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2016.04.01
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カテゴリ: 気になる本
日曜日の朝日新聞に読書欄があるので、ときどき切り取ってスクラップで残していたのだが、これを一歩進めて、無料デジタル版のデータで残すことにしたのです。
・・・・で、今回のお奨めです。

・バラカ
・ゴヂラ

***************************************************************

【バラカ】
バラカ より
バラカ

<震災の暗黒郷を描き、時代を照らし出す:原武史(明治学院大学教授・政治思想史)>
 あの日の震災で、福島第一原発がすべて爆発した。東京は避難勧告地域に指定されて住民は西に逃げた。首都機能は大阪に移り、天皇も京都御所に移住した。2020年のオリンピックは大阪に開催地が変更された。震災から8年がたち、放射線量が下がってもまだ住民の半分以上が戻らず、東京の空き家では地方から来た若い日本人や外国人労働者がルームシェアしながら住んでいる。

 もちろん、これは現実の出来事ではない。だが桐野夏生の手にかかると、架空のはずの小説が禍々しい現実感をもって読者の前に立ち現れる。これまでもそうした作風で、あり得たかもしれない現実を鋭くあぶり出す小説を世に問うてきた著者が、ついにあの震災をテーマとする長編小説に挑んだのが本書である。

 タイトルの「バラカ」は、震災後に警戒区域で発見された一人の少女の名前を意味する。日系ブラジル人として生まれながら、中東のドバイで人身売買により日本人夫妻の子とされたバラカは、東京で震災にあい、被曝して甲状腺がんの手術を受ける。そして日本各地を転々とするうち、自分たちの運動のシンボルとして利用しようとする原発推進派や反原発派と次々に遭遇する。こうしていつしか原発をめぐる生々しい政治の渦中に巻き込まれてゆく。

 興味深いのは、日本という国家自体が西日本と東日本に事実上分断されていることだ。西日本は大阪を首都として震災前の国家を維持しているのに対して、東日本は震災であたかも別の国家のようになった。ここには、震災後も東京一極集中が強まり、東京でオリンピックまで開かれようとしている現在の日本に対する強烈な批判が込められている。

 関係者が相次いで消えてゆくなか、バラカはさまざまな人間の欲望や権力の網をくぐり抜け、強靱に生きようとする。エピローグでは、国家の周縁に当たる北海道の東端でようやく安住の地を見つけたバラカの姿が描かれる。

 古来、洋の東西を問わず、思想家はあるべき政治や社会の理想像を語ってきた。だが桐野夏生は、ユートピアではなく、ディストピア(暗黒郷)を徹底して描こうとする。一見正反対なその手法は、現実を逆照射する点で、思想家に通じるものがあると思う。

 かつては松本清張の推理小説が現実との鋭い緊張関係を保っていた。清張が昭和という時代を照らし出す小説家だったとすれば、桐野夏生もまた平成という時代を照らし出す小説家といえる。すぐれた小説家は同時にすぐれた思想家でもある。小説をフィクションとしか見なそうとしない学者にこそ読んでほしい一冊である。


桐野夏生著、集英社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
震災のため原発4基がすべて爆発した!警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」。ありえたかもしれない日本で、世界で蠢く男と女、その愛と憎悪。想像を遙かに超えるスケールで描かれるノンストップ・ダーク・ロマン!

<読む前の大使寸評>
怒りの桐野、感度良好やで♪
この本は神戸市の図書館はまだ未購入なので、購入あり次第に借出し予約の予定です。

rakuten バラカ



【ゴヂラ】
ゴヂラ より
ゴヂラ

<ハリウッド製黒船に一矢:ドングリ大使(映画評論)>
アナ雪やベイマックスなど、このところのハリウッド攻勢に危機感を覚える大使である。新自由主義で第二の敗戦を味わったニッポンは、ハリウッド攻勢で第三の敗戦をこうむるのか?
ここはやはりゴジラの登板で、一矢むくいる必要がありまんな。

大使の鬱憤をはらすようなゴジラ映画『シン・ゴジラ』が企画され、7月末公開の予定だそうです。

さて、高橋さんの『ゴヂラ』である。
新聞を見ると、南シナ海とか戦争法案とか児童虐待とか、体によくないニュースが溢れているわけで・・・・
その点、この本は喜劇調の短編小説集なので、息抜きには最適でおます。

高橋さんは文学論、小説、論壇時評とマルチ・タレントを発揮しているが・・・
朝日新聞の「論壇時評」のアンカーマンをこの3月31日をもって、降板したのです。
4年間の連載、ご苦労さんでおました。

今後は本来の文学あたりに注力するようですが…
この『ゴヂラ』を読むと、やっぱり小説が本業ではないか、と思ったりしたのです。

…と、エイプリールフール版の書評でした♪


高橋源一郎著、新潮社、2001年刊

<「BOOK」データベース>より
最近、どうもおかしい。世界全体が変なんだ。石神井公園の町に閉じこめられてしまった詩人。駅前で悪人募集のビラを撒いてる『影の総裁』。「正義の味方」をやってる作家のタカハシさん。“いけないこと”を唆す、本物の漱石と鴎外。でも、ゴヂラはなかなか現れない。いつになったらゴヂラは出て来る?どうしてゴジラでなく、ゴヂラなのか?謎を解きたくて、秘密を知りたければあいつの正体を突き止めるしかない。世界の秘密がわかってしまう、同時多発小説。

<大使寸評>
追って記入

rakuten ゴヂラ


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Last updated  2016.04.01 08:23:20
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