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行くたびに印象が変わって感じられる町と指折り程度しか訪れたことがないのにその印象がいつだってほとんど変わらない町があるように思います。いずれも良し悪しがあるもので、前者の場合は毎回が新鮮な気分で臨めると捉えることもできるけれど、それだけ変化が激しくって以前好きになった酒場などがすでに痕跡すら留めぬといったこともあります。一方で後者の場合は町の印象が鮮明でそれだけ個性的な成り立ちだったりするのでいつだって安心して町を散策できますが当然ながら常に既視感が付きまとうのが難点です。記憶力に難点のあるぼくにとっては、前者が後者を圧倒するのですが、この日にお邪魔した旗の台の町はどうしたものか鮮明な印象を失うことがなかったのです。いや、実は大井町線で駅に降り立った時には、その駅舎の余りの変貌ぶりに脳裏に不安が過ったのでありますが、改札を抜けると確かに見覚えのある風景が広がったのでした。どうやら2019年8月1日に木造駅舎の雰囲気を踏襲した「木になるリニューアル」が竣工されたそうなのですね。庶民的な小さな駅舎をここまで大規模にテコ入れする必要があるのか疑問の残るところではありますが、地元の方にとってはちょっとした自慢になりそうです。と旗の台には馴染みがあると書きましたが、その後、うっかりと幡ヶ谷を連呼してしまったから地名には少しも馴染んでいないようです。 さて、目指すお店は昭和大学方面に伸びる商店街にある大衆食堂だったのですが、通しの営業のつもりがまだ開店していません。その向かいの路地に看板のない店名不明のお店が暖簾を下げたのでこちらも良さそうと戸を開けると予約の確認をされてしまいました。どうやら相当な繁盛店だったようです。どうも駅のこちら側とは相性が良くなかったようです。次の機会もありそうだという根拠はないけれど確認めいたものを抱いて駅南側の三間通りに向かいます。この商店街に確かちょっといい雰囲気のおでん屋さんがあったはずです。そうそう「かね久」でしたね。暖簾も下がっていますね。ようやく一杯やれそうです。思った通りのカウンター席のみのお店でしたが、思いのほか新しい構えです。以前見掛けたときはもう少し古ぼけた印象がありましたが、改装されたんでしょうか。というか店主が若い男性です。高齢女性がやっているという印象があったのですが、思い込みだったのかもしれません。いずれにせよ、今の店主は代替わりされたのではないだろうか。暑いけれどせっかくなのでおでんを頂くことにします。100円からとお手頃なのはありがたい。おでん屋って「お多幸」などの専門店はともかくとして、さして名も知らぬ普通の店でも値段がマチマチで警戒を要する者であります。味の良し悪しなんて関係なかったりするから要注意です。こちらのおでんは絶品とかそういうものでは少しもないけれど、値段相応の普通の味で安心感があります。なんてことのないお店かもしれませんが、古い酒場はそう多くないので次訪れた時にもきっと今と変わらず営業してくれているような気がします。
2022/07/18
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大井町駅の東急大井町線のお隣の駅、下神明駅は駅間わずかに800mと余りにも近いからわざわざ下車することなどなく、通り過ぎるだけの駅でした。この界隈を訪れるならJRが便利なぼくがわざわざ大井町駅から電車に乗って移動するなんてことはあり得なかったわけです。 だから駅のそばにこんな巨大タコが2匹いや2杯も横たわっているなんてことは知らなかったのですが(そのものズバリ、タコ公園という園名なんですね)、まあそれはいい。突然余談なのですが、こういう公園遊具ってたまに見掛けることはありましてなかなかユニークなものがあるなあと感心したりするのだけれど、あえて実物に接するまでもなく写真で見ちゃうだけで十分満足できちゃうんですね。こういった類の物件に強く惹かれる方も少なくないようでありますし、ぼくも以前なら好んで注意を払っていただろうけれど、その道を究めた方たちが存分に情報を提供してくれるようになったおかげもありまして、書籍やネットで眺めるだけで満足できるようになってしまいました。こうやって好奇心が安直に満足させてもらえる世の中っていうのは楽チンではあるけれど物足りない気もするのです。さて、話を戻して東京都の23区西部エリアというのは大正時代頃からじわじわと宅地化が進んだようですが、一気にその範囲を拡大をしたのは終戦後のことではないかと思われます。そのせいもあって都心だったり下町なんて呼ばれるエリアに比べるとむしろ古い建物や飲食店が減益だったりしているのだと想像しています。実際、町を歩いていても圧倒的にこれらのエリアの方が心惹かれる店が多いのです。だからこの界隈を訪れると行きたい酒場だったり、大衆食堂がまだ数多く存在するのでありますが、ぼくの生活圏からはいかにも遠いからそうちょくちょく訪れるって訳にもいかないのが残念なのです。しかし、訪れるたびに大井町駅の周辺の変貌の著しさに驚かされるのです。23区西部は開発が進むにつれ、宅地化に一気に移行して画一的な町になってしまうとぼくは予想していて、訪れるなら今しかないのだろうなあなんて気持ちばかりが焦るのです。下神明駅を最寄りとする飲食店で唯一お邪魔している「お食事処 くるみ屋」は今どうなっているんでしょうか。 さて、今回お邪魔したのは、「中華 キラク」です。付近にあった「天宝」にも訪れたいと常々思っていたのですが、時すでに遅しとなっていました。でもまあ「キラク」がまだ現役だっただけでもありがたいと思うことにします。正午前に到着した時にはすでに2名のお客さんがおられます。入口付近の特等席のオヤジがビールをやっています。一番の席は取られたけれど、これでぼくも安心してビールを頼むことができます。この日はカレーライスを食べることに決めていました。ここでも黄色いカレーが食べられるらしいのです。自分で作るようになってむしろ店で出されているものが気になるようになったのですね。ビールを呑みながら厨房の様子を観察していると、おやおやこちらではカレーフレークの定番である明治キンケイのものを使用しているようですね。明治キンケイの商品にはインドカレーとミルクカレーが2種類あってこちらではちょっと珍しい校舎を用いているようです。堂々と「明治キンケイインドカレー 500円」と貼り紙されている鶴見の「亀鶴」などは前者を用いています。より黄色みがかっているのはそのせいですかね。運ばれてきたカレーを見て馬鹿みたいですが、勝ったという感想が浮かびました。より黄色けりゃいいっちゅう訳でもないんですけどね。中華鍋で豚肉、玉ねぎ、にんじんをチャチャっと炒めてスープを注いでフレークを加えるという実に合理的で手早くできるのだから明らかに店にとってはこちらが合理的です。しかもこれはこれで十分に美味しいのです。福神漬代わりの紅生姜もいかにも町中華風です。店主夫婦はご高齢のようですが、まだお若い息子さん(でしょうか?)がいる限りまだ当分は営業していてくれそうですが、先のことは分からないですよね。
2022/07/13
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先日、久し振りに目黒で呑んでみたら思いがけず楽しかったのです。こう書くと己の町に対する認知の鈍感さを表明するようで情けのない気持ちにもなるし、それより何よりよく知りも知らぬ目黒の事を思い込みで性に合わぬと実際にこの町を拠点に暮らしている方に顔向けできぬ気もするけれど嘘をつくのはもっと不実なように思えるので正直に告白しておきます。で、特にどこが気に入ったかとなるとやはり飲食ビルの古びた風情なのであります。そう数あるわけじゃないけれど、サンフェリスタ目黒は思いのほか楽しかった。こんな目立つのにどうして今まで放置しておいたのだろう。目立ちすぎて興が乗らなかったのかもしれません。今となってははっきりしたことは言えぬけれど、そして今更このビルの面白さを語ってみたとて酒場好きの方には特別な情報としての価値を持たぬだろうけれど、いつかこのビルが取り壊された後に多少なりとも懐かしんでくれる方がいるといいかななんて思いつつ記録にとどめることにするのです。 1階もいいけれどやはり地下の方が秘密めいていてときめきがあるのでした。「焼とり 光ちゃん」は、そんな地下の酒場でも最も古くからやってますってな印象を受けました。実際に沿うかどうかは分らぬけれど、一度そう思ってしまうとここ以外のお店は視界に入っても、意識の外側に跳ねのけてしまうのでありました。しばらくぶらぶらして頃合いを図って訪れてみると無事開店しておりました。カウンターに10席程度の屋台っぽさもある小さなお店で、今ではこうしたお店を見ることは稀になったので懐かしさよりも新鮮というか物珍しい印象を受けました。壁面を眺めていると「Danchu」だったかしら、旨い焼鳥の店として紹介されていました。適当に見繕って頼むと、ボンジリは串ではなく小鉢に盛られて出されました。これが酢醤油あじだったかしら、さっぱりとした味付けですが、がっしりとした旨味が乗っていて大変味が濃くて、これだけでも酒が進みます。本当はつくねを頼もうとメモでお願いする注文票に書き間違ったようなのですが、失敗が成功につながったみたいです。女将さんは寡黙でちょっととっつきにくい感じですが、ぼくが注文内容が違うんじゃないというツッコミを入れても意外と気さくに返事をしてくれて、また訪れたいと思うのでした。
2019/12/19
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目黒に限ったことではないけれど、山手線沿線でも不案内とまでは言わぬまでもめったに立ち寄らぬ駅の一つとなっています。以前も書いているからこのブログを始めて以来何度かは訪れていますが、目黒といえばぼくにとっては、雅叙園でもサンマでもなく目黒シネマだったのですが、今では左記の順に興味を抱いています。それはまあよしとして、以前、桜新町辺りだっただろうかバスで目黒に向かっていた際に、何棟かの飲食ビルを見掛けました。酒場とは縁の薄そうなこの町ですが、車窓から眺めるそうした酒場には好奇心が首をもたげはしたものの、まずはメジャーな酒場からと一巡りしてしまうと、途端にこの町への興味が失われてしまい、今に至ったのでした。 とか書いてみたけれど、この日は所用で近くに来ていて、行先の選択肢として恵比寿と目黒のいずれかがちょうど良かったわけですが、特にここといった目当てがあったわけではないけれど、恵比寿はどうも気乗りがしないので、目黒に向かっただけなのでした。昼下がりと呑みには幾分早い時間帯だったので、常套的には恵比寿に向かうのでしょうが、目黒にだってその気になって探せば昼呑みできる店の何軒かはあるはずだろう。であれば、そこらの路面の味気ない中華料理屋で呑むよりは飲食ビルを物色するのが正解だろう。あれえ、ぼくが一番気になった飲食ビルが、見当たらぬなあ。もしや取り壊されてしまったのだろうか。それでもちょっとばかり古びた雰囲気の地下の酒場を発見したので、もしややってはいなかろうかと覗いてみるけど残念ながら閉まっていました。ガラス越しに店の方が寝転んでいるのが見えたんですけど。こちらの店の名は失念しましたが、その場で営業時間がとんでもないことになっていて、一般的な居酒屋と逆転しているのでした。気になるが開店まではまだまだ当分間があるようです。 といった感じで、彷徨っていると駅のすぐそばのビル、サンフェリスタ目黒というらしいのですが、えらく繁盛しているような、つまりはすでに営業開始した酒場があったのでした。「居酒屋 蔵 目黒店」というらしい。独り飲みにお誂えの壁向きカウンターやら仲間や常連たちが肩を寄せて楽しんでいるコの字のカウンター席もあるし、奥の卓席は広くも使えて大変便利なのであります。これは活気があってなかなか良い雰囲気ではないか。値段もお高めが定番の目黒ではしっかり庶民的であるのが嬉しい。外国人の女性従業員たちは体を矢鱈と寄せてくるけれど、これも嬉しい人には嬉しいのだろうなあ。ちなみに様子をじっくりと眺めているとこの店の常連は、みな鉄板料理を注文しています。じゃがチーズやレバニラっぽいのとかお決まりの品ではあるけれど、そのボリュームとお手頃さ、しかもこれからの季節、長くあったかい状態というのはとても嬉しいんじゃなかろうか。ってわれわれも知らず注文しているのでした。
