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2016.07.08
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カテゴリ: 中国
図書館で手嶋龍一, 佐藤優著『知の武装』という本を手にしたのです。
とにかく、昨今の大陸的策動に対しては、インテリジェンスで武装するしかないのかも。


武装

手嶋龍一, 佐藤優著、新潮社、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
 ニュースを鵜呑みにしていては、深層はつかめない。激流の世界で勝つには「知性(インテリジェンス)」が必要だー東京五輪と尖閣の関係、安倍首相の真の評判、シリアを左右したスノーデン事件の「倍返し」、中韓領土問題の奥の手、北朝鮮写真に隠されたメッセージ…
 日本最強の外交的知性がその情報力と分析力を惜しみなく披露。最新情勢の解読法から諜報の基礎知識までを解説した、武器としてのインテリジェンス入門。

<読む前の大使寸評>
とにかく、昨今の大陸的策動に対しては、インテリジェンスで武装するしかないのかも。

rakuten 知の武装


尖閣問題のあたりを見てみましょう。
p114~117
攻める習近平、怯むオバマ より
手嶋:2010年9月に尖閣沖で中国漁船が日本の巡視船に体当りを敢行し、中国人船長が逮捕された事件の直後には、ニューヨークで日米外相会談があり、その席上で、ヒラリー・ローダム・クリントン国務長官(当時)が、「日本が実効支配している尖閣諸島に中国が武力で手をつけるようなことがあれば、アメリカは日米安保条約第5条に基いて武力発動の用意がある」ことを明らかにしています。冷戦の終結後、日本の安全保障に関わる最も重要な発言と言っていいでしょう。

佐藤:中国政府にとっては、尖閣に手をつければ、アメリカと戦争になると覚悟せざるをえなくなった。オバマ政権の国務長官、国防長官、国家安全保障担当大統領補佐官がそれぞれ訪中するたびに、中国側はこの「クリントン見解」をなんとか切り崩そうと術策の限りを尽くしたのですがダメでした。さしもの中国も、無人島をめぐってアメリカと干カを交える覚悟は持てないですよ。これこそ抑止力の本質です。

手嶋:中国は海洋監視船を尖閣諸島周辺に出没させていますが、海兵隊部隊を尖閣諸島に上陸させないのも、「クリントン見解」でアメリカ側が武力行使の構えを明確にしているからです。ところが、今回の米中首脳会談で、オバマ大統領は、日本の施政権にも日米安保5条にも、はっきりとは触れようとしませんでした。

佐藤:安部総理も心配になったんでしょう。会談の後、オバマ大統領に直接電話をかけ、30分以上にわたって会談の機微に触れる部分を問い質したらしい。

手嶋:オバマ大統領は、同盟国である日本側の懸念は痛いほどわかっています。アメリカが内々にでも厳しい姿勢を中国側に伝えていたのなら、オバマ大統領は安部総理に充分に説明していたはずです。しかし、納得のいく説明はついに聞かれずじまいでした。

佐藤:このような重要会談が行われたときは、会談の詳細な内容を、国務省の担当官が現地ワシントンの日本の大使か行使に伝えるのが慣例です。これを外交用語でデブリーフィングというのですが、これを基に打電された公電にも、オバマ大統領が尖閣問題で日本の立場を踏まえて毅然とした姿勢をとったことを示す内容は記されていませんでした。

 中国共産党は、習近平を新しい総書記に選ぶ2012年11月の全国代表大会で「海洋権益を断固として守り、海洋強国を建設する」という表現を大会報告に盛り込みました。中国はこれまで膨大な人数の陸軍を擁する紛れもない「陸の大国」でしたが、このときをターニング・ポイントに「海の大国」を目指すことを鮮明に打ち出したのです。

