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とまあ、このままだと話は尽きることがないので、ようやくマンガというメディアにおける識別性の高さという話に戻ることにします。が、いざマンガにおける作家性はどういう要素によってもたらされるのだろうかと改めて考えるとどうもよくわからなくなるのです。既知のマンガ家の作品であれば未見の作品だって、一目見たらだれの手によるものか目星を付けることは、百発百中とはいかぬまでもそれなりの確率で言い当てられると思うのです。その大部分は登場人物の造形や写真を用いるなどの背景の描き込みなどに個性を見出すことができることにあると思います。マンガのキャラクターというのは肖像権と同様の権利を有しているから、それを模倣することは厳しく禁じられているのです。パロディだったり同人誌などでキャラクターが借用される場合もあるけれど、それは極限られたジャンルに過ぎず、同人誌はごく限定された内輪でしか流通しないのであります。次に吹き出しの形状やコマの割方といったマンガに特有の表現方法にも独自性を見出すことがあります。石ノ森章太郎のような大胆な大ゴマの使用や滝田ゆうの絵による吹き出しだったりすると一目で作家を言い当てられそうです。物語の展開だったり、ギャグのセンス、奇妙なセリフ回しなどにも作家の痕跡を認められる場合があるとは思いますが、絵ほどには直感的ではないかもしれません。それでもマンガ表現には作家性を示す痕跡が多様に認められるわけで、そうしたマンガの特性に敏感なマンガ家は、個性的なマンガ家として認知し易いように思うのです。しかし、作家性が鮮明であるからといって必ずしもヒット作を放てるとは限らぬのが難しいところで、普遍性と独自性をうまく操作することがマンガ家には常に要求されるようです。『三丁目の夕日』(『三丁目の夕日 夕焼けの詩』)(既刊67巻)(小学館, 1974-) このマンガが映画化されたことは当然知っていました。昭和33年の東京下町がVFXなるコンピュータによる映像にて再現されたことが話題となり、数々の映画賞を受賞したという報道は耳にしていました。劇場上映されヒット作となり続編まで作られ、しかもテレビ放映された際も高視聴率を獲得したというから、かなり多くの人々から支持されている映画であることは間違いないようです。といった書き様からお察しいただけると思いますが、そうぼくはこの映画版を見ていないし、当面見る予定も、見たいという意志も持ち合わせていないのであります。実際に原作マンガが郷愁やら懐古やらを喚起するだけの内容であるかどうかはともかくとして、原作を読んだことのない方がこの映画版をご覧になるのだとすれば恐らくはVFXで再現されたノスタルジックな風景に接したいという欲求によるからなんでしょうねえ。でも、昭和33年っていうと現在は60歳を超えた方が生まれたばかりの時代のことで、その世代の方にとって懐かしいと感じるのを否定するわけではないけれど、より年少の人が感傷に浸るのはちょっと違うと思うのです。単に当時の風景だったり生活様式なり家電などの道具類などに「昭和」を感じるのは勝手だし、気持ちも分からぬではないけれどけして必ずしもいい時代だったとは思えないのです。列車にしたってせいぜい扇風機が回るだけで暑くてかなわなかっただろうし、冷蔵庫や洗濯機なんかも使い勝手が悪かったに違いありません。そんな中でも「昭和」への強い愛情が不便さを凌駕するような方には敬意を表するけれどぼくは今更過去に憧憬を抱く気はさらさらないのでありました。ってかなり無理してるなあ。
2020/12/06
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何とか今週も喫茶訪問の報告ができて安堵しています。しかもとびきりの物件をここでご披露できるのだから実に嬉しいことなのであります。いつも同じようなことばかり述べていますが、こうしたブログなどで報告してきたお店はかつてから営業をしていたわけで、それを発見したとさも己の手柄のように述べることは恥じらいのない行為と思っています。がしかしですね、これから登場するお店はいつも有益極まりな情報を提供いただいているハードコアさんの推奨のおみせでありまして、実のところここを教わったことを喜ぶ一方で、どうして先に見つけられなかったのだろうと悔しさもむらむらと脳内でくすぶるのでありました。 浅草橋からちょっと北上したところにある「喫茶 はっぱ」はハードコアさんが賛辞を贈るに相応しい素敵なお店でした。ケバケバしさなどどこにもないにも関わらず、視界に飛び込んでくるあれやこれやがとにかく愛おしいのであります。その愛おしさの源流となるのは恥ずかしながら懐かしさにあるんじゃないだろうか。店の老夫婦の労わり合う姿もそうだし、ぼくのガキの自分に自宅にあったようなクラシカルな照明などどれもこれもが懐かしくて仕方がないのであります。こういう懐かしいタイプの喫茶こそがこのところ身に染みて好きにならずにはおられぬのです。ケバケバしくて過激な喫茶も楽しいけれど、そういうビフテキのような御馳走はたまに食べるから有難いのであります。こういうしみじみできる喫茶こそが実はもっとも身近にあってほしい喫茶であるように近頃感じるのです。 最後に都電荒川線の栄町電停と京浜東北線のローカル駅、上中里駅のちょうど中間位、上野東京ラインや宇都宮線、高崎線沿いの細い道に面して「へいじ家」という一応喫茶を標榜するお店があります。この界隈は近隣の方以外はまず近寄ることもなさそうなのですが、実はまだ営業しているのです。といっても喫茶営業はしてなくって専ら弁当の販売をなさっているとのこと。ぼくがお邪魔した時間には体調を壊してスナック営業をやめてしまったオーナーから宅配弁当と昼間だけのランチ提供を行う高齢女性からお話をお聞きしたのでした。店内の写真でもと思いましたが、特段のことはないといっては失礼ですが、それよりももはやほぼ店としての役割を終えつつあるのを見て悲しい気分になったこともあります。でもまだ弁当屋さんとしては現役なので末永く頑張ってもらいたいものです。 本当はもう少し書きたいこともあったのだけれど、いくら応援だと自らを鼓舞してみても到底敵わぬような不安が世界に蔓延しているのを感じずにはおられません。この災禍が過ぎ去った後に改めて報告させていただくことを祈念して今回はこれにて報告を終えることにします。
2020/04/12
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誤解のなきよう初めにお断りしておきますが、ぼくが近頃欲張って一挙に喫茶巡りするのを控えているのは、喫茶に対する好奇心や興味の抱き方が失速したとか減退したという事では少しもないのです。ではどうして近頃ちっとも積極的に喫茶巡りを敢行せぬのだと問われても明確にお答えしようがないのです。この記事がアップロードされる時点では、まだまだ新型コロナによる脅威が収束に向かいつつあろうなどとは思わぬから、もしかすると混乱と諦念がさらに先鋭化しているようにも思われます。ぼくがこの事態を達観できているとはとても言えぬけれど、さすがにこれまでの様にはのらりくらりと遊び歩いたりはしてられない程度の自制はあるからこれもまた喫茶と少し距離を置く原因と言えなくもないのです。他にも多少の健康への留意や将来に向けての経済的な不安など、喫茶への愛情の喪失以外のありとあらゆる事情がやむなくぼくを喫茶から引き離しているとご理解願いたいのです。なので、もしかすると遠からずの内に恒例としてきた日曜の朝の喫茶レポートも期間未定で休止させてもらうなんて事態に陥る事もあるかもしれませんが、その時は平にご容赦頂きたいのです。 と、いきなり予防線を張り巡らせてしまったけれど、それでもほそぼそとはこれまで取り零していた喫茶巡りを継続しています。特に酒場巡りで頻繁に訪れる町には案外行きそびれている店も多いのです。喫茶と酒場の二択に優劣を付けるつもりなどサラサラないのでありますが、それでも飲むか呑むかで、加えてハシゴすることを考えるとどうしても酒場寄りになってしまうのです。コーヒーは時として酒よりも強烈に体調悪化に作用するようで、そんな病状があるのかは知らぬけれど、かつて半ばヤケクソのように喫茶をハシゴしてコーヒーを浴びるように飲んだ挙げ句にコーヒー中毒に害されたのです。かつては一日に十杯や酷くすると二十杯近く飲んでも何でもなかったのがある時期から五杯も飲むと精神がささくれ立つような状況に陥るようになったのです。あっ、そうするとこれもまた喫茶巡りを控える原因だったのかもしれません。好奇心を満たさんがためにコーヒーを嫌いにはなりたくなかったものですから。 さて、酒呑みの町である赤羽には、喫茶ファンに知られた喫茶店が何軒かありますが存外その数は少なくまあこの町はとにかく酒場が優位ということなのでしょうか。それともいい加減うんざりする位に訪れているからもはや見落としなどなかろうと高を括ってしまい、再捜索の手を緩めてしまった気がするのだ。これから訪れる店はメモはあったけれどかつて手当たり次第にメモしていたからそこが訪れるべきか否かの振り分けがまったくなされていなかったのです。「喫茶 ポチ」がそこですが、駅から徒歩10分弱、酒場巡りでもまず訪れぬ住宅街に店はありました。ここがちょっと漫画喫茶化し過ぎているきらいはあるけれど、オーソドックスでとてもいいお店だったのです。どうしてここを見逃していたのかなあ。実はこれを機に普段呑み歩くために訪れる事が多かった町を今度は飲み歩くために再捜索するきっかけとなったのです。その甲斐もあって身近な町に何軒か見過ごしてしまっていた喫茶を見つけ出せたわけですが、こんな状況下ということもありなかなか訪れる時間を確保できていないのでした。 赤羽と本蓮沼の中間にある桐ヶ丘団地の桐ヶ丘中央商店街はかねてから訪れたいと思っていた場所でした。赤羽から池袋に向かう路線バスの車窓から何度も目にしていて、この団地の情報も比較的流通しているから行こう行こうと思っていたのですが、どうもぼくは赤羽という町に苦手意識を抱いているためもあり、何かしら言い訳をしては回避し続けてきたのでした。先般田端の立呑みで常連の呑み仲間―でいいですよね?―に宣言してしまったから後には引けぬ、いやむしろ自分を追い込んだのでした。とはいえ喫茶で目を付けているのは「ラック(Luck)」のみ。団地喫茶という現代ではレアな存在だから一度行っておきたかったのであります。実は本当のお目当ては酒場にあって、そちらは後日報告することにしたいのですが、ともかく「ラック」であります。営業しているようなので、店に入りソファに腰を下ろします。うむむ。まあなんてことはないし、カラオケがメインなのだな、なんてことを思っていると店のお姉さんから午後2時からはカラオケタイムでコーヒーだけでも千円掛かるとのお達しが下されたのです。そうだったのね。ちゃんと書いておいてくれればいいのにね。まあおかげで店の雰囲気は知れたし、丁寧にカラオケは持して退散したので良しとしよう。ということで、店内写真はなし。ぼくは店に足を踏み入れた途端に納得して未練はなくなりましたが、それでもこちらの喫茶タイムを経験したい方はくれぐれも2時前に訪れてください。 そばには「喫茶室 美佳屋」の跡地もありますが、どういった感じのお店だったかちょっと気になります。それ以上に気になったのは、団地から少し本蓮沼方面に歩いたところにある「喫茶&居酒屋 館」です。喫茶&スナックとかなら珍しくもなんともないけれど、喫茶&居酒屋と堂々と銘打ったのは珍しい気がします。実態として喫茶と居酒屋の併業ってのはさほど珍しくもないのですが、こうして看板に標榜しているのはちょっとユニークで気になりますがとっくに閉業なさっているようです。 最後に蔵前であります。蔵前は喫茶ばかりでなく酒場に対してもリサーチが足りなさ過ぎたようです。先般、ハードコアさんに素敵な酒場を教わるまでにも何度か訪れていたのですが、何軒か見過ごせぬ喫茶があることもついでも調べで知ることができました。土曜日もやっているとのことで敷居の低めの「八方尾根」は今度に取っておくこととし、日曜日に加え第1から第3までの土曜日がお休みという「Coffee&Dining ピポット(PIPOT)」にお邪魔することにしました。さて、御覧の通りの一瞥するとファミレス風の様子に見て取れるこちらのお店ですが、席に着いてみれば見る角度によってはなかなかに落ち着きある空間です。客層も関西弁の少しあくどそうなオヤジ3人組や、近所の町工場のさぼり組、そして一人で来ている美女がいたりしてなかなかに幅広い客層を獲得しているようです。これさえなければ落ち着いているであろう店内を意表を突いた意匠で照らしている緑と白の格子の照明は、実際にそこにいても実によく目立っておりどうしてこんな内装にしたのかとそのセンスの奇抜さに嬉々とすると同時にあきれもするのでした。先の美女はその下で物思いに耽っておられて、しかも注文した磯長クリームソーダだったから、それを召し上がっている瞬間をカメラに収めたかったのですが、さすがにそうもいくまいという自制が働いたのでした。
2020/04/05
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これまで何度となく訪れている町など幾らでもあります。そゆな町はどうしても不注意になりがちです。いつものペースで町を歩いているとそこは常と変わらぬばかりの退屈な姿を晒すばかりですが、季節が変わったり、新しく商業施設や学校なんかが開設したり、単にやってくる時間が変わるだけでもそれまで見えなかった、というか迂闊にも見逃していた景色が出現することがあります。それは町に向ける意識の怠慢であったのかもしれませんが、それよりもむしろ歳月のもたらす影響が作用してあれやこれやが景色の構成要素から景色そのものに溶け込んでしまうという事があるんじゃないかと思うのです。手品で言うところのミスディレクションが不作為のうちに及んでしまうと言い換えても良いかと思います。今回はそれなりに馴染みがあると思っていた町のそんな見過ごしていた喫茶を訪れたまいう報告になります。 都電荒川線沿線は目立つような派手な喫茶店はないけれど、けして利便のいい土地ではないから要所要所、といってもやはり商店街のある限られたポイントには地元の方以外は客として当てにしていないといった風の実用的な喫茶があります。梶原電停そばの上中銀座にも多少の飲食店に混じって「COFFEE SHOP じゅん」があったことを知ったのはこの夜が初めてでした。ここら辺は呑み屋も少なくて夜に来ることはめったにないので、暗くなって初めてその存在に気付けたのでした。閉店間近に滑り込みセーフです。写真では白い壁に緑のソファと爽やかそうな印象ですが、店に入ってすぐのカウンター席にはタバコの棚が置かれていたりと少し雑然とした印象があります。でも席に着くと案外まったりとした気分に浸れそうです。特に見るべきところはないのですが、こういう店こそ地元の方には落ち着けるのだろうなあ。引き続き呑みに向かい戻ってくると扉の前にはプランターが置かれていました。 竹ノ塚の駅前雑居ビルの二階に喫茶店がある事はかねてより目にしており、その気になりさえすれば、これまでにだって何度もお邪魔する機会があったのであります。それなのにずっと見逃してきたのは単なる怠慢さと喫茶に対する目的の変化が少なからず作用しているようです。この日は竹ノ塚で評判の良く焼きパンの評判店のバンを入手するという使命を帯びており、それを受け取ったA氏から譲り受けるという取り引きが最大の目的だったのです。そんな徹底した実用的な取引としての場として喫茶を用いるというのもかなり本来の喫茶のあり方なのではないだろうか。騒がしい子供やいたいけなワンちゃんなど、商談の場において少しく相応しからぬ要素もあるのだけれど、所詮利害の関わらぬ等価交換の場でしかないからそれで構わぬのです。写真からは伝わりにくいけれど一つ立派シャンデリア風の照明もあるし、パイプ製の椅子も座りやすそうだし、庶民的な印象で悪くないのです。「喫茶 パールタウン」は、営業時間も長いようだし普段使いに適した良いお店でした。 松戸には相当にズルズルと通っているけれどこの喫茶の存在はちっとも知りませんでした。「キャリー」は、旧日光街道の裏通りでひっそり営業していました。ストリートビューで店内の様子もかなり克明に観察できるけれど、過去の写真でも引き摺り出さねばネタ切れ間近な日曜版でありますから、喫茶とあればもう選り好みなどせずに駆け付けるのです。で遅ればせながら行ってみた。何ということか、看板が変わっているではないか! 喫茶離れに拍車が掛かっても喫茶好きの片隅に置いてもらいたいという未練ではないと思いたいけれど、看板から喫茶の文字が消え去るのにこんなに落胆するとは。しかも、しかもですよ、扉にはとある札が下がっておるのです。そこには会員制なる喫茶にあるまじき記載があるではないか。そこでチョコザイなと感じると良かったのだろうけれど、そうはならぬのです。店内の景色まで見渡していてなんの未練があろうものか、それても分かっていて追わずけを食らわされると却って気になるのです。しかし、テンション低落気味のぼくはすごすごと退散を余儀なくされるのです。またトライしてみるか? いやまあもういいかもしれませんね。
2020/03/29
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以前は喫茶巡りが楽しくて仕方がなかったのです。とにかく一軒、また一軒と飽きる事もなく次から次へと虱潰しに経巡ったものです。いくら回ったところで喫茶は無尽蔵にそこらにあって、行き先を見失うことになるなどとは思ってもいなかったのです。虱潰ししている最中はゆっくり構えている暇などありはしない、失われ行く喫茶はそれがそこにあるうちにできる限り行っておくべきなのだ。しかし、今のように精力も衰えてくるとせかせか駆けずり回るのは、じっくりと腰を据えて各店舗の空気感を堪能するべき喫茶巡りの醍醐味を自ら放棄する行為なのだから、慌てず騒がずのんびりやるべきといかにもご都合主義的な発言となるのです。いかにも取ってつけたような言い訳めいているけれど、それが言い続けるとさも真実めいてくるから人の感情なんてのは手練の洗脳者にとっては容易く操作可能なのも納得がいくのです。 さて、蔵前ではたまたま全く未知のベーカリー併設の喫茶に遭遇しました。「マルセリーノ・モリ」というお店で、特別派手なところもないけれど、喫茶を鑑賞の対象としてではなく、実用という側面で用いようとするととても使い勝手の良いいいお店ということになるのです。以前なら、見過ごしてしまいにしてしまうという振舞い方を選択するだろうけれど、ひと時の安息を求めるのにはこれで十分なのです。 北池袋の「Priepaju(プリコラージュ)」も昼食を兼ねた一杯の後にたまたま見掛けて立ち寄りました。以前も何度もこの駅前通りを歩いているからその存在を知らなかったはずがないのですが、なぜか見過ごしていました。こちらは多少外観が賑やかですが、店内はいたって普通のお店でケバケバシしくも見えなくもない外観とは一転して地元の隠居さんたちがゆったりとした時間を過ごしていて、自分がいかにせかせかとしているかを思い知らされるようです 一転して、津田沼です。こちらは前々からその存在を認知していて何度も行こうかと思ってはいたのです。でもたまに津田沼を訪れる機会があったとしても、いざ到着するとこちら、「コーヒー ハウス サンヨー(COFFEE HOUSE Sanyo)」の存在は脳裏から消え去り、帰宅してから、もしくはしばらくしてから、しまった立ち寄っておけば良かったということになるのです。どうも津田沼にはいつも夕暮れ時になってからやって来るのがよくなかったようです。ということで、この日は回転してすぐにお邪魔することができました。期待以上ではないけれど、期待を裏切ることのないオーソドックススタイルの落ち着いたお店でした。そうそう、こういうのが当たり前にあるといいんですよね。駅前喫茶で駅からのデッキからも地べたからも入れるという構造が津田沼のJRと京成電鉄の距離感を埋めるよう上手いことで来ていてこれからも愛される店であるように思われました。
2020/03/22
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もう何度も行って振られてるからいい加減諦めたらいいのに酒場巡りでちょくちょく出向いたりするものだから、せっかくだからと色気を出して相当な回り道を辞さずして足を運ぶいつでも休業喫茶があります。毎度シャッターが冷ややかに下されているのを見るたびに、これ限りにしようと思いつつもきっとまた足を延ばしてしまうのだろうなあ。来年こそはとの願いを込めてそんな喫茶を思いつくままに挙げてみたいと思うのです。 と思い起こそうとすると案外どうしてなかなか思い出せぬものであります。なので、比較的最近に巡った喫茶ばかりになってしまうのでありますが、振られる機会の多い町が王子なのであります。王子という町は暮らしやすそうで利便性も高く好感度は高い割にいまひとつ相性が悪いから徹底して片思いの町なのかもしれません。 「喫茶 サントス(SUNTOS)」は、ネットで写真を見たけれどごく普通に使いやすそうで、気軽に飲食を楽しめそうな雰囲気が漂っているが、これだけ巡り合わせが悪いと、その雰囲気は嘘っぱちなんじゃないかと思えてくるのです。「稲穂(INAHO)」もまたまたお休みですねえ。ここも普通に良さそうに思えるのですが、せめて営業時間と休業日を掲示してはもらえぬものか。常連にとっては周知の事実であるのかもしれず、周知を受けていない者は出入りしてもらいたくないのかもしれません。 ここ「喫茶 しらはま」が一番気になるのですが、やはりお休みのようです。目の前でシャッターが引き上げられそうなくらいに現役感は漂っているのですが、どうしたもんでしょうかねえ。「TEA&PUB じゅん」は明らかに閉業していますが、毎回遠目に見て気になって近寄ってしまいます。店内はごちゃごちゃ雑然としていて営業していた頃の面影を見て取ることはできなさそうです。何度来ても同じことを繰り返すのはまったくもって学習能力がないということですね。 あとの一軒くらいは都電荒川線の学習院下から程近い「珈琲専門店 蜜蜂 高田馬場店」です。今年は早稲田界隈を案外マメに散策したのでそのたびに回り道したのですが、一度として開いていたことがないのです。とはいえ、やめてしまった感はあまりなく、まだまだ現役という気配は漂っているのです。まあ、そんな感想は、まったくアテになどならぬのでありますが、次に早稲田に行く時もまた立ち寄ってしまうのだろうなあ。 そうそう、こういう写真が残っていたんですが、こちらも明らかに閉業しているようです。「CAFE SATSUKI」とありますね。これってどこの写真だったかなあ。 結論から言ってしまうと、結局いつもこれらの喫茶には土曜とか行きやすいタイミングばかり選んで足を向けているからやっていないだけなんだろうと思うのだけれど、果たして有給休暇を取得してまで出掛けるべきかどうかは、やはり行ってみぬ限りはわからぬのであります。
2019/12/29
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今回は、先週報告したその1よりは少しは個性があるかもしれないけれど、個性のレベルが上がるのとは反比例するように、お客さんの入りは悪かったりするのでした。悪いと書くのは申し訳ないか。たまたまだと思うけれど、ぼく(もしくはぼくら)が訪れた際には、一人もお客さんがいなかったのでした。先週の喫茶は平凡だけれど混雑していたのとは対称的であるというのも偶然の一致であると申し上げたいものです。 最初は京成大久保駅前のそれなりに距離もあるしそこそこの活気も漂う商店街の真ん中くらいに「ボルツ 京成大久保店」はあります。外観を見る限りは、特に入るべきお店には見えぬけれど、中は案外に楽しめるのでした。どう楽しめるかというと端的にはモダンでクールな印象でオシャレなのです。スタイリッシュとでもいうのか、案外に古くからあるお店らしいからこちらの内装デザインをされた方は先取のセンスを持ち合わせているようです。そんなセンスが不思議と写真からはちっとも伝わってこないのが残念ですが、興味のある方は一度確認なさるとよろしいかと。 東浦和の「珈琲 あめんぼ」にも行っています。オーソドックスな町の喫茶店。少しも町っぽくないけれど、下手に奇抜な装飾無しなところが居心地の良さに繋がるのは、奇抜さというものが常に飽きるという感情の変化を伴う事に関係があるのかと思います。ここはどうもキムタクが撮影で訪れたということでも知られているようですが、先だっても一度お邪魔している馬橋の「レストラン セリーヌ」に来ていたみたいだし、あれだけテレビに出てればロケハンで訪れた店も数え切れぬほどだろうからいちいち反応するのも馬鹿らしい気がします。ともあれ、ちょっといい感じのお店を普段使いするのが長くお付き合いできる喫茶なのだと思うのです。 上中里駅前にある「喫茶店 サン」の存在はずっと知ってはいたのです。なので当然のことながら何度も訪れてはいたのです。しかし、何度来ても店は閉まっているのです。京浜東北線で山手線から一駅飛び出しただけだから、けして不便な町という訳ではないけれど、それだけのためにわざわざ行く―ケチなぼくは定期券の範囲からはみ出てしまう上中里には駒込もしくは田端から歩くことにしていたのです―のは、なかなかに難儀なことだったのです。とある土曜の昼下がり、その気もなしに駅を下車するとなんとも呆気なく営業しているのを目撃したのでした。土曜の日中に利用できるのにどうしてこれまで運に恵まれなかったのか。落ち着いた雰囲気と店の方の緩いムードでうっかりと長居してしまう、そんなお店でした。コーヒーを頼んだらなぜかサービスでペットボトルの水をいただいたのがなんだかちょっと滑稽でした。 そうそう、とっくに行っているものと思い込んでいた東十条の「COFFEE みかさ」、あまりにも馴染みある町のためか、後送りにしているうちに閉業したとの報を聞き、放置してしまっていたようです。もっと早く来ていれば良かったなあ。また、行こう。 最後に一軒。 ここのことを書いていいものか迷っているうちに閉業なさってしまったということなので、忘れぬうちに取り上げておこうと思います。業平橋の「喫茶 ポッコ」ですが、ネット上で公開されている写真などもあまりこの店の独特のムードを伝えきれていないように思ったので,少しでもここを愛された方たちの思い出に重ねられればと思い、アップしました。
