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愛媛県の文書に記載された安倍首相と加計学園経営者との面談は加計学園の担当者のうその情報に基づいた記述であると公言した加計孝太郎氏が、世論に押された形で開いた記者会見について、前川喜平氏が批判したことを21日の東京新聞は、次のように報道した; 前文部科学事務次官の前川喜平氏は20日、加計理事長が19日の記者会見で、愛媛県今治市での獣医学部新設を巡って安倍晋三首相との面会を否定したことに対し「うそをうそで塗り固めた上に、さらにうその上塗りをしたものにほかならない」と厳しく批判した。 代理人弁護士を通じてコメントを発表した。 前川氏は、愛媛県が作成した文書を根拠に「2015年2月25日の面談とその後の会食の際、安倍首相と加計理事長が獣医学部新設について話し合っていたことは決定的に明らかだ」と主張。この文書の内容を覆すような反証は「何ら示されていない」とした。2018年6月21日 東京新聞朝刊 12版 2ページ「加計氏の会見は『うその上塗り』」から引用 この記事は短すぎるので、前川氏の主張の詳細を知ることは難しいが、これまでの報道の経緯から推測すれば、前川氏の言ってることは正論で、加計氏の説明は如何にも取って付けたような作り話であることは、世間の誰の目にも明らかである。もし加計氏の説明が本当であるなら、成人式の晴れ着をレンタルする会社の経営者が客にうそをついて契約金をだまし取った罪で逮捕されたように、加計孝太郎氏もうそをついて県の補助金をだまし取った罪で逮捕されるはずだ。警察が加計氏を逮捕しないのは、彼の言ってることがうそであることを、警察も承知しているからであろう。
2018年06月30日
今月開かれた米朝首脳会談を、ロシア人はどう見ているのか。21日の毎日新聞は、「世界情勢の中のロシア」誌編集長・フョードル・ルキヤノフ氏の次のような談話を掲載している; 米朝首脳会談を終えたが、首脳会談自体は想定内だった。最も大事なのは会談が開かれて、両首脳が悪態をつかなかったことだろう。わずか1年前に「小さなロケットマン」とか、「衰退している老人」とかののしり合ったのだから、違う結果もあり得たはずだ。ただし署名された共同声明は今後の対話の議題と基本的な枠組みに触れたぐらいで、どのように実現していくのかを記していない。 もしかしたら両首脳が非核化について口約束をしたのかもしれないが、個人的には懐疑的だ。北朝鮮が核兵器を廃棄するなら、それは米国と非対称の立場に置かれることを意味するからだ。金正恩朝鮮労働党委員長が核弾頭を搭載できる弾道ミサイルを廃棄するとしよう。これは後戻りできないプロセスだ。一方でトランプ米大統領は自分の好きなときに決定を翻すことができる。どうすれば両国が口約束にとどまらず信頼を醸成し、課題に取り組むのかを想像できない。 ただし国際政治では首脳間の信頼そのものは重要でない。例えばトランプ氏とフランスのマクロン大統領も互いに信頼していないだろう。当然のように米朝の首脳も信頼し合っていない。大切なのは首脳間の信頼ではなく、課題に取り組む政府間のメカニズムを作り上げることだ。そして本当に非核化を進めるためには、複雑なメカニズムが必要となってくる。 この問題を米朝2国間の枠組みだけで片付けられないのは明らかだ。中国、日本、ロシア、韓国という外部の国を誘い込まなければならない。ただし(2008年に6力国協議が中断したときと比べると、核兵器を保有した)北朝鮮は全く別の国になってしまった。6力国協議も別の形態を取らざるを得ないだろう。 それでもロシアが(積極的に)介入していくことはあり得ない。ロシアとしてみれば、米国とはどの地域でも争いたくないし、ましてや北朝鮮を巡ってはまっさらだ。今の朝鮮半島で特別な権益に絡んでいるわけではない。平和裏に問題が解決することを望み、将来的な経済発展に関心を持っているだけだ。【聞き手・モスクワ大前仁】フョードル・ルキヤノフ : 1967年生まれ。ラジオ局「ロシアの声」の欧州担当や「セボードニヤ」紙国際部記者などを経て、2002年から現職。 12年から外交問題の専門家グループ「ロシア外交防衛政策評議会」の議長も務める。2018年6月21日 毎日新聞朝刊 14版 8ページ「激動の半島情勢-非核化実現は懐疑的」から引用 この記事はロシア人の本音が表れているようで、大変興味深い。朝鮮民主主義人民共和国が核を搭載できる弾道ミサイルを廃棄してしまうと後戻りはできないが、アメリカのほうは何か失うわけでもなく、トランプ大統領は何時でも簡単に約束を反故にして朝鮮敵視政策を復活できるという、ある意味平等ではない条件がスタートの時点に存在していることに私たちは注意を払う必要があると思います。その上で、日朝両国がどのように課題に取り組むのか、日本や韓国がどのように協力できるのか、見守りたいと思います。
2018年06月29日
日本のメディアでは保守系と評価された元大統領の李明博と朴槿恵の政権下では報道機関への弾圧があったこと、韓国の人々はそれをどのようにはね返したかということについて、ジャーナリストの成川彩氏が、8日の「週刊金曜日」に次のようにリポートしている; 『李明博(イミョンバク)、朴槿恵(パククネ)政権下で、大手メディア、特にKBS、MBCなどの公共・公営放送は信用できなくなっていた」。韓国の市民運動家から、よく聞く話だ。では、どんなメディアを頼りにしていたのかというと、「ニュース打破(タパ)」だという。ユーチューブなどを通じて発信する調査報道専門のメディアだ。広告費や財団などの寄付金、協賛は一切受けず、市民の支援金で運営されている。 「ニュース打破」誕生経緯そのものが、李政権によるメディアへの圧力を物語っている。キム・ヨンジン代表に経緯を聞いた。「李政権はKBSやMBCを掌握し、目障りなプロデューサーや記者は解雇されたり、報道から外されたりした。KBS、MBC出身の放送人が中心になって作ったのが『ニュース打破』」。大手メディアが報じないスクープを報じ、2012年の開始直後から大きな反響を呼んだ。キム代表は「当初は一時的なプロジェクトのつもりで、ほぽボランティア。支援したいという人も現れたが、断っていた」と言う。 この年は年末に大統領選挙を控えていた。「大手メディアが当時与党の朴槿恵候補に有利な報道に偏る中、選挙権行使に必要な情報を伝えなければという使命感があった」。結果は、わずかな得票差で、文在寅を抑えて朴槿恵が当選。政権によるメディア掌握は引き継がれた。「ニュース打破」は続行のため、市民の支援金を会員の会費として受けることにした。会員数は現在、3万人台。会費の金額は決まっていない。月に1万ウォン(約1000円)が平均的だが、自主性に委ねている。会費を払っても払わなくても、見られるコンテンツは同じだ。すべて無料で見られる。 キム代表はKBS出身。李政権の初期まで、探査報道チームのチーム長だった。長官候補者の金銭問題などを報じて政権から目を付けられ、チーム長からチーム員に降格後、地方局に回された。探査報道チームは事実上解体された。KBSに在籍しながら「ニュース打破」の創設に携わったが、両立が難しくなり、13年にKBSを退社した。◆きっかけはセウォル号事故 李政権がいかにKBSとMBCを掌握したかは、崔承浩(チェスンホ)監督のドキュメンタリー映画『共犯者たち』(17年公開)に生々しく描かれ、観客数26万人のヒット作となった。崔監督はMBCの看板番組「PD手帳」のプロデューサーだったが、李政権下の12年に解雇された。「ニュース打破」で報じたスクープの一つ、国家情報院が脱北者をスパイとして捏造(ねつぞう)した事件は、『共犯者たち』に先駆けて公開された崔監督のドキュメンタリー映画『自白』(16年公開)に出てくる。文政権に替わった昨年、5年ぶりにMBCに復帰し、社長に就任。失われた視聴者の信頼をいかに取り戻すか、注目が集まる。 KBSも4月、ヤン・スンドン新社長が就任した。就任式では「権力と政治から独立する」と宣言した。文政権になったからといって、自動的に社長が変わるわけではない。140日超の「放送正常化」のためのストライキを経て、前社長を解任に追い込んだ。MBCも同様で、昨年70日超のストライキを経て前社長を解任させた。MBCは12年にも170日のストライキで社長退陣を訴えたが、失敗に終わり、ストライキ参加者のうち6人は解雇された。昨年の成功は、文政権下ゆえ、とも言える。 『共犯者たち』は、朴前大統領弾劾後、「ニュース打破」の「積弊清算プロジェクト」の一つだった。キム代表は「李、朴両政権で積もり重なったメディアの弊害を清算する(積弊清算)ことが、韓国社会の立て直しに必要と考えた」と話す。公開後にKBSとMBCのストライキが始まり、映画のヒットが後押しする形となった。「表現の自由という普遍的なテーマ。メディアの重要性を考えるきっかけになるはず」。日本では6月9日午後7時から、東京・中野の「なかのZERO小ホール」で上映される。 KBSとMBCが視聴者の信頼を失い、逆に「ニュース打破」の知名度が上がった一つのきっかけは、14年4月に起きたセウォル号事故だった。キム代表は「大手メディアの報道する内容と、『ニュース打破』の現場の記者からの報告がまったく違った」と振り返る。「『全員救助』という誤報から始まり、その後も大々的な捜索活動が繰リ広げられているかのような報道が続いた。『ニュース打破』では現場の状況をそのまま報じた」。大手メディアに不信感を抱く視聴者が「ニュース打破」に飛びついた。アクセスが集中してサーバーがダウンしたほどだ。会員数も急増した。数人で始まった「ニュース打破」は、現在、記者やプロデューサー30人を含む47人が所属する。キム代表は「『ニュース打破』はどんな政権であれ、監視し、問題があれば批判する機能を果たしていく」と語った。(後半は省略)2018年6月8日 「週刊金曜日」 1187号 23ページ「韓国・民主主義の底力-変わるメディアと映画界」から引用 私が仕事で韓国に初めて出張したのは、金大中大統領が朝鮮民主主義人民共和国を訪問した年で、その後、李明博氏が大統領になって私が停年退職するまで毎年、1~2回出張してました。李明博氏が大統領になった年は、彼がソウル市長だったときに市内の暗渠の下を流れる小川を復活させるという土木工事を行なったことなどを、取引先の担当者から聞いたことを覚えてますが、まさか、上の記事が述べるようなメディア弾圧をしているとは夢にも思いませんでした。政府を批判的に報道する記者や関係者を番組から降ろしたり、地方に転勤させるというようなことは、日本の安倍政権下でも起きており、つい最近もNHKで森友問題を積極的に報道した人物を関西に転勤させることになって、市民団体が抗議をしています。韓国では数年前にそのような事態が発生し、その後の韓国の人々は抗議に立ち上がって政権を交代させました。これが本当の民主主義の力だと思います。似たような「民主主義の危機」を向かえて、日本の私たちはどのように乗り越えていくのでしょうか。それとも、日本には民主主義が根付かない何か特別な事情があるのでしょうか。
2018年06月28日
九州電力が玄海原発4号機を再稼働させたことについて、17日の東京新聞は次のように報道している; 九州電力は16日、玄海原発4号機(佐賀県玄海町)を再稼働させた。3月には3号機が運転再開したばかりだが、重大事故時の離島住民の避難の懸念は消えず、原発30キロ圏内の周辺4市が再稼働に反対。使用済み核燃料の保管場所も余裕がなく、問題を先送りした見切り稼働となった。(内田淳二) 九電によると、20日に発送電を始め、7月中旬から営業運転する。当初は5月下旬の再稼働を予定していたが、冷却水の循環ポンプで不具合があり、遅れた。再稼働は2011年12月に定期検査で停止して以来、6年半ぶり。 4号機は昨年1月、原子力規制委員会の審査で新規制基準に適合。昨年4月までに、再稼働に必要とされた原発が立地する佐賀県と玄海町の同意を得た。 一方、避難計画が義務付けられた原発30キロ圏内の7市1町のうち、佐賀県伊万里市と長崎県壱岐、平戸、松浦の3市は再稼働反対を表明。避難計画の実効性を疑問視し、「不安が拭えない」と訴えていた。 特に懸念されているのが、約20ある離島からの避難。約3万人が住むが、本土につながる橋がない島もある。船やヘリコプターでの避難が必要となるが、天候次第では本土に移動できず、島に取り残される。 原発自体も問題を抱える。使用済み核燃料を保管するプールの空きに余裕がない。本紙の試算では、3、4号機は3年程度運転すれば満杯になり、原発は動かせなくなる。核燃料の運び先である青森県六ヶ所村の再処理工場はトラブル続きで未完成なうえ、事故対策に時間がかかっており、稼働の時期は見通せない。 九電はプール内で核燃料の間隔を狭めて、保管量を倍近くに増やすことを計画するが、プールに核燃料を詰め込めば冷却性能が低下する恐れがある。専用容器で空気冷却する方法も検討しているが、いずれも規制委の審査を通過する必要がある。実際に保管できるまでは時間がかかり、急場をしのぐことさえ難しい。2016年6月17日 東京新聞朝刊 12版 3ページ 「問題先送り 玄海再稼働」から引用 玄海原発の再稼働で問題となるのは重大事故の際の避難計画が杜撰で、最悪の場合置き去りにされる住民も出る危険性があるということです。アメリカなどでは、十分に実行可能な避難計画であることが確認されない場合は原子力規制委員会が稼働を許可しないという制度になっているのに対し、日本の規制はそういう制度になっていないため、数年前のアメリカの専門家は「あり得ないことだ」と発言したことが報道されたこともありましたが、こういう問題に反応が鈍いのが日本の世論の特徴と言えそうです。また、この記事が指摘するように、あと3年稼働すれば使用済み核燃料の保管場所がなくなるため、3年後には稼働を停止することは織り込み済みのはずで、この問題を「今使用中のプールに、使用済み燃料を間隔を狭めて入れる」などというデタラメをやってしまえば、これまた重大な事故になり得ることですから、今後「監視」を継続することが大切と思います。
