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(ジミーのせりふの続き)俺は一二年前に通りでディックトランベルに会った。彼が言った、ジミー、宣伝部門は君が居た当時とは違ってしまったよ、火が消えたみたいなんだよ。俺は言ったさ、管理職は意気阻喪してしまい、君が復職したら喜ぶだろうと言う噂を聞いている。そうは思わないかね、ディック。彼は答えた、そうですね、ジミー。私の助言を聞いて、仕事の環境が好転するのを待っていさえすればよい。そうすれば君は部下によりよい賃金が支払えるし上手くいくだろうよ、と。俺は言ったさ、そうだな、ディック。助言に大いに感謝する。良い条件だけが事態を好転させる。俺がしなければならない事は、明日にも上品な上層部と折り合いをつけて上手く事を運ぶことだ。ホープ (謙遜した慈愛の愛情を示しながらジミーを見て)哀れなジミーはまたパイプドリームを始めたな。やれやれ、彼は甘いものを口にしたんだ。 (これはラリーには耐えられない事だった。冷笑的な馬鹿笑いが止められないが、誰も彼に注意を払わない)ルイス (半分眠っている目を開いて、夢の中でのようにウエットジョーエンに対して)済まないが今春の旅行を延期しなければならないよ、ピエット。壊れてしまった古い施設が修理されないと駄目だからねえ。無能な弁護士がもうけりをつけられないでいる。来年には我々で運転資金を工面してでも決着を図ろうな。好きなだけ古い場所に居て、それからサウザンプトンの連合城からケープタウンに乗り換えることも出来るのだから。(感傷的に、実際の渇望を込めて)四月の英国。君に見てもらいたいのだよ、ピエット。アフリカの古い草原にはその特色がある、それは認めるが、家庭じゃないよ、特に四月のそれじゃあないよ。ウエットジョーエン (眠そうに彼に瞬きし、夢見る様に)そうだ、セシル、君が俺に何度も話してくれたから、それがどんなに美しいかを知ってるよ。それを楽しもうよ。でも、家にいたらもっと楽しいだろうに。ああ、その草原だよ。そこに英国を乗せて、英国の小さな菜園に見えるだろうよ。有難い、自由な空間がある。葡萄酒みたいな空気、酒なんか喰らう必要は無いのだ、俺の関係は吃驚もんだ。彼らは俺を知らない、もう長い時が経過したのだ。彼らは俺がとうとう家に帰ったので大喜びするだろうよ。ジョー (夢見る様に)俺は賭けをして、新しい賭場を開設する、君達が離れる前にだ。開所式には来てくれ、白人並みに歓迎するよ。破産しても、俺が君等を支えてどんなゲームでも出来る様にする。勝てば儲けで、負けてもチャラにする。白人以上に大切にしてやろう。ホープ (再び謙遜的な憐れみを見せて)ジミーも同じパイプをふかし始めたな。 (しかし三人が話し終えると、彼等の目は再度閉じられて眠りに落ちる)ラリー (自分自身に声を出して、滑稽な調子で、狂的な囁きで)やれやれ、この溜まり場は俺をまた硬直した気違い状態に駆り遣るのだよ。ホープ (疑惑でいきまくかのようにラリーを見て)何、何といったんだよ。ラリー (なだめる様に)何も、ハリー。俺は頭に気違い染みた事を思ったのさ。ホープ (短気さを出して)気違いは正しいよ。そうさ、老いた賢者よ、賢さ、糞くらえ。駄目な老いぼれ無政府主義者、俺は断じて働かないぞ!俺は君とヒューゴに嫌気がさしている。明日支払いをしてくれ、さもないと俺はハリーホープ革命をおっぱじめる。俺は君のしっぽに追いたて爆弾をくっけると君は通りで爆発してしまうぞ。俺は君の運動を追い立ててやる。(彼は機智に輝きキイキイ声で笑う) (マクグロインとモッシャーが同時に熱烈に馬鹿笑いした)モッシャー (媚びる様に)ハリー、君は馬鹿に可笑しなことを言ったもんだ。