシュはあえてタブーを犯して、フンババを殺したのである。 この『ギルガメシュ叙事詩』の物語について、私はいくつもの訳に基き、梅原版戯曲『ギルガメシュ』(1988年、新潮社)を書いた。これは私の著書の中でもっとも哲学的なものであり、人類史を俯瞰する視野に立って展望し、世に警告を与える問題提起的な書であると、私自身、今でも思っている。しかしながら『ギルガメシュ』は、私の著書の中でもっとも売れ行きの悪い本であり、初版第一刷しか発行されなかった。
2019.09.29
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図書館に予約していた『米中ハイテク覇権のゆくえ』という本を待つこと3ヶ月でゲットしたのです。アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。【米中ハイテク覇権のゆくえ】NHKスペシャル取材班、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より国家戦略のもと、ハイテク分野で急速な成長を遂げる中国。アメリカの強さの源泉であった「情報」や「金融」、そして「AI」などの分野で、その“覇権”に迫らんとしている。激しさを増す二つの大国の競争は、世界をどこへ導くのか?選択を迫られる日本の運命は?米中攻防の真実に迫る取材で大反響を呼んだNHKスペシャルを新書化。「新冷戦」の今後を読み解く一冊!<読む前の大使寸評>アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。<図書館予約:(6/30予約、9/25受取)>rakuten米中ハイテク覇権のゆくえ中国製AIの脅威について、見てみましょう。p34~38 <中国製AIめぐり頭を悩ます日本企業> いくら技術的に優れていても、中国の自動運転技術だとわかった時点で、消費者やメーカーが逃げてしまう可能性があるというのだ。そこで、検討されていたのが、ロードスター・aiの人口知能を“”することだった。つまり、タクシーやバスなどサービスを提供する事業者にはもちろんのこと、自動運転の機器を製造する事業者にも、どこのどんな技術を使っているのか、一切公開しない形で導入できないかと考えているという。「すべてをブラックボックス化して、ロードスター・ai社と一緒に、日本市場に提案していきたい。2020年の東京オリンピックまでには、実証車という形では見られると思います」「MADE IN JAPAN」と書かれた製品の“頭脳”だけが、いつのまにか中国製に入れ変わっているという時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。 <日本に狙いを定めたロードスター・ai> 独自に日本への進出も狙っているロードスター・ai。那氏は2018年から頻繁に日本を訪れ、自分たちの技術を売り込む足がかりを作ろうとしていた。「日本はすごく魅力的です。というのは、市場としては、実はそこそこ大きいんですよね。日本人はよく『我々は島国だ』と言いますが、とはいえ1億3000万人の人口がいるわけですよね。ハーフサイズのアメリカだと考えれば、けっこう大きな市場なんですよ」 2018年の年末。我々は、那氏の日本への営業行脚に同行した。御前中、まず訪れたのは東京で開かれていた次世代の交通技術の展示会だ。参加していたのは、那氏の会社同様、自動運転に活用できるシステムや部品を開発する日本企業。自動車部品メーカーのデンソーなど、大手企業を含め100社近くが参加していた。 日本でも、那氏は無駄なことには時間を使わない。早速、早足で会場を回り始めた。レーザーを使ってインフラの計測を行なう会社など、自分たちと似た技術を持つ会社のみ、足を止めて話を聞いていく。しかし、会場を回ったのはわずか30分。名刺交換さえしなかった。「日本勢のライバルもなくはないんですけど2社くらいかな、まだまだですよ、技術力は。まあちょっと、知識が若干増えたって感じですかね」 感想を聞くと、お世辞は一切なし。自分たちの技術が日本企業より格段に優れていると実感し、余裕の笑みを浮かべていた。 那氏が“勝負の場”だと考えていたのは、夜に参加を予定していた、日本の自動車関連企業との交流会だった。100社近くの社長や幹部が一同に会し、夕食をともにしながら情報交換をする場だ。一度の営業行脚で、今後のビジネスにつながる相手に出会える確率は100人に1人だと感じるなか、限られた時間で多くの人と名刺交換ができる交流会は“極めて効率がいい”のだという。 交流会の冒頭。那氏は海外からのゲストとして、挨拶の時間をもらっていた。「我々ロードスター・aiというのは、中国における自動運転レベル4の開発を行なっておりまして、できれば日本市場にも進出したいと思っています。皆様のご協力をぜひよろしくお願いいたします」 御前中とは打って変わった低姿勢。流暢な日本語も武器に、自ら名刺交換に動き回り、日本企業からも興味を持たれていた。「sごいですねロードスター・aiさん。なぜそんなに早く自動運転を展開できたんですか?」「うちの創業者は今日のプレゼンでは言わなかったんですけど、テスラとかグーグル、アップル、そういう会社の経験者なんです」 自社の強みを積極的に売り込んでいく那氏。この日の手応えは上々のようだった。(中略) <すでに進められていた日本企業との事業> 商談を重ねる中で、那氏はすでに日本企業との共同事業にもこぎつけていた。 この日、打合せに訪れたのは、自動運転バスを開発いている都内のベンチャー企業.社長は、トヨタ自動車などで30年近く自動運転の開発に関わってきた技術者だ。 売り込みを受けた当初はロードスター・aiの技術を信用しきれなかったというが、実際に深センまで出向き、彼らが開発した自動運転車に試乗して技術レベルを確認。そこで体感した彼ら独自のAIを用いた認識技術「ディープフュージョン」に衝撃を受けたと語った。「自動運転で一番難しいのは、交差点の通過です。たくさんの車や歩行者が行き交うなかで、周辺の情報を全部入れないと行動を決められないのですが、ロードスター・aiの自動運転車は、地図情報と独自の認識技術だけで、どんなに交通量の多い交差点でも、まったく人間のオーバーライド(手動への切り替え)がなく通過できる。そこにレベルの高さを感じましたね」『米中ハイテク覇権のゆくえ』1
2019.09.28
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図書館に予約していた『米中ハイテク覇権のゆくえ』という本を待つこと3ヶ月でゲットしたのです。アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。【米中ハイテク覇権のゆくえ】NHKスペシャル取材班、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より国家戦略のもと、ハイテク分野で急速な成長を遂げる中国。アメリカの強さの源泉であった「情報」や「金融」、そして「AI」などの分野で、その“覇権”に迫らんとしている。激しさを増す二つの大国の競争は、世界をどこへ導くのか?選択を迫られる日本の運命は?米中攻防の真実に迫る取材で大反響を呼んだNHKスペシャルを新書化。「新冷戦」の今後を読み解く一冊!<読む前の大使寸評>アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。<図書館予約:(6/30予約、9/25受取)>rakuten米中ハイテク覇権のゆくえ「中国製造2025」の問題について、見てみましょう。p51~55 <「中国製造2025」は何が問題なのか> さらに、アメリカ側が批判を強めるのが、「産業育成」の名の下に行なわれる、中国政府の自国企業に対する不透明な補助政策だ。そもそも社会主義を掲げる中国では、市場化が進んだとはいえ、鉄鋼などの素材分野をはじめとする重要産業では、いまだに国有企業が大きなウェートを占めている。そうした国有企業は工場用地の払い下げにはじまり、銀行による事業資金の低利融資など様々な優遇を受けていると指摘されてきた。 「中国製造2025」で重要産業が指定されることで、中国企業が再び政府から様々な支援を受け、外国企業との公平な競争条件をゆがめることになるのではないかと、危惧されているのだ。 中国政府はそうした見方を否定するが、政策の発表された2015年から2年間で中国では政府が出資する産業投資ファンドが次々と設立され、その資金規模は2016年末時点で3兆元、日本円で50兆円を超える規模に達している。そのすべてが政府資金というわけではないが、こうしたファンドが出資・投資先を決定する際に、自国企業に対する審査が優先されるであろうことは容易に想像される。 そうした資金力が今後、アメリカをはじめ外国企業が中国と技術的に争っていく上で脅威になっていくかもしれないのだ。 <圧力を受ける中国。産業政策はどこに向うのか?> アメリカからの圧力を受ける中国の産業政策。貿易交渉が進む中で、転換は進むのか。実は中国ではアメリカとの貿易摩擦が激化するにつれて、政府高官の発言や公式メディアなどから「中国製造2025」というキーワードがめっきり姿を消している。さらに、アメリカの有力紙「ウォールストリートジャーナル」も2018年12月、「中国指導部が『中国製造2025』の見直しを進め、2019年の早い時期に公表される見通しだ」と伝えた。 報道に反していまだに中国側から新しい産業政策の発表はなされてはいないが、2019年3月の全人代でその先行きを占う出来事があった。李克強首相の政府活動報告だ。2015年の全人代以来、政府活動報告で必ず触れられてきた「中国製造2025」という言葉が、2019年は報告中に一度も登場しなかったのだ。アメリカとの貿易交渉が佳境を迎える中、中国として相手方に十分配慮を尽したといえるだろう。 ただ、ここでも注意は必要だ。「中国製造2025」というワードこそ報告から消えたものの、李首相は今後の産業育成の方向性として「先進的製造業と現代サービス業の融合発展を促し、『製造強国』の建設を加速させる」とはっきりと言及した。 さらにビッグデータやAIの研究開発を応用・強化し、「中国製造2025」で挙げた次世代情報技術や新エネ車などを育成するとも強調した。つまり、「中国製造2025」の看板は下げたように見せつつ、従来の産業政策になんら揺るぎはないということだろう。 全人代期間中にはもう一つ、中国の産業政策を見る上で注目されるべき発言があった。中国の国有企業を管理する「国有資産監督管理委員会」のトップ、肖亜慶主任の記者会見だ。外国メディアの記者から「中国政府の国有企業に対する『隠性補貼=隠れた補助政策』」について質問を受けた主任は「我々の法律には国有企業に限定した補助金の規定はない」と述べ、アメリカが主張する優遇措置の存在を否定したのだ。 これらの発言を見る限り、「製造強国」を目指そうという中国の産業政策が根本的に変更されるということはありえないだろう。もちろん、従来の大量生産方式の「製造大国」から脱皮して、付加価値の高いイノベーション産業の育成を目指す中国の方針に対して、アメリカのみならず、外国が頭から否定することなどはできない。 しかし、ここまで力をつけた中国がさらに国家主義的な産業育成を続け、外国企業の市場参入を阻むような政策をとり続けるなら、それは西側諸国にとって大きな脅威となり、さらなる摩擦を招くことになりかねないだろう。 <「製造強国」へのもう一つの課題>「序章」で触れた、中国がAIや自動運転といった分野で急速に技術力を伸ばした原動力となった海亀も、その摩擦の一因となり得る。 中国のAIや自動運転の分野の第一人者で、中国科学院自動化研究所の王飛躍主任は、「海亀」がこれまで果してきた役割を高く評価しつつも、それに頼った成長モデルには疑問を投げかけている。(中略) 王主任は中国が一流の製造強国を目指すにあたっては「他人が歩んできた道をオーバーテイクするのではなく、自身の指針を作り出し世界レベルをリードしなければならず、国内で育成した人材に頼らなければならない」と提唱する。
2019.09.28
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図書館で『文士の遺言』という本を手にしたのです。ウン 歴史探偵と呼ばれた半藤さんの薀蓄が・・・ええでぇ♪【文士の遺言】半藤一利著、講談社、2017年刊<「BOOK」データベース>より「歴史探偵」が薫陶を受けた作家たちの知られざる思想、苦悩、その素顔!あの戦争・戦後とは何だったのか?知られざる作家の肉声、創作秘話が炙り出すもう一つの「昭和秘史」!!<読む前の大使寸評>ウン 歴史探偵と呼ばれた半藤さんの薀蓄が・・・ええでぇ♪rakuten文士の遺言満蒙関連のお話しをもう一つ、見てみましょう。p78~81 <文学的真実が歴史的真実になるとき>■馬鹿かァ、お前は 明治38年(1905年)3月28日朝、満州軍総参謀長児玉源太郎大将が新橋駅に降り立った。出迎えるのは参謀部次長長岡外史少将ひとり。以下、長い引用となる。 司馬遼太郎氏『坂の上の雲』の「退却」の章に描かれている一場面である。 3月10日に奉天城を陥落させたのはいいが、この時点で日本軍の兵力は予期していた以上の死傷者を出し、とくに少壮の指揮官は底を突いていた。 銃砲弾も尽き、軍馬までがいなくなった。いっぽうロシア軍はつぎのハルビン会戦へ向けて兵力を終結している。攻勢はこれまでで、「講和への道」を拓くことが大日本帝国にとっては緊要なことであった。そこで総参謀長児玉大将が急遽極秘で満州から帰国することとなる。 そうした事実をうしろにおいてみると、司馬さんの名文はこの長篇のなかではいちばん気持よく読めるところといえる。あるいは最高に心躍る場面といいかえてもいい。つまり、ここに書かれている「馬鹿かァ」は、日本史上において最高に痛快な罵声なのである。 もちろん、長岡外史の回想にもとづいて書かれている。過去にそのくだりを読んだ人なら、間違いなく目にしたであろうその回想では、児玉の言葉はこうなっている。「長岡! 何をボンヤリしとる? 点火したら消すことが肝要じゃ。それを忘れとるのは莫迦じゃよ」 如何なものか。くらべてみるまでもなく、司馬遼太郎という作家のあざやかな技法が感得できるのではないか。(中略)■小説家の味方をするもの わたくしは、平凡社から『日露戦争史』を上梓した。歴史家ではなく歴史探偵を自称しているが、さりとて歴史小説としてこれを書いたのではなく、史実に忠実な、史料にのっとったノンフィクションとして長々としたものを書き上げた。そのために今日の歴史学の到達したところを尊重し、残された史料に慎重に向き合っていくよう心掛けた。しかし、書いているあいだじゅう視線の隅のほうには、『坂の上の雲』や吉村昭氏の『海の史劇』など日露戦争を主題にした名作が、どうしてもチラチラしていた。歴史小説の巨匠たちが、このことをどう描いているか、そっとのぞいてみるか、という誘惑に負けそうになってくる。 しかし、それらはあくまでも小説。生彩ある作品にするために、作家は史実と史実のあいだをつないで想像力をさぞかし存分に駆使しているにちがいない。故にのぞくべからず、と自分に禁忌のくびきをかけて必死に誘惑と闘い続けてきた。そして一場面を書き終わったあとで、その部分をそっと開いてみたりした。 結果は、一言でいえば、歴史小説とはオレの仕事とちがってやっぱり自由で楽しく書けていいなあ、という羨望になる。その具体例は先の「馬鹿かァ、お前は」である。『文士の遺言』1
2019.09.28
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図書館で『文士の遺言』という本を手にしたのです。ウン 歴史探偵と呼ばれた半藤さんの薀蓄が・・・ええでぇ♪【文士の遺言】半藤一利著、講談社、2017年刊<「BOOK」データベース>より「歴史探偵」が薫陶を受けた作家たちの知られざる思想、苦悩、その素顔!あの戦争・戦後とは何だったのか?知られざる作家の肉声、創作秘話が炙り出すもう一つの「昭和秘史」!!<読む前の大使寸評>ウン 歴史探偵と呼ばれた半藤さんの薀蓄が・・・ええでぇ♪rakuten文士の遺言司馬さんの謎「ノモンハン事件を書かなかった理由」を、見てみましょう。p82~85 <ノモンハン事件を書かなかった理由>■司馬さんの昭和史批判 編集者時代に漠然としたものではあったが、司馬遼太郎さんとはある約束をかわしていた。司馬さんがいずれノモンハン事件をテーマに昭和の戦争時代を書く、そのときには全力をあげてお手伝いをする、ということであった。 そのことから、もし司馬さんが現実にそれと取り組んで、どんな形にせよ具体化したとしたら、どんな作品になったと思いますか、という質問をその後によく受ける。「もしも」の問いには何でも答えに窮するところがあるが、この場合、それはすこぶる興味をそそられる問いでもあった。正確な答えにはならなくなることを承知で、ついに書かれなかった司馬文学について少しく書いてみたい気になった。 ノモンハン事件とは、昭和14年(1939年)5月中旬から国境侵犯をめぐって日本軍とソ連軍とが戦火を交えた事変で、9月中旬に停戦協定が結ばれて戦闘は終結した。 事変に参加した日本軍の全兵力約5万6千人、うち戦死8千440人、負傷8千760人、全体の死傷率32%という数字が残され、そして二人の連隊長が戦場で自決、三人の連隊長が事件後に敗戦の責任をとって自決という惨たる戦闘であった。それは関東軍の参謀の独断専行ともいえる作戦指導によって、第一線の将兵は名誉と軍紀の名のもとにやみくもに戦わされた、と評してもよい戦闘であったのである。 司馬さんはノモンハン事件についてわたくしに何度か語っている。その一つ。「よく知られているように、向こうは完全な機械化部隊でした。ところが日本軍はまるで織田信長の軍隊のようであった。これは私が勝手に創作していってるんじゃないですよ。連隊長として実際に戦闘に参加した須見新一郎元大佐の言葉です。“われわれは元亀・天正の装備で戦った”と、戦場での実感を私に話してくれたのです」 そして司馬さんはこうもいった。「合理的な、きちんと統治能力をもった国なら、泥沼におちいった日中戦争の最中に、ノモンハン事件をやるはずはないし、しかも事変のわずか2年後に同じ“元亀・天正の装備”のまま米英を相手に太平洋戦争をやるだろうか。信長ならやらないし、信長でなくても中小企業のオヤジでさえ、このような会社運営をやるはずもない。昭和の軍閥というのは、日本史にも、世界史上にもない感覚のひとびとでした」 司馬さんの昭和史批判とはいつでも右のような具体的なものであった。戦争をはじめたことに大義名分がないとか、いやあれこそはアジアの植民地解放の正義の戦いであるとか、そうした観点は一切しりぞけられている。イデオロギー的な、観念論になりがちの諸説には見向きもしない。 負けるにきまっている無謀な戦争をはじめて、負けるにきまっている戦略戦術と兵器で戦ったゆえに、指導者や将軍や参謀たちはきびしく批判されねばならないのである。昭和の日本人に合理的な思考の能力が欠落していることを頭から叱り続けたのである。■悪意と軽蔑感しかもてない参謀コンビ そういえば、司馬さんの書いた坂本竜馬も土方歳三も河井継之助も松本良順も、作家丸谷才一氏の言葉を借りていえば「彼らはみな、形骸化して有効性を失った常識や、集団ヒステリーのせいでの気分によって支配されるのではなく、現実から出発してものを考えるたちの健全な人間であった」のである。つまりは彼らは時代を蔽っている狂気と果敢に衝突した。きちんとした合理主義を身に備えていた。 あるいはこうもいえるか。彼らはみんな、「名こそ惜しけれ」と自らを律してきた日本人ばかりであると。そしてこうした抑制のきいた美しい侍の倫理と合理精神の持ち主を、司馬さんはかぎりない親愛感となつかしさをこめて書いてきた。「それなのに」と司馬さんはいった。「戦前の日本は、参謀肩章をつっている軍部の人間に占領されていたのです。彼らには思想的な背景が強烈にあるんで、集団的狂気のなかからいえば、高崎街道を北上してくる避難民をひき殺していけという結論がでるわけです。これはもう思想の悪魔性というほかはないんです。この時代だけが日本歴史から非連続というか、まったくわからない。この時代を考えると、魔法の森に入っていくような感じになるのです」 その司馬さんが、なるほど、関東軍の服部卓四郎と辻政信という権道しかない魔性の参謀コンビに、ようつき合う気にもなれなかったのは当然である。あるいは机上の計算と必勝の信念だけで大軍を動かした陸軍中央部の参謀たち。悪意や軽蔑感しかもてない人物たちを力まかせにねじふせても、生きた人間像としては浮かび上がってこない。 ノモンハンは、それゆえについに書かれることはなかったものと、わたくしはいまにして思っている。
2019.09.27
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今回借りた5冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「手当り次第」でしょうか♪<市立図書館>・米中ハイテク覇権のゆくえ・文士の遺言・梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)<大学図書館>・日本近代漫画の誕生・ざんねんないきもの事典図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)************************************************************【米中ハイテク覇権のゆくえ】NHKスペシャル取材班、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より国家戦略のもと、ハイテク分野で急速な成長を遂げる中国。アメリカの強さの源泉であった「情報」や「金融」、そして「AI」などの分野で、その“覇権”に迫らんとしている。激しさを増す二つの大国の競争は、世界をどこへ導くのか?選択を迫られる日本の運命は?米中攻防の真実に迫る取材で大反響を呼んだNHKスペシャルを新書化。「新冷戦」の今後を読み解く一冊!<読む前の大使寸評>アメリカに対して、新型ICBMをこれ見よがしに披露する中国であるが・・・その覇権志向はかつてのソ連をしのぐものであり、怖い気がするのだ。<図書館予約:(6/30予約、9/25受取)>rakuten米中ハイテク覇権のゆくえ【文士の遺言】半藤一利著、講談社、2017年刊<「BOOK」データベース>より「歴史探偵」が薫陶を受けた作家たちの知られざる思想、苦悩、その素顔!あの戦争・戦後とは何だったのか?知られざる作家の肉声、創作秘話が炙り出すもう一つの「昭和秘史」!!<読む前の大使寸評>ウン 歴史探偵と呼ばれた半藤さんの薀蓄が・・・ええでぇ♪rakuten文士の遺言【梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)】雑誌、新潮社、2019年刊<商品の説明>より◆緊急追悼特集◆今年1月に93歳亡くなった梅原猛が伝えたものは何だったのか?未完の遺稿『人類の闇と光(仮題)』も特別掲載!<読む前の大使寸評>梅原猛さんのモノグラフィーとして充実しているわけで、即、借りたのでおます♪amazon梅原猛・人類への遺言(芸術新潮2019年4月号)【日本近代漫画の誕生】清水勲著、山川出版社、2001年刊<「BOOK」データベース>より本書は、近代漫画誕生の経過を七つのエピソードで紹介する。【目次】)1 幕末諷刺画の誕生とその発展/2 自由民権期の『団団珍聞』/3 『パック』と日本近代漫画/4 「漫画」という言葉の誕生/5 国際漫画雑誌『東京パック』の登場/6 日本最長寿漫画誌『大阪パック』/7 柳瀬正夢の漫画表現の変遷<読む前の大使寸評>この「日本史リブレット」というシリーズであるが・・・図が多く、薄くて手頃で、元祖ビジュアル本という体裁がええでぇ♪rakuten日本近代漫画の誕生【ざんねんないきもの事典】下間文恵, 徳永明子著、高橋書店、2016年刊<「BOOK」データベース>より笑えて、ちょっとためになる!生き物たちのおどろきの真実。思わずつっこみたくなるいきもの122種。<読む前の大使寸評>本屋でこの本をよく見かけるが・・・続編と続々編が発刊されたためのようです。それから、全ての漢字にルビが付されているので、子供でも読めるのが、ええでぇ♪rakutenざんねんないきもの事典************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き397
2019.09.27
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図書館で『国のない男』という本を手にしたのです。ウン 表紙のチョイ悪のようなポートレイトが圧巻でおます♪【国のない男】カート・ヴォネガット著、日本放送出版協会、2007年刊<「BOOK」データベース>より【目次】わたしは末っ子だった/「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか/小説を書くときの注意/ここで、ちょっとしたお知らせを/さあ、そろそろ楽しい話をしよう/わたしは「ラッダイト」と呼ばれてきた/2004年11月11日で、82歳になった/人間主義者とはどういう人を指すかご存じだろうか?/何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ/イプシランティの懐古的な女性/さて、いい知らせがいくつかと、悪い知らせがいくつかある/わたしはかつて、自動車販売会社の社長だった<読む前の大使寸評>ウン 表紙のチョイ悪のようなポートレイトが圧巻でおます♪rakuten国のない男孔子やサイコパスが語られているので、見てみましょう。p104~108 <9 何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ> これをキリストの言葉だと思っている人は多い。というのも、キリストの言いそうな言葉だからだ。しかし、じつはこれは中国の思想家、孔子の言葉なのだ。それから五百年経って、もっとも偉大な、人類を代表する人道主義者イエス・キリストが登場する。 ほかにも中国からやって来たものがある。マルコ・ポーロ経由でやって来たものとしてはパスタと火薬。中国人はまったくばかで、火薬を花火にしか使わなかった。そして当時は、みんなばかで、南半球の人々は北半球があることを知らなかったし、北半球の人々は南半球があることを知らなかった。 それからわれわれはずいぶん長い道をやって来た。ときどき、そんな道などやって来なければよかったのにと思う。わたしは水素爆弾と、あの超低俗番組「ジェリー・スプリンガー・ショー」が大嫌いだ。 孔子やキリストや、わたしの息子で医者をやっているマークのような人の話に戻ろう。三人がそれぞれの言い方で言おうとしているのは、こういうことなのだ。つまり、どうすればわれわれはもっと人道的に行動することができるのか、そしてこの世界を少しでも苦痛の少ない場所にすることができるのか。わたしの大好きな人間らしい人間のひとりがユージン・デブスだ。わたしの生れたインディアナ州のテラホート出身。 よく聞いてほしい。ユージン・デブスが死んだのは1926年。わたしがまだ4歳の頃だ。彼は社会党から五回、大統領に立候補し、1912年には90万票、総投票数の6パーセントを獲得した。まあ、その数字を信用していいかどうかは知らないが。彼は選挙戦のときこう言った。 下層階級がある限り、わたしはそのうちのひとりだ。 犯罪者がいる限り、わたしはそのうちのひとりだ。 刑務所にひとりでもだれかが入っている限り、わたしは自由ではない。 社会主義的なことを聞くと、吐き気がする? 立派な公立学校とか、国民皆保険とか? 毎朝ベッドから出て、ニワトリの鳴き声を聞きながら、こう言ってみたくならないだろうか?「下層階級がある限り、わたしはそのうちのひとりだ。犯罪者がいる限り、わたしはそのうちのひとりだ。刑務所にひとりでもだれかが入っている限り、わたしは自由ではない。」 イエスの「山上の説教」はこうだ。 心穏やかな人は幸せだ、なぜなら、大地を受け継ぐdろうから。 慈悲深い人は幸せだ、なぜなら、慈悲をうけるだろうから。 平和を作る人は幸せだ、なぜなら 神の子と呼ばれるだろうから。 などなど。 共和党の綱領の項目にある言葉ではない。ジョージ・W・ブッシュやディック・チュイニーやドナルド・ラムズフェルドの言いそうな言葉でもない。(中略) ジョージ・W・ブッシュは自分のまわりに上流階級の劣等性たちを集めた。彼らは歴史も地理も知らず、自分が白人至上主義者だということをあえて隠そうともしない。クリスチャンとしても知られているが、何より恐ろしいことに、彼らはサイコパスだ。サイコパスというのはひとつの医学用語。賢くて人に好印象を与えるものの、良心の欠如した連中を指す言葉だ。アメリカの若者の間ではサリンジャーの文学作品よりヴォネガットの作品が読まれているとのこと、なんだか分かる気がします。『国のない男』2:著者の家系や移民問題『国のない男』1:酒とタバコ
