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2012.04.10
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カテゴリ: 歴史
ちょっと中断があったけど、あいかわらず『中国化する日本』を読み進めています。


それにしても、中国が嫌いなはずの与那覇先生は、そういう感情を表に出さず、中国を客観視して述べるところが、さすが歴史学者という感じで・・・・歯がゆいのです。

・郡県化する日本:真説政治改革p247~248
・ベーシック・インカムをまじめに考えるp275~278
*********************************************************************
『中国化する日本』7 >目次
・中国化した世界:1979年革命p233~235


*********************************************************************
『中国化する日本』6 >目次
・真説「大東亜戦争」p206~209
・真説田中角栄p223~225
・人権は封建遺制であるp267~271
*********************************************************************
『中国化する日本』5 >目次
・真説日中戦争1p197~200
・真説日中戦争2p203~205

『中国化する日本』4 >目次
・真説明治維新p120~123
・真説自由民権p138~140
・工業化された封建制p167~169

『中国化する日本』3 >目次
・明朝は中国版江戸時代?p61~63
・窓際族武士の悲哀>p103~105

*********************************************************************
『中国化する日本』2 >目次
・「中国化」とは本当は何かp15~17
・真説源平合戦p43~45
『中国化する日本』1

*********************************************************************

<郡県化する日本:真説政治改革> p246~248より
 この細川内閣の最大の業績は、小沢氏のビジョンどおり、20世紀日本の「再江戸時代化」の核となってきた中選挙区制を廃止し、小選挙区制(ただし比例代表との並立制)を導入したことです。小選挙区制とは、「1選挙区からの当選者が1名である選挙制度」のことです。この場合、あらゆる政党は1選挙区から1人に絞って候補者を立てることになりますから、政党本位・政策重視の選挙戦が可能になり、中選挙区制のような自民党系候補どうしのバラマキ合戦がなくなって、政治がクリーンになるだろうと期待されたのです。
 同じ目的から、セットで政治資金規正改革が行われ、派閥や政治家個人宛ての献金に歯止めがかかると同時に、コーヒー1杯の値段がそのくらいだからという謎な理由で、国民1人あたり250円相当の税金を、議席数や得票率に応じて国から正当に配分する政党交付金制度が導入されます。
 そして実はこれらの改革には、「政治の浄化」のほかにもう一つ、共通する狙いがありました。それは、小選挙区における候補を1人に絞り込むための公認権と、政党を通じて各議員にも配分される政党交付金の管理権を掌握した、党中央の権力が所属議員やその地元に対して強くなることです。
 つまり、ここで日本の選挙と政党のしくみが、「封建制」から「郡県性」に変ったのです。 この細川連立政権時も、小沢氏は政治運営が強権的だと批判されたのですが、中国史でいえば貴族性を止めて皇帝専制に変えるような改革をやっているのだから、そうなるのはあたっりまえです。「日本もようやっと、中国と同じ社会にできるんだ」とわかって支持しているのなら、なにも驚くことじゃない。
 ところが明治維新の時と同様、「ええじゃないか」に踊っていた人々の多くは「政治への情熱」に共感しただけのただのパンクロッカーで、そういう歴史的文脈がまるでわかっていなかったのと、日本人の江戸時代恋しさが例によってぶり返して来て、わずか1年余りで「非自民連立」は自社さ連立に取って代わられてしまいます。

 国連が認める「正しい戦争」なら遠慮なく自衛隊を派遣せよという小沢氏の「中国化」政策を嫌った社会党が、政権交代にともない業界団体の陳情・献金など、「封建制」の旨みを吸えなくなって窮地に堕っていた自民党と手を組んだものです。この連立、議員数が圧倒的に少ない社会党の委員長である村山富市氏を、与党第一党である自民党が首相に担ぐという地位の一貫性の低い政権だったことを考えても「長い江戸時代」を続けるための政策と考えれば結構筋は通っていたのですが、百姓一揆と代官所が幕府維持のために提携するというのは、明治維新でさえみられなかったことですから、わかりにくさは否めませんでした。
 一方、政権を失って野党に転落した旧連立政権の諸政党は、次の選挙からは小選挙区制ですので合同しなければ不利とみて、小沢氏のリーダーシップの下で1994年、新進党を結成します。この時点で百姓一揆の旗は野党第一党の方に移るので、以降の社会党があっさり凋落してしまったのは周知のとおりです。
 それならここで、「中国化」路線の新進党と、「再江戸時代化」路線の自民党の二大政党制ということに落ち着けばまだすっきりするのですが、そうハッキリわりきれないのがブロン社会の苦しいところです。

「中国化」路線の小沢氏がリーダーになればスッキリするのに、裏でキングメーカーになるのがお好きなようで、困った人である。



<ベーシック・インカムをまじめに考える> p275~278より
 姥捨て山の幻影に踊らされた結果、お年寄りに手厚くしすぎて破綻しかけている年金制度や、不況の下で福祉代理機能を失った企業(ムラ)、離婚や非婚の増加でもはやセーフティネットの受け皿たりえない家族(イエ)など、江戸時代的な生活保障がことごとく崩壊してしまった今日においては、国家が直接ひとりひとりに定額収入を保証してくれるのは、魅力的でしょう。
 いわゆる左派的な人々だけではなく、新自由主義の経済学者だったフリードマンなど、ケインズ主義的な既存の福祉国家体制に批判的な識者からも類似の提案があり、支持層の裾野が広い点も注目に値します―国政政党のなかでは、田中康夫氏の新党日本がマニフェストに取り入れていました。私もポスト「長い江戸時代」の社会保障は、結局これしかないのかなと思っています。
 ただ、私がどうしても気になるのは、団体ごとではなく個人に対して直接国家がお金を出すことにした場合、それは政府の匙加減一つが生死を左右する状態の人間を大量に生み出すことになるわけで、特に日本社会の民度を斟酌した場合に、それってホントに大丈夫なの?ということです。
(中略)
 たとえば、カリスマ的な人気を誇る総理大臣に「この選挙で郵政民営化に賛成しないなら、ベーシック・インカムの給付額を減らす」と宣言されたら、どうなるのか。郵政民営化程度ならどっちでもよかったとしても、外国人参政権や憲法改正だったらどうなのか。フリードマンなどはハイエクの影響を受けているはずなのですが、「国家が生活保障するなら、いちばん効率的な個人的な個人宛の現金に限る」という自分の提案が、社会主義とは異なるもうひとつの『隷従への道』になってしまわないかという点、どうも無頓着な印象を受けます。

 この懸念、どうしても私は気がかりだったので、ちょうど2009年の政権交代の直後、たまたまご一緒した日本思想史の研究者に聞いてみたのですが、「当然ですよ、郡県制は基本的に専制のための制度ですから」と、即答されてしまいました―むべなるから、というところでしょうか。
 もちろん、集団ごとに現状を維持してあげる護送船団方式的な「封建制」がもはや機能しないからこそ、組織に属さない人々にも政府直轄で給付がいきとどく「郡県制」の社会保障が必要とされているという現状は、変わりません。これは、民主党政権が農協行政に替えて戸別所得保障を導入したのと同様、時代の流れとしては必然なのですが、やっぱりその行く末に待つものは日本社会の「中国化」なのか、どうにも気になるところです。

与那覇先生が、これしかないというベーシック・インカムであるが・・・・
too little too lateが信条ともいえる日本の官僚制度がベーシック・インカムを取り込むとはとうていあり得ないでしょうね。






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Last updated  2012.04.10 20:13:13
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