2019/12/22
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なんだかんだあっという間に暮れも押し迫ってまいりましたが、振り返るにはまだちょっとばかり早い気もしますが、年末年始を有意義に、つまりは遊び惚けて過ごすためにもどんどん先行して、このブログを書き留めてノルマを極力解消したいのであります。遊びたい時に、こうして文章をコチコチ打っていはことを想像するだけでゾッとするのです。モノを書くのが好きとか嫌いとか吐かしているうちは、ろくなものは書けないんだろうなあ。書かずにはおられぬという切羽詰まる感動なりエモーションを発露させる、もしくはひたすらに書くという技術を学ぶ事でしか人に読ませるだけのものはものにできないのだと思うのです。いずれの才能からも見放され、さらには怠惰を極めたぼくのような者には、行き帰りの電車に揺られながら勢いだけを頼りにせめてもの自分という存在のあった事を恥ばかり綴ってはいるけれど留めておくしかないのです。なんて話しが詰まらぬ方に向かってしまいました。 今年一年で回った喫茶店の決算をしたいということでありまして、しかし一応メモはしてあるけれど、それがアップ済みかどうか確認するだけの根気はないし、大体過去の写真を掘り起こすのが難儀でならぬのです。せめてPCなんかに保存してあればいいのですが、ここに楽天ブログに連動しているRakuten写真館なるサービスにアップロードしたらPCからは即削除してしまうのです。無料サービスといわれたらそれまでですが、アップロードした写真の検索やらが厄介でそれもしたくないから全くもって困ったものです。で、左記のことは分からぬけれどこの先、何度かは今年に限らないけれど、報告しそこなっていた喫茶店を書き残しておくつもりです。書き残してと書いたけど、多くが記憶から零れ落ちていますので、写真を見ながらの回想というちょっとインチキめいた手法を採用することをご容赦ください。 まずは、稲荷町の「だっく」です。喫茶店ではありますが煙草店の空きスペースに無理やり卓を押し込んだ風でありますが、その割には豆の販売ブースに割かれた広さに開店当初の思い入れの強さを感じ取れなくもないのです。ブレンドと注文するとあっさりめと苦めのどちらにするか尋ねられたので、苦めを所望するとスペシャルブレンドのほうねだって。スペシャルな分値段が張るのかな、そいつはしまった。ぼくはコーヒーはよく飲むし嫌いではないのだけれど、酒類には比するべくもない程度の興味しかないのであります。ノンアルコールビールなる愚劣な飲料があるけれど、ぼくがこれを飲んだのは人生でたった一度きり、その店で一番安い飲み物がノンアルコールビールだったからなのです。なんてまあそんなのはどうでもいい。時折口げんかする夫婦を眺めながら、長く暮らしても夫婦なんてのは喧嘩ばかりか徹底して無関心化のどちらかに辿り着くのだなあとしみじみとしました。 金町というよりは所謂ところの陸の孤島、水元公園のそばに「喫茶 カタリナ」はあります。駅からは遠隔だけれど立派な公園のそばということもあり、案外、古い中華飯店やらが残っていて、たまに頑張って出かけることもあるのだけれど、そんな時に遭遇しながらも見過ごしてしまっていたこの喫茶にようやく行ってきました。ごくオーソドックスでシンプル極まりない内装は面白みはないけれど、近頃はこういう普通の喫茶が案外居心地いいのでした。でも居心地がいいけれど見物としてはいささか退屈なので、そうそう長居するまでの気にはなれぬのでした。 王子神谷からもかなり距離のある豊島中央通り商店街には、「珈琲 アン」がありました。これこそ町はずれの商店街にこれこそ町はずれの商店街にある本当にごくごく平凡で写真を見ても印象があいまいな位のお店なのであります。でも内装がかっこいいとか非凡なセンスが結実しているだなどと無駄に言葉を弄する必要もないこういうお店だって、やっぱり愛される店は愛されるもののようなのです。ひと昔前まではセンスのいい内装でお客さんを楽しませることも愛されるべき要素のひとつだったのでしょが、今ではそれよりもむしろ店の方や仲間たちと親しく過ごせる時間を確保できることこそが重要なのかもしれません。
2019/12/15
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度重なる台風の被害で郡山の町もそこで暮らす方々も大変な心痛と御苦労を背負わされる事になったと心が苦しくなる思いですが、ならばこそ郡山を始めとした北関東や南東北の皆さんを不快にせずむしろほんの僅かでも励みになれたらと思い、郡山への一泊二日の旅について、書き残したいと思うのです。もしこれをご覧になって郡山に訪れたいとお考えいただければぼくも幸甚です。 さて、おや、こいつ、つい先だっても郡山に行っていたではないかと思われたかもしれません。そうなのです、久し振りに行ってみてやはり郡山は汲めど尽きぬ酒場の宝庫であると確信するに至ったのです。なので、またしてもと思われるなかれ、まだまだこれまで報告してきた少なくない酒場にも負けず劣らずの素敵な酒場に遭遇できたので期待していただいて良いと郡山の方になり代わり自負するものなのです。でも逸る事なかれ、まずは喫茶巡りでこの旅はスタートします。 まず降り立ったのは旅の大体中間地点である小山駅です。これまでも何度かこのブログにも登場しておりますが、正直余り面白みがあるとは言い難い町だとこの日までは思っていました。にも関わらず立ち寄ったのは、これまでスケジュールの都合で見合わせていた「コーヒー・軽食 フルル」にお邪魔するためだったのです。駅の西側のバイバスを延々と歩いた先にあるその立地の難儀さがそのまま見合わせた理由となるのですが、そのバイパスに至るまでの町の様子が他の町に見られぬ独特な景観だった事が到着を遅らせ、ひいてはスケジュールの変更を余儀なくされる事になるのですが、今ではその事を少しも後悔はしていません。ぼくにはユニークに思えたそな所以を上手く表現する準備がないので敢えてそれを語らぬ事にしますがもしこれから向かおうとしている喫茶に未訪でこれから訪れる事を予定しようという方がいたならば、ぜひ多目に時間を割いてくねくねと出来るだけ回り道しながら向かって頂きたいと思います。さて、ようやく到着したそこは多少の苦労をして訪れただけの価値はあるとてもチャーミングな内装のお店でした。多少古びているのも愛嬌のうちです。ママや常連のオバサマ達にお若いわねえなどとガッチリと絡んでもらって有意義ではあるけれど先のスケジュールが気になりますが、結局お喋りにお付き合いして予定の列車は乗り遅れたのでした。 駅に引き返す際に「アイドル」、「コーヒー&ランチ まーめいど」などを見掛けましたが、前者は現役っぽい雰囲気ですが,後者は明らかに閉業なさっているようでした。 お馴染みの黒磯で列車の待合せです。ずっと黒磯での時間を潰すのが憂鬱だったのですが、近頃は楽しみに思えるようになりました。それは「明治屋」の牧歌というシンプルなブッセを一度食べてから大好きになってそれを買い求めるのが常となったからです。だから今では黒磯で仮に乗り継ぎが良かったとしても敢えて一列車遅らせてもいいくらいです。もう一軒、「kanel bread」というパン屋が評判が良いので何種か買い求めてこちらも土産にしました。これがなかなか悪くないのです。というか都内の有名ベーカリーにも引けは取らぬと思いました。残念なのは少々値が張ること。 いつ頃からかは忘れてしまったけれど、東北本線で旅すると大概の場合、新白河で乗り継ぎが必要となります。時間によっては白河ラーメンなど頂くのも悪くないけれど、ぼくは「ティールーム 高山」に寄る事が多いかな。過去の写真を探ってみたけれどないので外観のみ。「ボルドー」なるレストランもずっと気になっているけれどこちらも立ち寄る機会を作れていません。長居する魅力が感じられぬのです。せめて隣の白河駅だといいのになあ。
2019/11/24
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梵寿綱の建築物件巡りも佳境となって来ました。もうすぐ持ち玉は打ち尽くしとなりますので、この一連の報告が目障りだと思っていた方はあと少しの辛抱ですので、懲りずにお付き合い下さると幸いです。てな訳で、実際に訪れたのとは順番も違っているのですが、そうした些細な事は脇に放っておくとして、この日、訪れたのは代田橋でありました。 代田橋には氏の建築物件として早稲田のものに準じて著名な「ラポルタ和泉(作品名;La Porta IZUMI:和泉の門)」と「マインド和亜(作品名;舞都和亜)」があります。代田橋では何度か呑んでいますし、喫茶巡りもしているから巡り合っていても少しも不思議ではなさそうなのにどうしたものかそうした機会には恵まれませんでした。無論、ネットの珍スポット関係のサイトで目にはしていましたが、それだけで早稲田とか池袋の物件と結び付けるだけの想像力と記憶力に恵まれていなかったのです。それにしてもこの2棟の奇天烈な事といったらこれまで見てきた氏の物件の中でも派手さとアピール度では最強かもしれません。これで通常のマンションなんかと変わりなく賃貸しているというのだから驚きです。まあ、ネット情報を読む限りでは各室内は極めて穏当な造りとの事なので、実際に住んでみると異世界生活をしているという気分もそうは長続きしないものなのかもしれません。 そばには「とんかつ クラウン」なんてお店があったのですね。こちらも見逃していました。ここもちょっと良さそうです。機会があればお邪魔したいですね。 続いては、方南町に向かいます。梵氏が寿舞と呼ぶ個人宅については、ネット上にその写真が掲載されていますし、ストリートビューでもより鮮明な画像を確認することができますが、とりあえずここに掲載するのは遠慮することにします。というかまあ氏の魅力をお伝えするにはいささか物足りないからなのでありますが、ピンク色のファンシーな外観に氏がお気に召しておられるタイルなどもちばめられていたり、何より装飾の施されたブロック塀がいかにも氏らしいななんてことを思ったのでした。ここは探すのがちょっと厄介かとも思われますが、ぼくは難なく辿り着けました。どうやって探したんだっけなあ。その次は、「カーサ和泉」です。こちらはまだまだ余り氏の個性の感じられぬ仕上がりとなっています。クラシカルなマンションでそれでもどこかしらリゾート風のムードが漂っています。 ちょっと「ボルボ」にて休憩。特に目立ったところはないけれど、こういうお店好きだなあ。マスターもどことなく投げやりでいい加減な感じが不思議とこちらをリラックスさせてくれます。そして値段の安さにも驚かされます。身近にあったらいいなあと思うお店です。 せっかくなので「立正佼成会本部」のモスク風の建物を改めて近くから眺めたらやはり巨大ですごいなあと思う一方で、改装中の筒状の建物、世界宗教者平和会議日本委員会がより興味深く思えました。そんな宗教施設の裏手に「喫茶 砂時計」がありました。これはもう営業していないのだろうなあ。 峰南町を後にしてさらに北上を続けます。かねてより行きたいと思っていた「堀之内妙法寺」を見学しに向かいます。こちらは厄除けで知られているそうですが、ぼくの目当てはこの境内にある和洋折衷の鉄門です。国指定重要文化財となっているそうですが、格調よりもユニークさが目立ちます。鹿鳴館、旧岩崎邸、ニコライ堂などを手掛けたジョサイア・コンドルの設計であります。そばには「COFFEE ROOM 白十字」があったようです。 新高円寺駅を過ぎ、行きそびれていた「ニッタラタン(Nitta Rattan)」にお邪魔します。外観はとても喫茶とは思わせぬ不愛想な雰囲気でふと立ち寄ろうとはなかなか思えぬのです。内観もやはりあっさりとしすぎかとも思うのですが、広々としてリラックスできたのは良かったかも。
2019/11/03
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まず向かったのは、都立家政駅です。この日は、池袋駅の東口から新宿駅西口に向かう西武バスに乗車してみました。この路線はなかなかに便利な路線で、西武新宿線の中井駅、JR中央線の東中野駅、東京メトロ丸の内線の中野坂上駅などを経由するルートとなっていてぼくにはかなり利用価値が高い路線であることをつい最近に知ったのでした。でもこの日は西武新宿線に用があるので、中井駅にて下車、西武新宿線に乗り換えて都立家政駅に向かうのでした。 目指したのは、「コーヒー屋 珈琲館」です。下り列車からは踏切を渡ることになります。随分前に訪れた際はお休みだったのです。この日はやっていました。10人は入れそうもない古いカウンター席だけの店内は、喫茶マニアたちの琴線を揺さぶるというほどの派手な装飾はありません。かつてのぼくならやはり、古いことは古いけれどさほど興奮はしなかったかもしれません。でも今のぼくにはこういう飾り気はなくともしみじみと気持ちの鎮まるような穏やかなお店がとても気に入っているのです。マスターがとても気さくな方で、常連が来る前だったこともあって、コーヒーやこのお店についていろいろお話を聞かせていただけました。前回せかせかした気分の時に入らなくてよかったかもしれません。 モダンな内装で知られるらしい「つるや」は、実は結構楽しみにしていたのですが、残念ながらお休み。またのお楽しみですね。 ここから西武池袋線の練馬までは歩くことにします。途中、「コーヒー&スナック ボン」、「喫茶 ぱすとおる」などを見かけますが、いずれもお休みなのかはたまた閉店されたのか判然としません。さらに練馬駅方面に進むと、お馴染みの「丸十ベーカリー」がありました。この酵母繫がりの系列店は都内各地で見掛けますが、ここはかなり古い感じがします。お客さんもよく入っていてついつい店に入ってしまいました。ここは種類も量も豊富だなあ。そしてそのどれもかしこもが美味しいのです。丸十のパンは大抵が安いのだけれど、安いなりの商品が多かったという印象がありますが、こちらのは価格的にも他店より安いけれど、それより何より旨いのが素晴らしい。いつものお決まりのセリフですが、このパン屋さんはホント近所にあったらいいなあ。 どうにも気乗りのしなかった練馬駅前の「マッシュポテト」に入ってみました。喫茶として利用するのはちょっと厳しいかな。 そのすぐそばの「アルカション(ARCACHON)」では、缶の素敵なデュネットというお菓子を購入しました。予想外の小ささとチェック済みの値段とのギャップに迷ったけれど、思い切って購入。これがまあなんまあ美味しいことか。お酒のお供にもぴったりですが、うっかりするとあっという間になくなるのが難点です。 桜台駅では「ちゃてい」に入れました。これまで何度となくトライしたのですが、ようやく悲願が叶っての入店です。住宅街の喫茶店らしいといえばそれまでですが、苦労して訪れたという感慨で満足しました。 やはり桜台の「オオナミ」というパン屋にも立ち寄りました。個性的な店主が一人でやっているという触れ込みのお店でしたが、ぼくに語り掛けたいとは思わなかったようで、さほど忙しくなさそうにお見受けしましたが特に言葉を掛けられることもなく数個買い求めて店を出ました。カレーパンは巨大でなかなかおいしかったです。 さて、西武池袋線からは少し逸れて、要町駅前までやって来ましたがそれも通り過ぎてハタボウルの裏手にある「COFFEE RESTAURANT ミナミ」にお邪魔しました。この日、最後の目当ての場所に向かう前にふと思い出して立ち寄ることにしたのです。どうしたものかここにも今まで入れたことがありませんでした。巡り合わせでどうしても店に嫌われる場合ってあるのですね。店内は特別どうってこともなく、まあ入れて胸のつかえが取れたという気分ですが、看板犬がやたらと吠えられてしまいましたが、やはり可愛くて癒されました。 最後の目当ては、梵寿綱の建築物件、「PETTI ETANG」を眺めることです。これらの建築物件群を梵寿綱という人のものであることを知り、ネットで情報を調べるうちに知った物件でありますが、それを見た瞬間に池袋の住宅街奥の余程のことがなければ、行くこともなさそうなここがどこであるかを知ったのでした。なぜ分かったか。この裏手の通り沿いで暮らしたことがあるからで、もっと早くに思い出してもよかったと思うのでした。女神のレリーフなど一部が剥落している個所も見受けられたのでご覧になりたい方はお早目がお勧めです。不審者扱いされない程度にエントランス内も拝見しました。カッコ良かったなあ。
2019/10/06
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これは喫茶巡りをなさっている方の多くに共通の経験でありましょう。自宅から遠かったり、職場からも遠かったりという分かり易い理由により再訪を先送りしてしまう喫茶が少なからずあると思うのです。そうした後悔を回避するためには、とにかく力及ぶ限りは少々の無茶も辞さぬと躍起になったひと頃もあったものですが、やがて、店内の様子があからさまに過ぎたり、優先すべき喫茶が多過ぎたり―財布の中身という即物的な都合もある―という理由によって、将来の愉しみに取っておくという言い訳を決まり文句にしてしまうようになりました。しかし、それが決定的に誤りであることは分かっているのです。誤りという言い方が適当でないとすれば、こう言い換えるのが正解に近いのかもしれません。つまりは、気になってしまった以上は、必ずや未練を残すことになるという事実であります。後送りにした喫茶にこそ珠玉な経験が待ち受けているのではないかというもやもやとした気持ちを晴らすには現実に足を運ぶしかないのであります。誰もが知っている喫茶にも無論誰もが知っているだけの理由があるけれど、見たことのない喫茶にこそ真の感動が潜んでいるのではなかろうか。落穂拾いにこそ喫茶巡りの醍醐味があると信じて、何軒かの放置しっぱなしになっていた喫茶店を尋ねることにしたのでした。自宅から遠くもなく、その気にさえなればいつだって行けると思っていてはいつまで経っても行動に移すことはあり得ぬのであります。 まずは、本郷の「珈琲 待夢」であります。ここは「唄える喫茶♪」がネックとなって避けていました。店内が大体見通せるのも難ありです。感想としては内装やらインテリアが外から見る以上に真新しいのが残念で、まあごく普通のお店でしたが、喫茶店などというものは大部分が普通なのが当たり前なのです。これにめげることなく次なるお店に向かいます。 湯島にやって来ました。湯島ハイタウンという湯島天神の足元にある古びた大きなマンションにある「飛鳥」という喫茶店を訪れるためです。ここは春日通りを歩いたり、バスで通過するたびに目にしていて、それこそ立ち寄るチャンスなら何度となくあったのですが、余りにも機会が多くて立ち寄れなかったお店です。いつもそれなりにお客さんがいるのも敬遠してしまう理由です。まだまだ現役で続けてくれそうですからね。この日に立ち寄ったのは、かなりの距離を歩いたからへばってしまって休憩したくなったからです。ここもまた有り触れた普通のお店ですが、広々としてゆったりしていて大いに休息できました。 さらに、上野まで歩きます。前の二軒が使いやすいけれど少々物足りぬからという理由もありますが、池之端に面したビルの1階にある「ビルポート」に立ち寄ってみることにしました。ここもやはり普通に使い勝手の良い立地も利便なお店という印象ですが、一番居心地が良かったかなあ。マスターが数十年ぶりに顔を出した娘さんと昔話をなさっているのについ聞き入ってしまいます。見た目には新しくても店の歴史はそこばかりに残されているのではないのだなあ。 続いては、亀有です。亀有の辺りにも昔からやっている渋い喫茶店が少なからず残されています。その中には華美な内装が待ち受けているわけでもない「カフェテラス 洋子」なんてお店もありました。こちらは無事営業をお続けになられているようです。ここには以前一度お邪魔させていただいていますが、記憶も不鮮明でもう一度立ち寄ることを真剣に思い悩むのですが、次にお邪魔するお店の事が気掛かりで後ろ髪を引かれながらも素通りしてしまいました。 先般、亀有の町外れを散策するうちに迷い込んだ団地の隅っこでそっと営業を続ける「コーヒー ふじ」に立ち寄ることにしました。以前、通った際には結構酔いが回っていたので遠慮したのですが、そもそも店に入るのにそれなりの気合が必要だから恐らくはその時には、酒の勢いでまたすぐ訪れればいいと思ったのに違いありません。それから早くも半年も経過しているのだから、うかうかしている暇などないのであります。しかし案ずることもなくこちらは既に店を畳んで数年になるというから、ママさんは店を辞めても引き続きここを安住の場所として自分のためにご利用なさっているようです。営業していた当時もこのごしゃごしゃした環境がママさんにとって心地よかったのだと思います。 駅から至近の「カフェテラス 四季」は、あれいつの間にか店をやめてしまったようです。こここそいつだって来れると後回しにして何度となく通り過ぎていました。店内の様子は今でも脳裏にありありと浮かべることができるけれど、いざそこに身を置いたことがないことを無念と感じるのは、いかにも愚劣なことだなあ。
2019/03/31
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ずっと懸案にしている喫茶巡りルートというのがあります。それこそ日本各地に土地ごとのプランを組んでいて、それを実行する機会を常に待ち構えているのであります。しかし、そんな機会は待っているだけではそうそう到来するはずもなく、やはり強い意志と交渉力で勝ち取らねばならぬものなのですが、面倒は後送りにしてしまいがちな性癖が災いしてなかなか実行に結実することはないのです。でもそうしたプランは何も遠隔地にばかり用意している訳でもなくて、半日もあれば行って帰ることの出来そうなものもあったりするのです。ならば目先のそちらを先に片付ければいいではないか、いつまでもあると思うな喫茶店なんてことを普段口走るぐらいなら今すぐにでもやっつけてしまうべきとのご意見はもっともであります。が、しかし、怠惰で吝嗇なぼくにはどうせやるなら一日掛かりで遊べるプランを練り上げてから実行したいと考えてしまうのです。そこで思い付いたのが先日決行したけれど、不調のままに終えるしかなかった酒場放浪記の取りこぼしをついでに攫ってしまうというアイデアでした。日中に東武東上線の志木駅をスタート、志木街道をJR武蔵野線の新座駅と東所沢駅の中央を串ざすように走る志木街道を通って、西武池袋線の清瀬駅まで至るというものです。武蔵野線を通過する付近がほぼこの散歩の中間地帯で、ここまでで約6キロ、計12キロ程度の行程であります。近くはないけれど、途中4軒の喫茶店に寄る予定だから、適度に休息も挟めるし何とかなるだろう。ところが、今年の夏はそうそう甘い考えを許してはくれなかったようです。 志木駅に到着し、早速歩き始めます。紙で用意した地図上の「純喫茶 ミコノス」は、駅からそう遠くないはずですが、実際に歩いてみると思っているより歩き甲斐があったのでした。この時点で方針を変えることも可能であったはずです。しかし、楽しみにしていたこのお店が閉まっていたことが、そうした冷静さを完膚なきまでにぼくから奪うことになったのです。入りたかった喫茶に肩透かしされた無念と、そこで寛いで改めて地図を精査することで今回のプランを無鉄砲さを見直し機会を逸したのです。 そこから次の目的のある新座団地までは、場末の呑み屋街などもあり見どころもあったし、いざとなれば逃げ込む店なんかもありました。「CAFE & TANGO にんじん」のある周辺にも団地に寄り添うように何軒かの飲食店があって、これは悪くないななどと呑気に構えてのんびり写真なんぞ撮ったりもしたのです。 さて、ここから先は透かしばかり距離があります。基本的には志木街道をひたすらに進み続けることになります。ところがここから先には日蔭すらほぼないのであって灼熱の日差しをモロに浴び続けるしかないのであります。途中、一度だけコンビニに立ち寄りましたが、まさにオアシスのような楽園に思われ、再び炎天下に踏み出すのを躊躇ったほどです。それでも視界の先に関越道と武蔵野線の交錯するのを捉えるととりあえずあすこまで行けばという希望が湧いてきました。 駅でいえば幾分か東所沢駅よりは新座駅が近いだろうか、そんな妙な場所に「みづほ」はありました。しかし、またもややっていません。貼り紙には休業する旨の断り書きがあります。ちゃっかり店内をじっくり眺めてきましたが、その感想はまだ見ぬ方の楽しみを奪うことになりかねぬのでここでは控えさせて頂きたいと思います。ただ、この絶望的な状況に急激な吐き気と目眩に見舞われます。典型的な熱中症の初期症状ですね。でもここで立ち止まっても狂暴な日差しを受け続ける事になり、いつも以上に重く感じられる身体を引き摺るようにして、最後の目当てを目指すしかなかったのです。 やっていました。「Coffee shop Paris」という何とも場違いな店名ではありますが、ともあれ、ここまで足を運んだ苦労が一挙に吹き飛ぶような喜びでした。一般化するのは好きではないし、かりの欺瞞が混入する事にもなりかねぬので避けたいところですが、この喫茶、純喫茶というものが仮にあるのだとすれば、その原点のような古典とも呼んで良さそうな程の端正さと厳密な計算が施されているように思えるのだ。疲労困憊したいつもよりも虚ろなぼくなどが語り得る店ではなさそうです。とにかく、この環境に一度身を置いてしまうと席を立つのがとんでもなく苦痛に感じられるのが参ってしまう。しかし、強烈な光線の下から突如として薄暗がりの空間に移行したことが、疲労と眩暈も相まって激しい眠気へと転化するのは自明の理なのでありました。さすがにここで寝込んでしまう訳にはいかぬ。うつらうつらと眠りを欲する身体に鞭打ちながら、この地からの離脱方法を模索していると、何のことはない近くの団地―清瀬旭が丘団地というらしい―前から想定していた清瀬駅行きの路線バスが走っているではないか。途端に元気になり、睡魔を振り払い席を立つのでした。 清瀬駅からは所沢駅を経由して東村山駅に向かいます。元々の予定では余所にも立ち寄るつもりだったのですが、その余力は残っていません。というか、この先も夜の部である酒場放浪記に登場の酒場を巡らねばならず、まだかなりの距離を歩かねばならぬから余計な体力の消耗の余地はないのでした。 写真を見るまですっかり失念していましたが、駅前のこちら「ゆーもあ」にもお邪魔したのでした。何度も通り過ぎてはいるけれど、ついつい見て見ぬふりを決め込んでいました。店名と看板の能天気さとはそぐわぬ極めて真っ当かつ平凡なごく普通のお店で、普通に喫茶時間を過ごす方にはとても使い勝手の良いお店かと思いわれます。 さて、青葉町の酒場に迂回しながら向かう途中に「コーヒーショップ ポイント」がありました。何気ない構えの喫茶ですが、ここが実に良かったのであります。駅からは歩いて15分は要するであろうから、お客となるのは地元の住宅街の住民たちばかりのはずです。わざわざ東村山駅から歩いて訪れるには遠すぎるし、街道からは外れた狭い通り沿いにあり、駐車場も設置されていないようだから車で来るわけにもいきません。やはりお客さんはご近所さんが帰った後は仕事帰りの中年女性が立ち寄るといった使われ方をしているようです。シックで端正な装飾を禁欲的に排した内装は堪らなく素敵なのでありますが、品書などに今風の軽めのロゴで貼り出されていたりするのが少しだけ違和感があります。店内から扉を眺めると「珈琲専門店」の文字がくっきりと浮かび上がり挙がります。逆光をこれ程に効果的に活かすとはなかなかのセンスの持ち主です。アイスコーヒーのお供にはチーズが添えられており、これは面白いサービスです。お替りまで注いで頂きすっかり大好きになってしまいました。