(テーブルの上に手を伸ばしそこにコップがあるのを確かめる様にして、それから吃驚したように)クソ、俺の酒は何処だ。ロッキーはテーブルをかたずけるのが早すぎるのだよ。そう、俺はまだ一すすりしただけなのだ。ホープ (笑顔を固まらせて)いや、違うな。(辛辣に)君はいつだって酒を一すすりするだけだよ。そのうちに破傷風と麻痺になるよ。そのサーカス風の冗談で俺をからかうのだ。俺は君が膝位の身長だったガキの頃から知っているが、当時から悪ガキだった。マクグロイン (ニヤニヤして)そんなに辛辣になるなんて君らしくもない。すきっ腹の早朝に君をからかうなんて、熱くてやけどする仕事だ。ホープ ああ、お前、マック。もう一人の悪党さ。誰がお前に笑えなどと頼んだ。我々は哀れな老ベシーの話をしていたのだ。君と彼女の愚弟が笑い始めた。馬鹿な話さ、彼女について女々しい感傷をまたも話してさ。彼女は決して俺を許さないだろうさ、もしも俺が彼女の大切な部屋に君等飲んだくれ二人を宿泊させて、彼女の絨毯に落ちたゴミや煙草の灰を捨ててやっていると知ったなら。君は彼女の君への意見を承知しているね、マック。『パットマクグロインは警察所を愚弄した最大の飲んだくれ公務員だ』って彼女はよく俺に言っていたものだよ。『彼を人生の唱歌会に送って貰いたい』とも。マクグロイン (落ち着いた調子で)そういう意味じゃなかったんだよ。彼女が怒っていたのは君が俺を酔っぱらわせるからなのだよ。でもべスはあの鋭さの下に黄金の心を隠し持っていた。俺に対するあらゆる中傷誹謗が的外れだと知ってもいたし。ウイリー (酔いでよろめきながら飛び上がってマクグロインを指さして、冷酷な検査官の態度を真似ながら)一寸、頼まア。マクグロイン大尉殿。君は神に誓約して言っているのを自覚しているのかね。擬誓の罰がどんなものか知っているのかな。(満足そうに喉をごろごろさせて)さあ、大尉、君は自分が途轍もない重罪人だと言う事実を認めないつもりかい。いや、言わないがよい、『君の老人の調子はどうかね』などとは。俺は今様々な質問をしている。彼が大酒のみの金物屋だと言う事実は君の場合には関係ないのだよ。(涙脆い陽気さに変化して)陪審員諸君、法廷は地方検事がハーバードで覚えた小唄を歌う間しばし休廷します。神学校の学長によって猥褻な瞬間に1776年の月の美しい夜に、トルコ風呂の節度ある最中に作曲された。(歌う) さあ、おいでよ、と彼女は叫んだ。私の水兵さん、私と貴方は意見が一致した。そして 私はとっても美しい宝物をお見せしましょう、ラップ、ラップ、ラップとテーブル叩き、 今までに見た事も無い様なお宝を。 (突然彼はホープの視線が非難するように自分にくぎ付けになっているのに気づき、そしてロッキーがバーから姿を現したのを見る。そして椅子に崩れ落ちるように座る。訴える如くに哀れな調子で)頼む、ハリー。静かにするよ。ロッキーに無理やり俺を上の階に連れて行かさないでくれないか。一人になると気が変になってしまうのだよ。(マクグロインに)謝るよ、マック。不機嫌にならないでくれないか、俺は単に冗談を言っているだけだから。(ロッキーは、ホープの優しい視線を受けて、バーに戻る)マクグロイン (善良な性格で)そうだ、好きにすればいいさ、ウイリー。俺は硬直している。(ひと息吐き、真面目に)でも、間もなく官憲が俺の事件を再審議するだろうと予告する。誰もが俺に不利な証拠はない事を知っている。今回は無罪放免になる。(物思いに耽るように)警察での地位を回復したいのだ。少年達が最近では素敵な役得があると言っている。俺は此処では裕福にはなれない。からからの喉でハリーホープが一杯御馳走してくれるのを待っているだけだからな。