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2012.07.23
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政府は往々にして安全に関する市民の権利より、企業利益を優先するが・・・
遺伝子組み換え作物容認はオスプレイ配備や原発と同じでは?

「遺伝子組み換え企業の脅威」を読んで、そう思った次第です。


【遺伝子組み換え企業の脅威】
遺伝子
『エコロジスト』誌編集部編、緑風出版; 初版、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
バイオテクノロジーの分野で世界最大の有力企業であるモンサント。同社はラウンドアップ・レディ大豆に象徴される遺伝子組み換え除草剤耐性作物など遺伝子組み換え技術をてこに世界の農業・食糧を支配しようとしている。しかし、遺伝子組み換え食品の危険性が明らかになるとともに、遺伝子組み換え企業の戦略が、人類の健康と農業の未来、自然と環境にとって大きな脅威となってきている。本書は、モンサントの妨害にあいながらも出版された『モンサント・ファイル』の全訳である。増補版では、遺伝子組み換え作物問題の最新の動向を加えた。

<大使寸評>
米国の強欲なアグリビジネスが産み、産官人事交流システムと、金で動く弁護士が育てたのがバイオテクノロジーなんでしょう。
とにかく、官業癒着は日本の比ではないようです。

Amazon 遺伝子組み換え企業の脅威


この本のエッセンスを紹介します。

<ターミネーター技術:世界の食糧安保への脅局>p65~66
 モンサントの最新にして最大の技術は、世界の飢餓を救うという彼らの主張をナンセンスなものにしている。むしろ反対に、伝統的農業のまさにその基盤―毎年、種子をとっておくということ―を破壊してしまうおそれがある。そのうえ、この「遺伝子カクテル」は、新たな毒素やアレルゲンが食物連鎖の中に入り込むリスクを高めてしまうだろう。

 1860年、グレゴール・メンデル神父がエンドウマメの遺伝学に関する地味な書物を発表するちょうど5年前、いわゆる「近代的」食物交配による新種開発が始まった。そのとき、英国ブライトン市にあるリンネ協会の評議員であったメジャー・ハレットという人は、農民や仲間の種苗業者に対して、彼が所有する「系統の」穀類の商標を侵害すれば「厳しい処罰」を受けるだろうと警告していた。しかしハレットの種子は特許権を得られず、農民が彼の麦を買って、それらをまき、来シーズンのために最良の種子を選び、その土地の土壌や地形、気候にぴったりと適応した品種と交配させることを防止させることを防止するために彼ができたことは、ほとんど何もなかった。
 1980年になってやっと、メジャー・ハレットが心から望んだものを、ジョージ・シャルがつくり上げた。つまり、農民が種子をとっておき、発展させることを防止するための生物兵器である「交雑育種」という言葉に惑わされて、農民たちは、品種が離れた二種類の植物をかけ合わせることにより「雑種強勢」をつくり出すことができるだろうと考えるようになった。交雑育種によってつくり出された雑種強勢は、収穫量が非常に高く、その結果できた種子は不稔性、つまりそれを植えても栽培できないので、経済的な価値が高かった。今日、カルフォルニアからカザフスタンまであらゆるところで育っているトウモロコシの雑穂のほとんどは、ほんの少数の巨大な種子企業のどれかに管理されている交雑種である。
 シャルの発明からちょうど90年後、それらのなかでも最も巨大で、最も強い力を持つ企業の一つであるモンサント社は、交雑種以来の最も重要な種子独占技術の支配のために尽力している。しかし、1860年と違って、生命支配のためのこの道具は、特許権を得ることができる。3月3日(1998年)、アメリカ農務省とデルタ&パイン・ランド社というあまり知られていない綿花の種子企業は、米国特許5723765号、つまり技術保護システム(TPS)を取得した。それから数日のうちに、世界はTPSをターミネーター技術として知ることになった。ターミネーター技術が掲げた目的は、子孫を自ら抹殺してしまう食物―つまり自殺種子―を広めることである。



<回転ドア:モンサントと規制当局>p75~82
 伝統的に食品医薬品局(FDA)の幹部は、モンサントの幹部社員の出身であるか、あるいは退職後に同社に天下りしてきた。モンサントがしばしば安全性に疑いのある製品の認可を受けてきたことも不思議ではない。