2018/08/19
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順調に続けてきた旅ですが、ここに来て少しばかり披露を感じ始めました。喫茶店だけならまだまだ意気揚々と活動できるはずですが、途中2軒ー酒場篇にはすでに3軒が登場していますが、京王線にお詳しい方ならその路線図的に想像いただけるはずーで呑みも交えてしまったのでさすがに倦怠感というか虚脱感のようなものにも似た、まあ一言でだるさに見舞われたのでした。まさに一憩のひと時を過ごすためにこそ、本来の喫茶店の機能であり、客にとっての目的であるのでした。なので分倍河原では、その本来の目的を果たさんがために下車することにしたのでした。 ここには、以前訪れた際に滑り込みアウトとなった「カトレア」があります。民家のような小さな家屋の2階にあります。薄暗い階段を上がると意外と言ってはナンだけれど、思った以上に純喫茶らしい佇まいがありました。花がたくさん飾られるようなオバちゃまたちの寄り合いラウンジのそっけないムードかと思いきや、ソフトなヨーロピアンな雰囲気があります。クリーム色の合皮のチェアも具合が良いのです。もう夏とそれほど変わらぬような強い陽射しの中から目に優しい薄暗さの只中に急激に移行したこともあって、強烈で蠱惑的な睡魔に不意に陥りました。独りで店で眠り込むなどという無作法は避けたかったのですが、抗い難かったのです。そう長い時間そうしていた訳ではありませんが、申し訳ない気持ちになって慌てて席を立ち店を出たのでした。 府中では特に目的があったんじゃないけれど、ふと気が向いて降りることにしました。しばらく歩いて「ウェザーコック」なる喫茶店があったので入ってみましたが、何となくそんな気はしていたけれど以前お邪魔していました。とりわけどうというお店ではないけれど、そこそこにシックで落ち着ける空間です。そんな過ごしやすい店だからやはりここでも睡魔の誘惑にやすやすと乗せられるのです。しかし時折、テーブルに突っ伏して堂々と寝ている人がいるけれど、あの大胆さを無法だと思う一方でさぞや気持ちのいい事だろうと羨む自分もいるのです。いやあ、ぼくももう少しばかり図々しければ、人生も随分違ったものになったはずなのだがなあ、と凡そこのオーソドックスで使い勝手のとてもいい喫茶店で考えることではないのだがなと、そっと微苦笑を浮かべてみたりするのでした。ひとり演技が始まりだすということはそろそろ引き上げ時かもななんて思ってみたりもするけれど当然にぼくはそれほどには往生際が良くはないのであります。 京王堀之内の駅前にはいかにも川崎のベッドタウンらしい、人通りはあるけれど何だか人間味に欠けるよそよそしい町並みが広がっています。そんな駅前の大きな通りを渡って、裏手の通りを歩いてみてもやはりそこには味気のない住宅があるばかりです。そんな町にあっては、「友愛珈琲店」の上品できれいだけれど、喫茶好きには少しばかり物足りなく感じられる雰囲気ですら、憩いの場所となりうるのであります。陽が落ちて仕事帰りの女性一人客や近所の御隠居さんたちが集っています。一般的なボックスの客席に加えて、サークル状の大きなテーブルもあり、そこだけはいくらか個性的な風貌を見て取れます。町には街灯が灯り始める時間帯になって、ぼくもようやく夜への臨戦態勢が整いました。それではいよいよこの日予定していた最後の町に向かうことにしましょうか。
2017/07/23
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狭間駅では行きの電車の車窓から町並みが見えたので、結構、ヤバそうな、まあつまりはいかにも郊外のこれといって見るべきものもない町であることは想像できました。だからと言って町歩きに余談は禁物と思い直してエイヤッと下車することにしたのでした。由来こそ知らぬけれど大体が狭間という、住んでる方のことを考えると何とも感想を述べるに困ってしまうような駅名なのだから押して図るべしなのであります。駅前の緩やかな下り坂を下り切ると、巨大な団地とその脇には蛇の目ミシンの古びた工場があります。それはそれで興味深いのでありますが、今のぼくには持て余す情報なのであります。そりゃまあ、あらん限りの好奇心を満足させてやりたいという気持ちはいつでも持ち合わせているけれどそれに耐えうるだけの頭脳には恵まれなかったのだから、あまり欲張ると目先の喜びさえも取りこぼしてしまいかねぬのです。と言うか、今せっせと訪ね回っている酒場と喫茶ですら手に余るのだからーそれはまあ当たり前のことでありますがー、これ以上境界を広げてしまうと収拾が付かなくなることは間違いない。 なんて余談はかなぐり捨ててスパリと本題に入るつもりだったのだ。やがて行き詰まる通りは町田街道と言うらしい。町田街道をひたすら南下していくと「蓮華」がありました。が、駐車場にカラオケスナックとあります。しかもやってないから感想の述べようもない。しかしこれもまた喫茶探訪の楽しみです。こういう事でもなければ、狭間などという魅力的な駅名ながら、見るべき所もなさそうな駅に下車する機会はなかったでしょう。 次は京王片倉駅に降りました。「ブリックス」という山小屋風の喫茶があるとかいう情報を得ていたからです。店名に少し引っ掛かるのですけど、ここではそんな事に構っている余地はなさそうです。とにかく駅周辺は長野や福島の山中の駅で下車したかのような気分にさせられるのでした。そんな所だから余りよそ見をするのはやめて素直に店に直行するのが懸命に思われます。十数分ほど歩けばJR横浜線の片倉駅まで辿り着けそうで、その周辺はまだしも町らしきものがありそうですが、気力がどうにも湧いてこない。途中なかなかの景観を形作る流れの早い川が眼下に見えてきますー何だか風情のある名が付けられていると調べてみると湯殿川でありました、そうそう出羽三山の一つで山村正夫のミステリー小説、いや池田敏春のフィルムが記憶に残る湯殿山との関連を思ったものです、ちなみにカタクリの群生地でもあるそうですー。そのすぐ先に目指す喫茶店はありました。山小屋風なのは確かですが、コーヒーで焙煎されたような漆黒の壁面がカッコイイのと同時に異様な存在感をもたらしています。店に入ると2階に促されました。言われるままに2階に向かいます。ぼくの好みとは少し違っていますが、確かにいい雰囲気であります。子供の頃にこんな隠れ家を与えられていたらさぞや勉学に打ち込めただろうな、いや、世捨て人のような生き方を送ることを余儀なくされたかもしれぬ。しばしの浮世離れした気分を堪能しました。しかしこの雰囲気は悩み事があるときには訪れぬが懸命かと思われます。その理由は語るもがななのです。 そして八王子駅で中央線に乗り換えたことはすてに酒場篇で書いたとおりです。豊田駅で目指したのは「ベアトリーチェ」という喫茶店です。駅の北口をしばらくまっすぐ進むと、小さな公園があってその向こうにちょっとした洋館風の建物があります。そここそが目指すべきお店です。店内は思いの外にコンパクトな造りでしたが,店内は豪奢なヨーロピアンエレガンス路線のど真ん中を行っています。こういう貴族の御后なんかが,クラシック音楽をバックグラウンドにして優雅かつおしとやかに茶を啜り、菓子を齧るなんていうのが本当なのでしょうが、日本の喫茶店はその辺りが大らかで、ぼくのようなつっかけにTシャツみたいな、だらしない恰好の者をも受け止めてくれるわけです。こうした店で時折、身だしなみのきっちりした紳士淑女などもお見かけしますが、それが逆に違和感として認識される辺りがユニークなのです。一見すると豪奢に見える内装などもよくよく目を凝らしてみると、ハリボテ感が浮き彫り立って来たりして、そのあんまり本気になると身の丈に合っていないんじゃないかという、恥じらいがユーモアとなって表れているように思われるのです。ここは割かし本気度が高いところがあって、それが若干余裕を欠く嫌いがあるのですが、それでも表に出たらいかにもな日本の住宅地をここまで異化させたその破壊力には魅力を感じざるを得ないのです。
2017/07/16
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別に暇を持て余していたんじゃないのだけれど、なんとか時間のやり繰りやら各種言い訳を用意して一日自由になる日を確保できました。近頃、時間があっても財布が空っぽだとか、その逆だったりしてどうも歯車がズレているような気がします。この休みは両方が揃った稀有なタイミングだったのです。そして、ぼくの場合はよく予定外の行動であまりスケジュールを遵守せぬ方なのですが、それでも最初の一軒目の喫茶店をどこにするか、それから最初の呑み初めをどこにするかー昼呑みは別、これはその日の体調と出会った店次第ー、その通過ポイント程度は決まっていると、グンと充実した一日となる傾向があります。この日は手許に京王線のメモがあったのでそのメモを頼りに一日乗車券を駆使して回れるだけ回ってやろうという意気込みで家を出たのでした。 なので高尾線に乗り継いだはいいけれど、一挙に高尾山口駅まで向かったかといえば、もう少し作戦を立ててこの細やかな旅の成功を占う事にしたのでした。向かったのは、めじろ台駅です。何だかとてもおハイソな駅名が付いていますが、文京区の目白台とは全く趣を異にしております。全く持って郊外の住宅街の眺望で、眺望と書いたけれどこの語の喚起する俯瞰的で威圧的な印象は少しも感じられぬのです。駅の北側には多少なりとも呑み屋があったりしますが、基本的にあまり面白みはない。すぐに町歩きにも飽きてしまい、ちょうど開店時間を過ぎたばかりの「アン」に向かうのでした。この日の一軒目に相応しい店なのか、いくらかの緊張を伴って入店します。瞬間、カフェテーブルが目に止まり、これは少しも喫茶店らしい佇まいなど期待できぬコーヒーショップのような無機質で心無い内装かとガッカリしたのですが、いや奥の席に進むと壁のロゴ装飾などに、いわゆる喫茶店とは違ってはいるものの、時代遅れのスタイリッシュさが感じられ、これはこれでユニークなのです。奇妙な違和感が楽しい、独特の美意識のある駅前喫茶でした。「モンシェリー パートII」は見当たらず、空き地か空き店舗のいずれかだったのでしょうが確認しようとも思わぬのでした。 次こそは時間が空いたので、折角だからと高尾山口駅まで行ってみました。次の上りの時間までしばらく時間があるのでしばらく駅前を散策することにします。「稲毛屋支店」は前々から来たいと思っているのですが、今回も見送ることになりました。駅前にいくつかカフェの文字が入った大きな看板を見ましたが、立ち寄るまでもなさそうです。第一まだ営業していない。ここで再び高尾駅に引き返すことにします。 高尾駅のそば、グルメシティーダイエー系列の複合スーパーですねーの2階にプチゴージャスな喫茶店があるそようです。店舗前には開店待ちの住人たちが群がっています。これ程までに慌ただしく開店待ちするという事は、この方たちの多くは近隣の飲食店の買い出しなのか。時間になり、自動ドアが開くと人々は足早に散らばりましたが、2階に向かうお客さんはぼく一人なのでした。「オルム」は秘密めいた階段を上がった廊下の突き当りにありました。遠目には飲食店というよりは、おばちゃま向けのブティックっぽく思われましたが、実際に店の半分はおばちゃんたちが好みそうな雑貨類を扱っていました。ママさんはちょうど湯を沸かしているところで、どうぞと通してくれました。奥のソファ席に腰を下ろすとここが旅先でもどこでもない場所にいるような気持ちになります。これは喫茶店の特殊な効果の一つです。店の印象がその立地が何処にあるか、東京なのかそれともどこかの地方都市なのかといった問を無効にするのです。場合によっては日本ですらない欧州に意識を運んでいってくれる事もあるのです。まさにここなんかは欧州のどこかの没落貴族の応接間に思えなくもない。本来であれば、ゆったりと茶を飲めるのが喫茶店の使命であるならば、和風のテイストがもっと普及するはずじゃなかろうか。かつての日本人の外国への憧憬が歪に拡散したというのは簡単だけれど、そんな変な日本人は捨てたものじゃないのです。ここもまたスーパーの二階とは思えぬ異空間で楽しめました。
2017/07/09
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酒場篇は、まだ続きますが喫茶篇はこれにてあっさりと終了です。仙台での2日目を終えての大晦日は早朝に起床して、仙台駅にやって来ました。ここからは、とりあえず東北本線で郡山駅に向かいます。東北本線にはウンザリするくらい乗っているので車窓を眺めるのもほどほどにウツラウツラしている間に郡山駅に到着です。乗り換えも慌ただしく郡山からは、磐越東線に乗り継いで三春駅に向かいます。郡山駅から確か2駅目と、都心の人ならば いざとなれば歩けると思いがちで、ぼくも地方の出身者なのにもしや歩けるんじゃないかと、地図を眺めたのでした。磐越東線はこれらは想像通り1時間に1本あるかなしかうの運行なので、乗り遅れは致命的なミスとなりかねません。さて、地図を見ればこれはもうとてもじゃないけれど歩いてられない距離だし、郡山方面を繋ぐ路線バスも運行されているようですが、駅からは相当な距離があります。しかも年末の運行本数はかなり間引かれていると思われます。つまりは時刻を厳守の慌ただしい途中下車となります。それなのに三春という土地は駅と市街地が相当離れていたのです。まずは川を渡る事になるのですが、視線の先には緩やかにカーブしながらの上り坂が続いているのです。一応大雑把な地図は用意しておいたのですが、想定よりずっと縮尺がされていたようです。それでもやがて開けた町並みが見えてきました。大通りをしばらく進みましたがこれは後付の町並みみたいです。少し引き返して脇道を入ると古い商店がポツポツあります。ようやく目当ての通りに辿り着けました。この通りが寂しいながらもなかなか見どころが多いのですがそれは酒場篇に取っておきます。 この通りに目指した喫茶店があります。「メロディー」という新しいお店でした。この通りの雰囲気からとんでもなく古ぼけた店舗なのではという内心のドキドキはすぐに吹き飛びましたが、それ以上に大晦日にやっていてくれるかの方がずっと気掛かりだったので、営業していてくれただけで御の字です。店内は特別目立つ装飾があるわけじゃなくまあ落ち着きのあるコーヒーショップといった雰囲気です。一点変わっているとすれば、なぜか店の片隅の水槽にはナマズが飼われています。店主夫婦の趣味なのでしょうか。そして入口の扉にもさり気なくナマズのキャラクターが描かれています。しばらくするともう近所でこの時期まで仕事している方が昼休みで休みに来られました。昼食と喫煙タイムを取りに来られたようです。他に喫茶店らしき店はなさそうなので、喫茶文化を絶やさぬよう頑張っていただきたいものです。さあ、ここからまた駅までは距離があるので早過ぎるようですか、余裕を持って店を出ることにしました。その帰途にやはりというべきか寄り道してしまい、冷や汗を書くことになるのですが、それもまた酒場篇にて報告します。 さて、三春駅から郡山に引き返します。小一時間弱の合間があるので念のため行きそびれていた喫茶店に行ってみることにします。人通りも少ない駅の東口は駅を出るまでが距離があって面倒ですが、ぼんやりと時間を潰してしまうのは時間が余りにも惜しい。だから「純喫茶 ブーメラン」前までいって案の定やっていなくても後悔はしないのです。 またも東北本線の乗客になり小山駅に到着、ここからは水戸線に乗り換えて、下館駅を目指します。しつこいですけど大晦日にこんなことしてていいんだろうか、なんて自省も正直なところ芽生えたりもしてるのです。だけれどしがない勤め人なる身のぼくにはこうまでしないと自由な時間を作り出せぬのです。だからこそこの無茶振りが当たり前のことだと受け入れざるを得ないのです。脱線している暇はありません。下館駅に到着しました。水戸線には何度も乗車していますが、下館に途中下車するのは初めてです。駅前に降り立ってすぐ様この町を気に入りました。区画整備がうまく運ばなかったのか、放射状に道路が伸びています。こういう能率よく町巡りをしようといういう邪な意志を打ち砕くだけの強度がこの町には携わっています。実際ふと視線をあらぬ方向に向けるとあっちにもこっちにも気になる物件がゴロゴロしているのです。そんな物件に映画館も含まれるのですが、この廃墟化した劇場前に「ウィーン」があります。店名こそ欧州趣味が感じられますが、店内はあからさまに実用的であります。飾り付けむという意気込みがほとんど感じられぬのです。かつては映画を終えた客たちがここで映画談義を交わしたのだと思うと余計な装飾など無用であるのも宜なるかなと思わぬでもありません。大晦日の夕暮れ時、他に客はおらず通りにもほとんど人通りがない。突如うら寂しい気持ちになり急いで感情を済まし、駅へと急ぐのです。 ホントは最初にもう一軒の喫茶がある改札を出ていたのですが、残念ながら「ミレー」はお休みです。こちら側は通りの裏側には古い店舗が残っていますが、それ程見どころはなさそうです。
2017/04/09
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列車に乗りこんで次に向かうは南大塚駅です。この駅も下車したことないどころか駅名すら覚えがなかったなあ。というか、いまこうして書いていながら、分かりやすいというか、馴染みある大塚の文字を含むんだから覚えていたって不可思議じゃないのに。全く近頃は物覚えが悪くて困ったものです。まあ覚えられないことってのは無理して記憶に留めなくて良いものなのだという考えもあるけれど、世の中なかなかそんな付に達観してられないのですよ。さて、短めの脱線に留めて初めての南大塚駅に下車します。何ともサツバツとした駅前です。どこがどう殺伐としているのか、描写すると長くなりそうで面倒なので差し控えさせていただきますが、一言でいうと大きな町の隣接した町が、開発に頓挫したけれど取り残された店はどこに流れいくわけにも行かず踏み止まらざるを得ないのであった、といったところでしょうか。なので放置された店舗や空きテナントなども目立ちそれはそれで黄昏の町の趣きがあるけれど、もとが貧弱なので見応えがないのでした。だからすぐに駅そばの喫茶に転がり込むのです。 至って端正な造りのオーソドックスなお店です。仮に喫茶店密集地にこの「散茶路」があったとすれば、黙って素通りして後回しにしてしまったかもしれません。それ位に一見したところは個性というのが希薄で、実際今こうして書いていても悪くなかったはずなんだけど、でもこれといった印象が少しも脳裏に浮かび上がってくることはないのです。確か入口を入ったあたりがギャラリーっぽくなっていて、なんか飾られていたような気もするのだけれどどうしても思い出せぬのです。情けないことにそのギャラリーらしい一角にキャメラを向けたことは覚えているので手元にある画像データには何かしらその手掛かりが写り込んでいるはずですが、あえてそれを見る手間をかけるまでもなかろう。後はママさんの事がちょっと記憶に引っ掛かっています。腰を落ち着けてお喋りしたわけじゃないんですが、出掛けに少し言葉を交わしてみたら、キツそうな方と思えたのご実は気のせいだったことに気付きました。そんなまあどこにでもありそうな、しかしこれもまた郊外の町としての繁栄を放棄した町の今なのでしょうか。 新宿線の終着駅、本川越駅にようやく辿り着きました。駅を降りて歩く事10分はゆうに掛かるでしょうか、何度来ても見果てぬ夢のまま、見放され続けている「喫茶 セブン」には、またしても嫌われてしまいました。一日時折言葉を交わす程度で、黙りを続けていると、己を客観的に眺めているつもりでありながら、実際にはどんどん内省的になって私小説の主人公のようなつもりになってしまうことがあります。まあぶらぶら歩いてる間は景色を眺めたり忙しくはありますが、散々訪れていてそんなに好きにはなれぬ川越の町だと余計な思念を弄することで退屈を凌ぐことになるのです。何を言いたいかというと、「喫茶 セブン」のママさんー多分、高齢のママさんがやってる気がするーに意地悪されてんじゃないか、ぼくが来るからそれを嫌って急遽店を閉めることにしたんじゃないかなんてことを思ってしまうのです。それもその時には案外本気にしたりするのだから始末が悪いのでした。虚しくもと来た道を通らぬように引き返しますが、何ら収穫はなし。やたら混み合うもつ焼屋に辟易したのはすでに書いたとおりです。 辺りもすっかり暗くなった頃、野方駅に到着しました。何度も呑みに来ているし、古い喫茶店があることも随分前からリサーチできていた。なのにあまりの情報のインフレに追いつけず、無個性なデータの渦に飲ま込まれて後から後悔することがどれだけあったことでしょう。それが野方くらいの手近な町であればダメージも少ないけれど、泊りがけで行くような町でそれをやらかすと、己で制御できぬほどの情報を持ち過ぎるのは逆に肝心なものを取りこぼす害悪でしかないと思うようにもなります。それはともあれ、ようやく「シェルテ」を訪問することが叶いました。かねてからネットでその雰囲気は弁えているつもりでしたが、やはり自ら赴いてそこに佇んでみると印象は明らかに親密度を深めるようです。そうこのお店、どこか雑然としている辺りや茜色の照明に染まったところなどが親密極まりなくむしろ二日酔いでけだるい気分の夏真っ盛りの昼間にじっくり腰を据えて読書などしてみたくなるのでした。近所はコーヒーショップばかりで、それはそれで使い勝手は悪くないけど、そこにお金を落とすのが惜しいと感じるぼくのようなセコイ者にとっては、新越身近に欲しい喫茶でした。
2017/02/19
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さて、短い時間でしたが、飯能を堪能しました。今回訪れた二軒は、飯能の真髄とも言うべき店であったとは思いますが、他にも見落としている何物かが潜んでいそうな潜在力があるように予感されました。いずれじっくりと腰を据えて歩いてみたいものです。が、今回は西武線を乗り回さねばもったいない。飯能駅で池袋線で所沢駅に戻り、新宿線に乗り換えて東村山駅へ向かいました。東村山は上京するまでは、いや上京後もしばらくは訪れる理由もあるはずはなく、子供自分に耳にしていた歌で東京の田舎という印象が植え付けられていて、それがまたこの町を訪れるきっかけを損なう理由でありました。しかし、実際に初めて訪れたこの町は巨大な味気ない団地で埋め尽くされーいや、団地は好きだけどこの辺の巨大団地は殺風景に過ぎて好きになれぬのですー、思っていたような田舎びた印象はその片鱗すら留めていませんでした。下さい数年前に呑み歩いた際もその印象は変わることはありませんでしたが、夜のこの町を彷徨ううちに何軒かの忘れ難い酒場と遭遇しましたし、その際は入りそびれた宿題店もあります。今回はその積年の課題を片付けるつもりです。 しかし、その前に駅前の「グリム館」で一息付くことにします。駅前ビルの二階の階段を登ると、表から見るよりはずっとコンパクトで家庭的な雰囲気のお店でした。もっとファミレス風のお店だと想像していたのです。いや、あれっ、ここって前回夜更けの時間に立ち寄ってはいまいか? どうも記憶が混濁しています。ともあれ大きな窓のある喫茶店の強みは、その時間帯によって表情を刻々と変化させるところにあります。しかも今回は真夏の最も日の高い時間でもあります。つい窓側の席を選んでしまいましたが、これが大誤算。モロに直接的に日差しが差し掛かり暑いなんてものじゃない。しかし、席を移るのがどうも面倒に思われる。実際ほとんどの席はご近所の主婦らしきグループで埋まっており、移ったところで今度はやかましさに対峙する羽目に陥ることは目に見えています。でもまあこのお店が実直であまり面白みはないけれど、地元の方に重宝がられていることは良く分かったので冷たいコーヒーをグッと飲み干すと、店内よりは凌ぎやすい町へと歩み出すのでした。 この後、寄り道した食堂は翌日に回すこととし、とりあえず東村山駅に引き返します。ここからはまず国分寺線で小川駅に向かい、ここで拝島線に乗り換えます。この辺の乗り継ぎというのがややこしくて、日頃使い慣れていない者にとっては混乱するのです。でも鉄道好きというのはこれが楽しくないとホンモノではないのだろうな。ぼくのようなただひたすら列車に揺られ車窓を眺めることにのみ楽しみを見出し、乗り換えには面倒臭さばかり感じるーごく稀に変な構造の駅舎を楽しいと思ったりもするけれどーような者は、鉄道ファンですらないのかもしれません。 ともあれ、東大和市駅にて下車しました。かねてより行きたかった「珈琲専門店 シャロー」にようやく来る機会を得ました。恐らく初めて下車した駅前には、スケート場ばかりが目立ち、大きな道路が横切る味気ない町に思われましたが、少し歩いてみるとそんな通りに面して大きな古ぼけた建物のテナントとして多様な店舗が入っていて眺めて飽きさせません。じっくり散策すれば思わぬ拾い物のありそうなムードがあります。さて、目指すお店はそんな商店や飲食店の最末端の飲食系テナントビルの1階にありました。夏の日差しにそぐわぬ暗い夜のお店の印象です。実際店内もアダルトなムードが充満しており、茶のレースのカーテンから差し込むわずかばかりの光線がうちは外界とは無縁であるという強い意思表示のように思われるのです。主人もそんな店に相応しい方で昼よりも夜の仕事が似合ってそうというのは褒め言葉ですから誤解のないようにお断りしておきます。店の奥からも出入りできる構造になっていて、そちら側には別の顔を隠しているような予感もありますが、興味本位というか好奇心丸出しにするのが憚られたので大人しく入ってきた扉を開けて、元来た道を引き返すのでした。 戻りがけについ「ぽえむ」に立ち寄ってしまいます。この系列のお店は、HPを見ると全国に北は山形の酒田から沖縄まで26店舗を展開しているようで、各地のお店に入ってみましたが、いずこも別に悪くはないのだけれど、もう今後は見なかったことにしようと思うことしばしです。なのに入ってしまうのは、高円寺の店舗に好印象を受けたことが災いしているのです。特に最北端の酒田の店舗にはがっかりしたことは今でも記憶に鮮明です。 再び駅に引き返し、拝島線、国分寺線で同じ経路を逆行し、今度は新宿線で本川越方面の列車に乗り込みます。本川越駅に行く前に入曽駅で下車します。駅前の「純喫茶 コルドンブルー」にまたもアタックしますが、またもや空振りに終わります。もはや営業はしていないのでしょうか。入曽駅周辺も歩いてみたい気がしますが、次のお店が気になるので先を急ぐことにしました。