2019/12/14
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先般、大井町で呑んだ際の報告をアップロードした際に、今行っておかねば永遠に後悔してしまいそうな酒場があるなんてことを書いて、そんな大袈裟なコメントで告げた酒場のことをズバリと猫またぎさんから的中されてしまい、今さら改めて報告するというのもなんだか間が抜けていてこっぱずかしいのでありますが、特にどこがどうすごいというわけではないのだけれど、そこがやはり沈黙を保ったままに投げ出すには惜しいような好きにならずにはおられない酒場だったものだから、こうして臆面もなくやはり報告することにしたのであります。 その酒場は、それこそ何度となく通り抜けていたはずなのです。というかかつてのぼくが最も足繁く通ったであろう映画館のひとつである大井武蔵野館から劇場前の路地を30秒歩くか歩かぬかといった位置関係であろうか。その先にあるコンビニで安パンを2つほど買い込んで3本立てを見るということが数え切れぬ程したという記憶があるからそれこそ「大衆酒場 寿々山」前は、嫌になる位に歩いていたはずです。しかし、今になっては取り返しのつかぬことだし、当時のぼくにとっては映画こそが至上の興味の対象であったわけで、そのことについては後悔はしていないつもりであります。さて、写真では良く分からぬかもしれませんが、この酒場は緑のテントの庇が独特のニュアンスを店にもたらしていて物珍しいと同時にその潔い位に無駄を排した構えに好感と期待が高まります。店内も至って素朴な造りとなっていて、むしろスッキリし過ぎで描写の意思すら放棄して、これぞ居酒屋の神髄であり、居酒屋はこうでなくてはならぬというお手本であるとすら言い切りたくなるのです。肴も至ってシンプルかつ少数精鋭の王道の肴で勝負しています。300円だったかのにら玉がまたこれこそ酒場で出される最高峰のにら玉であると言い切りたくなるのです。実のところそれほどたびたびにら玉を注文してはいないし、ここでも単に手頃であったことが注文の理由なのだからやはりかなり出鱈目な発言ではあります。、このにら玉だけでこの酒場の肴は居酒屋として随一であると言い切ってしまうのはやはり無理があるか。でもそれでもなおこの安い肴で呑む酒はしみじみと旨くて、大井武蔵野館のレイトショーを終えた後にこの酒場でにら玉を肴に呑めぬことはやはり悔やんでも悔やみきれぬのでした。
2018/03/20
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先日、所用があって東京入国管理局に行くことになりました。恐らく多くの方がそうであるのと一緒でぼくは、直帰が大好きです。立帰りというのが一般的なのかな。まあどちらでもいいけれど、出張の後、そのままフリーになるというのは誠にいいものです。なるべく早くフリーになりたいので、りんかい線の天王洲アイル駅が最寄りになりますが、品川駅から歩くことにしました。その方があまり乗り慣れぬ電車を乗換えするより早く到着できる、すなわち早く所用を済ませることができるという極めてもっともな考えなのでありました。ところで話は変わりますが、東京入国管理局のある島は人工島であるとは思うのですが、少し調べるとここはペリー来航に危機感を覚えた江戸幕府が海防のために台場(砲台)を設置するためにこさえた島ということのようです。なるほど調べてみるものですね。今でも2つの砲台跡は残っているとのこと。そんな知識などなく品川駅から急ぎ足で歩くと最初の人工島には巨大ビルや学校などを縫うように大きな道路が張り巡らされるばかりだし、その先の港南大橋を渡ると今度は倉庫街のような暗澹たる町並みが広がっています。しかしそこには威容というか異様な入国管理局の建物があります。東京拘置所をスリムにしたようなその外観は威圧的で少しばかりパノプティコン(思想家のジェレミー・ベンサムの考案による建築様式)とは違っていますが、根本思想は効率的な監視を目的としているようでどうにも落ち着きません。そんなファーストコンタクトの後、随分待たされて結局5時過ぎに監視下から離脱することができました。その足で向かったのは青物横丁でした。天王洲アイル駅の脇を通り抜け、思ったよりずっとあっけなく青物横丁の見慣れた風景が眼前しました。 折角なら天王洲アイル駅と青物横丁駅との中間位にそれらしい酒場を見つけられると良かったのですが、見つけ方やルート選びが下手なのか、はたまた端的に呑み屋など元々ない町なのかはこの程度歩いただけで結論付けるのは早計ですが、やりほとんど店らしきものはないのだと思われるのだ。という訳で駅の近くまで来てしまったのですが、取り敢えずこの後の作戦を練るためには立ち呑みは恰好なのであって、だから「ちょっと一杯 鶴川」でちょっと2杯ほどいただきつつこの先のことを検討することにしたのでした。店内はなかなか奥が広くて詰め込んだら50人は入れてしまえそうに思えるけど目算が大いに誤っているかのせいもあります。しかしまあそんなに混んでるわけでもないというか、このキャパで5名いるかどうかではそんなすし詰めになった事は想定せずとも構うことはなさそうです。さっと品書きを盗み見て瞬時に最安値のウーロンハイを認知、店のお兄さんにさも最初からウーロンハイを呑むつもりだったのだよという演出をしてみせるのだ。しかしまあこれも何度か来ていると思われたならまるで無駄な演技に過ぎぬのですけどね。こうした一人小芝居をするのはぼくに限らずしばしば見かけるもので、それを小芝居と見破れるということは、演技経験もないぼくのそれなど一目瞭然のお見通しだと思うと控えた方が懸命ということになるか。ともあれ、先を考えると肴は軽めが良かろうと、値段も安めの揚げなすを頼みます。簡単な品なのに結構な時間を待ったので結局3杯呑んでしまったなあ。まあ結局いいアイデアも浮かばず通い慣れた店に行くことにしたから、それで構わないのだけれど。
2018/03/03
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酒場放浪記が取材に訪れる町として大井町は、定番となっています。店の数ではお隣の大森や次の蒲田の方がずっと多い気もするけれど、大井町はいくらか落ち着いていて、駅から数百メートルも離れると人通りも途絶えてしんみりとした寂しい盛り場と感じられる位なのです。その分しっとりとした雰囲気の店も多くて、ぼくにしてみると繁盛する酒場よりは余程静かな店が好みなのだからどんどん紹介してもらいたいものであります。まあ実際には客足が遠のいて新規の客を求める店側と取材交渉に難儀しているであろう番組スタッフの利害が一致して、ある種の共謀関係が成立する機会がこの町の酒場には多いような気もします。さて、そんな番組での放映店で未だに未訪の酒場が2軒あって、何度も書きましたがけして全店制覇でコンプリート万歳!なんてことは画策してはいないので念の為にお断りしておきます。大体、この大井町にしたところで、番組が初期の頃に放映されたもはや思い出話としてしか語りえぬ酒場もある事だし、ついつい横着になる己の怠惰を叱咤するためのツールとして活用させて貰っているというのが事実に近いと思うのです。 さて、まず訪れたのは「ほんま」です。数多くの路線が行き交う大井町駅の線路に沿って品川方面に歩いていくと、いかにも居酒屋といった風情の店が見えてきます。駅の利用客が多く通り過ぎる中、そわそわと店に入ってみました。すると店主が開店早々にお邪魔したせいもあって、ワタワタと慌てふためかれたのでした。どうやら店主の意表をついて驚かしてしまったようです。申し訳ないって、開店の6時を過ぎてはいたんですけどね。なかなか枯れて使い込まれたよい店内だなあと感心しているお、カウンター席もあるのだけれど、2人掛けのテーブル席を勧められます。まだ食材らしきものがびっしり詰め込まれたスーパーのレジ袋がズラリと並んでいたからでしょう。ホッピーをお願いすると席の脇に積まれた瓶を取って、脇っちょに栓抜きあるから開けてね。といってしばし奥に引っ込むと大量の氷とグラスをもって現れ、やはりまた脇のキンミヤ瓶を取って、好きに注いで呑んでね。減り具合でお勘定するからとどうやら量り売りのスタイルらしい。これって結構緊張するんだよね、なんて思いながらもケチ臭く並々と注ぎ入れるのでした。お通しはベースはどうやら肉豆腐―もしかするとここの名物のひとつである牛スジ煮込みの残りかな―にインゲンの天ぷらやら何やらが適当に入っていて、これはどうも昨日の残り物を再利用しているのだな。こういう出鱈目さは嫌いじゃない。煮込みはもう十分なので、名物と勧められ断るにも断りきれなかったハラミ串800円をいただくことにします。これが値段だけの価値は確かに認めざるを得ない絶品なのでありました。AKB48の誰だかが来てお気に入りになったとか、店主はいたってマスコミには大らかでフットワークが軽いようで、だからこそ番組出演のオファーを快諾するにいたったのでしょう。お生まれは新潟とのことで、ぼくも地縁があることを知ると大いに話し込んでしまいなかなか去りがたくなったのでした。しかし、お勘定だけはちょっと厳しいものであったなあと告白しておきます。 さて、続いては「お菜処 わらじ」に伺いました。カウンター割烹のような女将としっぽり言葉を交わしながら過ごすというのが相応しいお店のようです。それでもお値段はそこらの居酒屋価格なのでご安心を。女将を含めて先客の常連お二人も大変に気さくな方ばかりで、一見のぼくにもとても初対面とは思えぬような、濃密で愉快なひと時を過ごすことができたのです。御隠居さんとその取り巻きの子分のような常連二人の会話は、日頃愛想笑い位しか浮かべぬ偏屈なぼくをも微笑ませるものでありました。女将とも随分たくさんお喋りさせていただきましたが、それでも一番心に響いた話題は何と言っても大井武蔵野館の思い出に尽きるでしょう。ご近所にお住いの女将がお子さんを連れて劇場前を通過した際に見掛けた日活ロマンポルノをはじめとした助平な写真が目の毒であったという微苦笑するしかないようなものであったのは、映画マニアであったぼくとの大きな違いであると改めて知らされたのでした。そんな他愛ない会話を交わす間にも常連たちとも交流をするのだからなかなかに忙しいのでした。でもそのお陰もあって、有り難いことに熱燗を何度も注いでいただいたりとすっかり御馳走になってしまいました。こういうやりとりができる店というのは、近頃めっきり少なくなりました。以前は見知らぬオヤジに奢ってもらうようなことが珍しくありませんでしたが、この齢になってから奢ってもらえるのは素直に喜んでいいものか、それとも己の童顔を恥じるべきか悩ましいところです。 さて、こうして大井町の酒場放浪記店はクリアしましたが、すぐそばに行かねば一生後悔しそうなお店もありましたし、気になる呑み屋小路もあったので近くまた大井町を訪れることになりそうです。そういう行動を促すという意味ではやはり放映されてしかるべき番組なのでしょう。
2018/02/21