2019.09.27
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図書館で『国のない男』という本を手にしたのです。ウン 表紙のチョイ悪のようなポートレイトが圧巻でおます♪【国のない男】カート・ヴォネガット著、日本放送出版協会、2007年刊<「BOOK」データベース>より【目次】わたしは末っ子だった/「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか/小説を書くときの注意/ここで、ちょっとしたお知らせを/さあ、そろそろ楽しい話をしよう/わたしは「ラッダイト」と呼ばれてきた/2004年11月11日で、82歳になった/人間主義者とはどういう人を指すかご存じだろうか?/何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ/イプシランティの懐古的な女性/さて、いい知らせがいくつかと、悪い知らせがいくつかある/わたしはかつて、自動車販売会社の社長だった<読む前の大使寸評>ウン 表紙のチョイ悪のようなポートレイトが圧巻でおます♪rakuten国のない男著者の家系や移民問題を、見てみましょう。p60~62 <5 そろそろ楽しい話をしよう> わたしはドイツ系アメリカ人だ。それも純粋種で、ドイツ系アメリカ人がドイツ系アメリカ人としか結婚しなかった時代の産物だ。1945年、わたしがイギリス系アメリカ人のジェイン・マリー・コックスに求婚したとき、彼女はおじからこう尋ねられた。「本気で、ドイツ人なんかといっしょになりたいと思っているのか?」まあ、今日でもドイツ系アメリカ人とイギリス系アメリカ人のあいだにはサンアンドレアス断層が存在する。が、それも年々細くなりつつある。 それは第一次世界大戦のせいだと考える人もいるだろう。なにしろイギリスとアメリカがドイツと戦ったわえで、そのとき、地獄の入口みたいに深くて大きな断層ができた。ただ、そのときアメリカを裏切ったドイツ系アメリカ人はひとりもいなかったはずだ。しかし、両者のあいだに最初の亀裂が走ったのは、南北戦争時代だ。当時、わたしの先祖であるドイツからの移民がこの大陸にやって来て、インディアナポリスに住み着いた。 先祖のなかにはそのときの戦争で片脚をなくして、ドイツに戻った人もいる。しかし生き残りはそのまま居着いて、驚くほど成功した。 わたしの先祖たちがやって来た当時、イギリス系の支配者階級は、現在の多国籍企業の専制君主と同様、この広い世界でもっとも安価で従順な労働者を求めていた。どのような労働者かというと、今も昔も同じだが、1883年にエマ・ラザラスが書いた言葉を借りればこんな感じだ。「疲れて、貧しく、元気がなく、みじめで、家がなく、不運にうちひしがれた」人々だ。当時のアメリカは、そういう人々がほしかった。しかし今日とは違ってその頃は、そういった人々が住む国に仕事を持ち込むわけにはいかなかった。彼らのほうから、あらゆる手段を講じて、なんとかやって来た。それも何万人単位で押し寄せてきたのだ。 ところが、大挙してやって来たのは悲惨な人々ばかりではなかった。いま考えてみれば、そのなかにイギリス系の連中にとってのトロイの木馬が混じっていたのだ。木馬のなかには、教育を受けた、裕福な中産階級のドイツ人ビジネスマンとその家族が入っていた。彼らは投資する金も持っていた。 わたしの母方の先祖のひとりはインディアナポリスでビール製造業を始めた。しかしビール会社を作ったのではない。買ったのだ! パイオニア精神ここにあり、ではないか。そのうえ、先祖たちはなんであれ、大量虐殺にも民族浄化にも手を貸すことはなかった。もっとも、アメリカ大陸が彼らにとって処女地であったのは、先に来た連中が先住民を虐殺し浄化した結果だったのだが。 このわれらが先祖・・・罪悪感を持つ必要のない、職場では英語を話し、家ではドイツ語を話す人々・・・は、インディアナポリス、ミルウォーキー、シカゴ、シンシナティで事業を起こし、大成功を収めたばかりではない。 自分たちドイツ系移民のための銀行、コンサートホール、社交クラブ、屋内競技場、レストラン、大邸宅、夏の別荘なんかも作っていった。イギリス系の連中が首をかしげたのも無理はない。「いったい、この国はだれのものなんだ?」と。ウーム 意気軒高なドイツ系アメリカ人である・・・日系アメリカ人と比較すると首をかしげたくなる違いですね。『国のない男』1
2019.09.26
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図書館で『国のない男』という本を手にしたのです。ウン 表紙のチョイ悪のようなポートレイトが圧巻でおます♪【国のない男】カート・ヴォネガット著、日本放送出版協会、2007年刊<「BOOK」データベース>より【目次】わたしは末っ子だった/「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか/小説を書くときの注意/ここで、ちょっとしたお知らせを/さあ、そろそろ楽しい話をしよう/わたしは「ラッダイト」と呼ばれてきた/2004年11月11日で、82歳になった/人間主義者とはどういう人を指すかご存じだろうか?/何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ/イプシランティの懐古的な女性/さて、いい知らせがいくつかと、悪い知らせがいくつかある/わたしはかつて、自動車販売会社の社長だった<読む前の大使寸評>ウン 表紙のチョイ悪のようなポートレイトが圧巻でおます♪rakuten国のない男酒とタバコが語られているが、このチョイ悪談義を、見てみましょう。p50~53 <4 ここでちょっとしたお知らせを> いや、大統領に立候補するわけではない。もっとも少なくともわたしは、文には不完全なものは別として、主語と動詞がなくてはならない、ということは知っている。 また、子どもと寝ていると罪の告白をするわけでもない。が、これは言っておこう。わたしの妻は、わたしがいままで寝た相手のなかでは群を抜いて年上だ。 お知らせというのはこれだ。わたしはポール・モールの製造元であるブラウン&ウィリアムソン・タバコ・カンパニーを相手に十億ドルの訴訟を起こす。わたしはまだ12歳のときからタバコを吸いはじめたのだが、絶えず吸い続けたのは両切りのポール・モールのみだ。そしてもう何年の長きにわたって、ブラウン&ウィリアムソン・タバコ・カンパニーパッケージに書いて、わたしを殺してくれると約束してきた。 ところが、わたしはもう82歳だ。この嘘つきどもめ! いま、この地球上でもっとも大きな権力を持っているのは、ブッシュ(〇毛)、ディック(ディック・チュイニー)、コロン(コリン・パウェル)の三人だ。何がいやだとといって、こんな世界で生きることほどいやなことはない。 うちの政府は麻薬と戦っている。いうまでもなく、麻薬がまったくない状態よりずっといい。これは禁酒令について言われた言葉だ。1919年から1933年のあいだ、酒類の製造、輸送、販売が厳しく禁止された。そのときインディアナ州の辛辣な新聞記者、ケン・ハーバードがこう言っている。「禁酒法? 酒がまったくないよりいいじゃないか」 しかしこれだけは知っておいたほうがいい。もっと広く乱用され、もっとも常習性が強く、もっとも有害なものが世の中にはふたつあって、ふたつとも合法だということだ。 ひとつは、いうまでもなく、エチル・アルコールだ。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、本人も認めているが、16歳から40歳までのほとんどのあいだ、ほろ酔いまたは酩酊または泥酔状態だったという。41歳のとき、彼の言葉によれば、イエスが現れて、酒をやめさせ、ウィスキーでうがいをするのをやめさせたそうだ。 アル中から抜け出そうとしてピンクの象の幻覚を見た連中はほかにも大勢いる。 違法ドラッグについては、わたしは臆病だったものでヘロインにもコカインにもLSDにも手を出していない。やると、頭がおかしくなってしまいそうで怖かったのだ。 マリファナは一度だけ吸ったことがある。ジェリー・ガルシアとグレイトフル・デッドの連中といっしょのとき、付き合いでやった。が、ちっともきかなかった。だから、それ以来一度もやっていない。ありがたいことに、わたしはアル中ではない。これは遺伝によるところがかなり大きいと思う。ときどきやっても二杯くらい。まあ、今晩もまたやるかな。しかし二杯が限度だ。ノープロブレム。 いうまでもなく、わたしはニコチン中毒だ。これで死ねたらといつも願っている。タバコの一方の先には火が、もう一方には愚か者がいる。 しかしこれだけは言っておきたい。一度だけ、うごいハイの状態になったことがある。それは純度の高いコカインをやってもとうてい得られそうにないくらいの状態だった。そえは初めて運転免許を取ったときのことだ。さあ、みんな気をつけろよ、カート・ヴォネガットの登場だ! そのときの車は、たしか、スチュードベーカーだったと思うが、燃料は、現代のほとんどの輸送機関やほかの機器や、発電所や溶鉱炉で使われている、もっとも乱用され、もっとも常習性が強く、もっとも有害なドラッグ、つまり化石燃料だった。 人間はここまで来てしまった。かく言うわたしも同様だ。この産業社会はすでに絶望的なまでに化石燃料に頼りきっている。そしてもうすぐそれがなくなってしまうという。このドラッグをいきなり絶ったときの禁断症状はどんなだろう。 ここで本当のことを言ってもいいだろうか。これがTVのニュースなら遠慮するところだが、そうじゃないから言わせてもらおう。じつは、だれも認めようとしないが、われわれは全員、化石燃料中毒なのだ。そして現在、ドラッグを絶たれる寸前の中毒患者のように、われわれの指導者たちは暴力的犯罪を犯している。それはわれわれが頼っている、なけなしのドラッグを手に入れるためなのだ。
2019.09.26
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日に日に、群れで飛ぶツバメが少なくなっているような、このごろですね。七十二候に「玄鳥去」というのがあるけど・・・どうも我が町生れのツバメたちは、もう飛び去っていて南の地域を移動中ということのようです。ネットでこんなサイトがありました。七十二候「玄鳥去(つばめさる)」。巣立ったヒナは、どんな旅に出るのでしょうかより■もう帰る巣のない幼鳥たち。「渡り」を前に、集団で暮らします 食糧や繁殖のため定期的に長距離を移動する『渡り鳥』。日本でもいろいろ見られます。ツバメなどの「夏鳥」は、春に来て子育てし、秋になると南の国に去っていきます。オオハクチョウなどの「冬鳥」は、越冬するために北の国から日本にやってきます。チドリなどの「旅鳥」は、北国で繁殖し南国で越冬するため、中継地点として日本を通りかかります。 人間の世界では、転々とする苦労人を「渡り鳥」と表現したりしますが、『渡り』の旅はまさに苦労の連続。嵐や天敵など危険もいっぱいです。ツバメたちも、毎回命がけで種の楽園をめざします。 5月下旬。生まれてからおよそ20日で巣立った一番子のヒナたち。ツバメは2回子育てをする親が多く、生まれた巣は、これから育つ弟妹(二番子)たちのもの。巣立った子の居場所はありません。 そこで、幼鳥たちは集まって、出発の日まで水辺のアシ原や大きな樹木などで集団生活をします。早く一人前にならないと、南の国に渡っていけません。渡り鳥としての自覚を高める寮生活といったところでしょうか。幼鳥は、尾が短いので遠くからでもよくわかります。 夏になると、2回目の子育てが終わった親鳥たちも集団に加わります。夕方、空にたくさんのツバメたちが集結して、日が沈むと一斉にねぐらに入っていきます。「集団ねぐら」は毎日少しずつ移動するうえ、夜明けにはツバメたちはもう飛び立っているので、なかなか見つけにくいようです。集団はだんだん大きくなり、秋には数千~数万羽もの大群になるといいます。■歩かないツバメ。渡り鳥を見送れる場所をご存じですか? ある日の明け方前に小グループで出発。親鳥から先に南へと旅立ち、幼鳥は渡る体力がつくのを待ちます。連れて行ってはもらえません。7月後半になると、ねぐらは親の割合が少なくなってきます。それでも10月頃までには、皆出発するようです。 渡りにはいくつかのコースがあるようです。まだ一度も通ったことのない何千キロもの空の道を、親もいないのに、幼鳥はどうやって迷わずに行けるのでしょう? ツバメには、目印のない海の上でも目的地に向かって飛び続けられるよう、太陽や地磁気によって方角を知る能力があるといいます。さらには、目的地に近づくと地形や目立つ建造物をたよりに正しい場所を見つけるのだそうです。生まれながらに「渡る力」が備えられていたのですね。 ツバメの体は、空中生活用にできています。食事はもちろん、水浴びすら下に降り立つことなく水面すれすれを飛びながら一瞬で(カラスもびっくりの瞬間行水で、水飲みとの区別がつかないくらいです)。大きな翼は長距離飛行に耐える丈夫さなのに、退化した足は弱くて歩くのが苦手。他の小鳥と比べて巣立ちまでの日数が長いのは、巣立ったらすぐ飛ぶ必要があるためです。 高速で飛びまわりながら小さな虫を見分ける目。飛んでいる昆虫をくわえとりやすいように大きく深く開く、嘴。上嘴には左右5本ずつくらいヒゲがあり、虫取りアミの役割をします。 飛行速度は時速45km、最高時速は200kmともいわれます。また、長い尾や翼のひと振りで、急旋回・急降下・停止飛行も思いのまま! 多くの渡り鳥が、気流が安定していて天敵に襲われにくい夜間に渡るなか、飛翔力に優れたツバメは、昼間に堂々と渡っていくのです。
2019.09.26
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<図書館予約の軌跡195>『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・多和田葉子「献灯使」(12/09予約、副本4、予約94)現在2位・日本が売られる(2/05予約、副本22、予約354)現在30位・『AI VS.教科書が読めない子どもたち』(2/22予約、副本23、予約302)現在22位・樹木希林『一切なりゆき』(2/27予約、副本17、予約613)現在141位・そしてバトンは渡された(4/19予約、副本22、予約1036)現在707位・川村元気『百花』(6/14予約、副本10、予約196)現在65位・伊坂幸太郎『フーガはユーガ』(7/24予約、副本34、予約462)現在315位・伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』(7/31予約、副本1、予約197)現在158位・デービッド・アトキンソン『日本人の勝算』(8/20予約、副本14、予約157)現在115位・上田岳弘『キュー』(8/26予約、副本3、予約15)現在10位・劉慈欣『三体』(9/09予約、副本8、予約179)現在165位・落合淳思『漢字の字形』(9/20予約、副本1、予約2)現在2位・森絵都『カザアナ』(9/21予約、副本11、予約109)現在101位・チャイナ・スタンダード(9/22予約、副本2、予約2)現在1位・五日市哲雄『もの忘れと記憶の科学』(9/24予約、副本6、予約1)現在1位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)<予約候補>・柳美里『ねこのおうち』・有馬哲夫『原発・正力・CIA』・橋本治『黄金夜界』・呉善花『韓国を蝕む儒教の怨念 -反日は永久に終わらない』・高樹のぶ子『アジアに浸る』・高野秀行「ワセダ三畳青春記」・書物の破壊の世界史・領土消失 規制なき外国人の土地買収・高橋源一郎『読んじゃいなよ』・メカニズムの事典・川上弘美『某』:図書館未収蔵・ディック『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』:図書館未収蔵・天子蒙塵 (四):図書館未収蔵・ヘミングウェイで学ぶ英文法:図書館未収蔵・内澤旬子『ストーカーとの七00日戦争』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・八画文化会館vol.6 総力特集:レトロピア岐阜:図書館未収蔵・「月夜のでんしんばしら」谷川雁、C.W.ニコル:図書館未収蔵・Coloring in Wadaland―和田誠カラー作品集:図書館未収蔵・カズオ・イシグロ著『癒されざる者たち』:図書館未収蔵・阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』:芸工大に収蔵・阿刀田高『裏声で歌へ君が代』・重松清『ビタミンF』:阿刀田さんが「セッちゃん」をお奨め・デジタルエコノミーはいかにして道を誤まるか:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』・ボリス・ヴィアン著『うたかたの日々』:芸工大に収蔵・禁じられた歌(田)<予約分受取:7/09以降> ・中尾佐助『農業起源をたずねる旅』(7/02予約、7/09受取)・三浦しおん「愛なき世界」(11/25予約、7/13受取)・堀江貴文「これからを稼ごう」(1/12予約、7/17受取)・大江健三郎『キルプの軍団』(7/10予約、7/17受取)・『新・日本の階級社会』(7/18予約、8/10受取)・浅田次郎『帰郷』(8/08予約、8/10受取)・多和田葉子『地球にちりばめられて』(2/18予約、8/28受取)・多和田葉子「エクソフォニー」(8/31予約、9/05受取)・『ソロモンの指環』(9/03予約、9/08受取)・リービ英雄『天安門』(9/17予約、9/21受取)・米中ハイテク覇権のゆくえ(6/30予約、9/25受取予定)【献灯使】多和田葉子著、講談社、2014年刊<「BOOK」データベース>より鎖国を続ける「日本」では老人は百歳を過ぎても健康で、子供たちは学校まで歩く体力もないー子供たちに託された“希望の灯”とは?未曾有の“超現実”近未来小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(12/09予約、副本4、予約94)>rakuten献灯使【日本が売られる】堤未果著、幻冬舎、2018年刊<「BOOK」データベース>より水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ。そんな日本に今、とんでもない魔の手が伸びているのを知っているだろうか?法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏と反撃の戦略を、気鋭の国際ジャーナリストが、緻密な現場取材と膨大な資料をもとに暴き出す!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(2/05予約、副本22、予約355)>rakuten日本が売られる【AI VS.教科書が読めない子どもたち】新井紀子著、東洋経済新報社、2018年刊<「BOOK」データベース>より大規模な調査の結果わかった驚愕の実態ー日本の中高校生の多くは、中学校の教科書の文章を正確に理解できない。多くの仕事がAIに代替される将来、読解力のない人間は失業するしかない…。気鋭の数学者が導き出した最悪のシナリオと教育への提言。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(2/22予約、副本23、予約302)>rakutenAI VS.教科書が読めない子どもたち【一切なりゆき】樹木希林著、文藝春秋、2019年刊<「BOOK」データベース>より「求めすぎない。欲なんてきりなくあるんですから」心に沁みる希林流生き方のエッセンス!【目次】第1章 生きること/第2章 家族のこと/第3章 病いのこと、カラダのこと/第4章 仕事のこと/第5章 女のこと、男のこと/第6章 出演作品のこと<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(2/27予約、副本17、予約613)>rakuten一切なりゆき【そしてバトンは渡された】瀬尾まいこ著、文芸春秋、2018年刊<「BOOK」データベース>より血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった森宮優子、十七歳。だが、彼女はいつも愛されていた。身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。<読む前の大使寸評>図書館予約1036位ってか・・・・1年近く待つんやろか?<図書館予約:(4/19予約、副本22、予約1036)>rakutenそしてバトンは渡された【百花】川村元気著、文藝春秋、2019年刊<「BOOK」データベース>より大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない“事件”があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすー。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/14予約、副本10、予約196)>rakuten百花【フーガはユーガ】伊坂幸太郎著、実業之日本社、2018年刊<「BOOK」データベース>より常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本34、予約462)>rakutenフーガはユーガ【クジラアタマの王様】伊坂幸太郎著、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。打ち勝つべき現実とは、いったい何か。巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/31予約、副本1、予約197)>rakutenクジラアタマの王様【日本人の勝算】デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報社、2019年刊<「BOOK」データベース>より在日30年、日本を愛する伝説のアナリスト×外国人エコノミスト118人だから書けた!大変革時代の生存戦略。【目次】第1章 人口減少を直視せよー今という「最後のチャンス」を逃すな/第2章 資本主義をアップデートせよー「高付加価値・高所得経済」への転換/第3章 海外市場を目指せー日本は「輸出できるもの」の宝庫だ/第4章 企業規模を拡大せよー「日本人の底力」は大企業でこそ生きる/第5章 最低賃金を引き上げよー「正当な評価」は人を動かす/第6章 生産性を高めよー日本は「賃上げショック」で生まれ変わる/第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよー「大人の学び」は制度で増やせる<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/20予約、副本14、予約157)>rakuten日本人の勝算【キュー】上田岳弘著、新潮社、2019年刊<「BOOK」データベース>より前世に太陽と同じ温度で焼け死んだと話す少女が同級生だった「僕」は、この惑星で平凡な医師として生きていたが、いきなり「等国」なる組織に拉致された。彼らによれば、対立する「錐国」との間で世界の趨勢を巡り争っており、その中心には長年寝たきりとなっている祖父がいるという。その祖父が突然快復し失踪、どうやら私の恋人を見つけたらしい。一方、はるか未来に目を覚ました自称天才の男は迎えに来た渋い声の異郷の友人と共に、“予定された未来”の最後の可能性にかけるため南へ向かい、途中、神をも畏れぬ塔を作り重力に抗おうとしたニムロッドの調べが鳴り響く。時空を超えた二つの世界が交差するとき、すべては完成する…?<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/26予約、副本3、予約15)>rakutenキュー【三体】劉慈欣著、早川書房、2019年刊<「BOOK」データベース>より物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/09予約、副本8、予約179)>rakuten三体【漢字の字形】落合淳思著、中央公論新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より「馬」の字からはタテガミをなびかせ走るウマの姿が見えてくる。しかし、「犬」からイヌを、「象」からゾウの姿を想像することは難しい。甲骨文字から篆書、隷書を経て楷書へー字形の変化を丹念にたどると、祭祀や農耕など中国社会の変化の軌跡を読み取れる。漢字がもつ四千年の歴史は、捨象と洗練と普及の歴史なのだ。本書では小学校で習う教育漢字を取り上げた。眺めて楽しい字形表から漢字の歴史が見えてくる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/20予約、副本1、予約2)>rakuten漢字の字形【カザアナ】森絵都著、朝日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より平安の昔、石や虫など自然と通じ合う力を持った風穴たちが、女院八条院様と長閑に暮らしておりました。以来850年余。国の規制が強まり監視ドローン飛び交う空のもと、カザアナの女性に出会ったあの日から、中学生・里宇とその家族のささやかな冒険がはじまったのです。異能の庭師たちとタフに生きる家族が監視社会化の進む閉塞した時代に風穴を空ける!心弾むエンターテインメント。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/21予約、副本11、予約109)>rakutenカザアナ【チャイナ・スタンダード】朝日新聞取材班、朝日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より人権、民主主義、サイバー空間、開発協力、生命科学、メディア、決済…。世界第2の経済大国となった中国は、世界のルールを塗り替えるのか。5大陸29カ国で総力取材。朝日新聞好評連載に大幅加筆し書籍化。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/22予約、副本2、予約2)>rakutenチャイナ・スタンダード【もの忘れと記憶の科学】五日市哲雄著、日刊工業新聞社、2019年刊<「BOOK」データベース>より人類は3つの記憶システムをもっています。それはヒトがヒトとして受け継がれていく「遺伝子の記憶」、歴史などの出来事を後世に伝える「文字による記憶」、そしてヒトが個人としてのキャラクターを形づくる「脳の記憶」です。ここでは、「脳の記憶」を中心にその秘密を解き明かします。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/22予約、副本2、予約2)>rakutenもの忘れと記憶の科学【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て図書館予約の軌跡194予約分受取目録R19好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。