2017/02/12
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『劇場版アイカツスターズ!』 西武線スタンプラリー1日フリーきっぷというのがこの夏発売されていることを知り、これは逃すわけにはいかぬと、急遽簡単なプランを策定、翌朝には出掛けることにしました。。基本的に西武線1日乗り降り自由で900円とは渋ちんな西武鉄道としては頑張っている。池袋駅―飯能駅間がIC利用で463円だから単純にこの区間を往復するだけで元が取れてしまうのだからあくせく利用する必要もないのがうれしいところ。ただし、ちょっとだけ利用制限があって、池袋線の武蔵横手駅から西武秩父駅間と多摩川線が適用除外となっています。また、台風9号の影響で多摩湖線萩山―西武遊園地駅間も運転見合わせとなっていますが、いずれも今回のスケジュールとは重ならぬので支障ありません。 ところで、『劇場版アイカツスターズ!』とは聞き覚えも見覚えもないアニメであります。青春18きっぷには抵抗を感じないけれど、こういう企画モノのオトクな切符にはわずかだけれど抵抗を感じます。このフリーきっぷを買い求めると駅員の動作が瞬間固まるのをぼくは見逃しませんでした。差し出されたのは萌え萌えキャラの描かれるスタンプ帳とミニうちわなのでした。池袋駅では南口にスタンプが設置されていますと、駅員がこちらと極力視線を合わさないよう振舞っているのが切ないのですが、こんな些細な恥じらいでこのお得なきっぷを買う権利をみすみす見逃せるはずもないのです。ちなみに池袋、練馬、所沢、西武新宿、鷺ノ宮、田無、小川、国分寺の8駅がスタンプポイントとなっていて、9:30~17:00の間に5個以上押すと達成賞としてオリジナルシールがもらえるのであります。ぼくは今回、池袋を出着、田無で途中下車、練馬、所沢、小川で乗り換えているのでその気になればシールもらえたんだなあ。まあもらったところで処分に困ってしまいます。 まあ、駅員の視線など気にする程のものでもない。西武池袋線から豊島線に直結する電車で一気に豊島園駅にやって来ました。一軒は閉店されたようですが、駅前にもう一軒、喫茶好きにはよく知られるオンボロ喫茶がありますが、未だにやっているのは嬉しいことです。しかし今回の目的は別にあります。「原宿クリスティー 豊島園店」でマッチを入手するのが目的です。住宅街を抜けていくと不意に店が見えてきます。まだ開店したばかりのようですが、入れてもらえそうです。外観同様にこざっぱりした店内でやや薄味の印象ですが、まあ使いやすそうです。目的はマッチなのでいただくものを頂いてとっとと移動してもよいのですが、この日の一軒目なので一日の工程をおさらいしておく事にしましょう。朝一番の喫茶店を独り占めするのは、何が得した気分になるのは経験しないと分からない感覚かもしれません。一日がとても長く充実して感じられるのです。さて、勘定のついでにまつちを貰い損ねないようにせねばなりません。そして、無残に断られます。どういう事よ。そのために原宿の本店に行くのもなあ。もとよりマッチのコレクションはいくらかお荷物に化しつつあるから、と強がってみる。 練馬駅に引き返し、池袋線でひばりヶ丘駅にて下車。駅から延々と歩きました。普通にはとても歩きたい道ではないし、風景も面白いとは言えぬのです。でもやがて目的の場所が迫って来ると「食堂 信濃路」なんていい感じの店もあります。もしかするとこの界隈には古いお店が思いの外残っているのだろうか。しかし、すぐそばにあった「喫茶 軽食 カラオケ まぼ」は閉まっているし、周辺にも見るべきものは無し。虚しく元来た道を辿るのだけは避けて駅まで戻ってきました。順調に思われた一日は多難となるのだろうか。 またまた池袋線に乗車して、今度は一挙に飯能駅を目指します。飯能に行くのは十数年年振りだと思います。古い商店の立ち並ぶ町並みにはぼんやりとした記憶はあるけれど、当時は今のような物好きな趣味もなく、漫然と町を歩いていればそれで十分楽しかったのでした。当然ながら写真を撮影しようなんてことは思いもよらなかったのです。喫茶店を回り始めてからすぐに「珈琲専門店 コーヒー苑」のことを知りました。でもどうしても飯能という町に強い関心が沸き起こることもなくここまて放置してしまいましたが、酒場篇で幾分強引に紹介しようと思っている食堂の存在を知ることがなければ飯能に来る時期ももっと後のことになったかもしれません。それは翌日のお楽しみにして、まずは駅からすぐにある老舗喫茶を尋ねることにします。その期待は期待していたものを遥かに凌駕していました。唐突ですが、もし仮に自分で喫茶店をやらねばならぬ状況に陥ったとすると、目指すのはきっとこのようなお店であるはずです。キッチュな装飾に満たしてみたい欲求はあるけれど、それだけのセンスも想像力もぼくには欠如している。目指しすは正統的な王道喫茶になる事は想像に難くない。しかし、王道とはいえ誂えたばかりだと薄っぺらな印象となるはずです。そこには決定的に欠けているものがあるわけで、それこそが歴史の重みということになります。日々の掃除は勿論、破損部へのメンテナンスを絶やさず続けることでしか、店は成長しません。「コーヒー苑」は、その困難を乗り切ったからこそこれ程までの濃密さを湛えうるのだと、しばし茫然と佇み店の雰囲気と同系色の濃厚なコーヒーを啜るのでした。
2017/02/05
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ヘトヘトになりながらも何とかかんとか起床して、予定通りに鶴岡駅に辿り着くことができました。今日は最終日、適当に途中下車しながら帰京します。ただし米沢だけには、必ず途中下車するのが条件です。鶴岡駅から米沢駅に向かうには、羽越本線、陸羽西線と乗り継いで新庄駅でさらに奥羽本線に乗り継がなければなりません。新庄駅で結構長い乗り継ぎ時間があるので。当然途中下車して駅前を歩くことにします。それにしてもとんでもない暑さです。そよ風さえ吹き付けることなく、たまに吹きかかるのは人気はないのにやけに行き交う車が通り過ぎる際にかき混ぜてさらに凶暴さを増した熱気の渦だけです。 駅前には「ティールーム 山樹」など喫茶店が何軒かとちょっとユニークな食堂などが見当たりますがいずれも営業していません。日曜なので致し方ないとはいえ、この位の町の規模なら開いている喫茶店の一軒もあっておかしくなさそうなものなのに残念です。駅の周辺にはお盆前に帰省者していたらしき娘さんを見送る家族やらがいるばかりで、人の気配はほとんどありません。また、駅舎にはちらほらと人の姿がありますが、いずれもぼく同様に米沢行きの奥羽線を待ち合わせる人ばかりのようです。あまりの暑さにぼくも駅前をぐるりとひと回りすると駅に引換し、涼を求めて駅ナカを彷徨うしかないのでした。 うつらうつらする内に米沢駅に到着しました。ここでの滞在時間は限られているので、駆け足に喫茶巡りをする必要があります。ここもやはりひどい暑さですが、同じ暑さでもこちらの暑さは幾分か心地よく感じられます。それは庄内川の川風がもたらすものかは分かりませんが、時間の都合が付けば後で寄るつもりの喫茶店を横目に目指す喫茶に今にも駆け足になりそうな速度で飛ばします。川を渡す橋を駆け抜ける際に河川敷に、巨大おっ○いを目撃するのでした。昨日に鶴岡で訪ねた喫茶店の形状と酷似したーただしやや小振りー謎の物体があるのでした。山形の人はおっ○いにただならぬ興味をお持ちのようです。 さて、やって来たのは「Coffee & Snack モカ」です。到着して店の前に立ってもやってるんだかなんだかよく分からない雰囲気で、カラリと腫れ上がった空のもとにはどうも相応しからぬなと失礼にも思ってしまうのです。新庄では空振り続きだったので、ここもあまり期待せずに来たのですが何のことはないしらっとした様子で通常営業中なのはありがたい。で肝心の店内ですが正直さほど面白みのあるものではなかったわけですが、そんな見た目とは関係なしにとにかく不思議と馴染むのです。ママさんについ話し掛けてみたくなるのですが、あまり時間もないことだしここは我慢すべきと大人しくテレビに映るアッコにおまかせをぼんやりと眺めていて、少しも似てないし、第一ここまで散らかってないけれど自宅にいるような気分になるのでした。名所や珍スポットのようなものは、面白いけれどじっと佇んで眺めるとなれば、アングルことにせいぜい2、3分もすれば飽きてしまうのですが、それは見た目のユニークな喫茶店でも事情はさほど変わりません。ぼくにとっては今いるこういう店こそがじっくり腰を据えてのんびりしたいお店のようです。 慌てて取って返して駅が見えてくるとようやく一安心。時計を見るとおやおや慌て過ぎたかまだ次の列車までそれなりの時間が残されています。こんなことならもう少し寛いでいるべきだったか。行きは随分遠くて時間が経った気がしても戻りはあっという間に感じられることがあるものてす。なので駅を間近にしたいかにも駅前喫茶らしい構えの「やまびこ」に入ってみることにします。店内は、素っ気ない感じすらする飾り気のないものでしたが、しかし年季はしっかり感じられるので寒々しい感じはしません。こういう店では雪の降る季節に身を縮めて店に入り、熱いコーヒーで体を温めてみたくなります。にこやかなママさんと今日は暑いねえなどという他愛ない会話を交わしながら、このお店で何千回、いや何万回かの気候の会話が交わされたのだろうなと思うといつまでもこうした駅前喫茶には残っていてもらいたいと願わずにおれないのです。 お隣には、こんな喫茶店の残滓もありました。 さて、その先の経路を書いてみても仕方のないこと。埼玉に入るとようやく自宅に近くなったという安心感が芽生えてきます。なので東鷲宮駅に降りてみたことは、先行してる酒場篇で書いたとおりです。駅前は閑散として寂しく虚しく散策を終えて戻ってくると「cafe 茶ぽっと」という喫茶店に行き着きました。あまりにも退屈な散策だったのでガラス張りで店内丸見えでちょっと興ざめな、普段なら表から見て素通りしてしまいそうなお店です。上品なきれいなお店で特にこれといった特徴のない店でしたがこの町にはとても貴重なはずです。
2016/09/04
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JR日光線の鶴田駅からたまたま見掛けた残念な喫茶店に立ち寄った後、急いで東武伊勢崎線の江曽島駅に向かいます。やけに車通りはすごいのに人気のまるで見られぬ住宅街を抜けて駅に近付くと駅の目と鼻の先にこぢんまりした目当ての喫茶店があってちゃんと営業しています。安心すると時間も少しあったので周辺を歩いてみることにしました。駅前には呑み屋街が形成されていて、不思議なくらいに焼鳥屋さんが何軒もあります。うち何軒かは店を開けていて、盛大に煙を拭き上げておます。テイクアウトの店に見えますが、呑めるスペースがありそうにも見えます。でも暑さで汗だくなところにいかにも冷房の効かぬように見える店に入るだけの意欲は持てませんでした。今となっては悔やまれるのですけど。 さて、駅前に取って返してお邪魔したのが「ひまわり」です。こういうローカル駅では、駅前喫茶というのはぴんとこない。と言うか駅前旅館とか駅前呑み屋街とかいうのはどうも国鉄ーこの場合けしてJRではないーの駅前にこそ相応しく、比較的エリアの限定される私鉄の場合はどうもしっくりとこない。でもさすがに東武鉄道の規模になるとそれなりの存在意義も出てくるようです。そうそう関西の近鉄や愛知県を中心とした名鉄にもそんな印象があります。細長いこぢんまりとしたお店は住居も兼ねているようです。物静かなお母さんは奥の部屋で食事中だったようで、この小さな喫茶は一時ではありますがぼく一人で独占てきたのでした。奇をてらったところごないという意味では駅前喫茶らしい気兼ねしない、居心地の良さを前提に設えられているのです。でも目に入る何もかもが愛しく感じられるのは、素敵な歳のとり方をしたご老人が無性に可愛く見えるのと同様な愛らしさが店内に満ち満ちているのです。こういう愛されるべきお店は都内をはじめとした大都市の人々にとっては過ぎたる贅沢であるばかりでなく、仕事や生活すら投げ打ってしまいたくなるつまりは毒にすらなりそうです。 仙台に行く際はいつも知人宅をお訪ねします。前夜遅くに到着し、一宿一飯一杯を賜った翌早朝、一ノ関に用があるという知人にお願いし、鳴子温泉駅に落っことしてもらいます。陸羽東線、陸羽西線、羽越本線と乗り継ぎひとまず酒田駅を目指し、最終的に余目駅まで引き返して今度は乗り換えずそのまま羽越本線で鶴岡駅に向かうつもりです。そんなわけで、七時前には仙台を出発、8時半頃には鳴子温泉駅に到着しました。鉄道に詳しい方ならお分かりでしょうが、この乗り継ぎで18きっぷを使用するのは何とも贅沢なのです。ようやく元を取れる程度です。でもダイヤの疎らな東北ではあまり無茶をしては一日を列車への乗車と乗り換えに費やしかねない。そんなわけでセコいぼくですが余計な工夫はしない事にしました。 さて、こけしで知られる鳴子温泉ですが、たしかに町のそこここでお見かけすることができます。ぼくにはこけしをコレクションしようとかそれ以前に飾っておこうなんていう趣味は毛頭ないのですが、こうしてチラ見する限りはなるほど可愛いものです。ぼくも小学生の頃、確かにここへ来てこけしの絵付け体験をした記憶があります。 一軒目の喫茶店は「おかしときっさ たまごや」です。お菓子屋さんの片隅が喫茶コーナーとなっていて、その本当の片隅だけは黄色と黒の革張りの座り心地が良さそうなチェアが置かれていますが、そこは香港から来たという女性に先乗りされています。お陰でぼくは愛想のない丸テーブルで地元のご常連と相席です。ビートルズを中心に店主の趣味の品が多く飾られており、感じはいいのですが、旅の情緒は削がれます。 続いては「コーヒーハウス 純」にお邪魔しました。ここはお土産屋さんの併設喫茶。併設といってもスペースはきっちりと隔てられ、飾り気はないながらもずっと喫茶店らしい雰囲気があります。モーニングなども他のお客さんが召し上がっていましたが充実しているようです。 最後に駅前の 「まるゆ」にお邪魔するつもりがお休みです。シャッターの絵が可愛いですね。でも帰宅後調べると最近改装したらしくすっかりモダンな、つまりぼくにとっては味のないお店になったようです。残念。ということで、鳴子温泉の喫茶店はこれという収穫なく退散、酒田へと移動することにします。
2016/08/21
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ここで早くも当初のスケジュールに綻びが生じるのでした。間々田駅で二軒の喫茶店に立ち寄った後に、お隣の小山駅に下車するまでは予定通りだったのですが、本来であれば西口の未訪問の喫茶店に立ち寄るつもりが、気の迷いか東口に足を向けてしまいました。まだ時間も早いし、今のうちであればそれほどきつい思いをせずに歩けるだろうと思ったのです。これから向かうことに心変わりしたそのお店は、ぼくにはちょっと気取った感じのお店で、いつか行ければいいや程度にしか思っていなかったのです。改札を出ると慌てて地図を調べてみると市役所のちょっと先にあるらしいのでそう遠くはなさそうですし、道順も非常に分かり易いのでした。 へえ、こんなところにあったのかととある大学ーとあると書いたのは忘れたからーを通過していくとユニークな形状の遊具のある公園がありました。ここは店までの道中の真ん中くらいには到達しているとまでは近いと思っていませんでした。それがまったくの誤解でしかなく、まさかここから延々炎天下を30分近く要するとまでは思ってもいなかったのです。救いだったのは街道沿いの大きな通りで退屈するかと思いきや、案外古い酒場などの並び一画などもあり思ったより道程は楽しめますが、それも時間の関係で最短距離を歩かざるを得ないとなるとどうしても同じ道を選択せざるを得ず、まだ目的地に着いてもいないのに、戻りの憂鬱なことばかりが脳裏に浮かびます。そうこうしてようやく辿り着いたのは、「カフェ リフジ」です。緑にくるまれた洋館は自動車の往来の激しい街道沿いにあっては、ここだけが静寂に包まれたように落ち着いた雰囲気を漂わせています。しかし外観に見惚れているだけの時間はありません。いや、時刻表を確認している位の暇さえあれば先のスケジュールを調整することもできたかもしれませんが、それを検討するだけの時間すらないのは予定の立て方に問題があるのでしょう。店内は、ウッディな内装で統一されていて、けして悪くはありませんが郊外の街道端にありがちなタイプのお店でした。特に天井が高くてステンドガラスが光線をひんやりとさせてくれるのが心地よくはありますが、厳かな気分にさせてくれるほどの厳粛さがないのは物足りません。というわけで汗の引く間もなくアイスコーヒーを飲み干すとまたも小山駅までひた歩くのでした。 正午を回った頃に宇都宮駅に到着しました。東武宇都宮駅まで行く気力は残っておらずあまり歩いたことのない東口を眺めることにしました。東口をしばらく行ったところに何軒か喫茶店があったはずです。こちら側はかつてはきっと駅裏なんて呼ばれたんだろうなあという退屈な景観の町並みが広がっていました。当然、暑い中こんなところを歩きたいという気持ちにはなれませんが、こんな隙間時間でもなければ歩くこともなさそうなので、気力を振り絞って歩き出して、寂れた風俗街を抜けたりしてしばら歩いたところで、二軒の喫茶店を見つけることができました。「果林」と「カフェテラス 紙風船」。前者は、古いビルの2階のちょっと気になる雰囲気のお店でしたが、後者が一軒家であるところが気になったのでこちらに入ることにしました。店内はかつては正統派の純喫茶だったらしいことがカウンターの椅子や天井に下がる照明にその名残はありますが、基本的には勤め人のための食堂となっているようです。本当は食事をするつもりはなかったのですが、ランチはハンバーグか焼肉ですと聞かれ、焼肉でとうっかりと答えてしまうのでした。値段は800円とまあそんなもんかという程度ですが、大変混み合っていました。 JR日光線は大変乗り継ぎが悪い割には観光の足としてそれなりに使われているようで、車内は非常に混雑しています。でもぼくの乗車するのはわずか一駅だけです。次の鶴田駅で下車しますが、そこは商店すらほとんどない田舎駅なのでした。どうしてまたここで下車したのか、本当は東武宇都宮線の江曽島駅が目的地なのですが、宇都宮駅から東武宇都宮駅まで歩く気力がなかったからです。まだしも鶴田駅から江曽島駅が近く思えたのです。15分は掛かるまいという予想はここでは当たっていて、しかも江曽島駅に向かうにつれて焼鳥屋などが増えて案外歩いていて飽きさせない町でした。そんなちょうど中間位の場所に「亜珈里」という喫茶店がありました。近いとはいえカンカン照りの中を歩いてきたので朦朧としていたので、ちょうどよかった。でももし体調が万全であれば、間違いなく道路を挟んで向こう側にある食堂を選んだことでしょう。ちょっと雰囲気のある「亜珈里」の外観は、地元中学生がたむろしていたため、撮影を断念。でも入ってみたらあまり喫茶店らしい要素もなくちょっと残念。それでもへろへろになったぼくにはオアシスのように感じられたのでした。
2016/08/14
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若い頃はそれがどんなに貧乏旅行だったとしても、行き先が何度も行って新鮮さを失った町であったとしても出発の前の夜には興奮してなかなか寝付けなかったものです。それが今ではなんと感性の衰えたものか、いくら多少なりとも酒が入っていたとはいえ、ベッドに横たわるやまたたく間に眠りに落ちてしまいました。旅の前夜の眠れぬ夜の愉しみなる甘美なひと時を失ったのは非常に残念なことだし、その欠落を埋めるのはただ早起きがさほど苦ではなくなった程度の功徳しかもたらさないのはつまらない事です。さて、計画に取り掛かった段において、今回の旅は一日に一軒というのんびりペースでこれまでの東北旅行で取りこぼしていた喫茶店なり酒場なりに行ければ良いという、常にあくせくとしたぼくの普段の旅とは異質なものとするつもりです。贅沢といえばこの上なく贅沢ですが、心の底では貴重な時間をそんなに悠長に過ごしていいものかという迷いがありました。しかし、大体がこの旅のプランは当初はもっと以前に決行されているべきものであったのですが、諸々の事情でここまで引き延ばさざるを得なくなっていたのでした。だから旅行の愉しみを計画に依拠することで晴らさんとし、そのプランは相当に無理の多い、机上のプランに変貌していったのでした。長い前置きになってしまいました。今回の東北の旅の前提は、青春18きっぷを使用する、仙台と鶴岡で宿泊するという程度ので予定も気分次第でどうにでもなるから気楽なものです。 赤羽駅で通勤客の多いJR宇都宮線だったか湘南新宿ラインだかに乗り換えて、しばらくは見飽きた退屈な風景が続きます。だいたいにおいて、東北本線の車窓は単調な景色が続くのに加えて、相当乗り込んでいるのもあって退屈なのです。それでも時間を掛けてまで東北本線に乗るのは、行きそびれている喫茶店がまだあることもさることながら、端的にケチであることが理由なのは悲しいことです。だからこんな時は読書より睡眠と決め込みたいのですが、ぐっすりと眠ったせいかまんじりともできません。結局はボンヤリと虚しく車窓を眺めるうちにやがて宇都宮駅も間近の石橋駅に到着しました。ここには2度、いや3度は振られている喫茶店があったのでした。 駅の東口を出ると人通りも車通りもやけに少ないのに、やけに贅沢な歩道橋に毛が生えた程度のペデストリアンデッキがあります。それを渡ってすぐやけに風格のあるそば屋ーここもいずれ入りたいーの道路をまたいだ先の路地に「珈琲館 チェリー」があります。ここで突然ですが喫茶店の分類について考察しようかと思ったけどやめておこ。何を言いたいかというとこのお店の店主はずっと振られ続ける際に思っていたのが、男性店主のお店だと思っていたこと。店の構えを見て、そのお店が男性店主か女性店主かを想像してみることがよくあります。もちろん、もとは夫婦でやっていたのかもしれませんし、居抜きだったのかもしれぬ、そんなことは知ったこっちゃない。いや、もちろん伺いたいのですが、この自分で自分に課するクイズは案外楽しいものです。ぼくの戦歴は正確に統計を取ったわけではありませんが、3:7程度の割合で負けがこんでいるようです。ここでようやく元に戻ると、このお店は間違いなく男性店主がやっているものと思い込んでいました。しかしそれは間違っていたわけです。品の良さそうな女性店主がサイフォンでコーヒーを用意してくれます。そうか、サイフォンというこだわりが男性っぽいと思ったことが、男性店主と思わせるのだろうか。それは今後検討することにしておこう。ともかくこちらのお店はシックで落ち着いていて、駅前喫茶としての役割をずっと担ってこれるだけの良いお店でした。 続いては、上野方面に取って返して、間々田駅を目指します。間々田では本当は1軒だけ行っておけば十分だろうとの心積もりでいたのです。ところが気の迷いでスマホなんてので間々田駅近辺の喫茶を調べてしまったものだから、思いがけぬ寄り道をすることになりました。というのもちょうど今さっき開店したらしいから。 うっわ、これはたまたま店内の写真見てなけりゃ入るはずもないわ。駅の東口からすぐの「喫茶 AUDIO」は、余技としてPC教室もしている、どう考えても喫茶ファンの琴線を掻き鳴らすはずも無いお店だったのだから。でも店に入ってみるとその先入観は果たして当たっていたのか、困惑することになるのです。だって何だかデタラメで愉快なんだから。外観と内装にギャップがあることはけして珍しいものではないけれど、この無茶振りはなかなかのもの。でいながら喫茶好きのぼくの琴線までくすぐってくれるのだから、これはどう判断したものか。こういうトンデモない間抜けなことをする喫茶があるからぼくのような面白いものには目がない人間にとっては迷惑極まりないのであります。間違いなくダメなのに入ってみたら個性的極まり無いーしかもここは1970年代後半の喫茶の名残すら感じるー店は、もうあえて言ってしまうけど、今後は積極的に情報公開に努めるべきと言いたい。ジョッキにて供されるアイスコーヒーをすすりつつ、今度はここにPCを習いに来てみたくなったりするのでした。 そして西口、時刻表を調べるのがお好きな方は調べてみればすぐ分かることと思いますがこの初日の行動は相当に列車のダイヤに縛られています。気に入ったからと言ってその予定をほんの少しでも狂わすと、今後のプランすべてが瓦解するのです。だからここ「喫茶 めめ」のママさんは危険極まりない人物といえましょう。ここは何度か外観を見て、その理由はともかく女性店主がやっている駅前喫茶と思っていたので、店先の鉢植えに水やりをしているママさんの姿を見たときには素直に念願叶ったりと喝采を上げたのです。