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目黒で呑むのってホント久し振りだなあ。しかしそんな呑気そうに構えてはいるけれど、正直気分はした少なからず曇り気味なのでありました。それはこれから向かおうとしているのが酒場放浪記に限らず、数多の雑誌なんかでも紹介される事の少なくない有名店だったからであります。自ら探り当てた酒場で呑む時の感動と興奮は今でも失ってはいないけれど、有名店巡りは正直なところノルマを消化しているのとそう変わらぬ感覚なのであります。大体店の方もそれらの一見の客に対してはメディアに踊らされてまんまと訪れるに至った愚かな消費者の一人と見る傾向があるらしく、実際にも概ね外れてはいないのだろうけど、それをあからさまにされて嬉しいはずもない。酒場を初めて訪れる際には、誰だって一見客なのだ。初めての店というのは何かと気を遣うものであります。店の方にとってはそこの流儀をいちいち語ってみせるのは面倒であるに想像に難くないけれど、客にしたところで店の独特な遣り方をその有無から探っていかねばならぬのだからなかなかに難儀なことであることを知っておいて頂きたい。これから向かう酒場がそんな気が利かぬ店でないことを祈りつつ、ノルマを果たすため律儀に酒場を目指すのでした。 たびたびメディアでも登場する「居酒屋 友」にお邪魔しました。どうということもない外観を見ても無感動になれることが、メディアの恩恵と捉えてみるのもなんだか虚しいことではあります。それでも店が目の前から去ってしまうことなどありえぬのにそわそわと急ぎ足で階段を駆け上がるのが、いかにも貧乏性であります。戸を開けると細長いカウンター席に奥は小上りとなっています。さほど混雑してはいないけれど、その後、次から次へとお客さんが押し掛けてきたのだから気持ちだけでも慌ててみせたのは間違ったふるまいではなかったようです。入口付近の席に腰を下ろし、まだ空いていたので荷物は脇の椅子に置かせてもらいました。その荷物が膝の上に移るのも時間の問題でした。お通しの4つの小鉢を見て、これは軽い肴一品もあれば十分と普段のぼくらしくもなく珍味の張り紙を見て、躊躇なく注文してしまうのでした。いつの間にか隣席には可愛らしい若い女性がおります。この店で一番辛いお酒をくださいとなかなか思い切った客だなあと感心してしまったのです。なみなみと注がれた多治見の三千盛をスルスルとすすると、おお美味しいとそっと呟くのがなんと可憐であったことか。なんて書くと滅多にない幸運に浮かれたスケベオヤジそのものという感じでありますが、満更外れてはいないので言い訳はよしておくことにします。その娘さん見た目よりはずっと年齢がいっていることが判明するのですが、それは当の本人の口から聞いたので間違いではなかろうと思いのですがここでは触れぬことにしておきます。いつしか自然に会話を交わすことになったのは彼女の社交性と酒の酔いも少しあったのでしょうか。司牡丹も辛口なんだよとしたり顔でアドバイスしてみたりするけれど、カウンターに並ぶ酒瓶に大辛口と大書きされているのだからカッコつけにもならぬのでありました。さて、彼女もぼくと同様にお通し4品に恐れをなしてゆで落花生を頼まれていました。最初にすべての殻を剥いちゃう派なのね。男相手ならそんな食べ方はなっていないなどと説教でも垂れたくなるのだけれど、可愛い女性相手だとどうしてこうも可愛く感じられるのだろう。ぼくの珍味は何やらコリコリしたナンコツみたいなものでした。店の主人にこれは鶏のトサカかいと知ったかぶりの沽券に係わる危険な賭けに出ることにします。幸いにも正解、お隣さんからどんな感じかと尋ねられてよければどうぞとお勧めしたのは言うまでもありません。独り酒は悪くないけど、女性と一緒に呑む酒は格別であると改めて思い知らされたのでありますが、それはやはり単なる助平根性なのだろうか。
2017/12/19
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東急池上線と多摩川線は、都心もしくはその周縁を結ぶ電車の中でも特にぼくのお気に入りである事は以前も書いています。その所以はこのブログをお読みいただいている方であれば語らずもがなであると思われるのですが割愛します。最寄りとなるのは池上線ばかりではありませんが、戸越銀座は活気溢れる商店街と町歩きの人気スポットともなっているようです。ご明察の通り、ぼくはこの商店街のこと、余り好きじゃないのです。辺縁部には愛すべき所もありますが中心地帯は疎ましい感じしかないのです。単純に歩きにくいというだけであれば、こうもあからさまに悪くは書かぬ程度の嗜みはあるはずです。とにかく活気というのが苦痛なのです。いわゆる活気のある場所には、不快さばかり嗅ぎ取るのです。そこには邪な欲望が渦巻いていて、そんな身勝手な感情がせめぎ合い、時には実体化して辺り構わずぶち撒けられるのだから好きになる方が余程変わっているとすら思うのです。それは大きな繁華街ならどこにでも言えることではないかという指摘は正鵠を射ていると思いますが、その差異を分析するだけの準備は整っていないので、やはり割愛することにするのであります。 といった好き嫌いは取り敢えずは置いておくとして、そんな戸越銀座のど真ん中にある酒場を目指すことにします。以前もトライして見事玉砕した酒場放浪記の登場店である「大滝」に向かったのであります。以前店構えを眺めた記憶では商店街の真っ只中にあるのが極めて自然なチェーン店風の退屈そうな店に思われました。いかにもこの商店街にお似合いな雰囲気に思われたのです。しかし、暖簾の掛かるこの夕暮れ時に改めて見るとそれなりにくたびれた様子で案外良いんじゃないかとの予感があります。そして実際になかなかのムードを持ち合わせていたのでした。店内はカウンター席だけの造りで、結構広くて余裕があります。壁には昭和46年開店の貼り紙もあり、思った以上に年季があるようです。カウンター割烹とでも言うのでしょうか。女将さんが一人でやっていて、ぼくが口開けだったこともあり、暇を見ては声をかけて下さり退屈しません。品書きからモズクのキッシュなる品を頼みました。ゆっくりじっくりと焼き上げられたそれは、キッシュと呼ぶのは適当ではなく、スパニッシュオムレツのようにしっかりと火を通したオムレツのような品でしたが、これがなかなか美味しいのです。聞くと卵にモズクを入れてだし汁を加えただけのようです。これは家で試してみたくなります。ただしこのモズクは青森の品らしく、よく売られている沖縄のグズグズとした軟弱なものではこうはいかぬだろうと、女将さんと語り合うのでした。というように望外にとても良かったのであるけれど、唯一かつ致命的に残念なのが気安そうなお店なのに値段だけは少しも気安くないのでした。
2017/10/24
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前々から行っておかねばならぬと思い続けていた立会川の酒場ーそれも酒場放浪記で紹介されたお店ーに、行かねばならぬと長いこと課題店として念頭にあったにも関わらず、地理に疎い己の非識振りに振り回されて、これまで接近遭遇を繰り返した店があります。開店時間まで間があるというのは明らかに偽りで単に京急の運賃を支払うのが勿体ないから大井町駅から歩いて立会川に向かうことにしたのでした。途中、「大衆酒場 おかめ」なてん素敵な店があったりして、ここはやってるんでしょうか。喫茶店の「ユウザン」は随分前にお邪魔しましたが、すでにやめてしまったのでしょうか。「家庭料理 なか」と「来々軒」は頑張ってますね、いずれお邪魔したいと思うのです。 さて、お邪魔したのは「やきとり 鳥勝」です。外観だけでノックアウトされるくらいに素晴らしい。いや、先に書いた「ユウザン」の目と鼻の先なのでこの店の存在は当然知っていたし、もしかするとその時も営業していたかもしれぬ。だけれどどうにもやむをえぬ理由で立ち寄ることは叶わなかったのでした。その時の無念さたるや計り知れぬほどでありますが、それもこれもこの日の興奮を醸造するためだったと思えば、許されるというものです。さて、そうした興奮をグッと呑み込んで店内に足を踏み入れるのです。入るまでもなくここのことを好きになりました。なんと素晴らしいんだという感慨に耽る間もなくわれわれ客には席を決めるという課題が待ち受けています。入ってすぐの2人掛けでクランクするカウンター席にはすでに先客がいます。初めての場所では末席ーしかしぼくには店内すべてが見渡せる上席ーに腰を下ろすことにしていますが、それは叶わぬようです。長いカウンターの多くの席もまだ5時にならぬのにかなり埋まっています。カウンター席の奥に居場所を見つけて席取りを終えるとようやく一安心。勝手知ったるふうに澄ましてこの日のお勧めを眺めてみたりするけれど、常連さんには即分かっちゃうんだろな。ポイとお絞りを放り投げてくれました。これはセルフなんだな、と脳裏に刻みつつホッピーを所望。猛者たちは当然なが焼酎一升瓶を抱えて呑んでいます。目の前にあるチラシの切れ端はこれで注文すると瞬時に認識しましたが、やはり分かるんでしょう、女将さんにこれに欲しいの書いてと言われてしまうのでした。妙に知った風を装うのはみっともないものですから、ナルホドといった表情を浮かべて見せることを忘れません。さて、こちらの品書は豊富でどれも旨そうですが、当然のもつ焼とともに頼んだのが生野菜サラダです。小さいサイズがあるのも嬉しいことです。これにはもつ焼など色んな品のベースの味付けとなるらしいタレが掛かっていて、マヨネーズだけでは単調になるところを工夫したのでしょうがこれがいい。その後、ひっきりなしに常連が訪れて帰るときにはカウンター席はほぼ埋まってしまいました。いやいや、人気があるのも当然です。 駅を通り過ぎて、竜馬像の脇にビニールテントが張られています。「ことぶき」には随分久しぶりに訪れました。というか、スリリングな階段を降りながらもカウンター席に着いても少しもかつて来たことを覚えていませんでした。メモを確認して再確認したまでです。ここはまあ普通にお手頃な酒場で特段変わったところはありませんが、鍋仕立ての煮込みはスッキリしていてボリュームもあり良かったなあ。お隣りのお兄さんは地元の名士を自称しておられましたが、不思議と嫌味はなくて、自分ほどこの町を愛する者はいないと力説するのが清々しいとさえ思われるのでした。確かにこの町は愛されるべき要素がたくさん見つけられそうです。また近いうちに来るとしようかな。
2017/02/01
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長いこと敬遠していた大井町に近頃ちょくちょく行っています。便利そうで案外行きにくいという愚痴は先だってひとしきりボヤいたばかりなので繰り返すことはしません。高校生の頃、夜行に揺られて友人と遊びに来た際に宿泊したのがこの町だったこともすでに書いたような気がします。邦画ー時に外国映画も上映していましたけどーの珍作、怪作を漁るように見たのもこの町です。何にせよぼくにとっての青春がこの町には充満していて、時として息苦しくなるのです。雑然としたこの町を人混みを避けるように足早に駆けずり回っていた暗い時代のことは、遠いか異なった今でもオリのように堆積し、暗澹たる思い出として今でも脳裏に蘇るのです。そんな極暗色で彩られた町で酒を呑み、したたかに酔ってみようものなら必ずやバッドトリップすること請け合いです。さて、今回は体調イマイチ、でもせっかく大井町に来てしまったので軽く立ち呑みをハシゴしようという目論見です。 最初に来たのは、大井町が誇る呑み屋街の東小路、平和小路の入口にあるその名もズバリの「立ち飲み処」です。でも来てみたはいいけれど、間違いなくここにあった立ち呑み屋に以前来てるんだよな。居抜きされたのか単に店名を変えたのか判然としないけれど、まあそんな事は大した問題ではありません。今ここにある酒場が良いか悪いかのその点こそのみ注視、いや注呑すればいいだけなのです。まず狭い店舗ではあるけれど人でぎっしり埋まっていることからだけでも支持されていることは明らかです。しかしそれはここ大井町では必ずしも高評価であることの指標とはならぬのかもしれません。酒場好きにはよく知られるお肉屋の立ち呑みは当然としても、他の何軒かにも多くの客が詰め掛けているのを目撃することができるはずです。大井町の呑み客らはこの町の安酒場が好きに違いなさそうなのだから、ことさらこの立ち呑み屋を贔屓にしているわけではないかもしれぬので、簡単に決め付けることはできません。それにしても混んでいる。ポジションをフィックスすることさえままなりません。