2018年06月27日
米朝首脳会談の前の安倍政権の姿勢と今後の方向性について、法政大学教授の山口二郎氏は17日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 安倍首相が日米は完全に一致と叫んできた以上、米朝首脳会談を受けて、日本も北朝鮮との国交正常化に向けて努力を始めなければならない。険しい道のりだろうが、自民党総裁選の三選も確実視される中、ここは安倍首相にぜひ難事業を成し遂げてもらいたい。 日朝国交正常化は、日本にとって第二次世界大戦、およびそれに先立つ植民地支配に最終的に終止符を打つ作業である。それこそ歴史に名を残すチャンスである。北朝鮮には巨額の賠償あるいは資金援助もしなければならないだろう。日本国内の右派は反対するかもしれないが、それを抑え込むには安倍首相が最適任である。首相が政治生命をかけて取り組むと言えば、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)本部を銃撃したような右翼も、静かにするのではないか。 安倍首相は、長期政権を維持するために、たびたび北朝鮮の脅威を利用してきた。国難をあおり、国民の中に不必要な恐怖や憎悪を創り出した。圧力一辺倒を唱えていた時には、朝鮮半島に平和をもたらすより、緊張が継続した方が好都合といわんばかりの本音が透けて見えた。 北朝鮮との対話が困難な環境を招来したのは安倍首相自身である。したがって、自分でまいた種は自分で刈り取らなければならない。皮肉ではなく、安倍首相の決意を期待したい。(法政大教授)2018年6月17日 東京新聞朝刊 11版 27ページ 「本音のコラム-戦争を終わらせる」から引用 朝鮮半島の非核化という問題が無かったとしても、日朝国交正常化を実現するには植民地支配への賠償ということで日本はそれなりの負担をしなければならない立場であるが、その上に、先日のトランプ大統領の発言では、朝鮮半島非核化の費用も韓国と折半とはいえ、日本も負担することになりそうな気配です。トランプ大統領に絶対服従の安倍首相では、彼の発案に異議を唱えるわけには行かないでしょうから、この負担は当然飲まざるを得ない。普通に考えれば、右翼は「朝鮮が勝手にやった核実験の尻ぬぐいを何故日本がしなければならないのか」と筋を通すのが普通と思いますが、戦後の右翼は国家主権が侵害されてもアメリカにだけは絶対服従と、安倍氏と全く同じスタンスですから、安倍首相のやることは右翼も文句は言わないと思います。
2018年06月26日
米朝首脳会談を目前にした今月8日の「週刊金曜日」にジャーナリストの李東埼(リトンギ)氏が寄稿して、過去の米朝関係を次のように解説している; 朝米首脳会談がいよいよ開かれることになった。その裏には双方の「口撃戦」もあった。 5月に入って、ボルトン大統領補佐官とペンス副大統領が「リビア方式」とか、「軍事的選択案」などと北朝鮮を脅した。北朝鮮外務省の崔善姫(チェソンヒ)副相(次官)が彼らを「世の中の動き」も知らない「愚鈍な間抜け」と反撃した。これは痛烈だ。 貧しい極東の小国が、超大国に一歩も譲らぬ。北朝鮮は米国に「力」で「平和」を強いている。 冷戦終結後、クリントン政権は北朝鮮侵攻を企んでシミュレーションをした。90日間で米兵5万2千人の死傷者が出るとの結果。それで朝米関係正常化をめざす基本合意文を結んだ。ブッシュ(子)政権は合意を破棄し、イラク戦争直後にまたシミュレーション。結果は前政権よりも悪かった。それで2005年の6者会談で9・19共同声明か出た。内容は基本合意文とほぼ同じ。ところが声明発表の翌日に、米財務省が金融制裁を発動。米国に通じるのは「力」だけだと悟った北朝鮮は、2006年10月核実験に踏みきった。 米国は、合意を裏切ってきたのは北朝鮮だと言うが、事実は逆だ。 基本合意文締結のきっかけをつくったカーター元大統領は2006年11月3日、ブルームパークテレビのインタビューで、北朝鮮が約束を破ったというのは「完全なウソで、でたらめ」と断言した。核問題に一貫して関わってきた米社会科学調査評会北東アジア安保プロジェクト部長レオン・V・シーガル氏も、核交渉が進展しないのは「われわれが約束を反故にし続け、敵対関係を終わらせるために動いていないからだ」と述べている(『中央公論』2009年5月号)。盧武鉉(ノムヒョン)政権で統一部長官だった丁世鉉(チョンセヒョン)氏は「米国が合意した通り履行したなら、北朝鮮は核を持たなかったであろう」と言った(韓国誌『新東亜』2017年9月号)。 昨年、北朝鮮は米本土全域を射程内におさめる大陸間弾道ミサイル(ICBM)試射と水爆弾頭実験に成功した。北朝鮮は中ロに続いて、米国を脅かしうる3番目の核強国となった。米国はこれまで北朝鮮に一方的な「先・核放棄」を強要してきた。その狙いはイラクやリビアの例をみれば一目瞭然である。北朝鮮相手にそんな手口は通用しなかったが、これからはなおさら通用しない。 何よりも、米国が北朝鮮への敵視政策と核脅迫をやめることだ。65年間回避し続けてきた朝米平和協定を締結し、韓国からの核撤去と朝鮮半島および周辺への核持ち込み禁止を実現。そうすれば北朝鮮は喜んで非核化し、全朝鮮半島の非核平和地帯化か実現する。 ところが日本のマスコミは、米国の核には目をつぶって、一方的な北朝鮮非核化の議論ばかりしている。なぜこうも時事に鈍感な「時事評論家」ばかりなのか。2018年6月8日 「週刊金曜日」 1187号 63ページ「論争-北朝鮮の『力』が米国に『平和』を強いる」から引用 日本に住んでいて接する朝鮮関係の情報の大部分はアメリカの「フィルター」を通した情報ばかりであるため、私たちはいつの間にかアメリカは正義の味方でそれを何度も裏切ったのが朝鮮だという先入観を持ってしまいがちで、中には「政権が変われば前政権の政策はすべて否定されるとかいうアホな事をやってるのは民主党政権と中国歴代王朝くらいで、普通の国の普通の政権は例え政策で対立していた前政権の結んだ条約でもちゃんと守ります」などと信じて疑わない人もいるようですが、政権が変われば前政権の政策を転換するということも普通に行なわれるのがアメリカ合衆国であるという事実も、私たちは忘れてはならないと思います。「フィルター」を通した情報ばかりの社会でも、よく注意すれば「中央公論」のように「真実」を伝えるメディアも存在するわけですから、しっかり情報を把握していきたいものです。
2018年06月25日
トランプ大統領の在韓米軍撤退の発言について、日韓両国外相が米国国務長官に懸念を伝えたと、15日の東京新聞が報道している;【ソウル=大杉はるか、境田未緒】河野太郎外相、米国のポンペオ国務長官、韓国の康京和(カンギョンファ)外相は14日、ソウルの韓国外務省で会談し、北朝鮮問題について意見交換した。トランプ米大統領が北朝鮮との対話継続中は米韓合同軍事演習を実施しないとし、在韓米軍の縮小・撤退にも触れたことについて、日韓側か懸念を伝えた。 会談でポンペオ氏は12日の米朝首脳会談について報告。3外相は、北朝鮮が完全な非核化に向けて具体的な行動をとるよう連携していくことを確認した。 その上で河野氏と康氏は、トランプ氏の発言通りになれば東アジアの安全保障に影響しかねないとの懸念を示した。会談後の記者会見などで、合同軍事演習中止について河野氏は「北朝鮮の行動次第だ」として、決まってはいないと強調。康氏も「協議して調整すべき部分だ」と指摘した。在韓米軍の縮小・撤退についても、河野氏は「具体的な計画は一切ない」、康氏は「在韓米軍は今後も朝鮮半島の安定のため、重要な役割を果たしていく」と話した。 河野氏は、米国による北朝鮮の体制保証についても「北朝鮮が非核化の具体的措置をとるかどうか」であり、現時点で保証されていないとの見方を示した。 これに関連し、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は14日、国家安全保障会議(NSC)を開き、米朝首脳会談を受けて今後の対応を協議。合同軍事演習の中止について、文氏は「慎重に検討していく」と話し、具体的な内容を米国と緊密に協議するよう関係部署に指示した。 8月の合同軍事演習が中止される可能性がある。 一方、ポンペオ氏は会談後の会見で「北朝鮮が繁栄を実現するために、次のステップをとることを切望している」と期待。「非核化には検証が極めて重要だ」とも強調した。2018年6月15日 東京新聞朝刊 12版 3ページ「在韓米軍『早く撤退させたい』」から引用 朝鮮民主主義人民共和国が核兵器やミサイルを開発してきた目的は朝鮮戦争の延長線上で朝鮮を米韓共通の敵と見なして圧力を加えてきたことに対する対抗策だったのだから、それを止めさせるには、米韓の敵視政策を先ず止めることが求められるのは、理屈から言っても当然のことで、この期に及んでもまだ米韓合同軍事演習を継続することになれば、それは米朝首脳会談への背信行為となるのは当然であり、トランプ大統領や国際世論が望むところではありません。日韓両国外相が12日の首脳会談の意味とその先の展望を持てずにいるのは残念なことですが、無駄な軍事衝突を回避するためにも、米朝首脳のリーダーシップに期待したいと思います。
2018年06月24日
米朝会談を終えたトランプ大統領が「在韓米軍を撤退させたい」と発言したことについて、15日の東京新聞は次のように報道している;【ワシントン=後藤孝好】トランプ米大統領=写真、共同=は13日のFoxニュースで、在韓米軍を「巨額の金がかかるから、できるだけ早く軍を撤退させたい」と繰り返し、米朝交渉で取引(ディール)材料とする方針を示した。北朝鮮の要求に応じることで早期に非核化の具体的成果を得たい考えだが、将来の東アジアの安全保障環境に大きな影響を与える可能性がある。 トランプ氏は在韓米軍の撤退に関し、12日の金正恩朝鮮労働党委員長との会談やこれまでの米朝交渉で「協議されなかった」としつつも「彼(正恩氏)がそれを望んでいると確信している」と明言した。 国外の駐留米軍の経費負担を無駄遣いと批判してきたトランプ氏は「韓国にいる3万2千人の兵士を家に連れて帰りたい」と強調。在韓米軍撤退を「今はテーブルに載っていないが適切な時にテーブルに載るだろう」と、米朝交渉での協議に前向きな構えを示した。 ポンペオ米国務長官はソウルで記者団に北朝鮮の非核化について「大規模な軍縮を2年半以内で達成できることを望んでいる」とトランプ氏の任期の2012年1月までに実現したい考えを表明。米朝共同声明で明示されていなかった具体的日程に初めて言及した。 トランプ氏が「誠実な交渉が行われている間は中止する」と表明した米韓合同軍事演習に絡み、CNNテレビはトランプ政権が14日にち8月実施予定たった軍事演習の中止を正式発表すると報じた。11月の中間選挙や再選を目指す20年の大統領選をにらみ早期非核化の実績を欲しており、在韓米軍に関して北朝鮮に譲歩する姿勢が目立つ。2018年6月15日 東京新聞朝刊 12版 3ページ「在韓米軍『早く撤退させたい』」から引用 アメリカが韓国に駐留している理由は朝鮮戦争が終結しておらず一時的に休戦状態になっているだけなので、いつまた戦闘が始まるか分からないから、ということであったが、今では冷戦が終わり社会主義勢力圏を拡大しようなどと考える者もいないのであるから、トランプ大統領が在韓米軍を撤退するべきと考えるのは実に合理的な判断と言えます。韓国から米軍が撤退すると、将来の東アジアの安全保障に影響が出るなどという言説には根拠がありません。韓国から米軍が撤退したら、どの国が韓国へ軍隊を、何の目的で差し向ける可能性があるのか。どの国の軍隊であれ、他国を侵略して成功した例はないのであって、これから先、そういう馬鹿げたことを試みる国が出てくるとは考えられません。
2018年06月23日