2016/08/07
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都営新宿線沿線の喫茶店は、一日乗車券を駆使して何度もトライしているのですが、巡り合わせの悪い事がとにかく多いのです。やはり仕事もあるので行くのが土曜日ばかりというのがその敗因の主たる要因となっていることは薄々気づいているのです。だけど年齢を重ねてますます記憶力の低下が顕著となり、何度も同じことを書いてますが、記憶力の弱さというのは実はひとつの才能であって、例えば同じ喫茶店に来たとしてもそれを初めて訪れたかのような新鮮な体験として受け止めることができるのです。なんて言えば気が利いてそうですが実際そうして再びその店の客となるような店は大抵がガッカリ系のお店なので実害も伴うのでそう脳天気なことばかり言ってもおられぬのです。そんなことはまあどうでもよくて都営新宿線沿線にはぼくの行きそびれている店がホントに多いのであります。相性が悪いとかいう一言では片付けたくない位に空振り続きの店が多くて、もはや素敵な喫茶店に出会いたいなんていう初心などとっくにかなぐり捨てて、復讐戦のような気迫で店を目指すのでありました。 気迫を充填したところで駄目なものは駄目なようてす。浜町の「じゅん」は当たり前のように扉を閉ざしていますし、森下の「コーヒー&洋食 鍵」は店内を恥ずかしげもなく晒していてこれだけ観察できたならもう来るまでもないと悟るべきなんでしょうがそうもいかぬ。「喫茶店 ハヤシヤ」などはもはや閉店してしまったかのような雰囲気すら漂わせ、ぼくのことなどないもののように無視してかかっているみたいです。 でも幸いなことに菊川の「喫茶 セピア」はやっていました。たくさんのお客さんが入っていて写真もありませんが、ここは憧れていたセピア色に覆われたような黄昏の喫茶とは程遠いつい最近開店したばかりのようなこざっぱりしたお店だったのには、まあそんなもんだよなと納得はするけれど、でも店名は実体に見合ったものにして欲しいよなと思わずにおられぬのです。 たまたま見掛けた「憩」はお休みですが、ここもクラシカルなネーミングの割には新しい建物でそれほど興をくすぐられることはありませんでした。 次に入った「喫茶室 MM(エムエム)」は、謎めいた何だかよくわからん店名でありますがずっと喫茶店らしい装いで心を和ませてくれます。特段目立った装飾はなく、開店当初は定番であったであろうオーソドックスな飾り付けはむしろそれが安心感ばかりでなく、1980年代の初旬頃の標準的な喫茶店のモードを留めているようで貴重なものに感じられます。ランチ前の客が引いたひと時をぼんやりと過ごすことができました。 ところで、住吉駅から至近の「COFFEE ルノワール」はそのあまりの近さにも関わらずこれまでどういうわけだか見過ごしていました。住吉では夜の呑みで何度も訪れているので、どう考えても間違いなく店の前を通り過ぎているはずなのにこれは一体どうしたことなのでしょう。実際、灯台下暗しではないけれど、時折こういうお店があるのですね。夜になると姿をくらまし、朝になると忽然と姿を見せるようなお店が。これは逆のパターンもあって、まあ看板でしかそこがお店とは認識できない場合、その有無によりその存在が認知されたり、単なる民家と変り果てたりという程度の理由でしかないのですが、ここはどう見ても立派な構えをしているので、どうも店のオーラがまるで感じられないというのが見逃していた理由のようなのです。大体、この時も店の前を一度は素通りしていて、道路を渡った際に道の向こう側からはじめて認知できたほどなのだからそのうっかり振りも大変なものです。店内は重厚とまでは言わぬまでも正統派のシックな内装で、これほどに素敵な店に偶然とはいえ出逢えるとはやはり町は丹念に歩いてみるものです。
2016/07/31
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さて、北野駅前は思ったほどには田舎びてなくてそれなりに商店もあるので散策したい気分ですが、それは後回しにしてひとまずは1kmちょっとは歩くことになりそうな市場喫茶を目指すことにします。そこに至るまでには途中巨大な日清食品の工場があったので楽しそうな駅前通りは後にとっておき、恐らくは住宅街ばかりのコースを歩くことにしました。この工場のような障害物がなければもっと出鱈目に迂回や後退りを繰り返すので、きっと行きはオーソドックスなコースを選択するはずです。ともあれ歩いてみると小学校に中学校などがある以外はやはりほとんど住宅ばかりで、退屈です。いやいや住宅街の散策を好む一派があることは知らぬではありませんし、ぼくもかつてはいろんな住宅を眺めながら、その間取りや家族構成、そこで繰り広げられる密室殺人が絡む惨劇などを想像してみたりしたものです。そうこうするうちにそれなりの規模がある市場が見えてきました。 八王子総合卸売センターの成り立ちや役割については、ネットにいくらでも情報が出ていますのでそちらをご覧いただくこととして、ぼちぼち閉め始めている店もあるせいか少し薄暗く、それがダンジョンのような印象でなかなか楽しいのです。そんな市場の奥も奥、隅っこに「コーヒー喫茶 ワンダ」はありました。市場喫茶は一部例外はあるもののが多くはカウンター式のシンプルな造りの店が多いものですが、こちらも御多分に漏れぬごくオーソドックスなお店でした。でもこういう実用的な働く男たちー差別するわけではないですがこういう雰囲気の店は男性のそれもおっちゃんと呼ばれるタイプーに似合っていて、仕事の合間や終えた頃にさっと飲んで去っていく姿は様になっているものです。かつては駅地下なんかにもこういう店多かったんですけどねは。ママさんによるとこちらは食事が切れて、パートさんが帰ったら閉めちゃうのということですから、昼前には行っておいたほうが無難かも。 ちょっと休憩がてら多磨霊園駅まで引き返します。ここに駅前喫茶があったのは知ってはいましたがようやく訪れることができました。ロータリーに身を隠すようにひっそりと営業しているのが「喫茶 憩」です。外観は最近開店したのか以前からあるのか判別し難いありふれてお店でありました。でもぼくの好みはともかく頑張って続けていただきたいことは紛れもない本音です。ここも基本はカウンターだけのお店です。だからこれ以上語ることはありません。誤解のなきよう付け加えておきますが、面白みはないけれどこれは大事なお店です。こういう店は初めて経験する方にとっては、至極貴重な体験となるはずです。地方ばかりを転々したぼくにへ切にそれは感じられるのです。 さて、次に向かうは中河原です。雑居ビルの2階にあってなんだか愛想のない外観だった「COFFEE ぶんぶん」がかほどに楽しい店とは知りませんでした。開放的なように表からは見えて、実際に店内はガラス張りで見通しもよく、町ゆく人々の姿も眺められるのです。こういう開かれたお店が喫茶度を保持しつづけるのは並大抵のセンスではなし得ぬはず。高崎の「コンパル」と並び称するまではいかぬまでも、よくぞやってくれたと喝采を浴びせたくもなります。そしてこのお店の優れているのは、この内装であればそれなりの繊細さを磨いてさえいれば模倣ーいやあまり品の良い言い方ではないので心ある剽窃と言い換えることにしますーすることもできそうなところにありそうです。お客をもてなすための空間演出としての内装に少しのこだわりも感じられぬ今時のカフェの店主、いやオーナーとでも呼ぶべきなのか、それはどうでもいいけれど、ここに来て少しは勉強していただくのがよろしいかと老婆心ながらに思うのです。
2016/05/22
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よもや京王線井の頭線一日乗車券がこの4月1日から発売となっていたとはちっとも知らなかったぞ。これがあるのを知っていたら、この退屈極まりないGWも充実したものになったはずなのに早く教えてくれよと毒づきたくなるのです。生まれついての貧乏性のぼくには都内では京王電鉄と小田急電鉄が典型なのですが、この両電鉄の沿線は、よほど思い切らないと行けないのです。このブログを長いこと読んでくださっている方であれば容易に察することができるでしょうが、例えこれらの沿線に行ってもひと駅や二駅は当たり前のように歩いていますし、いちいち電車賃は払っていられません。時間より金を取るという隠居者のような贅沢なのかもしれませんが、ぼくにとってはやむを得ないだけの行動規範でしかありません。まあこの駅間を歩くという頑張りが思いがけぬ幸運に繋がることもあるのですが、正直言って極めて稀なことです。むしろどこまで行っても駅に辿り着けぬような場所に幸運は転がっているような気もします。 さて、それはともかくとしてせっかくの一日乗車券を入手したのだから使い倒さないと損であります。しかし、単純に乗りつぶしの旅など今のぼくにはあまり興味のないこと。単純に新宿から高尾山口までは381らしいので高尾まで往復しただけでは元は取れぬ仕掛けなのは、京王の限界か。東急はもともとが安いばかりでなく、土日限定とはいえ破格の値段で一日乗り放題なのだからその太っ腹たるや絶賛ものであります。それでも今回の京王の英断にはひとまずは快哉を表明するにしくはありません。このままでは小田急はとてもじゃないがサービス競争においてゆかれるぞと、読まれるわけでもないが、叫んでおくことにします。 乗った気もしないけれどまずは千歳烏山の「南蛮茶館」に立ち寄っておくことにします。時折見かける店名なので「コロラド」とか「珈琲館」と似たようなチェーン店かと思っていましたが、そうは店舗がないことを知りました。なので恥ずかしながらこれが初めての訪問です。二日酔いの頭を抱えながら9時すぎにのんびり到着するとすでに開店していましたが、お客さんは他にはなし。都内の喫茶店は市場喫茶以外はほぼ総じて開店が遅い。西日本の喫茶が基本的に朝方なのに対して、東日本は大抵がブランチ時間のスタート。これは基本的には朝方のぼくにはとても時間がもったいなく感じられます。っていうか早朝の喫茶店で過ごすわずかばかりの休息がどれほどの快楽をもたらすかを東日本の方は知らぬのでしょうか。そんなことはないか。まあこれはあくまて一般論で、客が来ぬから店を開かぬ、開かぬから行かぬという、鶏と卵の話に終始してしまうはず。なのでこれはそこまでって、いまは「南蛮茶館」のことを語らねば。いやいや普通に良い店です。ただし、コーヒーは気取ったお値段。100円足したら3種あるなかなか豪勢なモーニングセットに化けるのだから、普段朝食を取らず、昼食もせいぜいそばかカレーという貧弱な食生活を送るぼくですが、貧乏性という性癖も持ち合わせているので無論モーニングセットを頂きます。この先も貧乏根性が尾を引いてモーニングセットのハシゴとならぬよう注意せねばなりません。ところでこちらは個性こそ感じられぬものの、ちょいと雰囲気のいいシックなお店でした。 駅を越えてこちらは行きそびれていた「珈琲 びぃどろ」、「喫茶 宝石箱」を覗いてみることにしましたが、前者は休みのようだし、後者は開店までまだ当分待つことになりそうなのでまた次にとっておくことにします。まだまだ一日は始まったばかりですし、この先も訪れたい喫茶店も多いのでさほど気落ちせずに先に向かいます。まだまだ足取りは軽くて快調な自分に満足します。 続いては仙川駅にて下車します。この町は歩いたことはありますが、駅から出たのは初めてです。なので駅から出てもしばし見当も付かず、でも立ち止まるのが苦手なぼくはあまり駅から遠ざかるのだけは注意することにして、闇雲に歩き出します。闇雲という割には呆気なく、町の記憶を取り戻す前に目当ての「珈琲の店 彼留哩(ペルリ)」は見つかります。ビルの二階にありますね。でも看板も目立っていて、ちょっとカッコよくてあまり期待していませんでしたが、これは期待しても間違いじゃないかな。とソワソワしながら階段を上がるときの緊張感は応えられません。川島雄三の傑作「しとやかな獣」は、その興奮を見る側にもたらすというアクロバティックな試みに成功していますが、まあそこまでではないもののやはり興奮に緊張は伴走することを確認できる程度ではあります。悪くない、内装に手を掛けていない割には何とも言えぬ喫茶感があります。話は飛びますがジャズ喫茶は多くの場合、喫茶風景を喫茶巡りの楽しみとする者にとって退屈極まりないのです。でもこちらは程よく雑然としており、散らかり具合をうまく店のムードに組み込んでいるにいるように思えました。加えて好みなのが段差のある店内の造りです。視差をずらすことが如何程に気分を左右するかをこちらの店主は心得ていらっしゃるようです。お客さんのいない静かなひと時を気分良く過ごせました。頂いたマッチに1858とあるのはペリー提督のことなんでしょうね。 さて、一気に八王子と高尾に分岐する駅の北野まで移動しました。八王子総合卸売センターにある市場喫茶に行くためですが、駅を出てすぐにある雑居ビルの2階に「セピア」がありましたので、ついつい立ち寄ってしまいます。ここは駅から近いためか混み合っていたこともありますが、それよりも正直スルーしたほうが良かったなという程度のまあ平凡であまり面白みのないお店でした。市場喫茶は店仕舞いが早いので、慌ててコーヒーを嚥下して店を出たのです。
2016/05/15
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喫茶店の事など少しも好きじゃないよという方にとっては、ぼくも含めた喫茶好きの行動はとんでもなく奇矯なものに映っていることでしょう。逆に酒場巡りも傍から見ればどうしようもなく愚かしい趣味と言われることも多く、その両方を歓びとして日々実践しているぼくなどは税金を落とすばかりの馬鹿な奴でしかないのかもしれません。こう書いているとこの先にでもね、これはけして無駄な行動ではなくて、大衆文化の記録や日本文化の発信、古い店から学ぶ新たなマーケティング手法の立案に寄与しているのだよなどと言ってみたりしそうですが、そんなことにはなろうはずもなく、ただただ一時の快楽とわずかばかりの達成感に甘んじるだけかと言えばさすがにそこまで単純ではなさそうです。適当な言葉が見つからないので取り敢えずここでは冒険という言葉を使ってみます。皆が利用する飲食店に行く事のどこに冒険的要素が含まれるのか、いやそもそも冒険という言葉は本来いかなる意味を包含しているのか。と冒険についての省察に踏み込むかというとそんなことはしません。少なくとも言えることは何だかよく分からんけど当地ではこの観光地が有名だから行っておこうとか、ガイドブックで必見となっていたから見るだけ見ておこうなんていうのは、いくら喫茶店で小金を落とそうが、居酒屋で割烹並みの料金を請求されようがそれよりはずっと有意義な時間と金の使い方だと思うのです。自分の足と五感を頼りに見知らぬ町で好きな物を探し求める行動はそれだけですでに冒険的だとは思うのです。見知らぬ町を真っ白な地図だけを頼りに彷徨うだけで冒険だし、素性の知れぬ店の扉を開く瞬間の高揚感は宝箱を開けるのと同じ事のようです。開いてみるとそこに魔物が潜んでいることもありますが滅多なことで命まで奪われることもないはずです。 なので下町の情緒を残していそうで、その実案外平板な町並みの王子の町を歩いていて町外れの街角に船の舵を見つけ出した時にはこのままどこか遠くまで運び去ってくれるかも知れぬという感動と興奮を覚えました。もちろんそれは大袈裟です。でも飾り窓に舵が飾られていたのは本当のことです。お店の名前は「街角」です。これだけのささやかな情報でフリッツ・ラングとエルンスト・ルビッチを想起したといってはこれまた大袈裟に違いなさそうですが、事実、この二人の亡命の映画監督を思い出してしまったのだからしょうがない。この話に踏み込むと収拾が付かなくなるのでそこは口をつぐむことにします。いそいそと入った店内はウッディな印象でどこがどうというのではないものの、やはりどこかしら船に乗っているような雰囲気があります。静かで物寂しくでもどこか懐かしい愛すべき喫茶です。昭和44年創業の―これはネットの情報―、穏やかなママのいる素敵なお店でした。 次いで川口にやって来ました。ここは以前書いたよな、きっと。でもかつての自分の書いたのを見るのは激しい苦痛を伴うことなので、あえて再掲載を覚悟で書き込むのです。町外れの、でも住宅街ともまたちょっと違った印象の通りに唐突にこの喫茶はあります。「cafe NEW FOLKLORE(ニュー フォルクローレ)」のことで、カントリーな雰囲気もあるし、エスニックなテイストもある。何だか面倒くさい店名なので薄々察してはいたけれど、ちょいと気が向いて調べてみたらやはり英語のフォークロアが語源となっているらしい。きっとフォークロアもさらに起源を辿ることが出来そうですが、それはここでは不要であります。つまりはまあぼくの感じた第一印象に違うことなく、民俗的な某かを示す言葉のようで、ここに受けた印象はまさに店主が意図した通りのものだったようです。 いきなりオカルトな写真を載せてしまいましたが、続いては浦和駅に移動します。というのは嘘で全く別に訪れているのですが、その辺りはご勘弁を。何度か書いているのでご記憶の方がおられるやもしれませんが、ぼくは何年か仙台で過ごしたことがあり、蔵王にも何度もお釜を見に行っています。その後、何度かの引っ越しをした後に池袋西口に住むことになったのですが、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。24時間営業でトースト食べ放題の地下喫茶「蔵王」がありました。店名に惹かれ酔っ払って入ったことが何度かありました。思い出はここまでにしておき、浦和の官庁街の外れにある「蔵王」の話題に移らねば。ぼくが好きな半地下のお店です。でもそれ以上にビックリするほどのオオバコであることに驚かされます。広いっていうだけでうれしくなる。例えば池袋の「フラミンゴ」なんてちっとも味気のない社員食堂みたいなそっけなさですが、ただ広いだけでも興奮するのです。ここは多少なりとも喫茶店らしく振舞おうという意思が感じられるので、「フラミンゴ」より好きなのは言うまでもありません。 同じ日に北浦和の「自家焙煎 COFFEE HOUSE れんが 北浦和店」にも行ったようです。中山道をしばらく歩いた埼玉県庁舎そばにあります。ごく標準的な正統派の喫茶店で特別コメントすることはありませんが―店内写真も取り損なったようで思い出せないというのが実際のところですけど―、ホントはこういう店こそ通いたくなるというのはいつも言ってること。 さて、昨日たまたま王子に遊びに行ったついでに、ちゃんと歩いていなかった豊島五丁目団地とかつての名店「とん平」移転先と現況を確認しに行ったのです。潰れてますが、個人経営の漫画喫茶もありました。「とん平」は、きっと立派な銭湯のあるあの商店街に移設したと目星を立てて向かったのですが、あっけないほど簡単に見つかりました。まだ開店していませんでしたが、店の構えは以前のものとは比べようもないのであります。でも偶然見逃していた喫茶店に入ることができたのでついでに報告しておきます。ついでと書いてしまいましたが、なかなか味わいのあるお店です。平板になりそうなお店ですが、パーテーションや壁のレリーフなどをこつこつと積み上げることで全体として純喫茶風の風景を獲得するのに成功しているようです。王子駅からは遥かに遠いし、さいたま高速鉄道の王子神谷駅により近い―けど近くはない―のですがせっかくなので記録しておきます。
2016/04/24
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少しなりとも文書作法を身につけて人様に晒しても恥ずかしくない程度には己の文章力を高めることも細やかな目的として企てもしたこのブログ書きの習慣でありますが、書けど暮らせど一向に向上する気配がない。何度となく放り出してしまいたくなったものですが、根が粘着気質ということもあって投げ捨ててしまうこともできず未だに性懲りもなく駄文を世間様に露呈している次第であります。それは理由が他にもあって、世にはなんと酒場が多いのであろうか、この驚きを実践を通してつぶやき続けることにようやく喜びの欠片位は感じられるようになってきたのであります。とにかくよもやこんな場所に酒場があったのか、しかも長いこと潰れもせずに営業してこれたのは不可解極まりない、というような酒場に出会った時の興奮はいかほどのものか、ご理解くださるご同輩もおられることでしょう。ところが!、ここからが本題、喫茶店には斯様な出会い頭の幸運というのは特に関東近郊では極めて稀なことであり、東京の酒場の質量や呑み屋街のヴァリエーションの豊かさは食い倒れの町とかいう大阪や独自の食文化が花咲く町の名古屋なんかを遥かに凌駕しています。ところがこと喫茶文化に関しては、全く正反対のお寒い現状があります。こんなことは先刻承知と言われることをくどくどしく述べているのは、お察しの通り本文に書くべきことが、いっかな成長を見せぬわが文章をそれなりの分量で埋めることで有耶無耶にしてしまおうという足掻きだとご理解頂きたい。加えて無理の多い埼京線の喫茶巡りというあまり意味があると思われぬ帳尻合わせの企画で誤魔化してしまうこともお赦しください。ネタが少ないのでもしかすると既出のお店も登場することがあるかもしれませんがその点も平にご容赦願います。 さて、開き直ってやって来ましたの―最後に行ったのはもう3年以上前のことですけど―は板橋駅の東(滝野川)口を出るとちょいと良い感じのこぢんまりした呑み屋街の入口に店を構えている「カフェテラス ピコリーノ」であります。店名こそカフェテラスとこじゃれた冠を被しておられますが、その実態はというと普通に正統派の喫茶ではないですか。まあ、そんなことは表から見ただけで容易に想像できるのですが、それを言ってしまうとこの先言うべきことがなくなってしまう、そういう意味では良い雰囲気ではあるけれど、印象がボンヤリしたお店です。けれども緑色の合皮ソファが案外落ち着けて、駅前喫茶としての機能は十分果たせているようです。 これまた北赤羽駅の目と鼻の先にある「珈琲店 燕里」も駅前喫茶として派手さこそないものの、黒い合皮のソファが大人の雰囲気で鉄製のパーテーションもシックでいい感じ、非常に使い勝手が良いというまさにこの点こそが駅前喫茶の重要なポイントになるのです。お昼時ということもありますが、たいへん多くのお客さんが入っておられました。そのほとんどがランチを注文しており、いろんな食事の香りが入り混じっています。ぼくは喫茶店ではせいぜいがモーニングサービスを摂ることがある程度で、めったに食事することはないのですが、ここては誘惑に負けそうになりました。 ホントは西川口駅から行くのが順当なのですが、埼京線沿線にはあまりにもよい喫茶が少ないので無理やり埼京線の戸田公園駅の近くとして扱うことにします。「コーヒーとお食事の店 カフェ エトルア」は、駅からちょっと距離がありますが、それなりにお客さんが入っています。窓ガラスが組子状に分割されていて、単調になりそうな店内に良い具合のアクセントとなっています。ところでストリートビューで、店の印象を確認して位置を移動させてみたら、軒上に飾られたパネル状の看板の色が黄色から小豆色に変わっていることが分かります。改装できるくらいに繁盛しているということでしょうか。
2016/04/17