テレビも設置されていたはずですがこれだとおちおちテレビなど眺められる立ち位置など見当たらなさそうです。で、感想としては可もなく不可もないごく普通の立ち呑みという穏当なものになりそうです。ただし店名が想起させるような模範的な店とも思われず、実は隣に立った若い男が店の人とも懇意にしているらしいのですが、とにかく無作法であり、それを注意すらしないというのはどんなものだろう。ぼくの良く通う立ち呑みでは、主人こそが店の規律だけでなくムードさえ演出したというから立派であります。そうした怖くて寛大な主人が求められているのかもしれませんが、果たして大井町にそれは期待していいのでしょうか。 続いては評判の中華立ち呑み店「臚雷亭」に行ってみることにしました。それこそこちらはすし詰め状態の大盛況っぷりです。店の中国人の女性スタッフの助けもあり、掻き分け掻き分けしてようやく店のど真ん中に立ち位置を確保します。さて、ここで早々に結論を申し上げます。こちらのお店、評判に違わず早い安い旨いの立ち呑みの三原則に準じていて大変結構なのですが、そんなことよりもっと大事なことがあります。スタッフの彼女たちは笑顔こそ少ないけれどとても親切で丁寧であります。そして何より良いのが客のことは大事にしながらも愚かな客に対しては毅然とした態度で叱咤し、繰り返しの注意に応じぬ者には躊躇なく退場を命じるのであって、それを目にして思わず喝采を上げたくなりました。規律を守ることは指摘された当人にとってはバツの悪いものです。しかしそうする事が店全体の雰囲気を良くすることを彼女たちは身を持って知っているようです。中国人のマナーの悪さを日本人は事あるごとに話題としますが、日本人だって酷い奴は幾らもいるのです。彼女たちはきっと同胞に対しても態度を変えることはしないはずです。大井町の酒場は、彼女達を範とすることを是非ともに推奨したいのであります。
2017/01/17
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地元の方や酒場放浪記のコアなファンの方なら周知の事実なのかも知れず、今更驚いてみせるのはひたすらみっともないことかもしれませんが青物横丁から数分の場所にある一軒の酒場は、以前一度訪れていますがその時の印象は、ポツンと一軒家の外観だけ見る限りは好印象でした。でも店内に入るとまるっきりスナックだなという消極的な印象になり、その時は今日は休みよというママさんの一言にスゴスゴと退散するしかなかったのです。その印象が鮮明であったため、その後なかなか足を運ぼうという気にはなれなかったのです。いや、それは自分に都合の良い言い訳かもしれません。未知なる酒場への好奇心がぼくを突き動かすのであって、一度見てしまった以上はそこは未知なる物の輝きを急速に衰えさせてしまうのです。 そんなことを呟きながらもー一応お断りしますが、実際に呟きはしませんー、「居酒屋 葉月」にやって来てしまいました。前回の印象から推し量ると店内には客は疎らでわびしい沈鬱なムードが充満しているのでは、という失礼極まりない予想は心地よく覆されるのでした。店内は一望するに定員オーバーと見紛うばかりの人で溢れかえっているのでした。これほどまでに盛況となる理由は注文せんと品書きを一瞥した瞬間に白日のもとに曝け出されるのでした。今回はなんだか大仰な言い回しを乱発しているけれど、実際にそうなのです。だから店の雰囲気と異なり若い客やサラリーマンやOLのグループも大変に多い。薄暗いのはスナックめいていますが、その暗さと人混みがスナック風に見せるスツールやらを視界から遠ざけてくれるのに寄与しています。本当に好きかと問われると若干の留保を余儀なくされますが、便利でお手軽な店であることは間違いありません。通勤圏内にあったら定期的に訪れることは間違いなさそうです。場末めいた店なのに繁盛しているというこのギャップに馴染んてしまえさえすれば良いのです。都内にはまだまだ変わった酒場があるのだなと感心させられる経験となりました。
2017/01/05
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昔から大井町に行くのはいつだって結構面倒でした。かつては池袋駅から山手線に乗り込み品川駅で京浜東北線に乗り換えました。今でも基本的にそれは変わりませんが、りんかい線というのが開通したことで、池袋からなら乗り換えなしで大井町に行けてしまうようになったのであります。しかもターミナル駅以外はバンバンすっ飛ばしてくれるのだから近くもなった。それは大いにめでたい事であるのですか、実際にその利便性を享受したことはないのであります。なぜなら端的に運賃への跳ね返りがただ事ではなく、ぼくなどのよなうケチな性分の者にとっては、選択肢に加えようなどとはゆめゆめ思えぬのです。なので、池袋を起点とした場合は、りんかい線直通の列車に乗り込み、大崎で山手線に乗り換えて品川で京浜東北線に乗り換えるという経路を取る羽目になるのでえります。確かに、確かに時間は若干短縮できているけれど、乗り換えの面倒さと体への負担はずっと増したような気がする。それって果たして便利になったといえるのか。同じ経路をりんかい線で大井町に行く人はお金持ちに違いないし、でもお金持ちが池袋なんて町から大井町に行くのかなんて事を思ってしまう。 大井町では魚好きなら知らぬものはないといった紹介が、酒場放浪記でされていたような記憶があります。「大衆割烹 釣り仲間」は、そういうせこいぼくにとっては敷居の高い酒場としてインプットされていたのであります。だからという訳ではなく、大井町への道中の面倒臭さがぼくをこの町から遠ざけたのです。しかし、当時の面影など少しも留めていないにも関わらずそれなりに郷愁を喚起する某かがこの町にはあるようです。店の戸を開けて入った店内はどの町でも通い慣れた代わり映えしないものでした。常に繁盛していると思われた店内にはそれほどのお客はおらず、むしろ少しく寂しく思うほどの入りでした。いつも思うのですが、多くの人がテレビなどマスコミ取材によくもまあホイホイと応えるものだと不思議に思ったりします。功名心や売上向上のためだったり、世の人々に取材対象が何であるにせよその素晴らしさをどうしても知らしめたいという欲求があるにせよ、ぼくが仮にそんな申込みを受けることがあってもまずお断りするに違いないと思うのです。長くなりそうなのでこの話はここまでとして、このお店のオヤジさんはその天然の陽気さでつい引き受けちゃったんだろうと思うのです。定評通り魚介が目白押しの品書きで日頃はケチケチして欲望を抑えるのに必死なところをなんとかいう魚の煮付まで頼んでしまう。常連が釣り上げて持ち込んだ魚だそうな。こんな旨いのが釣れるなら、釣りも楽しそうだなあと束の間の妄想を巡らせますが、早々とぼくには向かないだろうと結論付けるのでした。忙しなく、しかもちょっと強引めにお勧めを頼まされるようなお店の印象があったのですが、全くそんなことはなくゆるい雰囲気でだらだらと呑める好みの酒場でした。
2016/12/27
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新馬場は京急で品川から2駅目にあります。電車に揺られて一息つく間もなく到着してしまう位に近いので、以前は品川からよく歩いたものです。東海道を歩くのが粋だなんて特に思っているわけではありませんが、この程度の距離を歩いて交通費を節約できるのだからまあお手軽な節約術です。財テクや博打にちっとも興味のない無粋なぼくにとってなけなしの小遣いをキープするのは節約しかないのであります。500円貯金とかやる人がいますけど、あれは500円の重みを知らぬ人だからできる事であって、500円あればあすこでもそこででも2杯は呑めると考えると、うっかり貯金箱に放り込む勇気など霧散してしまうのです。ともかくこの夜も新馬場には京急を使わず歩いてきたんですけど、品川からではありません。品川と北品川間を歩くのにほとほとうんざり飽きてしまっているのです。だからまあ大井町から歩いてきたんですが、だからと言って何のオチもないのであります。 かつての東海道の街道に面する「金時」は、これまでも何度か店の前を虚しく通り過ぎています。いつも閉まっているからなんですけど、さほど味のあるとは思えぬ真新しい構えのお店に何故ここまで執着したかというと答えは単に維持になっていただけという身も蓋もないことになるのてすが、元来ぼくにはそういうところがあって損ばかりしているのです。一度気になり出すとそれが気になって仕方がなくなるのです。間近なところでは痒いとこがあるとどうにも我慢できず気が済むまで掻いてしまう。そしてたちが悪い事にその痒みは周囲に飛び火し範囲を拡大するのです。酒場巡りも似たようなもの。以前は職場や自宅周辺の酒場さえ巡ればいいと思っていたのが通勤経路から日本各地にまで拡大し歯止めを知らぬのです。そんなわけでここも酒場巡りをする上ではひとまず押さえておくのが良いと思い込んでしまい、何度も降られ続けながらもとうとう無事に入店が叶ったということです。この時点でほぼ気分は満足なのですが、このまま立ち去るわけには流石にいかぬ。写真に映るこの品は一体何という料理か忘れてしまったけれどもお手頃価格だったはず。ちょっとした小料理屋風のお店と思い込んでいたからこれは望外の幸せです。いうなれば海鮮サラダのようなものですが、何より圧巻はこのボリューム、そして刺身もとても旨いではないか。やはり店に来たなら呑んで食ってで良し悪しは判断せんとならんな。嬉しくなって店内の隙間を埋め尽くすオーディオ機器に目を留めて褒めそやしてみると、ご主人相貌を崩してこちらを見やると、一言も語らずジャズを鳴り響かせるのでした。
2016/12/13
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大井町はかつては週を空けずに通った町です。察しのいい方でそれなりに映画を見ている人であれば、かつてここにあった大井武蔵野館の事を想起なさったことでしょう。そう、ぼくにとってこの町は、何をさておきこの小さな映画館のある町として忘れられぬ町となっています。あれれっ、今思い起こすといつも暗い階段を上がって窮屈な客席に身を潜り込ませたものですが、一階部分がどうなっていたのかは、どうしたものか全く覚えていない。その頃の記憶はもはや自力で取り戻せそうもなく、かつてその小さな名画座に足を運んで記憶の縁にすがろうとしても、大井町駅の西口はもはやぼくとは縁のない町に成り果てており、よそよそしさだけか町を覆うのです。例えこれから向かおうとする酒場が創業何十年で、ぼくの足繁く訪れていた頃からやっていたとしても、少しもぼくの記憶を刺激しないのでした。友人と二人、初めて地方から上京して宿泊したのが大井町だったことなども思い出ではありますが、この町の眺めはほくのこれまでの人生とは一切結び付けることが出来なくなっていたのでした。 だからと言ってこの町のすべてが失われてしまったわけではなさそうです。「オーイナル 野焼」は、ぼくが通い詰めていた頃にも営業していたようです。町が失われてしまったと嘆く権利を持つのは、この町に暮らしながら様々なものが失われていくのをつぶさに見守り続けた人にのみ与えられたものなのかもしれません。ひたすら決まった小屋で古いフィルムだけを見つめ続け町を歩くのももどかしいとしか感じていなかったかつてのぼくに回想に耽る甘美な体験は許されざることなのです。さて、長らく遠ざかっていた大井町とか言ってますが、実際にはこのブログにも何度か記録させていただいています。しかし、西口側は本当に久しぶりです。ガード下では呑んでもいますが駅前の通りを歩いてみてもかつて通ったのがどの道だったか思い出せぬほどです。大型スーパーの裏手に呆気なく目指す酒場がありました。なるほど、極めて居酒屋さんらしいと言われればいかにもそうなのではありますが、代わり映えないと言うならそれも遠からずというまあ印象に薄いお店でした。いつも言っていますが、これはけして否定的なことを述べているのではなく、凡庸もまた居酒屋を居酒屋たらしめる一因であるのてす。居酒屋なんて主人と酒と最低限の肴があれば成立するのだから否応にも似通ってしまうであります。そこに幾ばくかの個性なり差異なりをもたらすことで、他店との差別化を図るということになり、そんな些細な何ものかに出会うために酒場好きはせっせと夜の町を徘徊するのです。ここは魚介の豊富さと店主らしきオヤジさんの暖かな人柄に店の個性が集約されそうです。ここにいる客は、無闇な酒場巡りなどとうに卒業されたような大人たちが集います。そんな落ち着きが店側にも客側にもあり、まだ悟りきれぬぼくなどは居ずまいをただしてしまうのです。