2019.09.25
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図書館に予約していた『天安門』という本を、待つこと4日でゲットしたのです。このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。【天安門】リービ英雄著、講談社、1996年刊<「BOOK」データベース>より史上初!アメリカ人の芥川賞候補!上海の女、毛主席が破壊した米外交官の家。アジアの巨体な歴史に揺さぶられるひとりの白人少年-日本アメリカ中国を越境する新しい世界文学の傑作。<読む前の大使寸評>このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。<図書館予約:(9/17予約、9/21受取)>rakuten天安門「北京越境記」でラストエンペラーが語られているので、見てみましょう。p100~104 <北京越境記> 故宮の、売票処と買いてある、ほこりまみれの窓口へ歩いた。「向こうで買え」と言われて、反対側の外国人専用の窓口へ行き直した。中国人の入場料は十元で、外国人は四十五元である。こちらの窓口には若い東洋人が立ち、いかった声できっぷ売りのおねえさんにどなりつけている。「我是中国人! 俺は中国人だ! なんで外国人といっしょにされるんだ! なんで外国人レートを払わなければいけないんだ!」 彼が叫んでいたのは、中国人の中国語だった。しかし北京人の中国語ではないのがぼくにも分かる。 看板をよく見ると、FOREIGNERS AND OVERSEAS CHINESE、外国人及び華僑、四十五元、とある。 華僑の男は延々と不平を叫びつづけるが、窓口の女は、たいていの北京の窓口の女のように、耳を傾けず、ただ黙っている。 ぼくは入場券を買って、巨大な午門の小さな入口へと足を運んだ。後の方で周辺国で生まれてしまった中国人による一方的な「激論」がまだつづいている。 故宮の中に踏み込んだ瞬間、すべての激論が忽ち消えてしまったような、広大なほどもの静かな空間の中に立ってしまった。 そこは、おそらく世界の中で、最も中心的な場所だった。世界のいくつかの歴史的「中心」の中で、最も中心らしい場所だったのである。 中へ、中へと、歩きつづけて、やがては背後にある二つの巨大な門を振りかえって見た瞬間、共産主義も資本主義ももちろん、「中国」すら消えてしまった。 中国の、清朝から近代への、最も劇的な歴史の場面の真只中に立った瞬間、北京に来てはじめて、忘れようとしていた日本のことが、とつぜんの勢いで、認識の前面に出てしまった。 二つの巨大な門を背後にして清朝の皇帝が「世界」を伺った大和殿に向うと、どこの国の外国人も、否応なしに、自国文化の「周辺性」を認識させられるのである。 「世界」の中心に、このように広大で、もの静かで、自明で絶対的な威厳をたたえた空間があるという意識は、周辺国のアジア人には常に働いていたのではないか。 観光ガイドが、英語や日本語で「ラストエンペラー」の話をしている。ぼくは二つの巨大な門を後にして皇帝の座に向う周辺国の使節たちの気分を想像してしまった。 その皇帝自身も、満州という周辺国が「中心」を征服して、「中心」の引力によって同化してしまった者だった。征服者すら同化させてしまう中国文明の力、それは西洋で学んだ中国観である。 そんな理解の仕方に加えて、同化とは周辺民族の被征服にすぎない、そしてくり返される征服と被征服は、周辺と中心の葛藤を、場合によっては逆転を意味するものだという「知恵」を、ぼくは「周辺」の島国でいつのまにか学んだのである。しかし近代西洋の中国観が重要な何かを見逃しているのと同じように、「中華思想」という理解の仕方で代表される近代日本の中国観も、歴史的「知恵」から見ると、貧弱な見方にすぎないのではないか。その背景には近代西洋を追うようにしてこのような場所を一度征服したという経験も影響しているのかもしれない。 大和殿が見えた。 中心と周辺の「礼」をひっくりかえしてしまった日本の古代天皇のことを考えた。日の昇る国から日の沈む国の王へ、とこのような場所へスキャンダラスなあいさつを送ってしまった推古天皇のことを思い出しながら、大和殿へ近づいたのである。 そしてイギリスというもう一つの島国の王に、逆にこの場所から、周辺国扱いをするスキャンダラスなあいさつが送られた。その事件が、中国がいまだに回復していない秩序の崩壊の始まりとなったことも、「ラストエンペラー」を日本語や英語で説明するガイドの声を遠くに聞きながら、考えた。 そしてぼくは大和殿に近づいたのである。 「大和」は大いなるハーモニーでもあれば、行き届いたコントロールでもある。完璧な調和と徹底的な抑制。故宮の左側に、あの赤い屋根の向うには、巨大な赤い壁に囲まれた中南海という、京の真只中を占める指導者たちの「村」が二つの湖のほとりに点在する。そこだけは外国人が入れない。『天安門』3:「毛主席」の遺体『天安門』2:著者にとっての中国『天安門』1:「天安門」の語り口
2019.09.25
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図書館に予約していた『天安門』という本を、待つこと4日でゲットしたのです。このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。【天安門】リービ英雄著、講談社、1996年刊<「BOOK」データベース>より史上初!アメリカ人の芥川賞候補!上海の女、毛主席が破壊した米外交官の家。アジアの巨体な歴史に揺さぶられるひとりの白人少年-日本アメリカ中国を越境する新しい世界文学の傑作。<読む前の大使寸評>このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。<図書館予約:(9/17予約、9/21受取)>rakuten天安門この「北京越境記」(続き)の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。p92~95 <北京越境記> 花束を手に、次々と参拝者が毛主席の彫刻の前へ進んで、花束を頭の上に抱えて、二回礼をする。 夏のはじめに、弟の葬儀の朝、ぼくは線香を持って、今と同じ仕草をしたのを、とつぜん思い出した。「はい、一列、二列、そうそう、二列を作るのよ」 オバさんの声が、優しいが厳しい幼稚園の先生の声に聞こえだした。一日中あきもせず、子供たちに単純な作業を繰り返し教えこむような声。彫刻の毛主席の横顔をうかがいながら、そんな不思議な連想をしてしまった。「老百姓」にとって元来の共産主義は、一人にいっぱいずつ、「鉄板椀」を与える、一生つづく幼稚園のようなものだったかも知れない。 彫刻の毛主席の前にあるテーブルに花束の山ができていた。 オバさんの声が遠くなった、「快! 快!」(急げ、急げ)とどなる兵士の命令が耳の横で鳴り響いた。 人の列が左に曲がると、より薄暗い木のパネルの通路に入った。次の部屋の入口が見えた。 後から押されて先へ動くと、入口の向こうに、中国の最も聖なる空間が、人々を待っていた。群衆はしんとしていた。 とつぜん、前の方でするどい音がした。 ビービービービービー という音が人に埋った暗い通路の壁にこだました。 「課長さん」のポケベルが鳴り出してしまった。 「課長さん」があ然とした顔になって、あわてて腰に付いているポケベルを手探りした。 が、間に合わなかった。 ビービービービービー 考えられない場所でとんでもないことが起きてしまったとき、それに気づかなかったふりをする、という礼節の普遍的原則、か、その音が耳に入らなかったかのように、まわりの人はみな緊張した無表情を保った。 資本主義の甲高くけたたましい音が消されて、通路の中は再び静まりかえった。 後から押されて、ぼくは入口に近づいた。 そして奥の部屋の入口に付いた。 右、左のガラスの壁の間に、槌と鎌だけの「原共産主義」の旗に包まれて、遺体があった。「快! 快!」と兵士の声だけが響いた。 2、3秒で、「毛主席」の横を通り過ぎた。特急列車に乗って小さな山脈をすっと通り過ぎるように、よくルージュされたほおの老人の遺体の横を通り過ぎたのだ。中国の歴史をひっくり返した「力」そのものの、どこかおだやかな死顔の前で、一瞬思わず立ち止まろうとすると、耳の後でいかった英語の声・・・GO! GO!・・・が響き、あっという間にその部屋を出てしまったのだ。 茫然として、数百人といっしょに次の、売店に並んでいる部屋にたたずむと、「毛主席」という中国語が頭の中をかけ廻り、「よく知っている人」の死体を見てしまったというショックとともに、毛沢東に会ったとき、ようやく、二十世紀には英雄などありえないことが分かった西洋の作家のことばが頭に浮かんだ。『天安門』2:北京越境記『天安門』1:「天安門」の語り口
2019.09.25
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図書館に予約していた『天安門』という本を、待つこと4日でゲットしたのです。このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。【天安門】リービ英雄著、講談社、1996年刊<「BOOK」データベース>より史上初!アメリカ人の芥川賞候補!上海の女、毛主席が破壊した米外交官の家。アジアの巨体な歴史に揺さぶられるひとりの白人少年-日本アメリカ中国を越境する新しい世界文学の傑作。<読む前の大使寸評>このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。<図書館予約:(9/17予約、9/21受取)>rakuten天安門この「北京越境記」の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。p70~73 <北京越境記>「国民党と共産党というのがあって、わたしたちは国民党の側にいるの」 ぼくは八つか九つのとき、母からそんな言葉を聞いた。父の仕事の関係で、台湾にいたぼくと弟と母と父からなる家族は、みんな白人で、アメリカ人だった。父はユダヤ系で、はじめてアメリカ政府につとめたとき、キリスト教系の同僚の一人から「あんたたちはもっと肌が黒いと思った」と言われたらしいが、1950年代の台湾では、ぼくらは、たとえ金髪のキリスト教徒のイメージから外れても、まぎれもなく「美国人」だったのである。「美国人」のぼくらがなぜアメリカではなく台湾にいるのか、とポーランド系でカソリック育ちの母にぼくが聞いたからか、まったく覚えていないが、ぼくの何かの質問に答えて、母がそういったのを、今でもはっきり覚えているのだ。 そして八つか九つのぼくは、全世界が「国民党」と「共産党」に分かれていて、見たという覚えもない本国のアメリカも「国民党」の国だと思いこんだのである。 ぼくの子供の時代はしあわせだった、と青年になってから考えた。中国人と何の付き合いもないまわりの米軍の将校たちと違って、わが家にはたびたび中国人の客を父が招待した。蒋介石の息子も家に食べに来たらしい。 家に出入りしていた中国人のほとんどが1949年の共産革命で敗北した国民党派で、大陸を失った大陸人だった。そしてぼくが子供のとき、家の中で聞いていた中国語は、清らかで「r」の音が豊かな北京語が多かった。「光復大陸」(大陸を回復せよ)を夢見ながら、大陸と海峡をへだてた美しい島で年を取ってゆく大人たちには「北京人」が多くいたと、ずっと後になって気づいたのである。かれらは大陸の都市を、「北京」ではなく、国民党流に「北平」と言っていたのだが。 もちろん北京出身者ばかりではなかった。中国語が堪能な父すら「分かりづらい」と言っていた南出身の老将軍もいた。そして父の秘書には上海で生れた若い女性もいた。夏になると、米軍のジープに乗って、父と、上海生れの女と三人で海へ行くこともあった。百五十キロ離れた大陸に面した浜辺には有刺鉄線が引いてあった。ときには砲撃のこだまも聞こえたりした。海峡の向こうにあるという大陸は、至上のミステリーの地だったのである。 ユダヤ系の父とポーランド系の母は、ぼくが十歳のときに、離婚した。1960年だった。ぼくは母と、六歳の弟といっしょに香港へ行った。半年経って、父が、上海生れの女と再婚した。また1年経って、ぼくは、母と弟といしょに、幼児のおぼろげな記憶しかなかったアメリカへ「帰」ってしまった。その後は中国語を日常的に耳にすることはなかった。 アメリカで高校を卒業して、1967年に、父が上海生れの女といっしょに住んでいた横浜へ行って、日本の大学に通った。 横浜のアメリカ領事館に、父と、上海生れの女と、ぼくと半分血を分けたもう一人の弟といっしょに住んでいた。 領事館から5分ほど歩いたところに、中華街があった。中華街には、一軒、あきらかに「大陸」を、「共産主義」を表に出している店があった。土産店といっしょに、レストランを経営していた。レストランに入ると、毛主席の胸像があり、上海のバンドを描いたイラスト・ポスターがあった。 そこのむすめと、ときどき、子供時代の北京語から記憶の破片を拾いながら、話をすることがあった。毛主席の思想は、「二十世紀最大的思想」だと、彼女は信じていた。髪の毛をポニーテイルにした、紅衛兵のような女の子だった。 その店へ行ったということを、アメリカ外交官の父に言うと、父がおこって、「中共との接触はCIAにまかせろ」とぼくをどなった。『天安門』1
2019.09.24
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図書館に予約していた『天安門』という本を、待つこと4日でゲットしたのです。このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。【天安門】リービ英雄著、講談社、1996年刊<「BOOK」データベース>より史上初!アメリカ人の芥川賞候補!上海の女、毛主席が破壊した米外交官の家。アジアの巨体な歴史に揺さぶられるひとりの白人少年-日本アメリカ中国を越境する新しい世界文学の傑作。<読む前の大使寸評>このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。<図書館予約:(9/17予約、9/21受取)>rakuten天安門この「天安門」の語り口をちょっとだけ、見てみましょう。p22~26 <2> 夏の終わりに近い日、かれは庭の木の葉を折って小舟に仕立て、水面のすぐ下に鯉がたおやかに泳いでいる池に浮かべて遊んでいた。午後の強い日差しが、小舟が流れている方向の、池の向こう側にある小丘の灌木の上に、縞状に降りていた。 家の中から父の大きな声が庭まで届いていた。父は、かれにも多少は分かるようになっていた四声のある言葉で話していた。家の中へ振り向くと、その声は書斎の方から流れていた。しかし老将軍たちと酒を飲んでいた夜と違って、相手の声は聞こえなかった。老将軍たちと同じように四声で上がったり下がったりする父の声は、真面目そうで、繰り返すリズムもあった。 父の声がこだまする廊下の黒い板の上をつま先で、その声が流れている書斎までそっと歩き、ちょうど四分の一閉まりそこなったガラス戸の隙間から中を覗いてみた。 書斎の中に立っている父が、「対美国政府・・・」とはきはきした、抑揚のある声で口述している最中だった。 父の机に向かって、いつもなら父の座っている背もたれの高い肘掛け椅子を、黒髪の、かれよりは十いくつか年上の、そして父よりは十いくつか年下のすらりとした女が占め、父の口から規律正しく連発されるその言葉を、ガリガリと音をたてて筆記しいていた。 父の大きな体のかげに座っている黒髪の女の長方形の横顔を、かれはちらっと窺った。壁に飾ってあるsing song girlとなんとなく似ているとかれは思った。 その瞬間、ガラス戸の隙間から覗いているかれの青灰色の目と、禿げ上がった大きな額の下の同じ青灰色の父の目が合った。 父が口述の腰を折って、即座に英語に切り換えた。 This is Miss Jiao その瞬間、お母さんはどこにいるのか、という思いがかれの脳裏を掠めた。 黒髪の女が大きな肘掛け椅子からゆっくりと立ち上がり、ガラス戸に向かって「アメリカン」の大人の女がそうするように、細くて白い手を伸ばして、握手を求めた。 かれは不意打ちをされたが、渋々と自分の手を伸ばした。母の指より細い指とほんの軽く握り合い、そして自分の手を引いた。 黒髪の女がかれの西洋語のファースト・ネームを流暢に呼び、 I've heard all about you と言った。「アメリカン」の発音に限りなく似ているが、「アメリカン」より柔らかい、後で思い出すと気品のある声だった。かれは「この国」の大人の女の口から、母が話すのと同じことばを、これほど自然に使いこなすのを、初めて聞いた。 何を言えばいいのか、かれには分からなかった。この人と何も話したくなかった。2、3秒、ガラス戸の隙間に立ったまま、黙り込んだ。父の青灰色の目の中には「ちゃんと返事をしろ」と命令しているような表情が浮かんでいた。お母さんはどこにいるのか。 黒髪の女にかれはいきなり、 Where are you from? と聞きだした。ぼくらの家の、父の書斎に突然現れたあなたは、いったいどこから来たのか。 黒髪の女がびっくりしたように、長方形の、象牙を粉にして塗ったか、黄白色の化粧顔を歪めて、それから薄い微笑みを浮かべた。 Oh・・・from the mainland, originally 「あら・・・大陸ですが、もとは」 かれの質問がかわいい、という風に、父は大声で笑い、ミス・ジャオが大陸にある「シャングハイ」というところで生れたと言った。大陸が「占領」された後に、高校生だった彼女が、家族と一緒にここに渡ってきたとも、難しい事柄を分かりやすく説明するような口調で、言った。ウーム 外交官の息子として台湾、香港などで過ごした著者の思い出が懐かしく(あるいは疎ましく?)反映されていますね。
2019.09.24
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図書館で『西蔵放浪(上)』という本を手にしたのです。チベットを西蔵と漢字で書く著者のセンスがいいではないか・・・それと思いの他、カラー写真のページが多いのがええでぇ♪【西蔵放浪(上)】藤原新也著、朝日新聞社、1985年刊<「BOOK」データベース>より古書につきデータなし<読む前の大使寸評>チベットを西蔵と漢字で書く著者のセンスがいいではないか・・・それと思いの他、カラー写真のページが多いのがええでぇ♪rakuten西蔵放浪(上)砂漠にふれたあたりを、見てみましょう。砂漠は大使のツボでおます。p77~82 <ヒマラヤ砂漠> ヒマラヤとは砂漠のことではないか・・・と思った。東に向けて四時間余り、なだらかな斜面を登りつめてのち、車の行く手を阻む巨大な絶壁を見た時、そう思った。 その灰緑色をした巨大な砂岩の壁は、車上のひとびとが夢心地、車の両の端に流れ行く緑豊かな山麓の風物に心奪われているすきに、ひと知れず、フロントガラスの四方をふさいでいた。数時間も同じように続いていた単調なエンジンの音が、突然変調をきたし、車体のひずみのある処置がおの激しいエンジンの振動を受けて鳴った時、ひとびとの視線は、緑の野から前方の絶壁へと移っていた。 その迫りくる砂岩の壁の威容が、そして並ならぬ機械音が、ひとびとの口を一瞬封じた。ひとびとの沈黙の沈黙の中にエンジンの音がガンガンと鳴り続いた。その激しい静けさの中で運転手が口を開くが、エンジンの音にかき消されて聞きとれない。再び口を開いた男は「誰か煙草をくれ」と言った。 男は煙草を吸うというより、前歯で固く噛みしめていた。男は、ハンドルを両の脇に抱え込んだまま、前方の岩壁に眼を据え、あごに力を込めたので、一本の煙草はその根本よりうち曲がり、その火は危うく、男の鷲鼻に触れるかに見える。そして・・・男はたった一度だけ、深く煙草の煙を吸い込んで、それを窓の外に投げ捨てる。(中略) 雪・・・。 樹・・・。 草・・・。 花・・・。 それらのものを、山肌に見ようと眼を凝らす。山は・・・それら優柔な神の造物の一切を裏切っていた。・・・山は、ただ一つの草木の名も読めぬ、したたかな俗物であった。・・・アノヤマハナンダ・・・ その余りに巨大な俗物を指指して問う。・・・ヒモーレヤ・・・ 隣の席に座る男が大声で言う。・・・ヒ・マ・ラ・ヤ・・・?!・・・アア、ヒモーレヤダ!・・・ 男の大きな掌が一つ飛んで来て、僕の背中を力まかせにたたいた。男は高々と笑った。≪ともにのぼりなん・・・ヒモーレヤ砂漠、死出山、潮干山・・・≫ウン ともにのぼりなんヒマラヤ砂漠♪『西蔵放浪(上)』1
2019.09.24
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図書館で『西蔵放浪(上)』という本を手にしたのです。チベットを西蔵と漢字で書く著者のセンスがいいではないか・・・それと思いの他、カラー写真のページが多いのがええでぇ♪【西蔵放浪(上)】藤原新也著、朝日新聞社、1985年刊<「BOOK」データベース>より古書につきデータなし<読む前の大使寸評>チベットを西蔵と漢字で書く著者のセンスがいいではないか・・・それと思いの他、カラー写真のページが多いのがええでぇ♪rakuten西蔵放浪(上)第1章の冒頭部の語り口を、見てみましょう。p16~17 <第1章 蓮華の下> 虫なのに、人間のような名前をして、沼地に棲んでいる。源五郎という虫・・・ユーモラスな名前とはうらはらに、鋭い牙を持ち、肉食である。魚や虫や貝、その他もろもろの好き物、時にはそれらの死屍を食べて生きている。 この虫の特異性は、池沼に潜んで生肉や死屍などを喰らっているくせに、その背甲の下に羽をかくし持って、時に空中を飛翔することにある。それも昼中でなく夜中に飛ぶ。 沼に潜って生肉や死屍を食するなどとは下劣な虫に違いない。そんな虫がなぜ空中を飛ぶ術を心得ているのだろうかと思う。しかし、地球の過去を思うに、下劣な、卑しい生き物ほど飛翔願望というやまいの虜になって、おしまいにはやまいが本性になり、本当に空を飛んだりしている。 遠い過去にあっては、地べたに這いつくばって鳥の卵などを盗み食いしていた爬虫類の類、つまり蛇や蜥蜴のようなものが鳥に進化して空中を飛び回っているし、近い話では、八万四千余もの卑しい煩悩群をかかえているという人類が、めでたく団体で空を飛んでいる。かの源五郎も、この種の、悪行即飛翔病の類型の中に組み込むことができるような気がする。 しかし、この虫は、なぜ夜にしか飛ばないのだろうかと思う。手前勝手に考えるに・・・この虫はひょっとすると夢を見ているのではないか、と思う。日中は沼に潜って、生肉や屍なぞを喰らっているがゆえに、夜になるとその忌むべき所業にさいなまれ、反動として、妙に柄に合わぬ高貴な夢を見たがるのではなかろうか。人間にも夢遊歩行というのがあるように、この虫にも夢遊飛翔というのがあるのではないか、と思う。 僕はこの虫のことをあまり好ましいとは思ってはいないのだが、この源五郎という虫の生態のことを考えていると、ふと、魔がさすように思い当たることがある。この源五郎・・・どことなく、僕に似ているように思えるのである。この虫の生活とその行動、どことなく、インドにおける僕の所業に類似するところのものがあるのだ。 僕はかねてより、自分のことを虫のようなものだな、と思っていた。インド大地を這うように旅しながら、そう思うのである。しかし、ヒマラヤ連山が、蓮の花の千の花弁だと知り、インド大地が泥沼だと知った時、おのずと、わが無名虫の生存圏とその環境などが知れてき・・・もはや、菜の花畑を舞う蝶などとは縁遠い身の上であることも知れてきた。 ・・・それではと、沼の面にあって、泥に汚れることなく、比較的達者な泳法で泳いでいるあのアメンボという虫ならば、と、ひそかに意中のムシを心あたためていたのだが、僕自身の所業を顧みるに、僕は泥沼印度でかなりの長きに渡って、ヒトの死屍に執着しており、それを写真におさめ、それを売り食いしてきた身の上・・・いわば、死屍を喰らって生きてきたのであった。ところが、あのアメンボという虫、ものの死屍よりももっぱら交尾の方に執着している様子であり、これとは似ていないし、似ていたくない。 そこで、沼地に棲息して死屍を食する虫となると、教種の虫が浮かび上がってきたのだが、中でも、源五郎という虫は、その名が僕自身の人格を貶めないような、何か伝統的な趣きを持っていたので、僕はこの源五郎という虫に似ているのだなと思い込むようにした。とくに、僕はこの虫が、夜な夜な沼の面からふらりと舞い上がり、何のいわれもなく空中を徘徊するということに、心なしか共感を覚える。ウーム・・・ヒトの死屍、源五郎という虫、泥沼、蓮の花という著者が連想するイメージが、いかにも著者のこだわりではないか。
2019.09.23