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正月の挨拶など読まれたくないでしょうが、今年から年賀状はびしっとやめることにしたので、その後ろめたさを誤魔化すためにもこちらであけましておめでとうございます、の挨拶をさせていただくことにしました。今年も体を壊さぬ限りはできるだけ毎日1回は更新し続けられるようせいぜい頑張るので昨年同様ご愛顧いただければ幸いです。 大晦日の昨日に続き、元旦の今日は2014年に初めて訪れた喫茶店から選りすぐりの店を一挙発表することにします。どうしても喫茶店の評価は酒場の評価と比較すると点が甘くなる傾向にあって、その理由も大体の見当は付いていますがそんなことを語っている暇はありません。ひとつはっきりしているのは、喫茶店の愉しみ方と酒場の愉しみ方を較べてみると喫茶店のそれは限定的な側面から語られることが多いのに対して、酒場の場合は多様であるように思われます。そのためネット上で流通する情報量はともかくとして、喫茶店で流布する評価は画一的であるがゆえにかなり信用に足るものが多いようです。だからこそ大外れが少ない一方でまったく未知の店と遭遇する機会が少ないのは否めないところです。それでもこれからリストアップする店の何軒かは、世間的にほぼ流布いていないものもあるようなので、多少なりとも参考になればと思います。 さて、昨年出逢った喫茶店で、真に興奮させられた店は地方都市のそればかりとなってしまいました。もとより首都圏の純喫茶の知られる喫茶店の多くにはすでに行ってしまっているということもありますので、地方が首都圏より純喫茶に恵まれているとは必ずしも限りませんが、昨年重点的に再訪もしくははじめて訪れた、衰退の一途を辿っているかに感じられる地方の中都市あるいは小都市には、誤解を承知で行ってしまうと独特の哀愁や寂寥などのはっきり言ってしまうと暗さが店のムードに独特の陰影を与えているように思われるのでした。では長い前置きはともあれ、とりわけ感銘を受けたお店を報告します。青森 「珈琲 フォーション」・「コーヒー専科 カリブ」中央弘前 「純喫茶 ルビアン」・「名曲と珈琲 ひまわり」郡山 「純喫茶 モナミ(TEA ROOM MONAMI)」足利 「食事と喫茶 富士屋」上田 「甲州屋喫茶室」来宮 「喫茶 加奈」富士宮 「コーヒーショップ らんぶる(L'ambre)」 あらら、有名店ばかりになってしまったことにいささか赤面してしまいそうです。今更これらを称揚したところで店の迷惑になるほどこのブログは読まれているわけでもないのでご勘弁いただくことにします。続いては、これに準ずるお店をリストアップします。やってみるとこれが思っていた以上にすごい軒数になってしまいました。ここでは首都圏のお店が善戦しています。ほとんどネット上では語られていないお店もそれなりにあるはずです。リンクの張られていないお店については、写真もある程度は残っているはずなのでいつか報告できればと思いますが、正直なところほとんど印象が残っていないお店もあるのでした。上野 「coffee ヤマ」有楽町 「はまの屋パーラー」新橋 「珈琲大使館 新橋店(本店)」新橋 「COFFEE 琉奈」新橋 「珈琲の店 ドリアン」北千住 「マイウェイ」中野・武蔵境 「ティルーム アモン」・「珈琲館 くすの樹」立川 「珈琲 はなや」西八王子 「珈琲舎 バンビ」板橋 「カフェテラス ピコリーノ」北赤羽 「珈琲店 燕里」戸田 「コーヒーとお食事の店 カフェ エトルア」東大宮 「珈琲 樹里」・「純喫茶 ジュリアン」久喜 「COFFEE SHOP ピッコロ」久喜 「珀欧亭」久喜 「カフェテラス ジュアン」矢向・鹿島田 「珈琲専門店 しらい 矢向店」・「ミック」仲御徒町 「六曜館 御徒町店」入谷 「喫茶・スナック 白鳥(しらとり)」葛西 「ティールーム 街角」住吉 「みどりや」御成門 「廣田珈琲店」白山 「プラス」岩本町 「グレースカフェ(GRACE Cafe)」西大島 「コーヒー店 JUN」・「純喫茶 ヤング」志木 「サイホン珈琲の店 夕月」上福岡・新河岸 「珈琲 どんぐり」・「茶房 札蘭屯(じゃらんとん)」・「喫茶 神田 珈琲園」寄居 「喫茶 木馬」押上 「純喫茶 すいれん」東向島 「純喫茶 マリーナ」竹ノ塚 「COFFEE HOUSE エリカ」草加 「サファイ・ダイナー(SAPPHIRE DINER)」小村井 「コーヒーの店 越路」小村井 「芽芽」西所沢 「COFFEE ボンボン」沼袋 「ミカドコーヒー 中野沼袋店」沼袋 「純喫茶 ザオー」下井草 「喫茶 ドール」上井草 「コーヒーとサンドイッチの店 カリーナ」新所沢 「珈琲 東京堂」入曽 「コーヒーハウス メープル」京成曳舟 「喫茶 ぽてと」鬼越 「COFFEE アリス」赤土小学校前 「珈琲専科 たうん 尾久店」高野 「喫茶 アゼリア」見沼代親水公園 「たまり」都立大学 「コーヒーショップ すぎの木」奥沢 「ドミンゴ」三軒茶屋 「喫茶 セブン(コーヒー Seven)」駒沢大学 「喫茶 芝生」・「カフェ・ド・ラ・メール」二子玉川 「ディングル(Cafe DINGLE)」九品仏 「COFFEE & PASTA ボンゴ」上野毛 「ルモンド」千鳥町 「仏蘭西亭」沼部 「喫茶 ビット(Bit)」鶴見市場 「珈琲 亜露麻」花月園前 「コーヒーショップ ココ」京急新子安・大口 「喫茶 やまぐち」・「喫茶室 鹿鳴館」・「COFFEE & RESTAURANT ロデオ」登戸 「純喫茶 十字路(coffee JUJIRO)」川崎大師 「コーヒー&軽食 Linden(りんでん)」小川 「珈琲 待夢」毛呂 「純喫茶 千種(ちぐさ)」高根木戸 「喫茶 純」葭川公園 「亜土」相模湖 「珈琲店 ほさか」 続いては、地方篇。青森 「珈琲茶館 麦藁帽子」・「喫茶店 マロン(MARRON 階上喫茶)」本八戸 「COFFEE ルーヴル(Loovre)」郡山 「スナック・喫茶 ミラノ」福島 「パン 洋菓子 喫茶 オジマ」・「珈琲 グルメ」足利 「Cafe de FURUKAWA(フルカワ)」・「コーヒーの店 はとや」小山・栃木 「Asi-na(あしーな)」・「カフェ・ドゥ・モンド」栃木 「ティティドール 洋菓子店」・「喫茶 バク(BAKU)」高崎 「喫茶 コンパル」甲府 「珈琲 カムイ」伊那市 「喫茶 ブラウン」上田 「珈琲 木の実」・「珈琲 故郷」上田 「亜羅琲珈」来宮・三島 「純喫茶 田園(DENEN)」・「純喫茶 ラポール」沼津 「ダニエル」富士宮 「eton(イートン)」 喫茶店についても、昨年の暮れに素敵な店に伺うことができたので、これも写真のみ公開します。場所と店名はここでも伏せさせていただきますが、ほとんどが純喫茶好きにとってはよく知られたお店なので伏せるまでもないのかもしれません。これらは近いうちに改めて報告させていただく予定です。 旧年は、北日本を中心に旅したことがはっきりと読み取れる結果となりました。まだまだ取りこぼしも多いのですが、今年は西日本方面になんとか出向きたいものだなあとぼんやりと企て始めています。
2015/01/01
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今回紹介する3軒で、これまで訪れているもしくは記憶しているチモトコーヒーのお店は残念ながら打ち止めです。まだまだ情報がありながら情報を入手できていない店もあるので、これからもぼちぼちと通いたいと思います。今回は、老舗ばかりが登場で目新しさはないのですが、ぜひ紹介しておきたいお店ばかりです。 1軒目は、本郷三丁目の老舗有名店「喫茶 ボンナ」です。すばらしい純喫茶の多い本郷三丁目にあっても一歩も引けを取らないほどのすばらしいお店です。入ってすぐはいくらかコーヒーショップっぽさも感じられなくもありませんが、奥深く進むにつれそのいかにも平凡そうな装いが一転し、パースペクティブが狂ったかのようなめまいさえ感じます。ウッディな天井、壁と床、黒い革張りのソファが一定間隔に取り付けられたぶっきら棒なようでありながら厳密な計算によって取り付けられた電球が奥の鏡張りの壁に映って、なんとも眩惑的な空間となっているのでした。喫茶店好きならよもや避けて通ることはないでしょうが、もし外見から平凡であると思い込んでしまってまだ訪ねていない方にはぜひとも嘘だと思って入ってもらいたいのでした。 ここからの2軒は、チモトコーヒーを扱っていることはさておいても、もっとも好きな喫茶店の一軒です。保土ヶ谷駅の東海道側の通りには古めかしいアーケードの商店街が細々と商売を続けていますが、そんな商店街でさりげない構えで営業しているのが「喫茶 トロンボ」です。錆びて朽ち落ちそうになったアーケードには愉快な字体で店名が記された看板が下がり、古い商店街ならではの風情にすでにしてここは間違いなくすばらしい喫茶店であると予感します。半地下というのは我ながら無理があるなあと思わなくもありませんが、数段の段差を降りると思ったよりも広い店内です。微妙な色合いの縦じまの入ったシックでいながらどこか洒落たソファはとてもしっくりとします。近所の常連さんが店主に手土産を持ってきて、店主は気を使わないでよ、とても食べきれないよと言いつつもこうして地元の人たちと付き合いを持てることに喜んでいることが言葉の端々から滲み出ているように思われました。こんな喫茶店がどこの町にも残っていて欲しいものです。 そして、浅草橋の「喫茶 ゆうらく(有楽)」。この映画でも使用されたという有名な喫茶店について今更語るべきことはさほど残されていません。とにかく喫茶店が好きであれば避けては通れないお店に違いありません。ただひとつだけ備忘のために書いておくとすれば、このお店の多様なソファの中に「トロンボ」で見た個性的なソファとそっくりな柄のものがあったということです。 さて、最近行ったとある喫茶店があります。大手町のとあるビルの地下に入った昭和41年創業創業の近隣では最古参の喫茶店ということです。そばのやはり巨大ビルの地下に支店があるようです。ビルの地下街もこの喫茶店も改装されているようでとてもきれいではありますが、それなりに純喫茶ムードもあるのですが、いかんせん女主人の応接の無礼さに不快感ばかりが募ります。信用していたチモトコーヒー取扱店でこのような喫茶店があるのはとても残念でした。 さて,今回でようやくこのシリーズも終了となりますが,現在把握しているだけでもまだ以下の未訪店があります。今後もぼちぼちと探索の範囲を広げていく予定です。驚くほどの良店と出会えた際にはまた改めて続編を載せたいと思います。ひとまず長い間お付き合いいただきありがとうございました。府中本町「珈琲 トップ(珈琲専科)」浅草「喫茶 パンサー」人形町「珈琲の店 都亜」五反野「喫茶店 ヌウ」草加「喫茶 マロニエ」八王子「珈琲専門店 憩」自由が丘「ギャラリー&喫茶 あ(珈琲の店 あ)」立会川「珈琲 スマトラ」糀谷「喫茶 スナック 美樹(COFFEE MiKi)」飯能「珈琲専門店 コーヒー苑」
2013/09/01
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チモトコーヒーの豆を使った喫茶店紹介もすでに4回目、いよいよ佳境に入ってきました。純喫茶の純度はますますレベルアップしているはずです。 最初にご紹介するのは、上板橋の「喫茶 静」です。駅北口の商店街を進むとさり気ない構えでありながらもどこかして危険なオーラを放っていて、足を踏み入れるのにいささかの躊躇を感じざるを得ません。置き看板や吊り看板のチモト3人組の愉快なキャラクターに後押しされて入店します。クリーム色の合皮のソファはひとり客用を想定された配置が多くなされており、客たちはひとりでの利用がメインとなっているようです。客層はけっこうなハードボイルド感を呈しており、ひとり酒を呑むオヤジたちの無言のプレッシャーへの耐性がない方にとってはかなり居心地悪く感じられるかもしれません。夕方に訪れたためこのような状況であったのかもしれません。落ち着いて店の雰囲気を楽しむのであれば日中に訪れるのがベターかもしれません。 有楽町の東京交通会館地下にあるカウンター喫茶「阿蘇(ASO)」はよく知られています。カウンター喫茶らしくお客さんは多種多様です。交通会館の名所となっている各地のアンテナショップを訪ね歩き一憩に興じるおばさんたち、汗を拭き拭き慌ただしくコーヒーを呑むサラリーマンなど人々を観察するだけでも楽しいお店です。かつては東京でも数多くあったのでしょうが、いまではコーヒーショップにその役割を譲り渡してしまった感のあるカウンター喫茶の楽しさを「阿蘇」では存分に楽しむことができます。 大森駅周辺にはいくつかのすばらしい喫茶店がありますが、とりわけ懐古的な気分を満足させてくれるのが「純喫茶 モナリザ」です。哀愁さえ漂わすその魅力的な構えはとにかく入らざるを得ないでしょう。ところがこれまで何度かトライしながらも繰り返し振られ続けました。ようやく入れたその日も真昼間であったにも関わらず、シャッターは半分閉じられており、中から高齢の店主が出てきてどこかに立ち去ってしまったことを覚えています。やむを得ずほかの喫茶店で時間を調整し再度訪れることにしました。幸いにも店は開いていてようやく入店が叶ったのでした。ぐっと照明の落とされた店内にはお客さんもおらず幸か不幸か存分に店を堪能することができました。 大塚の「コーヒー いちこし」は外観を見ただけでここは間違いないなと予想させてくれる何かがあります。閉店時間が早くなかなか入店が叶わなく何度もくやしい思いをしたものですが、多少の苦労をするだけの甲斐がありました。茶のシックなソファにさとカラフルな青と白の壁に草木の緑が混じりあい、さらにさ、幾何学的なパーテーション壁とキッチュな形状のプラスチックパネル、さらにヴァリエーション豊かな照明の数々など、何度訪れても飽きさせない装飾が随所にちりばめられていて、そのギミックの豊富さには驚愕させられます。優良店の数多い大塚でも最強の一軒です。
2013/08/11
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これまで2回にわたって紹介してきた喫茶店はちょっと純喫茶としての純度が低いことであるなあと思われたことでしょうが、これから一気に純喫茶度が高まります。 と大袈裟に騒ぎ立ててはみたものの、一軒目は純喫茶としての純度の度合いはさほど高くはないように思われます。なのになぜゆえにここで取り上げたかというと喫茶店どころかあらゆる店舗自体が過疎状況にある田端という土地柄において、地元密着型の愛されるべき喫茶店の典型としてぜひとも紹介しておきたかったからであります。とにかく地元の常連さんたちが老若男女を問わず、途切れることなしに来店し、しかもすごいことに見事なまでのタイミングの良さの入れ替わりを見せてくれるのです。見事なリレー競技のバトントスのような円滑かつ繊細なその様子は見ていて感動すら覚えます(嘘)。外観はオーソドックスでもっとも堅実な典型的な正統派のクラシックアメリカンスタイルで、むしろトーアコーヒー系の系譜に連なるタイプですが、店内はやや残念なことにいくらか純度が低く感じられます。むしろ特筆すべきはサンドイッチやデザートなどのサイドメニューの豊富さとその立派さです。ぜひお試しあれ、と人に勧める割には自分は食べていないのですが、お客さんたちの満足げな様子を眺めるに間違いはなさそうです。おっと書き忘れるところでしたが田端から徒歩10分弱、明治通りそばの「テラス」でした。 かつてうんざりするくらいに頻繁に通った京橋、目的はもちろんフィルムセンターで映画を見るためであり、当時は京橋はあくまで映画を見る場所であって、酒やコーヒーを呑む場所ではさらさらなく、ひたすら列を作っては争うように席を確保してほっとしてくたびれ果てては映画を眺めるばかりでした。上映の合間も近所のコーヒーショップに入って、知人たちと会話を交わしながらも常に次の上映時間を気にかけて時計ばかり眺めてのんびりと喫茶時間を楽しむこともなくそわそわと時を過ごしたものです。まさかそのすぐそばの裏手の路地にコーヒーを楽しむためのくつろぎの場所があるなんてまったく知らずに過ごしていたのでした。店の名は宝町「コーヒーを楽しむ店 ばらーど」です。細い階段を上がるとこじんまりとしていながら、ひとりでも誰かと一緒でもゆったりと時間を過ごせる空間が待っているのでした。やはり細長い店内がプライベートな居場所とすることに機能しているようです。今では京橋には数多くの喫茶店があることを知っていますが、かつてあくせくと映画を追っかけてばかりおらず、こうした喫茶店でゆったりとひとときを送っていればもっと多くのすばらしい喫茶店に出逢えたのではないかと少し悔やまれるのでした。 東武東上線沿線の各駅には数こそ多くはないものの好ましい喫茶店がまだまだ残されています。「TEE & COFFEE 英梨座」もそんな一軒です。ここもキッチュな雰囲気など微塵もない正統派の喫茶店です。常にお客さんが途切れることなく入っているようで、そのためもあってか年末年始も休まず営業しているとおっしゃっていたように記憶します。このお店の隠れた名物はこれまた記憶があやふやなのですが、ブランデーを大量にまぶしたかき氷(だったはずですが、自信なし)が秘かな人気商品のようです。暮れも差し迫った時期に若い女性がひとり訪れては寒風吹き荒れる中そっとこのかき氷を顔を真っ赤に染めながら食べていくこともしばしば見られるようです。ぼくも暮れの時期そんな若い女性を眺めに出向いてみたいものです。 東武東上線に劣らず伊勢崎線沿線も各駅に渋い喫茶店が残っています。五反野駅は駅から至近に良店が多い喫茶店好きには避けて通れない町ですが、飛び切りの渋さを見せる、二軒のうちソフトクリームを店先で販売していた「純喫茶 ブリッヂ」は残念なことに今では店を閉めてしまったもののもう一軒の「珈琲 あかしや」はまだ健在です。正直、前者の店内のすばらしさは後者を圧倒するものの、軒先に吊られたチモトコーヒーのすてきな釣り看板は寡聞にも他では目にしたことがありません。かなりくたびれた薄暗い店内で恐ろしくくたびれたおばあさんが出迎えてくれます。しかしそのおばあさんの丁寧に淹れてくれるコーヒーのおいしさは良質なチモトコーヒーの豆だけがもたらすものではなさそうです。 ということで今回はここまでにします。喫茶店に興味のない方にはうんざりかもしれませんが、このシリーズ、最低あと2回は続くことになりそうです。こういう店に興味がある人もいるんだなという位の軽い気持ちでしばしお付き合いいただければと思います。
2013/08/04
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以前、「喫茶室 ルノアール 新小岩店」の関連でゆっくり時間を掛けて回ってみたいと言っていたのですが、この夏になって急にいてもたってもいられなくなり、怒涛の勢いで残り4店舗を駆け足で回ってきました。うっかり閉店していると思い込んでいた神田淡路町店がまつめさんから今でも営業しているとの情報をいただき、うかうかしている間に閉店してしまってはこりゃ溜まらん、なるべく早く行ってみようと思い直したのでした。 まず訪れたのは恵比寿です。2店舗を一挙に回れるので効率がいいと考えるのは喫茶店好きの風上にも置けない考え方ではありものの、今すぐ見たい、浸りたいという欲求は抑えきれないのでした。勢い込んで向かった1軒目は、「喫茶室 ルノアール 恵比寿第1店」であります。ここは何度も通過していて、その存在ははっきりと認知していたのですが、立ち寄らねばならないといった差し迫った魅力にはまったく事欠いており、敬遠とまでは言わないまでもまるで存在すらないかのように無視してきたのでした。そして訪れてみて、店の前からわずかに窺える店内を眺めるにつけ、やはり無視しておいてもよいのではないかと感じはしたもののせっかくだからと立ち寄ったのでした。そしてやはり立ち寄らなくてもよかったのではないかという気分だけを引き摺って店を後にしたのでした。 せっかくなので、「白十字」、「銀座」、「珈琲家族」と続く古い喫茶店のある道を眺めながらこれからどうするかを考えようかと思いすぐそばの「白十字」の前に立ったところ、店の扉には閉店の張り紙があります。なんということか、つい先だってまではちゃんと営業していたのに。こうなるともはや寄り道などしておられず、急ぎ足で「喫茶室 ルノアール 恵比寿東口店」に向かったのでした。 よかった、ちゃんと営業しています。こちらの店内はガラス張りで外から丸見えであるので入らずとも想像は付きます。それでも店内では何事が素敵なことが待っているのではなかろうかとやはり入ることにします。外から見た通りでした。入り口付近はカフェ風の大テーブルがあり、巨大な観葉植物があります。奥はぐっと純喫茶度を高めて赤いベルベット張りのソファーがあります。むろんベルベットのソファに着きます。目の前に男女を区別する赤と青のマークがあって、どうやら店のど真ん中に便所があるようです。これはちょっと愉快ですが愉快であるという以外の感慨をもたらすものではないようです。客たちはいずれもスマホをいじってたらこスパゲッティをすすったり、黙々とパソコンのキーを叩いたり、お喋りに興じたりと、喫茶店巡りを楽しむ人らしき姿はまるきり見受けられません。辺りをきょろきょろ窺っているぼくなどはかなりの不審人物に見えたかもしれません。 丸ノ内線の淡路町駅を出るとすぐに「喫茶室 ルノアール 神田淡路町店」の看板が目に留まります。入口を入るとガラス張りの陳列ケースがあって期待は高まります。店は地下にあるようです。地下に続く階段を下り店に入るとかなりの広さの店内が見渡せます。右側の壁面は障子風の照明になっており、ほどよく暗い環境が心地よいのかゆったりと低く広いソファで昼寝しているおっさんもいるようです。左手にはカフェ風の一角とソファスペース、奥には大きな丸いテーブルがあり、巨大なことが取り柄でもなかろうと思わせる大きな絵が飾られています。この左右のスペースの間の柱にはルノワールの絵画も控えめに飾られています。う~ん、いかにも昔のオオバコ喫茶らしくて悪くないんだけど、これといって特筆すべきほどの魅力には欠けるかもしれません。おじさんの昼間の隠れ家といったところでしょうか。 最後のお楽しみにとっておいたのが、「喫茶室 ルノアール 吉祥寺店」です。かなりの期待をもって出向きました。「ゆりあぺむぺる」のほぼお向かいの2階にあります。店を入って左右で趣が異なるのは神田淡路町店と同様。かなり細長い造りのオオバコとなっており、右手には箱庭があるので当然こちらに進みます。さらに奥に進むと予約席の札が置かれた席が並びます。大人数向けの丸いソファが味わいがあります。なぜか閃くものがありアイスコーヒーをお願いしました。するとおやおや、吉祥寺店ではトーアコーヒーの豆を使っているようです。コースターにはお馴染みのメキシカンハットのおじさんが微笑んでいます。確かに吉祥寺店はなかなかいい雰囲気です。が、ここもまたちょっと物足りなさを感じるのはぜいたくというものでしょうか。その物足りなさは恐らく健全さにあるように感じられます。吉祥寺店は客層が案外若いせいか、どことなく明るさを感じるのでした。そう、神田淡路町店のおっさん臭い雰囲気と吉祥寺店のどことなくゴージャスな気配を合わせると新小岩店の素敵さに行き着くのかもしれません。 本家のチェーン系のルノアールにも渋い雰囲気の店舗は残されているのでしょうか。とある純喫茶ブログを見ているとなかなかよさそうなルノアールがあることがわかりますが、今でも営業しているのでしょうか。今後の課題がまた増えてしまいそうです。
2013/07/28
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さて,チモトコーヒー系列の喫茶店は各地に散らばっています。今回は錦糸町,浅草橋,日暮里,吉祥寺の喫茶店を紹介します。前回はあまりムードのない喫茶店が多かったのですが,今回から徐々にグレードアップしていきます。 錦糸町は,ギャンブル客たちの溜り場が多く,内装などはなかなか良いムードであっても,客層があまり良くなくてくつろぎにくい店も多いのですが,ここ「coffee マウンテン」は,競馬中継も流れておらず,比較的くつろげる2階建てのお店です。調度品や内装はシンプルで面白味がないと言えばそのとおりですが,まずまず過ごしやすいのが錦糸町にあっては貴重に思われます。ただし,空調の利きが悪いので夏場にはあまりお勧めできません。 続いては,喫茶店の密集地帯,浅草橋の「MON CHER(モン シェル)」です。一言でいえばサンドイッチパーラーという呼び方がぴったりです。パーラーらしくピンクと白が基調の可愛らしいお店です。サンドイッチは食べなかったので,その味については何も申し上げる資格がありませんが,ほかのお客さんのご様子を眺めているとぼくも注文したくなったことを申し添えておきます。 日暮里の「珈琲 乱歩゜」は,乱歩という固有名詞が想像させるおどろおどろした猟奇性は壁に貼られる,エロティックな漫画などに表れておりますが,そうした貼物から注意をそらせば,シックな色調で統一された,オーソドックスで正統的な喫茶店です。日暮里の辺りは存外喫茶店が少ないので,普通の喫茶店として利用するのに適しています。 吉祥寺の「ゆりあぺむぺる」は,喫茶店が数多くある吉祥寺でもトップクラスの有名店です。改めて紹介するまでもないのかもしれませんが,チモトコーヒーとの関連はあまり語られることはありません。このクラスになるとかなり喫茶店らしい情緒を味わえて,これまでの3軒と比べるのが申し訳ないほどです。家具や装飾品の数々は,いずれもユニークでついつい店内をきょろきょろと見渡してしまいます。とは言っても場所柄もあるのでしょうが,若いグループ客が多いので,かなり騒々しくて喫茶店の美徳であるべき静けさとは無縁なのが残念なところ。
2013/07/21
