デフレの正体 0
原発 0
体罰 0
糖質制限食 0
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超マクロ展望世界経済の真実私:日本はバブル崩壊後、4回の不況を経験し、そのたびに財政出動をしたが、景気は回復しなかった。 そして結果として巨額の財政赤字を抱えるようになった。 法人税を大幅減税すれば、それによって企業業績は好転すると考えたが、実際には増収ではねかえってこない。A氏:法人税減税でiPadは期待できないからね。私:低成長時代になっているのに、まだ、経済成長を前提とした政策を続けて失敗の連続。 それなのに、まだ、経済成長の幻想を捨てきれない。 年金も基礎計算は経済成長を前提としているし、少子化の見通しも甘い。 経済学もベースに経済は成長するものだという暗黙の前提がいまだにある。A氏:ギリシャの財政危機も、経済成長やインフレによって将来は解決されるだろうことで椀飯振舞をして、終に国家財政は破綻し、国民には厳しい緊縮財政政策となる。私:ところで、なぜ、市場に矛盾が生じたかというと、低成長の現実を金融経済化によって、ごまかそうとしたからだね。 しかし、金融バブル崩壊で、その矛盾はさらに危険な状態で露呈した。 世界の金融経済は余剰マネーで100兆ドル。 実物経済では60兆ドル。 これに金融緩和で紙幣を増やしても、投機によって資産価格の上昇をもたらすだけで物価はあがらない。A氏:リフレ論者の期待に反して、日本では10年以上、ゼロ金利、金融緩和しているが、インフレにならない。私:インフレが期待できるのは、耐久消費財が普及していく過程だが、現在は普及が終り、インフレ時代も終わった。 現在のデフレは一時的な不況のせいで起こっているのでなく、構造的な問題なので、金融政策でデフレを克服すれば、不況も克服できるものではない。 新興国との賃金競争による先進国の賃金低下と、新興国からの安い商品の流入によって、デフレは先進国の構造的な問題だね。A氏:今朝の新聞では、「好況ドイツ賃上げ続く」とあるが、これは一時的な現象かね。 私:ドイツは、今、ギリシャ、アイルランド、スペインなどのEU 諸国の経済危機で頭が痛いだろうね。 ところで、両氏は、円高は円安より好ましいという。 円高のほうが高騰する資源を安く購入できる。 円安になると日本の企業や資産が外国の企業やファンドから買い叩かれてしまう。A氏:今週の日経ビジネスでも「円高は日本の国益・『輸出産業に打撃のウソ』」という特集を組んでいるね。 しかし、今朝の新聞では、「円高で自動車大手利益8000億円消滅」とあるね。 それに反して、円高による資源購入のメリットのニュースはないね。私:日本は経済成長もインフレも期待できない。 だから、財政赤字は簡単に改善できないので大問題だね。A氏:今、イギリスが緊縮財政で授業料の値上げで学生デモが暴徒化しようとしたが、日本でも、これから、歳出カットせざるを得ないだろうね。私:「低成長の現実を直視して、歳入増は期待できないから、歳出を切り詰める方向で財政再建にいそしむ」ことになるから、高齢者の社会保障も危機だね。 もっと明るい経済戦略はないものだろうか。 そこで、この本では競争でなく環境規制そのものが市場をつくり出している例をあげている。 欲望の自由な展開という今までの考えでなく、なんらかの規制によって付加価値をつけた市場を創出することが新しい経済戦略になっていくという。 それから、また、世界の余剰資本をどのように規制するかも必要だね。 今までは、近代社会は膨張の時代だった。 これからは、自由主義でなく規制によって市場を豊かにするという方向になるだろうという。 両氏は、低成長社会の課題に真っ先に直面している日本は、「想像力と知性」を動員して、新しい市場のかたち、経済のかたちを、世界にさきがけてつくりだしていく立場にあるという。A氏:そういう「想像力と知性」を持ったリーダーが日本で育っているのかね。 明治維新のように。 だから坂本龍馬が今ブームになるのかね。 もっとも、明治維新には目指すモデルがあり、「坂の上の雲」の時代だった。 今は、モデルのない「下り坂社会」だね。私:この対談の両氏にもその「想像力と知性」を期待したいね。
2010.11.28
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超マクロ展望世界経済の真実私:すでに、歴史的に見て、実体経済で冨を蓄積した国は、次に、バブルを起こして崩壊するというパターンがある。 それなのに、先進国では、後から追いついてきた日本でなぜアメリカよりバブルは10年ほど早かったのか。 考えてみると、日本の近代化のスピードは、極端に早く、明治維新からでも100年だ。 ヨーロッパは300年ぐらいかかり、アメリカでも200年くらいかかった近代化と比較すると、ものすごいスピードだね。 その分、破局も早い。 ここでやはり「人口ボーナス」論が出るが、明治元年(1868年)のとき3402万人の日本人口は、100年後には1億人超という急激な増加で、増加率が一番高い。A氏:そうなると、高齢化のスピードも一番速いことになる。私:まず、日本は近代資本主義のしくみ、すなわち、実物経済で安く仕入れて高く売るというしくみで、もっとも利益を獲得することができた国であることだ。 アメリカと違って、日本はわざわざ金融空間をつくって他国の資本を呼び込まなくても、国内の貯蓄が膨大な額になっていた。A氏:アメリカの方は他国のカネを当てにするから、国際資本が自由化するまで待つ必要があったが、日本はその必要がなかったということだね。私:日本のバブルのきっかけはアメリカが仕掛けたという見方もあるね。A氏:日本のバブルは、アメリカが日本との間の膨大な貿易赤字で、日本に内需拡大を要求したのがきっかけだというのが通説だね。私:そうではなく、冷戦時代のレーガン大統領時代にアメリカは財政赤字を拡大させながら、ソ連と軍拡競争をしていたために、日本のカネが必要で、日米の間にお金を還流させることが必要だった。 ところが、プラザ合意でドル安になったとき、日本企業はアメリカ国債で大損する。 そのために日本がアメリカ国債を売ると困る。 それで、アメリカがバブルをしかけたという。 日本のバブルで株や土地が高騰してその大きな含み益で、日本企業は、ドル債で損してもビクともしないでアメリカ国債を持ち続けた。A氏:バブルのピークはベルリンの壁崩壊直後の1989年で平均株価が4万円近くまでになるね。私:しかし、同時にその頃、米ソ冷戦が終了し、日本マネーのバックは不要となる。 CIAが冷戦終了で、経済にシフトしたということもあるね。 アメリカにとって日本があまり強くなるのは好ましくない。 外国投資家主導で日本での売りが殺到し、バブル崩壊で株価は一挙に半分以下に下落。 実体経済では内需は増えないのだからバブルは当然だね。A氏:内需拡大の前提がなくなってきているからね。 日本を含め先進国は少子化が始まる。 世帯数は都市化が終わると増えないので内需拡大も終わる。私:日本では1973年から74年にかけて都市化が終わる。 だから、日本に内需拡大を要求しても無理なことをアメリカは知っていたのではないか。 内需拡大ができないと株や土地などの資産にカネが集中しバブルになる。 そしてバブルは当然、崩壊する。 当時、日本の一部企業はバブル崩壊で米ドル債を売った。 同じ頃、ドイツも東西ドイツ統合で旧東ドイツの復興にカネが必要になり、米ドル債を売った。 アメリカは、日本とドイツ両国のカネで助かっていたようなものだから、この売りでアメリカのS&L危機(貯蓄貸付組合の連続破綻)の原因となったという。A氏:日本バブルは、アメリカで本来は発生すべきバブルを先行して肩代わりしたのかね。私:そのために日本は、低成長社会のもと、金融経済化していく先進国のなかで、先行性をもつことになった。 日本が悩まされている長期の低金利、長期のデフレは、今後の資本主義先進国が同じようにぶつかる問題だということだね。 日本が先頭を走っているのだから、国際比較は無意味で、モデルはない。 明日は、では今後、日本はどうすべかという話題に移ろう。
2010.11.27
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超マクロ展望世界経済の真実私:この本では、歴史的にさかのぼって、途中で、資本主義の起源についての対話となっている。 それは資本主義は決して市場経済とイコールでなく、そこには国家の存在が深く組み込まれているからだ。 しかし、多くの経済学者やエコノミストは「国家」と「資本」は対立するものだという前提に立っているという。だという。 グローバル化で「国家廃絶論」まで登場しているという。A氏:だから、多くの経済学者やエコノミストは現実と異なった論評となるのだろうね。私:資本主義経済が誕生する直前の15世紀までの中世は、農業の技術革新によって農村の実質賃金が向上する。 しかも、14世紀にはヨーロッパ人口は減少し、人手不足で労働者のほうの立場が強い。 地主である封建貴族の儲けは減る。 中世後期は労働者の黄金時代であると同時に、支配層にとっては最大の危機となる。 危機を脱するために資本主義が生まれる。A氏:つまり、資本主義は封建制に対立するものでなく、その機能不全を乗り越えようとして生まれたというわけか。私:封建制の封建単位から国家単位に移行する。 一人の国王が国家を治める国家単位の経済となる。 その背景には戦士たちの独立性を失わせた銃の発明がある。 さらに貨幣経済の発展がある。 16世紀の近代主権国家は、国王が資本家でもあるので資本と国家は一体。A氏:現代中国はその点では、16世紀の体制だね。私:資本主義が民主主義と一体化するのは、市民革命以降で、唯一の資本家だった国王がいなくなるとともに、国民が資本の担い手となる。 国民(資本家)と国家が一体となる。 国家権力をバックに、戦争や略奪で資本家は富を蓄積する。 政治と経済は一体だ。 一体だが、資本主義では国家の枠内で、暴力を専門的に担う政治主体と労動を管理する経済主体の分離とそれぞれの役割分担があるということだね。A氏:2008年の金融危機でアメリカの金融機関に莫大な公的資金が注入される。 この国家の存在なしでは市場自体がもたなくなってしまうというわけか。私:市場というのは、所有権にもとづいて交換されたり資本蓄積がされたりするが、国家はその所有権をこえて人々からカネを集めることができる。 市場での冨のやりとりは、税という非市場的なお金の動きを前提として成立していることになる。 資本主義は、この2つの役割の連携で成り立っているということになるね。A氏:国家による税の徴収と、資本による利潤の追求が合わさって、資本主義における蓄積というものが成り立っているということになるね。私:ところで、現代の資本主義は、金融危機で大きな歴史的な転換を迎えている。 まず、金融危機に至るまでのアメリカだが、スタートはニクソン・ショックだね。 これは、アメリカは実物経済で勝負するより、金融経済を優位にするための考えが根底に一貫してあったという。 レーガン大統領時代は国債の利上げで外国の投資を呼びこむが、利子負担が増えて成功しない。 95年になると国際資本の流動性が完全になり、かつ、「強いドル」のPRで世界中のカネを株式で集めて成功する。 そして、アメリカは国の赤字を埋めて余ったカネを海外投資して儲けた。 国際資本の自由化によって、アメリカは世界中の預金を自分の預金であるかのように使えるようになった。 そしてバブルを起こす。 問題は日本のバブルだね。 アメリカより10年早い。 なぜだろうか。 そのあたりは明日、ふれていこう。
2010.11.26
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超マクロ展望世界経済の真実私:覇権問題を「空間支配」という見方らから歴史を振り返ると、最初、陸での戦争で勝った者が支配権をにぎってきた。 それがオランダの造船技術の向上で、オランダ、イギリスの「空間支配」が海に移る。 世界の海を支配したものが覇者になるという訳だ。 イギリスは海賊によって資本を蓄積し、海での自由貿易を管理することで世界的な冨の集積地となる。 海を支配して、植民地を全世界に広げる。 イギリスの冨の蓄積は、産業革命よりもこの社会構造のほうの貢献が大きかったという。A氏:アメリカは海支配ではないね。 植民地もほとんどない。私:両氏は、アメリカの「空間支配」は空だという。 圧倒的な空軍力、人工衛星による的確なミサイル攻撃力。 そして、それは「月面上陸」のように宇宙空間にも広がる。 アメリカは空を軍事的に支配しながら、ドル基軸体制を守り、そのもとでの自由貿易市場の管理者となることで、世界資本主義の覇者となった。 しかし、宇宙空間の支配は利益を生まないというものだね。A氏:そうか。 「空間支配」が空になると、経済的覇権に結びつかないということになるのか。私:だから、資本主義史上始めて、「空間支配」が経済覇権に結びつかないという変化が生まれたことになる。 それまでは、「空間支配」の軍事力が覇権国家の需要な要素だった。 すなわち、軍事力の世界的な支配力が経済力とともに覇権国家に必要だった。 それが今度の金融危機で分離してきたという。 経済的覇権と軍事力覇権の分離となってきた。 アメリカは当分の間、経済力は弱まっても、他の国より圧倒的に優位な軍事力は維持するだろうからね。A氏:米中戦争による覇権争いは考えられないね。私:また、経済も今までは覇権国家は世界の中心的な生産拠点でもあった。 それが覇権国家と工場が分離するだろうという。 中国やインドのように経済成長をして高い利益を生み出す地域と、世界資本主義を管理する地域が分離する。A氏:要するに覇権が分裂して、経済覇権、軍事覇権、経済の管理覇権が分離するということになるということか。 そういう意味で、ある国が独自の覇権国家になる時代は終わったということかね。 そういう意味で国家が世界的に役割分担して協調いていくルールが必要だね。 今後は国民国家を単位にした国際秩序でなくなる、という大きな変化が考えられることになるのかね。 覇権国家の歴史の終わりだね。私:もう一つ、大きな問題は資本と国家の分離だね。 この分離で深刻なのは先進国だね。 今のように、先進国の資本が後進国の生産現場に結びつき、生産拠点がどんどん新興国に移転すると、先進国の資本は先進国の国民を見捨てることになる。 先進国では資本主義のルール策定や運営にたずさわる人たちは、よりグローバルな世界で大きな利益を得るだろうが、その繁栄の裏では多くの中産階級以下の人たちが没落していくことになる。 いや、現実に没落している。A氏:今までは、先進国は、言わば後進国を搾取して経済発展をしてきたが、オイルショックでその構造が崩れ、後進国が発言権を増し、経済発展をして先進国の仲間入りをしてきた。 それは同時に先進国の搾取構造の消滅だから、先進国は儲ける場がなくなる。私:資本主義の根本的な危機が訪れるのではという。 明日は、再度、歴史的に資本主義を政治体制の変化と関連して考えていこう。
2010.11.25
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超マクロ展望世界経済の真実私:石油市場の動きを歴史的に見ると、1972年にイラクのフセインによる石油の国有化、1973年にオイルショックが起き、石油価格の決定権はOPEC(石油輸出国機構)の手に移る。 それまでは、石油メジャーが油田の採掘も石油の価格も支配していた。 これは帝国主義の名残りだね。 それが崩壊する。 先進国側は反撃する。 1980年代に、石油を金融商品化して国際石油市場を整備して、先物取引などで石油を戦略物資から市況商品に変えた。A氏:石油は領土主権から市場メカニズムのもとに置かれたということか。私:それに、ドルを基軸通貨としてきたのが、1971年のニクソン・ショックによって金の裏づけをなくした。 しかし、冷戦で西側が資本主義体制を維持するためにドル基軸通貨体制を守ってきた。 それが、冷戦が終わったら、ドル基軸通貨体制を裏づけるのは石油しかない。 ところが、イラクのフセインは石油売上代金をドルからユーロへの切替えようとした。 これをやられては、ドルを基軸通貨としているアメリカの「金融帝国」としての根底が崩壊する。 だから、フセインを倒し、基軸通貨としてのドルを守る必要があった。 これが、イラク戦争と関係しているんだね。 アメリカはイラク戦争でイラクの石油確保を狙ったと言うが、もう、そのような領土主権時代ではないね。 それにアメリカは、物量的にイラクの石油に依存していたわけではない。A氏:ドルを基軸通貨としてまわっている国際石油市場のルールを守るための戦争だということか。私:軍事力の行使が、陸地の獲得やコントロールから、経済システムの管理へと変わってきた。 裏にユーロの登場があるね。 ところで、視点をもっとマクロに置いて、資本主義500年の流れを見てみよう。 ある流れが繰り返し存在する。 最初は、イタリアの都市国家のジェノヴァ、ヴェネチア、フィレンツェというところから、資本主義が始まる。 しかし、その都市国家の儲けは減少する。 その後、資本主義の勃興とともに世界経済の中心はオランダに移る。 次に18世紀から19世紀に覇権はイギリスに移る。 20世紀前半にイギリスからアメリカに移る。A氏:繰り返しているようだね。私:共通点は、どの国も実体経済で儲けて、次にその儲けが低下すると儲けたカネで金融拡大を起こす。 そしてある種のバブル経済となる。 金融化が進むとその国の覇権は終わりに向かう。 金融拡大の局面で蓄積された資本が、儲けの多い次の新しい覇権国に投資されていく。 ジェノヴァで蓄積された資本はオランダに投資され、オランダが稼いだカネはイギリスに融資され、産業革命などの生産拡大の後押しをして、イギリスの黄金時代を準備する。A氏:アメリカの金融危機も、戦後に世界的に高度成長をもたらした生産拡大の局面があった。 その後、実体経済では、儲けが少なくなった。 そこで金融拡大の局面に移り、30年ほど続くが、最終的には金融危機となるというわけか。 歴史は繰り返すということか。 オランダの場合はチューリップ・バブル、アメリカはITバブル、住宅バブルだね。 そうすると、今、そのアメリカ金融資本が投資されている中国とか、インドが次の覇権国家になるのかね。私:両氏とも、もっと大きな構造変化が起きるのではないかという。 それは明日の話題にしよう。
2010.11.24
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超マクロ展望世界経済の真実私:俺は水野和夫ファンだから、この新書は新聞広告で知って、すぐ書店で買ったよ。A氏:水野氏は、日本の経済成長神話は終了したという論者で、現在のデフレ脱却のために経済成長をとなえる多くの経済学者やエコノミストから批判されているね。 ある意味、少数派だね。 このブログでは、その知的街道として「下り坂社会を生きる」、「デフレの正体」、「経済成長という病・退化に生きる、我ら」と続いてきたね。私:この本は対談形式だから読みやすいが、奥が深いね。 しかも水野氏の対談相手は、これも異色の政治哲学者の菅野稔人氏だね。 この人は、俺ははじめて知ったが、水野氏より一回り以上年下の気鋭の若手学者だね。A氏:なんで経済に政治がからむだろうね。私:政治抜きでは経済が語れないからだね。 多くの経済学者やエコノミストは、政治と市場経済は独立のものと考える。 しかし、それらは密接に関係している。 例えば、資源価格の高騰だが、これは先進国と新興国のあいだの政治的な力が強く働いている。 新興国の台頭によって、エネルギーをタダ同然で手に入れることを前提にした近代社会の根底が揺さぶられている。A氏:新興国の台頭により、先進国が自分たちの利益を最大化するために、石油などの資源を安く買い叩くという構造の崩壊だね。私:その変化は1970年代から現れている。 先進国の儲けは減少傾向になり、途上国の儲けが上がりだす。 それまでは、先進国が安く原材料を仕入れて高く完成品を売る一方で、周辺諸国は高い工業製品を買って安い原油を売るという構造だった。 1990年代の半ば頃までは、原材料の値上がりは、技術の向上や製品への価格転嫁でしのいできたが、それ以降は限界が来た。 そこで、企業は利益を出すため、今まで固定費だった人件費の削減に手をつけた。 人件費は変動費になった。A氏:だから、日本では02年から07年のリーマンショック以前の6年間は長期の景気拡大をしたけれど、国民の所得は増えなかったんだね。 90年代半ばは、日本では派遣社員や契約社員の非正規労働者が急増した頃で、人件費が変動費になった影響だね。私:資源の高騰によって、景気と所得が分離された。 景気がよくても賃金はあがらないという構造になってきた。 景気が回復するというのと所得が回復するのは別の問題になってきて、連動しなくなった。A氏:先進国は実物経済では稼げなくなったということだね。 背景に先進国と途上国の政治的な力関係の変化があるということか。 経済を市場だけでは語れないということだね。私:先進国では少子化が進んでいるので、国内市場は収縮傾向だ。 そこで先進国は金融で儲け口を見出す。 例えば、最大のエネルギー消費国のアメリカは資源高騰で実体経済の打撃が一番大きかった。 そこで金融経済化の道を進む。 世界の余剰マネーがアメリカのコントロール下に入る。 アメリカの2001年のデータでは全産業の営業利益のうち、金融機関の利益が全米企業の49%を占めるほどになる。 95年から金融危機が起こる08年までの13年間で世界の金融機関で100兆ドルのお金がつくられた。A氏:アメリカの「金融帝国」化だね。私:アメリカだけでなく、先進国の曲がり角に立っていたヨーロッパもシェアが3割で、金融の道を進んでいた。 だから、アメリカだけでなくヨーロッパも今回の金融危機の痛手が大きかった。 明日は、石油価格とイラク戦争の関係に話を移そう。
