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2015.01.07
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カテゴリ: 気になる本
大声では語られていないが、日本の原子力発電は核抑止力と密につながっているわけで・・・
それが日米<核>同盟と言われる由縁でもあるのだろう。
被爆国でもあり、原子力ムラを持つ特異な日本が、東日本大震災を境に変わり始めている。
絡まった糸球をほぐすような難しさがあるのだが、この『日米<核>同盟』という本を読んで、その処方箋を知りたいと思うわけです。



日米

太田昌克著、岩波書店、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
広島、長崎、ビキニ、そして福島。四度の国民的被爆/被ばくを被りながら、なぜ日本は、アメリカの「核の傘」を絶対視して核廃絶に踏み出すことなく、また核燃サイクルをはじめとする原子力神話に固執し続けるのかー。日米の膨大な公文書と関係者への取材を駆使して、核の軛につながれた同盟の実態を描く、息詰まるノンフィクション。
【目次】
第1章 フクシマとアメリカー「3・11」が照射した核同盟の底流/第2章 「3・11」、もう一つの教訓ー核テロチームを派遣した盟主の懸念/第3章 盟約の闇ー外務官僚、安保改定半世紀の激白/第4章 呪縛の根底ー「同盟管理政策」としての核密約/第5章 「プルトニウム大国」ニッポンー懸念を募らせる盟主/第6章 もう一つの神話ー核燃サイクルと断ち切れぬ軛

<読む前の大使寸評>
「BOOK」データベースが、核の軛につながれた同盟の実態と表現しているが…
そのとおりだと思うのです。
 被爆国でもあり、原子力ムラを持つ特異な日本が、東日本大震災を境に変わり始めている。絡まった糸球をほぐすような難しさがあるのだが、この『日米<核>同盟』という本を読んで、その処方箋を知りたいと思うわけです。

rakuten 日米<核>同盟


この本で、国策民営という「無責任なムラ作り」のカラクリが述べられています。

<国策民営―「わな」の構図> よりp141~144
 1956年9月にまとまった「56長計」以来、核燃料サイクル、中でもその中核となる使用済み核燃料の再処理事業は「国」が青写真を描き、「民」がこれに従う形で進められてきた。
 青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場を運営する日本原燃の前身、日本原燃サービス社長も務めた元東京電力副社長の豊田正敏(取材時には90歳)は、2013年7月の取材に対し、再処理事業について「国策なので国がやってくれるという認識があった」と語っている。電力各社が出資してつくった日本原燃は紛れもない民間企業で、東日本大震災の後も再処理工場の早期稼動へ向けた準備を着々と進めてきた。

 今でこそ再処理事業は日本原燃という民間企業が取り組んできたものという認識が定着しているが、豊田に言わせるなら、再処理はそもそも国がやるべきものだという。豊田の証言をもう少し詳しく紹介しよう。

「再処理はほかの国でも国がやっているので、『国がやってくれるなら、やってもらったらどうか』という話はあった。高レベル廃棄物の処分も国がやってくれることだと。電力は軽水炉を問題なく動かすことが使命だと考えていた。ところが動燃が東海の再処理工場を作ってもまともに動かない。ともかくなっていないので、最初はイギリスとフランスに委託していたが、日本でやることになると民間でやらざるを得ないと。最初は国がやってくれるものだと、国策なのでバックエンドについては国がやってくれるという認識があった。動燃に任せておけないということで日本原燃をつくってやろうということになった」
 豊田によると、巨額の投資コストに加え、高レベル放射性廃棄物の処分という技術的にも困難な問題があり、当初、再処理事業に民間の電力会社は及び腰だった。しかも電力会社はあくまで発電事業者であり、化学工場である再処理工場の建設・運営は本来、専門外だ。科学技術庁(現在の文部科学省)傘下の動力炉・核燃料開発事業団(動燃、現在は日本原子力研究開発機構(JAEA)に統合)が中心となって、1970年代から本格化した茨城県東海村での再処理事業も順調ではなかった。