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珈琲豆店に着目した喫茶店巡りの第2弾は、チモトコーヒーにすることはすでに予告させていただきました。どうしてチモトを取り上げたかというと、こちらの豆を使ったコーヒーがおいしいことはもちろんのこと何よりキャラクターの愉快さで抜きんでているからに他なりません。さらにはトーアコーヒーほどは一貫したスタイルをもっているわけではありませんが、チモトコーヒーの豆を使った喫茶店には、愛さずにはいられない素敵な店が数多くあります。と言いながら肝心の店に行きそびれていたり、すでに行っていてもぼんやりしていて見過ごしたところもまだまだたくさんありそうなので、お気づきの方がおられましたらご紹介、修正をお願いします。ちなみにチモトコーヒーであることの確認はあくまで看板頼りの資格情報だけが根拠であり、自分の味覚・嗅覚によるものでないことを念のためお断りしておきます。 まず最初に先ほどからしつこい位繰り返し登場するチモトコーヒーってどんな店だか紹介させていただきます。(なお、詳しい情報はチモトコーヒーのHPをご覧ください。) 同社は、昭和2年創業者の芝原耕平氏が四ツ谷でコーヒーの卸業を始めたことに端を発しています。昭和47年には静岡県に工場を設立し、事業を拡大します。本社は東京の池上にあり、支店及び営業所は、名古屋、松本、浜松、小浜、大阪、鹿児島と全国に分散し、札幌にあるという代理店を含めるとほぼ全国をカバーしている大手のコーヒー豆卸売店であり、業務用だけでなく家庭用のコーヒーも取り扱っています。このように長い歴史と広範な地域で営業展開していながら、キーコーヒーやUCCコーヒーなどの超大手に比較すると町で見掛ける頻度はぐっと低い印象を受けます。 まったく本社が池上にあることを知らずに散策を楽しんでいたところ、偶然にも本社前を通過することになりました。そばの駐車場には喫茶ファンにはお馴染みの愉快なキャラクター、ソンブレロっていうんでしょうか、南米でよく被られている山の高い帽子にポンチョ姿のおっさん、頭上の洗面器みたいな入れ物にコーヒー豆をあふれさせているおっさん、上半身裸の間抜け面の若者(?)の3人組が描かれた営業車が駐車していました。また、販売促進用なのか、商品として販売されているのか存じ上げないのですが、コースターや紙オシボリなんかを出してくれるお店もあります。この写真をご覧になられて、ああ、このキャラクター見覚えあると思われた方もいらっしゃるかもしれません。 では、チモトコーヒーの本拠地のすぐそばにある喫茶店から紹介させていただきます。しばらくこのシリーズは続いてしまうこととなりそうですが、徐々に純喫茶度を高めていくつもりなので、はじめのうちはカフェみたいな店が多くなりますが、ご勘弁をいただければありがたいことです。 さて、東急池上線はあまり利用する機会のない電車です。五反田・蒲田の始発・終着駅以外では、日蓮宗の本山である池上本門寺があるというのが理由というわけではありませんが、池上駅ではちょくちょく下車したことがあるもののじっくり歩いたことはありませんでした。池上本門寺からほどない距離の場所にチモトコーヒー本社とさらに駅から近い本門寺門前からすぐの場所にチモトコーヒーの看板を出す「喫茶 コボちゃん」があったことに初めて気が付きました。この緑が基調色となった置き看板が典型的なものです。今後、いくつかのヴァリエーションが登場しますので興味のある方はご注意ください。残念ながらお店は町場の喫茶店らしい気取らぬオーソドックスなタイプでとびきりムードがあるわけではありません。でも気になるのはこの店名、店内には同名のマンガ本がしっかりと並んでいて、やはり店名はここから来ているようですが、訪ねるのが面倒なほどにお客さんが入っていたので遠慮しました。マッチもあって、そのデザインには期待したのですが、絵のないごくごくシンプルなマッチだったのが残念。ただし、お食事メニューが充実しているので本門寺散策の際に立ち寄るにはお手軽なお店だと感じました。 続いての二軒は、足立区の長い歴史がありながら最近改装を行ったため、すっかり今どきのカフェ風になってしまった残念なお店です。北千住「Cafe アロハ」は食べログによると40年以上の歴史があり、五反野「マロニエ」は1964年創業ということなのでほぼ50年近くお店を続けられているようです。前者はハワイアンテイストのカフェとして営業しており、値段も安くお食事系もボリュームがあっておいしい。後者では生ビールなんて頼んでしまいましたが、グラスとはいえ300円でエビスの生であれば文句なし、50円のお通し代も取られていたようですけど。というわけで食べるものや飲み物はお得で良心的なのですが、わざわざ足を運ぶには決め手に欠くのでした。 次回は、純喫茶レベルがちょっと上昇。それどころか、こんなにさっさとこの喫茶店を出しちゃって大丈夫なのかという有名店も登場予定です。
2013/07/14
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さて,いよいよおいしいトーアコーヒーの豆で淹れたコーヒーを楽しめるすばらしい純喫茶を御覧いただくことにします。といってもその喫茶店がどこのコーヒー豆を使ってるかなんて伺うこともありませんし,看板すべてをチェックして記憶しているわけでもありませんので,残念ながらわずか5軒だけ。それでも十分にその個性は感じ取っていただけるのではないかと確信しています。では,トーアコーヒーテイストの薄い店から徐々に濃厚な店に沿ってご紹介です。 まずは,東銀座の「ばじりこ」です。東銀座から築地にかけては,都内でも有数の喫茶店密集地のひとつだと思います。しかも土地の相場から高級志向というイメージを持たれがちですが実はコーヒー単価は都内の相場よりはるかに安い喫茶店が数多いのも特徴です。そんな喫茶店激戦地の中にあって,「ばじりこ」は,トーアコーヒーの喫茶店に特徴づけられる多くの要素を併せ持っており,銀座にあってはことの他贅沢な空間になっています。衝立や壁面の装飾品などいくつかの要素こそ希薄ですが,センス良い調和のとれた店内となっています。 続いては,北品川の「珈琲専門店 カフェ ムジカ」です。よく知られた喫茶店なので御存じの方も多いと思います。茶色の内照看板,木彫りの「世界の珈琲を愉しみましょう」看板,木製の本日のサービスコーヒーの掛札,額装された「かぅひい異名熟字一覧」,コーヒー農家たちを描いた木製レリーフ,コーヒー豆を嵌め込んだカフェテーブル,木製の革張りの椅子などなどの茶系統の特徴的なアイテムがほぼ遺漏なく揃っており,それを褐色の温かくノスタルジックなランプ風照明が照らし出すさまはまさにトーアコーヒーの喫茶店ならではです。駅前という好立地もあり店内はいつも大勢のお客さんで賑わっています。帰宅までのひとときの休息には最適で,いくらか慌ただしい雰囲気も駅前喫茶らしく思われます。 「ムジカ」よりは幾分こじんまりとしていながら,トーコーヒー色の濃密さでは上回っていると思われる喫茶店が東武東上線沿線に2軒あります。中板橋の「珈琲専門店 ダックス」とときわ台の「珈琲屋 珈夢居」がそれです。どちらも駅からは5分程度離れた商店街の外れにあるため,ご近所の方が帰宅前にちょっとした時間潰しのために訪れています。この2軒の「ムジカ」との大きな違いは,店主と客との距離が近いことにあり,常連さんがカウンターで店主と話し込む姿が印象的です。 トーアコーヒー系喫茶店の特徴を完備しつつオオバコ的要素を併せ持つのが高円寺の「珈琲専門店 ボニー(BONY)」です。あらゆるニーズに対応できる多様なレイアウトの客席造りは,整然とした型に嵌った配置になりがちな他店とは一線を画しています。ひとりでくつろぐもよし,大勢で楽しく語らうのもよしと使い勝手の良さが特徴です。広い喫茶店にありがちな効率を優先させるあまり無理に席数を増やすような無粋さとは無縁です。残念なことに唯一というかちょっと大きな課題があって,トイレなどのアメニティ面に手入れが行き届いていないように感じられました。 さて,トーアコーヒーの喫茶店とは確認できているわけではありませんが,他にも同じ出自を持つのではないかと推測している店は何軒か思い浮かびます。代々木「珈琲専門店 TOM」や十条「COFFEE SHOP CHAIN Swing(スヰング)」,柏の「純喫茶コンパル」を今思いついたのですが,この2店もトーアコーヒーと関連があるのでしょうか。
2013/06/23
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本来であればトーアコーヒー直営店から始めるべきところですが、悔しいことに直営店は、門前仲町の「珈琲専門店 東亜」、「カフェ 東亜サプライ」を訪れているだけで、東松原の「東亜コーヒーショップ 松原店」はまだ訪問できていませんし、荏原中延の「珈琲専門店 東亜」は閉店して久しく、ようやく機会を見つけて出向いた京急蒲田の「珈琲専門店 東亜」もまた駅前再開発の波に逆らうことができなかったのかいつの間にやら店を畳まれてしまったようです。無念ではありますが、これが時代の趨勢というもの、悔やんでいる暇はなさそうです。とりあえずは門前仲町駅から直結の御本家だけでもご紹介しておくことにします。1階がコーヒー豆やコーヒー関連商品の販売とカウンターのコーヒーショップ、2階がまさにトーアコーヒーらしい意匠を凝らした純喫茶となっているのですが、純喫茶という響きが匂わせる緊張感とは程遠い充実した食事メニューが揃ったとても寛げる空間となっています。居心地が良すぎて日がな一日ここで過ごす方がいてもおかしくなさそう。広い店内からは門前仲町を行き交う人々の流れが望まれついつい人間ウォッチングなんぞにうつつを抜かしてしまいます。 さて、ここで縁薄い直営店から離れることにします。この2店についてはあまりにも身近過ぎて写真の1枚も撮影していないのでした。一軒目は、常に喧騒に包まれる街、渋谷の片隅に例外的にひっそりと静まり返った地に、身を隠すように営業を続ける「珈琲専門店 論」です。昭和48年の開店ということですから40年近い歴史を渋谷で刻んできているのは、日々変化し続ける街、渋谷では「ライオン」には叶わぬまでも、数少ない老舗店と言ってもよさそうです。ここではっきりと言ってしまうと正直トーアコーヒー系列の喫茶店としては、装飾などの点で他店よりもかなり純喫茶色が薄いのは否めぬ事実です。どちらかというとこの喫茶店が仮に渋谷という土地にあるのでなければ見向きさえしなかったかもしれないほどに平凡な喫茶店と言えるかもしれません。それが渋谷にあるというだけで貴重な場所と思えるなんて、評価がいかに恣意的なものであるかの証左ともいえそうなほどです。しかしいかに装飾が過小とは言えども日の光の入らぬかと言って暗いわけではない店内は、眩すぎる日差しを避けて逃げ込む場所として確保しておきたい店です。若干辛口めいた言いようになりましたが、そうは読み取れなかったかもしれませんが好きな喫茶店です。ちゃんとマッチが用意されているのもうれしいことです。 続いては、目白の唯一無二の純喫茶といっても言い過ぎではないと思われる「珈琲 伴茶夢」です。こちらもトーアコーヒーらしさがやや希薄ではあるものの、その茶色に彩られた店内風景はすぐとトーアコーヒーのお店だなと判別できるでしょう。次回登場予定の5店舗のまるで五つ子のような似通い方に比較するといくらか物足りなさを感じられる方も多いと思われますが、それは目白という土地柄にあってはこの1軒があるだけでも有難いことだと感謝の念を持たれることをお勧めします。このような貴重な空間ということもあって、店内はいつも盛況です。学習院大学のお膝元ということもあり、お客さんには同大の学生を始め、教員を含めた関係者らしき方たちもおられるようで、お喋りの内容は手に取られている書物が高尚なものに感じられます。これが錦糸町辺りの喫茶店であれば、話題は競馬、読むのは男性週刊誌といった辺りが定番であることと比べると「伴茶夢」やはり上品です。猥雑な楽しさというのがあることはよく分かりますが、それも程度問題でやはりゆったりくつろぐには、競馬で勝った負けたのという話題を聞いているよりは、文学論を戦わせているのを耳にするほうがオーヒーもおいしくなろうというものです。 これだけだと情報としてもいささか物足りなく感じられると思いますので、まだ未訪問ながらトーアコーヒーを使用しているという純喫茶をお知らせしておきます。まずは、銀座にあるという「珈琲 蕃 銀座店」です。トーアコーヒーのお店というのはどちらかと言えば都心よりもむしろ住宅街があるような周縁部にこそ似つかわしいと常々感じているもののこちらと次回登場予定のお店は何の違和感もなく銀座の街に溶け込んでいるようで、「蕃」などは写真で見ただけでもこれは間違いなくトーアコーヒーのお店であるなと見抜けるほどです。こうして他WEBページで紹介されている写真を眺めているだけで今すぐにでも訪れてみたいという気持ちがふつふつ湧いてくるのでした。 もう1軒、八幡山「喫茶 ルポーゼ すぎ」はホットケーキと分厚いベーコンエッグサンドで知られるお店。ネット上で公開されている現在の店舗は、純喫茶らしい佇まいはすっかり失われており、お邪魔するのはいつのことになるのやら。でもトーアコーヒーを愛する者としては、必ずや訪れたいと思っています。
2013/06/16
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喫茶店を巡っているうちに気になりだしたのが,主にスタンド看板に店名と併記された各店で使用されているコーヒー店のロゴマークです(宣伝看板として各喫茶店にコーヒー店が)。そんなのは喫茶店好きには周知のことですし,立派なデータベースをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。このスタンド看板は,歴史のある居酒屋や酒屋さんで時折見掛ける酒蔵メーカーから進呈される扁額のようなものなのでしょう。今では,できる限り取扱うコーヒーメーカーをメモするようにしていますが,過去訪れた店については,きっちり写真を撮っていれば今からでもチェックできるのでしょうが,生来の不精さ故にかなり多くの未撮影店もありますし,第一それをチェックするのははなはだ面倒です。 あまりあてにはならない自分の記憶から掘り下げると東京でしばしば見かけるのは,「株式会社 アートコーヒー」,「キーコーヒー株式会社」,「UCC COFFEE」といった辺りでしょうか。最近は,「パウリスタ」(日東珈琲株式会社が運営しているようです)などもたびたび見かけるようになりました。全日本コーヒー商工組合連合会のHPによると同会への加入団体は,「組合会員313社・賛助会員207社」とあり,日本の喫茶店の多くは,同HPに掲載されているこれら会員となっている業者から仕入れたコーヒー豆を使っているのでしょう。 居酒屋業界でいう宣伝酒場(酒造会社が自社の販売する銘柄のお酒を普及させるための直営店)に当たる宣伝喫茶店も多くあります。「ドトールコーヒー」はコーヒーショップが先か豆の販売が先かはっきりしませんが,「珈琲館」や「上島珈琲店」などを経営するUCCは,その典型と言っていいかもしれません。 長々書いてきましたが,ロゴマークで一番のお気に入りは,チモトコーヒーです。南米風の飄々とした表情の3人組のロゴはご存知の方も多いのでは。このロゴマークを看板に見つけたら矢も楯もたまらず店に飛び込んでしまいます。本当はチモトコーヒーの喫茶店について,あれこれと書きたいところではあるのですが,使用しているコーヒー豆店が一緒ということで喫茶店そのものがいずこも特徴を同じくすることがあります。むろんチェーンではなくあくまで個人営業の喫茶店です。チモトコーヒーを使う喫茶店が玉石混交あるのに対して,そうトーアコーヒーを扱う喫茶店はどこも一貫した様式に則った店作りをされているように感じます。 ところでトーアコーヒーのロゴマークは看板など外観にはあまり表出していません。もっとも露出するのがコースターです。トーアコーヒーが自社の豆を使用する喫茶店にサービスしているのではないかと察せられるコースターにはメキシカンハットを被った白いカイゼル髭(両端が持ち上げられた口ひげのこと)のおじさんの絵は喫茶店好きなら必ず目にしていると思います。が,このキャラクターはさほど好きというわけではありませんので目立たなくてけっこう。あくまでも店の雰囲気が気に入っているというのがトーアコーヒーを使う店が好きな第一の要因です。 では,簡単に特徴を列挙します。(1) スタンド看板が一本足の内照式である。(2) 欄間看板が茶色地に白文字であること(なぜか直営店は赤地)。(3) 木製の格子扉(窓も格子の場合あり)(4) 内装及び調度品が木材または皮など茶色で統一されていること。(5) 銅版レリーフが飾られている。(6) 本日のサービスコーヒーを記した木製ボードが掲示されている。(7) 「かうひい異字熟語一覧」が貼られていることが多い。(8) マッチ箱が茶色ベースで片面はコーヒー農園の写真である。 などなど。まだ次から次へと類似点を指摘できそうですが,ここから想像されるのは,建築や内装,調度や小物までが同じであるからには,トーコーヒーは喫茶店をはじめたい人に対して,さまざまに要求もしくは斡旋することで統一した世界観を共有させようという意思があるのではないかということです。逆に,トーアコーヒーの喫茶店に魅了された人たちが自らもその世界観を愛する余りに主人になることを選択したのかもしれません。広く広くトーアコーヒーの世界観を拡大することで,健全な一般市民をトーアコーヒー教徒にせんと目論んでいるのかもしれない。もしかするとこれらの店で提供される芳しい香りとな深い苦味のコーヒーも洗脳のための麻薬めいたものではなかろうかと思いは飛躍します。と,一連の喫茶店には,幾分宗教めいた熱狂を背後に感じますが,それは穿った考えなのでしょうか。 長くなってしまったので,日々トーアコーヒー今日の布教に邁進している(かもしれない)個々のお店については,また次週お届けします。
2013/06/09
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高級喫茶チェーンの「喫茶室 ルノアール」は、東京にお住まいの方や通勤されている方であれば何度かは利用されたことがあるんではないでしょうか。東京の繁華街を歩いているとそれこそドトールやスターバックスなどのコーヒーショップ以上にそこら中にあって,一体全体どれほどの店舗があるのか調べてみたくなりました。 銀座ルノアールのHPによると「喫茶室 ルノアール」は1964年に設立、日本橋に第1号店を開店以来,現在では東京都内を中心に82店舗を擁しているようです。この数字は多いような,町で見掛ける頻度からすると存外少ないようななんとも言えない店舗数です。他にも「ミヤマ珈琲」、「Cafe ルノアール」、「NEW YORKER'S Cafe」、「カフェ・ミヤマ」、「マイ・スペース」(貸会議室)などのコーヒーショップや郊外型の喫茶店舗、貸会議室といったブランドに事業を拡大しています。 ぼく自身は,「ルノアール」のファンといえるほど足を運んでいるわけではありませんし,第一そこまで肩入れするほどの魅力も感じてはいません。ところが例外的に気に入っている店舗があるのでした。新小岩店です。ここは都心部の「ルノアール」とまったく違ったテイストの空間を楽しめました。銀座ルノワールのHPの店舗検索で調べても見つけることはできません。これはどうしたことでしょう。 とあるHPに回答がありました。労せずして回答を得るのはいささか気が引けますが,せっかくのじょうほうなので利用させていただくことにします。一言で言うと新小岩店をはじめとした数店舗は,銀座ルノアールを中心に考えると非直営店という位置づけになるようです。いわゆるボランタリーチェーン店のことです。ところがもともとルノアールはルノアール会というボランタリーチェーン店として拡大を図ってきたらしく,そう考えるとこれら数店舗の生き残りのほうがルノアールの源流としてのあり方を今に残しているといえるのかもしれません。フランチャイズと違って,個々の店舗の個性を活かすにはボランタリーチェーンのシステムは有効であるように思えます。別に拡大路線を狙う一派との対立から「談話室 滝沢」がオープンしたそうです(かつては新宿,池袋,御茶ノ水に店舗がありましたが2005年に全店舗が閉店しました)。 さて,それでは現存するボランタリーチェーンの店舗はどこかというのがもっとも気に掛かるわけで,今のところ判明しているのは以下の5店舗になります。恵比寿第2店,神田淡路町店はすでに閉店してしまったようです。「喫茶室 ルノアール 恵比寿東口店」「喫茶室 ルノアール 恵比寿第1店」「喫茶室 ルノアール 大塚店」「喫茶室 ルノアール 吉祥寺店」「喫茶室 ルノアール 新小岩店」 実は,まだ大塚店と新小岩店に行っているだけで,恵比寿東口店はガラス越しに店内を覗きこんだだけですし,和風庭園風のエントランスがあるという吉祥寺店はいつも行きそびれていました。そんな有様でどうこう言えた立場ではありませんが,とりあえず2店舗だけをご紹介しておきます。 大塚店は駅のすぐそば,雑居ビルの2階に店を構えています。談話室としての印象が強いルノアールですが,こちらはむしろひとり客をターゲットとしているように思われます。窓際の席は階段状にジグザグとしており,図書館のキャレルにいるような個室感があります。この窓からの眺めは,美しい眺めとか眺望がいいとかいうこととは対極にあって,真正面には風俗店がひしめき,花びら何とかといった店舗に老いも若きもいずれもが蝶ネクタイのおじさんとなにやら交渉した後,店内に吸い込まれていく姿など滑稽ではあるもののやや品位に欠ける風景であります。従業員は,けっこういい加減で,閉店間際のソファでは若い男性スタッフが突っ伏すようになっております。食事メニューも豊富で画一化された銀座ルノアール系列店とはやはりユニークさの点で秀でています。ただし店内は,改装されているようで清潔感はあるもののさほど個性は感じられません。 新小岩店は,まさに王道のオオバコ純喫茶の楽しさを存分に味わわせてくれます。駅前ロータリーの古ぼけた飲食店系の雑居ビルの2階にあります。自動ドアから店内に進むとすぐに和風の箱庭があり,その先にはさまざまな色彩,形状の家具が配置されまさに壮観です。客層はさまざま。ゲイのカップルが親密に寄り添っていたり,絵に描いたような悪徳業者風のオッサンといかにも餌食になりそうな気弱そうな青年,そこにごく普通のサラリーマンやOL,買い物帰りの主婦などが思いのままにくつろいでいます(一部緊迫した様子のお客さんもあり)。オオバコの喫茶店らしくお食事のメニューの豊富でしかもお値頃です。総武線電車の運行や商店街を行き来する人並みを窓外から眺められ,ぼんやりしているとあっという間に時間が経過してしまいます。 というわけで把握している限りでは,あとわずか3店舗を残すばかりなので,ゆっくり時間を掛けて回りたいと思います。
2013/06/02
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西武新宿線は、今でこそ沼袋や野方など酒場の新しいメッカとして注目を浴びつつありますが、高田馬場駅(仮の駅舎だったようです)―東村山駅間の開業は、1927年(昭和2年)と歴史も浅いこともあってこれまではあまり興味の対象とはなっていませんでした。それこそ鷺ノ宮駅から先は所沢駅などいくつかの駅周辺を例外として呑みに行くこともなく、これからの課題と密かに考えていたのでした。GWのとある一日、重い腰を上げてようやく西武新宿線のほとんど馴染のない駅である西武柳沢駅と何度か下車しているもののさほど印象にない田無駅を歩いてみることで一挙にこれまでの認識を改めることになりました。 はるばるというほどではないまでも近くはない距離を電車を乗り継いで到着した西武柳沢駅のホーム上から眺める街の印象はけしていいものではありませんでした。北側にはさびれた商店がちらほらと見受けられるばかり、南側は巨大な団地が立ち並ぶばかりで商店があるようには思えません。到着したばかりだというのにすでにぐったりとした気分になります。それでも西武柳沢には魅力的な喫茶店があるという情報を得ているので勇んで向かうことにします。ただ、この日は日曜日だったので果たしてちゃんと営業しているのでしょうか。 看板が出ています。「Tea & Coffee 宮殿」です。北側のロータリーの隅っこにある細くて上に伸びたユニークな形状の建物がそれ。入口のムードは紺色のスリガラスの扉や黄色地に二隅が赤い三角で縁取られ,紫色で店名が記された看板,そして何より「宮殿」という店名が何やら艶かしいお店のような印象を否応なく醸しています。店の裏側からも出入りできてこちらからは店内の様子も窺えますし,ショーケースもあって幅も随分広くなっていて,もしかすると本来はこちらが正式な入口だったのかもしれません。店内に入ると思った以上に広く,建物のレンガ部分のみが独立した建物ではなく,写真の白いモルタル壁も同一の建物なんですね。写真を見て今更ながら気付きましたが青地の看板にも「宮」の字が見えています。不健全な雰囲気の外観とは一転して,店内はまさに純喫茶らしさが横溢しており,広くゆったり配置された応接セットがずらりと並んでいます。凸のでっぱり部分は禁煙席になっていて,そこではちょっとした会合なら充分できそうなほどの広さです。ベルベットのソファが使用されていて,古い喫茶店ではいくら雰囲気がよくてもベルベットが破れていたり,腰掛けるのを躊躇わされるほどに汚れていたりすることがままあります。この店の素晴らしさをもたらす理由のひとつに店内が清潔に保たれていることを挙げることができるでしょう。従業員の女性は手が空くとソファを持ち上げて掃き掃除を始めます。お店を大事にしていることがすごく感じられ,ますますここが好きになりました。 駅の南側には,「コーヒーショップ チャオ(Ciao)」や「ら・ら・るー」なんて店がありますがお休みです。都営アパートの1階商店もほとんどが休んでいて,散歩の楽しみのひとつであるパン屋さん巡りをしようにも,アパート1階のパン屋さんは閉店してしまったようです。青梅街道に出ると「パン工房 キャロット」という味も素っ気もない造りのパン屋さんがあります。期待せずに数品求めたところ,これがなかなかおいしいのでした。特にトルティーヤは子供が食べたら口から火を吐きそうなくらいの辛味。ぶっきらぼうな若い主人は妥協がないようです。そのまま道なりに進むと田無神社があります。その道路を挟んで向かい側にすばらしい喫茶店があります。 「珈琲 カルディ」です。純喫茶といっても明確な定義があるわけではなさそうで,純喫茶を名乗っていてもビールなんかが飲める(純喫茶における酒類で定番なのがジンフィズでしょうか)ことは珍しくありませんので,随分昔から営業している喫茶店といった程度のゆるいくくりで捉えておけばとりあえずはよいと思います。といっても個々の店舗の有り様は様々で,画廊喫茶や名曲喫茶などの目的別に分類することも可能でしょうし,先日惜しまれつつ閉店した「洋菓子 ウエスト 目黒店」のようなサロン風の造りもあれば,有楽町「ストーン」や北鎌倉「門」に代表されるようなスタイリッシュで様式的なタイプ,新三河島の「白樺」や松戸の「若松」で採用されている和風テイストをちりばめたタイプなど様々にもありますが,その王道は,トーアコーヒーの豆を扱う喫茶店(「カフェ 東亜サプライ」(直営店)「珈琲 伴茶夢」「珈琲専門店 ボニー(BONY)」「ばじりこ」「珈琲専門店 ダックス」「珈琲専門店 カフェ ムジカ」etc.)に典型的な正統派でコーヒーショップと呼ぶのが相応しいようなアメリカ的洋式を感じさせる店ということになるのではないでしょうか。ここ「カルディ」はそうしたタイプの純喫茶でも指折りの格調を感じさせてくれます。どうしてこれほどのすばらしい喫茶店の情報が流通していなかったのか怪訝に思われるほどです。店内を撮影する許可を女主人に求めたところ,うち写真写りだけはいいのよとお答えになられ,その言葉からは控えめながらも誇りを持って大事に店を維持されていることが感じられ感動的でした。 田無には「フジカフェ(Fujicafe)」なるこれまた立派なコーヒーショップもあって,こちらもまたカジュアルで使い勝手がよく,住人の方たちのことをうらやましく感じたのでした。
2013/05/26