2016/12/02
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大崎の外れにある商店街は先日も書いたばかりですが、すっかり気に入ってしまいました。純粋に酒場を称する店はそんなにないけれど、十分に酒場使いに耐えうるような店が慎ましく営業しています。大袈裟に飾り立てたような店などほとんど皆無でいずれも年月による風化をそのままに営業しているのはどこか健気にさえ思われます。自分なんかよりずっと長い年月を耐え抜いてきたようなお店に対して不敬極まりない尊大な物言いなのは承知していますが、こんな時代からこぼれ落ちたような町並みを留めていてくれるのは、本当に嬉しいことです。 さて、最初にお邪魔したのは、そんな寂しい商店街の暗い路地にある「とんかつ 一松」です。その先にはやはりいい感じの酒屋さんもあります。ここが角打ちなら迷わず入ったんですけど。さて、そんな枯れたとんかつ屋にお客さんは入っているんでしょうか、これまでの経験だと町場の夜のとんかつ屋は総じて空いているもの、全く客がいないこともしばしです。ところがこちらはカウンター席もほぼ満席、テーブル席も一つは近くで勤めているらしいサラリーマンが呑んでいます。もう1卓が幸いにも空いていましたがその後もさらにお客さんが来られて、先にいた人が席を譲るという好ましい光景も目にしたのです。地元の方に実に愛されていることが目の当たりになりここに入って良かったと己の目の付け所の良さに自賛するのでした。酒の肴になる単品料理も豊富です。特に感心したのはメンチカツで、厨房ではオヤジさんがひき肉やら玉ねぎなんかで出来たタネから両の手でペンペンと空気抜きするところから手作りで、いやまあただ単に手作りだから良いということではなく、それが本当に旨いのだから幸せを感じても不思議ではない。しかもご夫婦揃って柔和で好ましいお人柄の方たちであることが感じられて独りでここでまた呑みたいなと思うのでした。 次に入ったのは「まつざわ屋 ラーメン店」です。テントの看板がかけはぎされていて、忘れてしまいましたがもとは全く別の業態だったらしいのです。でもその店内は外観以上に激しく黄昏れたムードで薄暗く全面がべっ甲色に染まっているのは何とも心地よいのです。こればかりはニスかなんかでそれらしく誂ってみたところで、嘘臭さばかりが際立って、そうレトロ風ないけすかぬ酒場っぽくなるだけでしょう。こちらも酒の肴がそれなりに用意されていて、いずれもお手頃で、手早く作れるようなものばかりですが、それで十分なのです。こちらのご夫婦は陰気なわけではないのですが、特に語りかけてくることもなくむしろ一人じゃなくてよかったなあと思えるようなそんなお店でした。そう、こちらは席数はそれなりにあるのですが、お客さんは一人もおりませんでした。
2016/04/11
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大崎、これはJRの大崎駅ですが、この界隈で呑むことはそうはない。そうはないっていうかあえて山手線に揺られて大崎駅まで呑みに行くことなど初めてのこと。大体がこの駅で下車するのも片手で余る程度しかなく、いつか一度は歩いてみようと思っていたのですが、これまで知らぬ顔を決め込んでしまいました。いやいや言い訳しておくと全くこのエリアに踏み込んでいないということではなく、時には五反田辺りから流れていることはこのブログにも記録されているはずです。今回来たのは酒場放浪記に出た酒場に行くことを決断したからで、でも行ってみたらそこはいつからなのか完全予約制などという詰まらないシステムもなってしまったようです。だからもうどうにも仕様がない。 だからということでもないけどその酒場のある通りを歩いていると何だか哀愁漂う商店街がだらだらと伸びていて、なかなか良いのですね。飲食店のまるでない商店街は退屈ですが、この通りには古い中華料理店や食堂もちらほら混じっていてどこも味があって覗いてみたくなります。昼間は魚屋さんであるらしい店舗が夜になると居酒屋に転用されているらしきお店もあり非常に気になりますが満席のようです。そんな気になる店をチェックしながら歩いてゆくと「再会」という居酒屋がありました。いろんな飲食店があって焼鳥屋なんかもあるのですが、ここぞという居酒屋は残念なことにあまりありません。若干スナックっぽい感じもありますがここにしておきます。カウンターではおじさん一人が呑んでいて、奥には団体さんが呑んでいますがもうすぐお開きとなるようです。焼酎の水割をもらって呑み始めると、酢の物がお通しとして出されました。そういえば品書がないなあと思っていると、続いて切干大根の煮付、まぐろの山かけ、しばらくしてお好み焼とどれも美味しくて好物だったから良かったものの、久々の突き出しシステムにじわじわと不安を感じ始めます。第一これだけ食べたら呑めなくなってしまうので、ここまでにしてと制止してようやく安心して呑むことができます。奥のグループが帰られると入れ替わりにお一人のお客さんが入ってこられました。店の雰囲気は急に親密なものとなり、今後再び会う機会があるかなんてことは関係なしに自然とおしゃべりに花が咲くのでした。こう書いたけどこれだけ気分のいい酒場ならまた訪れることもありそうです。お勘定は不明瞭ですがお手頃なのでご安心を。
2016/03/10
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五反田という町は乗り換えがあるわけでもなく、運賃もさほど掛けずに行くことが出来るのですが、どうも面倒な気がしてあまり足を運ばない町です。外回りでは新宿から先、内回りでは浜松町から先に行くのはどうもかったるい。いつもかったるい町ですがたまたま出張させてもらはえば交通費も浮くし、それだけで気分も浮き立つというもの。そういう愚かな気分に流されやすいぼくは当然酒場を目指すのです。 結局行き着くのはさほど有り難みもない「へそ 五反田店」なのてした新橋を拠点にゆるゆると拠点を増やしていたようです。不貞腐れたような中国人らしきお姉さんたちにお愛想を求めようなんてことは少しも求めていなかったのですが、少しく大雑ば過ぎます。地元の勤め人たちは彼らの対応の悪さなど値段のうちー安さの方ーだとばかりに無視を決め込んでいますが、この不貞腐れたような応対ってどんなものかね、そういうもんでもないでしょう!? なんてことは思いはしますが、それを除くとまずは良いお店であることは間違いなし。それなりの納得感はあります。近くに行ったらきっとたまには寄るんでしょう。でも通勤経路にあるわけでもなし、わざわざ電車賃を使ってまで行くことは、まあまずないだろうなあ。 そのすぐそばに「SUNNY SIDE 1923 HIGHBALL BAR」というのがありました。ハイボールをメインに据えた多分若者向きのカジュアルかつアメリカンな雰囲気のまあめったに立ち寄らぬタイプのお店です。まだ表は明るいのにこの店内はすでにムーディーなぐっと抑え目の証明設計がなされています。とりあえずは自慢というハイボールを頂きます。とりわけハイボールを好む者ではありませんが、お手頃なのは何にしろ重要なこと。炭酸の勢いがあって喉がヒリヒリするのが心地良いけど、まあハイボールなんてそれ程旨い呑み物とは思えぬので、かくたる感銘はなし。五反田らしからぬ洒落た造りのお店の中心に据えられた大きな環上のカウンターのその隅っこにぼくはいるわけですが、その中心には聞き苦しい関西弁を操り店の外にまで届きそうな大声で語る鬱陶しい若い奴らが非常に苛立たしい。品性を疑いたくなるような会話は、聞きたくなくとも耳に入ってしまいます。やがて呑み疲れたらしいー喋り疲れてはいないらしいー二人が去ると、あまりの静寂に耳鳴りがするようで居たたまれなくなって引き上げることにしました。やかまし過ぎるのは腹立たしく、静か過ぎるのは虚しいのでした。それにしてもこんな手軽なバーでチャージが500円は高すぎやしないかい。
2015/10/23
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西大井駅は、かつては都心からのアクセスも今ひとつで、しかも地味にすぎる枯れた町であるため、なかなか訪れる機会もなく今回実に10年振りの訪問となります。当時もほうぼうで呑み歩いてはいましたが、決まって通い詰めた酒場はあるものの無闇やたらと手当り次第に古酒場に立ち寄るという性癖はなく、むしろ一軒の酒場で際限なく呑むのが定番でした。そんな体たらくなので西大井でも一度くらいは呑んだことがあったかもしれませんが、まったく記憶にありません。とにかく8時をとうに回った時間帯に西大井で呑めるのか不安はあるもののまあ何とかなるでしょう。 というのも西大井には酒場を巡る人であればきっとどこかで目にしているであろう知られざる有名店があるからです。「二葉屋」がそこで、このブログをご覧いただいている方であれば、なんだまだ言ってなかったのかとお叱りを受けそうな程の隠れた名店なのです。暗く静まり返った商店街を歩くと程なく店が見つかりました。地元の繁盛店と言うにはいささか閑散とした様子なのがガラス戸越しに見て取れます。店内は早くも客足は引けたようで、出遅れた感があります。店を守る高齢の女性2名が口を揃えて断りを述べますが、呑むだけでもいいのでと伺うと、じゃあ焼物見てみるねと至って親切、カウンターの若い二人は狭いカウンター席を空けもせず全くなってない。しばし待って出されたもつ焼は、驚くほどに絶妙な火の入り加減で不味くなければいいというぼくの味覚を狂わせるかというほどに旨いのでした。久しく忘れていた肉を食らう楽しさをほんの少しだけですが堪能しました。ここは酒呑みであっても腹をすかせて通うに値する名酒場と感動したのでした。
2015/09/04
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武蔵小山はおっきな商店街も手頃な酒場も何軒かあって好きな東京の町の一つですが、自宅から行くにはやや不便であるためよほど気が向かぬ限りは仕事帰りにー自宅を通り過ぎてまでー立ち寄ることなどありません。と書くとこの夜はよほど武蔵小山が恋しくなって帰宅時に立ち寄ったかのような語りっぷりですが、実際はそんなことはなくてやはり土曜に所要を済ませてからちょっと下車してみただけなのでありました。 駅前の薄汚れたしかし場末っぽさをこよなく愛する者にとっては魅力的としか言いようのない、しかし近々に再開発で失われる風景と聞くこの一角はせっかく武蔵小山を通るからには無視して通過するわけにはいかぬのでした。そんな訳でこの夜はこの界隈ー勿論再開発地区、と知ってるように語りますがそのニュースソースが職場のおっさんのラジオで得ただけの情報なので、これけお邪魔することになる一軒がそれき含まれているかは知らぬことなのでしたーの「江戸一」てした。土曜の夕暮れ時、普通のこうした枯れた酒場であれば空席が目立つーたいうかかなりの確率でガラガラーはずであるのに、ここはカウンター席のみの一席を残してふさがっていたのでした。これだけの混雑で常連主体の客層で一席が空席となるとどちらか1名が要注意人物である可能性が高そうです。それでもそこしか空きがなければ決死の覚悟で虎穴に潜り込むまでです。と語ってはみましたが両隣は至って寡黙な方でその周辺が喧しいくらいだったので気分良くひとときを過ごせました。一方女将さんは江戸っ子風のチャキチャキしたお姉さんで、この女将さんとの語らいというか応酬を楽しみに来られる常連も多そうです。静かに楽しむよし、賑やかにやるも良しの、なるほど常連が足繁く通うわけです。肴は結構なボリュームなので頼みすぎにはご注意を。