2010.11.23
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A氏:品質マネジメントシステムの国際規格のISO9001には「予防処置」の要求があるが、先々週の月曜日で扱った「是正処置」とどう違うんだね。私:「是正処置」はなんらかのトラブルが現実に発生したのを受けて、とられる「再発予防処置」だね。 これにも「予防」がつくので混乱しやすいが、あえて、これと対比させると「予防処置」のほうは「『初発』予防処置」だね。 「再発」と「初発」が違うね。 「予防処置」は、トラブルがまだ、現実に未発生だが、発生を予測して、先手を打つ対策だね。A氏:ということはなんらかの行動前に、予防策を立てて、それを実行することかね。私:そうだね。 しかし、ISO9001の規格では、順序からして、一番、最後にこの項目がある。A氏:予防が最後に来るのはおかしいね。私:ISO9001の2000年版と2008年版は、PDCA順に書いてあるということになっているが、これと矛盾しているね。A氏:PDCA 順というのは、Plan (計画)、Do(実施)、Check(チェック)、Act(改善)の順序のことだね。 そうすると、「予防処置」というのは、Plan (計画)の段階でいろいろ「起こりそうなトラブルを予測」して、実際の行動前の計画に織り込むことになるべきだね。私:その通り。 だから、ISO9001では、顧客要求通りの製品を提供するために、企業内で、いろいろな「予防処置」が日常業務に織り込まれていることを要求している。 例えば、仕事を開始する前に、仕事に応じた訓練をあらかじめして、その適切な修得者を配置することを要求している。 機械・設備などは適切なものを仕事の開始前に配置するように要求している。 温度湿度などの作業環境も同様だ。A氏:そして、そこへ顧客から注文が来るね。私:まず、営業では顧客の製品の要求事項を明確にして、注文が来たときに間違いがないか「念押し」をすることを要求している。A氏:レストランに行くとウエイトレスが顧客から注文を聞き、伝票に書いて、さらに復唱して顧客に確認するのと同じだね。 間違ったものを顧客に出さないためのレストランとしての予防行為だね。私:設計では、図面や仕様書が発行される前に、検図、試作をして設計の内容が顧客の要求を満たすものであるかを出図前に確認することを要求している。 購買するには、要求通りのものが納入されるように、あらかじめ業者を評価して選択してから発注することを要求している。 注文内容は購入業者に明確に伝えるようにするように要求している。 次に、製造業者だと、製造工程をきちんときめ、図面通りにできるように計画し、実施段階では、進行中の仕事を監視し測定し、もし、問題があれば、早めに手を打つように要求している。 測定に使う計測機器は、狂わないように、ときどき校正して管理するように要求している。A氏:ISO9001の要求の中核は、まさに「予防処置」要求そのものだね。私:それでも、人のやることだから、全部、予防できなくて、トラブルが発生する。 そのときは、放置しないで再発を予防する「是正処置」の要求がある。 これだって、転んでもタダでは起きないで、「次の行動への予防行為」と言える。 だから、ISO9001のマネジメントシステム規格の基本は、「予防行為」の要求の連続だね。 「予防行為」がその企業のマネジメントシステムにきちんと確立されていれば、顧客は安心出来るというわけだね。A氏:マネジメントの基本的な発想は「先手」だということだね。私:しかし、ISO9001規格そのものが「予防処置」となっているのに、これとは別に、項を改めて、「予防処置」を要求している。 これが規格を理解するときに分かりにくくなっている点だね。 だから、ISO9001規格の「予防処置」の項目を正確に理解するには、このような基礎的なマネジメントの「知的体力」があるかを試されることになるね。 規格の「ケンカ読法」が正確で有効なマネジメントシステムの理解に不可欠だね。
2010.11.22
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私:昨日、インフルエンザ予防接種をしてきたよ。 2千円だね。 そのせいか、ちょっとだるいね。 体調が異常でなければ、予約なしですぐにできる。 インフルエンザの予防接種は、4年前までしていなかったんだが、2008年からするようになったね。A氏:07年の君のブログの「A型インフェルエンザにかかる」と「タミフル体験記?」によるとA型インフルエンザにかかって、こりたとあるね。 インフルエンザの予防接種をするようになったのはそれ以来だね。私:そうだよ。 ブログを見ると、07年11月21日に「インフルエンザ予防接種」とあるね。 その頃かね、「インフルエンザ予防接種無効論」が出たね。 これは厚労省が、対策をしていないと無策だと批難されるので、無理してやっているという意見だね。 理屈を聞くともっともな点もあるが、一度、こりているので、どうしても安全を考えてしまうね。 去年の日記を見ると12月4日(金)にやっているね。 ブログには記録がないがね。 これで毎年連続になった。 効果があったのか知らないが、予防接種をしてから、インフルエンザにはかかっていないね。A氏:副作用はどうだね。私:少し、体がダルイ感じがしたね。 まぁ、ウオーキングもやめ、入浴もシャワー程度にしたよ。 今年もインフルエンザにかからないことを祈る次第だよ。 タミフルはこりたからね。
2010.11.21
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私:17日の水曜日に、なんとなくテレビのチャンネルを回していたら、NHKの番組「ためしてガッテン」で40代のうつ病の人のことをやっていた。 やる気が出ないので、医者に行くと「うつ病」と言われる。 しかし、抗うつ剤を呑んだりしても、改善されない。 長い間、苦しんでいた。 ところが、ある医者に「あなたはLOH症候群の疑いがある」としてその治療を受けたら、すっかり治ったという。A氏:LOH(ロウ)症候群? 今まであまり聞いたことがないね。私:男性ホルモンのテストステロンの減少による病気だという。 ここ5年くらいで明らかになったものだ。 この症候群にかかっている人は、日本では約600万人だという。 この番組では、もう一人、70歳代の人で、筋力が急に衰え、歩くのがしんどく、座っていることも苦痛になり、家で横に寝ころんでいる人の例をやっていた。 LOH症候群は、テストステロンの注射などで簡単に治るという。A氏:うつ病でなかなか治らない人はLOH症候群かもしれないね。 長いうつ病で自殺する人もいる。 その意味では朗報だね。 しかし、大体、男は年をとると男性ホルモンが減少してくるんだから、しかたがない点もあるね。私:この番組では、テストステロンの減少をできるだけ抑える予防策として3つあげているね。 1つ目は、毎日15分程度の軽い運動の継続。 2つ目は、脳でもテストステロンを作っているので、脳活動の活性化として、会話や人との交流だね。 3つ目は、テストステロンの合成を誘導する含硫アミノ酸の摂取だという。 これは玉ねぎとかネギ類に含まれ、切って、すぐに加熱して食するといいという。 しかし、インターネットで「含硫アミノ酸」の多い食品を検索すると、鰹節がトップだね。 それから、カゼインや大豆食品が登場するね。 最後に、LOH症候群の疑いがあるかの「自己診断チェックシート」が説明された。 次のような17問について5段階で評価して、合計点が50点以上なら専門医に行くべきだという。 1.総合的に調子が思わしくない 2.関節や筋肉の痛み 3.ひどい発汗 4.睡眠の悩み 5.よく眠くなる、しばしば疲れる 6.いらいらする 7.神経質になった 8.不安感 9.からだの疲労や行動力の減退 10.筋力の低下 11.ゆううつな気分 12.「絶頂期はすぎた」と感じる 13.力尽きた、どん底にいると感じる 14.ヒゲの伸びがおそくなった 15.性的機能の衰え 16.早朝ぼっきの回数の減少 17.性欲の低下A氏:年をとると、15、16、17は自然にそうなるね。私:まぁ、無理しないで死ぬときは朗らかにポックリといきたいね。 ところで、インターネットで調べると、テストステロンの量を調べるための血液検査には保険がきかず、1万円くらいかかるようだね。 テストステロンの注射は1回あたり、3千円ほどするらしい。 600万人も患者がいるそうで、自殺の原因にもなっているそうだが、保険はどうなるかね。 「ためしてガッテン」はその点の説明がなかったようだね。 俺たちは、今のところ大丈夫だがね。
2010.11.20
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A氏:昨日、高齢者運転免許講習を受けてきたよ。 法の改正で、75歳以上にはさらに認知機能検査が追加になったんだね。 それで、俺は、認知機能検査を始めて受けたよ。私:俺も免許更新が近いので、受けないといけないんだが、認知機能検査って何をやるんだね。A氏:30分間くらいのペーパーテストだね。 テスト用紙が5枚くらいあったかね。 腕時計は外してかばんにしまってください、という試験官の指示で始まった。 何故だろうと思ったら、最初の一問は、今日の日付、曜日、現在時刻を書けとかいう問いがあった。私:どういう認知機能をみているんだろうね。A氏:次は5つの空白のマスが並んでいて、これに例えば、さ行の「さしすせそ」の5文字を逆にそれぞれの枠内に記入するという問題で、これが2問だ。 右から左に記入してはいけないんで「そせすしさ」と書く。私:50音表の記憶の調査かね。A氏:次に、丸を大きく紙いっぱいに時計を描き、11時10分の短針長針の位置を描いてくれとなったね。私:俺みたいに、デジタル時計ばかりに取り囲まれているのは、嫌な質問だね。A:そして最後は記憶力テストだ。 1枚のOHPシートに4つの絵が描いてある。 ラジオとか、オートバイとか、ニワトリとか、ライオンとかだね。 これが4枚あって、合計16の絵が逐次映し出される。 その際、試験官が質問しながら説明する。 例えば、「4つのうち、動物がいますが、何でしょう」と聞く。 皆が絵を見て「ライオンです」という。 これを1つずつやる。私:声に出すとよく覚えるというね。A氏:声を出すのは強制ではないがね。 これを4枚のシートについて連続してやる。 そして、ちょっと時間をおいて、テストペーパーに16の絵の名称を順序不同でいいから何を書いてあったかを思い出して書くわけだ。私:完全に記憶力テストだね。A氏:俺は16のうち、10しか書けなかった。 ところが救いがあって、次のテストペーパーにヒントが書いてあるんだよ。 例えば、「動物は何でしたか」というようにね。 それで思い出して「ライオン」と書く。 ヒントがついたら、不思議に16個全部思い出したね。私:記憶というのはある論理で覚えていると思い出しやすいんだね。A氏:これで認知機能テストは終りで、後は、いつもの通りの3種類の視力検査、ゲーム式のテスト、15分くらいの自動車教習場での運転だね。 運転は、車庫入れ、S字カーブもある。 俺たちの時代にはなかった、道路に車止めのようなものがあり、これに乗り上げ、すぐにブレーキを踏むというのもあったね。 全部で3時間くらいの講習だった。 この講習は受けるだけで落ちるということはないが、7千円の受講料は痛いね。私:認知機能検査の結果はどうなんだね。A氏:最後に検査結果の紙をくれる。 3ランクあって、俺は異常なしだった。 しかし、ランクが低い人は、免許更新後の一定期間内に信号無視や一時停止などの特定の交通違反をすると、警察から連絡があり、専門医の診断を受けるのだという。私:高齢者社会だから、仕方が無いね。 とにかく、半日の試験でご苦労さんでした。 これからも安全運転をしてね。
2010.11.19
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A氏:CM天気図というコラムは毎週水曜日、天野祐吉氏が書いている。 本来、テレビコマーシャルについてのコラムだが、昨日の記事は政治がらみだね。 昨日のコラムの出だしをそのまま転記するよ。 「『尖閣ビデオ大爆発で轟沈した菅内閣』『民主党がわが国を殺す』『菅政権が脅える尖閣ビデオクーデター』『菅外交が日本を滅ぼす』『日本がどんどん縮んでいく』『民主党政権終わりの予感』----。 すごいなあ。マスコミが記事につける見出し(キャッチコピー)を見ていると、日本という国が明日は地球上からなくなっているような、いや、なくなっているに違いない、という気持ちになる。 気の弱い人は、預金をおろしに銀行に駆け出すんじゃないだろうか。 (中略) 近ごろはエスカレートして、集団ヒステリーのようになっていませんかね。 (中略) このほうが「国を滅ぼす」んじゃないかと心配なくらいだ」私:簡潔に今のマスコミの低レベルを指摘した名文だね。 名エッセイだね。 週刊誌もこのところ、毎週のように、ヒステリックなことばを使っているね。 今朝の新聞の週刊誌の広告を見ると「恥をかき続けた哀しきピエロ『菅直人』総理」、「『赤い官房長官』の暴走」、「国民が知らない『異常な人格』」とデカデカ出ているね。 落語の八さん、クマさんが「頭のいい人たちなのに品がねえなあ」と言っていそうだね。 「国家の品格」なんか、吹っ飛んでいるね。A氏:「批評の本質はホメたりケナシたりすることでなく『つくりかえの提案』をすることだと言った人がいる」と天野氏は言って、ロールスロイスの例をあげているね。私:同じ新聞紙面にやくみつるの政治漫画があって「有言実行内閣改メ、やる気ない閣・ない閣総理大臣菅直人」というが載っていたね。 これも「ことばが浮いている」けなし方だけれど、こういうのは漫画くらいでいいのではないのかね。 国会でも野党になった自民党まで、民主党の野党時代と同じように「誰の責任だ」と意味のない追及を偉そうにしているね。 管首相の「最終責任は私にある」という中身のない下らない答弁を引き出しているだけだね。 それで終り。A氏:けなされる方もけなす方も、どっちもどっちだね。 中国の反日運動が形を変えて、日本国内のマスコミに伝染したのかね。 まさか、中国マネーがマスコミの裏で動いているわけでもあるまい。私:それが本当の日本の置かれた問題点だろうね。 この天野祐吉氏の言う状況をやくみつるが政治漫画を描くとすれば、土俵の上で菅首相にマスコミや野党が口汚く罵って、そのツバで管首相が土俵際に追い込まているという画になるかね。 土俵のまわりの観客(中国人もいるかも知れない)は土俵を見ず、あちこち見ていて白けているというのにしてはどうかね。 熱心に土俵を見ているのは中国人の観客だけかもしれないね。
2010.11.18
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私:先日、久しぶりに近くにある総合病院に行ったんだが、IT化が昨年からすすんでいて、全部電子カルテになったという。 診察が終わって、会計も診察券がカードになっていて、それを自動支払機に入れると、支払金額が表示され、駅の券売機みたいに、紙幣とコインで支払いするので、速いね。 釣銭も出る。A氏:電子カルテだと医者はペンや鉛筆の代わりにキーボードだね。私:それなんだよ。 問題を感じたのはーーー。 医者は、あまり患者の方をあまり見ないで、一生懸命、キーを叩いて、パソコンの画面を睨んでいる。 向い合っての会話が減っているのではないのかと思ったね。A氏:携帯電話のメールと同じだね。 目は画面だね。私:それから、入院病棟では、大部屋は数人いて、カーテンで仕切られているんだが、だんだん、カーテンを閉めきっている入院患者が多いそうだね。 おしゃべいりの女性のお年寄りでも、カーテンを閉めきっている人が多いそうだ。A氏:大部屋だと暗くなるのではないの。私:明るいのは窓際の人だけだね。 だから、同じ部屋の患者同士の会話がなくなっているという。 食事のときもカーテン内だ。 食事を配膳する人も、カーテンを閉めきっていられると、ちょっとカーテンを開けるのを躊躇するという。 それに大部屋の場合、入り口に名札が貼られるのが、個人情報保護なのか知らないが、患者が希望しないと空白だという。A氏:見舞い客が困るのではないの?私:そういう人には見舞いがこないのか、見舞いを拒否している嫌がるのだろうね。A氏:孤独死予備軍かね。私:世の中、だんだん、若者だけでなく、顔を付き合わせてのコミュニケーションが全体に希薄になっているようだね。 何故だろうかね。
2010.11.17
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私:尖閣諸島事件を経由して、話を村上春樹の「1Q84」に持って行くよ。A氏:えらく迂回するね。私:まず、例の尖閣諸島の中国漁船衝突問題で、YouTubeに流出した海上保安庁のビデオをインターネットで直接見たよ。 直接見ないで、あうだ、こうだ言いたくないからね。 長いのでいくつかに分割されているね。 最初は漁船の後ろから網を引き上げているシーンがかなり長くあるね。 まぁ、後はテレビでやたら流れているお馴染みのシーンらしいので、それ以降は見るのをやめたね。 全部で40分くらいあるからね。 ところで、尖閣問題でYouTubeをいろいろ検索しているうちに、地デジ9チャンネルの「西部邁ゼミナール」の録画がひっかかった。 このゼミナールでも、尖閣諸島問題を論じていたね。A氏:西部氏は、対中強硬論者だね。私:「西部邁ゼミナール」はその時々の話題をテーマに毎週土曜にゲストを呼んで30分番組として2年前からやっているが、それらが、YouTubeで全部視聴できる。 その中に、今年6月のもので、文芸評論家の富岡幸一郎氏をゲストに呼んだ「1Q84」についての討議があった。 折からの 「1Q84」のブームを扱ったものだね。A氏:ようやく尖閣諸島から村上春樹の「1Q84」にリンクしたね。私:西部氏は、評論家として一応、村上春樹を知っておこうと思い、村上春樹の「ノルウェイの森」を読みだしたが、5ページほど読んで放り出したという。 読書好きの奥さんも20ページほどでやめたという。A氏:やはり、文体だろうね。 「頭がグチャグチャになる」んだろうね。私:富岡幸一郎氏の「1Q84」評は酷評だね。 さらにこんな本がベストセラーになるのは日本の読者もおかしいという。 村上ファンは怒るだろうね。 西部氏は作家の生活体験が希薄なのは問題としているね。 このYouTubeからの富岡氏の情報は「村上春樹『1Q84』をどう読むか」1、2に次いで村上春樹知的街道の1つに追加したよ 俺は、4年前に「ノルウェイの森」を読もうと図書館に予約しようとしたが、待ちが多すぎるので、待ちのない「アフターダーク」を借りて読んだ。 村上作品はこれで終わりだね。 4年前のこの本の読書感想のブログを読むとやはり文体の問題に引っかかっているね。 作品の評価は別にして、これは共通している読者感想だろうね。
2010.11.16
