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2012.04.09
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カテゴリ: 歴史
ちょっと中断があったけど、あいかわらず『中国化する日本』を読み進めています。
すでに中国脅威論に染まった大使にとって、この本の読み方が、どうしても「敵の本質とは何か?」という読み方になってしまうのです。

それにしても、中国が嫌いなはずの与那覇先生は、そういう感情を表に出さず、中国を客観視して述べるところが、さすが歴史学者という感じで・・・・歯がゆいのです。

・中国化した世界:1979年革命p233~235
・真説バブル経済p239~240

*********************************************************************
『中国化する日本』6 >目次
・真説「大東亜戦争」p206~209

・人権は封建遺制であるp267~271
*********************************************************************
『中国化する日本』5 >目次
・真説日中戦争1p197~200
・真説日中戦争2p203~205
*********************************************************************
『中国化する日本』4 >目次
・真説明治維新p120~123
・真説自由民権p138~140

*********************************************************************
『中国化する日本』3 >目次
・明朝は中国版江戸時代?p61~63
・窓際族武士の悲哀>p103~105


『中国化する日本』2 >目次
・「中国化」とは本当は何かp15~17
・真説源平合戦p43~45
『中国化する日本』1

*********************************************************************

<中国化した世界:1979年改革> p233~235より
 現在、世界で最も著書が売れる歴史家との評もあるハーバード大教授のN・ファーガソン氏は、今日の世界の起点は1989年の冷戦終焉ではなく、10年前の1979年にあると語っています。
 この年、イギリスで保守党のマーガレット・サッチャーが首相に就任、社会福祉を削って国有企業をガンガン民営化する「新自由主義」と呼ばれる市場主導の経済運営に着手し、2年後にはアメリカのロナルド・レーーガン大統領が後に続きます―彼らはもちろん、ピノチェトのような独裁者ではありませんが、労働組合をとことん敵視してかく首を強行するなど、非妥協的な政権運用で鳴らしました。
 しかしながら実は、この国家による保護を打ち切って市場での競争に委ねるという転換は、実は1年前の1978年にトウ小平が改革・開放政策として、中国で実施していたところだったのでした。その翌年に当る79年、トウはアメリカを視察、ますます「経済だけは自由化させる」方針に舵を切ります。
 すなわち欧米で標準的な研究書に書かれているように、新自由主義は英米中三国で同時に始まったのであって、アングロ・サクソンのやり方が世界の見習うべきグローバル・スタンダードだとするなら、いわばここで中国が日本を追い抜いたのです。いまだに「日本は先進国、中国は後進国」などといっているのは、無知な日本人だけです。

 さらにやはり1979年、ソ連がアフガニスタンに侵攻、社会主義体制もまた一個の帝国主義に過ぎないことを自ら照明して、レーニン理論の権威は地に堕ちます。この時アメリカが反共勢力として支援した過激派ムスリムたちが、のちのタリバーンやアル・カイーダになっていくことは有名ですね。
 ところが同年、イランでホメイニがイスラーム革命に成功、アメリカは元国王パーレビ2世の亡命を受入れ、こっちではイスラーム勢力の敵対者になってしまいます。イスラームとは、そもそも国家機構や居住地域にこだわらない信仰者の共同体であり、アル・カイーダこそ世界最強の「国境を超えるNGO」ですから、大国主導で国ごとに仕切られた政治を行う冷戦体制は、まさしくここから崩れ始めることになります。
 自分で育てたタリバーンに叛かれ、イランを抑えるために支援したイラクのフセイン政権にも反逆され・・・・というアメリカのイスラーム外交の下手さぶりは有名ですが、これは「傀儡政権さえ作ればうまくいく」といって中国大陸で自滅したかっての日本陸軍の忠実な再現です。地域ごとに仕切って「封建制」の枠組に住民を押しこめる、江戸時代のようなやり方は、日本人がやろうとアメリカ人がやろうと、そもそも「封建制」の伝統が弱い中国人やムスリムには相手にされないのです。