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<『地図の物語』4>図書館で『地図の物語』という本を手にしたのです。全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪【地図の物語】アン・ルーニー著、日経ナショナルジオグラフィック社、2016年刊<「BOOK」データベース>より新しい地図が、新しい世界を生んできた。ビーズや貝殻で王の旅路を示した地図、ココヤシの葉柄を組んだマーシャル諸島の水路図、地図に早変わりする戦闘機パイロットのスカーフ…世界の捉え方は時代や地域で千差万別。驚くほど多様な世界観をたどる。<読む前の大使寸評>全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪rakuten地図の物語カッシーニ図地図作りについて、見てみましょう。p7~8 <なぜ地図を作るのか> 地図とは、そもそも道を探したり目的地への経路を示したりするものだが、土地の所有権や新発見を記録するために使われることもあるい、農業や鉱業向けの実用的なものもある。ときには、政治的な目的にも利用される。 今日、私たちはこれらの地図をひとくくりにして考えるが、中世ヨーロッパ諸国やイスラム以前のアラブ諸国には「地図」という言葉そのものがなかった。彼らは、様々な地図間に共通点を見いだしていなかった。世界の「真の姿」はそもそも地図では表現できない。丸い地球を平面図に書き写すこと自体、何かを歪めなければできない相談なのだ。 「真の姿」へのこだわりは、地図を政治的な道具として使おうとする企みにもつながってくる。1582年にマイケル・ロックが描いた北米大陸図は、既に知られていたカナダ北西部をわざと空白にしている。太平洋への航海を実際より容易なものに見せかけるためだ。ロックの目的は、北西航路の開拓や北米の植民地化を推し進めるための、探検への投資を促すことだった。 1490年にヘンリクス・マルテルスが描いた地図は、アフリカ大陸南端を異様なまでに引き延ばしている。アフリカ経由の航海を実際より長くかかるように見せかけ、コロンブスによる西回り航路の開拓を後押ししようとしたふしがある。(中略) <地図作りをめぐる試行錯誤> ごく初期の地図では身の回りの地域しか描かれることはなかった。少し離れた土地となると、旅人の話や神話、想像をもとに描くよりほかなかったのである。 地図を作るために、先人たちが手にした最初の道具が「測量」だ。紀元前200年頃には、古代ギリシャの学者、エラトステネスが地球の大きさを測量している。地球上のある地点を特定する方法として、緯度と経度という仕組みを生み出したのもエラトステネスだ。ロープと重りによる簡単な測量法は古くから知られていて、紀元前2700年頃の古代エジプトではすでに使われていた。 ローマ帝国時代になると、測量技師が活躍するようになり、ローマ帝国の周囲10万キロ以上の道が測量される。その結果が、ポイティンガー図と呼ばれる大がかりな道路図だ。ずっと時代が下がって1615年には、オランダ人数学者のヴィレブロルト・スネルが三角測量を考案する。三角形の原理を使って地点間の距離を計算するこの方法は、フランスのカッシーニ図を始めとする国家による大規模な地図製作事業を可能にした。 18世紀になると経緯儀が改良され、陸地での地図製作はさらに飛躍的な発展を遂げる。『セルデンの中国地図』という本が興味深いので紹介します。当時、南シナ海を最も正確に描いた海図だったようです。【セルデンの中国地図】ティモシー・ブルック著、太田出版、2015年刊<「BOOK」データベース>より400年のときを経て1枚の地図が歴史を変えた。英国で発見された中国の古地図には、鎖国下の日本を含む東アジアによる大航海時代の記録が残されていた!世界に衝撃を与えた地図の謎に迫る歴史ノンフィクション。【目次】第1章 この地図の何が問題なのか?/第2章 閉鎖海論/第3章 オックスフォードで中国語を読む/第4章 ジョン・セーリスとチャイナ・キャプテン/第5章 羅針図/第6章 中国からの航海/第7章 天円地方/第8章 セルデン地図の秘密<読む前の大使寸評>この本には、海南島沖の米中軍用機衝突事件の顛末が載っているわけで、歴史的にも、社会学的にも読める多角的な視点が・・・・ええでぇ♪<図書館予約:(2/04予約、2/09受取)>rakutenセルデンの中国地図『セルデンの中国地図』1:米中軍用機衝突事件の顛末『セルデンの中国地図』2:セルデンの経歴など『セルデンの中国地図』3:三浦按針など『地図の物語』3:御固泰平鑑『地図の物語』2:北欧諸国の地図『地図の物語』1:プレトマイオス図
2019.09.23
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図書館で『地図の物語』という本を手にしたのです。全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪【地図の物語】アン・ルーニー著、日経ナショナルジオグラフィック社、2016年刊<「BOOK」データベース>より新しい地図が、新しい世界を生んできた。ビーズや貝殻で王の旅路を示した地図、ココヤシの葉柄を組んだマーシャル諸島の水路図、地図に早変わりする戦闘機パイロットのスカーフ…世界の捉え方は時代や地域で千差万別。驚くほど多様な世界観をたどる。<読む前の大使寸評>全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪rakuten地図の物語黒舟来航の後に作られた沿岸警備のための地図を、見てみましょう。p174~175 <御固泰平鑑> この地図は、現在の東京湾周辺の御固(沿岸防備)を目的として1860年頃に描かれた。きっかけは、1853年のマシュー・C・ペリー提督率いる黒舟の来航である。ペリーは浦賀に入港、200年続く鎖国を解くよう幕府に迫った。表向きは通商を求める平和的なもので、幕府も当初抵抗を示さなかったが、沿岸警備の甘さに危機感を抱く。そこで用意されたのが、防衛体制を描いたこの地図だ。 予期される脅威に備え、品川沖に11基の台場(海上砲台)を構築する予定だったが、結局5基(図の左端中央)のみで終わっている。 左下が北で、そこには「江都(江戸)」の文字も見える。木版刷りの地図で、縮尺は用いていない。『地図の物語』2:北欧諸国の地図『地図の物語』1:プレトマイオス図
2019.09.23
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図書館で『地図の物語』という本を手にしたのです。全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪【地図の物語】アン・ルーニー著、日経ナショナルジオグラフィック社、2016年刊<「BOOK」データベース>より新しい地図が、新しい世界を生んできた。ビーズや貝殻で王の旅路を示した地図、ココヤシの葉柄を組んだマーシャル諸島の水路図、地図に早変わりする戦闘機パイロットのスカーフ…世界の捉え方は時代や地域で千差万別。驚くほど多様な世界観をたどる。<読む前の大使寸評>全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪rakuten地図の物語北欧諸国の地図を、見てみましょう。p94~95 <カルタ・マリナ> カルタ・マリナは、北欧諸国を地名とともに詳しく紹介した最初期の地図だ。製作者はスウェーデン出身の宗教家、学者のオラウス・マグヌスで、完成までに12年をついやした。 人生の大半を国外で過ごしたマグヌスは、ポーランドに住んでいた頃にこの地図を作り、イタリアのベネチアで出版。原版9枚から刷られた地図は、縦1.25メートル、横1.7メートルに及ぶ。 地図には各地の特色が事細かく図示されている。たとえばフィンランドには木タール入りの樽、特産の干物、造船の様子が記されている。スカンディナビア以北の海が初めて描かれた地図でもあり、そこに浮かぶアイスランドが噴火する火山とともに示されている。 [1539年]『世界をまどわせた地図』という本で、この地図を見てみましょう。『世界をまどわせた地図』より ナショナル ジオグラフィックの書籍『世界をまどわせた地図』は、こうした怪物についても取り上げている。同書は、神話や伝承、あるいは探検家の間違いや嘘などから生まれた「幻の世界の地図」を紹介する本だ。幻といっても、当時の人々には信じられていた世界であり、それゆえに地図にも描かれていた。前述した怪物たちも同様である。かつて人々が信じ、恐れていた怪物たちの姿が、地図に描かれているのだ。■美しく奇妙な海の怪物が勢ぞろい 豊かな想像力で描かれ、絶大な影響力を誇ったオラウス・マグヌスの北欧地図は、現在確認されている限りでは2枚しか残っていない。地図の名前は「カルタ・マリナ」。1539年に発行され、9枚の原版から印刷された地図は125×170センチにもなる。カルタ・マリナの海には、美しくも奇怪な生き物があちこちに描かれている。 オラウスは怪物だらけの海を作るために、船乗りたちから話を聞いたり中世の動物寓話を読んだりするなど、民間伝承を広く調べて情報を集めた。なかでも有名なのは、1555年にローマで発行された彼の著作『北方民族文化誌』だ。あまり現実的とは思えない描写も混じっているが、オラウスの意図は海洋生物に関する科学的な知識を正確に世に広めることにあった。 もちろん、登場する生き物のなかには、実在の生物の姿をねじ曲げたようなものもあるし、神話にしか登場しないようなものもある。だが、このような怪物たちを16世紀の船乗りたちは信じ、恐れていたのだ。以下、カルタ・マリナに登場する怪物の一部を紹介する。■ウミブタ 「私自身も1537年に目撃したこの怪物のような海のブタは、ゲルマン海のいたるところを泳いでいる。ブタの頭を持ち、後ろから見ると月のように丸く、4フィート(1.2メートル)ほどある後頭部は竜のようだ。胴体の両側に目が2つずつあり、へその位置を示すような第3の目が腹についている。尾は普通の魚と同じくギザギザしながら二股に分かれている」『地図の物語』1
2019.09.22
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図書館で『地図の物語』という本を手にしたのです。全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪【地図の物語】アン・ルーニー著、日経ナショナルジオグラフィック社、2016年刊<「BOOK」データベース>より新しい地図が、新しい世界を生んできた。ビーズや貝殻で王の旅路を示した地図、ココヤシの葉柄を組んだマーシャル諸島の水路図、地図に早変わりする戦闘機パイロットのスカーフ…世界の捉え方は時代や地域で千差万別。驚くほど多様な世界観をたどる。<読む前の大使寸評>全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪rakuten地図の物語歴史教科書にも出ていたプレトマイオス図を、見てみましょう。p124~125 <プレトマイオス図> プレトマイオスの地理書は、何世紀にもわたってヨーロッパと中東の地図製作者に影響を与えてきた。しかしながら、現存する最古の写本は、彼の死後1000年ほどたってから作られたものだ。 プレトマイオス自身が地図を描いたかどうかは定かではなく、仮にそうだったとしても原図は既に失われている。大事なことは、彼が格子状の経緯線で位置を示す、新たな地図製作法を編み出したことだ。また、数学を用いて、丸い地球を平面に書いた最初の人物である。 このプレトマイオス図には、人が住むと考えられていた地域が描かれている。当時まだ知られていなかったアフリカ南部、アジア北部、アメリカ、オーストラリアやニュージーランド、南極、ヨーロッパやロシアの最北部、太平洋や大西洋はもちろん記されていない。 この図は13世紀にビザンチン帝国で復元されたもので、プレトマイオスの地図がヨーロッパに普及するのはもっと下って15世紀以降になる。
2019.09.22
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歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリさんがインタビューで「国民は常に監視下、膨大な情報を持つ独裁政府が現れる」と説いているので、紹介します。(9/21デジタル朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも) 「ホモ・デウス」などの著書が累計で2千万部売れ、世界の指導者や経営者からも注目されるユヴァル・ノア・ハラリさんが、テルアビブ市内で朝日新聞のインタビューに応じた。ハラリさんは、民主主義の崩壊、人工知能(AI)やアルゴリズム支配に警鐘を鳴らすとともに、個人や集団として立ち向かうための知恵を熱く語った。Q:私たちが直面する大きな課題とは、何でしょうか。A:三つあります。核戦争を含む世界的な戦争、地球温暖化などの環境破壊、そして破壊的な技術革新です。 三つ目が最も複雑です。AIとバイオテクノロジーの進歩は今後20~40年の間に、経済、政治の仕組み、私たちの暮らしを完全に変えてしまうでしょう。AIとロボットがどんどん人々に取って代わり、雇用市場を変える。 新たな監視技術の進歩で、歴史上存在したことのない全体主義的な政府の誕生につながるでしょう。AIとバイオテクノロジー、生体認証などの融合により、独裁政府が国民すべてを常に追跡できるようになります。20世紀のスターリンやヒトラーなどの全体主義体制よりもずっとひどい独裁政府が誕生する恐れがあります。Q:21世紀の技術は、民主主義よりも専制主義を利すると。A:20世紀、中央集権的なシステムは非効率でした。中国やソ連の計画経済は情報を1カ所に集めようとしましたが、データを迅速に処理できず、極めて非効率で愚かな決定を下しました。 対照的に、西洋や日本では情報と権力は分散化されました。消費者や企業経営者は自分で決定を下すことができ、効率的でした。だから冷戦では、米国がソ連を打ち負かしました。しかし技術は進化している。いま、膨大な情報を集約し、AIを使って分析することは簡単で、情報が多ければ多いほどAIは有能になる。 例えば、遺伝学です。100万人のDNA情報を持つ小さな会社が多くあるより、10億人から集めた巨大なデータベースのほうが、より有能なアルゴリズム(計算方法)を得ることになる。危険なのは、計画経済や独裁的な政府が、民主主義国に対して技術的優位に立ってしまうことです。Q:世界を支配するのは、人間ではなくなるのでしょうか。A:何も手を打たなければ、新たな技術は、ごく少数のエリート、国によっては独裁的な政府に強大な力を与えるでしょう。もっと深いレベルでは、真の力はアルゴリズムが持ちます。人間では不可能な量の情報を集めて分析するからです。金融システムを例に挙げましょう。今でも、どう機能しているかを理解している人は全体の1%かもしれない。でも30年後にはゼロになる。『金融危機に直面しています』と大統領に進言するのはアルゴリズムになります。Q:働き手や企業にとっては、何が問題ですか。A:最大の問題は仕事の消失です。仕事はAIやロボット、自動運転車などに奪われる。新たな職業は生まれます。問題は、仕事の絶対量の不足ではなく、自らを再訓練できるかです。例えばバス運転手が、自動運転車のせいで仕事を失ったとします。車のデザインやソフト作成の仕事はある。では、40歳の運転手をソフト開発者に再訓練できるでしょうか。 精神的な問題もあります。ある年齢になって、自己改革を迫られるのはストレスのかかることです。監視の問題もある。10年後に就職面接に行くと、アルゴリズムがすべてのデータを確認する。あなたの生活すべてが、長くストレスのたまる就職面接なのです。 ■ ■Q:政治について聞きます。米国のトランプ氏は多くのうそをついて大統領になり、「ポスト・トゥルース(真実かどうかは重要ではない)時代」と言われます。A:フェイクニュースやポスト・トゥルースの現象は非常に心配です。だが、新しいものではない。人類の歴史と同じだけ存在しています。20世紀初頭のファシズムや共産主義のプロパガンダが多くの人をだましたように、過去は今よりもっと悪かった。Q:ではなぜ今、世界各地でポピュリズムが隆盛を迎えているのでしょうか。A:大多数の人にとって世界を理解するのは『物語』を通じてです。事実や統計に基づいて、ではありません。その『物語』が次々と崩壊し、真空状態にある。真空状態は良識ある未来へのビジョンではなく、過去への郷愁に満ちた空想(を語るポピュリズム)によって埋められています。 20世紀には、共産主義、ファシズム、自由主義という、世界を説明する三つの大きな『物語』がありました。第2次世界大戦でファシストの物語が崩壊した。次に、共産主義と自由主義との間の闘争となり、共産主義が崩壊した。多くの人々は『歴史は終わった』と感じたが、自由主義の物語も崩壊しつつある。気候変動、機械による自動化、AIの進展によって生じる多くの困難を、自由主義は解決できずにいます。Q:ポピュリストの何が問題なのでしょうか。A:独裁的な傾向を持っていることです。間違いを認めない。物事がうまくいかないときは、外敵や裏切り者のせいにする。『力が足りないから失敗したんだ。だからもっと強大な力をくれ』と。だが、彼らに力を与えても、また失敗する。未来へのビジョンがないのですから。すると、『まだ裏切り者がいる。さらに力を与えよ』と言うでしょう。ファシズムや独裁主義への道につながります。 ポピュリズムは、民主的で前向きな運動として始まることがありえます。置き去りにされていると感じる人たちが、自分たちの権利や不安が顧みられていないという感情を表明するためです。それがポピュリストによってハイジャックされ、過激にされうるのです。(過激化する前に)そうした人たちの悩みや問題に、解決策を提供すべきです。 ■ ■Q:大きな課題の一つ目として挙げられた世界的な戦争や核を使ったテロが起きる可能性は。A:可能性は高くはないと思いますが、懸念すべきレベルではあると思います。5年前なら、可能性はきわめて小さいと言ったでしょう。しかし、2016年以降、世界の地政学は急速に悪化しました。自由世界を牽引してきた米国と英国は、その役割を基本的に放棄しました。『自分第一』と言うリーダーには、だれもついて行きたいと思いません。こうした状況が世界的な戦争や核戦争に至る懸念を強めています。 それはすべての人にとっての大惨事です。前世紀からの教訓の一つは、戦争は誰にとっても悪いことなのに、気をつけないと、また起きるということです。人間の愚かさゆえです。人間は愚かな間違いを犯すのです。Q:あなたは将来、一部のエリートが、大多数の「無用者階級」を支配する危険を指摘しています。エリートは、自らを批判的に見て、謙虚になるべきだと考えているのでしょうか。A:人間は間違います。我々は、政府が誤りをおかすことを考慮して政治システムをデザインする必要があります。同様に、個人の哲学においても、無謬性を前提にすることは、大きな誤りです。作り出すものすべて、デザインするものすべてについて、失敗を考慮する必要があると思います。 ■ ■Q:これからの世界で、一部のエリート、あるいは独裁的な政府による「支配」から逃れるにはどうすれば良いのでしょう。A:誰がデータを所有し、どんなAIを開発しているのかが問題です。少数の企業や政府が、すべてのデータを所有するようになったら手遅れです。逆らおうとする者は、簡単にスキャンダルを見つけ出され、おとしめられます。データ(独占を防ぐよう)所有を規制する必要があります。政府がやるべきことです。政府を動かすには、市民が団結して圧力をかけねばなりません。一つの国だけでなく、国際協力も欠かせません。Q:個人にできることは。A:古来、ソクラテスなどの思想家は『己を知る』ことの大切さを人々に説いてきましたが、今は急を要します。あなたを監視し、解読しようとする企業や政府があるからです。彼らがあなた自身よりもあなたを知るようになったら、あなたを操作するのは簡単です。ポピュリストたちのやり方も、同じです。彼らは、人々が何を嫌悪し恐れているかを見つけ出し、感情のスイッチを押し、さらに強い嫌悪と恐怖を生み出します。 抵抗するには、まず、あなた自身の弱さを認識する必要があります。『自分には、移民やイスラム教徒への偏見がある。そういったテーマのフェイクニュースにだまされるのは簡単だから、気をつけよう!』と。方法はたくさんあります。私自身は(1日2時間の)瞑想を実践していますが、心理士に会うとか、芸術に触れてもいい。山登りやハイキングを、自分自身を理解する機会としても使えるでしょう。(聞き手 編集委員・山脇岳志、渡辺淳基) *ユヴァル・ノア・ハラリ:1976年、イスラエル生まれ。近著の邦訳「21 Lessons―21世紀の人類のための21の思考」が、11月に河出書房新社から刊行される。最近読んだ世界的ベストセラー『サピエンス全史(上)』です。サピエンス全史(上)4:帝国の変遷サピエンス全史(上)3:サピエンスの言語能力サピエンス全史(上)2:農耕がもたらした繁栄と悲劇(続き)サピエンス全史(上)1:農耕がもたらした繁栄と悲劇AIが支配する世界ユヴァル・ノア・ハラリ2019.9.21
2019.09.22
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今回借りた4冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「越境」でしょうか♪<市立図書館>・天安門・国のない男<大学図書館>・地図の物語・西蔵放浪(上)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)************************************************************【天安門】リービ英雄著、講談社、1996年刊<「BOOK」データベース>より史上初!アメリカ人の芥川賞候補!上海の女、毛主席が破壊した米外交官の家。アジアの巨体な歴史に揺さぶられるひとりの白人少年-日本アメリカ中国を越境する新しい世界文学の傑作。<読む前の大使寸評>このところ多和田葉子の作品を集中的に読んでいるが・・・リービ英雄も日米を往還し、日本語と中国語に堪能な作家であり、どこか多和田葉子を彷彿とするのです。<図書館予約:(9/17予約、9/21受取)>rakuten天安門【国のない男】カート・ヴォネガット著、日本放送出版協会、2007年刊<商品説明>より【目次】(「BOOK」データベースより)わたしは末っ子だった/「トゥワープ」という言葉をご存じだろうか/小説を書くときの注意/ここで、ちょっとしたお知らせを/さあ、そろそろ楽しい話をしよう/わたしは「ラッダイト」と呼ばれてきた/2004年11月11日で、82歳になった/人間主義者とはどういう人を指すかご存じだろうか?/何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ/イプシランティの懐古的な女性/さて、いい知らせがいくつかと、悪い知らせがいくつかある/わたしはかつて、自動車販売会社の社長だった<読む前の大使寸評>追って記入rakuten国のない男【地図の物語】アン・ルーニー著、日経ナショナルジオグラフィック社、2016年刊<「BOOK」データベース>より新しい地図が、新しい世界を生んできた。ビーズや貝殻で王の旅路を示した地図、ココヤシの葉柄を組んだマーシャル諸島の水路図、地図に早変わりする戦闘機パイロットのスカーフ…世界の捉え方は時代や地域で千差万別。驚くほど多様な世界観をたどる。<読む前の大使寸評>全ページがカラー画像というビジュアル本であり・・・太子のお好みでおます♪rakuten地図の物語【西蔵放浪(上)】藤原新也著、朝日新聞社、1985年刊<「BOOK」データベース>より古書につきデータなし<読む前の大使寸評>チベットを西蔵と漢字で書く著者のセンスがいいではないか・・・それと思いの他、カラー写真のページが多いのがええでぇ♪rakuten西蔵放浪(上)************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き396
2019.09.21