元外務官僚の佐藤優氏は米朝首脳会談と今後の課題について、15日の東京新聞コラムに次のように書いている; 12日、シンガポールで米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が会談し、共同声明に署名した。最大の成果は両首脳間の個人的信頼関係が構築されたことだ。トランプ氏は署名式で「非核化プロセスはきわめて早く始まる」と強調。正恩氏は「世界はおそらく重大な変化を見ることになるだろう」と応じた(13日本紙朝刊)。今回の首脳会談で、米国が北朝鮮に求めていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は共同声明に盛り込まれなかった。これは米国の北朝鮮に対する大幅な譲歩である。 今後、「完全な非核化」の定義を巡って、米朝で外交交渉が展開されることになるが、北朝鮮が主張する段階的非核化で事態は進んでいくだろう。北朝鮮は米国に到達可能な大陸間弾道ミサイルの開発計画を完全に中止し、追加的な核兵器の製造は行わないことになろう。これで米国は北朝鮮の脅威を除去することができる。しかし、現在保持する核爆弾と近中距離弾道ミサイルは放棄しない。その結果、日本が北朝鮮の核ミサイルの脅威にさらされる状況を米国が黙認する可能性がある。これに対して、日本が感情的に反発しても生産的でない。脅威は意思と能力によって形成される。日朝間の不信を信頼に転換し、脅威を脱構築する戦略を具体的に立てるべきだ。(作家・元外務省主任分析官)2018年6月15日 東京新聞朝刊 11版 25ページ「本音のコラム-不信から信頼へ」から引用 この度の米朝共同声明に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」の文言が盛り込まれなかったことを、佐藤氏は米国側の大幅な譲歩であると述べているが、元々アメリカと朝鮮では、アメリカが軍事力の点で圧倒的に優位な立場にあるのだから、朝鮮に核ミサイルの開発を止めさせるにはアメリカが様々な点で譲歩する必要があるのは当然である。また、米朝間の話し合いが成就して「完全な非核化」が実現しても、現在朝鮮が保有している近中距離弾道ミサイルはそのまま残るという問題については、野党議員の質問に安倍首相は満足な答弁が出来かなったが、この解決策は、わが国憲法の精神に則って朝鮮民主主義人民共和国との国交を正常化し平和友好条約を締結することが重要です。その上で両国の人々が観光やビジネスなどで自由に往来できる環境を整備することによって解決できる問題であり、冷戦時代と違って朝鮮側に領土を拡大しようというような野望は存在しない時代に武力行使は誰の利益にもならないという認識が大切と思います。
2018年06月22日
史上初の米朝首脳会談が開かれた翌日の東京新聞は、外報部長・久留信一氏の次のように解説記事を掲載した; 北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返していた1年前、米朝首脳会談を実現できると考える人は皆無だったに違いない。トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は12日、朝鮮半島の完全非核化と北朝鮮の「体制保証」を約束する共同声明に署名。「予測不能」な両首脳だからこそ実現できた歴史的会談であると言えるが、最優先されたのは首脳同士の信頼構築だ。共同声明には具体策がなく、実現は今後の課題となった。 歴代の米大統領は、北朝鮮に核兵器を放棄させ、朝鮮半島を非核化することに失敗してきた。米軍の圧倒的な軍事力を国家存続の脅威と考える北朝鮮が、生き残りをかけて核開発に固執してきたためだ。 米朝間の相互不信は根強く、実務を担う官僚に首脳会談を実現させることは不可能だっただろう。2度のシリア攻撃で強硬姿勢を見せ、経済制裁解除もちらつかせるなどのトランプ流駆け引きが、核で世界を威嚇しようとする正恩氏に「恐怖心」と「計算」を呼び起こさせたに違いない。 会談約3時間半前。トランプ氏は「事務方の事前準備はうまくいった。でも、そんなことは関係ない。本当の取引はこれからだ」とツイート。会談成功に自信を見せたが、朝鮮半島の完全非核化では4月の南北首脳会談で合意した「板門店宣言を超える具体策は盛り込めず会談を急ぐあまりの拙速感はぬぐえなかった。 トランプ氏は「金委員長は(過去に米国大統領との関係に)『ここまで深く入り込んだことはなかった』と言ってくれた」と、約束を担保する材料として首脳同士の信頼関係を挙げた。 だが、ロシア疑惑を抱えながら11月の中間選挙を控えるトランプ氏が、歴史的会談の実現を急いだ側面は否定できない。米軍の軍事攻撃の可能性に追い詰められた正恩氏が、時間稼ぎのために首脳会談という賭けに出た可能性も濃厚だ。 完全非核化の実現には、目標時期の設定や保有する核兵器の情報開示、国際機関による査察受け入れなどが最低条件。今後は、声明を空文化させないための実務協議の進展を、国際社会が強力に後押ししていくことが求められるだろう。2018年6月13日 東京新聞朝刊 12版 1ページ 「拙速だった『歴史的会談』」から引用 この日の東京新聞のトップの見出しは「具体策示されず 米『体制保証』」というもので、あたかも朝鮮民主主義人民共和国が核放棄の具体策を示していないにも関わらずアメリカが体制保障を約束したのはおかしい、と言いたげな雰囲気を漂わせていたのは残念なことでした。朝鮮に核を放棄させるための前提条件が「体制保証」なのであるから、先ず最初にアメリカが「保証」を約束して、その後で2回、3回と会談を重ねた後で朝鮮側が安心して核を放棄するという手順が正当なのであって、上の記事でも「時間稼ぎのために首脳会談という賭けに出た可能性も濃厚だ」などと書いているのは、アメリカ側から提供された情報しか持たない者にはやむを得ない見方かも知れないが、過去に「KEDO」が頓挫したり6カ国協議が行き詰まった原因の一端にはアメリカ側の大統領交代による方針変更が原因であったという重大な事実の見落としがあり、そのような偏った視点から上記のような解説記事を掲載していては、今後の先行きを見通すのは難しいと思います。
2018年06月21日
加計学園の獣医学部新設を巡っては学園理事長が安倍首相と個人的なつながりがあることで不当に優遇されて政府の認可を得たのではないかという疑いが日を追って強まっているため、県民の税金から莫大な補助金を支出している責任者である中村知事は、事と次第によっては補助金返還を求める可能性もあると発言したことが、3日の東京新聞が報道している; 学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に新設した獣医学部を巡り、県が5月末に支出した学園向けの補助金約14億円について、中村時広知事は2日、「おかしなことになれば、返還を求める権利は担保されている」と述べた。県関係者によると、県は、学園への不信感から支出前に凍結を一時検討したが、学園が県に謝罪したことを受け支払っていた。 中村知事はまた、今後支出を予定している補助金の見直しについても「行方次第では、一般的にあり得る」と語った。松山空港で記者団の取材に答えた。 学園は5月26日、学園側の報告に基づき県文書に記載された、安倍晋三首相と加計孝太郎学園理事長の2015年2月の面会はなかったと発表。中村知事は直接の謝罪がないことに「あり得ない」と批判した。 県側は「このまま補助金を支払えば、県民に説明できない」(幹部)として、学園側から謝罪と説明がない場合、約14億円の支出凍結を検討した。この補助金は17年度補正予算に計上され、18年5月末までに支払う予定にしていた。 学園側は5月31日午前、中村知事が海外出張で不在の中、渡辺良人事務局長が県庁を訪れ、担当部長らに謝罪。安倍首相の面会に関する記載内容について「学部を何とか形にしたくて、私か言ったのだと思う」などと釈明した。 県は学園が今治市にも謝罪した同日午後、補助金を支出した。一方で県幹部は「(一回の謝罪で)終わりではない」としており、今後も学園側に説明を尽くすよう求める方針だ。 獣医学部を巡っては総事業費約186億円のうち、半額の約93億円を県と今治市が補助。県は今治市を通じ約31億円を負担する。5月末に支出した約14億円を除く約17億円は18年度以降に助成する予定。今治市は約62億円の負担のほか36億7500万円で取得した土地も無償譲渡している。2018年6月3日 東京新聞朝刊 12版 30ページ「愛媛県の加計補助金『14億返還請求も』」から引用 この記事が報道された後で事態がどのように進んだか詳細は知らないが、中村知事が海外出張して不在である日を選んで、加計学園の理事長の部下が愛媛県庁に「県に対してウソの情報を伝えてしまって申し訳ない」と謝罪に行っている。愛媛県が加計学園に対する補助金の支払いを決定する前に「安倍首相もこう言った」などと「ウソ」を言ったことが明らかになったのであるから、愛媛県は当然、補助金支払いの決定を訂正し、既に支払った補助金は返還を要求するのが県民に対する責任というものである。ところが、その後この問題に関する報道が一切無くなり、ツイッターでは「首相官邸から中村知事に脅しがかけられて、それで知事は沈黙したのではないか」と呟かれている。それでも加計学園の疑惑は深まるばかりであるため、ついに加計理事長本人が、大阪の大地震とサッカー・ワールドカップの日本チーム試合直前というタイミングを選んで形ばかりの「記者会見」をし、「愛媛県の文書に記載された安倍首相と自分の会話というのは、ウチの職員がでっち上げたウソで、自分がその日首相に会った記憶も記録もない。だから、ウチの職員が県の担当者に伝えたのは『デタラメ』だ」というような説明をした。加計理事長本人がこのように愛媛県庁職員を騙して補助金獲得工作をしたと認めているのであるから、中村知事は県民に対する責任上補助金返還を要求せざるを得ないのではないだろうか。
2018年06月20日
最近の新聞を読んだ感想を、ノンフィクション作家の堀川恵子氏は10日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 是枝裕和監督がカンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞しました。今村昌平監督以来、21年ぶりの快挙です。仏フィガロ紙が配信した記事を、6月2日、本紙が大きく紹介しました。 「海外の受賞に賛辞を贈ってきた日本の首相が沈黙したまま」と皮肉る内容です。理由は、監督がこれまで日本政治を告発してきたからと推測されています。 映画のタイトルは「万引き家族」。母親の年金だけが頼りの一家が万引を繰り返しながら生活し、そこに人の絆が生まれるというストーリー。確かに首相好みではなさそうです。子どもの貧困や児童虐待といった諸問題を浮かび上がらせる家族は「クールジャパン」からかけ離れています。彼らにはアベノミクスの恩恵は届かないでしょうし、何より「万引」は犯罪、捕まれば罪に問われます。 逆に犯罪として立件されず、罪に問われさえしなければ何をやってもいい。そんなあしき風潮を見せつけているのが、今の国会。財務省の文書改ざんを大阪地検が立件しないとなるや、元気を取り戻した人たちがいます。財務相は改ざんの原因が「分かれば苦労せん」とうそぶき、首相は夫人の関与を「贈収賄という文脈では無関係」と胸を張る。一般社会では到底許されぬ行為が国権の最高機関では平然とまかり通る。連日の報道に唖然とさせられる日々です。 政治家たちの言動に欠けているのは、道徳、倫理、モラル。国の指導者に厳しく求められるその資質は、人類最大の課題のひとつ、核問題とも無縁ではありません。 核兵器の不使用そして廃絶は、国家指導者の「人道的な判断」に頼るしかないからです。国民が被った痛みを忘れ、核の傘の抑止力を妄信し、米国には核兵器の維持さえ求める今の日本政府には、まっとうな人道上の議論は期待できません。朝鮮半島の非核化というホットな問題に、被爆国である隣の日本が何ひとつ影響力を行使できずにいる現状は、当然の帰結とはいえ残念です。 4月21日の特集「あの人に迫る」が今も胸に残ります。旧満州から引き揚げた男性が、母と妹を自らの手で殺めながら逃避行した壮絶な記憶を語っていました。 「戦争をしない国を掲げた憲法9条は、母と妹が残してくれた遺言」とも。その大切な憲法を、道徳もわきまえぬ政治家たちにさわられるとすれば耐えがたいことでしょう。本年度から小学校の教科に新たに道徳が加わるそうです。それを正しく教えられる大人たちがいることを祈るばかりです。 私の担当は今日で終わります。これからも本紙ならではの、空気を読まない執拗な取材に期待しています。(ノンフィクション作家)2018年6月10日 東京新聞朝刊 11版S 5ページ 「新聞を読んで-空気読まず 執拗な取材を」から引用 パルムドールを受賞した是枝裕和監督に安倍首相が何も言わないことをフランスの新聞が皮肉をこめて記事に書くとは、日頃の安倍氏の呆れた言動がフランスにも筒抜けであることを示しており、日本人としては恥ずかしい限りです。森友学園が問題として持ち上がった頃は、安倍氏は官僚組織を完璧に掌握しているので、具合の悪い情報が漏れることはないという自信があり、自分も「李下に冠を正さず」くらいのことは知っているとばかりに「自分や自分の妻が関与していたということになれば、総理大臣も議員もやめる」それが常識だ、というようなことを言ってましたが、その後、どういうわけか計算が狂るって、ないはずの文書が出てきたり、決裁文書に首相の名前や夫人名が記載されていたことが発覚すると、今度は「贈収賄という文脈」などと言い出して責任をごまかす。韓国では、こういう行政の私物化を広範な国民の抗議行動で断罪しましたが、日本ではこのままズルズルと「安倍三選」までいきそうな雲行きで、遠く離れたフランスの新聞に皮肉られるのもムリはないといったところかと思います。
