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2016.01.29
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カテゴリ: 気になる本
<朝日デジタルの書評から84>

・・・・で、今回のお奨めです。

・越境者の政治史
・第2図書係補佐

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【越境者の政治史】
越境者の政治史 より
移民

<「移動」に焦点、「日本人」とは:吉岡桂子(本社編集委員)>
 明治時代から第2次世界大戦の敗戦まで、「日本人」はどこへ移り住んだのか。そして、地域の秩序にどのような影響を与えたのか?。
 北海道や樺太から、ハワイ、旧満州、朝鮮半島、台湾、南北アメリカと、移住先での国籍、市民権、参政権をめぐる動きと政治や民族意識のありようを包括的にとらえようとした本だ。

 前提となる日本人を、北海道アイヌ、沖縄人、小笠原の欧米・ハワイ系住民、樺太アイヌと、明治維新のおりにすでに日本政府が統治の対象にしていた「大和人」に分けて、考察する。この分解が、日本の移民や植民を考えるときにも、見落としがちな日本のなかにある「民族」の視点を取り戻してくれる。

 「日本人」が広く移住した時代は、日本が主権国家として国境を画定し、外国に触れ、富を外に求め、そして戦争とともにあった。
 日本が支配した旧満州で日本人は、「在満日本人」だったのか、「日系満州国民」だったのか。ハワイで最大の民族集団だった日系人は、米国に対して中国や朝鮮半島からの移民とも連帯する東洋人系市民だったのか、それとも帝国日本の植民者だったのか。
 敗戦後、日本や米国統治下の沖縄へ戻った「引き揚げ」を、戦勝者の連合国側は「送還」と呼んだ。人の動きに焦点をあてた問題意識が、領土の争奪とは異なる戦史を描くことにも通じている。

 著者の関心の出発点がナショナリズムだったとするあとがきを読んでなるほど、と思った。いま日本列島に積みあがるナショナリズムと「大和人」の民族意識の関係など、現在の課題を考えるヒントが潜んでいる気がしたからだ。
 対象に据えた民族と地域の変数の多さから、約500ページの大著となっている。ぐんぐん広がる領域を本書で着地させたあと、どこへ向かうのだろうか。読み終えてはや、次作が楽しみになった。



塩出浩之著、名古屋大学出版会 、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
北海道・樺太へ、ハワイ・満洲・南北アメリカへ。大量に送り出された日本人移民たちの政治統合は、日本およびアジア太平洋地域の秩序にどのようなインパクトをもたらしたのか。移民史・政治史の盲点を克服し、一貫した視点で新たな全体像を描き出す。
【目次】
近代アジア太平洋地域における日本人の移民と植民/第1部 主権国家・世界市場と移民・植民(北海道の属領統治と大和人移民の政治行動ー参政権獲得運動と植民者意識/「内地雑居論争」における移民と植民ー開国と民族ナショナリズム/アメリカのハワイ王国併合と日本人移民の政治行動ー参政権獲得運動から日本人の「自治」へ)/第2部 帝国・国際秩序と移民・植民(矢内原忠雄の「植民」研究ー帝国日本の移民と植民/南樺太の属領統治と日本人移民の政治行動ー参政権獲得運動から本国編入反対運動へ/朝鮮・台湾における日本人移民の政治行動/「在満日本人」か、「日系満洲国民」かー「満洲国」における日本人の政治参加)/第3部 国民国家規範と移民・植民(帝国日本の植民者か、「東洋人系市民」かー来領ハワイにおける日系住民の政治行動/南北アメリカの日系住民と第二次世界大戦/引揚げ・戦後開拓・海外移住ー戦後の日本・沖縄と移民・植民)/移民・植民と「民族」の政治

<読む前の大使寸評>
吉岡桂子委員が選んだ、骨太の近現代史という感じでんな♪

<図書館予約:(とりあえず、予約カートにいれておこう)>

rakuten 越境者の政治史



【第2図書係補佐】
第2図書係補佐 より
又吉

<お笑いと文学、意外な近さ:速水健朗(コラムニスト)>
 芥川賞を受賞した又吉直樹『火花』は、純文学作品として前代未聞のベストセラー。お笑い芸人と権威ある文学賞の間にはギャップがある。そこに人は関心を示しているのだろう。

 本作は、又吉のエッセー集。エッセーの題名には太宰治から村上春樹まで、名作文学の題名が並ぶ。だが大半は、これらとは関係のない話が語られる。
 テレビでマラドーナを見た又吉少年は、その日以来、サッカー部の練習で左でしかボールを蹴らなくなる。周りは大変困る。又吉は元来右利き。蹴ったボールはコースをずれ、パスがつながらなくなる。周りからは「右で蹴れや!」と怒号が飛ぶ。だが、怒号はむしろ、ギャップのあった又吉とチームの間の交流のきっかけになっていく。

 又吉に小説の執筆の依頼をした編集者は、彼のエッセーからその文才を見出したという。なるほど、確かにエッセーのうまさは際立っている。
 カフカ『変身』の項では、珍しく小説の中身についてたっぷり触れられる。虫に変身してしまうという異常な状況に晒されながら、主人公は自分がセールスマンという職業を選んでしまったことを悔いている。又吉は、そのずれに笑う。一方、本作が戦時下「運命に身を委ねるしかない」一般市民の不条理が描かれていると知り真剣に再読する。でもやっぱり「笑ってしまう」のだ。

 小説『火花』には、世間一般との「ずれ」を追求する天才肌のお笑い芸人が登場する。彼は、それを追求し過ぎて苦難の道を歩むことになる。お笑いとは「ずれ」である。そして、文学との間に「ずれ」は意外とないのかもしれない。実際、カフカも自作を爆笑しながら友人に読み聞かせた逸話があるようだ。
 お笑い芸人と文学。ギャップがあるようでない。それがこの一冊から強く感じられる。


又吉直樹著、幻冬舎、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
お笑い界きっての本読み、ピース又吉が尾崎放哉、太宰治、江戸川乱歩などの作品紹介を通して自身を綴る、胸を揺さぶられるパーソナル・エッセイ集。巻末には芥川賞作家・中村文則氏との対談も収載。
【目次】
尾崎放哉全句集/昔日の客/夫婦善哉/沓子(『沓子・妻隠』より)/炎上する君/万延元年のフットボール/赤目四十八瀧心中未遂/サッカーという名の神様/何もかも憂鬱な夜に/世界音痴〔ほか〕

<読む前の大使寸評>
又吉直樹のエッセイはどんなかな?♪ということです。

現在、図書館予約して待つこと2ヶ月、なかなか順番が回ってきません。

<図書館予約:(11/29予約済み、副本7)>

rakuten 第2図書係補佐


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Last updated  2016.01.29 15:38:36
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