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・多和田葉子「献灯使」(12/09予約、副本4、予約94)現在6位・日本が売られる(2/05予約、副本22、予約354)現在47位・『AI VS.教科書が読めない子どもたち』(2/22予約、副本23、予約302)現在40位・樹木希林『一切なりゆき』(2/27予約、副本17、予約613)現在164位・そしてバトンは渡された(4/19予約、副本22、予約1036)現在733位・川村元気『百花』(6/14予約、副本10、予約196)現在87位・米中ハイテク覇権のゆくえ(6/30予約、副本1、予約8)現在2位・伊坂幸太郎『フーガはユーガ』(7/24予約、副本34、予約462)現在340位・伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』(7/31予約、副本1、予約197)現在177位・デービッド・アトキンソン『日本人の勝算』(8/20予約、副本14、予約157)現在131位・上田岳弘『キュー』(8/26予約、副本3、予約15)現在12位・劉慈欣『三体』(9/09予約、副本8、予約179)現在174位・落合淳思『漢字の字形』(9/20予約、副本1、予約2)・森絵都『カザアナ』(9/21予約、副本11、予約109)・チャイナ・スタンダード(9/22予約、副本2、予約2)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)<予約候補>・柳美里『ねこのおうち』・有馬哲夫『原発・正力・CIA』・橋本治『黄金夜界』・川上弘美『某』・呉善花『韓国を蝕む儒教の怨念 -反日は永久に終わらない』・高樹のぶ子『アジアに浸る』・高野秀行「ワセダ三畳青春記」・五日市哲雄『もの忘れと記憶の科学』・書物の破壊の世界史・領土消失 規制なき外国人の土地買収・高橋源一郎『読んじゃいなよ』・メカニズムの事典・ディック『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』:図書館未収蔵・天子蒙塵 第四巻:図書館未収蔵・ヘミングウェイで学ぶ英文法:図書館未収蔵・内澤旬子『ストーカーとの七00日戦争』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・八画文化会館vol.6 総力特集:レトロピア岐阜:図書館未収蔵・「月夜のでんしんばしら」谷川雁、C.W.ニコル:図書館未収蔵・Coloring in Wadaland―和田誠カラー作品集:図書館未収蔵・カズオ・イシグロ著『癒されざる者たち』:図書館未収蔵・阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』:芸工大に収蔵・阿刀田高『裏声で歌へ君が代』・重松清『ビタミンF』:阿刀田さんが「セッちゃん」をお奨め・デジタルエコノミーはいかにして道を誤まるか:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』・ボリス・ヴィアン著『うたかたの日々』:芸工大に収蔵・禁じられた歌(田)<予約分受取:7/03以降> ・E・スエンソン『江戸幕末滞在記』(6/27予約、7/03受取)・中尾佐助『農業起源をたずねる旅』(7/02予約、7/09受取)・三浦しおん「愛なき世界」(11/25予約、7/13受取)・堀江貴文「これからを稼ごう」(1/12予約、7/17受取)・大江健三郎『キルプの軍団』(7/10予約、7/17受取)・『新・日本の階級社会』(7/18予約、8/10受取)・浅田次郎『帰郷』(8/08予約、8/10受取)・多和田葉子『地球にちりばめられて』(2/18予約、8/28受取)・多和田葉子「エクソフォニー」(8/31予約、9/05受取)・『ソロモンの指環』(9/03予約、9/08受取)・リービ英雄『天安門』(9/17予約、9/21受取)【献灯使】多和田葉子著、講談社、2014年刊<「BOOK」データベース>より鎖国を続ける「日本」では老人は百歳を過ぎても健康で、子供たちは学校まで歩く体力もないー子供たちに託された“希望の灯”とは?未曾有の“超現実”近未来小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(12/09予約、副本4、予約94)>rakuten献灯使【日本が売られる】堤未果著、幻冬舎、2018年刊<「BOOK」データベース>より水と安全はタダ同然、医療と介護は世界トップ。そんな日本に今、とんでもない魔の手が伸びているのを知っているだろうか?法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏と反撃の戦略を、気鋭の国際ジャーナリストが、緻密な現場取材と膨大な資料をもとに暴き出す!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(2/05予約、副本22、予約355)>rakuten日本が売られる【AI VS.教科書が読めない子どもたち】新井紀子著、東洋経済新報社、2018年刊<「BOOK」データベース>より大規模な調査の結果わかった驚愕の実態ー日本の中高校生の多くは、中学校の教科書の文章を正確に理解できない。多くの仕事がAIに代替される将来、読解力のない人間は失業するしかない…。気鋭の数学者が導き出した最悪のシナリオと教育への提言。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(2/22予約、副本23、予約302)>rakutenAI VS.教科書が読めない子どもたち【一切なりゆき】樹木希林著、文藝春秋、2019年刊<「BOOK」データベース>より「求めすぎない。欲なんてきりなくあるんですから」心に沁みる希林流生き方のエッセンス!【目次】第1章 生きること/第2章 家族のこと/第3章 病いのこと、カラダのこと/第4章 仕事のこと/第5章 女のこと、男のこと/第6章 出演作品のこと<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(2/27予約、副本17、予約613)>rakuten一切なりゆき【そしてバトンは渡された】瀬尾まいこ著、文芸春秋、2018年刊<「BOOK」データベース>より血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった森宮優子、十七歳。だが、彼女はいつも愛されていた。身近な人が愛おしくなる、著者会心の感動作。<読む前の大使寸評>図書館予約1036位ってか・・・・1年近く待つんやろか?<図書館予約:(4/19予約、副本22、予約1036)>rakutenそしてバトンは渡された【百花】川村元気著、文藝春秋、2019年刊<「BOOK」データベース>より大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない“事件”があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすー。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/14予約、副本10、予約196)>rakuten百花【米中ハイテク覇権のゆくえ】NHKスペシャル取材班、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より国家戦略のもと、ハイテク分野で急速な成長を遂げる中国。アメリカの強さの源泉であった「情報」や「金融」、そして「AI」などの分野で、その“覇権”に迫らんとしている。激しさを増す二つの大国の競争は、世界をどこへ導くのか?選択を迫られる日本の運命は?米中攻防の真実に迫る取材で大反響を呼んだNHKスペシャルを新書化。「新冷戦」の今後を読み解く一冊!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/30予約、副本1、予約8)>rakuten米中ハイテク覇権のゆくえ【フーガはユーガ】伊坂幸太郎著、実業之日本社、2018年刊<「BOOK」データベース>より常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本34、予約462)>rakutenフーガはユーガ【クジラアタマの王様】伊坂幸太郎著、NHK出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。打ち勝つべき現実とは、いったい何か。巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/31予約、副本1、予約197)>rakutenクジラアタマの王様【日本人の勝算】デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報社、2019年刊<「BOOK」データベース>より在日30年、日本を愛する伝説のアナリスト×外国人エコノミスト118人だから書けた!大変革時代の生存戦略。【目次】第1章 人口減少を直視せよー今という「最後のチャンス」を逃すな/第2章 資本主義をアップデートせよー「高付加価値・高所得経済」への転換/第3章 海外市場を目指せー日本は「輸出できるもの」の宝庫だ/第4章 企業規模を拡大せよー「日本人の底力」は大企業でこそ生きる/第5章 最低賃金を引き上げよー「正当な評価」は人を動かす/第6章 生産性を高めよー日本は「賃上げショック」で生まれ変わる/第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよー「大人の学び」は制度で増やせる<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/20予約、副本14、予約157)>rakuten日本人の勝算【キュー】上田岳弘著、新潮社、2019年刊<「BOOK」データベース>より前世に太陽と同じ温度で焼け死んだと話す少女が同級生だった「僕」は、この惑星で平凡な医師として生きていたが、いきなり「等国」なる組織に拉致された。彼らによれば、対立する「錐国」との間で世界の趨勢を巡り争っており、その中心には長年寝たきりとなっている祖父がいるという。その祖父が突然快復し失踪、どうやら私の恋人を見つけたらしい。一方、はるか未来に目を覚ました自称天才の男は迎えに来た渋い声の異郷の友人と共に、“予定された未来”の最後の可能性にかけるため南へ向かい、途中、神をも畏れぬ塔を作り重力に抗おうとしたニムロッドの調べが鳴り響く。時空を超えた二つの世界が交差するとき、すべては完成する…?<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/26予約、副本3、予約15)>rakutenキュー【三体】劉慈欣著、早川書房、2019年刊<「BOOK」データベース>より物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象“ゴースト・カウントダウン”が襲う。そして汪森が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた、現代中国最大のヒット作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/09予約、副本8、予約179)>rakuten三体【漢字の字形】落合淳思著、中央公論新社、2019年刊<「BOOK」データベース>より「馬」の字からはタテガミをなびかせ走るウマの姿が見えてくる。しかし、「犬」からイヌを、「象」からゾウの姿を想像することは難しい。甲骨文字から篆書、隷書を経て楷書へー字形の変化を丹念にたどると、祭祀や農耕など中国社会の変化の軌跡を読み取れる。漢字がもつ四千年の歴史は、捨象と洗練と普及の歴史なのだ。本書では小学校で習う教育漢字を取り上げた。眺めて楽しい字形表から漢字の歴史が見えてくる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/20予約、副本1、予約2)>rakuten漢字の字形【カザアナ】森絵都著、朝日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より平安の昔、石や虫など自然と通じ合う力を持った風穴たちが、女院八条院様と長閑に暮らしておりました。以来850年余。国の規制が強まり監視ドローン飛び交う空のもと、カザアナの女性に出会ったあの日から、中学生・里宇とその家族のささやかな冒険がはじまったのです。異能の庭師たちとタフに生きる家族が監視社会化の進む閉塞した時代に風穴を空ける!心弾むエンターテインメント。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/21予約、副本11、予約109)>rakutenカザアナ【チャイナ・スタンダード】朝日新聞取材班、朝日新聞出版、2019年刊<「BOOK」データベース>より人権、民主主義、サイバー空間、開発協力、生命科学、メディア、決済…。世界第2の経済大国となった中国は、世界のルールを塗り替えるのか。5大陸29カ国で総力取材。朝日新聞好評連載に大幅加筆し書籍化。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/22予約、副本2、予約2)>rakutenチャイナ・スタンダード【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て図書館予約の軌跡193予約分受取目録R19好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。
2019.09.21
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。rakuten村上春樹と私英語圏における翻訳について、見てみましょう。(あるいは奢れる英語とでも言いましょうか。)p221~223<英語圏における日本文学の将来>■翻訳者の名前は小さい ときどきアメリカの読者から「何を読んだら日本文学の現状が分かるか」と聞かれることがある。私は何の躊躇いもなくMonkey Businessと答える。変な題名ではあるが、Monkey Businessというのは日本文学の最前線を毎年紹介するユニークな英語文芸誌である。創刊号は2011年に出たが、編集長は東京大学でアメリカ文学を教える一方、無数のアメリカ小説を翻訳してきた柴田元幸さんである。 柴田さんはアメリカ文学の翻訳者としていくつかの雑誌で特集を組まれるほど有名である。また村上作品の翻訳のチェック係としても注目されている。 日本の読者には当たり前のことに思われるかもしれないが、翻訳者についてアメリカで特集が組まれるとは、考えられないことである。だいたい翻訳書が出ても、表紙に翻訳者の名前が出るなど、きわめて珍しい。柴田さんの翻訳書には彼の名前が大きく出ているのに対し、私の訳書は、原著者が村上春樹であれ、漱石であれ、はたまた芥川であれ、まったく出ていないか、出たとしてもごく小さいのが普通である。 日本で翻訳者が重要視されるのは、明治以前の開国以来、翻訳者に頼らなければ全世界の知識に触れる可能性がなかったからである。逆に、英語は世界中で通用する言葉であり、もともと好奇心の乏しいアメリカ人はますます自己中心の世界観で満足して、外国の言葉を知ろうとしないし、翻訳書を少数しか読もうとしない。 英語版Monkey Business創刊の3年前に、柴田さんは日本で文芸誌『モンキービジネス』を始めた。編集者G氏が後ろ盾となって、出版社まで見つけてきてくれて、季刊『モンキービジネス』がヴィレッジブックス刊で2008年4月にスタートした。大まかに言って、半分は日本の作家の新作やインタビュー、半分はほとんど全部柴田さん自身の翻訳になる英米の作品である。 なぜ文芸誌に『モンキービジネス』という名前を付けたのかと、私は柴田さんに聞いてみた。「初めは『ストーリー』にしたかったんだけど、女性誌に『Story』というのがあって、著作権上不可だと分かった。で、どうしたものか、Gさんと電話で喋っていたら、チャック・ベリーのCDが目に入った。おお、そうだ、トウー・マッチ・モンキー・ビジネス・・・これだ、とまずリクツ抜きで思った」 しかし、リクツもあとからいちおう付いてきた。柴田さんによれば、日本の文芸誌はだいたいにおいてシリアスである。そして、中身はそれぞれ工夫しているのだが、形式は相当に画一的である。 同じ版型で、毎月同じ日に刊行されて、一緒に新聞広告が載って・・・これはまたアメリカでは考えられない話である。誌名も旧漢字を未だ使っていたりしていて、物々しい。いかにもシリアス・ビジネスという感じなのだ。で、それに対抗してモンキー・ビジネスというわけなのだ。「でも、実際にやってみて、毎月文芸誌を出している人たちはすごいなあと思うようになった。こっちは3ヶ月にいっぺんでもフウフウ言っているのに。尊敬してます」 と柴田さんは苦笑いする。『村上春樹と私』6:文学鑑賞と年齢の関係『村上春樹と私』5:世界中の翻訳仲間『村上春樹と私』4:アメリカでの村上講演会『村上春樹と私』3:村上作品の英訳『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事『村上春樹と私』1:翻訳の苦労
2019.09.21
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。rakuten村上春樹と私文学鑑賞と年齢の関係について、見てみましょう。p134~137<後期高齢者なのか>■村上作品に魅了されてしまった 2015年5月7日、ニューヨークのジャパンソサエティでアメリカ文学の翻訳者柴田元幸さんや若い作家の松田青子さん他数人とともに「翻訳の魅力:村上春樹から若手作品まで」という講演会に参加する光栄に浴した。 その題名は誰の発想だったか分からないが、初めて見た瞬間に、自分は老人になったなあと思った。私が初めて村上さんの作品に出合ったのは1989年だったが、それ以来、村上春樹という作家の名前は出発点ではなくて、到達点として見ることに慣れていた。 これまでは、「漱石から村上まで」や「川端から村上まで」だったので、急に、現代日本文学の老大家の作品を翻訳したり研究したりする老学者としての役が回ってきたようだった。講演会の講師として、若い作家たちと、そして新しい作家の一人である30代の松田さんがステージのすぐそばに座っていた。とにかく、この経験はショックだった。 私が初めて村上作品を読んだ1989年は、村上さんは40歳で、まだ「若い作家」と言われていたし、彼の主な読者は10代から20代の人々だった。私は48歳になろうとしていたので、村上さんのような若い作家を研究対象にするには年を取り過ぎていたかもしれない。 その当時、海外の評論家や学者の多くは、村上さんことを批評に値する作家とは思っていなかったようだ。いい年をして、若者向きのポップ小説家をそう真剣に扱っているのはなぜかと私はよく聞かれたのだが、いつも冗談半分に「僕は未熟だから」と答えたものだ。今、村上さんご自身もすでに67歳になっていて、村上作品を翻訳したり論文を書いたりしてきたこの老学者は75歳になっている。(2016年当時) 漱石と芥川の場合でも、年齢の問題は忘れてはならない。芥川はもちろん夭折したと言えるが、漱石も比較的若くして亡くなっている。漱石も漱石の時代もある意味で未熟だった。 近代・現代日本文学史の本は明治・大正・昭和の作家を個人ではなく、流派のメンバーとして論じるのが普通だが、漱石は別格で、個人として扱われることが多い。漱石が小説家として出発した時、文壇を支配していたのは自然主義派だったが、漱石にはよく反自然主義のレッテルが貼られている。(中略) 世代間の衝突や反抗や自己発見や孤独というテーマがいくらか青臭く聞こえるなら、あるいは明治という時代を日本の青春期と見ていいかもしれない。時代が移って、次々に現れてくる若い読者層は常に漱石を再発見する。また、西洋においても現代の知識人の姿を漱石に見出す。■情熱は冷めていなかった 漱石の小説の中で、私が翻訳したいという要求が抑えられなかったのは『三四郎』であった。翻訳したくなったというよりは、すぐ翻訳しないと、年を取ったらその若い雰囲気が鑑賞できなくなるのではないかと心配したと言った方が正確かもしれない。 私が『三四郎』を初めて読んだのは33歳か34歳の時で、その若い主人公に惹かれた。ストーリーの初め、主人公の三四郎は23歳で、終わりになると24歳になっている。ハーバード大学のファカルティ・ハウジング・コンプレックスの庭に座って、赤ん坊だった娘を抱きながら4歳のわんぱくな息子に目をやっている妻に、漱石の原文と私の翻訳をセンテンスごとに読み上げて、翻訳のチェックをしている光景がありありと思い出させる。 とにかく、早く翻訳しないと、若い主人公への思いがなくなると思ったが、後になって分かったのはそういう心配はまったく要らないということだった。ペンギン社の2009年版のために翻訳を改定した時、私は60代後半だったが、『三四郎』への情熱は全然冷めていなかったから。『村上春樹と私』5:世界中の翻訳仲間『村上春樹と私』4:アメリカでの村上講演会『村上春樹と私』3:村上作品の英訳『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事『村上春樹と私』1:翻訳の苦労
2019.09.20
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。rakuten村上春樹と私世界中の翻訳仲間について、見てみましょう。p123~126<オコナー賞受賞式に出席して>■『ねじまき鳥クロニクル』に着想を得て 今回の旅で妻と私はワシントン州シアトルから出発し、第二の立ち寄り先がダブリンだった。最初の訪問先であるアイルランドのコークで9月24日の夜にフランク・オコナー国際短篇賞に村上春樹が決まったと発表された。コペンハーゲンは第三の立ち寄り先であり、村上作品をデンマーク語に訳しているメッテ・ホルムさんに会いに行くのが目的だった。 ホルムさんとは2006年3月に東京で開催された村上春樹国際シンポジウムで知り合った。デンマーク日本協会における講演も彼女が手配してくれて、そこでマッシーモ・フィオレンティーノが自作を収めたCDを私に手渡してくれたのだ。(中略) ライナーノートで次の一節を読んで私が感激したことは言うまでもない。「この素晴らしい小説を書いた村上春樹と、それを見事に翻訳したジェイ・ルービンに最大のかんしゃを」 言い換えれば、私の頭の中を絶え間なく流れている音楽は・・・私の翻訳に寄って促進された面もある。このシンプルだが心を打つメロディは、村上さんが書いた一編の短編小説のようにたちまち心を捉え、憶えやすい・・・多くの人と出来事が驚くべき国際的合流を遂げた成果であり、その中心に村上春樹がいる。これがグローバリゼーションならば、私は大賛成である。 ある日本人作家のノーベル賞に対する権利を確立しようとする半官組織の発想ではないかと疑う者も我々の中にはいたが、たとえそうだったにせよ、国際シンポジウム・ワークショップ「」は素晴らしかった。特に参加者にとっては。 これは世界中の翻訳仲間と出会う前代未聞の機会で、意見や感想のやりとりは公開イベントの最中だけでなく、食事や富士山麓の森を散策する間も行なわれた。これぞ「合流」の最たるものだ! 半年後、デンマークのエスロムにてメッテ・ホルムさん、美しいお嬢さんのフェリシア、私の妻が一緒にエビの殻をむいている姿を写真に撮りながら、あのシンポジウムは独特の実りをもたらしたのだと私はしみじみ感じた。 1268年に川端康成が「日本人の心の精髄、すぐれた感受性をもって表現するその叙述の巧みさ」に対してノーベル文学賞を受賞された時と現在とでは、状況は多いに異なる。当時の西洋人は、日本人作家についてはこの上なく民族中心的な言葉で捉える用意しかなかった。1994年に大江健三郎が「誌的総鵜増力により、現実と神話が密接に凝縮された想像の世界をつくり出し、現代における様相を衝撃的に描いた」としてノーベル文学賞を授与された時には、西洋の側も視野が広がっていただろう。 そして2006年9月にコーク市とマンスター文学センターが短篇賞を村上さんに与えた時は、グローバリゼーションが真っ盛りとなっていた。『村上春樹と私』4:アメリカでの村上講演会『村上春樹と私』3:村上作品の英訳『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事『村上春樹と私』1:翻訳の苦労
2019.09.20
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。rakuten村上春樹と私アメリカでの村上講演会について、見てみましょう。p105~111<ファンが溢れる春樹講演会>■冷房装置が壊れる惨事 2005年5月から1年間、村上さんはハーバード大学ライシャワー・インスティチュートからの招待で、アーティスト・イン・レジデンスとなった。インスティチュート内の広々したオフィスも提供された。 ここでは、前節で述べた村上の世界的な人気を示す具体的なエピソードを書いてみることにする。 村上さんがハーバードにいるという情報が流れた途端にアメリカ各地から講演依頼が殺到したのは言うまでもない。また、国内は言うに及ばず、ドイツ、イギリス、ニュージーランドからも報道関係者がインタビューにオフィスに押し寄せてきた。通りに出れば、村上さんだと気が付いた人が話しかけてくるという具合で、1993年から95年まで同じケンブリッジに滞在した時とは劇的な対照をなしていた。村上春樹は今や、押しも押されもせぬ世界的な作家となったのである。 2005年10月6日、マサチューセッツ工科大学(MIT)の作家シリーズで村上の朗読会が行なわれた当日、事態は絶頂を迎えたかの感があった。このシリーズに招かれるということはとりわけ名誉なことである。(中略) 当日になり、イベント担当者は驚愕した。今日まで、広く名前を知られた作家と言えども、大学の最大会場であるこのホールを満員にする心配はなかったのであるが、講演が始まる数時間前に、会場の全席、500席はすでに埋め尽くされていたっだけでなく、内部のすべての通路も、演壇を囲むステージエリアも歩く隙間もないほどに、ぎっしりと人々が座り込んでいたのである。 会場の外では、ホールの入り口に至る廊下も満員で、大学警察によれば、その数、約1300人だということであった。さらに悪いことには、その日が10月には珍しい酷暑日で、満員の聴衆で熱気がむんむんする上に、ホールの冷房装置が壊れるという思いがけない惨事が起きた。会場内にいる「幸運な」人々は汗を乾かすべくプログラムをうちわ代わりに使うという始末であった。 そうこうしているうちに朗読時間が迫ってきたのであるが、突然、大学の消防署長と名乗る男が壇上に上がって、火災法によって、席についている500人は残っていてよいが、それ以外は全員、通路と床を空けて退散するようにと声を張り上げた。皆が出ていくまで朗読会は始められないと。 聴衆からうめき声があがり、それでも、仕方なく出ていく人々の中には涙を流している者もいた。彼らは外の廊下にいた人たち、さらに遅れて来た人たちと合流した。退出させられた人の一人は「私はインターネットでこのイベントを知って、オハイオ州シンシナティから飛行機ではるばるやって来たのに」と訴えた。聴衆は大学生くらいの年代が圧倒的に多く、アジア系が多かったが、実にさまざまな年代と国籍の人々からなっていた。 人々が退場した後、村上さんは入場を許された。薄いグレーのスポーツコートの下は“Pickle”の文字が入った深緑のTシャツ、靴はトレードマークのランニングシューズという格好である。換気の悪さと人々の熱気は耐え難く、村上さんは、スポーツジャケットを脱いだ。Tシャツは汗でべったりと滲んでいる。そうこうするうちに、小説家ジュノ・ディアズの村上さんの紹介で会が始まった。「村上さんは世界の実体を見せてくれます。しかも私たちが見たことのない世界の実体ではなく、私たちがそれと知らずに日々見ている世界を見せてくれるのです」 拍手が鳴りやむと、村上さんは東京では、無名で過ごすことが難しい有名作家としてのいくつかのエピソードをユーモアたっぷりに流暢な英語で語った。続いて、「かえるくん、東京を救う」の一部を朗読した。 聴衆が日本人でない朗読会では必ず、原文の響きを示す一端として、まず日本語で数ページ読んでから、同じページを英語で読み、その後は英語を母国語とする読み手に引き渡すというのが通常の村上さんの方針である。今回は詩人のウィリアム・コルベット氏がその役を引き受けた。 一部のファンの熱狂的歓迎と、参加できなかった人々の大いなる失望で終わった村上さん朗読会は、MITの作家シリーズの歴史に残る一大イベントであったに違いない。(中略) 最後に、この2回の講演の聴衆の中には、これまたちょうどハーバード大学の客員教授としてその年、ケンブリッジに滞在していた、東京大学教授でアメリカ文学翻訳家の柴田元幸教授の姿もあった。彼は村上さんが手掛けた和訳のチェッカーとしても知られ、私とも旧知の間柄である。初めて会ったのは、2001年3月、村上さんの東京のオフィスにおいてであった。 2000年に村上さんと柴田先生の『翻訳夜話』が対話形式として文芸春秋社から出版され、文中に私の名前もときどき出てきたのであるが、何といっても一番目を引いたのが、特に柴田先生の会話の後に記された(笑)という文字であった。翻訳に関してそんなに冗談を飛ばす人がいるのかと、ぜひ会ってみたい旨を村上さんにお願いしたところ、次の日本滞在の時に実現したのである。『翻訳夜話』を紹介します。【翻訳夜話】村上春樹×柴田元幸著、文藝春秋、2000年刊<「BOOK」データベース>よりroll one’s eyesは「目をクリクリさせる」か?意訳か逐語訳か、「僕」と「私」はどうちがう?翻訳が好きで仕方がないふたりが思いきり語り明かした一冊。「翻訳者にとっていちばんだいじなのは偏見のある愛情」と村上。「召使のようにひたすら主人の声に耳を澄ます」と柴田。村上が翻訳と創作の秘密の関係を明かせば、柴田は、その「翻訳的自我」をちらりとのぞかせて、作家と研究者の、言葉をめぐる冒険はつづきます。村上がオースターを訳し、柴田がカーヴァーを訳した「競訳」を併録。<読む前の大使寸評>おお 翻訳のプロによる「競訳」が見られるのか…期待できそうやで♪<図書館予約:(9/08予約、9/17受取)>rakuten翻訳夜話『村上春樹と私』3:村上作品の英訳『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事『村上春樹と私』1:翻訳の苦労