2015/04/29
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武蔵小山はおっきな商店街も手頃な酒場も何軒かあって好きな東京の町の一つですが、自宅から行くにはやや不便であるためよほど気が向かぬ限りは仕事帰りにー自宅を通り過ぎてまでー立ち寄ることなどありません。と書くとこの夜はよほど武蔵小山が恋しくなって帰宅時に立ち寄ったかのような語りっぷりですが、実際はそんなことはなくてやはり土曜に所要を済ませてからちょっと下車してみただけなのでありました。 駅前の薄汚れたしかし場末っぽさをこよなく愛する者にとっては魅力的としか言いようのない、しかし近々に再開発で失われる風景と聞くこの一角はせっかく武蔵小山を通るからには無視して通過するわけにはいかぬのでした。そんな訳でこの夜はこの界隈ー勿論再開発地区、と知ってるように語りますがそのニュースソースが職場のおっさんのラジオで得ただけの情報なので、これけお邪魔することになる一軒がそれき含まれているかは知らぬことなのでしたーの「江戸一」てした。土曜の夕暮れ時、普通のこうした枯れた酒場であれば空席が目立つーたいうかかなりの確率でガラガラーはずであるのに、ここはカウンター席のみの一席を残してふさがっていたのでした。これだけの混雑で常連主体の客層で一席が空席となるとどちらか1名が要注意人物である可能性が高そうです。それでもそこしか空きがなければ決死の覚悟で虎穴に潜り込むまでです。と語ってはみましたが両隣は至って寡黙な方でその周辺が喧しいくらいだったので気分良くひとときを過ごせました。一方女将さんは江戸っ子風のチャキチャキしたお姉さんで、この女将さんとの語らいというか応酬を楽しみに来られる常連も多そうです。静かに楽しむよし、賑やかにやるも良しの、なるほど常連が足繁く通うわけです。肴は結構なボリュームなので頼みすぎにはご注意を。
2015/04/25
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荏原町ってぼくの行動範囲からは逸脱した土地でありますが、たまには訪れることもあるのです。今では駅前はどうなってしまったのでしょうか。久しぶりに町を訪れた時には駅は改装工事中らしくその周辺も再開発で枯れた町並みが壊滅的なまでの打撃を受けていたのでした。何軒かの目当ての酒場や喫茶店にも出会えぬままに傷心の重い気持ちを振り払うために歩き始めて線路を渡ると、どうってことのないもののいくらかでも気分を慰めてくれそうな立ち呑み屋があるのでした。 ほとんど引き寄せられるようにフラフラと店に入ってしまうのでした。店の名は、「やきとり立呑屋 きむきむ 荏原町店」というようで、この沿線に系列店があるのでしょうか。線路際にあるので出来ることなら列車の運行が眺められるのが嬉しいのですが、こちらから列車が見えるということは逆もまたしかりというわけで、ここはコッソリお忍びで飲みたい方の要望が勝っているということなのでしょう。さて肝心のお店はなるほどチェーン化しつつある過程にあるお店らしく汎用性が高く、多くの人にとって勝手の良い店となっていて、それがぼくには物足りなく感じられるのでした。
2014/08/12
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ちょっとした飲み会があったので,同行するT氏と会場に向かう途中にある五反田駅で待合せしました。飲み会開始まではまだ時間があるので,ちょっと腹ごしらえしたいと思ったのでした。 合流したのは,五反田駅ガード下に店を構える「すし処 都々井」。立ち食い寿司屋の老舗店です。近頃,チェーン店でも「魚がし日本一」などが立ち食い店を展開していて流行の兆しを感じますが,現在では一般的な握り寿司が江戸時代に屋台で供されたという歴史を繙くまでもなく,もともとは立ち食いスタイルでさっと小腹を満たすためのものであり,先祖返りしているものと言えなくもありません。いつの間にやら立派な料理店のような装いで高級化してしまったのはまことに嘆かわしいことであると,ビンボー人がほざいてみたところで虚しいばかりなのですが,軽く腹ごしらえで寿司をしっかり呑んでしまってはこれから呑む酒がまずくなってしまうのでこうした店が台頭してくるのは喜ばしいことです。厨房をぐるり取り巻くカウンターでは,主にサラリーマンたちが新聞を眺めたりしながらビールと寿司を数貫握ってはさっと立ち去るのでした。この颯爽さと比べると,見るからに金満風のギラギラしたオヤジが同伴のおねえちゃんと薀蓄を垂れたりしながら,職人用語を知った風に駆使して長々と居座ったりするのが粋だとはとても思えなくなります。銀座の高級寿司店でおねえちゃんと呑み食いなんて全然羨ましいとは思えません。思えませんけど,誘ってくれる方がいるならお断りはしません。ともあれ随分久しぶりに寿司を食べましたが,立ち食い寿司でも十分満喫できるのだと改めて確認できました。 立ち食い寿司の次は角打ちに行ってみることにしました。T氏は東京風の角打ちを嫌う困った人なのですが,この夜は珍しく付き合ってくれました。池袋の「桝本屋酒店」や田端の「喜多屋酒店」といった味のある角打ちさえ好きになれないようです。実はその気持ち,わからなくもなくて味もそっけもない角打ちで酒を呑んでいると時折,こんなどうでもない酒屋さんの隅っこでビール呑んでるのは,コンビニ前や駅のキオスク前で酒を呑むのと一体どこが違うんだ,それなら家でのんびりテレビでも見ながら呑んだ方がよほどいいのではないかと思わなくもありません。ともあれ行ってみなければその店の良し悪しは判断できません。「加藤酒店((有)かとう)」の前に着くととたんにT氏の表情が曇るのを察しました。確かにまるで風情のないお店です。ここでやめたと言われては叶わんので,渋る様子に気付かぬフリで店に入ります。うん,店内はまあ典型的な東京の角打ちでビールケースを積んだ上に板が置かれて,それがテーブル代わり。乾き物や缶詰は豊富ですが,手を加えた肴はやはりなしです。法律上,どの程度の食品を出していいのかは知りませんが,不思議なことにゆで卵程度でもいいから出してもらえると気分もぐっと盛り上がるのですけど。それにしても手作りの肴を出してる店っていうのは,適法なんでしょうか,うっかりどこそこでおでんを食べたなんてことを書いてしまって大丈夫なんですかね。
2014/02/11
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東急池上線沿線の大型商店街としては,戸越銀座が有名ですが,荏原中延も商店街が集まっており,サンモールえばら商店街,なかのぶスキップロード(中延商店街),昭和通り商店街があります。何度かこれら商店街を散歩していますが,通りの店舗に気を取られてしまい,線路沿いに呑み屋街があったことなどついぞ知りませんでした。今回もまた,「吉田類の酒場放浪記」に導かれて荏原中延の酒場を訪ねることにしたのでした。 ところが6時を回っても肝心のお店はシャッターが閉まったままです。かなり古びた建物でご主人もご高齢のようでしたから不定休で営業しているか,それともまた出遅れてしまったかと思いながらも未練があるためしばらく時間を潰すことにします。この呑み屋街も雰囲気がいいですし,中にはちょっと気の利いた酒場もあるかもしれません。と結局お邪魔したのはお目当ての店のお向かいにある「大衆酒場 栄」です。大衆酒場ということだけで選択しました。店内はガラス張りで見通せるので大方の印象は店に入らずともわかるのでしたが,散策した結果,ここがもっともお手頃に呑めそうな雰囲気だったのでした。カウンターメインのお店で,店内はきれいで新しくさほどそそられる要素はないのですが,ちょっと立ち寄るにはよさそうです。店の夫婦も働き盛りといった世代で,店も始めてそうは経っていないようです。お客さんはまだ1名だけ,荏原中延位に都心から近い町ではむしろ呑み屋という商売は難しいのかもしれません。職場を出てすぐそばというには企業もあまりなさそうですし,帰宅して最寄で一杯というには近すぎる微妙な場所に思われます。カウンターで独り呑むご高齢の方は地元のご隠居さんといったご様子です。こうした客がどうしてもメインになってしまうのでしょうか。ぼくは独りそんなことをぼんやり考えながらサワーを口に運びながらも,気持ちはすでにお向かいの開店を待ちながらそわそわしているのでした。ああ,厚揚げ焼おいしかったです。 店を出ると,あな嬉や「もつ焼き 仲居」のシャッターが上がり,明かりも漏れていました。昭和35頃に開店した老舗もつ焼店です。カウンターだけの店内にはいつの間にやらやってきたのか,すでに3,4名のお客さんが入っています。その後もぽつりぽつりと客が入り,店を出るころにはほぼ全席が塞がっていたのでした。店の印象を一言で言うと,老舗酒場というのとはちょっと違って,むしろボロ酒場というほうがぴったりくる感じです。もちろんぼくにとってはボロ=不快ということにはならないことを念のため申し添えます。厨房のスペースがやたらと広いL字のカウンターのみのお店で,さまざまな物が雑然と放置されていて,これさえ整理すればもう4,5人は入れそうです。厨房も導線の妨げになるかのように乱雑で散らかっています。そういう雰囲気が好きな方であればきっと楽しめますし,ダメな方はあえて行くことは避けた方がよいかもしれません。小さなやかんで出される燗酒は燗の域を超えてアルコールが飛んでしまうほどの熱々で,もつ焼も特別どうということがない。それでも人が集まるのは旨いとか安いといった明快な理由とは違った,場の雰囲気というものの魅力がそうさせているのではないでしょうか。
2014/02/05
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この夜は五反田の町で旧友のU氏たちと呑むことになりました。彼とは数年振りの再会ということもあって,互いの近況を語ることにもなろうことです。長丁場になることは覚悟していました。なので,いつもであれば立飲み屋なんかを振り出しに落ち着くでもなく店を移動することが多いのですが,この夜ばかりはじっくりと腰を据えて呑むことになったのでした。まあ酔っ払ってからはいつもどおりのハシゴ酒となってしまい,いつの間にか別れを交わしたことさえ記憶に留めぬままにベッドにて目覚めてしまったのですが。 U氏たちと落ち合ってはみたものの,金曜日の夜だというのにもかかわらず,なんの事前調査もなく,あてどなく五反田の南側を散策していてたまたま見掛けたお店にお邪魔しました。「清竹」というお店です。お察しのとおり店の前にウーロンハイが250円などの随分お得な短冊が貼り出されていたのに惹かれたのでした。店は外観を裏切らないごく真っ当な和風居酒屋です。カウンターにテーブル席が3卓程だったでしょうか。独りなら迷うことなくカウンターですが,この日は3名だったのでテーブル席に着きました。予想より若くて人当たりの軟らかい丁寧な夫婦でやっているお店でくつろいでじっくりと呑むことができました。話も弾み,酒量もぐんぐんと増えるのは致し方ないところ。サワー類の250円よりも安価な黒霧島だったかの焼酎ロックをぱっかぱっかと呷ってしまったのでした。肴もごく普通で特別感はないのですが,こうしたありふれていても正直な商売をする居酒屋というのはなかなかありそうで出逢えないものです。お店の方には申し訳ないのですが,客の入りがいまいちなのでゆったりと会話を交わすことができました。 続いて,写真だけ残っている居酒屋で呑みました。店の方は外国の方のようでした。屋台のような安っぽいテーブルや椅子が並び雰囲気も何もあったもんではありませんが,まだ新しいお店なのか清潔で過ごしやすくはありました。値段はやや高めだった記憶がありますがはっきりしません。そうはいってもここも金曜日だというのに客の入りはいまひとつぱっとせず,お陰様で好き勝手にワイワイガヤガヤと盛り上がっても嫌な目をする人もおらずゆったりと過ごせたようです。 それで帰ればいいもののぐずぐずと呑み続けてしまうのがぼくという人間のだらしなさがそのまま出ているようでうんざりさせられなくもないのですが,やはり最後に「立ち飲み 呑々(のむのむ)」というお店に立ち寄ってしまったようです。もちろん記憶はもやもやとしており,よかっただの悪かっただのといった感想は述べられません。ただ,写真をみると白エビっぽいのの釜揚げらしきものが置かれており,これを見る限りにおいては気の利いた肴を出すよさそうなお店のようです。いずれまたお邪魔したいものです。 といったわけで旧友との別れさえままならぬうちに会はお開きとなったようです。何にせよ楽しいひと時を五反田の町は与えてくれました。予約なしでもグループで入れるというのは得難い長所であります。