2018年06月19日
財務省の公文書が改ざんされた問題を財務省自ら内部調査をして報告するとうのは、泥棒が自らの犯罪について反省文を書くようなナンセンスさが漂うが、これについて法政大学教授の山口二郎氏は10日の東京新聞コラムに次のように書いている; 財務省における公文書改ざんに関する内部調査の結果が公表された。肝心の改ざんの理由は明らかにされず、麻生太郎財務相は、動機が分かれば苦労はないと、責任者にあるまじき放言をした。 遠山の金さんや桃太郎侍のような時代劇なら、この場面は、不埓な悪行三昧は許さないとヒーローが悪漢を成敗するクライマックスだろう。しかし、現実の世界にはそんな正義の味方は存在しない。いや、存在してはいけないのだ。 民主主義とは権力者が不埓な悪行を働いた時、国民自身がこれを成敗する仕組みである。腐った権力者を排除する仕事をヒーローに委託すれば、新しい専制を作り出すもとになるかもしれない。 野党は少数であり、国民が怒っても権力者は居座りを決め込む。しかし、おかしいことをおかしいと認識し、まともな道理が通る政治を取り戻したいという倫理観を保持していれば、いつかチャンスは来る。 今日は新潟県知事選挙の投票日である。新潟県の課題である原発再稼働や農業の持続について県民が的確な選択をすることは、日本全体で正しい方向を回復することに直結する。 国会前では、大集会が開かれる。国会の外で声を出しても意味はないと、冷笑したいヤツにはそうさせておけばよい。民主主義を守るには長期的な楽観主義が必要である。(法政大教授)2018年6月10日 東京新聞朝刊 11版S 27ページ 「本音のコラム-勧善懲悪の幻想」から引用 財務省の公文書改ざん問題は国会に調査委員会を設置して調べるべきであった。そうはしないで、財務省が自ら内部調査をすることにした「目的」は安倍政権にとって都合の悪い事実を隠蔽することである。案の定、出てきた報告書を示しながら麻生大臣は「なぜこんなことが起きたか、それが分かれば苦労はない」と、重要な秘密を隠しおおせたことに安堵感をにじませている。私たちは、このような「内部調査」などという茶番を許してはならないと思います。野党が少数なのは韓国も同じですが、韓国では国民が怒ったので政権を交代させることができました。韓国では民主主義が正常に作動しているようです。日本でも民主主義が正常に作動する環境を構築していきたいものです。
2018年06月18日
外務省の課長が突然更迭された事件について、元外務官僚の佐藤優氏は8日の東京新聞に次のように書いている; 5日、外務省は国家公務員として信用を損なう行為があったとして、毛利忠敦・ロシア課長(49)を更迭し、4日付で大臣官房付に異動したと発表した。また国家公務員法に基づく停職9ヵ月の懲戒処分とした。<政府関係者は、外務省内の女性にセクハラをした疑いがあると説明した>(6日本紙朝刊)とのことであるが、この報道を読んで筆者は驚いた。外交官時代、筆者は毛利氏と何度も一緒に仕事をしたことがある。有能で、人格も円満で、ユーモアのセンスがある。尊大なところが全くなく、同僚や部下からも好かれていた。また、上司に対しても過剰におもねるようなことはしなかった。対露関係改善に意欲的な外交官だった。筆者はロシアスクール(外務省でロシア語を研修し、対ロシア外交に従事する外交官の語学閥)の将来を担う有力な若手として毛利氏に期待していた。現在の外務省で、北方領土問題に関する企画立案能力、交渉力で、毛利氏より優れた人物はいないと思う。毛利氏の更迭が安倍政権が進めようとしている北方領土父渉に打撃を与えることは間違いない。 霞が関(官界)の相場観で、停職9ヵ月とは「懲戒免職にはしないから、辞表を出せ」という意味だ。いずれにせよ、外務省が毛利氏を切り捨てる方向で報道を誘導している現状が尋常でないことだけは確かだ。(作家・元外務省主任分析官)2018年6月8日 東京新聞朝刊 11版 25ページ 「本音のコラム-外務省ロシア課長の更迭」から引用 この記事は謎に満ちているような印象を受ける。外務省ロシア課長更迭は一般紙にも報道されているが、「セクハラがあったらしい」といった程度の記事だけで、これだけでは実際に何があったのかさっぱり分からない。被害者の人権を守るという観点からは、セクハラの報道は本来こういうものでなければならないのかも知れないが、筆者である佐藤氏の文体からして、何かとんでもない裏があるかのような雰囲気を漂わせている。もし単なるセクハラ事件だったということであれば、外務省と財務省では「セクハラ」に関する対応の仕方に「雲泥の差」があるようで、これもまた興味を引かれる点である。
2018年06月17日
政府与党側から漏れ聞こえる「いつまでモリカケをやってるんだ」というクレームについて、同志社大学教授の浜矩子氏は、3日の東京新聞コラムに次のように書いている; 他紙への言及で申し訳ないが、毎日新聞が「『たかがモリカケ』なの?」という特集をやっていた。(5月31日夕刊) 国会は、いつまで森友問題と加計問題に振り回され続けるのか。審議すべきもっと重要な案件があるだろう。もういい加減にしたら? この種の苦情や批判に妥当性はあるか。そこにフォーカスした記事たった。筆者も、ずっと引っ掛かっていたテーマだ。だから、目が行った。くしくも、この記事が出る数日前、本欄のご担当者ともこの話でやりとりをした。 端的にいって、筆者は「たかがモリカケ」的発想が許しがたい。特に政府・与党側からこの種の言い方が出て来ることが、なんとも耐え難く不愉快だ。何たる不遜。何たる不心得。何たる見当違い。 麻生太郎財務相が、「森友の方がTPP(環太平洋連携協定)より重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」(3月29日の参院財政金融委員会)と言ったそうである。この発言はとても面白い。多分、この人は自分が言ったことの意味が分かっていないのだと思う。この発言には、2つの面で、ご本人の意図した(と思われる)ところとは異なる示唆がある。 まずは、「森友の方がTPPより重大だ」のくだりだ。これは、全くその通りである。ことの重大さにおいて、森友はTPPをはるかにしのぐ。そもそもTPP自体を、なぜ、安倍政権がそれほど重大だと思うのか、という問題はある。だが、TPPに関する価値判断を抜きにしても、今、この時点では、「モリカケ」についてしっかり解明し、しっかり決着をつけることにこそ、その他の何ものにも勝る重大さがある。 ウソをついているかもしれない人々を相手に、国会審議はできない。事実に基づいてものを言っていないかもしれない人々とは、まともに議論できるわけがない。議論というものの土台が崩れてしまっているかもしれないのに、議論を行うことには意味がない。意味がないというより、それは欺瞞(ぎまん)を容認することにつながるから、断じて、付き合ってはいけない行為だ。 「モリカケ」を巡るような疑念が生じた時には、他の全ての案件はそっちのけで、解明と決着に総力を挙げる。それが、国会議員たるものの基本中の基本行動のはずである。 TPPであろうが、憲法改正であろうが、「働き方改革」なるものであろうが、それらは、しょせん、政府・与党の関心事だ。それらが、国民的関心事となるに値するテーマであるのか。そのことに関する国民の意思決定に資するべく、議論を重ねる。この機能を、国会議員たちは国民から託されている。議論をする権限を、国民から委譲(決して移譲ではない)されているのである。ところが、議論の俎上(そじょう)にのせる提案を行う側に、改ざんや隠蔽の疑惑が発生している。この状態を是正する。このこと以上に、重大な何かあるというのか。 こうしてみれば、麻生大臣の「森友の方がTPPより重大だ」発言は実に正しい。さらに、その先を「と考えているのが日本の新聞のレベル」だとつなげているのがまたいい。つまり、日本の新聞は、ことの重大さの優劣を正しく判定している。そのレベルに達していると称賛しているわけだ。かくなる上は、新聞も安心して「だからモリカケ」に徹していただければいい。(同志社大教授)2018年6月3日 東京新聞朝刊 11版S 5ページ 「時代を読む-今最も重大なモリカケ」から引用 この記事は理屈が通っていて分かりやすい。森友問題も加計学園問題も、野党の質問に対し政府側が答弁しており、今のところ致命的な問題が出てきていないと言っても、それは政府側が野党の質問をはぐらかして、あるいは虚偽答弁を行なって野党を騙した結果、いまだに問題が隠されたままになっているわけなので、国会審議を行なう上で一方がまだウソをついている可能性があるのをそのままにして他の問題の審議を行なっても、それは会話が成り立っていないのだから「審議」にはならない。従って、モリカケ問題そこがいの一番に解決しなければならない問題なのである。森友問題では、改ざん前の決裁文書には安倍首相や昭恵夫人の名前が記述されていたことが明らかになっており、安倍氏は一年前に発言した通りに首相も議員も辞めるべきであり、そえれが唯一のこの問題の解決策である。
2018年06月16日
大阪地検が森友問題を不起訴としたことについて、法政大学教授の山口二郎氏は3日の東京新聞コラムに、次のように書いている; 大阪地検は5月31日、公文書改ざんや国有地不当値引きに関わった疑いのある財務省職員を全て不起訴にすると発表した。司法による追及の可能性が塞がれたら、国会で追及するしかない。 参議院予算委員会は、加計学園に関わる資料について愛媛県に続き、今治市にも提出要請している。この要請の根拠となった国会法104条は、官公署はその求めに応じなければならず、資料を提出しない場合には、その理由を疎明しなければならないと定めている。 さらに、その理由を受諾できないときには、記録の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することができる、と規定している。 今治市が資料を提出しなければ、参院予算委はその理由を聞いたうえで、同市の資料の公開が国家の重大な利益に悪影響を及ぼすと安倍内閣に声明を出すよう迫ることができる。自分に不都合な資料公開を国益に反するというなら、それこそ笑いものである。 鍵は参院予算委の決意にある。今までの資料提出要請は与党も含めて合意している。国会法の規定を用いて、安倍政権の責任を明確にすることは、与野党を超えた国会の使命である。参院予算委のメンバーは腐敗した安倍政権の下僕になるのか、国権の最高機関の一員としての責務を果たすのか、熟考すべきである。(法政大教授)2018年6月3日 東京新聞朝刊 11版 29ページ 「本音のコラム-国会法104条」から引用 森友問題については、8億円も値引きする正当な理由が無かったどころか売り手である国側が買い手である森友学園側に値引き理由について口裏合わせをしたことを示す証拠も出てきているのに、これを検察が不起訴扱いにしたというのは、官邸から圧力が加わった以外には理由が見当たりません。加計学園については、愛媛県があれほど頑張っているのに、今治市が安倍政権忖度に陥っているのは、今後のわが国の民主主義が危機に直面していることを示唆しています。参議院予算委員会は政権忖度を克服して、国会法104条を貫徹してほしいと思います。
2018年06月15日