 実験室科学から商品生産の方法への遺伝子工学の変化は、10年以内という短期間で起こった。米国政府はバイオテクノロジー商業化の時代が到来しつつあるとみなし、規制撤廃への道を選んだ。遺伝子工学は生殖の自然障壁を破り、植物と動物の育種を加速するものであるが、アグリビジネス企業は、めんどうな規制が新しい発見とひいては技術の商業利用を妨げるのではないかと警戒してきた。連邦政府は産業界の主張を取り上げた。公衆衛生と環境保全を優先させる厳しい予防的な規制を確立する代わりに、政府は、リスクアセスメント、産業界の科学、企業の自発性に依存する不十分な規制システムをつなぎ合わせた。
 米国は日本との厳しいハイテク経済競争のさなかにあり、農業に関する限りは、議員たちは遺伝子工学が世界農業における米国の優位の維持を可能にする新しい技術であるとみなした。連邦政府は遺伝子工学製品の将来の世界市場におけるアメリカの競争力を損なうような立法を望まなかった。
 バイオテクノロジー研究のガイドラインが政府機関によって初めて設定されたのは1976年のことで、国立衛生研究所(NIH)によるものであった。NIHは助言機関であって規制機関ではないのだから、ガイドラインを作ることはできるが、それを施行する権限は持っていない。最初から、NIHのガイドラインは科学者共同体と産業界の自主規制に依存していた。その傾向は現在も続いている。企業がますます遺伝子工学に取り組むようになるにつれて、NIHガイドラインは野外試験や遺伝子操作生物の大量生産に便宜を提供するようになった。1977年と1978年に遺伝子研究を規制するための16の法案が連邦議会に提出された。どれも通らず、NIHガイドラインがバイオテクノロジー研究の唯一の規制メカニズムであり続けた。
 1980年代初頭にアグリビジネス企業は遺伝子操作による植物、動物用医薬品、家畜を開発しつつあったが、これらの製品の開発、販売あるいは利用を規制するシステムはなかった。当時は、食品を含む遺伝子工学製品を「規制」する枠組みを作ったレーガンとブッシュ政権下の規制緩和の時代であった。現在もそれがそのまま適用されている。市民の安全ではなく産業界の利益が政府の最優先事項となった。行政管理予算局(OBM)、国務省、商務省、ホワイトハウス科学技術政策局の役人たちはは、バイオテクノロジーの開発を「妨げ」たり、ウォール街に「間違った」メッセージを送るようなことは何もしなかった。ブッシュ時代の大統領競争力評議会は、バイオテクノロジー業界を結束させて連邦政府による強い規制と綿密な監視に反対させた。
(中略)
 モンサントのようなアグリビジネス企業が現行の限られた安全規制を操作するのは珍しいことではない。新しい製品の長期的健康影響を判断するための研究は必ずしも要求されない。長年の間、多くの企業が製品を安全であると見せかけるように改竄した試験結果っを提出するか、危険性を示唆する情報や研究を隠匿してきた。このように企業を保護することによって、政府は健康と安全な環境に対する市民の権利よりも企業利益の追求を優先させるのである。

<規制の皮肉>p82~84
 バイオテクノロジー業界の頂点にあるモンサントその他の企業はいくつかの一見すると厳しい規制を好むようになったが、それは規制が企業の販売活動に役立つ場合だけであることがわかった。たとえば、企業がコストのかかる大量の科学データを規制当局に提出しなければならないという規制は、小規模なバイオテクノロジー企業や種苗会社が競争に参加するのを思いとどまらせるとともに、市民に新しいバイオテクノロジー製品が厳格な安全性評価を通貨しているがゆえに安全だという幻想を与える。
 たとえば1995年にモンサントは、毒素を産生するBT菌の遺伝子を含む遺伝子操作作物に対するEPAの規制を取り除こうとするEPA所管法案に反対するロビー活動を行った。当時は、遺伝子操作食品の市販が始まったばかりであり、モンサントはBT菌遺伝子導入作物に対するいかなるEPAの規制も遺伝子操作製品を公的に認知させ、環境団体の抵抗を弱めることに十分気づいていたからである。しかも、企業は規制のハードルを乗り越えるために大量の資金と資源を投入することによってのみ、ようやく自社のBT製品の販売にこぎつけることができるのである。大企業だけが当局のデータ提出要求に答えることができ、いったんデータを提出したらEPAの安全性評価プロセスをうまく排除することによって、市場は彼らの思うがままになる。



<進む多国籍企業による食料支配>p175~176
 遺伝子組み換え(GM)作物の作付けや流通を推進している国際組織が、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)である。このISAAAが発表した、2011年におけるGM作物の実績によると、栽培面積は1億4800万haになり、世界の農地の約10%に達した。その大半がモンサント社であり、種子の独占化がすすみ、多国籍企業の食料支配が強まっている状況が示されたといえる。
 現在、世界で販売されている種子の67%が10の多国籍企業が提供するという、寡占化が起きている(2007年)。しかも、トップ企業の米国モンサント社が23%を占め、米国デュポン社(15%)、スイスのシンジェンタ社(9%)というGM種子開発企業がトップ3を占めている。種子を支配し、食料を支配するためのGM作物開発であることが、いっそう明瞭になってきた。それを後押ししているのが、米国の食料戦略であり、その有力な武器が貿易自由化圧力である。
 (中略)
 ニュージーランド紙は、米国政府の2011年度年次報告の中で、米国がTPPに参加し、食料輸出を押し進める際の最大の障壁が、他国の食品表示制度にある、と指摘していることを伝えた。またGM食品表示制度の撤廃圧力が強まっていることを伝えている。このことは、もし日本がTPPに加盟すれば、GM食品表示の撤廃など、消費者の知る権利を奪う圧力が加わることを意味する。
 米国は力に任せて高圧的な販売戦略を露骨に示してきた。日本は、その中で米国とともに生きる道を歩み続け、TPP交渉参加を表明するなど、次々と米国政府の高圧的な姿勢に屈している。


政権党は一枚岩でないにしろ、政府はTPP参加、オスプレイ配備を表明しましたね。政府、官僚は国民よりもアメリカに奉じているとしか言い様がないんだけど。

オスプレイの場合、海兵隊隊員や基地周辺住民の生命を軽視する産軍複合体というメカニズムがあり、この官業癒着ぶりが遺伝子組み換え作物容認のメカニズムと同じではないかと思ったわけだが・・・・
オスプレイの犠牲者は今のところ米軍の軍人だけだから、モンサントの枯葉剤、耐ラウンドアップ植物よりは罪が軽いかもしれないですね。

オスプレイの安全性情報





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Last updated  2012.07.23 06:18:19
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