アメリカのイスラーム外交の下手さぶりと関東軍の自滅を、歴史学の視点で注目し、比較、評価する与那覇先生の語り口が鮮やかですね。日米とも、先生のような学者を参謀本部に任用すべきでした(もう遅いけど)


<真説バブル経済> p239~240より
 要するに、第一次大戦が世界を「江戸時代化」させる効果を持ったのに対して、第4次中東戦争以降の世界は顕著に「中国化」しはじめていたのです。冷戦終焉以降の、まるで世界全体が宋朝になったかのような状態は、その終点であって始点ではない。
 問題は、かような巨大な人類史の反転にいつ気づくかです。この変化に気づかないまま70年代、80年代を過ごしてしまったのが、その後にもたらされた『日本沈没』の一番の原因だというのが、社会科学系の研究者の標準的な見解です。
 オイル・ショックが欧米諸国にケインズ政策の見直しを強いたのに対して、日本の「新しいムラ」であった企業社会はこれを乗り切ってしまう。それが可能だった理由は、終身雇用制では不況になってもクビにできないことを織り込んで、もともと必用最小限の人員しか雇っていなかったからです。だから、景気が悪化してもそんなに生首を切らなくてよく、失業者があまり出ないから社会保障も破綻せず、福祉国家を続けていけたわけです。
・・・と、これだけ聞くと素晴らしい話ですが、逆に言うとこれは好景気になっても追加人員を雇わずに、不況期と同じ人数のまま各自が死ぬ気で働きまくって対応するという意味ですから、日本人の残業時間はGNP伸び率と顕著に連動します。まさしく勤勉革命ふたたびなわけで、「過労死」や「社蓄」が流行語となり、やがて欧米諸国の目も「エコノミック・アニマル」に対して厳しくなっていきます――あの「自虐的」な『武士道残酷物語』も、封建家臣のマゾヒスティックな忠誠心のなれの果てを、高度成長期の会社人間に見出して幕を下ろした点だけは、優れた洞察力といえましょう。
 その下で、ブロンが腐食をはじめています。80年代の日本を特徴づけるバブル景気は、人々が己の家職を忘れ、勝手気ままに財テク的なマネーゲームに狂奔した点、「中国化」の典型に見えるかもしれませんが、さのみあらず。そもそも戦時動員のための40年体制下、日本企業は資金調達にあたり、自社株の発行ではなく銀行からの借り入れを中心とする慣行が成立し、戦後もそれが続いて、日本の庶民は「預金はするが株は持たない」堅実な生活を送っていました。
 もちろん、それだけなら江戸時代ゆずりの質朴さで結構な話なのですが、預金には株より劣る点が一つあって、インフレに弱い。好景気の下で物価は上がっても、銀行がその分まで額面を増やしてくれるわけじゃありませんから、景気に連動して値段が上がる材で財産を保有しないかぎり、年々資産価値は目減りしていくことになるのです。普通は、じゃあ株でも持とうかという話になるのですが、日本は間接金融優位で株式市場が発展していないから、十分な量の株がない。
 それで、どうなったかというと、だったらもう土地しかないじゃないかという話になって、ありとあらゆる個人や企業や銀行が土地の買い占めと転売に走り、異常なほどの地価暴騰を見せた後にバブルが弾けて、巨額の不良債権のみが残った・・・・というのが、きちんと崩壊前にバブルを指摘していた野口悠紀雄氏の見立てです(『戦後日本経済史』)。


団塊の世代は「社蓄」や「エコノミック・アニマル」を自覚しながら、それでも頑張ってきたわけであるが・・・・
与那覇先生言うところの「中国化」に抵抗している自覚は当然ないわけで、もしそういう認識ができたなら、ブロンに陥らない道をたどることができたのではないかと悔やまれます。(if歴史になったが)
それにしても、「預金はするが株は持たない」堅実な日本は、世界でもっと評価されてもいいと思うのだが。






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Last updated  2012.04.10 08:20:06
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