米朝両首脳の歴史的な会談が目前に迫った今月8日の「週刊金曜日」は、これまでの米朝の核をめぐる駆け引きの歴史を、次のように振り返っている;米朝首脳会談の12日開催が決まった。これまで核問題を解決するチャンスは少なくとも3回あったが、結局は物別れに終わった。これまでの教訓に基づき、米朝は今度こそまたとない絶好のチャンスを生かしきれるか。米朝の核をめぐる動きをまとめた。◆米朝枠組み合意 1991年12月、韓国と北朝鮮は「和解と不可侵及び交流・協力に関する合意書」を採択、「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」を締結した。米韓合同軍事演習の中止、初の米朝高官会談開催など、緊張緩和ムードが漂うなか、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の核査察を受け入れた。しかし、93年になると状況は一変。再処理施設の存在を問題視したIAEAは特別査察を求め、これに反発した北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明した。 94年6月にカーター元米大統領が訪朝。金日成主席が核開発の凍結を約束したことで危機はひとまず回避された。米朝高官協議を経て同年10月、枠組み合意が締結された。これを受けて朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が設立された。北朝鮮が黒鉛減速炉の活動を凍結、解体する代わりに軽水炉2基を提供し、1基目の軽水炉完成まで年間50万トンの重油を供給することになった。 2000年には金正日(キムジョンイル)総書記の側近、趙明禄(チョウミンロク)国防委第1副委員長が訪米しクリントン米大統領と会談、米朝共同コミュニケが発表された。これを受けてオルブライト国務長官が訪朝したが、クリントン氏は時間切れで訪朝を断念した。◆6力国協議 ブッシュ米大統領は02年の一般教書演説でイラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と非難、米朝関係は再び冷え込んだ。同年10月には訪朝した米特使のケリー国務次官補に対し、北朝鮮が高濃縮ウラン施設建設などを認めていたと国務省が発表(北朝鮮はその後否定)。 03年8月に始まったのが6力国協議。だが、05年2月に北朝鮮外務省は協議参加の無期限中断を表明し、「核兵器を作った」と言明した。その後北朝鮮が復帰し、同年9月19日には共同声明が発表され、北朝鮮の核放棄に合意した。 ところが翌06年10月、北朝鮮は1回目の核実験を実施した。実験後、北朝鮮は核開発を凍結し、米国との関係改善を進めた。07~08年には、原子炉に通じる冷却塔の爆破など核凍結の実践行動が相次ぎ、米朝高官会談も複数回開かれた。重油提供や食糧援助の再開など、関係改善が本格化する兆しが見えていた。ニューヨーク・フイルハーモニックの平壌公演で両国の国歌が演奏され、星条旗が北朝鮮の国土に初めて掲げられたことは象徴的な出来事だった。 だが、核凍結の検証手続きの文書化で合意を得られず、08年12月に6力国協議は膠着化した。◆2・29合意 オバマ政権発足から3ヵ月後の09年4月、北朝鮮は「衛星」を打ち上げた。国連安保理は議長声明で非難。北朝鮮は反発し2回目の核実験を強行した。 金正日総書記が訪朝したクリントン元米大統領と会い、拘束していた米人女性記者2人を解放するなど、改善の兆しも見えたが、北朝鮮は核開発を続けていた。 だが、本音では関係改善を求めており、11年5月には訪朝した米高官に米国が求める前提条件の受け入れを伝達し食糧支援を求めた。 12年2月、米朝は高官会談の結果を同時発表した(2・29合意)。北朝鮮は長距離ミサイル発射と核実験のモラトリアム、ウラン濃縮活動を含む寧辺での核活動のモラトリアムに同意した。 しかし、北朝鮮は同年4月、「実用衛星」を打ち上げ、失敗(12月の再発射は成功)。国連安保理は直ちに非難声明を発表。北朝鮮は「2・29合意にこれ以上拘束されない」との立場を表明した。<文聖姫(ムン・ソンヒ)編集部>2018年6月8日 「週刊金曜日」 1187号 14ページ「米朝、核めぐる駆け引きの歴史」から引用 90年代の初めには米韓合同軍事演習を中止して緊張緩和を目指すということがあったとは、今では遠い昔のように思われます。あれから25年も経ってようやく実現した米朝首脳会談ですから、着実に恒久平和の道を目指してほしいと思います。
2018年06月14日
先月下旬に米国トランプ大統領が米朝会談を中止すると発表したときは多くの人々を失望させましたが、その翌日から「中止とは言ったが、本当に止めたわけではない」ような情報が流れ、そのうちに「中止」は撤回され、予定通り開催することになりました。一連の「騒動」の裏では何があったのか、1日の「週刊金曜日」が次のように報道しています;トランプ米大統領の「中止」発表後、再び動き出した米朝会談。開催前に問題が生じた背景に、米政権内のタカ派勢力の存在がある。 米国のトランプ大統領は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩・朝鮮労働党委員長との会談中止を発表した後、5月27日になって態度を変え、「会談準備のために代表団を北朝鮮に派遣した」とツイッターに投稿した。 現時点では、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談実現に向け米国の準備が進んでいる。今回の大統領の「変身」は、24日の会談中止発表の翌日に出された北朝鮮の金桂寛(キムゲグアン)第1外務次官による「いかなる方式であろうと対座して問題を解決していく用意がある」との談話を、大統領が「暖かくて生産的」と評価した結果のようだ。 だが、米朝問の対立が現時点で解消されたとは考えにくい。もともとトランプ大統領の米朝会談実現に向けた熱意の根源は「ノーベル平和賞の受賞」にあるとされ、焦点となっている「北朝鮮の非核化」の具体策について、何らかの案を有しているのではなさそうだ。 しかも大統領の会談中止発表後、それに至った責任が「北朝鮮の柔軟性のなさ」(『朝日新聞』25日付社説)にあるかのような主張が各紙によって一斉に唱えられたが、両国間の対立の原因は、最初から交渉が成立しないような一方的で身勝手な要求を、トランプ政権内部の交渉反対派が北朝鮮に対し強硬に繰り返してきた点にある。 そうした勢力の筆頭は、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)だ。同補佐官は就任の1ヵ月ほど前の今年2月28日、『ウォールストリートージャーナル』紙で「北朝鮮を先制攻撃する法的論拠」と題する記事を発表し、「先制攻撃で米国に加えられた北朝鮮の核兵器の脅威に対応するのは、完全に正当である」と唱えていた。 さらに就任後の4月29日、フォックス・ニュースのニュース番組で、北朝鮮の核放棄方策は「リビア方式を念頭に置いている」と発言。核兵器の製造や保有、使用の禁止、ウラン濃縮施設の放棄等を実行した場合にのみ、「交渉の出発点」となると述べた。◆「北朝鮮悪玉論」のウソ だがリビアの場合、核兵器の製造装置を整えた段階で経済制裁解除と引き替えにそれらのすべてを米国に引き渡したが、2011年に勃発した内戦の際、米軍を始めとしたNATO(北大西洋条約機構)軍が「政府軍による攻撃から民間人を守るため」と称して意図的に当時のカダフィ政権側を空爆。その結果、同政権は打倒された。 北朝鮮にとっては、「核放棄」すれば米国との交渉の切り札を失い、かつ将来の「体制保証」も危ういとなれば、首脳会談前に「リビア方式」など呑めるはずがない。そのため、金第1外務次官が5月16日、「わが国が核兵器を放棄するのを一方的に強要している」として首脳会談の中止を示唆したが、慌てたトランプ大統領はその直後に、「リビア方式」を否定した。 ところが今度はペンス副大統領が21日に、「金正恩が交渉に応じないなら、リビアのように終わるだろう」などと述べ、そのための「(軍事力行使を含めた)あらゆるオプションがある」などと、脅迫めいた発言をした。 これに対して24日、北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)次官が「あのような無知で愚かな発言が米副大統領の口から噴出したことに、驚きを抑えられない」と声明。翌日にトランプ大統領が「声明で示された敵対心や怒り」を理由に会談中止を宣言したが、交渉前の相手国に対するこうした副大統領の恫喝に等しい発言が、「怒り」を呼ばないはずがない。 米国の人類学者で、国際政治アナリストでもあるデニスーエトラー前カブリヨ大学(カリフォルニア州)教授は25日、イランの英語放送・プレスTVのウェブサイトのインタビュー記事で、「朝鮮半島の戦争の火種を残したい軍産複合体は、米朝首脳会談に反対している」と述べ、「そうした勢力の代理人のボルトンやペンスは北朝鮮と不仲のままにしたいから、激しい言葉で(交渉を)台無しにしようとした」と指摘している。<なるさわ むねお・編集部>2018年6月1日 「週刊金曜日」 1186号 22ページ 「いったい誰が米朝会談の実現を妨げているのか」から引用 朝鮮民主主義人民共和国が核ミサイルの開発を進めてきた目的は、アメリカの敵視政策に対向することであったのだから、それを止めさせるには朝鮮政府に「アメリカはそんなことはしない」ということを信じさせる必要があるのに、トランプ政権の要職にある人物がそういう微妙な環境を無視して不穏当な発言をすれば、「核放棄」のための話し合いがまとまらなくなるのは当たり前です。大統領の心情とは無関係に勝手な発言ができるトランプ政権の在り方は、言論表現の自由といえばそれまでですが、そういう環境で政権を率いるトランプ氏の苦労もなかなか大変だと思いました。
2018年06月13日
朝鮮半島の南北両首脳が1か月も経たないうちに2度めの会談をしたことについて、東京国際大教授、伊豆見元(いずみはじめ)氏は5月28日の読売新聞に、次のように書いている; トランプ米大統領は米朝首脳会談の中止を発表するにあたって、文在寅(ムンジェイン)大統領に相談も通告もしていない。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が米朝首脳会談の調整にあたり、文大統領を頼ったという見方は当たらないだろう。そもそも、米国、北朝鮮は会談実施の方向に再びかじを切っており、局面はすでに変わっている。 金委員長が強く意識しているのは6月13日に韓国で開催される統一地方選だ。北朝鮮にとって重要なのは文政権に強くなってもらうことであり、それが実現しないと韓国の北朝鮮支援も、南北の経済交流もない。今回の南北首脳会談は、文氏の与党を圧勝させるためのてこ入れの意味合いが強いと考えられる。 文政権の支持率は80%を超えるが少数与党のため権力基盤が脆弱(ぜいじゃく)なのが現状。圧倒的な支持率があっても国会の議席に反映されない。となると、国政で力を握るには政界再編しかない。そのきっかけとして統一地方選で圧勝したい狙いがある。 統一地方選は金委員長、文氏にとって共通利益だと言える。南北関係が停滞し、米朝首脳会談も開かれないとなると、選挙に悪影響を及ぼしかねない。そのために、一度、雲行きが怪しくなった南北関係をほぐしておく必要があった。そういう意味では、米朝首脳会談の再調整が決まった後で南北首脳会談を実施したことにも意味があると言える。【聞き手・山衛守剛】2018年5月28日 毎日新聞朝刊 14版 3ページ 「韓国の地方選意識か」から引用 文在寅大統領を指示する与党が議会では少数派であるとは驚きです。議会では少数派でも、世論の圧倒的支持を得て南北関係の歴史的な改善に取り組むというのは、並々ならぬ覚悟があってのことだろうと思いますが、卓越した指導力は見事と言うほかありません。一方で、わが国の首相はどんな不祥事があっても一定の支持率をキープし、議会では圧倒的大与党の後押しがありながら、朝鮮半島問題ではいつの間にか蚊帳の外になっている。妙に対照的な姿だなあと考えてしまいます。
2018年06月12日
トランプ大統領がどうしたことか6月12日に予定していた米朝会談を中止すると発表し、その後再び12日の予定は復活したのであったが、この間の半島南北の両首脳の動きについて、元外務官僚の佐藤優氏は1日の東京新聞コラムに次のように書いている; 外交において首脳間の信頼関係はとても重要だ。5月26日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が会談した。前回の会談が4月27日だったので、1ヵ月に満たない29日で再会談に至った。外交の常識に照らすと異例の事態だ。5月24日に米国のトランプ大統領が首脳会談中止の書簡を公表したことを踏まえ、再度、米国との首脳会談実施のための調整を金正恩氏が直接、文在寅大統領に頼んだのだ。 翌27日、北朝鮮政府が事実上運営するウェブサイト「ネナラ」(朝鮮語で”わが国”の意味)は、「金正恩委員長は、板門店分離線を越えてわが方の地域の統一閣に到着した文在寅大統領を温かく迎え、対面のあいさつを交わした。会談に先立って文在寅大統領は、板門店のわが方の地域の訪問を記念して統一閣の芳名録に『韓半島の平和と繁栄、朝鮮民主主義人民共和国の金正恩委員長と共に! 2018・5・26 大韓民国大統領文在寅』という一文をしたためた」と報じた。 この署名文からも、その後撮影された写真からも、金正恩氏と文在寅氏が、個人的に強い信頼関係によって結びついていることが伝わってくる。金正恩氏も文在寅氏も朝鮮半島での戦争を避けようと必死になっている。この努力に米国のトランプ大統領も応えるであろう。(作家・元外務省主任分析官)2018年6月1日 東京新聞朝刊 11版 25ページ 「本音のコラム-首脳間の信頼」から引用 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の首脳同士の間に信頼関係があるということは重要です。隣国の我々も、半島で武力衝突が起こるとただでは済まないであろうことは容易に想像できますから、休戦協定を出来るだけ早く平和協定に変えてほしいと思います。共和国側が核兵器を完全放棄するときは韓国の米軍も撤退するべきで、南北の対立の芽を完全に摘み取った上で、元々同じ民族なのだから、将来は南北両政府の上に「連邦政府」を設置して統一国家とするのが良いと思います。
