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2023.06.13
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カテゴリ: 映画
図書館で『SF映画術』という本を、手にしたのです。
副題が「ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座」となっていて興味深いのだが・・・創作講座というよりもSFが大好きな巨匠たちによるSF賛歌になったような本になっています。画像も多くてビジュアルなところもいけてます。




ジェームズ・キャメロン著、DU BOOKS、2020年刊

<「BOOK」データベース>より
映画『月世界旅行』(1902)からドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』まで。映画、小説、ドラマ、神話…各巨匠が自身のインスピレーション源を語り尽くす。知られざる「フォース」の正体とは!?ここでしか語られていない、驚愕の映画制作の舞台裏も。

<読む前の大使寸評>
副題が「ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座」となっていて興味深いのだが・・・創作講座というよりもSFが大好きな巨匠たちによるSF賛歌になったような本になっています。画像も多くてビジュアルなところもいけてます。

rakuten SF映画術


『THX 1138』

「LESSON3 夜空を見上げ星間旅行を夢見てきた私たち」でジョージ・ルーカスとジェームズ・キャメロンが「スター・ウォーズ」について語っているので、見てみましょう。
p114~116
<『スター・ウォーズ』という革命>
 神話学者ジョーゼス・キャンベルの著作、日本映画界の巨匠黒澤明監督をはじめとする若い頃に観た数々の映画の影響を受け、ジョージ・ルーカスは映画史上最も人気が高い不朽のSFサーガ『スター・ウォーズ』を創りだした。
 監督デビュー作となったディストピアSF映画『THX 1138』(71)、ハイスクールを卒業したばかりの若者の一夜を描き第46回アカデミー賞で作品賞など5部門にノミネートされた青春ドラマ『アメリカン・グラフィティ』に続き、3作目の長編監督となったのが、『スター・ウォーズ』というシンプルなタイトルのシリーズ第一作だ。

 『スター・ウォーズ』を劇場公開させるのに多大なプレッシャーを受けたルーカスは、続編『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(80)と『~ジェダイの帰還』(83)では別の人間に監督を任せ、製作総指揮に回っている。

 1作目の制作中、彼は、インダストリアル・ライト&マジック(ILM)という特殊効果制作会社を設立。これにより映画作りに関する技術の向上にひと役もふた役も買い、デジタル・エフェクトの先駆者となった。

 1999年から、ルーカスは『スター・ウォーズ』の前日譚となる新3部作(『スター・ウォーズエピソード1/ファントム・メナス』(99)、『~エピソード2/クローンの攻撃』(02)、『~エピソード3/シスの復讐』(05))の監督、脚本、製作総指揮を務めた。2012年、自身の会社ルーカスフィルムを40億5000万ドル相当でディズニーに売却。彼は『スター・ウォーズ』サーガの制作から身を引くことになる。こうしてシリーズは新たな局面を迎えたのだった。

 かつてスティーヴン・スピルバーグとともに『レイダース/失われたアーク』(81)を世に出したルーカス。このインタビューで彼は、歴史と人類学への熱い思いがいかにして『スター・ウォーズ』の世界を形作るのに役立ったかを語り、ミディ=クロリアンとフォースの正しい関係性を説明し、人類がますます複雑になる未来を舵取りする準備をするときに、他人を思いやり、相手の気持ちを理解することが重要だと訴えている。

■第二次世界大戦と『スター・ウォーズ』
ジェームズ・キャメロン(以下JC): 君はたったひとりで、ポップカルチャーにおけるSFの立場を大変革させた。1977年の『スター・ウォーズ』というたった1作の映画でね。私はそう考えている。

 当時は、気が滅入るような暗い話、ディストピア的な作品、人類滅亡系のヒストリーばかりが30年間続き、SFは年々金を稼げなくなっていた。そんなとき、君が、驚きと希望と勇気にあふれた未来像を人々に示し、ものの見事に大旋風を巻き起こした。

