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2024.10.24
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『遊牧民、はじめました。』という新書を、手にしたのです。
モンゴルといえば、今では大相撲で幅をきかせている民族であるが・・・
大草原で遊牧民として暮らしてきた民族であり、興味深いのである♪




相馬拓也著、光文社、2024年刊

<「BOOK」データベース>より
地平線の先までずっと続くモンゴルの大草原。そこに生きる“悠々自適”な遊牧民。大自然に囲まれた彼らの暮らしを想像して、一度は憧れたことがある人もいるだろう。しかし、彼らの暮らしは本当に“悠々自適”なものなのだろうか。一度で150㎞にも及ぶ遊牧、マイナス40℃を下回る極寒の冬、家畜という懐事情をご近所に曝け出した生活ー。本書では、そんな遊牧暮らしのリアルを、長年、彼の地でフィールドワークを続けてきた著者が赤裸々に綴る。ときに草原を馬で駆け、ときに大自然に牙を剥かれ、ときに遊牧民たちにどつかれる日々の中で気づいた、草原世界で生き抜くための「掟」とはー?

<読む前の大使寸評>
モンゴルといえば、今では大相撲で幅をきかせている民族であるが・・・
大草原で遊牧民として暮らしてきた民族であり、興味深いのである♪

rakuten 遊牧民、はじめました。


「第一章 遊牧民に出会う」で、モンゴル人の心模様を、見てみましょう。
p50~53
<1-3  遊牧民の心模様>
■口にしてはいけない言霊の呪縛
 モンゴル人の心模様をより深く掘り下げてみると、これまでの苦行にも似た経験には、筋道だった理由もあるように見えてくるようである。たとえば、モンゴル人は現在でもとても信心深く、超自然的現象を大真面目に信じている。暮らしのなかにたくさんの禁忌(タブー)があるのもそのせいなのだ。なかなか、ついて行きにくいものもあるが、たとえば次のSNS禁忌は、若者たちにかなり真面目に信じられている。

「知ってる? FacebookやInstagram に載せた写真から、指紋や虹彩が読み取られて、銀行口座やスマホの生体認証が突破されるから、気をつけなね」
 そのため、瞳の写った顔のアップや、指先が明確に写るような写真は撮ったらダメで、もちろんピースもしないほうがいい・・・と教えてもらったことがある。ほかにも、モンゴル全国にはパワースポットとされているところが多いが、その「霊力」は電話越しに伝達するとも考えているらしい。
「パワースポットから親族や友人に電話をかけると、電話越しにそのパワーを受け取れるんだよ。お前いろんなとこ行ってるじゃん。オトゴン・テンゲル山やハムリーンヒード寺院に行ったら、俺に電話をかけてくれよ!」

 こうした畏れと信仰の現代的解釈は、日常会話で頻繁に話題に上がる。彼らはデジタル化社会をモンゴル流の世界観から再解釈しており、これらは日々新たな信仰と忌避の体系が再生産されている一例といえる。つまり、一般に「迷信」とされる信仰や畏れが、現在でもモンゴル人の行動指針や判断に大きく影響していることがわかる。

 その例をほかにもいくつか紹介しよう。オブス県の夏牧場では、干ばつによって牧草地がカラカラに乾燥して劣化してしまった理由が、次のように説明されていた。
「ヒャルガス湖の北の草原じゃあさ、道路を作るときに中国人の技術者や労働者が、工期中に雨が降らないよう、ブタの頭をアスファルトの下に埋めたんだよ。だからこの地方はそれ以来、日照りが続くようになっちまったんだ。道路の下じゃもう掘り出せもしないし、まったく中国人どもは憎たらしいぜ・・・」

 ムンフハイルハン山麓では、次のようなこともつぶやかれていた。
「昔な、山で鳥葬にされた老婆のシャーマンがいたんだよ。その老婆の脊椎や骨盤には特別な力があってねぇ。それを知ったオブスの若衆がきて、こっそりみんな地元に持ち去ってしまったんだよ。すさまじい霊力の宿る遺骨だったんだがね・・・。オブス県のドゥルブド氏族のあいだでは、強いブフ(力士)が輩出されるだろう。初代大統領もオブス出身だろ。みんなシャーマンの老婆の遺骨のせいなんだよ。それ以来ね」

 ほかにも、口にすることが憚られる禁忌語彙の使用には、老若男女でかなり神経質な一面が見られる。遊牧コミュニティで暮らしていると、次のようなタブーを口にすることが、日常生活ではとくに戒められる。
「霊峰ムンフハイルハンの山名を口にしてはいけないよ。〝ツァスト・オール(雪山)〟と呼びなさい」
「ここじゃ〝イルビス(ユキヒョウ)〟とは口に出しちゃいかんよ。〝ツオーホル・バル(斑のあるトラ)〟と言わんかね」
「チョン(オオカミ)なんて口にすんなよ。とくに夜はさ。やつらが家まできちまうんだからな」
「(ゴビのラクダ遊牧民は)ラクダを食べますなんて決して言わないよ。〝ウンドウル・ヤマー(背の高いヤギ)〟を食べる、と表現するんだ」
「お前いまなんて言った? 〝ホニーナエル(家畜同士の混合事故)〟なんて言ってなかったか? やめてくれよな~。うちで起こっちまったならどうすんだよ!」

 言霊による超自然現象の発声は、かなり真面目に信じられており、それは生活の中に深く、深く、溶け込んでいる。遊牧民の皆さんから言わせると、筆者はフィールドでは湿原ばかり、ということになるわけで、草原の暮らしではよく戒められた。
 とくに田舎の牧夫(「夫」とあるが、以下、女性も含む)にとって、禁忌表現は極度に忌避されている。草原には、草原なりの礼儀や作法があるのだ。筆者がよくトラブルに巻き込まれたことも、こうした禁忌を犯した言動によって、彼らを怒らせてしまったのが原因とも十分に考えられるわけである。


『遊牧民、はじめました。』1 :第一章の冒頭





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Last updated  2024.10.24 00:02:53
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