2018年06月11日
「食事はしたのか?」という意味の質問に、正直に答えると都合が悪くなるので故意にはぐらかす目的で(パンを食べた事実には触れず)「ご飯は食べてません」と答えるという「ご飯論法」について、5月28日の毎日新聞は次のような記事を掲載した; 毎日新聞の世論調査で、加計学園問題を巡る安倍晋三首相の説明を「信用できない」とする回答が7割に上った。森友学園問題も含め、不信の背景には、論点のすり替えやごまかしを図る政府の国会答弁があるのではないか。そのからくりを暴く「ご飯論法」なるものが、注目されている。 ツイッター上に今月上旬、次のような投稿が載った。Q「朝ごはんは食べなかったんですか?」A「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」Q「何も食べなかったんですね?」A「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので……」 投稿者は労働問題に詳しい法政大の上西充子(うえにしみつこ)教授だ。国会質疑を「朝ごはん」にたとえ、政府の答弁を皮肉った。投稿は続く。Q「では、何か食ぺたんですか?」A「お尋ねの趣旨が必ずしもわかりませんが、一般論で申し上げますと、朝食をとるというのは健康のために大切であります」 投稿は計3000件もリツイート(拡散)され、ネット上で「霧が晴れた」などと共感が広がった。 「ご飯論法」をモリカケ疑惑に当てはめてみよう。 柳瀬唯夫元首相秘書官の昨年7月の答弁が典型だ。「職員と会った記憶がなくても学園関係者と会ったと答えるべきだ。意図的に触れなかったとしか思えない」と上西さんは話す。前国税庁長官の佐川宣寿氏や首相の答弁も、まともに答えない例に事欠かない。 加計孝太郎理事長が安倍首相と2015年2月25日に面会したとする愛媛県文書について、首相は文書発覚直後の22日午前、報道陣に「指摘の日には会っていない。念のため官邸の入邸記録を調べたが確認できなかった」などと否定。午後の国会でも野党2人の追及に同様の答弁をした。 この入邸記録、実は菅義偉官房長官が同じ日に「業務終了後、速やかに廃棄される取り扱いで残っていなかった」と説明していた。国会で三たび加計問題を取り上げた本村賢太郎氏(無所属の会)は「先ほどから確認できなかったと言うが記録はないということだ。正直に説明してほしい」と追及。首相は「廃棄する扱いで確認できなかった」とようやく正確な答弁をした。 上西さんは「記録が存在せず確認できなかっだのに、まるで『記録は存在し、確認したが面会の記載はなかった』と語ったように見せかけたかったのだろう」と見る。 「ご飯論法」に訳すと、こうだろうか。Q「首相は朝ごはん食べたんですよね」A「食べていません。念のため朝ごはんの記録を調べたが、食べた記録は確認できませんでした(実は記録がなくて確認できなかったのだが、はっきり言わないでおこう)」 上西さんは怒りを含んで言う。「いつまでモリカケ問題を追及するのか、との野党への批判があるが、不誠実な答弁で時間を空費する政府に問題があると冷静に認識すべきです」【和田浩幸】2018年5月28日 毎日新聞朝刊 14版 27ページ「まやかし『ご飯論法』」から引用 国会審議で、野党の質問に対して政府側が勝手に条件を付けた意味に曲解して、質問の趣旨とは関係ない答弁をして、あたかもきちんと答弁したかのような顔をする。モリカケ問題が持ち上がったときから、政府の答弁は「ご飯論法」の毎日で、特に戦後労働者の権利を保護してきた労働法制を闇に葬る「働き方改革法案」の審議なども、加藤厚労大臣の答弁は「ご飯論法」のオンパレードで、国会審議が会話として成立しておらず、全く形骸化している。こういう不誠実な国会審議を繰り返しているうちに議会制民主主義から人々の心が離れ、ファシズムが台頭することになると思います。こういう政権は早めに終わりにして、健全な民主主義を取り戻すべきです。
2018年06月10日
法政大学総長で「週刊金曜日」の編集委員も務める田中優子氏は、最近の日本の言論の状況や大学の在り方について、1日の「週刊金曜日」コラムに次のように書いている; 5月16日、「自由で闊達(かったつ)な言論・表現空間を創造します」という題名の総長メッセージを大学のHPに出した。ちかごろ、社会的発言を行なう大学の研究者たちに対し、根拠のない非難や恫喝(どうかつ)が起きているからだ。その中には国会議員による言動も含まれている。メッセージでは教員たちの名前を出さなかったが、同日の「総長日誌」では誰に何か起きたか、その背景を書いた。 一人は、裁量労働制に関するデータの誤りを最初に指摘した研究者、もう一人は、科学研究費を獲得し、プロジェクトを組んで研究してきた教員である。科学研究費とは、文科省の管轄下にある「日本学術振興会」において、多くの審査員たちが厳正公平に審査して採択をする研究費で、不正には極めて厳しい。審査の審査もしており、告発窓口もある。研究者に不正があると言いたいのなら、ツイッターやフェイスブックで言うのではなく、証拠をそろえて提出すべきなのだ。ただし告発が悪意に基づくものであった場合には、告発者の氏名の公表、刑事告発等が行なわれる可能性がある。 私は右翼左翼という分類を無駄だと思っている。ネトウヨという名付けも使わない。自分も他人も分類せず、まっすぐに議論することこそが面白い。誹謗(ひぼう)中傷する人々はきっと、ある種の感情を柱にした仲間集団に所属し、それに守られながら、何らかの理由でたまった溜飲を下げているのだろう。そこには思想のかけらもない。しかし国会議員がそれで良いのか。議員の仕事とは、重要なデータや研究を挟んで異なる意見をぶつけ合い、政策を真剣に議論する仕事である。研究内容に問題あると思うなら、批判もきっちりすべきだ。 憲法第23条には「学問の自由は、これを保障する」とある。国会議員に憲法を守らせるのは国民の責務だ。しかし憲法を守り、守らせるより、現政権を守ろうとする人々がいる。「それでも日本人か?」というせりふは、こういう時にこそ使うべきだ。 日大アメフット事件以後、「大学のガバナンスはどうなっているのか?」という声も聞こえる。体育会の監督が常務理事もやっている、という大学があることを知って仰天した。そういう大学は極めて特殊だ。体育会への責任と距離のあり方を、考えさせられた。暴力とスポーツは同じではないという当たり前のことも、言い続けねばならない。2018年6月1日 「週刊金曜日」 1186号 9ページ 「風速計-風圧はこれから強くなる」から引用 法政大学教授の山口二郎氏や上西充子氏を批判するということは、彼らの研究内容に疑義があるとか、科研費の使途に疑問があるということなのかと誰しもそう思うわけで、そういう問題の場合は政府の方に告発を受け付ける窓口が用意されており、そういう部署に正々堂々と証拠を揃えて告発しなさいと田中総長は言っているわけで、極めて正論です。一方の杉田水脈議員は大学教授の研究内容を批判できるほどの学識もなく、単に政府を批判する学者に国がカネを出すのはおかしいじゃないかという子どものような発想で「あいつはおかしいぞ」と何も知らない人々を扇動しようとしているだけで、国会議員にあるまじき仕業と言うほかありません。こういう議員の言動を放置しておくのでは、自民党の良識も疑わざるを得ません。また、この記事では日本大学の特殊な内部事情について触れていますが、それで私が思い出したのは、田中優子氏が法政大学の総長に就任して間もない頃、法政大学出身の落語家をゲストに招いて総長と対談するトーク・イベントがあり、友人に誘われて私もその対談を聞きに行きましたが、その時友人が会場である講堂に入ってしみじみ言ったのは「さすがに法政大学は民主主義の大学だ。私の母校の日本大学だと、総長がステージで何か話すようなときは客席の最前列は100人くらいは右翼体育会系の学生が席を占めてボディカードをやる。日大総長ともなると、巨大利権が絡んだ立場だから、いつ何処で何者に襲われるか分かったものではないから、そういう用心が必要だが、その点、法政大学は全然違う」と聞いて、私はびっくり仰天したのでした。
2018年06月09日
安倍首相の政権運営について、文芸評論家の斎藤美奈子氏は5月30日の東京新聞コラムに、次のように書いている; サスペンスドラマなんかだと、どんなに巧妙に逃げ続けても、動かぬ証拠を突きつけられた容疑者は「私がやりました」と認め、事実関係を語りだす。追う側と追われる側に論理的整合性が共有されているからだ。 世間が気を揉んだ日大アメフット部の問題も、当事者の会見や関係者の声明などで、事態は収束に向かいつつある。 しかるに、わが国会では「よし詰んだ」「もう逃げられまい」と思ってもまるで先に進まない。 加計問題に際し「私や妻、事務所がかかわっていれば、首相も国会議員も辞める」と述べた首相は「お金のやりとりがあって、頼まれて行政に働き掛けた、という意味でのかかわりはない」。 ひえ~、いつそんな解釈になったんだ。あなたのおかげで文書の改ざんや虚偽の証言をした者たちはどうなるの。 しかし、ひえ~は止まらない。加計孝太郎理事長と首相の面会について「実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまったように思う」(加計学園)。森友文書について「改ざんといった悪質なものではないのではないか」(麻生財務相)。 最低限の了解事項や整合性を放棄したら、ドラマにも事件にも解決はない。液状化した国会。この状態で働き方改革法案を採決する? 国ごと底なし沼に沈んでいくような気分。(文芸評論家)2018年5月30日 東京新聞朝刊 11版 23ページ 「本音のコラム-国会の液状化」から引用 森友学園や加計学園問題については、ツイッターでは半年前から「安倍政権は詰んだ」と何度もつぶやかれているが、上の記事が書いているように、いつの間にかそんな話は消え失せて、相変わらず安倍政権は継続してきている。これは、斎藤氏が指摘するように安倍政権が国民との間の最低限の了解事項や整合性を捨てたために起きている現象で、結局国ごと底なし沼に沈んで行っていると考えなければならないようだ。具体的には、このままズルズルと秋になって、憲法論議などは一向に盛り上がってはいないが、安倍政権はそんなことにはお構いなしで「十分時間をかけてきたので、ここで改憲発議をします」と衆参両院議長に宣言させてしまえば、後は財界が潤沢な資金量にものを言わせて朝から晩まで「改憲」のテレビ・コマーシャルを流せば、羊のごとく従順な30%のコアな支持層が賛成票を投じ、うまい具合に「最低投票率」の規定などないから、投票率などは20%だろうと10%だろうととにかく1票でも賛成が多ければこれで改憲だ、ということになって、日本は底なし沼にはまっていく。こういうシナリオを拒否するには、韓国の人々がやったように国民の実力行使によって政権を打倒するしかないのではないかと思います。
2018年06月08日