2019.09.20
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図書館で『妖しい関係』という本を手にしたのです。阿刀田さんといえば、ロアルド・ダールの短篇「女主人」を紹介してくれた作家であり、とにかく阿刀田さんの短篇小説が気になるのです。【妖しい関係】阿刀田高著、幻冬舎、2012年刊<商品の説明>より突然逝った、美しく年若き妻。未亡人となっていた、かつての恋人。生まれ変わりを誓い死んだ、年上の女性。男と女の関係は、妖しく不思議で、時に切ない。短篇小説の滋味を味わいつくす、珠玉の13篇。<読む前の大使寸評>阿刀田さんといえば、ロアルド・ダールの短篇「女主人」を紹介してくれた作家であり、とにかく阿刀田さんの短篇小説が気になるのです。rakuten妖しい関係「死んだ縫いぐるみ」の語り口を、見てみましょう。p104~106<死んだ縫いぐるみ> 電話がかかってきたのは正午少し前、オフィスは昼休みに入ろうとしていた。あとで考えてみれば、相手はこの時間を計ってベルを鳴らしたのだろう。「もしもし」 石崎が囁くと、「もしもし、石崎さん?」 女の声。若い声。「石崎ですが」「あのう、奉子です。銀座の・・・で」 と言い淀む。「やあ、久しぶり」 は銀座八丁目、新橋に近いビルの地下にあったクラブで、今は閉じているはずだ。高級クラブではない。が、どことなくのどかな雰囲気で、石崎は営業を担当していたころ時折行っていた。3、4年も前のことである。「あの、お願いしたいことがあって・・・ほんの十分くらい、お会いできますか」「いいよ」 奉子はで働いていたホステス、20歳くらい・・・いや、もう少し上なのだろうが、子どもっぽくて、まったくすれたところが感じられない。酒場には珍しい。一応は石崎の担当で・・・つまり銀座のクラブではたいてい客ごとに係りのホステスが決まっていて、なんとなく奉子が石崎の担当になっていた。「どこへ行けば、いいんですか」「えーと、今?」「ええ」「どこにいる?」「近くだと思いますけど・・・八重洲の本屋さんの前」 一度、店内で偶然出会ったことがある。「じゃあ、そこのティールーム。今から十分後に行く」「すみません」 受話器を置いて周囲を見まわす。女性からの電話は珍しい。ジャケットを羽織り、 ・・・なんだろう・・・ とエレベーターに急いだ。 ・・・まさか借金じゃあるまいな・・・ それを頼まれるような関係ではなかった。 ・・・勧誘かな・・・ またどこかのクラブに勤めていて“どうぞ来てください”と・・・。その可能性は否定できないけれど、 ・・・ちがうな・・・ 商売にそう熱心な感じではなかった。をやめて堅気の仕事についているような話だった。 東京駅の地下を行く。あちこちで工事が進んでいて、2、3日前に通ったところを迂回しなければならない。少し遅れて約束のティールームに着いた。「やあ」「ご無沙汰してます」 奉子は立って、はすかいに体を曲げる。 若い。相変わらず若い。少女の表情を残している。『妖しい関係』1:黒いオルフェ
2019.09.19
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図書館で『妖しい関係』という本を手にしたのです。阿刀田さんといえば、ロアルド・ダールの短篇「女主人」を紹介してくれた作家であり、とにかく阿刀田さんの短篇小説が気になるのです。【妖しい関係】阿刀田高著、幻冬舎、2012年刊<商品の説明>より突然逝った、美しく年若き妻。未亡人となっていた、かつての恋人。生まれ変わりを誓い死んだ、年上の女性。男と女の関係は、妖しく不思議で、時に切ない。短篇小説の滋味を味わいつくす、珠玉の13篇。<読む前の大使寸評>阿刀田さんといえば、ロアルド・ダールの短篇「女主人」を紹介してくれた作家であり、とにかく阿刀田さんの短篇小説が気になるのです。rakuten妖しい関係冒頭の短篇「オルフェウスの神話」を、見てみましょう。p17~21<オルフェウスの神話> 小谷野と別れたあと…あとと言っても二日ほどたってのことだったがの歌が聞きたくなり、映画のほうも、 …どんな筋だったかな… 古い映画を扱う店へ立ち寄ってDVDを買い求めた。 家に帰って、「知ってる、これ?」「知ってるわよ。テレビで見たわ」 妻はさほどの興味を示さない。そこで独り留守番を頼まれたときに鑑賞した。 カーニバルが熱い。市電の運転手と田舎から出て来た少女の運命的な恋。会ったとたんに愛しあう。そこへ不気味な仮装の男が現れ、少女を奪って死に追いやる。運転手もあとを追って死ぬ。 映画が終わるころになって、「ただいま」 芳美が帰って来た。「よくわからん。歌と画面はいいけれど」「いい曲よね」 芳美のハミングは正調だ。「死体置き場に訪ねて行ったりして…あの世に訪ねて行くのとはちがうよな」「カーニバルってすごいんでしょ。賑わいの最中に死がいきなり襲って来るって、そういうスト-リーじゃないの」「そうかも」 人間たちは歓喜に酔いしれている。そのときにこそ死が近づいて来るのだ。それが神話の示す教訓なのかもしれない。 …小谷野はどう言うかな… 今度会うことがあったら…あまり会いそうもないけれど尋ねてみよう、と思った。 本来のギリシャ神話に触れておけば…オルフェウスはエーゲ海の北岸トラキア地方の出身で、ホメロス以前の最高の詩人にして音楽家、竪琴を奏でて歌う詩歌はまさに生きとし生けるものすべてを感動させてやまなかった、と、これはもちろん伝説である。ニンフの一人エウリュディケを妻とし、この上なく愛していたが、エウリュディケは暴漢に襲われ、逃げる途中で草むらに住む蝮を踏んで咬まれ、あえなく命を失ってしまう。オルフェウスの悲しみは深い。(中略) そして、もう一つ、多くの人の記憶に残る映画は、ブラジルの詩人が書き残したストーリーをマルセル・カミュが脚色・監督して作った名作だ。リオのカーニバルを舞台にして生死を超えた宿命的な愛を描いて、いくつもの映画賞を受けている。とりわけ主題歌となったは郷土色をたたえて哀調を含み、不思議なストーリーに抜群の効果をそなえている。主人公たちの名はオルフェとユーリディスと神話に因んでいるが、ストーリーは必ずしも原話にそうものではなく、有名な冥界行きは含まれていない。阿刀田さんといえば、ロアルド・ダールの短篇「女主人」を紹介してくれた作家であり、とにか阿刀田さんのく短篇小説が気になるのです。『キス・キス』2:女主人
2019.09.19
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図書館で『絶対製造工場』という本を手にしたのです。かつて読んだカレル・チャペックの『スペイン旅行記』にはユーモラスな挿絵が載っていて良かったが、この本にもところどころに挿絵が出て来るので、気にいったのです。【絶対製造工場】カレル・チャペック著、平凡社、2010年刊<商品の説明>より「絶対=神」を製造する機械が発明され、増殖する「絶対」により世界は大混乱に!『ロボット』『山椒魚戦争』の作者によるSF長編。チェコ語からの初訳、挿絵つき。<読む前の大使寸評>かつて読んだカレル・チャペックの『スペイン旅行記』にはユーモラスな挿絵が載っていて良かったが、この本にもところどころに挿絵が出て来るので、気にいったのです。amazon絶対製造工場この本の冒頭を少しだけ、見てみましょう。p9~13<第1章 新聞広告> 1943年の元日、大企業メアス、すなわち金属株式会社の社長G・H/ボンディ氏は、いつものように新聞を読んでいた。戦地からのニュースをいささか軽んじて読みとばし、内閣の危機を回避し、満帆の勢いで「全国経済」欄に進んで行った。ここでそれなりの時間をとって回遊し、それから帆をまきあげ、うとうとと揺れるがままに身を任せた。 「石炭危機か」氏は独り言を口にした。「埋蔵量の枯渇。オストラヴァの炭田は数年にわたり操業停止。なんてこった、こりゃ大災害だ。上シレジアの石炭を運んでこなきゃならない。算盤をはじいてみてくれ、うちの製品がどれだけ高値になるか。それでわたしに競争しろ、と言うのか! うちはもう上がったりだ。さらにドイツが運賃を上げたりしたら、店仕舞いになるだろう。おまけに産業銀行株は下がってる。おお神様、なんてつまらぬ状況なんだ! なんてせせこましい、ばかばかしい、実りのない状況だ! ああ、いまいましい危機だな!」 重役会の議長、つまり社長のG・H・ボンディ氏は、そこでストップした。なにかが氏をしつこくいらつかせた。それを追っかけて行くと、脇に置かれた新聞の最後のページでやっと見つかった。それは「明」という単語だった。実際には単語の一部である。その字のすぐ前で新聞は折られていたから。 まさにその単語が半端であることが、かくも異常に氏に迫ってきたのだ。「うん、そうだな、たぶんそこにある単語は「照明」だろう」ボンディ氏はぼんやり考えた。「しかし、無意味だよ、誰が発明を広告するだろうか? むしろ損失だろう。そこにあるのは「損失」であるべきだ、そうに決まってる」 いささか不機嫌になって、G・H・ボンディ氏は新聞を広げ、不愉快な単語を始末しようとした。その単語は、今や将棋盤の目のような広告欄の中に完全に姿を消している。氏は一つ一つ行を追って探し求めた。そいつは腹が立つほどわざとらしく隠れている。ボンディ氏はまず下からはじめ、最後に右側から見て行った。いまいましい「発明」はそこにあったはずだ。 G・H・ボンディは諦めなかった。再び新聞をたたむと、ほら、憎らしい「明」が端っこに自ら飛び出してきた。そこで「明」を指で押さえ、急いで新聞を広げると、ようやく見つかった…ボンディ氏はひそかに悪態をついた。なんてこった。それはまったく取るに足らぬ、きわめて平凡な広告文だった…。 発明 収益性の非常に高い、どの工場にも好適のもの 個人的理由により即時売却…問い合わせ先 ブジョヴノフ 1651 R・マレク技師 「これは探した甲斐があったな!」G・H・ボンディ氏は考えた。「特許のズボン吊りみたいなものだろうな。ちっぽけなインチキ品か、阿呆のおもちゃか。そんなものにわたしが5分も無駄にするなんて! 馬鹿なことをしたもんだ。つまらぬ状況だ。とてもとてもブームになんかなりゃしない!」 ボンディ社長は、つまらぬ状況のつらさのすべてをより心地よく、とくと味わうために、今はロッキングチェアに身を沈めた。実際に、メアスは十の工場と三万四千人の労働者を抱えている。メアスは鉄鋼部門でトップを行く。メアスはボイラーに関しては敵なしだ。メアスは鉄骨格子における世界的ブランドである。だが、それは二十年にわたる仕事の結果ですよ。神様、ほかの大きな場所でだったら、もっと大きなことが達成できただろうに…。 G・H・ボンディは急に上体を起こした。「マレク技師、マレク技師だと! 待てよ、赤毛のマレクじゃないだろうか。そうだ、なんて名前だったか・・・ルドルフだ、ルダ・マレク、工科大学時代の仲間のルダか? 本当に、この広告の文面には、R・マレク技師とある。おい、ルダ、悪い奴だなおまえは。そんなことができるのか? かわいそうに、もうおしまいなんだな! 「収益性の非常に高い発明」を売却か、ハッハ、「個人的理由により」だと。そんな個人的理由なんてもうわかっているよ。金がないんだろ、なあ? なにか薄汚いパテントを餌にして、誰か企業家をカモにしようってわけだ。そう、おまえは世の中をひっくり返そうという思想にいつもちょっぴり取りつかれていたな。ああ、なんと、われらが大いなる思想は今いずこ! 大いなる夢と欺瞞に満ちたわれらが青春は!」ボンディ社長は再び体を落ち着かせた。かつて読んだカレル・チャペックの『スペイン旅行記』を紹介します。『スペイン旅行記』3:闘牛の魅力『スペイン旅行記』2:ゴヤの魅力『スペイン旅行記』1:ドイツ、ベルギー、フランスを通って
2019.09.18
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図書館で『晴れたり曇ったり』という本を、手にしたのです。ウーム 見覚えが有るような、無いような本である。帰って調べてみると、この本を借りるのは3度目であることがわかりました(またか)・・・で、(その6、7)としました。【晴れたり曇ったり】川上弘美著、講談社、2013年刊<商品説明>より「もういない、でもまだいる」 この前、好きだったひとを、みかけた。まちがいない。会いたいと思いながら会えなかった人に、ようやく会えた。そう思ったとたんに、その人がもうなくなっていることを思いだした。「ぬか床のごきげん」 ぬか床には四種類の期限がある。笑うぬか床、慇懃なぬか床、怒るぬか床、そして淋しがるぬか床。「真夜中の海で」 大学では生物を勉強した。私の卒業研究は、「ウニの精子のしっぽの運動性」だった。「晴れたり曇ったり」 大学時代、バスの窓越しに見かけた喫茶店「晴れたり曇ったり」。一度訪ねてみたいと思いつつ、いくことはなかった。<読む前の大使寸評>帰って調べてみると、この本を借りるのは3度目であることがわかりました(またか)・・・で、(その6、7)としました。rakuten晴れたり曇ったりこの本のタイトルになっている「晴れたり曇ったり」について、見てみましょう。p240~241<晴れたり曇ったり> バスに乗って、渋谷から国道246号をほんの少し西に行ったところに、その不思議な名前のお店の看板はありました。喫茶店、「晴れたり曇ったり」。もう30年ほど前のことです。 当時大学生だったわたしは、小説なるものを書いてみたいものだと思いつつ、どんなふうに書いていいのかというただ一つのとっかかりも得られないまま、毎日授業をさぼっては、図書館でただ悶々と先人の小説を読み散らしていました。 ああ、この先自分はどうやって生きていくんだろう。 熱心に専門の授業を受けている同級生たちを横目で眺めつつ、つねにわたしは鬱々としていたのです。ことに鬱屈が激しい日、わたしはバスに乗りに行きました。渋谷や新宿のバスターミナルから出発する路線に、あてどもなく適当に飛び乗るのです。 やるせない気分で見る車窓からの景色は、不思議な色あいをおびていました。昭和50年代初頭ごろの東京なのに、まるでそれよりも数十年さかのぼった戦後すぐの頃の東京、あるいは反対に、半世紀ほども先の東京であるかのような、時間がぶれてしまう感覚を、いつもわたしはおぼえたものでした。「晴れたり曇ったり」の看板の前を通るたびに、わたしはバスの降車ボタンを、むしょうに押したくなりました。ここで降りて、ふらりと「晴れたり曇ったり」に入ってみよう。何回も思いました。けれど、結局わたしは、1回も「晴れたり曇ったり」に入ることはなかったのです。 ただ、窓から見るだけだった、あの看板。 数年後、就職した後にふと思いついて訪ねた時には、すでに「晴れたり曇ったり」は、なくなっていました。どうしても行きたかった、という店ではなかったけれど、それだけになぜだか、「晴れたり曇ったり」は、ずっとわたしの心の中から消えないのです。 困難なことが、鬱々とした気持が、自己嫌悪がきざすたびに、わたしは小さな声で、「晴れたり曇ったり」と、つぶやきます。晴れていた空にさあっと雲がかかり、ふたたびまた薄く晴れはじめる、そんな中途半端な光景が、まなうらに浮かびます。憂鬱は晴れません。 けれど、その瞬間、ほんのわずかだけ、時間がぶれるのです、遠くまで来たなあ。でも、案外これは、遠くもない、近いところなのかもしれないなあ。そんなふうにぽかんとした気持になるのです。 『晴れたり曇ったり』6:スランプp38~41『晴れたり曇ったり』5:「味の素」談義p222~224『晴れたり曇ったり』4:かすかなその声:『ニッポンの小説』(高橋源一郎)p189~191『晴れたり曇ったり』3:行ってみようじゃないか:『食の達人たち』(野地秩嘉)p174~177『晴れたり曇ったり』2:真夜中の海でp137~139『晴れたり曇ったり』1:ぬか床のごきげんp72~74
2019.09.18
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図書館で『晴れたり曇ったり』という本を、手にしたのです。ウーム 見覚えが有るような、無いような本である。帰って調べてみると、この本を借りるのは3度目であることがわかりました(またか)・・・で、(その6)としました。【晴れたり曇ったり】川上弘美著、講談社、2013年刊<商品説明>より「もういない、でもまだいる」 この前、好きだったひとを、みかけた。まちがいない。会いたいと思いながら会えなかった人に、ようやく会えた。そう思ったとたんに、その人がもうなくなっていることを思いだした。「ぬか床のごきげん」 ぬか床には四種類の期限がある。笑うぬか床、慇懃なぬか床、怒るぬか床、そして淋しがるぬか床。「真夜中の海で」 大学では生物を勉強した。私の卒業研究は、「ウニの精子のしっぽの運動性」だった。「晴れたり曇ったり」 大学時代、バスの窓越しに見かけた喫茶店「晴れたり曇ったり」。一度訪ねてみたいと思いつつ、いくことはなかった。<読む前の大使寸評>帰って調べてみると、この本を借りるのは3度目であることがわかりました(またか)・・・で、(その6)としました。rakuten晴れたり曇ったりスランプについて、見てみましょう。p38~41<へへん> いちばん最近スランプになったのはさきおとついのことだ。ずいぶん近い。最初自分がスランプになったことがわからなくて、困った。くねくねしてみたり、お風呂に長い間つかってみたり、やたらお茶を飲んでみたりしたが、なおらなかった。しばらくしてお腹の中がいやあな気分になってきたので、ようやくスランプだとわかった。 しんとしようかそのまま知らないふりをして眠ってしまおうか迷った。窓の外からは秋の虫の鳴く声が聞こえてくる。そういえば前の日に、友人からアオマツムシの話を聞いていた。曰く、このごろ東京でよく鳴く秋の虫は、外来種の「アオマツムシ」というものである。街路樹の上に棲息する。ものすごく声が大きい。街路樹の上に棲むのは、在来種の日本のこおろぎやら何やらが地面の縄張りをゆずらなかったせいである。 ほそぼそと街路樹の上で命をつないでいたのに、何年もたつうちにすっかりその生態にも慣れて、今や東京の町を大音声で鳴きたてて席巻している。云々。アオマツムシからつながってえんまこおろぎが出てきた。そのままいつものスランプのしんとした場所に入っていってしまったのである。 ようやく今朝になってスランプがなおった。風邪みたいなものだ。時期が来ればなおる。だからとといって油断するといけない。風邪は万病のもと。自転車に乗って、近くのマーケットに行った。スランプの間は買い物なんかしたくない。ものの色つやも楽しめないし、じっとしていて太るからスカートなんかもきつくなる。 スランプが明けると、だから、早速買い物に行く。ニンジンに大根にさんまにチーズに干しえびにぶどうジュース。必用のないものまで盛大に買いこむ。ついでにデパートに寄って、大根の袋ごと試着室に入り、スカートをはいてみる。ついでに喫茶店に入って、大根の袋とスカートの紙包みを横に置いて、コーヒーを飲む。 自転車を飛ばして帰り、みかんサンドをつくった。バタークリームはないから、かわりに生クリームを使い、3年くらい前に買ったみかんのかんづめを開け、食パンにはさんだ。あんまりおいしくなかったが、食べ物を残すのは嫌いなので、耳まであまさず全部食べた。 昼から虫が鳴いている。なぜスランプになんかなるのだろうと、いっぱいになったお腹をさわりながら、思う。自意識過剰。体の不調。失敗。ためらい。そのほか。スランプになっていた時のことを思い出してみる。昨日までのことなのに、うまく思い出せない。みかんサンドの味も、食べたばかりなのにもう思い出せない。やたらに鳴きたてているアオマツムシの声は聞こえるのだが、えんまこおろぎの声は聞こえない。スランプだった時には、あんなにすぐそばにあるもののように思い浮かべられたのに。 少し原稿を書いて、また外に出て、猫を撫でた。いつも路地の入り口にいる猫である。秋が来たと思ったら、もうじき冬だ。今年はあと何回スランプが来るのだろうかと思いながら、アオマツムシの声をじっと聞く。虫の声は、聞いているうちに聞こえなくなる。耳いっぱいになってしまって、何もないのと同じになる。猫がにゃあと鳴き、同時にアオマツムシの声が戻ってきた。 へへん、と思いながら、立ち上がって腰をぐるりとまわした。空がやたらに高くて、何もかにもが秋めいている。へへん、へへん、と言いながら、一人で路地の中をやたらに行ったり来たりした。『晴れたり曇ったり』5:「味の素」談義p222~224『晴れたり曇ったり』4:かすかなその声:『ニッポンの小説』(高橋源一郎)p189~191『晴れたり曇ったり』3:行ってみようじゃないか:『食の達人たち』(野地秩嘉)p174~177『晴れたり曇ったり』2:真夜中の海でp137~139『晴れたり曇ったり』1:ぬか床のごきげんp72~74
2019.09.18
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。rakuten村上春樹と私村上作品の英訳について、見てみましょう。p67~71<無意識と偶然に造られた象の長旅>■バーンバウム氏の英訳 今日、村上作品は世界中で読まれているが、本国では文体のうまい作家とされているにもかかわらず、外国語に翻訳されたものを読んでいる読者には、村上自身の書いた言葉が何一つ伝わってこない。当たり前と言えば当たり前だが、皮肉なことに、言葉を生命とする人(すなわち小説家)が日本以外で読まれたいと思えば、どれほど他人(すなわち翻訳家)の言葉に頼らなければならないかが分かると思う。訳の文体がよくなければ、いくら原作の文体がうまくても、外国では読まれないからだ。 その意味で、村上作品の国際的な人気はアルフレッド・バーンバウムという翻訳者に負うところが大変大きい。初めて英語圏の読者の興味を引いたのが、バーンバウム氏の『羊をめぐる冒険』の生き生きとした訳だったからだ。それ以後、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』も『ダンス・ダンス・ダンス』も活気のある英文になり、村上春樹の人気はますます広がっていった。 バーンバウム氏の英訳を通じてアメリカの出版社が村上作品に興味を持つようにならなければ、私は永遠に村上さんの作品を読まなかったかもしれない。本書冒頭で述べたように、村上作品を初めて読んだのは1989年の夏、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の翻訳を出すか出すまいか迷っていたアメリカのヴィンテージ社という出版社からの依頼によってだった。出版社は日本語の原文を読める人に、小説が翻訳に値するかどうかを聞きたかったわけだ。 私はぜひ翻訳するべきだと勧めたが、ヴィンテージ社はその段階では出さないことに決めた。当時、バーンバウム氏は村上さんのすべての長篇小説を翻訳していたが、短篇の翻訳は少数だったから、私は他の短篇の翻訳の許可をもらって、『象の消滅』や『パン屋再襲撃』や『眠り』を翻訳し始めた。 以後は、好きな作品に出合って翻訳したくなると村上さんに直接頼むのが習慣になったが、不思議なことに、「それはバーンバウムさんがやった」という答えが返ってきた例は一度しかなかった。村上さんの話によると、バーンバウム氏にも「それはもうルービンがやった」と答える羽目には一度もならなかったそうだ。このことは、二人の翻訳者がそれぞれ熱烈な村上作品の愛読者でありながら、志向はまったく違うということを証明している。しかし、この話はそこでは終わらない。 そのころアメリカの一流出版社であるクノップ社から村上さんの短篇集を出す話が持ち上がった。バーンバウム氏が翻訳した原稿と私が翻訳した原稿が同社に送られ、編集者はバーンバウム訳9作とルービン訳8作を選んだ。 いよいよ本が出て、書評が新聞や雑誌に現れはじめると、批評家たちは全部が全部と言っていいほど、バーンバウム氏のものだけに言及するか、私のものだけに言及するかで、両方にふれた評はなかったのである。彼らもまた、二人の翻訳者の志向の違いを、無意識のうちに反映していたに違いない。(中略) 長い時間をかけて骨を折って翻訳したものが、半年で読まれなくなるかもしれないし、後世から見れば明らかな名作を見逃し、愚作を選んで笑われるかもしれない。しかし、生きた文学を翻訳することで、自分が無意識と偶然の連続である創作過程そのものにいくらかでも参加しているという、独特な興奮を味わうことができるのである。■井戸のイメージ 村上さんの小説を翻訳する仕事では、無意識や偶然が特に重要なものに思えてくる。デビュー作の『風の歌を聴け』以来、村上文学には廊下や井戸のイメージが頻繁に出てきて、現実世界から無意識の世界への通路の役割を果している。 作品の人物はそういう通路を通って自分の人間性の核に入ろうとしたり、あるいは反対に、完全に忘れた記憶が同じ通路から不意に出てきて、その不思議なほどの現実性にとまどったりする。 私が1997年に英訳を完成した『ねじまき鳥クロニクル』では、主人公の享は長い間井戸の中にいて、自分の記憶や無意識の世界を探検する。3部作からなるこの長い小説の第2部、第5章から第11章まで、主人公は井戸の底に座りっぱなしだ。『村上春樹と私』2:翻訳者の仕事『村上春樹と私』1:翻訳の苦労
2019.09.17