手嶋:そんな新興の「海洋強国」に、オバマ大統領の曖昧な姿勢は誤まったシグナルを送ってしまった可能性があります。これまでアメリカは、「尖閣諸島は日本の実効支配下にあり、日米安保の適用範囲」と言い募ってきたのに、明確な姿勢を示さなくなった。有事に際して尖閣諸島を武力で侵しても、アメリカは武力で反撃してこないかもしれない・・・習近平主席はそう受け止め、中国は武力侵攻の誘惑に駆り立てるかもしれません。

佐藤:習近平の中国は、国際社会で確立されたゲームのルールをいま、一方的に変更しようとしています。だからこそ日本もアメリカも、中国には毅然とした姿勢で臨み、曖昧な態度を見せてはいけないんですね。

手嶋:尖閣での中国漁船衝突事件への民主党政権の対応がその典型でしたが、中国の意図について根拠なき楽観的な見方がいまの日本ではまかり通っています。


根拠なき楽観的な見方ですか、手厳しいですね・・・救国のインテリジェンスと言われる由縁かも。

一方で、トランプの嵐が吹き荒れるアメリカも褒められるわけでないわけで・・・
反知性主義のあたりを見てみましょう。
p138~141
反知性主義の政治学 より
手嶋:この反知性主義については、アメリカに暮らす前は言葉では知っていましたが、実際にアメリカ社会でどれほど影響力があるものかわかっていませんでした。大統領選挙の取材でロッキー山脈沿いのキリスト教右派の地盤を回ってみて、「ああ、これほど」と蒙を啓かれました。

 反知性と言いますから、なんの知識も持ち合わせていない人たちと思いがちですが違うのですね。彼らは意図して新しい知識や科学の知見を受けつけようとしない。そもそも公的な教育に神の子である子弟を委ねない人々なのです。福音派の教会から送られてくる教科書を使って自宅で親が学ばせている。そこにはダーウィンの進化論など存在しません。

佐藤:彼らはアメリカ社会では決して少数派じゃないですよ。

手嶋:「福音ベルト地帯」と呼ばれるほどですから、何千万という人々が、こうした暮らしを送っており、保守的なアメリカの骨格をなしています。「アイビー・リーグの名門大学で学んだ連中は、知識をひけらかして、一つの問題をあれこれ検討したがるために、結局何一つ決断ができない」などと蔑まれているのです。また、競争の激しいビジネス社会でも、複雑な理論より役に立つ発明が尊ばれ、物事を果断に決めて前に進むビジネス・リーダーが尊重されます。

 「東部エスタブリッシュメント」から権力を奪取したいと願う政治家が、実業界やこうした「福音ベルト地帯」を拠り所にしないわけはありません。

 アメリカ政治の潮流はいまや、彼らが主流だといっていいほどなのです。世論への絶大な影響力を誇るテレビ伝道師は、知性を敵視する文化的伝統から生まれてきました。彼らの巧みな説教は、科学的事実や歴史的事実と意図して訣別することで絶大な影響力を手にしているのです。

佐藤:この反知性主義と決断主義は硬貨の表と裏なのです。決断主義では「つべこべ言わず、俺がやれといったことをやれ」という政治指針が出てくるからです。従って、反知性主義者は、独特なプリズムを持っており、自らにとって都合がよいことが大きく見え、都合の悪いことは縮小され、視界から消えてしまいます。もっとも、彼ら反知性主義者は、実証性や客観性に基づく反論をいくら浴びても、痛くも痒くもない。

手嶋:橋下徹大阪市長のメディアへの反論がまさしくそうですね。従軍慰安婦問題でも在日米軍兵士への「風俗店活用のススメ」でもそうでしたが、自分の発言が対外関係の文脈に置かれたときにどう受け取られるか、その省察を著しく欠いています。

 橋下市長は、麻生発言にこうコメントしています。「いきすぎたブラックジョークだったのではないか。ナチス・ドイツを正当化した発言でないのは国語力があればすぐわかる」と。一般的な国語力さえあれば、ブラックジョークなどではないことがわかるはずです。






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Last updated  2016.07.08 00:05:00
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