昨日の欄に引用した東京新聞の記事の続きは、自民党杉田議員に言い掛かりを付けられた研修者の反論を、次のように報道している; 杉田議員に問題視された法政大の山口二郎教授(政治学)は、本欄「本音のコラム」(4月29日、※引用者注:当ブログ5月3日に引用)で反論しているが、他の研究者らはどう受け止めたか。 「慰安婦」問題などを論じた研究グループの牟田和恵・大阪大教授(ジェンダー論)は、杉田議員のツイッターで「慰安婦問題は女性の人権問題ではありません」「税金を反日活動に使われることに納得いかない」などと批判された。 同グループは「規程に従い予算執行しており、不正使用や無駄遣いはない。幾人かは日本政府の『慰安婦』問題対応を批判する論文を執筆しているが、日本が国際的な人権を支持する国になってほしいからで『反日』とされるいわれはない」と反論。牟田教授は「無知や誤解に基づく誹膀中傷(ひぼうちゅうしょう)だ。国会議員にあるまじき偏った言い方」と憤る。 琉球独立論などを研究している松島泰勝・龍谷大教授(島嶼(とうしょ)経済学)は「八重山日報」に寄せた杉田議員の論稿で「沖縄県の振興開発と内発的発展に関する総合研究」という研究名で科研費を受け取ったとされ、税金を使って「『琉球独立』を主張するのはいかがなものか」と指摘された。 しかし、実際の内容は主に経済研究。松島教授は「科研費で琉球独立は研究していない。国会議員の影響力を使い、自らの意見に合わない研究を抑圧しようとしている。琉球ヘイトもここまで来たか」と驚く。 こうした動きで想起されるのは戦前の事例だ。1933年、京都帝国大(現京都大)の滝川幸辰教授(刑法)が、菊池武夫・貴族院議員らから講演内容などが共産主義的と攻撃され、大学を追われた「滝川事件」が発生。35年には、東京帝国大(現東京大)の美濃部達吉名誉教授の憲法学説「天皇機関説」をやはり菊池議員らが批判し、政府が同学説の流布を禁じた「天皇機関説事件」が起きた。 戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏は「いま国会議員が非難している構図は、まさに天皇機関説事件で菊池が『学匪』と批判したのと同じ。もともと美濃部を目の敵にしている右翼がいたが、口実が見つからず、そこに出てきたのが天皇機関説だった。学問レベルでの反論ではなく、国体に反するといった一方的な言い掛かりだった」と説明する。 その後、日本では軍部批判も姿を消し、破滅的な戦争に突入していった。「現在も威圧や恫喝(どうかつ)が増え、空気の流れは当時と同じように段階的に進んでいる。『反日』の背景にある国防の概念を大義名分に振りかざすのは、戦前の日本でも繰り返されたパターンだ」 上智大の中野晃一教授(政治学)も「ここでの『反日』は『反安倍』のこと。政権に異を唱えるのは許さないということだ。そもそも学問は国のために奉仕するものではなく、すぐ役に立つものも、そうではないものもある」と話す。 そして、一連のキャンペーンの狙いを「改憲」とみる。「国民投票のときに自由な議論をされては困るので、学者を黙らせ、萎縮させようと仕掛けている。こんなことがまかり通れば、日本の大学の競争力や国力もますます弱まる」 田中総長は、科研費を口実にした学者への圧力について「看過してしまえばどんどん広がってしまい、学問の自由や大学での言論が萎縮してしまう。ひいては学問の自主性が失われ、学問が政権の道具になってしまいかねない」と危ぶむ。 「誰かの発言に対し、わけも分からず乗っかってしまうことは危険だ。今回の件も科研費の仕組みを調べてみれば、国会議員の発言が誤りだとすぐに分かる。賛同する前に踏みとどまり、自分で考えてほしい」<デスクメモ>「偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵(ののし)られた世の中を、私は経験してきた」。こう記したのは昭和天皇の末弟で、歴史学者の故三笠宮崇仁親王だった。この感覚は一昔前までは「常識」だった。ここでいう常識は「正気」と言い換えてもよい。(牧)2018年5月30日 東京新聞朝刊 11版 23ページ 「慰安婦、沖縄・・・「反日」と攻撃」から引用 この記事からも分かるように、科学研究費の支給は厳しく管理されており不正に受給して目的外に使うことはほとんど不可能で、また、「反日」だと騒ぐ水田議員の目的も、国家予算の適正使用というよりは政府批判をする研究者の口封じが目的であることは明らかです。このような反社会的な行動をする議員に対しては、公党として自民党は必要な制裁を科すのが社会的責任というものではないでしょうか。
2018年06月07日
政府批判を口にする学者に国から研究費を支給するべきではないという、まるで江戸時代のような発想で言論の自由を封じようとする風潮に対し、法政大学の田中優子総長は先月、言論表現の自由の大切さを訴える声明を発表したが、その背景にはどのような問題が進行しているのか、5月27日の東京新聞は次のように報道している; 法政大学の田中優子総長は今月16日、「自由で闊達(かったつ)な言論・表現空間を創造します」というメッセージを発表した。文部科学省や外郭団体が研究者らに交付する科学研究費(科研費)について、自民党の国会議員らが繰り広げる「反日活動に協力する学者に配られている」とのキャンペーンを意識してのことだ。キャンペーンと戦前の天皇機関説事件などを重ね、状況を懸念する研究者は少なくない。(白名正和、橋本誠) 「科研費をめぐる問題は学問の自由が失われるか否かの問題。法政大だけでなく、学問全体にとって深刻な事態だ」。田中総長は取材にそう語気を強めた。 背景にあるのは、自民党の杉田水脈衆院議員や、その賛同者による科研費をめぐる一部研究者へのバッシングだ。同議員は2月の衆院予算委で、戦前に朝鮮半島から徴用された徴用工問題に取り組む研究者に科研費が交付されたことを引き合いに「徴用工問題は反日のプロパガンダ。科研費で研究しているひとたちが、韓国の人たちと手を組んでやっている」と訴えた。 その後もネット番組などで、政権に批判的な研究者らを名指しし、「科研費が反日の人のところに使われている」などと主張。「国益に反する研究は自費でお願いいたします」と発信し、物議を醸している。 田中総長はメッセージに「適切な反証なく圧力によって研究者のデータや言論をねじふせるようなことがあれば、断じてそれを許してはなりません」と記したが、科研費問題に加えて、働き方改革の不適切データ問題で同大学の教授が中傷されたことも異例の発表の動機になったという。 科研費は文系か理系かを問わず、幅広い分野の研究を支援する制度。研究者が応募し、同じ分野の研究者が審査、採択されれば研究費が助成される。年間の予算額は約2200億円で、応募件数は約10万件(2016年度)に上る。 研究者の政治的立場などは審査の対象外で、交付後は大学など研究機関が管理するため、研究以外の用途で使うことは不可能だ。 杉田議員の趣旨は「科研費は税金で、日本のために使われなければならない」ということだが、田中総長は「科研費の交付を研究者の政治的立場や考え方で線引きすることは絶対にあってはいけない。憲法で定められた学問の自由が脅かされる。議員にはまず、憲法を学んでほしい」と語る。 「宇宙の研究、外国の研究、戦争の研究など全てが日本のためになっている。『日本=政権』ではない。時の政権にとって役に立つているか否かで判断すること自体、ナンセンスだ」 今後、事態の推移によっては、法的手段も辞さないという。「一部の弁護士会に対する特定弁護士への大量の懲戒請求と同様、研究に差し支える事態になれば、検討せざるを得ない」「こちら特報部」は、杉田議員にも発言の真意を尋ねたが「本人がいないため回答できない」(同議員事務所)とのことだった。 ちなみにこの問題では、林芳正文科相が22日の参院内閣委員会で「科研費は、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する。科研費の執行は適正に行われている」と答弁している。2018年5月30日 東京新聞朝刊 11版 22ページ 「脅かされる学問の自由」から引用 日本が朝鮮半島を植民地支配した時代は日本本土に労働力が不足したときは徴用工を募集したり、それでも足りないときは強制連行するというようなことがあったのは事実であって、杉田議員が言うような反日プロパガンダなどというようなものではないことは、今では常識というものです。それに異議を唱えるのであれば、それなりの根拠を揃えて学術論文を作成し歴史学会に提出して堂々と論戦を挑めばよいのであって、そんなことは一切抜きにして「反日」のレッテルを貼るのは言論表現の否定であって、国会議員のすることではありません。そもそも科学研究費の執行に疑問があるなら、そのことを文科省に問い合わせれば済むことであって、厳しい競争を勝ち抜いて科研費を獲得した学者をバッシングするのは、ためにする嫌がらせであって、国会議員のすることではありません。所属する政党も責任を問われるべきではないかと思います。
2018年06月06日
働き方改革法案と聞けば何か「より良い働き方」を規定する法案で、これが施行されれば国民の生活が良くなるような幻想を感じさせるが、実態はその正反対で、現在の労働環境でさえ「過労死」が出ているのに、より一層「過労死」を増加させる危険性のある法案である。この法案を通すために政府が説明に使ったデーターはデタラメであったことが明らかになったが、それでも政府与党はごり押しで衆議院を通過させるという暴挙にでた。そのことについて法政大学教授の山口二郎氏は5月27日の東京新聞コラムで、次のように批判している; 政府・与党は、いわゆる働き方改革関連法案を力ずくで衆議院の委員会を通過させた。これは、エリートの傲慢という日本の時代精神を象徴している。 まず、働き方改革という名前そのもの、そしてその中心である高度プロフェッショナル制度は、働く人をモノ同然に扱いたいという経済エリートの傲慢、強欲の産物である。高プロは、一定年収以上の専門職について、定額俸給でいくらでも働かせることを可能にする制度である。適用範囲が低い所得層に拡大されることは、過去の派遣労働の拡大の歴史に照らしても、確実である。現代の資本主義は、マルクスの時代のように、人を無際限に使役する野蛮に逆戻りしているようだ。 そして、この立法過程は政治・行政のエリートの傲慢を象徴している。法案が必要な根拠として厚生労働省が提示した労働実態に関する調査には多くのミスやでたらめが発見された。それにもかかわらず加藤厚労大臣は法案を推し進め、国会質疑で野党議員から理詰めの追及を受けると、あさっての返答を繰り返し、審議を崩壊させた。そして、過労死被害者の遺族が話し合いを求めても追い返した。この法案を推進する政治家と官僚は、国民と野党政治家を対等な人間とは思っていないのである。 経営者、大臣、官僚はそんなに偉いのか。(法政大教授)2018年5月27日 東京新聞朝刊 11版 27ページ 「本音のコラム-傲慢の時代」から引用 この記事の末尾には経営者、大臣、官僚はそんなに偉いのかと書いているが、一応建前では人は法の下に平等ということになっている。にも関わらず、企業経営者から政治資金をもらっている大臣は、官僚を人事権をエサにしてコントロールし、国民を低賃金で際限なく働かせることを可能にする法律をごり押ししようとしている。この法案を成立させることによって経営者、大臣、官僚が「オレ達は偉いんだから、オマエら国民は黙って従え」という体制を、これから作り上げようということだと思います。本来は、労働者に残業をさせておいて残業代は払わなくてもすむようにする制度は労働法違反ですから、こういうふざけた法案が提出された時点で労働組合は全力で全国規模のストを打って抵抗するべきだったのですが、労使協調などという馬鹿げたスローガンで闘う姿勢を捨てた連合は、足下を見られて、抵抗する術もなく被支配階級に落とし込まれる運命ということだと思います。ただでさえ労働生産性が低いのが問題だというのに、残業代無しで働けということになれば益々生産性は低下し、やがて国力そのものが衰退していくという危機感は、今さえ良ければ後のことは知らないという発想の政府与党、財界の人たちには望むべくもありません。
2018年06月05日
保守派の論客として知られる東京工業大学教授の中島岳志氏は、近い将来日米同盟が終わる見込みであることと、その後の日本がどうなるのかという問題について、5月25日の「週刊金曜日」に次のように書いている; 日米外交で、日本がないがしろにされる事態が続いている。北朝鮮外交では、蚊帳の外。4月の日米首脳会談では、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の対象から日本を外さないことが伝えられた。 ディール(取り引き)外交のトランプ大統領になって以降、はっきりと露呈したのは、アメリカが日本を大して重視していないという現実である。日米は強い同盟関係で結ばれているという想いは、勝手な日本側の幻想にすぎない。 おそらく、それほど遠くない時期に日米同盟レジームは終わる。対米従属路線は、いつ崩壊するか判らない不安定なものへと、確実にシフトしている。 日米同盟が終焉を迎えれば、バラ色の未来がやってくるのかというと、そう簡単ではない。今アメリカにすがっている自称保守派は、あっさりとアメリカを手放し、この時が来たとばかりに右派的な政策を遂行していくだろう。 参考になるのは、トランプ氏が大統領選に勝利をおさめたときの『産経新聞』の論評である。東京本社編集局長の乾正人氏は、「トランプ大統領で、いいじゃないか」と題した文章(2016年11月10日)で、次のように言っている。 「いよいよ米軍が撤退する、となれば、自衛隊の装備を大増強すればいい。その際は自前の空母保有も選択肢となり、内需拡大も期待できる。沖縄の基地問題だって解決に向かうかもしれない」。「日本も米国に軍事でも経済でも過度に依存しない『偉大な国』を目指せばいいだけの話である」。 自主防衛となれば、憲法9条改正は当然。中国に向けて核武装という外交カードを突きつける。そんな議論が展開されている。 真っ先に影響が出るのは、歴史認識問題だろう。アメリカという箍(たが)が外れると、首相の靖国参拝を踏みとどまらせる足かせがなくなる。河野談話、村山談話の見直しが進められ、右派政治家の「妄言」が正当化される。 