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私:先週の月曜日のブログには、「是正処置」とはISO9001では「再発予防」のことであり、その進め方は、まず「原因」を「特定」し、次にその原因をつぶす「対策・是正処置策」を「決定」し、実行するということだと説明したね。A氏:「特定」という意味は、起きたトラブルの「固有な原因」を絞り込んで明らかにすることだね。 犯罪の「犯人の特定」とは犯人をDNAレベルの固有名詞で明らかにすることだね。私:ある自動車の小さな部品を組み立てている百人くらいの中小企業があった。 顧客からバラの部品を支給してもらい、それを組んで顧客に納入する。 クレームが来たら、「原因」を追及しなくてはならない。 その会社はISO9001をとっていた。 ところが、その会社の社長は 「うちに対するクレームの『原因』はすぐわかるよ。 大抵『組み立て違い』だよ。」 と言っていた。 簡単に言えば、AとBを組むべきなのに、AとCを組んでしまったということだね。A氏:その社長は、「特定」の意味が分かっていないんだね。 それでもISO9001はとれるんだね。私:そうだね。 自動車は多品種生産だから、品種によって、『組み立て違い』の個別の「原因」が異なる。 要するに「何故、その製品では『組み立て違い』をしたのか」という「何故」がない。 ましてや、さらに連鎖する5Wという考えがない。 「特定」の意味を理解していないと、次のようなナンセンスな5Wが発生する。 ある有名なISO9001の指導機関の講習会で「特性要因図の作り方」の例で、次のような5Wによる説明が載っていた。 講師:不良は何故発生する? 受講生:機械の調子が悪いから。 講師:何故、調子が悪い? 受講生:整備しないから。 講師:何故、整備しないか? 受講生:整備をする標準書がないから。 講師:何故、標準書がない? 受講生:PDCAの習慣がないから。 講師:はい、従って、PDCAを回さないことが根本原因だと分かった。 これを特性要因図に表しましょう。 この例は4Wだが、この例がナンセンスの原因はどこにあると思う?A氏:最初から「何の不良」かがあいまいで5W2Hがない。 「特定」のために5Wを使うということが完全に分からず、ただ、「何故」を連鎖して問答しているだけでで、だんだん「特定」するどころか、「拡散」だね。 これでは5Wの勉強になっていない。 講習費を返却しないといけないね。 それに論理的なつながりがメチャメチャだね。 大体、整備する標準書がないから整備しないとか、標準書がないのはPDCAの習慣がないからだというのは、それ自体、論理的に意味を成さないね。私:5Wという形式にとらわれ、それを使う目的を理解しないための最悪の典型的例だね。 それから、よくあるのは、「うちのトラブルの原因は大抵、ヒューマン・エラーだから、対策は『注意するように朝礼で言う』で終わりだ」というところもあるね。 今年の1月29日に新幹線の停電事故があって、1日中ダイヤが混乱した。 「原因」は「パンタグラフの部品交換の際、社員3名が4個のボルトをすべて付け忘れたこと」という単純なもので、それが大事故につながった。 ヒューマン・エラーだね。A氏:これは君のブログにあるね。 「是正処置」は「ボルトなど部品の数量が一目でわかる容器を使用し、修繕の重要作業では『チェックシート』を使うように4月まで整備する」だね。 ボルトの容器を工夫して締め忘れたら、ボルトが残っているからおかしいと気がつくようにしたわけだ。私:トヨタはこれを「ポカヨケ」と言っている。 人間はポカミスをおかす性質があるから、人の注意力でなく、機械的、電気的、治具、容器の形状などの方法でミスを作業直後に知らせるというアイデアを出す。 アイデアを出すのは「知恵」すなわち、「知的体力」の勝負だね。 「注意します」「さらに十分確認します」「徹底します」という言葉が「是正処置」に登場したら、それはその会社の「知的体力」のレベルの低さを示しているね。
2010.11.15
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私:今年、99歳になっていまだに現役の日野原重明氏は、毎週土曜発行のbe紙にエッセイを書いているね。 昨日土曜日のエッセイは例のチリの鉱山の落盤事故に関してのものだが、後半は、氏が直接2日間ほどカンズメにされた危機についての体験談だね。A氏:俺も読んだが、例の40年前の3月に連合赤軍の「日航よど号ハイジャック事件」のとき、よど号の乗客として日野原氏がいたんだね。 しかも、リーダーシップを発揮された。 40年前だから、日野原氏は59歳の時だね。私:赤軍が乗客の一人から「ハイジャック」の意味を聞かれ、赤軍代表が答えられなかったので、日野原氏が後方席から前方に移り、手の麻縄を解いてもらい、マイクで語源を説明したという。A氏:インターネットで検索したら、2010年3月29日の産経ニュースでは、日野原氏の談話として 「乗客の1人がハイジャックとはどういう意味かと質問をしたが、田宮高麿代表も答えられなかったので、私がマイクをもらって『ハイジャックする人が説明できないのはおかしい』といったところ、一同は大笑いして、座が急に明るくなった」 とあるね。私:よど号から解放されて、飛行機から降りる順序を決めるとき、日野原氏は立ち上がって「私は最後でよいです」と言ったという。 これがきっかけで、後方にいた乗客も「前の席の者からにしてよい」と言い出し、皆が納得して順序を決め、一同無事に降りたという。A氏:チリの落盤事故の時も、責任者が最後だったね。私:ハイジャックされたよど号の狭い空間に乗客はカンヅメにされていたわけだね。 そのさっきの産経ニュースでは、日野原氏のハイジャックの説明で座が明るくなり、生きるも死ぬも皆が同じ運命にあるという意識から生じたという。 敵味方の一体感に一同が酔ったといえるのかもしれないとあるね。 3日目に解放されるが、乗客の1人が別れの歌「北帰行」を高らかに吟じ、それに対して赤軍一同が革命歌「インターナショナル」を歌うと、学生時代に左翼運動に参加したと思われる乗客たちが手拍子を取って一緒に歌ったりもしたという。 ウィキペディアの「よど号ハイジャック事件」によると、乗客に、この日に福岡で行われる日本内科学総会に出席途上であった医師が多く含まれていたために、福岡で「病人」との理由で解放された人質の選定に協力を行ったという。 なお、その中に虎ノ門病院院長の沖中重雄や聖路加国際病院内科医長の日野原重明がいたとある。
2010.11.14
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A氏:今朝の朝日新聞の経済面で、各大手銀行の国債保有残高が08年のリーマンショック以来増え続け、5年前より5割近く増えたとある。私:銀行の担当者によると「これはバブルで崩壊が怖い」という。 大手銀行の9月中間連結決算で、純利益倍増というのは、背景に先進国の積極的な金融緩和などで市場金利が下がり、国債価格が上昇したのでその売却益と、償還によって得た利益が前年同期に比べて3倍になったからだという。A氏:原因は金融緩和などで銀行にお金があふれているのに、本業の企業や個人への貸し出しは減り続け、行き場がないからだという。 だから運用益が安定している国債の購入に向かう。私:デフレだからね。 企業は需要減退で、新たな投資には慎重だね。 個人も同様だね。 消費人口と言われる生産年齢人口が2000年頃からドンドン減っているからだね。 消費に慎重な高齢者が増えてきている。 それなのに、政府は需要を増やそうと、国債で借金してでもいろいろカネをばらまこうとしているね。 自民党政権からこの政策はをしても需要は増えない。 バラマキの一つであるエコポイントで少し乗用車や家電製品の需要は増えたが一時的なものだね。 乗用車はエコポイント切れとともに、大きく需要が減少しているね。 だから、企業は投資に慎重になる。 個人の財布の紐も固くなる。 銀行にカネはだぶつく。 それがまた国の借金である国債の購入にまわる。 変な循環だね。A氏:国債バブルも下半期はリスクが増えそうだという。 欧州中心に金利が上昇し、国債価格が下がり出しているという。私:「中小企業や個人向けの貸し出しがの割合が低い」とある経済アナリストは言っているが、消費需要が増えないので当然だろうね。 それ以外に円高で安くなっている海外資産の買収などに事業を広げる必要があるという。A氏:それもすでに90年代の円高バブルの時に大分日本は海外資産を購入して失敗した苦い経験があるのではないの?私:大手銀行による外国の金融機関の買収が計画されているようだね。 火傷をしないように注意すべきだね。
2010.11.13
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私:昨日かね。 例の尖閣列島の中国漁船体当たりビデオの流出で、仙谷官房長官が記者の「ビデオを流出した人に同情の声が多い」という質問に「多いとはどういう情報ですか。 多くないと思いますよ」と返事をしていたが、これはまずいね。 世論調査の質問の仕方で、同情の声が多かったら、どうするのかね。 YouTubeのハンドルネームがセンゴクだしね。 これは60年安保のときに、問題になった岸首相の発言を思い出したからだ。 「国会周辺は騒がしいが、今日も後楽園は満員だったそうではないか」と言ったという。 この発言が問題になるね。 もっとも、後楽園なのか、神宮球場なのか、定かでないらしいが。 これについて、当時、巨人の捕手をしていた森祇晶氏がこの企画に寄稿しているね。A氏:この寄稿で思い出したんだが、60年、昭和35年のプロ野球のセ・リーグでは大洋ホエールズが優勝したんだね。 全く想定外。 巨人は敗れて2位。 大洋は三原修監督で、巨人は水原茂監督。 当時大洋は1954年から59年まで6年連続最下位であり、万年最下位の大洋に名将三原が監督に就任したことは大きな話題を呼んだね。 それが1年で優勝した。 しかも日本シリーズは「ミサイル打線」と言われた大毎オリオンズが相手だ。 これを4連勝(すべて1点差)で破り日本一になる。 「三原マジック」だね。私:この年の三原・水原の対立は「巌流島の戦い再現」と言われたね。 最初の「巌流島の戦い」は、三島が西鉄ライオンズの監督をしていたときの日本シリーズ戦だね。 これは、俺のブログの「稲尾投手の急逝」に書いてあるよ。A氏:負けた水原はこの年、東映フラーヤーズの監督になる。 左遷かね。 巨人は川上哲治監督となり、翌年からV9が始まるね。私:翌61年に「巨人、大鵬、玉子焼き」という子供の好きな物を羅列し、流行語になるね。 60年は、その基礎を作った年と言えるね。A氏:この文藝春秋の企画にその大鵬が寄稿している。 60年は大鵬が初入幕初優勝などで横綱の基礎を築く年で、翌年、柏戸と同時に横綱になる。 大相撲は「栃若時代」に代わって大鵬の時代になる。私:ところで、当時、プロレスは力道山が活躍していた頃だね。 この企画にはプロレスからはアントニオ猪木が寄稿しているね。 彼は、60年にブラジルにいたとき、力道山にスカウトされる。A氏:17歳だったという。 力道山は3年後の1963年になくなるね。私:スポーツでは、他に1960年のローマ・オリンピックで男子体操が団体で金メダルをとる。 以後、19年世界一を維持するね。 考えてみるとプロ野球と相撲はグローバル化のせいか、大きく変わったね。 昔のほうが、スケールが大きかったような気がするね。 とにかく、1960年頃は、日本はまだ、戦後の貧しさを残していたが、この年あたりを境として、ベビーブームの世代が成長しだし、生産年齢人口の増大の恩恵という「人口ボーナス」を受けて、日本は経済高度成長に転換していくね。
2010.11.12
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文藝春秋 2010年 12月号 [雑誌] 私:たまたま、「六〇年安保」を読んでアンテナを張っていたので、今月の文藝春秋の特別企画の「安保と青春・されどわれらが1960」に関心を持って、買ったよ。A氏:俺も「六〇年安保」刺激を受けて買ったよ。 君がとりあげた西部邁氏の感想も載っていたね。私:西部氏は「『莫迦は死んでも治らない』私の出発点」と題して短い記事を書いているね。 やはり、デモの先頭に立った全学連の分派のブントの西部氏にとっては「60年安保」はその後の人生の原点だったんだね。A氏:西部氏によると50年もたってから、今頃、「全学連同窓会」のようなものを喜び勇んで開催し、「なつかしく麗しきあの日々」とやらを思い起こしつつ、「我々は闘ったぞお」と叫んでいる中期高齢者の一群がいるのだという。私:タイトルの「莫迦は死んでも治らない」はそこからきているんだね。 西田氏の当時の思い出は、湿った4畳半でゲジゲジが布団の上にまで這い上がってくる飢えのために幻覚状態だった頃、路上に落ちている吸いかけのタバコを思わず拾おうと身をこごめた頃、を思い出すだけだという。 20歳代前半のその姿は中期高齢者となった現在、思い出したくもないという。A氏:氏は、その活動の中から「人が左翼であるのは、その新旧のいずれかを問わず、人が右翼であるのと同じように、人が莫迦になるための近道である」という真実を少しずつ学んでいったとあるね。私:この企画には当時の全学連財政部長の東原吉伸氏の短い寄稿もあるが、そこで、60年1月16日に岸首相の訪米を阻止しようとした羽田事件でブントから西部氏など幹部の大量逮捕者で出て、保釈金の金策に窮したとあるね。 そこで右翼の田中清玄氏に頼んで出してもらったという。 50年経って、先日、東原氏が西部氏にあったら西部氏が「あのとき保釈されず、あの春に暴れていなかったら、俺の人生も良かれ悪しかれ、かなり違った気がする」と言われたのは皮肉なものだと東原氏は書いているね。A氏:保釈された西部氏は6月3日の首相官邸襲撃事件で再逮捕されたからね。 これが氏の原点になっているね。 保釈されなかったら、この再逮捕はなかっただろうからね。私:半藤一利氏は、当時30歳で「週刊文春」の編集部員。 会社はデモなどの騒乱地に近い場所にあったが、その騒々しさの記憶はないという。 そして、60年の5月19日から6月18日までの1ヶ月間、東京の中心部が革命の坩堝の中にある頃の「週刊文春」の目次を広げたら、安保問題を正面からとりあげた記事は一本もなかったという。 そして6月15日に樺美智子さんの死があった直後の16日に編集会議が開かれ、編集長が来週の緊急特集は「デモは終わった、さあ就職だ」と指示が出たという。A氏:半藤氏は、忘れていたその特集号を見たが、なんと6月14日から毎日のように、東大では、各大企業の要望で就職説明会をしており、6月30日までの半月の間に約百社の一流企業が学生相手に揉み手で説明会を行っていたのだという。 編集長の読みは鋭かったね。私:明日は、その他の人の60年安保をひろってみよう。
2010.11.11
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経済成長という病私:著者は「デフレの正体」同様、日本の人口減少によって、生産と消費の量的な減少は確実であるとしているね。 「デフレの正体」にある「人口ボーナス」や「人口オーナス」という言葉が出てこないのは不思議だね。 エマニュエル・トッドらの人口学者は、識字率の向上と女性の地位向上が、出生率を下げるとしているが、これは発展途上国の場合だね。 もともと識字率が圧倒的に高く、教育水準の高い日本の場合には識字率と出生率の相関は当てはらまない。A氏:勝間和代氏は3女の母親だというし、厚労省の局長だった村木厚子氏も2女の母親だね。私:世界は出生率が異常に高い国と、自然な出生率へと戻っていく社会が共存している。 著者は、出世率の低下は問題にしていない。 人口が減少していく社会の未来は必ずしも暗いだけでなく、むしろ人口適正社会ともいうべき状態を作り出し、人口増加社会が持っていた多くの問題を解決すると著者は言う。A氏:しかし、少子化対策として政府は出世率をあげようと懸命だね。私:出産率を上げるというのは、解決にならないことは「デフレの正体」でも指摘していたね。 率で考えるのはおかしいね。 出産率をあげても母親世代が減少しているのだから、子どもの絶対数は増えない。 分母が減っているのに、率を上げても子どもの絶対数は増えない。 少子化に変わりはない。 人口減少は、経済成長を鈍化させる原因でなく、経済成長の結果だ。 人口を増加させ、経済成長を持続する夢をみるのでなく、人口減少社会を設計すべきだという。A氏:人間で言うと、アンチエージングは問題だね。 いつまでも若い時代を捨てきれない。 しかし、肉体は確実に老いていく。 若い時代への復帰は幻想で終わる。私:人口減少社会は、人間で言えば、老いに入ったということだね。 老人なりの生き方があるのではないかね。 こないだテレビで健康食品のコマーシャルをやっていたが、ある必要な栄養を取るのに、1日に魚10匹を食べないといけない。 それは無理だ。 ところが、その宣伝している健康食品では、1日何粒か飲めばいいという。 一歩、退いて考えると何か論理がおかしいね。 高齢者社会の商業主義はそこまできている。 俺はサプルメントや健康食品はやめることにしたよ。 何か、老体に無理を強いるような気がしたし、幻想に溺れることを意識したからだね。 この本を読んで、俺なりに個人的に実践したことはサプルメントや健康食品からの脱出だね。 本の山からは既に脱出しているが。 俺なりの経済成長神話からの脱却だね。
2010.11.10
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経済成長という病私:図書館で待ちなしで借りた。 読んでいくうちに、繰り返し、同じことが書かれている。 「あとがき」でわかったのは、この本は書き下ろしでなく、いろいろな雑誌に投稿したものをまとめたものだという説明で理解できた。 それから、「贈り物」という言葉が登場したり、不祥事が起きるとマスコミがすぐに一方的な犯人探しをしたりして、知的な視野に欠けているという指摘は内田樹氏の書いたものと似ている。 そしたら、著者は内田氏の小学校同級生で、共著もあるというのでナルホドと理解できた。 もっとも平川氏のほうの文体は読みやすいように感じた。 それは、「あとがき」でこの本にまとめるのに、大幅に修正したということでもわかる。 氏のブログからの引用もあるが、理解のために、言い回しや漢字など一部を修正して掲載したという。A氏:ブログだと一般の読者には分かりにくい文体もあるだろうね。 それにしても、君がブログでとりあげた11月7日の朝日新聞の読書欄の「著者に会いたい」で著者の平川克美氏の記事を見たが、この「経済成長という病」という本にある経済成長否定論は、経済成長論者からは大分、問題にされたとあるね。私:経済成長の論理は、規制撤廃、自由競争、効率向上、テクノロジーの革新、株主への貢献などだね。 一方で格差の拡大、貧困層の発生という負の部分もある。 「年越し派遣村」問題をとりあげているが、企業を擁護するコンサルタントや評論家、そして一部の経営者が、派遣労働者は自らその職を選んだのであり、その働き方が不安定なのを承知していたはずだといい、自己責任論を持ち出す。 それに対して、労働者側からは自己責任論は、企業の責任の放棄であり、自己を正当化するための詭弁だという反論がなされた。 氏は、この場合の自己責任論はそれが正しいか間違っているかでなく「的外れ」であるということを指摘すべきだという。 派遣労働者の中には、選択の自由もない人もいるし、自ら選んだ人もいる。 人間だから、真面目に働く人もあれば、いい加減なやつもいる。A氏:こないだNHKテレビ討論であるトラックドライバーの人が「私が40年間、一生懸命に働いてきたが、、昼間からパチンコ屋にいる多くの若者を見ると、その人達のために私の税金を使いたくない」と言っていたね。 昨年の「年越し派遣村」では、派遣村に来た人々に何万円か現金を渡し、その後、金銭をもったまま行方をくらました人もいるね。私:氏は、それは当たり前のことではないかという。 労働力が商品と同じように必要なときだけ必要な分だけ手に入り、不要になったら返却できるシステムがあり、それが企業側に利益を生み出すなら、企業経営者はその誘惑には勝てない。 今のシステムを温存したままで、それ以上の倫理を企業に求めても、ムダだというわけだ。 同時に派遣社員に対して自己責任を求めるのもお門違いだというわけだ。A氏:経済成長優先のシステムの中では、それは当たり前の現象だということか。私:そのシステムの問題まで追求しないと、この議論は意味が無いね。 話は違うが、この本で扱っていた北九州の病院で看護師が入院患者の高齢者4人の爪を剥がすという事件があったね。A氏:マスコミは、この看護師が老人を虐待しているとしてとりあげていたね。私:当時、テレ朝の報道番組「ザ・スクープ」でこの「爪はがし」は高齢者に多い「肥厚爪」の治療の一環であったと報じていたという。 俺はこれについて納得がいったね。 実は、俺は若い時に無茶な登山をしたせいか、足の両方の親指が「肥厚性爪」なんだ。 水虫の症状に似ているんだが、医者に行っても菌が発見されない。 治療は、大きくなると自分で大きな爪切りで、剥がすようにざっくり切るんだね。 死んでいる爪だからあまり痛くはない。 しかし、孫はこれを見ていると怖がるね。 しかし、俺にとっては治療行為だね。A氏:マスコミの報道は、知性がなくすぐ一方的な犯人探しだね。私:冷静な目で視野を広く持って判断することが必要だね。 明日は、人口問題と経済成長の関係にふれよう。
2010.11.09
