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2024.10.17
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『開国前夜、日欧をつないだのは漢字だった』という本を、手にしたのです。
漢字をテーマとした歴史的な研究書ってか・・・興味深いのである♪




小川誉子美著、ひつじ書房、2023年刊

<「BOOK」データベース>より
ペリーは日本に開国を迫るとき、日本事情を中国語文献で予習した。吉田松陰は密航をくわだて、漢文で交渉した。中国語を通して世界にアクセスした、交流の歴史。

<読む前の大使寸評>
漢字をテーマとした歴史的な研究書ってか・・・興味深いのである♪

rakuten 開国前夜、日欧をつないだのは漢字だった



「第一章 日欧の出会いと中国」の冒頭で鉄砲伝来などが述べられているので、見てみましょう。
p1~5
<一 ジパングの言語>
 ヨーロッパの人々のアジア観に影響を与えた『東方見聞録』は、マルコ・ポーロの東方旅行(1271~1295)をもとにつづった冒険譚であり、日本が初めてヨーロッパに紹介されたことでも知られている。この書に記されたジパング伝説は、当時のユーラシア大陸で活動していたイスラム商人やイスラム社会の役人たちが語る噂話をマルコ・ポーロが中国で伝え聞いたものだという。

 英語の「ジャパン」は、ジパングを起源とし、ジパングという発音は、中国語の近古音(中世の中国語で発音した音)で「日本国」を発音したものが語源というから、現在の日本の国名、ジャパン、ジャポン、ヤーパン、ヤポーニア、ヤパニ、ハポンなどいずれも、この中国語の近古音を起源としているということになる。

 ジパング伝説には、黄金や宝石、香辛料、偶像崇拝者など冒険家を駆り立てる素材とともに、人食い人種説など恐怖心を植え付ける伝説もちりばめられている。こうした話題性に満ちた物語の起源については、多くの研究が行われているが、本書が注目したいのは、次の部分である。
ジパングの言葉では、チナと呼ぶが、これはマンジ(モンゴル支配時代の南中国をさす)のことである。

 ジパングが、固有の言語を持つことも記されているのだ。
 ヨーロッパには、古くから、太陽がのぼる東の果てには、地上の楽園や黄金卿があるという伝説があった。未知のアジアの地理、社会、習俗を紹介する『東方見聞録』は、各国語に翻訳され、当時の人々に大きな影響を与えた。クリストファー・コロンブスはその影響を受けた一人である。地球球体説を確信するコロンブスに、インド航路の開拓に向かわせたのは、イスラム商人やヨーロッパの地理学者、Tン問学者らの情報であった。

 コロンブスと同時代の地理学者で、ニュールンベルグ出身のマーティン・ベハイムは、現存する最古の地球儀(1492年)を制作したことで知られている。ちなみに、ベハイムは、太陽の高度で緯度を図る方法を確立するための数学委員会の一人であり、科学的知識を有し、航海者に推挙されたこともあるほどの人物である。

 さて、彼の地球儀には、当時広く知られていたトスカネリの世界地図と同じく、ヨーロッパの西には、アメリカ大陸はなく、中国やジパングが描かれている。ベハイムの地球儀はそれだけではない。その土地についての説明が細かい字で記され、ジパングについては、黄金伝説意外に、「ジパング島は王と自身の言葉を持っている」ことも記されている。

 未知の土地を紹介するのに、言語に関する情報も、冒険家に必要だったのだろう。ジパングに関心のある人には、黄金伝説とともに固有の言語を持つこともはっきりと記憶に刻まれたに違いない。

<二 日欧の出会い、鉄砲伝来の立役者は?>
 ジパング島にヨーロッパ人が足を踏み入れるのは、その250年後の1543年、ポルトガル人を乗せた船が種子島に漂着した「鉄砲伝来」まで待たなければならない。すなわち、鉄砲がもたらした西洋と日本の初めての会合は、「漂着」であり、これまでの冒険家のように、用意周到に目的地をめざした航海ではなかった。このとき、ポルトガル人は、種子島の人々に、どのように意思を伝えたのだろうか。

 ポルトガル人が乗ってきた漂着船は、明の倭寇が所有する船であった。また、このときの鉄砲はポルトガルで作られたものではなく、当時ポルトガルの支配下にあったマラッカ王国で作られた銃であった。船主は「大明儒生五峯」と名乗っていたが、実はこの人物、本名を王直という倭寇の大頭目だった。このとき種子島の領主、種子島時尭は、この王直と砂の上に書いた漢字による筆談にって意思疎通を図ったのである。

 二挺の火縄銃をもたらした三人のポルトガル人たちは、何らかの理由からシャム王国のアユタヤでポルトガル船からの脱走を図り、王直に拾われたのであった。一方、王直は、その後、佐賀に屋敷を持ち、密貿易を行うようになる。
 海禁政策をとっていた明で銀が不足し、これを日本からの輸入で補っていた。日本には明の禁制品である硝石などを輸出していた。この硝石こそ、硫黄とともに火縄銃の火薬に必要な材料であり、日本では算出されない物質であった。ポルトガル人たちが持ち込んだ銃は、倭寇にとって、戦国日本に火薬製造に不可欠な硝石を売り込む大きな商機でもあったのである。

「鉄砲伝来」とは、ポルトガル人が本国から船でやってきて、火縄銃を「伝えた」のではなく、脱走したポルトガル人を乗船させた倭寇が、種子島の人々と意思疎通をはかり、取引を成立させたという出来事であった。すなわち、ヨーロッパと日本との初めての出会いは、マラッカで製造した「銃」を媒介とし、そのときの意思疎通は、密貿易を行っていた儒者でもある中国人と筆談で行われたのであった。

 さて、エンリケ王子によってすすめられたポルトガルの海洋戦略は、アフリカ最南端から、インド洋に出てアジアに進出すると、インドやマラッカを支配下に置き、次々と交易の拠点を築いていった。こうして、ヨーロッパの最西端にあるポルトガルから、ユーラシアの東端、さらにその東にあるジパングに到達するのである。

 日本に関する情報は、到達前に、地理書『東方諸国記』(1515)に記されていた。「鉄砲伝来」の28年前のことである。この書は、1511年ポルトガル人が占領したマラッカで、翌年到着したトメ・ピレスが著したものである。ジパング島は、この中で「ジャンポン島」と呼ばれた。

 全六部からなるこの書の中の「第四部 シナからボルネオにいたる諸国」の「二 琉球、日本」、「ジャンポン島」という項目は、次のように始まる。
すべてのシナ人のいうことによると、ジャンポン島はレキオ(琉球)人の島々よりも大きい。国王はより強力で偉大であり、商業には熱心でない。その国民もそうである。国王は異教徒で、シナの国王の臣下である。かれらがシナにおいて取引するのはごく希であるが、それは遠く離れていることと、かれらがジャンクを待たず、また海洋国民ではないからである。

 トメ・ピレスの記述も、中国人からの電文として記されている。その内容は、マラッカ王国とも交易をしていた琉球に関する説明は詳しく、日本については中国人の語る情報として短く添えられている。
 この『東方諸国記』は、海のシルクロードを渡ってアジア進出はアジア征服以外の何ものでもないこと、その事業はイエス・キリストの名において行われ、カトリック教を昂揚させ、イスラム教を滅ぼすことにあるとし、この書が紹介するエジプトから中国に至る地域は、ポルトガル王の征服の対象となると記している。すなわち、この書は、征服対象国の一蘭であった。





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Last updated  2024.10.17 00:10:28
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