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2014.04.19
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カテゴリ: 読書案内
【吉川英治/新書太閤記 三巻】
20140419

◆英雄の影に軍師あり
私事ながら、高校生の息子は演劇部に所属している。
昨年の秋の文化祭では、チラシ作りに余念がなかった。
とにかく一人でも多くの人に見てもらいたいという気持ちに急いて、あれやこれやと、その構成に悩み抜いているようだった。
「題字はパソコンから拾えばいいかなぁ?」
「そこはチラシの要となる文字でしょ?」
「うん」
「М君にお願いしたらどう?」
「М君? おーそっか!」
М君というのは息子の友人で、書道五段の腕前を持つのだ。

後日、出来上がったチラシを確認すると、それはもう見事な題字で、何やら高校生の演劇とは思えない、前衛芸術の案内か何かと見紛うほどの出来栄えだった。
かえって息子たちの演じた芝居が、チラシの題字に負けてしまったのが切ない。
前置きが長くなってしまい恐縮だが、こんなささいなことからでも、プロデュース能力の重要性が分かると言いたかったのだ。(もちろん、私の単なる思いつきを、あたかもプロデュース能力の如く自我自賛しているわけではないので、あしからず。)
さしあたり戦国時代なら、それを“軍師”と呼ぶ。

『太閤記(三)』では、秀吉が三顧の礼を持って迎え入れた軍師・竹中半兵衛が、いよいよ活躍し始める。
秀吉がスゴイのは、自分が無学であることを謙虚にも認めていたことである。
そのため、兵法に明るい人材を必要とした。
戦国時代にあって、戦に勝つことが第一の目的ではあるものの、ただ槍や刀を振り回して武力にものを言わせて勝っただけでは、とうてい真の勝利を収めたとは言えない。
それゆえ半兵衛の並外れた知性が、秀吉の欲している家中の士風を高めるのに大いに役立ったのである。

三巻を盛り上げるのは、やはり姉川の合戦と叡山の焼討ちであろう。

「英雄も英雄の質それだけでは、英雄となり得ない。環境が彼を英雄にしてゆく。」


姉川では、織田勢もかなりの苦戦を強いられたが、それでも後半は浅井・朝倉勢を追い込んでいくことに成功した。
しかし信長は、小谷城に封じ込めた浅井勢の息の根を止めるところまではしなかった。
信長は急遽、岐阜に帰還するのだ。
眼に見える敵と見えない敵がいるとしたら、信長はその後者に備えるため、一つところに留まらず、ある程度の戦果を得たら本城に引き上げるのを良しとした。
時代の革命児でもある信長の敵は、叡山、本願寺などの僧団の他に、名ばかりの将軍家というやっかいな存在があったのだ。


それは、軍師の質の高さがものを言う、ということである。
現代は戦乱の世ではないけれど、自分に諫言してくれる真の友人の言葉に耳を傾けるのを嫌悪してはならない。
見え透いたお世辞に馴らされて、自分を見失うことのないように。
あなたに本物の友人はいるだろうか?

『新書太閤記(三)』吉川英治・著

~ご参考~
・新書太閤記 一巻は コチラ
・新書太閤記 二巻は コチラ

20130124aisatsu


☆次回(読書案内No.122)は吉川英治の「新書太閤記 四巻」を予定しています。


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から





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最終更新日  2014.04.19 05:53:21
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