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A氏:先々週から毎月曜続いた「環境側面」の「特定」と、「環境目的・目標」の「決定(設定)」の違いは勉強になったね。「設計で電力を使う」は、設計活動にある客観的な事実を定めることだから「特定」。 「設計課で昼休みに消灯する」のは人の主観的な判断が入るから「決定(設定)」だね。 設計課の「省エネ」には、「昼休みに消灯する」以外に、「パソコンの未使用時の自動電源停止」、「パソコン画面の液晶化」など、いろいろ案がある。 それらから人が評価して「昼休みに消灯する」に決めたんだからね。 人の主観的な意思が介在するね。私:「特定」と「決定」の重要な違いの認識は品質のISO9001にもあるんだよ。 何か不良品で顧客からクレームがあったとする。 修理とか、良品との交換とか、当座の処理はするが、ISO9001ではさらに未来に向けて「再発防止」を要求している。 これをISO9001では「是正処置」と言っている。A氏:「是正」というからには「是正処置」は「修正」とか「修理」することかね。私:全く違うね。 「修正」とか「修理」は、トラブルの事後処理だね。 「是正」だけならそういう解釈もできる。 しかし、これに「処置」がついて「是正処置」となると、意味が百八十度違う。 「是正」の「処置」ではない。 再発予防行為だから、未来に向けての「改善」のことだね。 今後の対策のことだね。A氏「是正措置(そち)」とも違うんだね。 これも起きたトラブルの事後処理のことで未来に向けての「改善」を意味しないね。私:「改善」活動に事後処理の「是正」という用語を使ったので、混乱しやすいね。 これは日本語訳だけの問題でなく、もとの英語でも「是正処置」をcorrective action というために、「修理・修正」を意味するcorrectionと混同しやすい。 だから、用語規格に両者は異なるという注記があるくらいだね。 ところで「改善」は、今までの仕事の方法を変更して、良いものにして、2度と同じトラブルを起こさないようにすることだね。A氏:それと「特定」と「決定(設定)」はどうからむの。私:トラブルの再発予防を考えるには、起きたトラブルの「原因」を正確に客観的につかまないといけない。 この原因を捉えることをISO9001では「原因」の「特定」という。 そして、その原因をつぶし、改善となる方法をきめる。 これを「是正処置」の「決定」という。A氏:「原因」を「特定」し、「是正処置」を「決定」するというステップだね。 自社の業務の「環境側面」や「危険源」を「特定」し、その環境影響や危険を軽減する「環境目的・目標」や「労働安全衛生目標」を「決定」するのと同じ順序だね。私:ISO9001をとっても、会社の品質が向上しないという場合、大抵、この「是正処置」をしても再発や再々発していることが多くい。 それは最初のトラブルの「原因」の「特定」が不十分なことがあげられる。A氏:「原因」の「特定」が正確でなく、客観性に乏しいということかね。私:まず、5W2Hと言って、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、何故(Why)、どのように(How to)、どのくらい(How much)というようにもれなく起きた現象を「特定」して把握する。 それだけでない。 Whyについてはさらに、5Wというのがある。 カイゼンで有名なトヨタ生産方式では、「原因」では「特定」が甘いとしてと「真因」という。 「真因」まで「特定」してそれをつぶさないと再発するというわけだ。 「真因」を「特定」するテクニックとして、「何故Why」を次の例のように5回連鎖して追求して問うので、5Wと言っている。 機械が急に停止した→何故か(1W)・ヒューズがとんだからだ→何故とんだ(2W)・渦電流がながれたからだ→何故、渦電流が流れたのか(3W)→潤滑ポンプの汲み上げが不十分だからだ→何故、不十分なのか(4W)→ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ→何故、摩耗したのか(5W)→濾過器がついていないので、切粉が詰まったからだ 対策(是正処置)はヒューズを換えることでなく、濾過器の設置だね。A氏:言い換えれば効果的な「是正処置」のためには「原因」でなく「真因」を「特定」するということか。私:ところでこの重要な5Wにもとんでもない誤用がある。 来週はその例についてふれよう。
2010.11.08
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私:今日の朝日新聞は日曜版なので読書欄がある。 いろいろな本の書評があるが、読みたいと興味が沸いて、図書館に新規にインターネットで追加したのは、下記の6冊となった。 1.「抱影」北方謙三 予約待ち125 書評の見出しには「目がくらむほどのハードボイル」とある。 評者は、文体はよけいな説明をせず、ときには読者をまどわせるほど、簡潔を極める。 それと反比例して、描かれる世界は目がくらむほど、豊かに広がるとあった。A氏:村上春樹もハードボイルのチャンドラーの愛読者でありながら、文体はややこしいのと大違いだね。 2.「二人静」盛田隆二著 予約待ち57 本の帯に「リアリズムの名手」とあるが、小説には現代日本社会が抱える、不幸と言い換えてもよいかもしれない問題がこれでもかというほど詰まっていると書評で言っている。 主人公は会社勤務で認知症が進む父を一人で介護。 介護ホームで父の世話をしているヘルパーの女性は、情緒障害の娘を育てている。 離婚した前の夫のストーカー行為に悩まされている。 主人公はこのヘルパーに恋している。 介護制度の不備、貧困、学校のいじめ、介護施設で働く人の待遇問題などが克明に描かれているという。 認知症の進んだ人たちの汚物処理の場面は、目を背けたくなるようなリアリティだと書評は言う。 3.「電子書籍の時代は本当に来るのか」歌田明弘著 予約待ち5 図書館の要旨には次のようにある。 「不透明な先行きに冷静かつ確かな展望をもつために不可欠のポイントを、グーグル、アップル、アマゾンらの最新動向と、それに対峙する日本の出版社・新聞社の試みを丹念に取材・分析することで、浮き彫りにする」 4.「減速して生きる」高坂勝著 予約待ち7 大量生産・大量消費の中で会社の原理にしがみついていた主人公が、みずから原理を転換して、小さなオーガニック・バーを開き、なんとか自分なりの生活を築く話しだという。A氏:「右肩下がりの時代」を先取りしたような生き方だね。 君のブログではすでに成長神話の崩壊、「日本一早い平成史・1989~2009」、「下り坂社会を生きる」、「デフレの正体」と街道が進んでいる「右肩下がり」の知的街道シリーズの1つとなるね。 5.「銃・病原菌・鉄」上巻 ジャレド・ダイヤモンド著 予約待ち114 書評の見出しは「歴史の流れと今を再認識する旅」とある。 図書館の要旨は下記の通り。 「なぜ人間は五つの大陸で異なる発展をとげたのか?人類史の壮大なミステり― に挑んだ話題の書!ピュリッツァー賞、コスモス国際賞受賞」 6.銃・病原菌・鉄」下巻 予約待ち20A氏:下巻の方が、予約待ち数が多いはずなのに、激減しているね。 なぜだろう?私:上下ものはいつもそうだね。 おそらく、ある程度、時間をおいて下巻を頼まないと、下巻が先に来る恐れがあるからかもね。 しかし、この本は推理小説ではないし、過去の歴史物なので、別に俺は逆の順序でいいと思って下巻も同時に予約したよ。 おそらく下巻から先に順番がくるだろうね。
2010.11.07
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私:今日で図書館で貸出し待ちが下のように10冊になったよ。 「次待ち数」というのは、俺が読んだ後に待っている人の数だよ。 「残夢整理」などは、俺が読み終わっても、まだ、40人の人が待っている。 1.「天国は水割りの味がする・東京スナック魅酒乱」予約4/25 待ち数1 次待ち数15 2.「学歴の耐えられない軽さ・やばくないか、その大学、その会社、その常識」予約6/12 待ち数20 次待ち数12 3.「残夢整理・昭和の青春」予約8/8 待ち数8 次待ち数40 4.「特捜神話の終焉」予約8/25 待ち数12 次待ち数26 5.「若者よ、マルクスを読もう・20歳代の模索と情熱」予約9/19 待ち数19 次待ち数4 6.「灘校・なぜ『日本一』であり続けるのか」予約9/19 待ち数12 次待ち数2 7.「2020年、日本が破綻する日」予約10/10 待ち数2 次待ち数15 8.「ネット・バカ・インターネットがわたしたちの脳にしていること 」予約10/15 待ち数49 次待ち数6 9.「移行期的混乱・経済成長神話の終わり」予約10/31 待ち数14 次待ち数18 10.「経済成長という病・退化に生きる、我ら」予約10/31 待ち数0 次待ち数4A氏:「天国は水割りの味がする」は、もう、半年ほど待っているが、そろそろ順番が来るね。 しかも、君の後にまだ、15人の人が待っているとはね。私:「経済成長という病」は、今日、借りた。 この本を読む動機は、「移行的混乱」の著者平川克美氏のインタビューが、10月31日の朝日新聞書評の「著者に会いたい」欄の載ったのを読んだからだ。 平川氏は、「人口減少という日本の歴史上、初の事態を直視したら、経済成長すべしとは言えない」としている。 そして「成長戦略がないことが問題ではない。 成長しなくてもやっていけるための戦略がないことが問題なのだ」という。 そこで図書館にインターネットで予約したら、すでに待ち数は14。 これだとかなり待つようになる。 同じ著者の昨年刊行の「経済成長という病」をキャッチした。 予約はゼロだったが、俺が予約してから「次待ち数」が発生したということは、俺と同じ発想で本を探している人たちがかなりいることが推理できるね、A氏:日本の現代が2000年頃から「右肩下がり」の時代に移行しつつあるという知的街道だね。 このブログでもすでに成長神話の崩壊、 「日本一早い平成史・1989~2009」、「下り坂社会を生きる」、「デフレの正体」と街道が進んでいるね。私:「デフレの正体」の藻谷浩介氏の「人口オーナス」論に対して、同じく日本の人口減少を問題にしている平川克美氏は日本の未来をどのように論じるだろうかね。 楽しみだね。 テーマは実に深刻なんだがね。 「移行的混乱」の図書館の要旨は、次のようだ。 「人口が減少し、超高齢化が進み、経済活動が停滞する社会で、未来に向けてど のようなビジョンが語れるか? 『経済成長という病』で大きな反響を呼んだ著者が網野善彦、吉本隆明、小関智弘、 エマニュエル・トッドらを援用しつつ説く、歴史の転換点を生き抜く知見」 「著者に会いたい」のインタビューで、平川氏は、次のように最後に言っている。 「いずれは人口減少が事態を変え、多くの問題が片づくでしょう。 物事を上手に先送りすることも、大切な解決策の一つなのですよ」
2010.11.06
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ホワイトハウス・フェロー 私:日本は鳩山前首相に典型的に露出したように政治リーダー不在と言われ、その養成制度すらない。 「習近平の正体」を読んでも、中国の政治リーダーはきちんと養成されているようだ。 アメリカではどうかという興味から、この「ホワイトハウス・フェロー」を図書館から2ヵ月半くらい待って借りた。 「ホワイトハウス・フェロー制度」は1964年、当時のアメリカ大統領のリンドン・ジョンソンが未来のリーダーを育てる目的で設立した研修プログラムである。 アメリカの優秀な若者ホワイトハウスに招へいし、1年間フルタイムで行政の最前線で実際に働かせる。 その参加者の職業は軍人や研究者から、コンサルタントまで多種多様。 コリン・パウエル元国務長官もこのプログラムの卒業生だ。A氏:この制度ができてからすでに50年近く立っているが、成果はあるのかね。私:ニクソン大統領は「フェローたちを迎え入れることにより、むしろ私たちの視野が広がった」と評価している。 この制度が始まって5人目の大統領であるレーガン大統領は「この制度は未来のリーダーを育てる手立てとして、行政政府に新鮮な人材を送り込む供給源として、アメリカ社会がどういう業績を奨励し、評価するかを示すシンボルとして機能してきた」と高く評価しているという。 制度設立30周年式典で、クリントン大統領は「党派がいがみ合うこのワシントンで、完全に党派の枠を超えて運営されてきた数少ない制度である。 素晴らしい成功を収めてきた。 いま、この制度の精神をワクチンの形に変えることができるのであれば、いまワシントンで働いているすべての人々にそれを注射したい」と言ったという。A氏:どうやって、毎年選抜されるのかね。私:まず、書類選考で、提出書類は「管理データ」、「資格・資質の説明」、3人以上の「推薦状」の3種類で膨大な量だから文書作成能力が要求される。 推薦状は「大物」の推薦状よりも、よく本人を知っている人の推薦状が効果的。 毎年2月1日が提出期限。 この段階では1000人くらいの応募者があるという。A氏:次は提出された書類の選考だね。私:ホワイトハウス・フェロー事務局で書類の不備がないかチェックされてから、さらに、3人以上のホワイトハウス・フェロー経験者によって書類審査される。 この段階で120人ほどに絞り込まれる。A氏:ホワイトハウスで働くのだから、高度の国家機密にもふれるだろうね。 「身体検査」は行なわれるのかね。私:FBIが行う。 次の段階は、3月から4月にかけて、アメリカ各地の10の都市で面接審査だ。 公平のため、面接官は当日まで明かされないで、面接審査は1日半かける。 人物評価中心だね。 こうして全国で30人ほどの最終候補者が4月に発表される。 最終候補者は、「セレクション・ウイークエンド」という選考会で、ホワイトハウス・フェロー委員会のメンバーによる面接を2日半にわたり受ける。 休憩時間や食事の時間の会話やグループディスカッションの様子も常に監視され、評価の対象となる。 明晰な文書作成能力、協調性、自己中心的な考え方の抑制などがチェックされる。 最後に委員たちによる選考会議で、最初の8~9人はあっさりきまるが、後はいろいろ意見が分かれるという。 最終的に11~19人程度になる。A氏:アメリカのことだから、人種、性別、思想、宗教などの差別はないだろうね。私:もちろんだね。 採用決定後、7月に「配属先決定週間」があり、それぞれ望みの部署の面接を受ける。 そして、決まれば仕事を始めることになる。 中には大統領に接する仕事や、外国の要人がからむ仕事もある。 1年間の任期中、75回程度、大統領を含め、政府高官が出席するセミナーに参加する。 こうして、多様な業界の次期リーダー層が形成されていく。 羨ましい制度だね。 こうして、養成された若者はもう1000人くらいになると思うが、各業界のリーダーとなっていった姿を、この本は具体的な事例で紹介している。
2010.11.05
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スターリンの対日情報工作私:「カチンの森」「モスクワ攻防戦」とスターリン知的街道ができてしまったね。 この本は、図書館からあまり待たないで借りた。 KGBのクリヴィッキーのことから始まる。 クリヴィッキーは1935年に、日独防共協定の交渉進行中、暗号解読書の入手に成功する。 この協定の秘密付属協定まで、スターリンには筒抜けであったという。 クリヴィッキーはスターリン支配の暗黒を知り、身の危険を感じ、フランスに亡命してアメリカに渡り、暗黒政治の実態を回顧録で暴露するが、1941年2月10日にワシントンの安ホテルの一室で謎の自殺をとげる。A氏:日本の暗号はよく解読されるね。私:「モスクワ攻防戦」でふれていたように、独ソ戦で当時のスターリンは、日本が背後から参戦して来るのかの情報が重要だった。 この本ではスターリンが日本からの秘密情報パイプとして、「ゾルゲ」、「日本の機密暗号の解読」、「コード名『エコノミスト』という日本人スパイ」という主に3つのルートがあったことを示しているね。 ゾルゲは駐日ドイツ大使館によく出はいりして、極秘情報を得ていて、1941年の5月には6月20日かその2、3日後にドイツ侵攻があると警告を本土にしていた。 これはスターリンに無視された。A氏:事実、ドイツ軍はまさに6月22日にソ連侵攻を開始しているね それから「モスクワ攻防戦」の本ではゾルゲの「年内に日本軍がソ連を攻撃することはない」という情報でスターリンが東方の軍隊をモスクワ方面に移動するとしているね。私:1941年当時は、ドイツは日本にソ連を後方から攻撃させ、ソ連をサンドウイッチ状態にしたかったが、日本の指導層は南進論、北進論で分裂していた。 ゾルゲは、南進論優勢をスターリンに伝えるが、10月18日に逮捕され、このパイプは切れる。 しかし、この本では、ゾルゲの情報よりも、影響力が大きかったのは、日本の暗号解読であったとあるね。 日本が在外公館宛に発信する機密暗号電報はソ連に解読されていた。 KGBの記録担当のヴァシリー・ミトローヒンがこれらの記録を複写し「ミトローヒン文書」として、ソ連共産体制崩壊後の1992年にイギリスに持ち出す。 この文書によると、日本の暗号解読者はセルゲイ・トルストイという人物であったという。 トルストイの解読した機密電報により日本はソ連を攻撃しないことが明らかになる。A氏:それにより、極東ソ連軍の兵士、戦車、飛行機が対独戦のために、大移動したわけだね。私:2005年にKGBの前身であるNKVDの極秘文書に、1941年頃、日本人スパイからの文書があるというのがわかる。 日本人のコード名は「エコノミスト」だという。 1941年9月6日の南進策を決める「御前会議」の内容なども流れている。 西木正昭氏の小説をとりあげ、情報局総裁天羽英二氏と当時の外務省欧亜局長坂本氏であるとしているという。 しかし、この本の著者の三宅氏は、1954年のラストボロフ事件で逮捕された元北樺太石油労務係長で、当時外務省に勤務している高毛礼茂氏ではないかとしている。A氏:証拠はあるのかね?私:証拠はなく、推定としているね。 スパイというのは、決定的な証拠を残さないから、スパイなのだろうね。A氏:とにかく、日本人の情報管理が無防備に近いのは、伝統的だね。 ロシアの大統領が北方領土まで来たのも、尖閣諸島問題での民主党の外交の弱腰を見ての行動だと有名なソ連評論家が言っていたが、何か裏があるのかね。私:なお、スパイ・ゾルゲは赤軍第4本部の指令によるスパイであったが、日本の検察は、治安維持法違反とするためにコミンテルンのスパイとして扱い、意図的に赤軍との関係を隠したという。 これには、戦時中の日本政府がソ連に対する政治的配慮から故意に行ったという解釈もあるという。 最近の尖閣諸島での船長釈放と似ているね。
2010.11.04
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モスクワ攻防戦私:モスクワ攻防戦に日本が関係するのは、スパイ・ゾルゲを通じてだね。 スターリンは、ドイツの侵攻で追い込まれているときに、背後から、ドイツに呼応して日本が参戦してくるかと心配だった。 もし、日本が攻めて来ないなら、日本の攻勢に備えて置いてある、極東地方の兵士をモスクワ防衛に送り込むことができる。 1941年の8月頃、ゾルゲは「少なくとも、日本は今年中にはソ連に対して戦争はしない」という情報を流す。 ゾルゲ情報をあまり重視していなかったスターリンはようやく9月に信用するようになる。 これにより、シベリア人と呼ばれる極東地域の兵士たちは、10月からモスクワに向かって合計約40万人の兵士が、1941年末から1942年初頭にかけて移送された 防寒具をしっかり着込んだ新たな兵士の到着は、モスクワ防衛軍の状況に劇的な変化をもたらし、モスクワ近くまで進攻していたドイツ軍に衝撃を与える。A氏:ロシアの冬の戦いというのは、近代戦でもそんなにひどいのかね。私:摂氏マイナス20度、30度の世界だからね。 まず、近代戦と言っても馬が重要な役割をする。 ドイツ軍は60万頭の馬を投入する。 ドロ沼にはまった装甲車や戦車も、引っ張り出すときは馬だね。 その馬も冬に強い馬が必要だが、ドイツ軍の馬はそれに適していないので、厳冬になると野外にいるので、人より先に凍死する。 ドイツ軍は冬服の不足などによって、多くの凍死傷者を出す。 冬服の輸送なども、ロシアの鉄道が広軌だし、弾薬輸送が優先され遅れていた。 戦車も厳冬に対する仕様になっていないので、不凍液の不足などによって、その機動力や戦闘能力が著しく低下した。 機関銃の潤滑油も凍るほどの厳寒だね。A氏:ところで、君のブログのジョン・ダワー著「容赦なき戦争」によると、ドイツのスラブ民族への蔑視があり、それが市民の虐殺、捕虜の虐殺が多いことと関係しているというね。 これが、ドイツのヨーロッパ戦争でも西部戦線と、スラブ族などのソ連やその周辺国との東部戦線とは残虐性が違うのだね。 死者の多さは全く違う。 捕虜の扱いもドイツ軍は550万人のソ連人を捕虜としたが、350万人死亡しているとある。 死亡率63%。 これに対して西部戦線の英米人捕虜は約23万、死亡は1万人足らずの4%だとある。私:モスクワ攻防戦には両軍合わせて最高約700万人が投入された。 ソ連兵の捕虜の大半をドイツ軍は殺害した。 ソ連側の戦死者は189万6500人。 ドイツ側は61万5000人。 戦場となった広大なロシアの土地には長い間、戦死者の遺体が放置されていた。 スターリンは遺骨収集をしなかったという。 それに対して、ドイツは戦後、死体は葬ったという。 もっとも、認識票はドイツのものはしっかりしていたので、死体が誰かがわかったが、ソ連兵の認識票はカプセルで腐りやすく、また、縁起がよくないと捨てた兵士もあり、死体の識別は困難だったようだ。A氏:すごい数の戦死者だからね。私:戦後、大分たった今でも不発弾が発見されるという。 あの広大な大地で、4年間も殺し合いをしたわけだから、傷跡も大きいね。 日本も本土決戦をしていたら、どうなったかね。
2010.11.03