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです。rakuten村上春樹と私翻訳者の仕事について、見てみましょう。p60~66<目を瞑っては翻訳はやりにくい>■名詞の単数と複数の区別 村上作品の読者は、アメリカから主な影響を受けた波のような現代作家の作品に、翻訳者の発明の余地があるのだろうかと思われるかもしっれない。村上さんの作品には、数々のジャズやロックミュージシャン、あるは、アメリカ人作家が登場するのは言うに及ばず、文章構成や言葉遣いそのものも、明らかに英語的なものが多い。したがって、彼の文体はしばしば「バタ臭い」と形容される。 村上さんの小説『1Q84』のBOOK1とBOOK2を翻訳するにあたり、彼の文体は、相変わらずバタ臭かったのだが、それと同時に、日本語からの翻訳者を常に苦しめる諸問題、つまり15世紀の能舞台から、果ては源氏物語にまで及ぶ語りの問題とも取り組まなければならなかった。 簡単な問題点の一つとして、日本語には、名詞の単数と複数の区別がないということがある。村上さんが英語の単語をあたかも日本語の単語になっているかのように使う場合、複雑となるのである。レイモンド・カーヴァー、ジョン・アーヴィング、スコット・フィッツジェラルド等の作家と深く関わりあっている村上さんでさえ、単数と複数の違いは明確ではない。 例えば、村上さんはジャズ音楽家に関する2冊のエッセイ集『ポートレイト・イン・ジャズ』を刊行した際、他の多くの作品と同様、英語でPortrait in Jazzとの副題を付けた。そうすることによって、日本語だけのタイトルよりも、さらにクールな表紙となるからであると思われる。 もし、この本を英語に翻訳するとなると、タイトルは必ず、文中の複数のジャズ音楽家のプロフィールを意味するPortrait in Jazzにしなければならない。村上さんの原題の「ポートレイト」が日本語として使われていて、単数にも複数にもなる良い例である。 『1Q84』では、超自然的と思われる「リトル・ピープル」という一団が登場する。彼らが集団として同じ動作をする場合は何の問題もないが、彼らの一人が個人として喋ったり、行動したりすると、翻訳の問題が生じてくる。たとえば、 「われらに良いことをしてくれた」と小さな声のリトル・ピープルが言った。 というところを英訳すると、わざわざ「リトル・ピープルの中の一人である」(one of the Little People)というニュアンスを「小さな声のリトル・ピープル」に次のように加えなければならなかった。 You did us a favor, says one of the Little People with a small vcice.(2:403/tr.P.535/UK 566) 『1Q84』の世界では、ある人物は、空には二つの月が存在すると核心する。一つは通常の黄色い大きな月であり、もう一つは小さめの緑色をした歪な月である。二つの月が見える人物は当然、他の人にも見えるかどうか尋ねたいと思う。しかし、頭が変になったかなと思われるのが怖くて、その事実を確かめるのを躊躇する。したがって、二つの月は、疎外感、つまり、他人に正直に述べることを不可能にする、疎外感のシンボルとなる。(中略) 明治時代の小説家、泉鏡花は特に、能舞台の言語に造詣が深く、彼の語り口が登場人物の頭の中を出たり入ったりするので、正確に翻訳するのは困難だ。 しかし、現代の『1Q84』のような小説においてさえ、内的独白は、「」とか活字のフォントの違いとかの助けなしに、登場人物が「俺」の一人称から「彼」の三人称との間を予測なしに、行ったり来たりする長い箇所がある。 私は数回にわたって、村上さんに、この箇所は一人称か三人称か、どっちがよいでしょうかと質問したのだが、彼の答えは決まって「適当にやってください」というものであった。 結局この「適当」という言葉こそが、翻訳者の仕事をすべて言い表していると思う。翻訳者の仕事はつまり、自分の言葉で、適当と思われる手法を使って、できうる限り、読者に原文に近い文学的な経験を味わってもらうことである。もちろん、誰もが、客観的な意味で何が「できうる」かは分かっていない。あまりにも多くの要因が、翻訳者の主観的な経験に基いているからである。『村上春樹と私』1:翻訳の苦労
2019.09.17
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図書館で『村上春樹と私』という本を、手にしたのです。著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうです【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうですrakuten村上春樹と私翻訳の苦労について、見てみましょう。p56~58<目を瞑っては翻訳はやりにくい>■正確に表す言葉を探す『ねじまき鳥クロニクル』第1部13「間宮中尉の長い話・2」の次の文を読んで気分が悪くならない読者はあまりいないと思う。 兵隊たちは手と膝で山本の体を押さえつけ、将校がナイフを使って皮を丁寧に剥いでいきました。本当に、彼は桃の皮でも剥ぐように、山本の皮を剥いでいきました。私はそれを直視することができませんでした。私は目を閉じました。私が目を閉じると、蒙古人の兵隊は銃の台尻で私を殴りました。私が目を開けるまで、彼は私を殴りました。しかし目を開けても、目を閉じても、どちらにしても彼の声は聞こえました。彼は始めのうちはじっと我慢強く耐えていました。しかし途中からは悲鳴をあげはじめました。 ここは蒙古人の将校が、日本人スパイの皮を生きたまま少しずつ剥いでいく描写の単なる冒頭部に過ぎなくて、これから先、残酷なシーンが長々と続く。これを翻訳した、むごたらしい日本語から同程度にむごたらしい英語に書き替えた日々のことを今でもありありと覚えている。 間宮中尉という、この13章の語り手と違って、私は1秒も目を瞑る贅沢を許されなかったのだ。ときどき暴力の多い映画を見に行く時、周りの観客たちが目を瞑っている光景を見ると、あの皮剥ぎの場面を翻訳した経験を思い出したりする。ある時、村上さんご自身にこの章のことを話そうとしたが、彼はその話をまったくしたがらなかった。あまりに酷くて吐き気を催すものだからと言った。 もっとも、作家本人はその章をただ書くだけでよかったが、翻訳しなければならなかった私はそれよりずっと長い時間の過程に耐えなければならなかった。もちろん、あるテキストを翻訳することが書くことより集中力を要する経験だとは言っていない。 原作者は場面のすみずみに詰め込む細かいディテールを全部想像しなければならないのは言うまでもない。が翻訳というものは一番強烈な読書方法だと言っても過言ではない。以上の皮剥ぎの場面を一例として、もし読者は耐えられないほど気持が悪くなれば、目を細めにしたり、飛ばして読んだり、読まなかったりすることもできる。しかし翻訳しているとき目を瞑っては、あの兵隊は銃の台尻で翻訳者が目を開けるまで殴られ続けることになる。 文学を翻訳するとは、ただ原作のページに載った内容を受動的に受け容れるのではなく、作家が詰め込んだすべてのディテールを、つまり、すべての視覚心像、音、匂い、感触、味を、翻訳者が積極的に想像して、それらを自分の国の言語でなるべく正確に表す言葉を探すのである。
2019.09.17
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今回借りた4冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「手当り次第」でしょうか♪<市立図書館>・晴れたり曇ったり・村上春樹と私・妖しい関係・絶対製造工場<大学図書館>(今回はパス)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)************************************************************【晴れたり曇ったり】川上弘美著、講談社、2013年刊<商品説明>より「もういない、でもまだいる」 この前、好きだったひとを、みかけた。まちがいない。会いたいと思いながら会えなかった人に、ようやく会えた。そう思ったとたんに、その人がもうなくなっていることを思いだした。「ぬか床のごきげん」 ぬか床には四種類の期限がある。笑うぬか床、慇懃なぬか床、怒るぬか床、そして淋しがるぬか床。「真夜中の海で」 大学では生物を勉強した。私の卒業研究は、「ウニの精子のしっぽの運動性」だった。「晴れたり曇ったり」 大学時代、バスの窓越しに見かけた喫茶店「晴れたり曇ったり」。一度訪ねてみたいと思いつつ、いくことはなかった。<読む前の大使寸評>帰って調べてみると、この本を借りるのは3度目であることがわかりました(またか)・・・で、(その6、7)としました。rakuten晴れたり曇ったり【村上春樹と私】ジェイ・ルービン著、東洋経済新報社、2016年刊<商品の説明>より『1Q84』『ノルウェイの森』をはじめ、夏目漱石『三四郎』や芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を紹介した世界的翻訳家が綴る、春樹さんのこと、愛する日本のこと。<読む前の大使寸評>著者のジェイ・ルービンは『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』などを翻訳していて、世界的に知られているそうですrakuten村上春樹と私【妖しい関係】阿刀田高著、幻冬舎、2012年刊<商品の説明>より突然逝った、美しく年若き妻。未亡人となっていた、かつての恋人。生まれ変わりを誓い死んだ、年上の女性。男と女の関係は、妖しく不思議で、時に切ない。短篇小説の滋味を味わいつくす、珠玉の13篇。<読む前の大使寸評>阿刀田さんといえば、ロアルド・ダールの短篇「女主人」を紹介してくれた作家であり、とにかく阿刀田さんの短篇小説が気になるのです。rakuten妖しい関係【絶対製造工場】カレル・チャペック著、平凡社、2010年刊<商品の説明>より「絶対=神」を製造する機械が発明され、増殖する「絶対」により世界は大混乱に!『ロボット』『山椒魚戦争』の作者によるSF長編。チェコ語からの初訳、挿絵つき。<読む前の大使寸評>かつて読んだカレル・チャペックの『スペイン旅行記』にはユーモラスな挿絵が載っていて良かったが、この本にもところどころに挿絵が出て来るので、気にいったのです。amazon絶対製造工場************************************************************とまあ・・・・抜き打ちのように、関心の切り口を残しておくことも自分史的には有意義ではないかと思ったわけです。図書館大好き395
2019.09.16
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朝日新聞では1面トップで、また朝日デジタルでもアマゾンの大規模火災を報じています。スクラップに勤しむアナログ老人としては、注目すべきテーマである。(2019.9.15デジタル朝日からコピペしました) 9日午後、南米ブラジルの北部パラ州。世界最大の熱帯雨林アマゾンの東部に位置する人口約10万人のアルタミラから、先住民保護区のバカジャへ車で向かう途中、木々の向こうから白い煙が見えた。 煙が上がる場所に着くと、木々や下草が焼け落ち、くすぶる倒木や切り株から焦げた臭いが漂う。森の中に直径50メートルほどの「黒い穴」が開いたようだった。近くにも同じような「黒い穴」があった。 地元住民によると、焼け跡を農地や牧場にする目的で、何者かが違法に伐採して火を放ったのだ。アマゾンには私有地と国有地が混在しているが、占有を続けて「自分の土地」と主張する人が後を絶たない。 アマゾンは南米9ヵ国に広がる。広さは約550万平方キロ。ブラジルにはその約60%がある。例年7月~10月上旬は乾期で森林火災が多いが、今年は大規模な森林火災が頻発し、現在も続く。ブラジル国立宇宙研究所によると、1~8月の焼失面積は、ブラジル国内だけで4万3千平方キロ以上に及ぶ。九州より広く、昨年1年分を超えた。 その要因に挙げられるのが、今年1月に就任したボルソナーロ大統領のアマゾン政策だ。低迷する景気を回復させると訴え、環境保護より開発を優先させた結果、違法伐採や放火の横行につながったと環境保護団体は非難する。特に地球温暖化への影響が心配されており、8月の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)では議長国フランスのマクロン大統領がアマゾン火災を主要議題に取り上げ、総額2千万ドル(約21億円)の緊急支援を決めたが、ボルソナーロ氏は受け取りを拒否した。 内外の非難を受けて、ボルソナーロ氏は8月下旬、60日間の野焼き禁止令を出した。だが、野焼きで畑作を続けてきた人々は複雑な思いだ。バカジャに隣接する小村イタタでカカオ畑を持つジョアキン・シウバさん(54)は、「野焼きをしないと、私たちは生きていけない」と憤る。 イタタは金を採掘するために来た人々が居着いてできたが、20年ほど前から金が採れなくなった。今では住民の多くは熱帯雨林を野焼きで畑に変え、農業を営む。シウバさんもその一人だ。「都会に出ても仕事はないが、ここには自分の畑があり、生きていける」 アルタミラを拠点とする環境保護NGO「シングー・ビボ・パラ・センプリ(シングー川は永遠に生きる)」によると、アマゾン破壊の仕組みはこうだ。1.開発業者が貧しい人々を木こりに雇い、木材として輸出できる木を違法伐採して販売 2.輸出できない木も伐採して地元で安く販売 3.木がなくなると、放火する人が現れ、跡地を牧場や農地にする。同NGOメンバーのアナライジ・バルボザさん(50)は「この仕組みを変えない限り、違法伐採や森林火災はなくならない」と訴える。 匿名で取材に応じた環境保護担当のブラジル政府職員によると、政府は広大なアマゾンを監視するため、衛星を使っている。だが近年、監視の目をすり抜ける手法が広がっている。大木の陰に隠れる低木から切り倒し、整地を済ませてから大木を伐採する方法だ。衛星では判別しづらく、見つけた時は手遅れという。 バカジャでは複数の先住民の部族が暮らす。先住民の一つ、シクリン族のベベレ・シクリンさん(33)は、アルタミラの約600キロ南にある集落のリーダーだ。2年ほど前、政府のヘリコプターでバカジャ上空を飛ぶ機会があった。眼下に広がる眺望に驚愕した。バカジャを取り囲むように熱帯雨林がなくなり、黄土色の大地がむき出しになっていた。 「狩猟採集の場である森が、侵略者に殺されている。バカジャを守るために侵略者と戦うしかない」(アルタミラ=岡田玄)■二酸化炭素、車3060万台の1年分 大規模な森林火災は地球温暖化を加速させる要因になる。熱帯雨林の減少を研究しているウッズホール・リサーチ・センター(米国)の推計では、ブラジルのアマゾン火災で今年1~8月、1億400万~1億4100万トンの二酸化炭素(CO2)が排出された。自動車2260万~3060万台が1年間に出す量に相当するとしている。 日本の温室効果ガス総排出量の1カ月分前後(CO2換算)にあたる。 植物は光合成で空気中のCO2を吸収し、炭素(C)を幹や枝にため、酸素を出す。同時に呼吸してCO2も出すが、アマゾンのように育ちきった森林だとCO2の吸収と排出がほぼ釣り合っている。「アマゾンの森林は炭素を貯蔵する機能が大きい。火災により、数百年かけて森林が貯蔵した炭素が(CO2などで)一気に放出されてしまう」。国立環境研究所地球環境研究センターの伊藤昭彦室長は語る。 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、世界のCO2排出量の1割余りは、森林減少によるものだと指摘する。 森林火災は落雷などでも起こるが、アマゾンをはじめ世界の熱帯雨林で、牧場や農園開発の野焼きによる森林火災が多発している。激しく燃えると土壌も窒素や栄養塩が失われ、やせた土地になりやすいという。「人による伐採や火災が増えると、森林の回復力を超えてしまう。伐採や火災の間隔が短くなると、健全に成熟した森林に戻らない」(神田明美)アマゾンの先住民については孤立部族(ナショナルジオグラフィック2018年10月号)3にアマゾンの孤立部族が載っています。スクラップとWebデータのダブル保管となり、いっこうにペーパーレスにならないのでおます。(気候の危機)アマゾンが二酸化炭素の荒野に 温暖化拍車2019.9.15
2019.09.16
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『カラスの早起き、スズメの寝坊』という新書を借りて読んでいるのだが…鳥に関する本をわりと読んできたので、並べてみます。・ナショナルジオグラフィック2018年シリーズ(2018年刊)・鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。(2017年刊)・にっぽんスズメしぐさ(2017年刊)・鳥の話(2017年刊)・ハトはなぜ首を振って歩くのか(2015年刊)・鳥あそび(2011年刊)・里山の野鳥ハンドブック(2011年刊)・ソロモンの指環(2006年刊)・野山の鳥 観察ガイド(2004年刊)・カラスの早起き、スズメの寝坊(2002年刊)・鳥のいる空(2001年刊)・バードウォッチング(1987年刊)R6:『ソロモンの指環』を追記【ナショナルジオグラフィック2018年シリーズ】2018年のナショナルジオグラフィックは「鳥たちの地球」シリーズを特集したので、1月号から2、4、5、6、7月号と集中的に読んできたのです。魅惑的な写真を並べてみます。【鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。】川上和人著、新潮社、2017年刊<「BOOK」データベース>より出張先は火山にジャングル、決死の上陸を敢行する無人島だ!知られざる理系蛮族の抱腹絶倒、命がけの日々!すべての生き物好きに捧げる。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、内容は興味深いのに、著者の軽口が鼻につくのです。でもまあ、それも個性ということで借りたのです。rakuten鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。メグロ『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』1:メグロ『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』2:糞尿譚【にっぽんスズメしぐさ】中野さとる著、カンゼン、2017年刊<「BOOK」データベース>より一羽で、仲間たちとースズメたちの毎日を凝縮!スズメたちの愛らしい姿がもっと楽しめる!大好評のスズメ写真集シリーズ第2弾が登場!『きょうのスー』マツダユカさん描きおろし作も収録!<読む前の大使寸評>おお スズメの写真が、可愛いいやんけ♪昨今は駅前広場のハトやスズメを親しく眺めているが・・・典型的な老人風景を呈しています。rakutenにっぽんスズメしぐさ【鳥の話】細川博昭著、SBクリエイティブ、2017年刊<「BOOK」データベース>よりたくさんの人が行きかう街から赤道直下の密林、南極の氷原まで、さまざまな場所に鳥はいます。上空1万メートルを軽々と渡る鳥もいれば、体に毒をたくわえる鳥もいます。一方で、「概念」を理解して人間と話す鳥、最大4000ヵ所の位置を記憶する鳥、凝った構造物をつくる鳥も。そんなすごい鳥の秘密としくみ、身近にいる鳥の意外な事実をつめこんだのが本書です。美しく楽しげで、少し怖い、鳥の世界をご案内。<読む前の大使寸評>このところ『にっぽんスズメしぐさ』や『鳥のいる空』など、鳥の本をよく読んでいるので、この本もその勢いで借りたのです。rakuten鳥の話【ハトはなぜ首を振って歩くのか】藤田祐樹著、岩波書店、2015年刊<「BOOK」データベース>より気がつけばハトはいつでもどこでも、首を振って歩いている。あの動きは何なのか。なぜ、1歩に1回なのか。なぜ、ハトは振るのにカモは振らないのか…?冗談のようで奥が深い首振りの謎に徹底的に迫る、世界初の首振り本。おなじみの鳥たちのほか、同じ二足歩行の恐竜やヒトまで登場。生きものたちの動きの妙を、心ゆくまで味わう。【目次】1 動くことは生きること(動くとは、どういうことか/死なないために動く ほか)/2 ヒトが歩く、鳥が歩く(鳥とヒトの二足歩行/歩くことと走ること ほか)/3 ハトはなぜ首を振るのか?(首振りに心奪われた人々/頭を静止させる鳥たち ほか)/4 カモはなぜ首を振らないのか?(体のつくりがちがう?/まわりが見えてないカモ? ほか)/5 首を振らずにどこを振る(ホッピング時に首は振るの?/首を振らないチドリの採食 ほか)<読む前の大使寸評>三浦しをんの選ぶ本は、だいたい外れがないので・・・・この本が気になるのです。<図書館予約:(8/13予約、1/19受取)>rakutenハトはなぜ首を振って歩くのか【鳥あそび】小宮輝之著、二見書房、2011年刊<「BOOK」データベース>よりこんな野鳥の楽しみ方を知ってますか?上野動物園の園長さんは鳥あそび歴50年の“鳥名人”。庭に鳥を呼ぶ方法から街中や里山での観察術まで、自ら撮った写真を織りまぜて綴る野鳥おもしろ体験記。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten鳥あそび【里山の野鳥ハンドブック】NHK出版編、日本放送出版協会、2011年刊<商品説明>より里山で見られる野鳥を、春夏秋冬別と主な生育場所別で、美しい写真とともに数多く紹介。姿・形が可愛らしい鳥、鳴き声の美しい鳥のほか、天然記念物の鳥、帰化種の鳥、野鳥にまつわる興味深い話を野鳥の基本的データと共に収載。<大使寸評>野鳥のウォッチングでも始めてみるかということで、この本を借りたのです。shogakukan里山の野鳥ハンドブック【ソロモンの指環】コンラート・ローレンツ著、早川書房、2006年刊<「BOOK」データベース>より孵卵器のなかでハイイロガンのヒナが孵った。小さな綿毛のかたまりのような彼女は大きな黒い目で、見守る私を見つめ返した。私がちょっと動いて話しかけたとたん、ガンのヒナも私にあいさつした。こうして彼女の最初のあいさつを「解発」してしまったばかりに、私はこのヒナに母親として認知され、彼女を育てあげるという途方もない義務を背負わされたのだが、それはなんと素晴らしく、愉しい義務だったことか…「刷り込み」理論を提唱し、動物行動学をうちたてた功績でノーベル賞を受賞したローレンツ博士が、溢れんばかりの喜びと共感をもって、研究・観察の対象にして愛すべき友である動物たちの生態を描く、永遠の名作。<読む前の大使寸評>「BOOK」データベースがこの本を「永遠の名作」と讃えているが・・・さて、如何なるものか♪<図書館予約:(9/03予約、9/08受取)>rakutenソロモンの指環『ソロモンの指環』3:ハイイロガンとの生活『ソロモンの指環』2:マルティナの世話『ソロモンの指環』1:ガン類の刷り込み【野山の鳥 観察ガイド】市田則孝(監修)、ネイチャーネットワーク、2004年刊<「BOOK」データベース>より本書は、野鳥との出会いを紹介した本。登山やハイキングの途中で野鳥の姿や鳴き声に出会ったときの、「なんという鳥だろう?」という素朴な疑問に基づいて解説した。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、二階の窓からよく見かけるシジュウカラ、メジロ、ウグイスが載っています。駅前でハトとスズメの仕草を眺めることが多くなったこともあり…バードウォッチングに最適というか、老人向けの1冊でおます♪amazon野山の鳥 観察ガイド【カラスの早起き、スズメの寝坊】柴田敏隆著、新潮社、2002年刊<「BOOK」データベース>よりモズ、カラス、スズメ、フクロウ、ウ、オオタカ、ヤマシギ、オオミズナギドリ…さまざまな環境に適応して高度に進化した鳥たちは、苛酷な状況を生き抜くためにみごとな知恵を発揮する。感情表現豊かなその生態は、知れば知るほど、人の姿を連想させる。文化人類学ならぬ、「文化鳥類学」の視点から、鳥たちの社会を、いきいきと描くネイチャー・エッセイ。<読む前の大使寸評>追って記入rakutenカラスの早起き、スズメの寝坊【鳥のいる空】沢野ひとし著、集英社、2001年刊<「BOOK」データベース>より多摩丘陵の一角に住み着いて20数年結婚して25年が過ぎたが、ともかく別れないで今日まできたのが、夫婦というものなのだろうか。ワニ眼画伯が休日に、妻と散歩に出かけたとき、ふと心をよぎる、いくつもの感慨…。山あり、川あり、街角あり、妻あり、息子娘のことあり。旅の思い出あり、天然ユーモアのエッセイ集。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると、博物誌のように野鳥や草花の名前がでてくるわけで・・・ええでぇ♪rakuten鳥のいる空【バードウォッチング】(画像なし)酒井哲雄著、国土社、1987年刊<「BOOK」データベース>より古書につきデータなし<読む前の大使寸評>我が家の2階から裏山の小鳥たちを眺める程度のバードウォッチャーであるが・・・この本は、私の程度にちょうどの本やでぇ♪このところ、ウグイスの競演が途絶えたが、代わりにセンダイムシクイの「焼酎一杯、グイーッ!」が聴こえたりする。
2019.09.16
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まもなくMGCマラソンが始まるが、気分すっきり一発勝負との感があるわけです♪ぽっと出の選手はダメだマラソン代表一発勝負MGCは、どん底から始まったより どん底から始まった。16年リオデジャネイロ五輪で男子は佐々木の16位、女子は福士の14位が最高。かつての強豪国の面影はなく、男子は6大会、女子は3大会連続でメダルに手が届いていない。惨状を脱すべく生まれた代表選考が、MGCだった。 16年12月3日 福岡国際マラソン前日。日本陸連強化プロジェクト第1回の会議があった。選考の指針などを話し合う場でリーダーの瀬古利彦は言った。「ぽっと出の選手はダメだ」。たまたま選考会だけ走った者でなく、五輪までに最低でも2度のマラソン好成績を求めた。 当時、一発選考案はなかった。既存の複数選考会の「マイナーチェンジ」が既定路線。選考会が複数あれば露出は増える。収入面からみても崩せない“聖域”で、強化の現場からは手を出せない空気があった。だが、世界での不調が響き、マラソンを取り巻く市場の価値が落ち込んでいたのも事実だった。 16年12月18日 日本陸連の強化スタッフの結婚披露宴が行われていた。事業担当者と前強化委員長の伊東浩司に呼ばれたマラソン・長距離を統括するディレクターの河野匡は「今までのやり方とは違うやり方を考えてもいいみたいです」と伝えられた。 伊東の妻は96年アトランタ五輪の選考会で、日本人最速の記録を出しながら落選した鈴木博美。もし同じようなことが東京を前に起きたら、影響は計り知れないとの危惧(きぐ)もあった。この時、不可能と思われていた“一発勝負”のプランが動きだす。(中略) 92年バルセロナ五輪で女子最後の1枠を巡る選考は社会的な議論を巻き起こした。大阪国際2時間27分2秒で2位の松野明美、前年の世界選手権に2時間31分8秒で4位の有森裕子が争う図式。代表発表前、松野は「私を選んで下さい」と異例のアピール会見までした。しかし、選出されたのは、タイムは劣ったものの、実績が評価された有森で、五輪本番では銀メダルだった。
2019.09.15