ジョージ・ルーカス(以下GL): 私は人類学畑の出身だ。大学では社会学と人類学の学位を取得する予定だった。自分の興味があることだからね。SFには、ふたつの分野がある。ひとつは科学系で、もうひとつは社会系。わたしは宇宙船といった機械類に瞳を輝かせるたいぷではなく、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」(49)などに大きな関心を示すタイプなんだ。

 もちろん宇宙船は好きだけど、私がついつい目を向けるのは、科学やエイリアンそのものではない。そういったものに人々がどんな反応を示し、どのようにして順応していくのか?を考え、答えを推測、想像するのが楽しいのだ。しゅうちのとおり、『スター・ウォーズ』はスペースオペラであって、SFではない。ソープオペラの一種だよ。舞台が「宇宙」というだけでね。

JC: なるほど。でも、単なる宇宙版ソーープオペラじゃない。君もそれはわかっているはずだ。『スター・ウォーズ』は新たなる神話。釈迦で神話が担う役割を果たしている。

GL: 『スター・ウォーズ』は神話学のひとつの形だ。そして神話学とは、社会の礎。社会の最も身近で最も小さな形態は、“家族”だ。
 父親がボスで、家族の誰もがそのルールに従う。叔父や叔母、義理の兄弟なども含め出すと、家族はどんどん大規模になり、同血族を数種まとめると、今度は“部族”となる。部族となれば、皆を統制できるような社会的機構を持たねばならないという問題が出てくる。さもないと、人々は互いに殺し合いを始めてしまう。

JC: 君はそういった社会組織というアイデアを発展させ、映画という大きなカンバスに吹きつけているわけだ。

GL: 社会的機構を築く中で、人類は「汝、殺すことなかれ」と説く理由を持たねばならない。同じ神々を信じ、同じ英雄を信じ、同じ政治システムを信じるようになれば、大勢の人々がまとまり、街や文明が持てるようになる。そこで浮かぶのが、「なぜ我々はこのことを信じているのか?」「どうして自分たちの文化的発想を推し進めるのか?」という疑問だ。年齢を重ねるにつれ、浮かぶ疑問はどんどん複雑になっていく。私は第二次世界大戦後の世の中で成長したが、あの大戦を経て我々(米国人)はとある“安定期”に到達したと思っている。

JC: それは60年代まで続く。

GL: そう。50年代と60年代だね。60年代に我々はようやく、現実は政府が言っているようなものではなかったという結論に達した。『オズの魔法使』(39)のようなものだ。いざ幕が上がると、我々は真実を目の当たりにし、「なんてことだ。こいつはひどい。自分はベトナムに送られて死ぬことになる」と、愕然とする。
 そして、我々が政府、自分自身、社会と交わした大量の契約は変更され、自分はこういう人間なんだと自覚していたことすらも変わってしまう。しかしそれでも、我々(米国人)は己が正しいと信じ、自分たちは共産主義から世界を守っているだと思い込んでいた。
(中略)

JC: それが賞賛されるべき行動規範だった。

GL: そうだね。しかし、その一方でSFジャンルは、やがて心理に訴えるディストピア作品が増え、西部劇の人気は失われていった。私を『スター・ウォーズ』に導いたのは、まさしくそれだった。しかし、導かれる以前の私は、「こいつは最悪だ。来るべき未来がこれでは、たまったもんじゃない」と不満ばかりの怒れる若者に過ぎなかった。口から出るのは、未来についての悪態ばかり。「1984年」のような未来。それは全て現実で、当時、まさにその事態が起こっていた。じゃあ、その“まさに起こっていること”の映画を作ってやれ・・・ということになった。

JC: それが『THX 1138』だったというわけだね。

GL: その通り。『THX 1138』は未来で起きていることのように見えるが、実は違う。

JC: つまり、君は典型的な60年代の申し子ではなく、それより前の時代の影響を強く受けていたわけだが、そんな君がフィルムメーカー、アーティストとして成熟したのが、60年代の終わりだった。『THX 1138』はベトナム戦争を背景にして、暴力や抑圧の手段として登場したテクノロジーへの直接的な反応だったように思えるんだが。





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Last updated  2023.06.13 00:04:38
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