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モスクワ攻防戦私:原書の題名は「The Great Battle」で2007年の発行。 「ワシントン・ポスト」が2007年の最良の書として選んだという。 著者はいろいろな人の取材で具体的な史実を明らかにしているね。 約450頁の大著だから、翻訳にも3年ほどかかっているね。 図書館の予約待ち3ヶ月で借りたよ。A氏:独ソ戦では、レニングラード戦とかスターリングラード戦がよくとりあげられるが、モスクワ戦は、あまり有名ではないようだね。私:レニングラードはドイツ軍に包囲されたし、スターリングラードは市街戦となったが、モスクワ攻防戦では市街自体は戦場になっていない。 ドイツ軍の先頭が1941年10月中旬頃、モスクワに後40kmぐらいまで迫った。 東京、横浜間の距離だね。 独ソ戦開始が6月22日だから、ドイツ軍の侵攻はかなり速いね。 しかし、10月中旬というと、モスクワはもう冬で雪が降りだす。 特にこの年は早かったらしい。 冬に無防備に近い状態だったドイツ軍の進撃はそこまでとなった。 12月6日にソ連軍は総反撃に出て、ドイツ軍はジリジリと後退を続ける。 言わば、モスクワ攻防戦は、独ソ戦の勝敗を分けた分水嶺の戦いだね。 それが、この本の中心のテーマだね。A氏:ソ連軍の反撃は日本の真珠湾攻撃が2日後の12月8日だからきわどいところだね。 それにしても、ヒトラーは、ナポレオンがロシアに進行したとき、冬将軍にやられたという歴史の教訓を学ばなかったのかね。私:この本を読むと、ヒトラーは電撃作戦に自信があったようで、冬が来るまでにはモスクワ占領を想定していたようだ。 事実、最初の進撃はすごいスピードだった。 一時、ソ連は、東方のクイブィシェフに首都機能を移転しだす。 ドイツの速攻を許したのは、一つには、スターリンは独ソ中立条約があるので、そんなに急にドイツが攻めて来ないだろうと、油断していたことにあるという。 それにこの東西の専制君主に共通しているのは、幹部の言うことを冷静に吸収できなかったことだね。 ヒトラーは、せっかくモスクワまで近づいたのに、将軍たちの進言を無視して、迂回する。 もっと、ストレートにモスクワに攻め込んでいるか、ソ連侵攻開始を1ヶ月くらい早めにしていたら、冬将軍が来るまでにモスクワを制覇しただろうという。 一方、スターリンも同様で、早くから、ドイツ軍が侵攻してくるという情報を得ながら、最後までそれらの情報を無視する。 そして、無防備状態のところを突かれ、大きな損害をだしながら後退する。A氏:個人独裁の弱点だね。私:ドイツ軍がソ連侵攻を始めた頃、ソ連のT34戦車と遭遇するが、その性能は極めて高く、ドイツ側の対戦車砲では歯が立たなかったという。 だから、ソ連の軍需生産はヒトラーの評価以上にかなり進んでいたようだね。 しかし、この本を読むと、ソ連軍も鉄砲、機関銃、大砲などの基本的な兵器は不十分だったようで、人海戦術でドイツ軍と戦うようになるね。 独ソ戦で、およそ2700万人のソ連国民が犠牲になったが、そのうち、860万人がソ連兵の戦死者だったという。 日本軍のの200万人の比ではないし、それに日本軍の多くは餓死者だ。 ヒトラーが撤退中だった戦争の後半でも東部戦線での戦死者数は、ソ連の方がドイツをはるかに上回り、平均3倍に達したという。A氏:すごい人海戦術だね。 陸上の「特攻隊」だね。私:驚くのは、ソ連の兵隊の後ろに別の「後退阻止隊」がいて、逃亡したり、命令に反して後退したりすると、射殺されたことだね。 それと日本軍顔負けの「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」の戦陣訓と同じ指令が徹底していて、捕虜になって、釈放されてソ連軍に戻っても、徹底的な尋問と場合によっては銃殺刑が待っていたという。A氏:だから、兵士は死を覚悟で特攻隊のように前進するしかなかったということか。私:興味があるのは、ソ連の名将、アンドレイ・ヴラーソフだね。 ドイツ軍に捕まるが、寝返り、スターリン政権の打倒、ドイツとの名誉ある和平、粛清の停止、政治犯の開放などを掲げて「ロシア解放軍」を編成。 しかし、1945年にはチェコ人のために逆にドイツに銃口を向ける。 最後にはソ連軍に逮捕され、拷問の末、絞首刑となったという。 ところで、著者は日本語版のはじめに、このモスクワ攻防戦は、日本から遥かに離れた戦いであるようにみられるが、実は日本と深い関係があるとしているね。 明日は、それにふれよう。
2010.11.02
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私:先週の月曜日の「有益な環境側面」のブログを読んだ知人のK氏から個人的にメールをもらった。 K氏の会社はISO9001をとっており、K氏はその管理責任者だ。 環境のISO14001はとっていないが、俺のブログを読んで興味が湧いたらしい。 以下、そのメール。 「ISO 14001における「環境側面」が、OHSAS 18001における「危険源」に、規格の構造上対応していると思います。 これから考えたら、「安全源(?)」などというものが存在するはずが無い、という事になりましょうか? OHSASも、「本業」をやるうえで、副次的に出てくる労働災害をいかに低減するかを目的としたマネジメントシステムです。 例えば、鳶職が「本業」で高所作業をするのは、「高所」という「危険源」に体を暴露しています。 これを「工程改善」で、いかに高所作業を減少するかは、仕事の改善の問題で、即ち、「労動安全衛生目標」で扱うべき事でしょう。 「有益な環境側面」とは、随分無茶な議論が横行していたものだ、と、いささか驚きました。」 このOHSAS 18001というのはOHSAS はオーサスと読む。 Occupational health and safety management systemsの略で、労働安全マネジメントシステムと訳していて、まだ、ISOになっていないが、ISOと同じように、国際規格であり、審査機関で審査して、合格証が発行される。 すでに日本では多くの企業が取得している。A氏:「危険源」というのは?私:企業活動をすると、副次的に働く人は、仕事で怪我をしたり、極端な場合、死亡したりすることもあるし、職業病になることもある。 肉体だけでなく、最近は「うつ病」も問題になっている。 すなわち、副次的に「負傷、疾病などの危害」を働く人に与える。 そのもとになる企業での活動を「危険源」と言うんだね。 「本業」の企業活動の「環境側面」が「自動的」に環境に影響を与えているように、「本業」の「危険源」は「自動的」にその企業で働く人に「負傷、疾病などの危害」を与えるという構造だね。 「環境側面」と「危険源」は「本業」との関係で似た位置にあるね。A氏:工場の中で、健康に良くない有害ガスなど出しているときは、「環境側面」なのか、「危険源」なのか、どちらだね?私:そこが重要な点だね。 環境マネジメントシステムの関心は、工場外に対する環境影響だね。 労動安全衛生マネジメントシステムの関心は、工場内の人の安全衛生だね。 だから、職場内の有害ガスは労働安全衛生マネジメントシステムの問題だね。 企業内の問題に限定されるから、Kさんのいうよう「自動的な安全源」はない。 しかし、その有害ガスが、同時に工場の外に放出されていると、工場外の人の環境影響になるから環境マネジメントシステムの問題だね。A氏:内と外の違いだね。 それにしても、「環境側面」にせよ、「危険源」にせよ、これをきちんとリストアップするのは大変だろうね。私:だから、効果的な環境マネジメントシステムは、「自社のありのままの『環境側面』」をもれなく調査することから始まる。 同様に効果的な労働安全衛生マネジメントシステムは、「自社のありのままの『危険源』」をもれなく調査することから始まる。 これらを規格では「特定する」と言っている。 これに対して、「環境側面」の環境影響を軽減する活動を計画すること、すなわち、「環境目的・目標」を計画することを「決定する」と言って使い分けている。 K氏があげた例の鳶職の「高所作業を減らす」というのは「労働安全衛生目標」で「決定(設定)する」ことになる。A氏:「特定する」と「決定(設定)する」の使い分けがポイントだね。 そうすると先週の月曜の例で「省エネ」が「決定(設定)する」になるときは「有益な環境側面」でなく、「環境目的・目標」の課題ということになるね。 何故なら、ありのままの実態として「特定されない」からだ。私:名答だね。 「特定する」は客観的な事実をそのまま明確にすることだが、「決定(設定)する」は人の主観的な意図が介在するね。
2010.11.01
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カチンの森私:2010年4月10日、ポーランド政府専用機がスモレンスクの空港付近の森林地帯に墜落して大統領夫妻及び多数のポーランド政府高官が死亡する惨事が起きた。 大統領は、ポーランド主催によるカチンのポーランド人の集団虐殺墓地の追悼式典に参加の予定だった。 式典は中止された。A氏:追悼式典とはカチンの森事件による虐殺事件の犠牲者の追悼だね。私:カチンの森に関する本は、欧米ではたくさん発行されているそうだが、日本語訳は、この本で2冊目で少ないという。 書評で知って、そこで興味をもって図書館から予約待ちで借りた。 この集団虐殺事件は1943年3月、ナチスドイツがソ連戦の最中、カチンで集団墓穴を発見したことでクローズアップする。 ナチスドイツはこの虐殺事件は反ソ宣伝の材料になるとして世界的にクローズアップする。 しかし、スターリンは、それはナチスドイツの仕業であるとして反論する。 これをスターリンのウソと知りながら連合国のイギリスのチャーチルや、アメリカのルーズベルトもソ連に同調する。 ソ連側が正式に非を認めたのは、ゴルバチョフになってからだから、50年ほどの間、真実は意図的にごまかされていたことになる。 この辺の経過の概要は、ウィキペディアの「カチンの森事件」にまとめて載っているね。 この本は、公開されたソ連当時の膨大な記録をもとに詳細な事実を述べている。 この本の原書の題名は「階級浄化--カチンの虐殺」とあるように、著者は、カチンの虐殺は、ナチの「民族大虐殺・ジェノサイド」「民族浄化」と違い、マルクス・レーニン主義を基本イデオロギーとした全体主義政権によって実行された、「ひとつの社会階級全体」の計画的・系統的抹殺であるとして「階級浄化」としているね。 ポーランドの指導階級(ブルジョア階級)の浄化だが、カチンの森の犠牲者は、大部分は陸軍将校で、他に知識人、大学教授、学校教師、実業家、地主、警察官、国境警備隊員、神父らがいた。A氏:スターリンもヒットラーも大義名分はそれぞれだが、そのために平気で虐殺をするというのは全く同じだね。私:スターリン主義は、「階級浄化」だけでなく、ナチスの「民族浄化」に近い民族集団の「強制移住」があり、「強制浄化」とも言われたという。 ソ連によるポーランド人の「強制移住」がそうだね。A氏:アメリカも太平洋戦争のとき、日系アメリカ人を「強制移住」させたね。私:この本では、ゴルバチョフですら公開しなかった、1939年に独ソで締結した独ソ不可侵条約の「秘密附属議定書」もとりあげている。A氏:日本は、1939年の3年前の1936年に「日独防共協定」を締結し、日独共通の敵はソ連であると固く信じてきたのにね。 日本政府はドイツの裏切りに衝撃を受け、「ヨーロッパ情勢は複雑怪奇」と言って、当時の平沼騏一郎内閣が総辞職するね。私:その独ソ不可侵条約の裏に「秘密付属議定書があったんだね。 ヒットラーとスターリンは、密かにポーランド分割を約束していたという文書だ。 事実、この条約後、ヒットラーはポーランドに侵攻、遅れてソ連も侵攻し、約束通り、ちゃっかり相互にポーランドを分割所有し、ポーランド国家は消滅した。 カチンの虐殺は、このときのポーランドに侵攻したソ連によるものだね。A氏:ポーランド侵攻は国際的なスターリンとヒットラーの共同詐欺だね。私:この秘密文書はエリツィン時代にようやく公開されたという。A氏:ヒットラーもいろいろやっているが、スターリンも同様だね。 しかし、ヒットラーは、2年後の1941年6月に独ソ不可侵条約を破り、ソ連に突如侵攻する。 第2次世界大戦が始まるね。私:2010年4月、ロシアのプーチン首相はポーランドのトゥスク首相と共にカチンの森があるスモレンスク郊外の慰霊碑に揃って跪く。 そして、事件を「正当化できない全体主義による残虐行為」とソ連の責任を認めた。 ただし、ロシア国民に罪をかぶせるのは間違っていると主張し、謝罪はしなかったという。 スターリンは1953年に亡くなっているが、プーチンは1952年に生まれ。 ロシア国民もスターリン時代は粛清の犠牲者は多かった。 それは一刻の悪夢だったのだろうか。 しかし、悪夢の犠牲者は、悪夢でなく現実としてなかなか忘れない。 これはどこも同じようだね。
2010.10.31
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A氏:昨日まで続いた君のブログの「60年安保」に全学連のブント幹部の西部邁氏が登場するが、たまたま、朝日新聞土曜版b誌の「逆風満帆」欄に西部氏のことが3回にわたり毎週載っていたね。 1回目は「自らを生け贄に供したい」と題して生い立ちから、60年6月3日の首相官邸突入で逮捕まで。 2回目は、「戦線逃亡と放浪の日々」と題して逮捕後、釈放され、故郷に帰り、貧困の中、戦線を離脱し、学者の道を志し、東大教授になるまで。 3回目は、「迎合しない言論をめざして」と題して、東大教授を自ら辞めて、評論家としての活動だね。 「朝まで生テレビ」でも論客として活躍するね。 そこでは生なので、うそはつかない、誤解を恐れない、繰り返しは避ける、そして一番気をつけたのは「迎合しない」というきめごとをして出演したという。私:1ヶ月くらい前のBSのフジテレビのプライムニュースで西部氏と浜矩子氏がゲスト出演していた。 俺は途中からで後半しかみなかったが、西部氏は、日本の未来には絶望しているようで、自分の余生中には破滅はないだろうが、孫を持つ人は、孫のために破滅の時期を少しでも遅らすように努力してもらいたいと言っていた。 西部氏には孫はないそうだがね。A氏:朝日新聞のこの3回連載には、そんな話は出てこなかったね。私:俺が、この3回連載で、興味をもったのは、CS放送の番組で、尖閣諸島問題を扱ったとき、出席していた自民党議員が「(現政府)には国家観がない」と発言したら、西部氏はすかさず「民主党はとりわけひどいが、自民党の時代にすでにその種はまかれている」と返したという。 この朝日新聞の3回の記事で、やはり、一番興味を持ったのは、全学連ブントの「60年安保」のときの西部氏の行動だね。 国会突入の2ヶ月も前から、「滅び」の予感を覚えていて、それが確信になったという。 しかし、臆病風に吹かれまい、冷笑主義には陥るまいとしてデモの先頭に立ったという。 西部氏が「左翼が嫌になった要因」のひとつに、「滅びるときは女にすがる」男たちを多数目撃したことをあげるという。 だから西部氏はある女性と別れるが、ダメというのにその女性はついてきたという。 それが現在の妻の満智子さんだという。A氏:極左の学生は、連合赤軍となり、72年に仲間同士のリンチ事件で悲惨な結果を露呈するね。私:西部氏はこの事件を聞いて「自分の人生で唯一といっていいような、身の置きどころのない不安を覚えた」という。 満智子夫人はそのとき、「11年前に『わけもなく殺したり殺されたりする強い予感がするので左翼をやめる』と貴方がしゃべっていた意味がわかった」と言ったという。 今の西部氏の原点はやはり「60年安保」のときの苦い体験だと思ったね。
2010.10.30
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六〇年安保 私:安保新条約は、強行採決の1ヶ月後の6月19日午前零時、参議院の議決を得ないまま自然承認となる。 全学連など安保阻止勢力のデモ隊が首相官邸や国会の回りを埋め、岸首相らは首相官邸にとじこめられていた。 このときの国会デモ参加者は、国民会議発表では33万人、警視庁調べでは13万人。 しかし、この群衆は自然承認の時刻が過ぎ、空が白くあけるとともに「潮がひけるように散っていった」という。 6月22日、総評と中立労連は、大規模なストを行う。 翌23日、外相公邸で批准書交換式が行なわれ、新安保条約は発効した。A氏:23日のちょうど、その頃、岸首相は緊急臨時閣議で、新安保成立を機に人心一新のため、総辞職の決意を表明するね。私:「60年安保」とはなんであったのか。 全学連のブントの一幹部として反対運動に参加した西部邁氏は、後年 「ざっくりいって、60年安保闘争は『馬鹿騒ぎの一種』であったと言われても、私は反論しない」 「そこでは戦後思潮のかかえてきた矛盾が赤裸に明示される『一種の観念劇』である」 と書いているという。A氏:君のブログの「輿論と世論」にあるが、改定以前の安保条約はひどい不平等条約だったんだね。 アメリカは、改定したくないので、しぶしぶ応じている。 だから「安保改定反対」は「不平等の維持に賛成」するという変な活動になるね。私:57年4月28日の朝日新聞の社説で笠信太郎は「安保条約は改定さるべきである」として、「不平等な旧条約をできるかぎり早く、あるいは漸進的に改正していくよう」にと主張していた。 これが「輿論」であるべきだが、「世論」にならなかったね。 この不平等の改正論は、いざ、日米交渉がはじまると当時の東西冷戦の国際環境のもとで、ソ連は平和的で、アメリカは帝国主義の好戦国家だというイメージに基づく反対運動が起こり、岸首相が目指した対米自主=日米「対等」が逆の対米「従属」というイメージになったという。A氏:イメージ闘争だったのかね。 当時は、テレビより新聞がマスメディアの中心だから、新聞をうまく使ったほうが勝ちになるね。私:岸首相側は、安保改定成立で勝利したが、「声なき声」発言でかえって「世論」の反発を拡大させ、アイゼンハワー訪日中止、自らの退陣などを余儀なくされた。 「新聞だけが世論でない」と発言してマスコミ関係者の離反を招いたね。A氏:岸首相は「スポーツ新聞しか読まない」と言っていたそうだね。 マスメディア利用が下手だったんだろうね。 ヒットラーではないが、マスメディアの利用は政治では重要だね。私:一方、全学連のほうは、一時的にメディアをうまく使ったと言える。 しかし、かれらの暴力的な闘争手段と革命志向に対しては、最後まで大衆の支持は得られず、メディアも支援しなくなった。A氏:メディアの危険性は、「日本一早い平成史・1989~2009」で森達也氏が指摘しているね。私:政治のイメージ闘争は、政治の「劇場化」につながる。 小泉純一郎首相の「小泉劇場」。 その後、安倍晋三氏を首相に押し上げた「安倍人気」。 そして、民主党の政権交代の風。 皆、イメージ化、劇場化だと言えるね。 西部邁氏のいう「馬鹿騒ぎの一種」か「一種の観念劇」だね。 「60年安保」はその最初のケースだというわけだ。 しかし、イメージは皆裏切られてきたね。 この本では、岸首相が野球を観戦する観客を「声なき声」の例としてあげているのを批判して、その人達が野球の観戦後、デモに合流したかもしれないという。 しかし、「劇場化」という視点からすると、それはデモを観戦しに行ったのではないかとも言えるね。 だから、安保改定自然承認となると試合終了だとして「潮がひけるように散っていった」のだろう。
2010.10.29