2014/01/31
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今日は出張でネット環境まるでなしだったため、この時間まで投稿できませんでした。こ1年位は皆勤登校中なので切らすのももったいない気がしたので、よれよれですが、投稿しておきます。--- 中延商店街は東急大井町線と都営浅草線の乗り入れる中延駅から東急池上線の荏原中延駅まで連なるアーケード商店街で,近くにはサンモールえばら商店街や昭和通り商店街といった都内でも規模の大きい商店街が集まっていることもあり,昼間に商店街散歩に訪れることはあっても呑みに来たのはこれが初めてです。散歩の際に見掛けたいくつもの気になる酒場を調べてみたところ,酒場好きによく知られている店の支店なのか系列店であることを知りぜひとも訪れてみたいと思っていたのでした。これらの本店は開店が早いこともあり,普段通りに出向いてはとても入店は叶わないほどの人気で果たして無事お邪魔できるのか幾分かの不安を覚えつつもすっかり夜の帳が下りた頃に訪ねてみたのでした。 最初にお邪魔したのは「忠弥」です。祐天寺にあるお店は開店が15:30と早く,しかも早い時間に品切れが続出するということで,以前時間を遣り繰りして開店時間に駆け付けたことがあります。到着するとすでに高架下の民家みたいな一軒家の前には列ができていましたが,さすがに余裕をもって席に着けたのですが,そうこうするうちにあっという間に満席となったことを覚えています。中延の店はガラス戸の安普請な雰囲気が祐天寺よりも酒場好きには好アピールです。ただ店内は広いコの字カウンターですが,祐天寺の外観からは想像できないほどに奥に伸びるカウンターの風情には及ばないようです。有り難いことにまだ空席があり,豊富なもつ焼にも売切れは出ていないようです。まずはチューハイからと注文するとないとのこと,こちらの店舗ではチューハイはないようです。祐天寺にはあったと思ったんですけど。示された壁の短冊から特製カクテルを注文,ああそういえばこのウーロン茶色した甘いカクテルを以前も呑んだなあと記憶が蘇ります。メモ紙に串の注文を書き込むのは同じです。それにしてもやはりこちらのもつ焼は驚くべき旨さです。肴の旨さなど店の風情に比すると小さな要素だと常々思っているもののやはりこれだけの味を知ってしまうとついつい語らずにはおられません。これでもう少し値段が安ければ言うことないのに。他のお客さんは10本どころではないほどの串を皿に並べてなおまだまだ食べたいといったご様子。大きなスーツケースを携えた洋行帰りらしきお客さんもいて,彼にとってはこの店の串が帰国後にもっとも味わいたい味だったのでしょう。 続いては「牛太郎 中延店」です。実は「忠弥」にお邪魔する前に通ったのですが,まだ店が開いておらず恐る恐るの訪問でした。お隣にもいい雰囲気の大衆食堂がありますが,どうやらこちらはお休みのご様子。「牛太郎」は無事明かりが灯っています。武蔵小山の本店もかなりの年季を感じさせるよいお店でしたが,こちらはもっとうらびれたムードで胸苦しさを感じるような哀愁が漂っています。看板にある「働く人の酒場」は一緒ですが全体の雰囲気はあまりにもギャップがあります。そういえば鐘ヶ淵にも同じく「働く人の酒場」と書かれた「牛太郎」がありますが,雰囲気はこちらと近しいように感じられます―ところで鐘ヶ淵のお店もなんらかの縁故があるんでしょうか?―。店に入るとL字のカウンターにテーブル席が2卓ありますが,テーブルには物が積まれ使われていないように思われました。焼酎のお湯割りをお願いして焼物を適当に注文します。押し黙ったまま女店主は,無駄口を利かないというよりは愛想を振りまくということがまったくない方のようで,店内には沈鬱なムードに包まれます。静寂に包まれて呑むのはけっして嫌いではないので,ぼくにはとても居心地良く思われました。武蔵小山と比べてしまうと,品数が少なく,値段も高いとかいろいろ難点もありますが,こちらはまったく別の酒場として楽しむのがよさそうです。これからの続けていかれることを切に願います。品書:ビール大:610,焼酎水割:300,にこみ:450,もつ焼:130~
2014/01/18
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東急池上線と大井町線が交錯する駅,旗の台駅にやって来ました。もともと東急線はぼくの行動範囲からは外れていて,よほど気力がわかない限りは足を向ける気にならなかったのですが,どうしてだか近頃急に東急線で出かけたい気分になりました。こういう時は迷わず出向くのが横着を予防するにはよいようです。夕方の早い時間に向かうことができました。といっても夕方の3時ではいかにも早すぎるので,まずは南口を荏原町方面に散歩することにします。 そういえばこの通りには「越後屋」という老舗焼鳥店があって日中から営業しているはずだと思いだし,商店街を行きつ戻りつ入念に捜索をしましたが,どうしても見つけることができません。帰宅後チェックしてみたら9月に閉店してしまったようです。またしても機会を逸してしまったのは無念でなりませんが,後悔が後に立たない以上は,誰に求められたわけれもありませんが現役の古い酒場を貪欲に追い求め続けるしかありません。というわけで足を伸ばして荏原町駅にも足を伸ばしてみることにしました。なんと再開発で駅前はビルの建設中で養生されていました。この一角には「酒処 鳥竹」や角打ちの「伊豆屋酒店」があったはずですが,見る影もなくなっています。「喫茶 甘味処 銀星」は建物こそ残ってはいたもののすでに店仕舞いしてしまっています。なんともはや。 失意を胸に再び旗の台駅に引き返します。腹の台駅真正面のビル2階にある「カフェリア」にお邪魔して気持ちを慰めることにします。ガラス張りで外からもなかなかよさそうであることは,おおよそ察しが付くのですが,居酒屋もそうですが喫茶店でもとにかく入ってみて,席に着いてみないとその実体を見誤る危険性のあることは経験しています。階段を登り終えて広い長テーブルを見た瞬間はこれはちょっと違うかもしれないと思いますが,空席の目立つ4人掛けの席を勧められて腰を下ろすとこれがなかなか心地よいのでした。さぼりのサラリーマンや営業帰りのOL2人組などが主な客で,常連らしきご老人はカウンターでひとりカレーライスの遅めの昼食中です。はじめは塞がっていた窓際の席から駅を出入りする人波を眺められたら楽しかったのにとちょっと残念に思いますが,特等席は次回のお楽しみにしたいと思います。 あまり長居しては申し訳ないのでお店を移動。目指す酒場はまだ開店前のようです。昭和大学に続く商店街をぶらぶら進みます。数軒のあまり味のない食堂がありますが、こちらは休憩中のようです。昭和大学の附属病院前に「富田屋」なる中華屋さんが営業していたのでまあ時間つぶしに入ってみることにしました。さすがに中途半端な時間帯のせいか、お客さんは病院帰りらしき恒例の女性がお一人だけ、その後入って来られた営業風背広族のおじさんも病院への用事を済ませての帰りのようにお見受けしました。まあ実はそんなことはどうでもよくって気持ちは早くも開店前の酒場へと飛んでしまっています。飲み物が17~19時までお得になっていたように記憶しますが、まだその時間帯にも至っておらずお得なサービスを受けられないのはいささか不満ではありますが、あまり気にすることもなくウーロンハイなどいただき、こうした町場のラーメン店では珍しい蒸し餃子を頼みます。この餃子が思いのほかおいしくて、皮がむちむちで本場の中華料理店のものともまたちょっと違った独特の弾力があって案外楽しめたのでした。品書:ビール中:500,サワー:400,酒1合:450~,冷奴:250,ピータン:500,ザーサイ/メンマ:350,鳥の唐揚/エビチヒ/カニ玉/酢豚:650 さて、開店時間まではまだ時間があるものの中華料理店でいつまでぼやぼやしているのも気が引けたのでとりあえず「鳥樹 旗の台本店」に足を向けたのでした。池上線と井の頭線の狭間の路地にひっそりと営業をしているお店で何度も行き来してしまったのですっかり感慨は失ったものの、初めて日が落ちた頃に訪れていたら随分印象は異なって、夜のオアシスのような安心感を与えてくれるような渋好みの佇まいです。昭和大学に向かう商店街の脇道にも支店がありますが、そちらはありふれたちょっと気取った居酒屋の雰囲気で、ここは間違いなく本店を選ぶべきでしょう。店の前に着くとすでに暖簾が下げられています。そっと扉を開き、オヤジさんに尋ねるとどうぞとのことなので遠慮なくお邪魔しました。この夜は予約がびっしり詰まっているようで、時間制限のお達しがありますがそれほど長居するつもりもないので好都合。オヤジさんがこの店は初めてかとの問いにそのとおりと答えると、うちは丸のままの鶏を注文に応じて切り分けて大振りの切り身のまま焼くのだよと話されます。酒をオーダーしてお通しと鳥のスープをすするとなるほどこれはうまい。スープを肴に1杯呑み切ってしまいました。お替りをもらったものの、大振りという焼物までは食す自信がなく、煮込みをオーダー。野菜、こんにゃくが主体で鶏の身と皮がちょぴっと交じっているものでしたが、日頃肉類には食傷気味のぼくには却って重くなくおいしくいただくことができました。ただお値段が強気な設定となっており、これだけ呑んだだけでも2000円近いというのはセコイ話ではありますがちょっと高いのではないかなあと店を出て軽くため息をついてしまうのでした。
2013/12/27
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O氏の到着がずるずる遅れてしまい「若竹」を出た時にはすでに軽く酔っ払ってしまっていました。ようやく連絡が入って立会川駅前にて待合せ。なんとか無事O氏と落ち合うことができました。すっかり出来上がってしまう前に、早速お目当ての有名店を目指すことにします。 「やきとん道場 お山の大将」です。「吉田類の酒場放浪記」や「ハシゴマン」などでも紹介され、ずっといずれ行かねばなるまいと思いつつも、なかなかこれなかった酒場なので、O氏の到着があと10分遅れていたら、ひとりでさっさと向かっていたかもしれません。さて、店に到着しました。期待に違わぬなかなかよい雰囲気ですね。看板も愉快でよろし。さすがに有名店だけあってけっこう賑わっています。でも想像していたほどの混雑ではなくカウンター席にゆったりと着くことができました。変わり種のメニューがいろいろあって目移りしますが、やはり最初にもつ焼をもらうことにします。3串の縛りがあるようですが、この値段なら文句なし。味も評判どおりなかなかおいしい。10個まで焼いてもらえるという目玉焼きにもすごく惹かれたのですが、日頃の不摂生で健康面にやや不安があるのでさすがに見送ることにしました。これならたまに足を延ばして来る甲斐がありそうです。品書:ビール大:472,樽生サワー/グラスワイン:315,串物:3本300,目玉焼:550(10個まで),レバ刺/レバーの炙り:525,豚肉のチーズ焼:577,お新香:315 したたかいい具合に酔っ払っていたので次の店で切り上げることにします。最後の酒場は「ことぶき」。ここも「ハシゴマン」で紹介されていました。と言っても駅のエスカレーターを降りてすぐにあるので、先ほどまで何度も店の前を行き来しており、店頭で立飲みする近所のジャンパー姿のおっさんたちの背中を何度も眺めています。ずいぶん時間が経っているので客層は背広姿の客たちに取って変わられています。なかにはOLさんらしき女性の姿も交じっていて、すっかり立飲みも女性たちに馴染んできているようです。店頭での立呑みも愉快ですが、立ち入る隙もなさそうなので地下の椅子席に向かいます。こちらもけっこう混雑しており、客層はやはり背広族が多いようです。地下の雰囲気は、ちょっと古びているけれどあくまでもありふれた居酒屋そのものであり、さほど変わり映えしません。ここで呑むなら店頭で一杯がよさそうです。可もなくごくごく普通の居酒屋に感じられました。とは書いてみたものの、食べた肴や酒のことはすっかり記憶から抜け落ちてしまいまたまたこの夜も泥酔してしまったのでした。