このような政策は、アメリカという後ろ盾を失い、不安と動揺を抱えた国民に支持されるだろう。右派言説が今以上に拡大し、浸透することを覚悟しなければならない。 私たちは、この超右傾化に備える必要がある。ポスト日米同盟の世界を現実的に考えることが、「その時」のパニックへの抑止になる。2018年5月25日 「週刊金曜日」 1185号 9ページ 「風速計-アメリカなき超右傾化に備える」から引用 この記事が紹介する「産経新聞」の主張は、米軍が日本から撤退した時は、撤退した米軍の装備に見合う軍備を日本が自ら持つべきであるということのようであるが、それは無駄だと思います。元々日本に基地を置いた米軍の目的は、スターリンに指導された当時の国際共産主義運動の膨張政策に対向するためであったので、その中心勢力だったソ連が崩壊し冷戦が終結しており、冷戦の遺産だった朝鮮半島の分断も解消される方向で交渉が進められているのですから、この先に過去にあったような日本も巻き込まれるような大きな戦争が起きるとは考えられません。したがって、日本の防衛力はこれまでと同様に「専守防衛」を旨とし必要最小限度に押さえるべきです。大昔には農業生産が国力を規定した時代があり、その時は国力増強を目的に領土を広げる戦争をしました。その後、資本主義経済が発達すると市場拡大のために戦争をした時代がありました。しかし、現代は軍事力の後押しがなくても資本が勝手に国境を越えて活動する時代になりましたので、もはや軍隊は無用です。また、この記事が紹介する「産経新聞」の主張で指摘しなければならないのは「米国に過度に依存しない『偉大な国』を目指す」と言っている点です。産経新聞のこの主張は事実の誤認に基づいている。国家を規定する「領土、国民、主権」のうち、領土も人口も日本はアメリカや中国に遠く及ばないという現実を見れば、将来の日本が中国と肩を並べる「大国」になるのはムリな話です。戦後の長い間、日本がアメリカに次ぐ経済大国の地位にいたのは、たまたま中国が歴史的な経緯で近代化に遅れをとったために偶然そうなっただけのことであって、長い時間が経てば偶然的な要素は平準化されて本来あるべき姿でバランスがとれていくのが自然の在り方だと思います。
2018年06月04日

駅の通路のような公の場所でビラ配りを禁止することは憲法上許されないことが確認された事案について、5月13日の「しんぶん赤旗」は次のように報道している; 「この場所での宣伝活動、ビラ・チラシの配布等の行為を禁止します」――。駅前などにこんな看板や掲示があります。しかし弁護士らが、これらの法的根拠を問い合わせると、施設管理者の自治体などが撤去するケースが神奈川県内で相次いでいます。弁護士らは「街頭宣伝は市民の権利。取り組みを全国に広げたい」と話します。(安川崇記者)◆神奈川 弁護士らが指摘/看板撤去相次ぐ 同県川崎市のJR川崎駅通路。「許可なく次の行為を禁じます。1販売・配布2勧誘・演説」と書かれた掲示のうち、「配布」と「演説」の部分がテープで隠されています。同市ホームページにあった「通路ではチラシ等の配布は認めていません」という記載も、削除されました。 編集部の取材に市の担当者は「4月に掲示を撤去しようとしたがはがれず、テープで隠した」と説明。「(禁止の)明確な根拠はなかつた」と話します。 問い合わせたのは自由法曹団神奈川支部(森卓爾支部長)。手分けして県内各地の駅前通路などを調査し、これまでに7ヵ所でこうした看板類を確認。法的根拠を管理者に尋ねました。 そのすべてで管理者が看板を撤去するか、ビラ配布や署名活動を禁じる部分を隠すなどしたといいます。 同支部の大川隆司弁護士は指摘します。 「道路上の宣伝活動の自由は、憲法21条で保障されています。道路管理者や警察が、あたかも宣伝活動が一律に禁止されるかのような掲示で市民を萎縮させてきたのは問題。こういう例は全国にあるはずです」 同支部によると昨年6月の共謀罪成立後、市民から「それまで自由に宣伝していた場所で、警察官に中止を求められた」との相談が多く寄せられています。そのため、今回の成果を「画期的」としています。 きっかけは一つの訴訟でした。 2016年2月、市民団体「#マネキンフラッシュモブ@かながわ」が同県海老名市の駅前で、「アベ政治を許さない」などと書いたカードを掲げる宣伝をしました。翌月、市は「管理者の承認がない」として参加者に中止命令を出しました。 団体側は、表現の自由の侵害だとして市を提訴。17年3月、横浜地裁は「歩行に著しい支障をきたすものではなかった」として市の命令を取り消し、判決は確定しました。 この訴訟を受けて同支部は、駅前などの看板に着目しました。 今年1月に問い合わせたJR横浜駅前のケースでは、管理者の横浜市が同支部に「掲示は13年、警察の依頼で協議し設置した。当時、イベント時に露店が多く通行に阻害があった。誤解を招くので掲示は撤去する」と回答しました。 バレエピアニストで上記訴訟の原告だった朝倉優子さんは憤ります。「地元の駅前でも、ビラ配布が『法律により罰せられることがある』と明記されていた。根拠なしに禁止していたなんて」◆管理権より「表現の自由」-自由法曹団神奈川支部長森卓爾さん 施設管理者には「管理権」があります。しかし憲法上の権利としては、民主主義の基礎そのものである「表現の自由」の方が重視される。表現の自由のため管理権は制約を受けるという関係です。 「吉祥寺駅構内ビラ配布事件」最高裁判決(1994年)の伊藤正己裁判官による補足意見が有名です。 一般公衆が自由に出入りできる場所でのビラ配布は、表現の自由の手段として軽視できない意味を持つ。駅前広場などはそのための場として役立つ。そのような場所でのビラ配布を処罰することは違憲の疑いが強い」と指摘しました。 公道でのビラ配布などに警察官が、道路交通法を根拠に「許可が必要だ」と干渉するケースもあります。 道交法は「交通に著しい影響のある行為」を許可制にしていますが、憲法の下では「著しい影響」の要件に厳格な解釈が求められる。それがしばしば忘れられています。 街宣活動の自由は裁判例でも市民の権利として認められてきました。萎縮する必要はありません。無用なトラブルは避けながら、自信を持って、毅然(きぜん)とした姿勢で臨むのがいいでしょう。2018年5月13日 「しんぶん赤旗」日曜版 33ページ 「『ビラ配布禁止』法的根拠なかった」から引用 路上をデモ行進する場合は他人の通行を著しく妨害する危険性があるので、事前に道路交通法に従って警察の許可を取る必要があります。しかし、駅前や通路で少数の市民がビラを配る程度で他人の通行を妨げないのであれば、憲法に保障された「表現の自由」が優先される。実に分かりやすい事案であると思いました。
2018年06月03日
財務省で佐川理財局長(当時)のウソの国会答弁と矛盾しないように決裁文書を改ざんしたことが明るみに出たため、与野党が財務省を批判したと5月25日の読売新聞が報道している; 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る問題で、与野党からは24日、財務省の対応に批判が相次いだ。昨年2月以降の国会会期中に佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)が答弁した内容に合わせ、決裁文書の改ざんや交渉記録の廃棄を行うなど、国会軽視の姿勢が際立つためだ。 自民党の竹下総務会長は記者会見で「正直言って腹が立つ。役人としての誇りを捨てたのではないか」と財務省を批判した。竹下氏は「猛省どころではない。猛省の3乗ぐらいやってもらわないと、とても間に合わない」と語気を強めた。 石破茂・元幹事長は石破派の定例会合で「誰の指示に基づいてこんなことになっているのか。国会自体が愚弄されていることにもなりかねない」と指摘した。公明党の北側一雄中央幹事会長も記者会見で「とんでもない話で、許されてはならないことだ。なぜ改ざんがあり、廃棄までされたか、誰が指示したかを調査してもらいたい」と訴えた。 与党からも徹底調査を求める声が上がっていることを受け、政府も真相究明に協力する構えをみせている。安倍首相は28日、衆参両院の予算委員会の集中審議に出席するほか、30日の党首討論で、原因究明と再発防止に取り組む姿勢を強調する考えだ。 これに対し、野党は政府批判の勢いを強めている。立憲民主党や国民民主党など野党5党の幹事長らは24日夕、東京・有楽町でマイクを握った。立民の福山幹事長は「首相と役人が堂々とウソの答弁をし、答弁に合わせて、文書を捨て、隠す。絶対にあってはならないことだ」と通行人に呼びかけた。 国民の大塚共同代表は記者会見で「『財』を『罪』と書くような財務省になってしまう。解体した方がいい」と語った。共産党の志位委員長は記者会見で「1年以上、国民と国会を欺いてきた責任は極めて重く、財務相、首相の責任も重く問われる」と指摘した。 これに関連し、国民は24日、森友・加計学園問題の真相究明に向けた特別委員会を国会に設置するよう衆参両院議長に要望した。2018年5月25日 読売新聞朝刊 12版 2ページ「与党、財務省に『猛省を』」 この記事によれば、自民党の竹下総務会長は「正直言って腹が立つ」と言っているが、これは彼の正直なコメントではないと思います。本当に腹が立っていれば、佐川理財局長が何故ウソの答弁をしたのかという原因も追及するはずで、総理の意向を忠実に実現するために国民には知られたくない悪巧みの結果、数億円の国有地をタダ同然に森友学園に譲渡する結果になった、そういう事実を隠すために佐川氏は事実と異なる答弁をし、その虚偽答弁と矛盾しないように決裁文書を改ざんしたことは、今では疑う者はいないと思います。しかし、竹下氏はそこまで話を遡ることを敢えて避けて、(どういう理由があったのかは敢えて問わず)役人としての誇りを捨てたために起きた不祥事であるかのように「演技」したコメントで問題を矮小化している。しかし、実際は内閣府に設置された内閣人事局を通じて全官僚に対し、首相官邸は睨みを効かせており、国民全体に対する奉仕者という本来の姿を捨てて、首相に奉仕する奴隷のような態度でないと生き延びることができないシステムになっている。そういう現実を隠蔽する竹下総務会長のコメントは、決裁文書を改ざんした役人と同じくらいに罪深い。
2018年06月02日
国会中継のテレビで、まるで時代劇ドラマの悪代官のようなふてぶてしい薄笑いを浮かべる安倍総理と麻生副総理について、ルポライターの鎌田慧氏は5月15日の東京新聞コラムに次のように書いている; 森友、加計問題のテレビの国会中継を眺めている。身を寄せ合って座っている安倍総理と麻生副総理の挙動に眼を凝らして、飽きることがない。 言論の府の中心にいながら、質問者が発する言葉に、さまざまな人びとの希望や願いや疑問がふくまれていることへの想像力と謙虚さがまったくみられない。相手の言葉にばかりか、自分の言葉にさえ愛情がない。 柳瀬唯夫元首相秘書官は、加計学園関係者と官邸で面会していたことを国会の場で告白させられた。一年以上も隠していた秘密だったのに、首相は「問題ない」と冷酷に切り捨てた。屈辱的な否認は誰のためでもない、首相のウソをかぱうためのウソだったはずだ。 「妻や自分が関係していれば、総理も議員も辞任する」。エエカッコシの極地。幼稚なミエに、森友の佐川宣寿前国税庁長官や加計の柳瀬さんは全国中継された国会の場でウソの上乗りをさせられた。恥辱だったろう。 国会は暗い。その行方はますます不安だ。ウソが憲法を侵蝕している。韓国では、国政私物化を照らし出したろうそくデモが、希望の光明となって道を埋め尽くした。 一本一本のかぼそい明かりは、無数の光の帯となり、抗議の海となって圧倒した。日本にも灯龍流しで被爆者を弔う伝統がある。ろうそくデモの美しさで、国会前を埋め尽くし、議場を浄化しよう。(ルポライター)2018年5月15日 東京新聞朝刊 11版 25ページ 「本音のコラム-ろうそくデモ」から引用 安倍氏が「妻や自分が関係していれば、総理も議員も辞任する」と幼稚なミエを切ったために、佐川長官(当時)は大急ぎで部下に公文書を改ざんさせたのであったが、発言した安倍氏もそれを聞いた国民も、その発言は「森友学園が国有地を取得する上で、首相もその妻も一切関わっていない」という主旨であると理解していた。その上で、一部国民は「そのウソはそのうちバレるだろう」と予測したのであったが、実際に改ざん前の文書が出てきて、首相の発言はウソだったことが明らかになった。従ってこれは当然安倍氏は辞職するほかなくなったのであるが、窮地に追い込まれた安倍氏は「あの発言は、相手からカネをもらった見返りに便宜を図るという贈収賄のような形で関与していれば・・・という意味だったのだ」などと、ゴールポストをずらすような卑怯な手を使ってきた。こういう国民をなめたようなやり方を私たちは容認するべきではないと思います。
2018年06月01日
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