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六〇年安保 私:5月19日、自民党は新安保条約の強行採決を行う。 これで、後は自然承認を待つだけとなった。 しかし、強行採決の悪いイメージが、安保闘争の大きなターニングポイントになった。 独断的な政権だとして「安保反対」が「岸を倒せ」となった。 岸首相が東条内閣の大臣であったこともクローズアップされる。A氏:君のブログの「輿論と世論・日本的民意の系譜学」では、強行採決直後に行った朝日新聞の世論調査では、強行採決反対50%、岸内閣退陣を望むもの58%となる。 世論が強行採決で硬化し、「よくわからない安保改定」から「岸退陣」という、わかりやすいイメージに潮の流れがすり変わったね。私:安保改定の中身よりも岸首相の政治姿勢は議会制度の危機だとして、反対の動きが急速に一般化し、新聞もその方向に動く。 5月19日の新安保条約の強行採決の翌日、都立大学の竹内好教授が「岸政府と自民党の暴挙で日本の議会政治は全く破壊された」として辞任する。 9日後に東工大助教授の鶴見俊輔氏も同じ趣旨で辞任する。A氏:岸首相は、この強行採決の後の記者会見で、有名な「声なき声」発言をするね。 デモの「声ある声」でなく、多くの国民の「声なき声」に耳を傾けているという。私:安保改定とは関係なく、アイゼンハワー米大統領訪日の日程打ち合わせのため、ハガチー米大統領新聞係秘書1行が6月10日に来日した。 これを日本共産党の影響下にあった全学連反主流派の学生が、空港から米大使館までの沿道でデモを行った。 ハガチー氏の車は途中の弁天橋で全学連の学生に取り囲まれ、車は揺さぶられ、学生が車の上に飛び乗って窓ガラスを破ろうとするなど、大混乱に陥る。 車は1時間余り立ち往生し、ハガチー氏らは米軍のヘリコプターで脱出した。 過激な全学連主流派に対して、おとなしいはずの反主流派が過激なデモをしたことは意外であった。 これは「反岸」より「反米」の共産党の指導が背景にあったと思われる。A氏:ハガチー事件で、岸首相はアイゼンハワーの来日時の警備に不安を持つね。私:アイゼンハワー大統領は、14日にアラスカを発ち、夕方、マニラに到着。 ところが、ここで、日本で大問題が起きる。 15日午後、「安保反対」「国会即時解散」を要求して国会周辺に集まった全学連主流派約2万人は、棍棒をもった右翼とも乱闘し、警官は警棒をふるっておそいかかったという。 今までになく激突した。 学生約5千人が国会構内を占領し抗議集会を開く。 この乱闘で多くの負傷者をだすが、ついに女子学生の樺美智子さんが死亡する。A氏:これを受けて、岸首相は、マニラまで来たアイゼンハワーの訪日を延期するね。 後に岸氏はその回想録で、退陣したのは、6月15日の10万人の国会デモでの樺美智子さんの死亡が引き金になったと言う。私:主要新聞7社は、「暴力を排し、議会主義を守れ」という共同宣言を出す。 これは、新聞が強行採決のとき、「議会主義を守れ」と火をつけた責任はあいまいになったと批判も出た。A氏:新聞が全学連などの暴走を大きく報道したことが、安保改定への一般の関心を高め、反対運動の高揚を後押しする効果を持ったのは間違いないが、それが左右の暴力を誘発しかねなかったからね。私:新聞は全学連の暴力革命的な発想や、共産党や社会党の一部にあった反米思想に基づく動きに賛成したことはなかったがね。 「60年安保」が思想の闘争であるよりも、イメージの闘争であった証拠に、新安保条約の「自然承認」の決着で、当事者さえも意外なほど、「安保反対」の動きは急速に退潮していくね。 明日は、「60年安保」で何が終わり、何が始まったかにふれよう。
2010.10.28
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六〇年安保 私:59年11月27日に起きた国会「乱入」デモで、逮捕しようとした東大学生2名は東大に篭城してしまう。 この当時の学生運動は、約10年後の連合赤軍などと違い、武器を一切持たない素手であり、捜査当局も鷹揚で「学問の府」の自治を尊重していた。 東大の対応が遅れているうちに、一般学生から2学生の学外への退去を求める声が高まり、2人が12月10日のデモに参加するために学外に出たところを逮捕する。A氏:たしか、当時は、全学連の「乳臭さ」を笑う声が多かったようだね。 一方で、大学生の就職の好調さは「戦後最高」という時期だね。 まだ、約10年後の全共闘時代と違い大学生の数も少ない時期だ。私:そういえば、1960年とはいろいろな事件が世界的にもあった年だね。 この本でもふれているが、韓国では同じ60年に「韓国四月革命」があり、戦後続いた李承晩政権が大学生デモをきっかけとして崩壊するね。 これが、日本の学生運動に多少の影響を与えたかもね。 逆に、1959年11月に「北朝鮮帰還」が開始されているね。A氏:この頃は、韓国は反日で李承晩の専制政治で暗いイメージの国だというのに対して、北朝鮮は社会主義の理想郷のようなイメージだったね。 今と逆だね。私:ところが、5月にソ連領内でのアメリカ∪ー2機撃墜事件が起きる。 アメリカのパイロットがソ連に捕まったことで、これがスパイ機であることがバレてしまい、折角、米ソが「雪解け」ムードになりつつあったのが崩壊する。 これは米ソのデタントで日米安保不要論があったのに影響与えるね。A氏:国内的には、砂川判決と三池闘争(59年末から60年夏まで)があったね。 安保闘争と並行しているね。 三池闘争では、60年3月29日、ピケットラインに暴力団がナイフで襲いかかり、三池労組員が殺害され、労使紛争は硬化するね。 60年は右翼の活動が目立ち、ついに、10月には社会党委員長の浅沼稲次郎氏が右翼の少年山口二矢に刺殺される。私:安保にもどるが、60年1月26日、岸首相らの訪米を阻止しようとして、全学連などが空港ビルに入り、座り込みをする。 警官隊が排除するが、これに右翼がまた登場する。 学生77名の逮捕者を出す。 この中には樺美智子さんの姿もあった。 一方、安保反対の運動にも内部分裂が起こる。 1月24日に民社党が結成され、安保は反対だが、国民会議には不参加となる。A氏:君のブログの「輿論と世論・日本的民意の系譜学」では、60年1月の朝日新聞世論調査では、「改定はよいことだ」25%、「よくないことだ」25%、無回答46%だった。 3ヶ月後の読売新聞世論調査でも、賛成21%、反対28%、わからない・他51%。 国民は「わからない」が圧倒的に多い。私:国会で安保改定審議中の4月26日、国民会議の第15次統一行動が行なわれ、約6万5千人の安保阻止の請願が平穏に終わる。 しかし、独自の国会デモを計画した全学連主流派約6千3百人は、警官隊のバリケードを強行突破して国会に向かった。 警官隊と激しい乱闘となり双方に負傷者を出す。 全学連17名、大日本愛国党5名が逮捕された。A氏:全学連に対抗する右翼がいたんだね。私:この時点で、安保反対闘争は、国民会議の温和な請願行動と全学連の過激な行動に分裂する。 ここでいよいよ、5月19日が来る。 この日から「60年安保」の流れが大きく変わる。 これは明日、ふれよう。
2010.10.27
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六〇年安保私:1960年というと、われわれは、就職したばかりでまだ一兵卒として、職場で多忙だった頃だね。 それだけに、同一時代を生きた者として、知りたいと思い図書館で大分待って借りたよ。 この本は、当時の「朝日」「読売」「毎日」の3紙の記事を中心に60年安保の流れを340ページにわたり詳細に説明している。 ところで、60年安保のときの全学連の過激な活動の裏に日本共産党の動きがあるね。 日本共産党は、当時、コミンフォルムの指導下にあった。 1950年にコミンフォルムは、戦後の日本共産党の平和革命は幻想であると批判する。 同年6月に朝鮮戦争が勃発して、GHQが共産党幹部を追放する。 共産党は、武装闘争方針を推進する。 ところが、1955年7月の「六全協(日本共産党第六回全国協議会)」で温厚路線に方針が変わる。A氏:たしか、俺の記憶では、共産党がそれまでとってきた武装闘争方針は誤りがあったとして自己批判して路線転換を決めたんだね。 それまで、中央の方針に従って、全国で火炎ビンが乱れ飛ぶ騒擾事件を起こしてきた党員たちは、突然の中央の方針転換となったため、党の権威は音を立てて崩れたというね。 「歌声喫茶」に行って「カチューシャの歌」を歌った記憶にあるね。 共産党の学生運動の指導もそれまでの過激な活動から「歌ってマルクス、踊ってレーニン」というレクリエーション活動になったというね。私:「青春のエネルギーのはけ口」を失ったということである意味「60年安保」はここから始まったという。 ところで、全学連は安保闘争直前までは、幹部はすべて共産党員。 当初から、共産党中央とは全学連とは対立があり、学生党員の共産党からの離反が始まる。 57年に日本革命的共産主義同盟(革共同)と58年に共産主義同盟(ブント:ドイツ語のBUNDで同盟の意味)という2つの元党員による党派組織が結成され、これに参加した人々が「60年安保」時の全学連主流派の主な担い手となる。 その主張は、労働運動即階級闘争であり、学生運動だという。 その急進性のために日共から除名され、ますます、極左傾向を強める。 一方、安保反対闘争は、社会党、共産党、総評、原水協などの約90団体が集まった国民会議(安保改定阻止国民会議)によって行なわれた。 最初は、総評指導下の賃上げのスローガンに安保改定反対を付け加えたものだという。 大きなデモとして新聞で報じられたのが、59年6月25日の第3次統一行動で1万人の中央集会が日比谷公園野外音楽堂で開かれた。A氏:皮肉にも、同じ日に後楽園でプロ野球の「天覧試合」があり、満塁の観客の中で長島の決勝ホームランが出るね。 こっちの人数の方が多い。私:59年は、4月10日に「皇太子御成婚」があり、世間のムードは和らいだものがあり、日本は社会的には明るいムードが出ていたね。A氏:高度成長の始まる頃で俺達はまだ貧しかったが、給与は上昇機運だったね。私:安保反対運動の当事者以外の社会の広い層の人々に、安保反対闘争が初めて強く印象づけられたのは、59年11月27日に起きた国会「乱入」デモだという。 全学連を先頭に2万人と言われる請願デモ隊が安保阻止を叫んで国会になだれ込む。 警官隊ともみあって、重軽傷者を多数出すという騒ぎになる。 28日朝、警視庁公安1課は条例違反容疑で全学連を捜査し、3名を逮捕。 ところが、2名は東大に篭城してしまう。 「東大篭城事件」だね。 69年の安田講堂篭城事件とは全く違うがね。 これは明日ふれよう。
2010.10.26
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A氏:環境のISO(アイ・エス・オー)のことなんだがーーー。 「環境側面」というのがあるんだが、これがよく分からない。私:あぁ、ISO14001のことか。 「環境側面」とは、平たく言えば企業活動などで、環境に影響を与える活動だね。 環境への影響(環境影響)というのは「エネルギー消費」「土壌汚染」「大気汚染」「水質汚濁」「騒音」などだから、その原因である「電力使用」「産業廃棄物の発生」「排気ガスの放出」「汚水の発生」「騒音の発生」などが代表的な「環境側面」だね。 企業活動をすると、副次的に環境に影響する側面が存在するということだね。 環境以外に、副次的に発生するものに従業員の安全、健康もあるが、これは別だね。A氏:製造業なら、「本業」は顧客の要求に従って製品を作り、提供することだが、その際に、製品以外にいろいろなものが、好むと好まざるとにかかわらず副次的に「自動的」に発生する。 そのうち、「産廃物の発生」「汚水の発生」「騒音の発生」など、環境影響に関係するものが「環境側面」か。 普段あまり気にしていないが、「環境影響」の目で現場を歩けば、すぐ目につくね。 ところで、俺の知っているY社は環境のISOをとっているんだが、今、もめているのが、「有害な環境側面」と「有益な環境側面」の関係らしい。私:なるほど、環境のISOでよくモメる問題だね。 「環境側面」が良い環境影響を与える場合「有益な環境側面」、悪い環境影響を与える場合、「有害な環境側面」と言うんだね。 企業活動のほとんどの「環境側面」は「有害な環境側面」だね。 産業廃棄物が出るし、汚水は流れ出すし、騒音も発生する。A氏:Y社でもめていた例は、具体的に「電気の使用」という「有害な環境側面」には、セットになって「省エネの実施」という「有益な環境側面」があるという説だよ。 極論を言えば、100の「有害な環境側面」があれば、セットで「それを減少する」とした100の「有益な環境側面」があるということになる。私:それは、大間違い。 Y社の「本業」の活動には、「電気の使用」は不可欠だろう。 「電気の使用」が本命で、「省エネ」を本命で商売にしているわけではない。 環境影響を減少するのが企業の「本業」なら、「本業(仕事)をやめてしまえば一番いい」という本末転倒論に行き着くね。 顧客満足の「本業」をしながら、できるだけ「省エネ」をするのであって、「省エネ」は別に「環境目的・目標達成」という環境影響減少活動でやる。 そっちのテーマだよ。A氏:そうか、例えば「騒音の発生」は企業の「本業」の活動から「自動的に」出るものだが、「騒音の減少」は「本業」の活動から「自動的に」発生するものではなく、別に新しく追加して努力する活動だね。 「本業」に「自動的に」付随して発生するものかどうかの違いだね。 次元が違うものを一緒にしている。私:ある企業で、「設計課の電灯の昼休みの消灯(節電)」を設計課の「有益な環境側面」としていたが、これは間違い。 「昼休みの消灯」は設計業務の「本業」に不可欠な活動ではないね。 その証拠に、「昼休みの消灯をしなく」ても、立派に設計の「本業」はできる。 「設計課の電灯の昼休みの消灯」は「設計課の有益な環境側面」でなく、「設計課の節電という設計課の環境目的・目標」だね。 低騒音の設備提供を「本業」としている企業なら、設計の低騒音設計活動は「本業」だから騒音減という「有益な環境側面」を持つがね。 しかし、その設備を現場で作るとき、産廃物の発生など、「有害な環境側面」だけを持つ。A氏:そうか、「それをしなくても、『本業』は可能か」を問えば、間違った「有益な環境側面」の呪縛から脱することができるね。私:「電力使用」と「省エネ」が「環境側面」として裏腹でセットだという人は、「本業」と「環境側面」との「初歩的な関係の理解不足」を自ら露呈しているね。 シロートの論議だね。 この変な「有益な環境側面」がクローズアップしてきた理由は、毎年、「環境目的・目標」で環境影響の減少目標を立てるんだが、継続していると次第に環境影響を減らす「ネタ」がなくなる。 中小企業のように「環境目的・目標」が俗に言う「紙、ゴミ、電気の減少」だけだとそうなりやすい。 そこで無理に「有益な環境側面」を登場させ、「ここにもネタがあるよ」となった。 研修セミナーまで開催され、企業はムダな研修費用をかけ、研修機関はそれで儲けた。 結果的に「有益な環境側面」の致命的な誤解と企業側にムダなペーパーワークを発生させたね。 「知的体力」の欠如だね。 同じ目標でもいいんだよ。 環境のPDCAが定着し、システムが崩れないで、継続維持する体質になることも重要なんだから。
2010.10.25
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ポケットの中のレワニワ(下)ポケットの中のレワニワ(上) 私:図書館には、朝日新聞の縮刷版がある。 だから、昨年の6月の縮刷版を借りて、6月30日の「文芸時評」欄だけ、10円でコピーした。 俺の直前にコピーしていたオジサンは、「駅前なら5円でコピー出来るところがありますよ」と言っていた。 文芸評論家の斎藤美奈子氏が今月(09年6月)の3点として、宮本輝「骸骨ビルの庭」(上・下)、伊井直行「ポケットの中のレワニワ」(上・下)、村上春樹「1Q84」(1部・2部)をあげている。A氏:「骸骨ビルの庭」の上巻はこのブログに読後感想があるね。私:下巻は、長い図書館予約待ちになった。 話の構成は上巻で大体わかったので待たないでキャンセルしたよ。 だから、下巻は読んでいない。 斉藤氏は、「骸骨ビルの庭」は戦争直後からの過去、「ポケットの中のレワニワ」も過去のへの旅があり、共通点があるという。 しかし、あまり意味のある共通点だと思われないね。A氏:人は皆、過去があって、現在があるからね。 現在を語ることは、過去を語ることでもある、なんてね。私:「ポケットの中のレワニワ」の主人公である男女は小学校の同級生だが、「1Q84」の主人公も小学校同級の男女だという。 これもあまり意味がある共通点だとは思わないね。 もっとも「1Q84」は読んでいないがね。 斉藤氏は「1Q84」は、サービス満点の超娯楽大作だが、女性の描き方が単純だとして、男の子目線の小説だという。 「未知なるものを求めて旅立つ僕ら」とは少年小説、換言すれば男性文学の典型パターンだという。A氏:「ポケットの中のレワニワ」はどうなんかね。私:拍子抜けするような結末にもかかわらず、「ポケットの中のレワニワ」に救いがあるのは女性主人公が、自分の論理を生きているためかもしれないとしているね。 「1Q84」より好意的な批評だね。 まぁ、「1Q84」は読むことはないだろうから、この知的街道はこれで終わりだね。
2010.10.24
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ポケットの中のレワニワ(下)ポケットの中のレワニワ(上)私:この小説を読みたいと思った動機は、「村上春樹『1Q84』をどう読むか」にあった佐々木敦氏の書評からだ。 佐々木氏の書評では、「『1Q84』は面白く読んだが、その直前に出た伊井直行氏の書下ろしの長編『ポケットの中のレワニワ』のほうがずっと感動した」とコメントしていたからだね。 作者の伊井氏は東海大学文学部の教授だという。 「1Q48」は図書館予約待ち3000人というのに、この本は予約ゼロですぐ借りられた。A氏:レワニワというのはなんだい?私:主人公の父親が高校の理科の教師で、ときどきふざけてウソを言う。 レワニワとは、その父親が考え出した架空の生物らしい。 インドシナ半島の奥地に生息するトカゲとカエルに似通った生物だが、言葉を教え込むと理解し願い事を叶えてくれる。 ところが願い事を叶えたレワニワは人間もどきになり、今度は人間を食うようになると言われる。 主人公は団地で育つが、途中、ベトナム難民が団地に来る。 それとともにレワニワも来たのではないかという。 団地の子供たちは、近くの川などでレワニワ探検をやる。A氏:ハリーポッターのような話かね。私:まったく違うね。 主人公は、派遣社員でコールセンターの単純な仕事をしている。 学校でもそんなに努力もせず、三流大学をなんとか卒業するが、就職できない。 自己責任から言ったら、筋書き通りの人生ルートだね。 まさに筋書き通り、派遣社員となる。 給与も少ないし、仕事も安定しない。 将来、結婚して家庭を持つということはできそうにない。 一時、正社員への登用の話も出るが、正社員も厳しさを見ているので断る。 人生を諦観したような感じだね。 その主人公の話だね。 2チャンネルも、ヒキコモリの義理の甥も登場する。 正社員との関係も出てくる。 コールセンターはある会社の子会社だ。 親会社との下請け的関係も出てくる。A氏:厳しい現実の話だね。 そこになんで幻想的なレワニワが関係するのかね。私:子どもの頃、団地に来たベトナム難民のある女性(小学校の同級)がコールセンターの管理者をしているのに再会する。 もちろん、女性は正社員だね。 主人公は好きになるが、「貧乏人は嫌いだ」と相手にされない。 これをスタートにいろいろ話が複雑に絡む。 主人公が悩むところでレワニワが登場する。 そしてそれなりの方向が導きだされる。 女性は急に会社をやめ、サイゴンに行く。 主人公はレワニワの言葉でサイゴンまで追いかけていく。A氏:レワニワのせいか行動的になるようだね。私:最後はまた女性は日本に帰ってきて再会する。 これで二人の間は親密になり、ハッピーエンドが期待できそうなところでこの小説は終わる。 今の日本の現実をとらえているし、ストーリーも面白いので、一気に、上下2巻を読んだね。 そして、派遣という明日が見えない若者の心理が理解できるような気がしたね。 もっともこの本では明日が見えるような雰囲気で終わっているがね。 小説としては、やはり、幻のレワニワが登場したほうが深みを増すね。A氏:村上春樹の「1Q84」との関係はどうなのかね。私:インターネットの検索をしたら、俺と同じ動機で佐々木敦氏のコメントから、この「ポケットの中のレワニワ」を読んだ人の感想が載っていた。 その人は、「1Q84」を読んでいて、その読書後、「ポケットの中のレワニワ」を読んだら、「何か癒しになった」というようなことを書いていたね。 さらに、インターネットの検索で、昨年6月30日の朝日新聞の文芸時評で村上春樹の「1Q48」、宮本輝の「骸骨ビルの庭」、「ポケットの中のレワニワ」に構成上の共通点があると指摘しているというので、図書館で新聞の縮刷版を探した。明日は、それにふれよう。
2010.10.23