2013/05/03
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坂本竜馬とのゆかりで知られる京浜急行の立会川駅は旧東海道の情緒をわずかばかりながら感じられる町で何度か訪れて入るものの呑みに来るのはこれがはじめて。駅周辺には飲食街、こじんまりとしたアーケード商店街もあってどこか東京離れしたムードが漂っています。駅こそ現代風の味もそっけもないものですが、エスカレーターを下って駅前に出るとすっかり古臭くて店によっては相当にボロな街並みになっています。なんだか窮屈なところに押し込まれて本意ではなさそうなけっこうでかい坂本竜馬像を抜けて少し進むと立飲み屋がありました。知人のT氏との待合わせまでにまだ時間があるので早速入ってみることにします。 「しゃべり場」というお店です。枯れた商店街にしてはややバタ臭い印象のちょっと気取った雰囲気の立飲み屋です。店のお兄さんに待ち合わせでちょっと寄せてもらいたいと頼むと、案外気のいい人でどうぞどうぞ一杯だけでも呑んでってと、気軽に語りかけてくれます。なかなかお喋りがお好きなようで何やらいろいろお話してくれましたがすっかり忘れてしまいました。値段は立飲みとしてはかなり強気ですね。先日、品川で呑んだ際の報告に品川駅は港区だから相場が高目なんじゃないかと書きましたが、品川区も町の雰囲気に似合わずいずこも安くはないのでしょうか。酒も肴もよくよく見るとかなりちゃんとしています。じゃあ、この値段もしょうがないところかな。この日は競馬客がいないので空いているんだよということでしたが、この質と値段で商売するなら椅子を置いたほうが無難ではなかろうか、などとよけいなお節介をけして口にすることはせず、次のお客さんが来店したので店を後にしました。 次に駅を通り越してアーケード商店街の手前を左に折れてすぐにある「若竹」にお邪魔してみることにしました。こちらはぐっと好みのタイプの枯れた酒場です。店内はカウンターがメインでこれまた好み。お客さんはまだ入っていませんでした。というか失礼ながらあまり繁盛しないタイプのお店をお見受けしました。主人はやや不機嫌そうな顔をしていて、やや気詰まりですが、しばらくするとお店が昭和44年に開いたことなどいろいろ聞かせてくれて、案外話し好きであることが判明します。客の入りはめっきり悪いそうで、できれば時折足を延ばしたいと思いはするもののいかんせん、家から遠いからなあ。近所にあったら仕事帰りに軽く二、三杯引っ掛けて帰りたくなるようなお店でした。
2013/05/02
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武蔵小山では一度腰を据えて飲んでみたいとかねてから思っていたのでした。これまでにもよく知られた「牛太郎」にはもちろん行っていますが、すっかり酔っ払った勢いで行っただけで十分酒場を堪能したとまでは言えませ。駅前の闇市の名残を色濃く残す場末感たっぷりの駅前の表通りに面する「鳥勇 武蔵小山駅前店」やちょっと入った「晩杯屋」には寄せてもらっていますが、日中の商店街巡り、喫茶店巡りのついでということもあってやはり夜の帳が落ちてからの濃密な酒場ムードを楽しむまでには至っていません。そんなこともあって、今回の武蔵小山行はある意味念願叶ってということになりまずはめでたいことでした。 最初に尋ねたのは「日の出」です。黄色いひさしのテント看板に「日の出」と記された暖簾、加えて赤提灯と酒場のムードが横溢しています。カウンターメインの店内も好みにぴったり嵌っています。肴の充実っぷりとうまさはなかなかのもの。老舗と言ってもまるっきり風格があるとか格調高いというのとは正反対のまさに大衆の味方のようなお店です。同行した知人は早くもダウン,カウンターに突っ伏して眠り込んでしまいましたがそんな姿もこの店では温かく受け止めてもらえます。
2013/02/23
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住宅街を北に向かってひたすらに進みます。なんだか不安になる位に店らしきものがなくなりどんどん住宅街の深みにはまってしまったようです。酔いも混じっているせいもあって方向感覚も鈍って道に迷ったんだろうなと思い,引き返そうという気持が何度か脳裏をよぎったですが,そこもやはり酔っ払ってきていたので急に気持が大きくなって迷子になるのもそれは一興と進み続けてようやく辿り着いたのが「田舎料理 あきた」です。これだけ歩いてつまらない店だときついなあ。ここも酒場放浪記に登場したお店。先日訪問した浮間舟渡駅にある「大衆酒場 いけだ」も駅から遠かったせいか,第一印象は近いものを感じました。店内はこちらがぐっと渋いですね。でも女将さんがお喋り好き(常連のおばあちゃんがそれに輪をかけてお喋り)なところはそっくり。女性客の常連度が高いのも似ています。最寄り駅というのがなくて東急目黒線の武蔵小山駅,西小山駅,洗足駅,東急東横線の学芸大学駅のいずれからもけっこうな距離を歩かないといけません。そこまで歩いて訪れる店かどうかは,この店のほんわかムードに溶け込めるかに掛かっているかも知れません。 テレビで放映されるような酒場ばかりでは飽きてしまったので,自分のカンを頼り一軒お邪魔しておくことにします。西小山駅前ロータリーの北側の路地にある「居酒屋 めんそーれ」の安普請のプレハブ感に惹かれて入店します。想像通りのカウンターだけの飲み屋で入口付近は常連オヤジたちが陽気に騒いでいます。店はしっかり経年劣化していますが思ったほどの風情はありません。屋号から察せられるとおりの沖縄酒場ですが,さほど沖縄料理らしいメニューが充実しているわけではありません。スパム炒めをお願いしましたが,おいしいとは思うもののこれはどこで誰が作っても変わらぬ味ですからあまりありがたみはありません。ありがたみはなくてもまあおいしいから文句は言いません。たまに無性に食べたくなって自宅でフライパンでカリカリに焼いて卵をかけ回してみたりするのですが,不思議なことに家で食べるとなぜだかあまりおいしいと感じられないのでした。靴を脱いで住居スペースに上がって使わせてもらったトイレの狭さには驚かされました。
2012/11/12
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西小山ではまだ数えるほどしか飲みに行ったことがなかったので(時間がなかったので駅前ロータリーすぐの昼間の立飲みが安い「つくば鶏 銀や」,早い時間からやっているプレハブ系酒場「鳥かつ」に行っています),たまたま近くに出張で来たので行ってみることにしました。といっても日中には喫茶店巡りで訪れたばかり。場末系喫茶の「純喫茶 ラ・セーヌ」,漫画家・原秀則が2階で執筆しているという「ドール」,「きたなシュラン」(現在は「きたなトラン」)にも登場した「フルーツパーラー たなか」に伺いました。 「吉田類の酒場放浪記」でも度々この界隈の酒場が登場していた記憶があります。今回は準備期間もあったので,地の利もないことですし,興味もあるので,登場店を回ってみることにしました。知人のA氏と合流して早速お店を目指すことにします。 駅前ロータリーを越えて,「銀や」前を通過したところに「八十八」があります。なんだかきれいでちゃんとしたお店なので腰が引けます。というよりはっきり言うと興味の対象外のタイプのお店なのですが,せっかくなので軽くお邪魔してみることにします。店内に入ったら劇的にいい雰囲気になるかと思いきやそんなこともなくって,清潔でおいしいものが食べられるお店っていう感じで,女性客の割合の多さが店の傾向を現しているようです。悪い店でないのはわかりますが,酒場放浪記がこの店を取り上げるのは,番組の方向性とはやや外れていると思いました。 続いても酒場放浪記に登場した昭和40年創業の老舗酒場「やきとん道場 三鶴」を目指します。近年の駅前再開発で現在の場所に移転したんだそうですが,建物自体は新しくなったものの往年の雰囲気を維持しているのは一瞥してとても好もしいです。南千住の「鶯酒場」と似たような印象です。こちらは地元常連さんでしっかり賑わっています。カウンターのちょうど空いた席にもぐりこみます。噂通り3冷ホッピー:400円がありますね。やはりホッピーをお願いすることにします。品書きはシンプルそのもので,酒場って本来はこうだったんだろうなあと思わせてくれます。常連さんと若い主人とその奥さんの連帯感というのでしょうか,実に家庭的で暖かな気分に浸れます。かといってよそ者が入り込めないわけでもないので御安心を。
2012/11/11
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品川区は、23区の南に位置しており、古くは奈良時代から交通拠点となっていたと言われています。江戸時代には、東海道の第一宿場としてさらなる発展を遂げたようです。 品川区はまだまだ紹介できるほど通っているわけではなく,お恥ずかしい限りなのですが,それでもぜひ御紹介しておきたい酒場が数軒あります。大井町 西浅(信州酒場 浅野屋) 大井武蔵野館が健在の頃は足しげく通った大井町駅ですが,近頃めっきり縁遠い街になってしまいました。その頃は酒は好きでも酒場巡りなど思ってもおらず,随分もったいないことをしてしまったと深く後悔しているのでした。「西浅」はそれこそ大井武蔵野館のすぐそば。今でもこのようないい酒場が残されているのはうれしいことです。それぞれに12名位は座れる平行に走ったカウンター、常連のオヤジたちでびっしりです。酒場らしい雰囲気が横溢しています。大井町 肉のまえかわ 元肉屋さんが営業する立飲み屋さん。マスコミなどでも頻繁に紹介されています。確かに安くておいしくていいなあ。無理矢理飲み屋に改築したような大雑把な営業スタイルが楽しい。武蔵小山 牛太郎 昭和30年創業の老舗居酒屋。広いコの字カウンターはいつも満席になるようです。こんな酒場では無駄話などはせずにぱっと呑んでさっと勘定して出るのがマナーでしょう。冷房もなく,熱気もむんむんと籠った店内は必ずしも心地いいとは言えないのでしょうが,汗をかきながら110円の煮込みなどをかっこんで店を出るとそれはそれでなかなか爽快です。青物横丁 和光食堂 青物横丁の駅から第一京浜を渡ってすぐに「和光食堂」はあります。思いがけず広い店内には、4人掛け卓がぱらりぱらりと10卓ほど。ここも昔は工場労働者たちで賑わったのでしょうか。近所のじいさんたちが食事をしています。厨房脇の天井に吊るされている小さなテレビ前が特等席です。ゆったりとした時間が感じられ、肴も安くてうまい。がんばって営業を続けてもらいたいものです。
2011/12/14
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