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西武池袋線にはまだまだ魅力的な喫茶店がありますが、知られざるという趣旨からどんどん外れて行きそうなので今回がとりあえずの最終回。そもそも知られざると言ってみたところでたまたま喫茶店好きの方たちのHPやらで紹介されていないだけで実はとっくに知っていたけどあまり好きじゃないから掲載してないだけとかいうこともありえますし、地元の方にとってはそれこそ日頃から通いこんでいる周知の喫茶店であり、迂闊に紹介してくれるんじゃないよというお気持ちの方も多いのかもしれません。 池袋駅から二駅目の東長崎駅の近隣には、個人的にはあまり好みではないものの調度類の造りが見ものの「ストーク(Cafe & Restaurant STORK)」やまだ入れていない駅近スタンド風喫茶の「まぁさ」などもありますが、お隣の椎名町駅や江古田駅周辺に喫茶店が過密していることをさほど喫茶店が多い印象はありません。そんな中で東長崎住民の憩いのひと時を一手に引き受けている(と思われる)喫茶店が「珈琲 オリーブ」です。かなり広い店内には相当な人数が収容できそうですが、特等席というとやはり最奥の中庭を眺めることのできるテーブル席になると思います。しっかりと手入れの行き届いた庭木の奥には和風家屋もあって風景として絵画のようにとは言わないまでも十分ぼんやりと眺めて飽きさせない景色になっています。中庭のきれいな喫茶店は探せば恐らく他にもあるかと思われますが、例えば東急電鉄の池上駅の駅前にある「欧風菓子 エノモト」の喫茶コーナーからの眺めもけして悪くありませんが、店内のぐっと落ち着いた茶の空間という意味では「オリーブ」がかなり長じているように思われます。こうした採光のよい喫茶にあっては、モーニングの時間帯、夕食前のひととき、仕事帰りの時間帯とそれぞれの時間帯で違った表情を見られるのも楽しみの一つのように感じられます。 江古田駅は日芸をはじめとした3大学が近いこともあり、多くの喫茶店がありますが古い喫茶店は姿を消しつつあるというのが現状のようです。現代の大学生には往時の純喫茶よりは明るく健康的なカフェのほうがお好みなのでしょうか、カフェのほうが町には目立って見受けられます。「パーラー江古田」はその代表格でしょうか(確かにここのパンはおいしいのですが)。それでもいくつかの古くからやっている喫茶店もあって、デカ盛りのメニューが充実した「パーラー・トキ」や珈琲専門店という風格のシックな「カフェ・ド・トレボン」、可愛らしくて蔵書が充実している「林檎」(特に梅図かずおがたくさんあるのがうれしい)、新桜台駅に近づくとエントランスまでの導線が贅沢な「珈琲舎 歩歩(BUBU)」、すでに取り壊しされてしまった「サントス」は残念なことに行けず仕舞いとなりました。(写真は「珈琲舎 歩歩(BUBU)」)。 そんな中でとりわけ純喫茶の風情を湛えるのが「モカ」でしょうか。1階はカウンター席だけ、2階はテーブル席となっていていずれも異なった印象を受けますが、いずれもがまさしく純喫茶の落ち着いたゆっくりとした時間を経験させてくれます。日頃は武蔵野音楽大学の学生さんがアルバイトして、お客さんも同大の方たちが多いうようですが、できることなら学生さんたちが池袋や新宿などに繰り出す土曜日の夕方、女主人ひとりでひっそりとした時間帯に訪れることをお勧めします。ちなみに「アド街」でも紹介されました。
2013/05/19
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池袋から西武池袋線で1駅という立地にある椎名町駅は、手塚治虫や藤子不二雄などを輩出したトキワ荘があったことで知られる都心からすぐの場所でありながらこじんまりとした商店街の広がるほおんぼのとした地域です。そういうのんびりした場所なので、純喫茶不毛地帯の池袋のお隣とは思えないくらいに喫茶店が充実しています。池袋駅から歩くと20分近く掛かってしまい、歩いて歩けないことはないけれど、一応はひととおりのものは椎名町にいれば揃えてしまう、そういう距離感が池袋の文化圏とは隔絶された独自の生活圏をもたらしているのかもしれません。 駅前の短いアーケード街を通り抜け線路沿いを進むとカウンターだけの小さな喫茶店が現れます。6席ほどが並ぶ細長いお店には優しい笑顔のマスターといつもにぎやかな常連さんたち。コーヒーとサンドウィッチの店と看板にありますがまだ折悪しくサンドウィッチをいただいたことがありません。内装も特別にきらびやかな装飾がされているわけではありませんが、仕事を終えて最寄駅に着いてふっと一息つけるようなそんな気安さを感じました。大阪などではカウンター喫茶がそこかしこあって、本腰を据えて喫茶タイムを過ごすのではなく、まさに一息つくために忙しい日常において、仕事からも家庭からも解放されたほんのひと時の自分だけの時間を過ごすのに格好のお店です。お店は「サカエコーヒー」と言います。 西武池袋線の比較的知られていない喫茶店巡りもぼちぼちネタ切れ。ここから先は比較的知られた店が登場することになりますが、ご勘弁ください。続いては「サカエコーヒー」をさらに東長崎駅方面に進みます。そうこうしていると古めかしい一軒家の喫茶店が現れます。住宅街の喫茶店「鴻城」は,かつて自分が地方都市に住んでいた頃,確かにこういうお店があったなあと思い起こさせてくれるような町並みにすっかり溶け込んだようなさり気ない佇まいが郷愁にも似た感情を奮い立たせてくれます。壊れかけた看板には一抹の不安を感じないでもありません。突然のようですが喫茶店とカフェとの違いを自分なりに定義してみると,前者にあって客は,何ものにも干渉されずにまったく私的な時間を過ごすことができるのに対して,後者にあっては,客たちはカフェという空間を形成するのに寄与することを知らず知らずのうちに要請されているように思われるのです。とまあ個人的な好みがカフェではなくて喫茶店にあることを訴えるためにそれらしく理屈を語ってしまいましたが,「鴻城」はまさしく喫茶店として理想的な空間となっているということです。あっけらかんと明るいカフェになれきった人にとっては幾分暗すぎるかもしれません。薄暗さがくたびれやつれた調度類を本来以上に格調高く見せているのかもしれません。それでも照明の使い方に鈍感な多くのカフェよりも(多くのカフェがガラス張りなのも採光への配慮というよりは,外部からの視線に客たちがさらされることで店と一体化することを助長しているように思われます),店の劣化を偽装するために一般にセピア色と称される証明で偽装するほうがよほど照明の使い方に戦略的と考えられます。そんなこんなでこじんまりとして人によっては幾分地味と感じられなくもない「鴻城」はやはり喫茶店の典型的な一軒として忘れることができません。
2013/05/12
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昔、西武池袋線の電車に乗って1年ほど所沢まで通勤していたことがありますが池袋駅までの各駅でもっとも印象の薄かった駅のひとつが清瀬駅です。そんな地味な駅という印象がこの喫茶店散歩によって一蹴されてしまいました。 まずは駅の北側に出ることにします。駅からすぐの場所に中華料理店があってここも外見すると照明やらの装飾になにやらこだわりを感じます。その2階にあるのが「喫茶 エンゼル」。店名ほどのキュートな感じがあるわけではありませんが、ちゃんと純喫茶してます。窓際の席は埋まっているので奥の席に着くことにしました。茶色い革のソファーが渋くてなかなかです。メニューを見てびっくり。食事メニューが驚くほど充実しています。チャーハンなんかもハーフサイズもあって、どうやら1階の中華料理店と連動しているようです。まさに駅前喫茶のよさを体現したお店でした。 東京も郊外にいくとこれが喫茶店と呼ばれていることに違和感を感じるような店に出逢うことがあります。八王子の外れにある「パペルブルグ」なんかがその典型ですが、「パペルブルグ」に負けず劣らずのお城系喫茶が清瀬にもあります。「珈琲 るぽ」です。志木街道をはるばる進むと日枝神社水天宮などの神社仏閣がいくつもあって、案外楽しく歩くことができます。そんな日本の歴史を感じる風景に突如煉瓦造りの洋館が出現、かなりのインパクトがあります。果たしてこうした喫茶店を純喫茶と呼んでいいものか疑問は過りますが、独自の美意識を現実のものとした異様な情熱を感じさせてくれて、これはこれで喫茶店巡りの醍醐味だと思うことにします。こうしたお城系喫茶店はどうやら秋津や新座といった方面にもあるようなので、時には織り交ぜて巡ってみたいと思っています。 駅の南側はどこまでも古びた商店街の続いており、路地には古い居酒屋や食堂などがたくさんあって、喫茶店巡りばかりでなく居酒屋巡りの一環としてもぜひきっちり回っておかなければならないと決意を固めさせられるほどに魅力的でした。何度か訪れていると思っていてもやはり見切れていないところがあるもんです。「コーヒーハウス チロル」はこうした商店街のかなり奥地にひっそりと営業していました。オーソドックスなスタイルの純喫茶で際立った特徴こそないものの、どこもかしこも女主人のセンスが行き渡っていて、飛び切りくつろげます。ゆっくりと時間を掛けて楽しみたい喫茶店でした。
2013/05/04
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ひばりヶ丘は西武池袋線の急行では、石神井公園駅の次に停車する駅です。その次が所沢駅ということを考えると随分大きな町のような印象がありますが、実際は通過される練馬駅ほどにも栄えていないと感じられる駅でこれまで何度か訪れながらもまるで印象のない駅でした。とある休みの日にひばりヶ丘のすばらしい2軒の喫茶店を訪れて町の印象が強く心に刻み込まれることになりました。 再開発によって開かれた駅前通りを歩きながらこんな場所に純喫茶はあるのだろうかと不安を覚えつつさらに進むとふいに「アート茶房」が現れます。ごくさりげない外観ながら丸いアーチを描く窓と扉に期待は高まります。店内は思った以上に広く白いレンガのパーテーションが店の印象を個性的なものとしています。こういう喫茶店こそ普段使いで毎日のように通いたくなるのだと地元の方が少しうらやましくなりました。 駅の南側とは一転、北側にはごみごみとした商店街が小規模ながらも残されており、これなら期待できるかもとつい足早になります。正方形の提灯型の看板にここは間違いないと確信は深まります。「珈琲専科 倫敦」です。店の前面のガラス格子の扉を開き店に入るととびきりクラシックで王道とも言える空間が想像以上の広がりを見せてくれます。長いカウンターを抜けてぽっかり広がるスペースに入り込むと抜け出すのがつらくなるほど居心地がいい。奇をてらわずに堂々とした構えはここがひばりヶ丘であることを忘れさせてくれます。都心部の高級喫茶店を遙かに凌駕する贅沢がここでは味わえます。
2013/04/28
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喫茶店のお話をいずれ書こうと思っていながら、筆不精が災いして放り出しっぱなしになっていました。重い腰を上げてようやく書き始めることにしました。居酒屋ほどではないにしても純喫茶を愛する方も数多く、多くの純喫茶は愛好者のみなさんのHPやブログで紹介されており、美しく丹念に撮影された写真とともに紹介されております。ぼくの出る幕などないのですが、それでもとりこぼしなのか、あまりお気に召さなかったのか何軒かのぼくが大好きになった純喫茶があります(もちろんすでに見事に紹介されているのかもしれませんが)。そんな純喫茶を紹介することで撮影の上手な方が目にしていただき魅力的な姿を写真や文章でつづってもらえるとうれしいと考え、純喫茶歴は未熟ながらも愛すべき純喫茶を不定期ながら紹介していきたいと思っています。当面は日曜日に純喫茶紹介ということにさせていただくつもりです。休みの日くらいは純喫茶でのんびり過ごして、晩酌は家呑みという自戒を込めています。お付き合いください。 さて、思いつくままに紹介していくことも考えましたが、酒場同様に純喫茶をハシゴしていただきやすいように鉄道路線に沿って各駅できれば数軒を紹介していきます。まずはあまり純喫茶愛好者の方々に見向きされない印象のある西武池袋線沿線から紹介させていただきます。 最初の駅は池袋駅から始めるべきなのでしょうが、池袋駅界隈はもともとが純喫茶不毛地帯です。「ささい」も閉店し、池袋に2店舗ある「伯爵」や「カフェ・ド・巴里」、洋菓子店併設の喫茶室「タカセ」(池袋に3店舗あり)、「アーベル」、「ぶどうや」などがある程度(こうして書いていると案外ある気がしてきますけど)。不思議なことに池袋駅の次の駅、椎名町駅界隈には喫茶店が多く残されていますが、かなり多く情報が出回っていますので、まずは西武池袋線沿線ではもっとも思い入れの強い純喫茶のある駅、石神井公園駅からはじめることにします。 石神井公園駅は駅名からも自明なとおり石神井公園のそばにある駅です。北側は再開発で見るも無残なことになっていますが、南側にはかろうじて古い商店街が残されています。そんな商店街を進むと石神井公園、その外縁を進むとあるのが「居留珈」です。「珈」「琲」の字を当て字にして店名にするのは純喫茶ではよくあることです。このお店も「いるか」と読ませるのでしょう。この当て字の店名は、経験的に当たりか外れかのいずれかのパターンが多くて、むしろ外れの場合が多いのですが、こちらは当たりのほうでした。茶を基調とした正統派の純喫茶で地元のおばちゃんたちがくつろいで歓談しています。店の奥のほうはまた違ったテイストの味わいがあってユニークです。 西武池袋線沿線で恐らくもっともユニークな純喫茶が「リリー」ではないでしょうか。2階が婦人向けのブティックになっていて、半地下が喫茶室となっています。近く閉店するという阿佐ヶ谷の「cobu 喫茶室(コブ)」のようなお店です。この店に入って思うのがこじんまりとした喫茶店にもっとも適しているのは半地下なのではなかろうかということ。オオバコ喫茶店には光の全く当たらない地下や見晴らしの良いビルの上階がぴったりだったりしますが、10~20名ほどのこじんまりした喫茶店には明るすぎず、暗すぎず、もっとも心地よく採光できる半地下は店内のとりどりの照明と美しいコントラストをなしてうっとりするほどです。美しくアーチを描くカウンターをはじめマスターの強い美意識が感じられとてもすばらしいと感じさせられます。まだ日の落ちぬ屋外に出た時のまばゆい光に目を細めて店を振り返ると、ああまた近いうちに訪れたいものだと思うのでした。
2013/04/21
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長く人々から愛されてきた二軒の喫茶店が間もなく閉店となります。しょうがないこととは分かっていても思わずため息をついてしまうのでした。最後のあいさつくらいしておこうと仕事の合間を縫ってその二軒をはしごしてきました。 一軒目は北千住駅の抜け道のような人気のない仲町口の入口にしがみつくようにある「ティーサロン みゆき」です。昭和44年創業ということなので,40年以上の歴史あるお店が今月閉店となります。噂ではちょうど昨日6月22日に閉店となるということなので,まさにラストチャンスと思い梅雨空の中,駆けつけました。ちょうど昼時なので,生姜焼き定食をお願いしました。厚めのロース肉を使用した生姜焼きはしっかりした食感で満足感が高いのです。店の終焉を前にしながらもマスターと奥さん?は粛々といつもと変わりなく仕事しておられます。知人が6時過ぎに来店する旨を伝えると,もしおいでいただけるのなら7時過ぎまで開いておきますよと暖かい言葉をいただきました。ところで,喜ばしいことに閉店予定日が延期となって6月29日になったそうです。まだチャンスがあります。こちらに思い出のある方もそうでない方もお出掛けになってはいかがでしょうか。 慌しく常磐線快速と山手線を乗りついで着いたのは神田駅。岩本町方面に雨の中駆け足で向かったのは「ペルル」です。お昼時のため店はほぼ満席。なんとか席を用意していただき,汗だくでブレンドをいただきました。純喫茶らしいシンプルな店内ながらソファやカフェテーブルのセンスの良さは光ってます。やはり閉店だからと気負った風もなく淡々としているのが逆にせつない気分にさせられてしまいます。こちらも6月29日までの営業。ぜひいらしてみてはいかがでしょうか。恐らく最後の訪問になると思われるので記念に品のいいマッチをちょうだいしました。
2012/06/23
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純喫茶めぐりをしていて、驚くべき店に出会ってしまいました。その内装の奇抜さと迫力には、これまで訪ねまわったどんな酒場にもないようなすごさを感じました。もちろん酒場めぐりへの興味は純喫茶めぐりと同列で語れるようなものではありませんが、これほどまでに衝撃を受けたことはなかったと言ってもいいかもしれません。 そんな強烈な純喫茶はなんと千葉県の松戸市にあります。松戸駅西口からすぐ、これまで何度かこのブログでも紹介させていただいた、お気に入りの酒場「上州屋(ニュー上州屋)」や「ノグチ屋」、カレースタンドとして知られる「カレー専門店 印度」がある高砂通り商店会の飲み屋横丁の真正面にある「純喫茶 若松」です。写真撮影が苦手で外観はともかく店内で撮影するのに抵抗があるため、これまでまったく写真は掲載しませんでしたが、あえて掲載することにします。 「お好み焼 鉄板焼 もへじや」の2階が「若松」になります。「もへじや」のテント看板の隣りの小さなテント看板に店名がなんとか読み取れます。これまで気がつかなかったのも無理がありません。さらに写真を御覧ください。 お好み焼屋の隣にこれほどまでに豪奢な階段が誂えられているとは驚くばかりです。シャンデリアもさることながら壁面に貼られた鉄平石に目を見張ります。 フラットな店内の奥はステージのように一段高くなっており、美しく面取りされたガラス越しに階段と小さな岩造りの和風庭園があり特等席となっています。 撮影が下手っぴではっきり御覧いただけないと思いますが、天井の白いシェード部分には黄金色の家紋が描かれています。窓のない店内の壁面は大谷石でしょうか、木材も一枚板を基調とした大変立派なものです。ソファはゴブラン織りの美しい仕上げ。圧巻です。 女主人からお話を伺いました。創業して約50年になるというこのお店は、御両親から2年間の休業期間をおいて23年前に受け継ぎ、その後、床の改修やソファの張替えは行なったもののほぼそのままの状況を維持しているそうです。床は当初は段差が多くあり起伏のある造りだったようで、当時はさらに個性的な店内だったのだろうなと想像が膨らみます。高齢者のお客さんが増えたためフラットにしたのだそうです。 女主人は窓一つない店内が好きになれず店を引き継ぐことに決めた際は大幅なリフォームを加えるつもりだったそうですが、石材をふんだんに使った店内であるため、窓を作るだけでも400万円以上の必要がかかるとのことで断念されたそうです。御主人には申し訳ないのですが、このままの姿を止めてくれたことに感謝せずにはおれません。 丁寧に入れられた400円のコーヒー(和風なカップも上品です)でこれほどまで贅沢な気分を味あわせてくれる、このすばらしい純喫茶、機会があればみなさんに訪れることをお勧めしたいと思います。 写真があまりにも下手くそなのでネットで調べるとお一人の純喫茶をお好きな方のブログに記事と多くの写真が掲載されていました。エムケイさんとおっしゃる方のページですが、狂喜乱舞されたことがひしひしと伝わり嬉しくなりました。
2012/04/24
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広く世間に知れ渡る喫茶店は基本的にはここでは紹介しないつもりです(例外もあるでしょうし、単に知識がないためたまたま知らずにいたのかもしれませんが)。ともかくできる限りネットなどによる情報があまり流通していないお店を紹介するつもりです(酒場もできればそうしたい)。 先日,北松戸駅に素敵な喫茶店を見つけました。北松戸駅といってもピンとこない方も多いのではないでしょうか。JRの常磐線各駅停車の駅なのでさほどマイナーというわけではないのでしょうが,よっぽどの用がない限りは下車する機会の少ない駅だと思います。あっ,そういえば松戸競輪場が駅の西口からすぐにあるので,競輪客には知られているのでしょう。ギャンブル場がすぐそばにあることが特徴の駅です。 競輪場とは逆側の東口の階段を下りるとロータリーになっており,その周辺にぱらぱらと飲食店があります。そんなロータリーにあるビルの2階が今回行った「COFFEE & WINE 微巣登路」です。昼間でも暗い店内と「微巣登路」の文字のどことなくヤンキーっぽい字面に少し躊躇いつつ扉を開きます。もともと広い印象のある店内はやはり想像以上に広くて10人位掛けられそうなソファも2つあって,実に広々としています。 お客さんは3名だけで,1人はビールを飲んでおり,あとの男女2人組はコーヒーを手に激論を交わしています。店主夫婦は手持ち無沙汰な様子。窓際の席について,コーヒーをオーダーします。店内を見回すとTVゲーム機や電話BOXなどが置かれていて,懐かしい雰囲気です。よくよく見るとジュークボックスらしきものもあります。トイレに入ったついでにチェックするとまぎれもなくジュークボックスそのものです。1曲:50,3曲:100とありますが,なぜかコイン投入箇所はテープでふさがれています。 支払いの際,溜まらずジュークボックスのことを奥さんに伺うとちゃんと音はなるけれど選択したレコードが掛からないので使用できないようにしているのだそうです。お尋ねしたことが嬉しかったそうで,このジュークボックスは創業当時から使用しているもので,店の歴史として大事に守っていきたいということでした。修理も考えたようですが,費用が大変掛かるため断念したようです。チェッカーズなどの曲が収録されていました。この店の由来などを楽しそうに語っていただきました。もともとこの店はコンパとして開店したそうです。「コンパ」っていうのはすっかり馴染みがなくなりましたが,昭和40年頃に流行った業態で,・カウンター席が基本・安価な価格設定・カウンターには男性バーテンダーがいる・バーテンダーに女性客が集まる・女性客目当ての男性客が集まるというシステムのようです。現在「コンパ」として営業を続けているのは,西武池袋線の江古田駅そばにある「江古田コンパ」だけになったようです。コンパが下火になった昭和53年頃に喫茶店として内装をリフォームし喫茶店としての営業を始めたということです。以前は「コンパ」に特有のぐねぐねとしたカウンターもあったようでぜひ見てみたかったものです。それにしても北松戸駅というあまり繁華ではない地で商売が成り立っていたのが不思議に感じられます。 このお店は朝の9時から深夜2時30分までは営業を続けているそうで,その頑張りには頭が下がります。このお店は人気のない北松戸の街を見守り続けており,これからも長く続けていかれることを祈っています。
2012/04/22
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仕事を終えてホット一息つく時間は心安らぐものです。むしろそのひと時を味わうために仕事をしているのだとも言えるかもしれません。常にゆとりだらけで,開放感だらけだとありがたみはまるでなくなるんでしょうね。 一息つく場所で代表的なところというとやはり酒場ということになるでしょうか。帰宅までのほんのひと時を酒場で過ごす時間は至福の時といっても大袈裟ではありません。では酒場以外に憩える場所はないのでしょうか。ようやく見つけることができました。いわゆる純喫茶と呼ばれるクラシカルな喫茶店です。 もともと“純喫茶”には興味もありましたし,気に入った喫茶店もあったのですが,酒場めぐりを凌ぐほどの魅力は感じていませんでした。いくつかの“純喫茶”に立て続けに出会えたことが“純喫茶”の魅力にどっぷりとはまり込むきっかけとなりました。これらの“純喫茶”については,改めて書きたいと思っています。 “純喫茶”ってどういう店なのでしょうか? 知られているように“純”が付く喫茶店は,酒を提供しない喫茶店というのが一般に言われています。でも現実には,“純喫茶”を標榜しても,酒を出す店はたくさんありますし,それはそれで一向に構わない。こうなると酒場の喫茶店の境目があいまいになってきますが,それはそれで全然問題なし。看板に“純喫茶”とあればそこはやっぱり“純喫茶”ですし,あえて“純喫茶”を謳っていなくても自分が“純喫茶”だと感じればやはりそこは“純喫茶”です。くつろぎの時間に瓶ビールを飲みながら漫画雑誌などを眺めたりするというのも喫茶店での贅沢で楽しい時の過ごし方です。 酒場と喫茶店のもっとも大きな差はここにあるのかもしれません。酒場というのはどうしても酒と肴を頼んで,それを飲み食いしてさっと立ち去るというせわしないイメージがあります。一方で喫茶店だと1杯のコーヒー,1本の瓶ビールで満足できるまでいくらでも自由にくつろぐことができます。必然的に空間や家具なども趣が違ってきます。大雑把に言うと酒場はカウンターに丸椅子,床は三和士に壁は板張りといった造りが定番ですが,喫茶店では豪華なソファに個性的なテーブル,床には絨毯が敷かれて,シャンデリアによるセピア色と言われたりもする照明が店内を彩ります。でも,仮に行った店が酒場と喫茶店の境界すれすれの店であっても,入店したときにそこが“純喫茶”であると感じることができれば,酒場で過ごす時間よりもきっとくつろげるものになりそうです。 まだまだ御紹介できる“純喫茶”は数少ないのですが,酒場以上に閉店が相次ぐ現状を少しでも抑える手助けになればとの思いからすばらしい店を少しづつ紹介していきたいと思います。酒場で写真を撮るのには抵抗があるため,文章だけの寂しいページですが“純喫茶”では思い切って写真も少しづつ撮っておりますので,掲載していければと思っています。
2012/04/17
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