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習近平の正体私:今度の党大会で党軍事委副主席になったからと言って、2年後の党大会で確実に習近平が国家主席になるとは限らない。 これから2年の間に、大きな変化がないという条件だね。A氏:中国政府にも、「政治とカネ」の問題はあるのかね。私:マスコミ嫌いだと言われている習近兵はあるインタビューで「政治の道に入ったら、財をなすことを考えてはならない。 私利私欲を捨て、役得を得ようなどとは絶対に考えてはいけない」と明言しているという。 また、「自分は人民の公僕であることを一瞬も忘れず、常に人民大衆の衣食や環境に気を使わなくてはならない」としているという。A氏:父親から受けた徹底した共産主義の理念がしみついているようだね。私:不安なのは、「習近平ファミリー」の存在だね。 弟の習遠平は、正式の職業を持たず、ニートのような生活をしているという。 怪しげな輩との共同事業など、かなりダーティな面があるという。 姉夫婦が不動産事業であくどい商売をしているといううわさがあるという。 一部では、ファミリーの腐敗が習近平の将来に影を落とす可能性さえ取りざたしているという。 しかし、中国では、最高指導部の威光を借りて、親族が商売に走り、莫大な利益をせしめるケースが後を絶たないという。A氏:胡錦濤や温家宝は清廉潔白で商売に疎い印象が強いがね。私:胡錦濤の娘婿の茅道臨は、中国の大手インターネットのCEOをしていて長者番付で国内11位になったこともあるという。 胡錦濤の長男は、エックス線検査装置の会社を経営しており、政府機関、中国民航総局から一括受注をしているという。 中国全土の147空港すべてに設置するため、総額で100億元は下らないビッグビジネスだという。 後ろに胡錦濤の威光があるという通説だ。A氏:温家宝はどうかね。私:長男は、香港最大の財閥と組んで企業を創設し株時引きで巨利を得ているという。 温家宝の妻は、英国宝石鑑定士の資格を取り、宝石業者との関係で汚職にまみれているという。 そのため、温家宝は06年10月に妻と離婚したという。 日本のような週刊誌がない中国だから、クローズアップはしていないようだがね。 習近平もファミリーに気をつけないと、出世コースから脱落する可能性がある。 一時、習近平と主席争いのライバル視されている李克強副首相は、胡錦濤主席と同じく「共青団」の出身で、胡錦濤のバックで、12年には行政の長である首相になるだろうという。 また、胡錦濤は、習近平の次の主席候補を育てつつあるという。 「とう小平」が胡錦濤を、江沢民が習近平を育てたように。 それは胡春華といい、63年生まれの47歳。 胡錦濤に見出され、最高指導部の登龍門の入口に立っているという。 12年後の「次の次の」国家主席だ。 これで3代続けて、2代前の最高主導者から内々に指名されるということが半ば慣例化しつつあるという。 もう10年ほどたったら、今度は習近平に代わって、胡春華という名前が新聞に登場するようになるだろう。 なお、現在、胡錦濤は習近平が主席となっても軍事を把握したいためか、軍と武装警察を「胡錦濤派」に固めつつあるという。 地方人事でも露骨なまでに「胡錦濤派」が台頭しているという。 2012年の党大会で、習近平は予定通り、国家主席の座につくか。 今後の中国のトップ層の人事は目が離せないね。
2010.10.22
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習近平の正体私:習近平の父・習仲勲は、党の大幹部だった。 しかし、日本の2世議員とまったく違う育ち方をしているね。 習近平氏が2年後に予定通り国家主席になったとすれば、59歳だね。 しかし、日本の小泉、安倍、福田、麻生、鳩山と続いた、2世、3世総理とはまったく、鍛えられ方が違うね。 子供時代には、徹底的に倹約と革命思想を父親から教えこまれる。 しかし、父親の革命の闘士仲勲は、戦争が終わってから政治的な権力闘争に巻き込まれ、文化大革命で14年間の獄中生活をすることになる。A氏:そうなると子どもも「悪党の子どもたち」ということになるね。私:一家はバラバラになり、16歳の習近平は「下放」で延安郊外の洞窟住まいの小さな集落に送り込まれ、農作業の重労働をする。 ノミ、シラミに悩まされる。 一旦、北京に逃げ帰るが、覚悟を決めて再び、村へ帰る。 心を入れ替え、延安訛りを覚え、労動も率先して行なった。 どんどん農民と交わるようになり、彼の部屋は村のセンターのようになった。 村人から徐々に信頼されるようになったので、共産党の下部組織の共青団への加入を申請したが最初は「腐敗分子・習仲勲の息子」だとして許可されない。 しかし、村で頭角を現し、村の幹部も認めるようになり、8回目の申請で入団が許可された。A氏:共産党への入党ではなかったんだね。私:共産党への入党はもっと難しい。 11回目の申請で許可になった。 20歳の時であった。 そして75年、文化大革命で、閉鎖されていた大学教育が開始され、精華大学の化学工程科に入学できた。 村を離れるとき、別れを惜しんで多くの村人が送ってきたという。 彼は7年間の陜西での生活で、現場の重要性、自分に自信を持つことを学んだという。 1976年、文化大革命が終わり、父も復権した。 82年に秘書生活をやめ、河北省正定県の党委員会副書記として赴任した。A氏:幹部子弟なのだから、中央の当政府機関に勤めて着実な中央官僚の道を歩むか、あるいは幹部の特権を利用して米国など海外で留学生活を送るという選択肢もあったのではないの?私:父・仲勲が同年代の最高幹部(おそらく『とう小平』)に近平の将来を相談したところ、「地方での経験を積み、1つ1つ段階を踏んで上がって行けば、将来、大きな器になる」との助言を得て、それに従ったという。 河北省を皮切りに、07年10月までの25年間、福建省、浙江省、上海の地方幹部として過ごす。 特に福建省には18年間勤務し、政治的な基礎を形成した。 また、上海での活躍で江沢民の評価を得る。A氏:日本の世襲議員とは比較にならないね。 それどころか、徹底的な底辺からの叩き上げの政治経験だね。 徹底した現場からのエリート教育だね。 日本で言えば、いろいろな県の長い知事経験をして中央にくるようなものだね。私:そして最高指導者の主席になれば、任期は10年だ。 コロコロ変わる日本の最高指導者とは違うね。 明日は、習近平の今後にふれてみよう。
2010.10.21
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習近平の正体私:習近平は、昨日のニュースで党軍事委副主席に選ばれたことで、5年に1回開かれる2012年の秋の第18回中国共産党大会で、10年の任期が終わる現在の胡錦濤・総書記(国家主席)に代わって主席に選ばれる最有力者になった。 昨日のこのニュースで日本人には身近になった人物だ。 折から中国の内陸地での反日デモが暴徒化するなどで、特に今後の日中関係がどうなるかで関心を呼ぶ人事だね。 もっとも、最有力候補ということで、後2年あるから、どう転ぶかはわからないがね。A氏:習近平は、日本では例の「1ヶ月ルール」でもめた昨年の事件で知られたね。私:実は、昨年10月初めに中国政府関係者から習副主席が12月に訪日し、天皇陛下と会見したいとの打診があった。 日本外務省は「1ヶ月ルール」を説明し、早急に訪日予定を知らせるように要請した。 しかし、中国側は他の国内会議の日程がきまらないので、後で連絡するということで遅れていた。 有力な次期最高主導者が日本に行くのだから「1ヶ月ルール」なんてどうにかなるだろうという態度が見え見えだったという。A氏:中国側が日本の外務省に「訪日日程は12月14日から16日」と正式に通知したのは11月19日だから、「1ヶ月」を切ったね。私:外務省はそれからさらに1週間も経った11月26日になって宮内庁に陛下との会見を打診する。 宮内庁は当然、拒否。 外務省が中国側に正式に「会見は無理」と通知したのは30日。A氏:なんだか、外務省もテキパキした動きでないね。私:外務省に無理と言われたので、中国側は事の重大性を認識し、崔駐日中国大使はあらゆるルートを使って、なりふりかまわず政界工作をする。 まず、山岡民主党国対委員長、平野博文官房長官、岡田克也外相に働きかけたが、鳩山首相が拒否。 11月3日に中国外務次官が宮本駐中日本大使を呼んで圧力をかけ、宮本大使は岡田外相に働きかけたが拒否。 崔大使は、7日に中曽根康弘元首相に協力を依頼し、中曽根氏は官房長官に電話するも拒否。 崔大使が最後に頼ったのが当時の民主党の小沢一郎幹事長だ。 小沢氏が崔大使と会ったのは総勢600人以上を率いて訪中する前日の9日。 崔大使は、中国外務省をバックに、交換条件として「胡錦濤・主席が訪中した国会議員143人の一人一人と握手し、写真撮影もする」ともちかける。 小沢氏は、鳩山首相に電話して、一喝し、10日に平野官房長官が羽毛田信吾・宮内庁長官に再度電話して、宮内庁が折れる。A氏:ここでも鳩山首相はブレたね。 それにしても、中国はすごい政界工作だね。 それほど、習・副主席の天皇会見は重要なのかね。私:現主席の胡錦濤氏が副主席のとき、日本訪問の際、天皇と会見しているという前例があり、この前例を守れなかったら中国外務省の怠慢とみなされる。 裏には、次期最高指導者の座をめぐり、習近平氏にハクをつけようとする中国内での権力闘争がある。A氏:この「特例会見」の裏事情を習・副主席の来日の前に、宮内庁長官が異例の公表をするね。私:それは「天皇陛下の政治利用」として天皇陛下と習・副主席の会見を実現させた自らの責任回避のためだという。 というのは、1ヶ月前の11月に習・副主席の妻・彭麗媛が中国人民解放軍政治部歌舞団を率いて来日したとき、東京で行なわれたそのオペラ公演に皇太子殿下がおでましになり、彭麗媛の隣席で観劇し、公演が終わった後も、控え室を訪れたという。 これが「中国による皇室の政治利用」として、宮内庁の軽率さが批判され、国会議員からも非難があり、右翼団体からも宮内庁は「非国民」と批難されたという。 長官は身の危険すら感じたという。A氏:それで、また、「1ヶ月ルール」を破って天皇陛下と、しかも彭麗媛の夫である習・副主席との天皇との会見をセッテングしたとなると、宮内庁長官は袋叩きになりかねないね。私:そこで、早めに、これは宮内庁独自の判断ではないとしたという責任回避の説明になったという見方があるね。 天皇との「特別会見」は、12月15日に行なわれた。 それだけ中国側が力を入れる日本にはあまりなじみのない習・副主席とはどういう人か。 明日、その生い立ちからふれてみよう。
2010.10.20
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習近平の正体A氏:今朝の朝日新聞一面トップは「習近平氏、胡主席後継へ」と大きく見出しを掲げているね。 国家主席に決定したような書き方だね。私:正確には党軍事委副主席になったということだね。 丁度、タイミングよく、6月26日に図書館に予約したこの本が2、3日前に借りられて、昨日読み終わったところだ。 だから、新聞やテレビの解説を聞いてよく理解できたね。 身長180センチ、体重100kgの巨漢だとこの本にはあるが、テレビの映像を見ると温和な風貌だね。 妻は、彭麗媛で中国人民解放軍総政治部歌舞団の専属歌手で、国民的なスターであるという。 だから、習近平は最初、彭麗媛の夫として紹介された時期もあったという。A氏:石原慎太郎氏が、都知事選で「石原裕次郎の弟です」と言っていたようなものだね。私:この本では、実は、昨年の党中央委員会で、習近平が党軍事委副主席に選ばれると期待されたが、選ばれなかったことを問題にしているね。 というのは、現在の主席の胡錦濤は、主席になる3年前の党大会で党軍事委副主席に選ばれている。A氏:だから、先例によると昨年が3年前だから、習近平は本来、昨年に党軍事委副主席に選ばれるべきだったということか。私:習近平は、江沢民のバックアップがあるというが、昨年、選ばれなかったということを聞いた江沢民は驚いて、怒りを側近にぶつけたという。A氏:習近平と江沢民とは関係があるのかね。私:習近平は中国政府指導部の第5世代にあたる。 第1世代が毛沢東。 第2世代がとう小平。 第3世代が江沢民。 第4世代が胡錦濤。 そして、とう小平の頃から、将来の若手を早くから育てるというシステムが定着したようで、胡錦濤はとう小平のバックアップで主席にまでなった。 同様に、江沢民は習近平に目をつけて育ててきた。 江沢民は、上海閥だね。 だから、昨年の党大会では、当然、党軍事委副主席に選ぶように、江沢民は胡錦濤初め、当幹部とは先に話しあって確約をしていたという。 これが逆転されたわけだ。A氏:なぜだろう?私:一種の派閥による権力闘争だという見方もあるね。 習近平は高級幹部子弟の太子党閥のリーダーだ。 それに対して、胡錦濤は共産党青年団閥の出身だ。。 だから、軍部にまで太子党の権力基盤を渡したくないという見方もあった。 それに習近平のライバルの李克強・副首相は胡錦濤の子飼いだしね。 一応、大義名分は、当時、「ウイグル暴動」があり、治安を担当している習近平がそれに専念してもらいたいとの胡錦濤の考えで、党軍事委副主席には選ばなかったという。A氏:しかし、そんなに党軍事委副主席というポジションは、重要なのかね。私:中国で政権を握るものは軍を把握していないと、安定して動けない。A氏:「銃口から政権が生まれる」と言われるからね。私:国家主席の任期は最大10年だが、軍委主席に定年はない。 江沢民は13年に国家主席を胡錦濤に譲っても、中央軍事委員会主席の地位に更に2年間居座っていた。 いまだに軍との関係があり、四川地震のときは、政府を差し置いて自ら軍を救援に差し向けたという。 しかし、今度の習近平の党軍事委副主席任命によって、胡錦濤は屈した形になったね。 明日は、日本では有名な天皇との「特例会見」の背景についてふれよう。
2010.10.19
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私:先週の月曜日にふれた「プロセスアプローチ」による改善例を示そう。 IBMクレジットは、改善前は顧客の信用調査依頼(顧客インプット)から顧客への回答(顧客へのアウトプット)までにかかる期間が平均6日、ときには2週間かかり、「長すぎる」という顧客からの苦情が多かった。 IBMクレジットの業務は、下のような5つ職能部門からなり、それぞれにプロセスがあり、インプットとアウトプットがリンクしている。 顧客要求→ 1.受付書類記入→2.信用度調査→3.ローン契約書作成→4.金利決定→5.信用状作成→顧客提供 最初、5つの部門ごとに、それぞれプロセスを分析し、IT 化の促進など個別のプロセスの改善を行ってきた。A氏:親会社はIBMだから、コンピュータの活用などでそれぞれの処理プロセスを速くしたのでないかね。私:しかし、効果がなく、むしろ顧客の待ちが増えて悪化した。 そこで、見方(アプローチ)を変えた。 すなわち、「プロセスアプローチ」の観点から、伝統的な職能部門の壁を越えて、試しにマネージャーがある物件を持ち歩き、最優先で5部門の業務プロセスを連続的に縦断的に処理してみた。 なんと5つの部門の仕事が90分で全部処理された。A氏:そうか。 「職能的アプローチ」でもプロセスにはインプット、アウトプットがあり、お互いにリンクしているのは同じだね。 そのプロセスのリンクに対する視点が違うんだね。 各職能組織を縦断するという視点なんだね。 その90分以外の時間は何にとられていたのかね? 私:その原因は、5つの部門別分業のため、その間の書類移動のための部門間の「手渡し」、「停滞」時間、また、部門間の書類の山のための書類の探しや整理などのプロセスに時間に多くがとられていたことだね。 A氏:なにか、5つの部門の間の書類の山は、製造業で言うと、仕掛品在庫の山を連想するね。 場所をとるし、保管の手間も増えるね。私:製造業では部門間で在庫を多く持つと、それぞれの部門内プロセスの処理効率はあがるかもしれない。 しかし、全体の流れは遅くなる。 顧客を待たせる。A氏:そこでIBMクレジットはどういう改善をしたのかね?私:IBM クレジットでは、部門の壁を取っ払い、顧客の依頼1件に対し、基本的に1人で5つの職能プロセスをこなすようにした。 この方向でのプロセス改善、IT化などを促進した。 結局、顧客の信用調査依頼から顧客への回答までの時間は平均6日間から4時間に激減。 書類を整理したり、さがしたりする手間もなくなり、扱う件数は100倍に増加したという。A氏:1人で全工程を行うというのは、「セル(cell)方式」と言って、「在庫ゼロ」のトヨタ生産方式で開発した方法ではないの?私:実は、この例は10年ほど前に、アメリカのビジネス書でベストセラーになった「リエンジニアリング革命」に載っているものだ。 この本は、当時、和訳されて、日本でもブームになったが、訳者である当時の野中郁次郎一橋大学教授は解説で「この本の手法はすでに日本でやってきたことであるが、日本ではこのような体系化が遅れた」と言っていたね。 当時の年末の「朝まで生テレビ」で、当時自民党の福島県選出の衆議院議員荒井広幸氏が、日本経済の行き詰まりを打開するために、ヨーロッパで成果を出している「セル方式」を導入すべきであると言っていたね。A氏:「セル方式」は日本が生みの親なのにね。私:ISO9001の「プロセスアプローチ」が正確に理解出来ないということも自分の国のことをよく知らないのと同じだね。
2010.10.18
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上の孫は小学校2年生。 昨日、16日(土)は秋日和の運動会となった。 9時半頃、学校の校庭に行く。 小学生とは言え、高学年になると身長が異なり、個性が出てくるが、小学2年生では、まだ、遠くからは孫をすぐに見分けるのは困難だ。 低学年の玉割りのゲームに家族や地域の人も自由に参加していいというので、孫の白組に参加する。 ボールを投げるが、大きな玉になかなか当たらない。 若い時は、コントロール自慢のピッチャーだったのが、情けない有様だ。 赤組の玉が先に割れた。 そうしたら、校長が来て、割れない白組のボールの分け目にナイフで裂け目を入れて、白組だけ再開。 ところがあっという間に割れた。 小学生は「なーんだ、すぐ割れてつまんない」と言っていた。 集団にいた孫と目を交わした。 大人の参加者には、どんぐりの玩具みたいのをくれた。 生き生きした活発な動きと歓声で、こっちも元気になったような気分だ。 昼近く、2年生のマスゲームを見る。 終わって、席にもどる孫とすれ違い、ハイタッチをする。 校庭を出たら、タイミングよくバスがきた。 12時には家に帰った。
2010.10.17
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街場のメディア論私:ところで、内田氏は、毎月10万円ほど本を買っているという。A氏:専門家は俺達と違うね。 そうすると、本棚はかなりの本になるだろうね。私:ところが、哲学書などは、8割は読んでいないという。 「積ん読本」だが、その書棚が「いつか読まねば」という切迫感になっているという。 それと来訪者が書棚を見ることによって、一種の自己紹介になるという。 書棚のない電子図書に対する批判だね。 「積ん読本」を売り払い、本棚をガラガラにした俺とは逆だね。A氏:俺は大学生のとき、親戚の家に下宿していた。 あるとき、よく来る電気屋の旦那が、偶然、俺の部屋に入って、本棚を見て「A君は、俺達と人種が違うね」と言ったことがある。 書棚は一種の自己紹介とはこのことかね。私:昔、独身寮にいた頃は、同僚の部屋に遠慮無く行くことがあったが、書棚でその人の関心事がすぐわかったね。 しかし、一般の人の家で、書棚がある部屋に初めての他人が入るというのは、日常あるケースではないね。A氏:そう言えば、10月11日の朝日新聞に国内有数の考古学の専門書群5万6千冊余りの処理が問題になっていたね。 この蔵書の受け入れ先を公募した結果、英国の研究所に寄贈がきまったという。 これに国内の関係者から反発が出ているという。 あまり利用されないのに、膨大な蔵書の保管料が年間100万円だという。 こういうものは、電子化すれば場所も食わないし、誰でも容易にアクセス出来る。 もっとも電子化の費用がまた問題になるだろうが。私:そういう図書の電子化の効用は、内田氏は認めているがね。 しかし、どうも「本を書くのは読者に『贈り物』をすることである」という説明は、分かりにくかったね。 要するに、本の真の価値を理解できる読者に渡ることで、その読者は書いた人から「贈り物」を得たということらしい。A氏:それは本だけでなく、美術品を含めたすべての作品に言えることではないの? 画家ポール・ゴーギャンの絵は売れず、貧乏のうちに死亡するが、死後、絵画は高い評価を受けるね。 それはゴーギャンへの「贈り物」かね。私:そういうわかり易い例なら理解しやすいがね。 その説明のために、マオリ族が登場し、タオンガというマオリ族の単語が出たりする。 「本はそれを真に理解できる読者を得て価値が生まれる」だけでいいのにね。 以前から内田氏の本を読んでいて、「内田文体」みたいなものがあるのに気がついたね。 内田氏のブログには毎日平均約1万5千のアクセスがあるそうで、このブログの内容が本になるらしい。 出版社は、そのブログをまとめて本にしているとのこと。A氏:そうすると、「推敲なしの文章」が婉曲な表現の原因になっているのではないかね。 それが分かりにくい「内田文体」になっているのではないかね。私:このブログで引用している「1Q84」の読者評で、「村上春樹作品を読むと、頭のなかがぐちゃぐちゃになるのですが、その感覚を味わうのも醍醐味ですね」というのがあったが、内田氏のこの本を読むと同様に「頭のなかがぐちゃぐちゃになりそう」だね。 文学作品はそれでもいいが、論理的な主張をする書籍ではどうかね。A氏:「ケンカ読法」が必要だね。私:この本の「メディアの不調は日本人の知性の不調と同期している」という宣伝文句に偽りありだと思ったね。 こういう偽りをしているから、メディアが不調になるのではないの。 まぁ、マスコミは不祥事が出ると、前から常識的に予測できるのに、あわてて大事に報じるのはおかしいと言っているのは理解できるね。A氏:例の大阪地検のFD改ざんもあり得ることだね。 問題は、組織チェックが甘かったことで、体質だから予測は出来たね。 今朝の朝日新聞の「私の視点」欄で、松川事件の弁護士だった今井敬彌氏が、松川事件でも検察の証拠隠しが多発し、結局、無罪になった例をあげ、その組織体質を反省をしないまま、今日まできていると指摘しているね。私:アメリカ映画を観ると、取調べは、日本と大きく違うね。 その点も追求すべきだね。