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朝日新聞の記事をスクラップしているのだが・・・(シンギュラリティーにっぽん)シリーズについても、デジタル記事も残しておこうと思ったのです。スクラップとWebデータとで重複保管になるのだが、ま~いいか。・・・この(シンギュラリティーにっぽん)記事が伝える自律型致死兵器システムや中国のデジタル国家主義(世論を誘導する「厨房」)も恐ろしいのである。朝日新聞のインタビューに応じたユヴァル・ノア・ハラリ氏が描き出した未来は現実に忍び寄る。人工知能(AI)やバイオテクノロジーの進化は、ビッグデータによる支配や格差の拡大を招きかねない。驚異的に進む技術革新にどう向き合えばいいのか。中央厨房 《「19世紀には多くの国が、産業革命で蒸気船や鉄道を手にした英国やフランスの植民地になった。それが今はAIで起こっている。20年待つと、多くが米国か中国の植民地になる」》 人類に恩恵をもたらすはずが逆に脅威になる技術。その一つにハラリ氏は「AI兵器」の存在を挙げる。 「カミカゼ(自爆)ドローン」。そんな別名を持つ全長約1メートルの無人機が加速しながら垂直に降下し、標的に着地して爆発した。 今年6月、モスクワ近郊であった見本市で、ロシアの軍需メーカー、カラシニコフグループは新兵器の画像を披露した。ウラジーミル・ドミトリエフ社長は「監視や輸送に使ってきたシステムを初めて打撃に応用した。戦争のあり方を変える」と説明する。 自ら動き画像などの情報を収集し、AIが敵味方を判断して攻撃を決定するドローンや戦闘車両――。「自律型致死兵器システム」(LAWS)と呼ばれるロボット兵器は米中やロシア、イスラエル、韓国が研究しているとされる。 8月にジュネーブで開かれたAI兵器についての国連の専門家会合は、規制に関する初めての指針を採択した。ただ、条約など法的拘束力のある規制に踏み込むのは簡単ではない。 ハラリ氏がAIとともに「今後20~40年の間に経済、政治のしくみ、私たちの生活を完全に変えてしまう」と警告するのがバイオ技術だ。 今年5月、遺伝子治療技術を使った白血病向けなどの製剤「キムリア」の薬価が過去最高の約3349万円に決まり話題を集めた。バイオ関連の技術革新はめざましいが、すべての人が最新治療の恩恵にあずかれるとは限らない。 ベストセラーになった著書「ホモ・デウス」で、ハラリ氏は予想している。「2070年、貧しい人々は今日よりもはるかに優れた医療を受けられるだろうが、彼らと豊かな人々との隔たりはずっと広がる」 狙った遺伝子を効率良く編集できる「ゲノム編集」の技術「クリスパー・キャス9」が12年に登場し、遺伝子治療や創薬などへの応用が加速した。しかし中国の研究者が昨秋、人間の受精卵にこの技術を使い、エイズウイルスに感染しにくい体質にした双子の女児を誕生させたと発表。安全性が十分に確保されていない技術を人で試したことに批判が集まった。 神戸大の近藤昭彦教授は「高額の薬価を引き下げて多くの人が使えるようにし、バイオも倫理面の研究に力を入れないといけない」と指摘する。(モスクワ=渡辺淳基)■「銀行員は絶滅危惧種」 《「AIとロボットが人々にとって代わり、雇用市場を変える。学校は子どもたちに何を教えるべきかもわからない」》 著書で、社会の変化についていけず職に就けない「無用者階級」が生まれる未来を予見したハラリ氏の世界には、日本の経営者も関心を持つ。その一人、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長は「AIが人の知能を超えるシンギュラリティーが来れば無用者層とも呼ぶべき人たちが出てくる。現代人が日常で感じる将来への不安を深くえぐり出した」と語る。 AIやビッグデータといったテクノロジーについていけなければ、金融業は生き残れない。社長時代の17年秋、10年間で約8万人の人員のうち、約1・9万人を削減する構造改革を佐藤会長が打ち出したのも、そうした危機感からだった。 「銀行のビジネスモデルそのものがチャレンジを受けている」と佐藤会長は話す。その一つにフェイスブックが計画する暗号資産(仮想通貨)のリブラを挙げ、「通貨の供給量を調節する中央銀行が機能しなくなるかもしれない」と警戒する。 ハラリ氏は、旅行業者と並んで、銀行員を「絶滅危惧種」と呼んでいる。巨大企業の場合、AIの普及で効率化が進むと、人員の余剰感を招きかねない。 「人が余れば、フロントに出てお客様に対応する仕事や企画部門といった、人間でしかできないサービスを担えるように再教育することが大切になる」と佐藤会長は考える。 ただ、AIがどこまで進化するかは読み切れない。ハラリ氏はこうも語る。 「AIは進化を続ける。人々は一度だけでなく、何度も自己改革を迫られる。このストレスは耐えがたいだろう」(編集委員・堀篭俊材)■世論を誘導する「厨房」 《「情報を集約して持つことで、計画経済や専制的な政府は、民主主義よりも技術的な優位性を持つ可能性がある。民主主義と自由市場が常によりよく機能する法則があるなどとは考えるべきではない」》 ハラリ氏は、一国の体制を技術が左右する時代が来たと告げる。その一端がすでに見られる場所がある。 北京市内にある中国共産党の機関紙「人民日報」本社ビルの10階にある「中央厨房(セントラルキッチン)」だ。 湾曲した壁一面に広がるモニター画面の中央に、中国全土の地図が青く映し出される。その上に光る大小の黄色の丸。「それぞれの記事がどの地域でどれだけ読まれているかが表示されています」。案内役の女性が説明する。各部が取材結果を持ち込み、次の取材計画を練るという。 だが、「厨房」の本当の機能は別にある。世論の流れを読み、「動かす」のだ。画面には読者の性別、年齢層、地域などとともに、読者の書き込みから「記事を読んだ人の感情が肯定的か否定的か」も表示されている。 「分析してどうする?」。尋ねると、案内役は当たり前のように答えた。「世論が極端に傾いていないかを見ます。反応を見ながら新たな記事を書き、世論を誘導するのです」 今年3月、新華社通信は習近平国家主席のメディア戦略を報じている。「ニュースの収集、発信、反応などでAIの利用を探求する。アルゴリズムを制御し、世論を導く力を全面的に高めていく」 中央厨房は他の党機関紙のモデルになり、似たようなシステムを、地方の機関紙も取り入れる。 個人データを巨大な利益に変えるグーグルやアマゾンなどの巨大プラットフォーマー「GAFA(ガーファ)」。データで国家を統制する中国のデジタル国家主義。双方が台頭する世界を、私たちはどう進めばいいのか。 ハラリ氏は提案する。 「技術はいい方にも悪い方にも働く。いま国家や企業が市民を監視するために一方的に使っている技術を、市民が国家を監視するためのものとして開発すべきだ」(北京=宮地ゆう) ◇ 一国をもゆさぶる力を持つ巨大IT企業、「第2の石油」と言われるほどの価値になったビッグデータ、無人の自動車や兵器を実現するAI――。第2部では、私たちのくらしを左右し始めた「見えないルーラー(支配者)」を探る。 折りしも、サウジアラビアの石油精製基地をイエメンのドローンが攻撃し、火災が発生中とのことである。(シンギュラリティーにっぽん)AI・バイオ技術の進化、脅威に2019.9.08
2019.09.15
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朝日新聞の記事をスクラップしているのだが・・・台風15号による大規模停電の記事が聞き捨てならないので、デジタル記事も残しておこうと思ったのです。それにしても、温暖化で台風の威力が増しているので、現在の各種設計基準ではおっつかないのだろう(送電線鉄塔の倒壊など)千葉県の惨状は、今後どこにでも再現される可能性があるわけで、怖い。 台風15号による大規模停電は、いつ全面復旧するのか。東京電力の見通しは後ろ倒しになり、被災地からは当初の見通しと実態との差に批判も出ている。広範囲にわたる電線や電柱の損壊に加え、倒木が復旧作業を妨げている面があるが、老朽設備が被害を拡大させた可能性を指摘する声も上がっている。 「いつまでもこんな生活はできない」。被害が深刻な房総半島南部、千葉県南房総市の会社員石井美紅さん(21)は12日、めい2人と市内の入浴施設を訪れ、そう訴えた。 自宅は停電でお湯が出ず、冷水で体を洗う。エアコンも使えず、夜はめいたちを冷房が入った自家用車内で寝かすが、体中にあせもができた。石井さんは「明日からは電気が使えるようになってほしい」と話した。 東京電力パワーグリッドによると、千葉県内では12日午後10時すぎの時点で約26万戸で停電が続き、全面復旧は13日以降としている。同社は10日の段階で、11日中に全面復旧させる見通しを示していたがその後、先延ばしを発表。同社の塩川和幸技監は12日の会見で「設備の損害状況が把握できなかった」と釈明。「台風通過後、どれくらい被害が出るかという見通しも甘かった」と話した。 一方、森田健作・千葉県知事は11日、「早期の停電解消の見通しが示されたが、見通しとかけ離れたことは大変遺憾」と苦言を呈した。熊谷俊人・千葉市長も12日、「楽観的な見通しを発表することは被災者のためにはならない。全ての関係者が準備できるような情報発信、意識を持ってほしい」と話した。菅義偉官房長官は12日の会見で「復旧プロセスについては、しっかり検証すべきだと思っている」と語った。 停電の影響による通信障害も続く。NTT東日本によると、千葉県内は12日午後7時現在、固定電話約3万1千回線、インターネット約1万9千回線が不通という。携帯電話も同様で、NTTドコモでは同日午後4時現在、千葉県内36市町や東京都大島町の一部で電話がつながりにくい状態になっている。(寺沢知海、金山隆之介)■想定外の強風、電柱損傷 老朽設備で被害拡大、指摘も 復旧作業が遅れているのはなぜか。 千葉県では、君津市で送電用の鉄塔2基が倒壊した。電柱や電線といった家庭などに電気を供給するための配電設備も広範囲にわたって損傷した。千葉市中央区で記録した最大瞬間風速は57・5メートル。ほかに5地点で40メートル以上を観測した。電柱や鉄塔は通常、風速40メートルに耐えられるように設計されているため、広い地域でこの値を超えた可能性もある。 東電の説明では、鉄塔の倒壊で断絶された電気の流れは、普段使わないルートを確保して復旧させた。だが、電線や電柱の損傷が想定以上に多かったことに加え、房総半島の山間部は倒木が多く、復旧作業で大型車が現場に近づけず、伐採撤去作業に時間がかかっているという。断続的な雷雨で作業の中断もあった。 ただ、ある大手電力関係者は「山間部だけでなく、都市部でも停電が続いていた。被害の全体像を把握できていなかったのではないか」と指摘する。 一方、老朽設備が被害を大きくした可能性を指摘する声もある。福島第一原発事故の賠償費用などを捻出する必要がある東電は、送配電事業の合理化で利益を確保している。送配電設備への投資額は1991年は約9千億円だったが、昨年は約3千億円まで減った。 東電は、新規を除いた維持費用は1500億円程度で減っておらず、「点検に基づき適切な更新を実施している」という。ただ、電線の地中化が先行する東京都内は今回の台風でも停電が圧倒的に少なかった。 被災地を視察した菅原一秀経済産業相は12日、「今後電柱の強度などを再点検しなければならない」と述べた。(桜井林太郎、金成隆一) 14日午後7時すぎの時点で、千葉県内の停電は13万8千戸とのこと。(時時刻刻)停電 復旧見通し暗転2019.9.13
2019.09.14
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図書館に予約していた『ソロモンの指環』という本を、待つこと5日でゲットしたのです。「BOOK」データベースがこの本を「永遠の名作」と讃えているが・・・さて、如何なるものか♪【ソロモンの指環】コンラート・ローレンツ著、早川書房、2006年刊<「BOOK」データベース>より孵卵器のなかでハイイロガンのヒナが孵った。小さな綿毛のかたまりのような彼女は大きな黒い目で、見守る私を見つめ返した。私がちょっと動いて話しかけたとたん、ガンのヒナも私にあいさつした。こうして彼女の最初のあいさつを「解発」してしまったばかりに、私はこのヒナに母親として認知され、彼女を育てあげるという途方もない義務を背負わされたのだが、それはなんと素晴らしく、愉しい義務だったことか…「刷り込み」理論を提唱し、動物行動学をうちたてた功績でノーベル賞を受賞したローレンツ博士が、溢れんばかりの喜びと共感をもって、研究・観察の対象にして愛すべき友である動物たちの生態を描く、永遠の名作。<読む前の大使寸評>「BOOK」データベースがこの本を「永遠の名作」と讃えているが・・・さて、如何なるものか♪<図書館予約:(9/03予約、9/08受取)>rakutenソロモンの指環ローレンツ博士とガンたち10羽のハイイロガンとの生活について、見てみましょう。p157~159<ガンの子マルティナ> ガンと暮らした最初の夏、私は信じられぬほど多くの時間をこの10羽の子ガンたちとともに費やし、信じられぬほど多くのことを彼らから学んだ。はだかになり野生にかえって、野生のガンたちの群れの社会にとけこみ、ドナウの堤で歩きまわったり泳いだりするのが、私の研究の本質的な部分を占めている。なんと幸福な科学だろう。 私はきわめてものぐさな人間だ。だから私には実験家より観察家がはるかにむいている。ほんとうに私が生来の傾向に反して仕事をするのは、カントの至上命令のようにきびしい強制があるときにかぎる。野生生活の動物たちを相手とするこのような純観察家的な生活と研究のすばらしい点は、動物たち自体もおどろくほどものぐさだということにある。 真の文化をもつひまさえない現代文明人の少々ばかげた忙しさは、動物にはまったく縁がない。勤勉の象徴であるミツバチやアリでさえ、1日の大部分をなにもせずにすごす。ただ人間にはそれが見えないだけだ。この偽善者たっときたら、巣にもどってすわったえあ、もう何一つ仕事はしない。そして動物たちは、けっしてあくせくしない。 ガンを知りたければ、彼らといっしょに生活をしなければならない。そして彼らと生活をともにしたければ、かれらの生活のテンポに適応しなければならない。生れながらにしてものぐさでない人間には、とうていそんなことはできない。体質的に活発で勤勉な人は、私がやってきたように、一夏じゅうガンたちの中でガンになりきって生活せよといわれたら、きっと気が狂ってしまうだろう。 少なくとも1日の半分は、ガンたちはじっとすわりこんで腹ごなしをしている。残りの半日のうち、少なく見積もっても四分の三を、彼らは餌あさりに費やす。餌あさりと腹ごなしの間にはさまった時間に、観察すべき活動がみられるのだが、この時間たるやぜんぶあわせても、ガンが目を覚ましている日中の時間のせいぜい八分の一に達するかどうかである。もし1日のこの八分の一の間にすることがそれほど興味あるものでなかったら、ガンなどはおよそ退屈千万な畜生だということになろう。 ガンの群れをつれてドナウの河岸を歩きまわってみたまえ。まったく良心の呵責なしに、なまけていることができる。なぜなら1日の八分の七を、ひなたにねそべってすごせるからだ。フィルムを入れ、セットして、すぐシャッターのきれるカメラさえぶらさげていればよい。しかも鳥たちの動きにたえず気をくばっている必用もない。訓練した耳さえもっていれば、鳥たちがそろそろ起きだすか餌あさりをやめるかして、もっとおもしろいもののほうへ移ろうとするときには、彼らの気分表現の鳴き声ですぐそれとわかるからである。 もちろんガンがまだ小さく、しかもその人にしっかりなっている場合には、ただ呼び声だけでガンを向こうへ追いやったり、自分についてこさせたりできる。また、ハイイロガンの表現声を知っていて、かついくぶんでもそれをまねることができるならば、もはやそう無条件には人にくっついてこないおとなのガンの群れにたいしても、ある場所からたちのかせたり、飛び立たせたり、そのほかいろいろなことをさせることができる。 けれどもそのような指示を与えるときは、十分に注意深く、かつほどほどにやらなくてはならない。つまりヒナをつれた親ガンがする以上に、そのような指示を与えてはならない。小さなガンのヒナたちは、十分な休息を与えないと、肉体的にも心理的にも、すぐ疲れ果ててしまうのである。『ソロモンの指環』2:マルティナの世話『ソロモンの指環』1:ガン類の刷り込み
2019.09.14
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図書館にで『銃・病原菌・鉄(上)』という本を、手にしたのです。おお 『銃・病原菌・鉄(下)』を読んで以来、ほぼ6年すぎて、やっと上巻にお目にかかったわけである。それにしても、2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位というのが、すごいではないか♪【銃・病原菌・鉄(上)】ジャレド ダイアモンド著、草思社、2000年刊<商品の説明>よりなぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか。分子生物学から言語学に至るまでの最新の知見を編み上げて人類史の壮大な謎に挑む。ピュリッツァー賞受賞作。朝日新聞〝ゼロ年代の50冊〟2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位のに選定された名著。<読む前の大使寸評>おお 『銃・病原菌・鉄(下)』を読んで以来、ほぼ1年すぎて、やっと上巻にお目にかかったわけである。それにしても、2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位というのが、すごいではないか♪amazon銃・病原菌・鉄(上)食料生産への移行をうながした最後の要因について、見てみましょう。p162~163<食料生産への移行をうながしたもの> さて、食料生産への移行をうながした最後の要因は、狩猟採集民と食料生産者が接触する地域で、もっとも決定的な役割を果たしたものである。食料生産者は狩猟採集民より数のうえで圧倒的に多かったため、それを武器に狩猟採集民を追い払ったり殺すことができた。ちなみに、土着の狩猟採集民が食料生産の方法をよそから習得して農耕民になった地域では、農耕民にならずにいた人たちが出生数で農耕民に圧倒されている。 この結果、食料生産に適した地域ではほとんどの場合、土着の狩猟採集民は、近隣地域の食料生産者によって追いだされてしまうか、食料を生産する生活に移行することによって生き延びるかのいずれかの運命をたどっている。農耕民として生き延びることができた狩猟採集民は、すでに充分な人口を擁していた集団か、地理的な理由で近隣の食料生産者が簡単に移住してこれず、時間的猶予を与えられた地域の集団である。 この時間的猶予によって彼らは、先史時代に農耕を身につけ、農耕民として生き延びることができた。これが起こったであろう地域としては、アメリカ合衆国南西部、地中海地方西部、ヨーロッパの大西洋沿岸、日本列島の一部などが考えられる。しかし、インドネシア、アジア南東部の熱帯地域、アフリカ赤道地帯の大部分、そしておそらくヨーロッパの一部では、先史時代の狩猟採集民は食料生産者にとってかわられてしまった。同じことは、オーストラリアやアメリカ合衆国西部で近代に起こっている。 食料生産に適したところでありながら、狩猟採集民が近代にいたるまで生き延びることができた地域は、地理的な理由で食料生産者の移住が困難なであったり、食料を生産するための技術の普及がむずかしかった地域である。とくによく知られているのは、アリゾナで農耕を営んでいたアメリカ先住民と砂漠で隔絶されていたアリフォルニアの狩猟採集民、近隣のバンツー族が栽培していた熱帯性農作物の育成に不適であった地中海性気候の南アフリカのケープ地方に居住していたコイ族の狩猟採集民、狭い海峡越しにインドネシアやニューギニアの食料生産者から隔てられていたオーストラリアの狩猟採集民である。 ちなみに、砂漠地帯や北極地帯などの狩猟採集民が少数ではありながら20世紀にいたるまで狩猟採生活をつづけてこれたのは、食料生産に不適な地域に離れて暮らしていたので、食料生産者による入れ替わりを免れたからである。しかし、彼らにしても、ここ10年のうちに、都市文明の誘惑に負けてしまう可能性がある。政府の政策や宣教師の指導によって定住生活をはじめてしまうか、各種疫病の犠牲となってしまうかもしれない。オーストラリアの狩猟採集民・アボリジニを見てみましょう。オーストラリア先住民族・アボリジニの伝統文化を体験しようより アボリジニの人々は、少なくとも4万年以上前には、すでにオーストラリアの大地で生活していたと考えられています。かつては狩猟や採集をしながら、洞窟で暮らし、一定の範囲内を移動する生活を送っていました。アボリジニは文字を持たないため、昔の記録がないのですが、そのかわり、舞踊や歌、民話などが伝承されており、人々の暮らしの様子を伝えてくれます。 17世紀、オランダ人がオーストラリア大陸を最初に発見した頃、アボリジニは700以上の部族に分かれて暮らしていたと言われています。しかしその後、オーストラリアがイギリス領になると、アボリジニへの厳しい迫害が始まります。アボリジニが居住していたニューサウスウェールズ州は、英国政府によって、囚人流刑のための植民地となり、アボリジニたちは、自然環境が過酷な内陸部へと追いやられていきます。また白人移民を中心とする国作りを目指す「白豪主義」が台頭すると、アボリジニは搾取や虐待の対象となり、その人口は次第に滅ってしまいます。 幸い、戦後になると、オーストラリアは白豪主義を改め、世界各地からやってくる人々がもたらす多様な文化の共存に、価値を見出すようになりました。こうして1967年、アボリジニは正式にオーストラリア国民となりました。政府は過去の過ちを反省し、アボリジニ省を設立。今では、先住民族の権利や文化を尊重する国へと変貌し、世界からもその取り組みが注目されています。『銃・病原菌・鉄(上)』2:農耕を始めた人と始めなかった人p156~160『銃・病原菌・鉄(上)』1:農耕民の登場p149~152
2019.09.14
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図書館にで『銃・病原菌・鉄(上)』という本を、手にしたのです。おお 『銃・病原菌・鉄(下)』を読んで以来、ほぼ6年すぎて、やっと上巻にお目にかかったわけである。それにしても、2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位というのが、すごいではないか♪【銃・病原菌・鉄(上)】ジャレド ダイアモンド著、草思社、2000年刊<商品の説明>よりなぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか。分子生物学から言語学に至るまでの最新の知見を編み上げて人類史の壮大な謎に挑む。ピュリッツァー賞受賞作。朝日新聞〝ゼロ年代の50冊〟2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位のに選定された名著。<読む前の大使寸評>おお 『銃・病原菌・鉄(下)』を読んで以来、ほぼ1年すぎて、やっと上巻にお目にかかったわけである。それにしても、2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位というのが、すごいではないか♪amazon銃・病原菌・鉄(上)「第6章」で農耕を始めた人と始めなかった人について、見てみましょう。p156~160<農耕を始めた人と始めなかった人> すでに指摘したように、最初に農耕をはじめた人は、誰かが農耕をしているのを見て農耕民になったわけではない。しかし、いったん食料を生産する地域が大陸に登場してからは、その近隣の狩猟採集民は、農耕民が食料を収穫するのを見たうえで自分たちも農耕民になることを意識的に決定することができた。その結果、近隣の地域でおこなわれていた食料生産のやり方を、そっくりそのまま摸倣して狩猟採集民から農耕民になった人びともいるし、それを部分的に取り入れた人びともいる。 その一方で、食料生産をまったくはじめることなく、狩猟採集民のままでいることを選択した人たちもいる。 たとえば、南東ヨーロッパでは、紀元前6000年頃に一部の狩猟採集民のあいだに南西アジアから穀類やマメ類の栽培や家畜の飼育が伝わり、南西アジアの農耕とまったく同じ方法が採用されて食料生産がはじまっている。穀類やマメ類の栽培や家畜の飼育は、紀元前5000年までの数世紀を通じて、ヨーロッパ中央部全体にも急速に広がっていった。ヨーロッパ中央部と南東部に居住していた狩猟採集民のあいだに食料生産が広がっていったのは、食料生産を実践する生活と競合できるほど、この地における狩猟採集生活の生産性が高くなかったからである。 ところが、南フランス、スペイン、イタリアなどの南西ヨーロッパでは、羊が伝えられてから穀物が伝えられたということもあって、食料を生産する生活様式はゆっくりと時間をかけて徐々に広まっていった。日本もまた、集約的食料生産をアジア大陸からゆっくりと時間をかけて少しずつ取り入れているが、それはおそらく、海産物や土着の植物が豊富であったため、狩猟採集生活の生産性が非常に高かったからであろう。 狩猟採集民が時間をかけて徐々に食料生産の生活様式へと移行していったように、食料生産のやり方も、あるものから別のものへと徐々に移行することがある。たとえばアメリカ合衆国東部のインディアンは、紀元前2500年頃に土着の野生種を栽培化していたが、トウモロコシ、カボチャ、マメ類を昆作あるいは輪作する生産性の高い農法を実践していたメキシコの作物を取り入れ、現地の作物の作付けを少しずつ減らしていった。 独自に栽培化したカボチャを育てていた彼らが、西暦200年頃にメキシコから伝わったトウモロコシを主要作物として育てるようになるのは西暦900年以降である。その100年ないし200年後にはマメ類が伝わっている。(中略)<食料生産への移行をうながしたもの> これまでの考察から明らかなように、農耕をはじめた人たちは、食物を得る方法がほかになかったために突然はじめたわけではない。狩猟採集生活と食料生産生活は、二者択一的に選ばれたわけではなく、食料獲得戦略のひとつとして、いくつかの生活様式のなかから選ばれたのである。食料採集と食料生産が併存する生活は、食料採集だけの生活や食料生産だけの生活と優劣を競い合う関係にあった。 しかし、狩猟の採集と生産が併存する生活様式のなかにもさまざまな様式があり、生産性の面で互いに競合していた。とはいえ、この1万年間に見られる大きな傾向は、狩猟採集生活から食料生産生活への移行である。したがって、つぎに問うべきは、狩猟採集生活から食料生産生活へと移行させた要因は何であったか、ということである。 この問題は、これまで考古学者や人類学者のあいだでいろいろ議論されてきているが、いまだ結論は出ていない。その理由のひとつは、人びとを狩猟採集生活から食料生産生活へと移行させた要因が世界的に同一ではなく、土地によって問題となる要因が異なるからだと思われる。もうひとつの理由は、何が原因で何が結果であったのかの切り分けがむずかしいということである。 しかいながらこの問題は、おもに五つの要因の相対的な重要性をめぐって議論されており、それらの要因がどういうものであったかは同定することができる。 その一つの要因は、この1万3000年のあいだに、入手可能な自然資源が徐々に減少し、狩猟採集生活に必要な動植物の確保がしだいにむずかしくなったということである。(中略) 食料生産への移行をうながした第二の要因は、獲物となる野生動物がいなくなり、狩猟採集がむずかしくなったまさにその時期に、栽培化可能な野生種が増えたことで作物の栽培がより見返りのあるものになったことである。たとえば、更新世の終わりに気候が変化したため、肥沃三日月地帯では、短時間で大きな収穫が得られる野生の穀類の自生範囲が大幅に拡大した。肥沃三日月地帯では、まずこれらの野生種が収穫され、その収穫物にまじっていた種子が徐々に栽培化される過程を経て、大麦や小麦が農作物として栽培されるようになったのである。ところで、今、NHKではジャレド ダイアモンド博士のシリーズもの『ダイアモンド博士の“ヒトの知恵”』を放映中なので不肖太子も鋭意フォローしております♪『銃・病原菌・鉄(上)』1:農耕民の登場p149~152
2019.09.13
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