 そのため、1960年代から原発を動かしてきた電力会社は、原発で燃やした使用済み核燃料を再処理施設のある英仏両国に搬送して、再処理を委託せざるを得なかった。原発の立地・運転を規制する原子炉等規制法の下では、電力会社が新しい発電炉の設置許可を役所に申請する際、その炉で使った使用済み核燃料をいかに処分するか、その方法を明記しなくてはならないからだ。

 豊田の証言によると、電力会社の内部には早くから、使用済み核燃料を再処理せずに地中に埋設して廃棄する「直接処分」を望む声もあったようだ。しかし、先に見た「56長計」の時代から、再処理を軸とした核燃料サイクル路線の方向性が国策として確定していた。

 「国は再処理した方が安いと。技術的には直接処分は難しいと。国は一度決めたら何とか押し通そうと、いろんな理屈をつけて・・・」。こう豊田が苦々しげに回想するように、「国策民営」を是としてきた原子力発電事業の分野では長年、国が描く筋書き通りの範囲内でしか民間は基本的に動くことができなかった。そして、そんな国策民営の最たるものが核燃サイクルだった。
 「わなにはめられた」。本章冒頭で紹介したように、大手電力会社の中堅幹部が米核物理学者フォンヒッペルにこう口走ったのも、こんな国策民営の構図がもたらした帰結だった。



この本で、日米核同盟のいかがわしさと、米国のダブルスタンダードが述べられています。

<日本は悪しきモデルか―米政権中枢の疑念> よりp165~167
「ウィーンの国際原子力機関(IAEA)に行くと、イランの外交官からいつも『米国は日本にフリーパスを与えているくせに』と文句を言われるんだ」

 オバマ政権で原子力・核不拡散政策を担当する国務省高官が2013年春、来日した際にこう漏らしたことがある。これまで繰り返してきたように、日本は非核保有国で唯一、商業規模の核燃料サイクルを推進している。「日米核同盟」が、日本のこんなユニークな地位の後ろ盾となっていることは、これまで説明した歴史的経緯から明らかだろう。しかし「3.11」以降、約45トンものプルトニウム、すなわち核兵器5000発分以上の核物質を持て余す日本のことを、核兵器開発が長年疑われてきたイランまでもがこう言い出すようになった。そのことに、米政府内の核不拡散政策担当者は頭を抱えている。

 2003年に核開発疑惑が反体制派によって暴露されてからというもの、イラン政府高官は日本の外務省高官にたびたび「イランは日本のようになりたい」と言い続けてきた。その心はこうだ。「イランは核武装する気など毛頭ない。ただ原子力平和利用の分野で独自の燃料供給体制を確立し、先進国日本をモデルとした原子力大国を目指したい」

 右に記した米国務省高官の発言も、「日本モデル」を目指すと公言するイランが、「どうして米国は日本のプルトニウム量産を放置しながら、イランの核計画にばかり制約を加えようとするのか」とクレームを申し立て、ワシントンの採用する「ダブルスタンダード」を問題視している現状を映し出している。

 もちろん、1980年代からパキスタンの「核開発の父」、A・Q・カーン博士が構築した「核の闇市場」を通じてウラン濃縮関連資機材を人知れず調達し、2003年の疑惑発覚まで核兵器関連の技術開発をひそかに進めてきたイランは、国際原子力機関(IAEA)の厳格な査察を受け続けてきた日本とはまったく違う。それでも、たまったまま一向に消費のめどが立たない日本のプルトニウムが現存する事実は、イランに言われるまでもなく重い。

 「日米核同盟」に依拠した日本の平和利用計画が実は、「悪しきモデル」だったのではないのか。民生利用と言いながら、見通しの甘い計画立案や技術的に高いハードル、有事を想定できないビジネス文化などが相まって核燃料サイクルが思い描いていたように回らず、結果的に大量のプルトニウムをため込まざるを得ない事態を招いている―。「原子力平和利用の模範」と期待された「日本モデル」に対する、こうした深刻な疑念と危惧の念が盟主米国の政権中枢に芽生え始めている。

 「韓国やイランにとって悪い前例になる。プルトニウム利用の見通しが立たない日本で使用済み核燃料の再処理工場を稼動すれば、プルトニウムの在庫量が増える。これは良いモデルではない」


日米<核>同盟 byドングリ





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Last updated  2015.01.07 00:42:29
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