2010.10.16
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街場のメディア論私:この本は以前のブログでふれた通り購入した。 今回、購入した「デフレの分析」はプラスになったが、「街場のメディア論」は期待ハズレだったね。A氏:たしか、内田氏は、日本のマスメディアビジネスが凋落の一途をたどっている原因は、読者の問題でなく、情報を発信する側の「知的劣化」だとしているというね。私:ところが、はじめは、本題と関係のない「キャリア教育」からはじまっている。 今の行政のキャリア教育が、「自己決定論」・「自己責任論」・「自己探し論」であることを反論しているね。 「自分ひとりのため」に努力する人間のほうが「人のため」に働く人よりも、競争的な環境では勝ち抜くチャンスが高いという教育観が支配的だと反論している。A氏:それはおかしいね。 人は社会的な生物だから「人のため」に働くから、収入を得て生活できる。 イチローだって、「自分ひとりのために」努力していない。 努力することにより、観客に感動を与えることができるからだ。 それにより、観客の入場料やTV放映料やキャラクターグッヅの収入で生活できる。私:自己責任というのは「人のため」に働くための努力についての話だね。A氏:知性劣化によるメディアの凋落はどうなの?私:氏のところに取材に来るメディアの担当者が「私は個人的にこういうことを見聞したのですが、先生はどう思いますか?」と疑問を向ける人はまずいないという。 「----と世間で言われていますけれど、先生はどうお考えになりますか?」と例外なく訊くそうだ。 これが、メディアの「知的劣化」の現象例だという。A氏:しかし、それはメディアだけの問題でなく、日本人的な特徴ではないの? 欧米の学校では、「君自身の意見はどうか?」と聞かれて日本の学生が戸惑うことが多いという話をよく聞くね。 このブログの「まず、ISO 70問の克服から・経済危機克服に必要な『知的体力』は貴社にあるか」でもふれているが、イギリスでは小学校の算数の問題は「A+B=5」だそうだね。 正解は多様で、自分で考えるという訓練だね。 ところが日本型は基本的に「2+3=?」だね。 正解は1つだね。 正解を出した生徒は優秀だというわけだ。 それは基本的に考えるテストでなく暗記力のテストだね。 フィンランド教育でも、読書の宿題が多いが、要約だけでなく、必ず、自分の感想文を書かなくてはならない。私:だから、最近、急に日本のメディアの知性が劣化してきたともいえないと思うね。 昔からそうだったのかもしれないし、他のビジネスでも起きているかもね。 ISO(アイ・エス・オー)をとった企業にも、日本的な「知的劣化」が見られるとしているからね。 「デフレの分析」でも説明されていたが、国内の書籍・雑誌の合計売上が96年をピークに、販売部数は97年をピークに減っているという。A氏:そうするとメディアの凋落は「知的劣化」でなく、「人口オーナス」現象の一つかも知れないね。私:メディアの発信者は個人責任の意識がなく、その無責任さも内田氏は指摘しているが、大体、日本はメディアだけでなく、無責任の人が多いのではないのかね。 冤罪をでっち上げた警察も無責任。 でたらめな箱物を作って膨大な年金損失を出した厚労省官僚も無責任。 個人が出てこない。 もっとも新聞記事は、最近は署名記事が増えているような気がするがね。A氏:丸山真男氏の「日本人無責任論」は有名だね。 丸山氏は、難波大助の虎ノ門事件での責任のとり方を例に上げ、内閣総辞職、関係の無い沿道の警官まで処罰、大助の育った村も謹慎、かって、小学校の先生だった教師も謹慎だと指摘している。 要するに「一億総懺悔」で同時に「一億総無責任」と同じパターンを指摘しているね。私:メディアだけの問題ではないね。 明日は、書物についてふれよう。
2010.10.15
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村上春樹『1Q84』をどう読むか私:それから宗教学者の島田裕巳氏の感想もあったね。A氏:例のオウム真理教で問題になった人だね。私:「1Q84」は、カルト集団を扱っているからなのだろうね。 島田氏によると、ヤマギシ会やオウム真理教のような実在の集団がモデルになっているという。 氏は、結論がまだ、あいまいなので、続編を期待しているね。 それから、佐々木敦氏の読書感は面白いね。 渋谷の書店で一心不乱に「1Q84」を立ち読みしているオジサンを見かけたという話から始まる。 すでに2部作の1冊目を読み終え、BOOK2に入ろうとしていたという。 おそらく立ち読みで、2部作を読了しただろうという。 すごい集中力だね。 逆に、読むには抵抗感がないのだろうね。A氏:もっとも熱心な読者かもしれないね。私:このオジサンと逆に「買う」ということだけで「読む」をしない読者がいるのではないかと佐々木氏はいうね。 「1Q84」にチェーホフの「サハリン島」という著作が出てくるらしいが、そのためにそのチェーホフの本まで売れ出したという。 チェーホフのあまり知られていない「サハリン島」をストーリーに出すのは、村上春樹の特徴である衒学的な書き方の例だね。 それに読者が引っ張りまわされる。A氏:君が扱っていた2010.05.26「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という言わば青春小説から、ドラッカーの経営専門書までブームで売れるようになり、この青春小説の売上は100万部を超えているという。 似ているね。 この本の書評で、この本を出版企画した出版社や筆者はまさにドラッカーのマネジメントを地で行って成功したと半ば皮肉っていたね。私:佐々木氏は、「1Q84」を面白く読んだが、その直前に出た伊井直行氏の書下ろしの長編「ポケットの中のレワニワ」のほうがずっと感動したという。 しかし、この本は余り売れていない。 図書館で検索したら、予約待ちはゼロ。 市の図書館でも全部で6冊しかない。 A氏:「1Q84」は100冊くらいあり、それで、かつ、予約待ち3000だというのにね。私:佐々木中氏の場合は、「この小説は間違っています」とあるね。 死の物語を反復強化しているという意味で、この小説は文学的に間違っているという。 そして、BOOK3で麻原的・原理主義的・ナチス的な死の物語を転覆する真の小説を完成することを信じており期待しているとある。 この書評集は「1Q84」BOOK1、BOOK2までの読後感だね。 多くの書評が、これで終わるのは結末があいまいだとしていて、後編のBOOK3で答えを期待しているものが多かったね。A氏:BOOK3は今年の4月に出たね。私:結末はどうなったのかね。 その書評をまた期待したいね。 ところで、アマゾンの読者レビューは面白いね。 BOOK1は303のレビュー、BOOK2は212、BOOK3は184あるね。 総じて高い評価(星5、4)が多かったが、酷評(星2つ、1つ)のものも1割くらいあるね。 高い評価の読者のレビューに「村上春樹作品を読むと、頭のなかがぐちゃぐちゃになるのですが、その感覚を味わうのも醍醐味ですね」というのがあった。 これはうまいコメントだね。 「ぐちゃぐちゃになる」のを酷評する人と、反対に快感を覚える人がいるんだね。 俺は本を読んで「ぐちゃぐちゃになる」のは嫌だがね。
2010.10.14
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村上春樹『1Q84』をどう読むか私:俺が村上春樹に興味をもったのは、チャンドラーからだね。 村上春樹がチャンドラーファンだということからだ。 そして、チャンドラーを知ったのは、その短編「待っている」が「新宿鮫」の大沢在昌氏の愛読書である、というのを新聞で読んでからだ。 大沢在昌→チャンドラー→村上春樹というリンクの知的街道だね。A氏:君がこのブログを開始した06年から07年の頃には、結構、村上春樹に関する記事が多く、村上街道になっているね。 「チャンドラーと村上春樹」を皮切りに、村上春樹とリンクした「国家の品格」、村上春樹著「アフターダーク」、村上春樹訳「グレート・ギャツビー」中央公論新社刊・比較読み、フィツジェラルド作・野崎孝訳「グレート・ギャツビー」、チャンドラー「ロング・グッドバイ」村上春樹訳 そして、この後、09年7月までの1年半以上、ゼロだね。私:どうも、彼の文章にちょっとついていけないところがあったようで、この知的街道は消えたね。A氏:しかし、村上春樹の「1Q84」ブーム、で再度登場だね。 次に最近では、「横浜市立図書館借り出し待ち数トップ50点」で、図書館の「予約の多い本50」のトップに「1Q84」があり、待ちはダントツの3097とあるね。 そろそろ、2ヶ月がたつが、待ちはどうかね。私:「1Q84」はBOOK1、2、3と3分冊だが、3097というのは、BOOK1だね。 今、図書館のHPを開くと、2995だね。 減ってはいるが、余り変わらないね。 BOOK2は待ち数1784、BOOK3は待ち数1833だ。 BOOK2以下になると急に千くらい予約数が大きく減るのは何故だろうかね。A氏:君は結局、「1Q84」は読まないのかね。私:どうも村上春樹の「1Q84」ブームに書いたように村上春樹の文章がなじまない。 そこで、図書館から「村上春樹『1Q84』をどう読むか」を借りたよ。 予約待ちなしで借りられたよ。 36人のそれぞれ名のある人が読書感を書いているが、「1Q84」を褒めている人、あまり評価していない人と色々だね。 そのうちで竹内真氏の村上春樹の文章にふれた感想が俺に一番ピンときたね。 氏は、村上春樹の小説を友人から読むようにすすめられたが、読み始めると、ビックリするほど文章が頭に入ってこないので、早々に投げ出してしまっていたという。 俺と同じ経験をしているのに驚いたね。 俺が読んだのは「アフターダーク」1冊で、後は翻訳本だね。 読み易いが、翻訳本を読んでいるような気がしたね。 「村上文体」というのだそうだ。 それが簡単に作成できるイタズラ作文ソフトがあるそうだ。 「村上文体」は英訳が楽にできるらしい。A氏:村上春樹は昨年、エルサレム賞を受賞したね。 授賞式では有名な「卵と壁」の挨拶をしているね。私:竹内氏は、これにも批判的だね。 日本では「よくぞイスラエルを堂々と批判した」などと盛り上がった連中がいるが、その実態は受け取る側によっていかようにでも解釈できる玉虫色の内容だと批判的だね。 ところで、竹内氏は「1Q84」の書評を編集部から求められ、送ってきた本を読んだら、娯楽小説としては面白く、楽しい読書体験となったという。 しかし、なじめない文章スタイルは同じだったようだね。 竹内氏は「村上春樹は、社会に揉まれて生きてきた経験を持つ作家でない」という。 生活感覚が希薄だという。 要するに、社会的、政治的な主題をあまり扱わなかった村上春樹が、「1Q84」でそれに挑戦したということかね。 竹内氏は、出版不況の中で異常な売上を記録している「1Q84」は、文学という特殊な文化が日本社会の中で突き当たっている限界を示しているという。 明日も、批判的な書評にふれよう。
2010.10.13
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私:昨日は、幼稚園年少組の下の孫の運動会なので、昼頃、幼稚園に行ったが、午前中に出番があったようで間に合わなかったよ。 A氏:快晴だったね。 カラッとして、まさに秋日和だったね。 体育の日にぴったりの天候だったね私:運動会は最初の予定では、10日の日曜日だったんだが、すでに雨が確実になったので、早めに11日に変更になった。 かえって、そのほうが快晴に恵まれてよかったね。 幼稚園から帰って、いい天気がもったいないので、午後3時頃、近所の自然公園にウオーキングに出かけた。 気温は30度くらいあるので、夏のウオーキングスタイルだ。 真夏なら、休日でも、森の小道をすれ違う人は、せいぜい2、3人だが、昨日は、延20人くらいすれ違ったね。 やはり、秋だね。 中高年の夫婦連れ、ジョギングする人、家族連れ、俺のように独り歩きする人などいろいろだね。A氏:今朝の新聞は休みだが、昨日の朝日新聞の朝刊では、体育の日にちなんでか「シニア体力 右肩上がり」という記事が一面にデカデカ出ていたね。 「ジム盛況 スポーツ市場も牽引」とあるね。私:団塊の世代が定年退職で、スポーツジムに通う人が増加していると報じているね。 健康ブームだね。 俺の通うスポーツクラブも、朝から常連のシニアの男性連中が来ているね。 熱心な人は1日中ジムにいる人もいるし、毎日来ている人もいるようだ。 俺は今のところ、週1回のヨガだけだが、そのうち、増やしたいと思っている。 もっとも、スポーツクラブのメンバーのメインは以前からシニア女性だね。 これは変わらないだろうがね。A氏:今後、定年退職する元気なシニア男性が増えるだろうね。 そうすると、この市場はもっと伸びるだろうかね。私:「高齢者人口ボーナス」かね。 高齢者が、福利厚生施設に行くより、ジムに行く人のほうが増えることを期待したいね。
2010.10.12
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A氏:ISO(アイ・エス・オー)をとっている会社の知人から、今頃になって、「ISO9001の規格にある『プロセスアプローチ』の意味がよく分からない」と質問されたよ。 俺も、規格を読んだけれどもよくわからないね。私:これは規格の表現が悪いね。 「プロセス」と「アプローチ」を分けて考えないと理解出来ない。 まず、「プロセス」だ。 要するに、企業などの組織活動は、いろいろなプロセスがあり、そのプロセスは連結している。 そして、プロセスにはインプットがあり、アウトプットがあって、アウトプットが次のプロセスのインプットになり、つながっていく。 営業は、客の注文というインプットを受けて確認するプロセスがある。 これを設計に伝票というアウトプットで伝える。 設計はこれをインプットとして、設計のプロセスをして、アウトプットとして図面を書き、生産管理に送る。 生産管理は購買や製造に指示書というアウトプットを出す。A氏:なんだ。 今やっている実態そのものではないの。 特に目新しいことはないのではないの。私:すべて、「活動しているものにはプロセスがある」。 君が会社に行くとする。 朝起きて、歯を磨き、顔を洗う。 皆プロセスだ。 その間、奥さんは朝食を用意する。 これもプロセスだ。 そのアウトプットの朝食を君はインプットして朝食をする。 アウトプットとインプットの関係だ。A氏:そういうことか。 家庭の行動を単にプロセスの単語で表現しただけか。 その場合、「プロセス」を「行動」にしたらどうかね。私:いい提案だね。 次に「アプローチ」だ。 広辞苑でひけば「学問・研究への接近の仕方」とあるように、研究対象への接近方法だね。 今、研究対象は企業などの組織の「行動(プロセス)」だから、「プロセスアプローチ」とは正しく言うと「組織内の行動(プロセス)に対する『プロセスアプローチ』」となるね。 「研究対象」と「アプローチ」という次元が違うものにプロセスをダブって使っているので理解困難になるから、研究対象の時は「行動」を使うと混同しないね。 以下、それで説明するよ。 登山で言うと、登山行動が頂上への行動「プロセス」で「アプローチ」は登山道の選択だね。 どの道で頂上へ「接近する」かの選択だね。A氏:富士登山で言うと「アプローチ」は富士宮口か、須走口か、吉田口かだね。私:そうだよ。 だから、「プロセスアプローチ」というとき、別の登山口である「他のアプローチ」を示したほうが理解しやすい。 規格にはその説明が欠落しているね。 2001年1/2月号の「ISOニュース」記事に次のようなことが書いてある。 「多くの組織は、未だに、職能的な、階層的な構造によって、管理されているが、製品やサービスは、職能を縦断するビジネスプロセスにより、生み出され、売られ、提供される。」 「プロセスアプローチ」に対するものが「職能的、階層的アプローチ」だね。 両者とも対象は「組織の行動(プロセス)」で共通だが、「アプローチ」が違う。 だから、「組織の行動(プロセス)に対する『プロセスアプローチ』」と「組織の行動(プロセス)に対する『職能的アプローチ』」と言えば、ズバリ明快だね。A氏:要するに、営業、設計、生産管理、購買、製造などの職能の分類での「プロセス」を見るのでなく、「プロセスアプローチ」は顧客の注文から始まり、営業から製造、顧客への納入までの「一貫の流れ」というアプローチで組織行動(プロセス)を見るということだね。私:そうだ。 俺は「職能的アプローチ」を「横方向のアプローチ」、「プロセスアプローチ」を「縦方向のアプローチ」と呼んでいるよ。 ところで「良いアプローチ」で研究対象に向かうとノーベル賞をもらえる可能性が高い。 同じように、「プロセスアプローチ」も「職能的アプローチ」よりも「ある良い効果」を期待している。 来週の月曜日には、IBMクレジットが従来の「職能的アプローチ」による改善から「プロセスアプローチ」による改善に切り替えて、お客の待ちを1週間から4時間にし、かつ、大幅なコストダウンをした例を説明しよう。 そうするとよく理解できるよ。 もっとも、これは「ISOマネジメントシステムの崩壊は、何故起きたか」の本の受け売りだがね。 ISOマネジメントシステムの崩壊は、何故起きたか
2010.10.11
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【入荷予約】 デフレの正体私:すでに述べて来たように「GDP を維持ないし成長させることができれば、いくら生産年齢人口が減少しようとも、個人所得や個人消費、企業業績もよくなる」という対策はだめだね。A氏:水野和夫氏が「成長神話の崩壊」で 「経済指標としては、GDPは見ず、見るのは、国際収支と雇用関係だけだ」 というのが分かるような気がするね。私:公共工事も「生産年齢人口」の長期的な大減少の下でも本当に必要な工事と、人口増加を前提とした工事の区別を明確にして、後者の工事はやめるべきだね。 「規制緩和」も同じだね。 「雇用の規制緩和」によって、消費をする「若い世代の給与の抑制」が深刻化して、かえって、内需拡大から遠ざかっている。 相対的に給与の高い中高年やOBの処遇こそ流動化すべきという。A氏:「インフレ誘導」はどうだね。私:高齢富裕層の貯金が、インフレで目減りする前に消費に回そうというものだが、高齢富裕層が消費するものはあまり無いので、効果は疑わしい。 個人所得の大幅な増加が起きた04年-07年でも一向にインフレ傾向にならず、所得が高齢者の貯蓄に回ってしまった。 「金融緩和」でのデフレ脱却も効果はない。 「モノづくり技術の革新」も資源のない日本が外資を稼ぐのには重要だが、今、問題になっているのは、稼いだ外貨を国内でどのように内需につなげるかだね。A氏:出世率向上はどうだろうかね。私:問題は母親の絶対数だね。 出生率をあげても、生む母親の数がすくなければ、絶対数の増加は期待できないね。 奇跡的に出生率が大きく向上しても、その子どもたちが、「生産年齢人口」に加わるのは、20年ほど先になり、その間、「生産年齢人口」は減少を続ける。A氏:移民はどうかね。私:これも絶対数が問題だね。 1億3千万人近くが住む日本で、ゆくゆく数千万人に達する「生産年齢人口減少」を補えるだけの外国人流入はありえないだろうという。 それに、これとは、無関係に高齢者の数はドンドン増加する。 中国も2030年くらいから「人口ボーナス」は下降し「人口オーナス」が始まる。 急速に高齢者社会になる。 外国に人を出す余裕は次第になくなるかもしれない。 これはアジア圏は同じで「人口オーナス」が始まる。 とにかく、原因が「生産年齢人口の減少」にあるから、効果的な対策は次の3つとしてあげている。 第1--生産年齢人口が減るペースの緩和 第2--生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額の維持・増加 第3--(生産年齢人口+高齢者)個人消費の総額を維持・増加 「非ケインズ効果」と言って、強い社会保障があると将来についての不安が消えるため、国民は安心して現在の消費を増やすということが、デンマークとアイルランドで実績があるというが、これは第3の一つのやり方だね。A氏:君が「社会保障で経済強めるには」でふれているね。私:カネのある高齢者の将来不安が減少するので個人消費を増加させるだろうというわけだ。 しかし、そうかといってわれわれ年寄りには、現役のときのように消費するものはあまりないがね。A氏:カネがある高齢者は子や孫のためには、カネを惜しまないことが多いね。 だから、「振り込め詐欺」はその高齢者のカネの使い方に目をつけたんだね。 これは、犯人の若い世代への一種の所得配分だね。 第2の方法だね。私:もっとも犯人が貯金しないで必要な消費に使うことが条件だがね。 この本では、上記の3つにそっていろいろな具体策が掲げられており、納得はできるが、今の政治状況で実行できるだろうか、それが問題だね。
2010.10.10
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