(非難するようにホープを顧みている)ウイリー 勿論だ、君は復職するさ、マック。君が必要なのは赫々たる経歴を持った若い弁護士に弁護を任せる事さ。俺には実務経験はないが、ロースクールでは最も優秀な生徒の一人だ。君のケースは俺がスタートを切るにはもってこいのものだ、マック。マグロイン (なだめる様に)そうしよう、そうすれば君の評判は確立するよ、ウイリー。 (モッシャーはホープにウインクして頭を振り、ホープは同じパントマイムで答える、哀れな麻薬患者だ、又発症したぞ、と言わぬばかりに)ラリー (パリットにと言うよりは自分にたいして声に出して、いらいらした疑問をぶつける)ああ、畜生。俺は彼らの幻覚を千回も聞いたぞ。なぜ奴らは俺の皮膚の下に潜り込むのだろうか。気分が滅入って仕方がないよ。ヒッキーが姿を表すといいがなあ。モッシャー (計算するかのように不安を示し、ホープに囁く)哀れなウイリーはひどく酒を必要としているよ、ハリー。俺が思うに、彼を励まして、友人達の中にいると分からせ、奮いたたせてやろうじゃないかね。ホープ 更なるインチキ行為。(傷つける様に)君は愛する妹について語っている。べシーは君を見定めようとした。彼女はよく話したものだよ、貴方があの無価値で、飲んだくれで、こそ泥の私の兄に何を期待しているのか分からない。彼女は言ったものさ、彼は後ろの溝にはまっている。が、彼女は陰口はきかなかったさ。モッシャー (温和に笑い)そう、愛されるべきべスは短気だったが、実害はなかったよ。(昔を回顧するように笑い)彼女が十ドル札を両替するようにバーへ俺を使いに出した時の事を覚えているだろう。ホープ (自身を笑うべくして)ああ、御覚えている。彼女はストーブの蓋を開けて、小銭を出していた。その十ドル札を見つけ出した後でね。(感謝するように笑う)
2024年02月22日
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ジョー (じっと考え事をしていたが、止めて)そうさ、白人達はいつでも俺を白人だと言った。俺が裕福な時、ジョーモットだけが白人の賭場で出入りを許された唯一の黒人だった。お前は大丈夫だ、ジョー、白人だからな、そう奴らは言った。(クックと笑って)クラップ博打はさせようとしなかったが。奴らはインチキダイスの仕掛けをやるのを承知していたのだ。どんな遊びでも制限なしでやれよ、そう奴等は言うんだ。それで俺はすっからかんになった。(又、クックと笑い、強調的な防御姿勢を示して)今の大貸し元を見ろよ、彼は俺が白人だと知っている。俺は金を貯めて自分の賭場を開設した。物識りがいて俺に言った、てっぺんの男を見ろよ、そうすれば問題は起こらない、と。ハリーホープにボスへの手紙を書いて貰えとも。そうして、ハリーはそうしてくれた。そうだったな、ハリー。ホープ (自身の考えに耽っていたが)えっ、確かに。ビックボスは俺の友達だった。最近は上層部に大勢友人がいる。まだ、外に出て行きさえすれば会えるんだよ。確かに、君に手紙を与えたよ。君は白人だと伝えた。それがどうした。ジョー (言葉の意味を全く理解しないで、馬鹿々々しい緊張を見せてホープの話を聞いていたルイス大尉に向かって)さあ、解るか、大尉。俺は大親分に会いに行った、彼は貨物列車みたいにどでかい机に座っていた。彼は上を向こうとしなかった。俺を待たせに待たせて約一時間、俺に対するように、ゆっくりと静かに、危害は加えないと言ったよ。「貴様は賭場を開きたいそうだな、えっ、ジョー」と。俺に口を利かせないで、彼はいきなり飛び上がると、貨車二両くらいにどでかい身体で、拳をどんと机に叩きるけて、叫んだね、「この、糞黒んぼめ、ハリーはお前が白人で、川向うに小さな鉄の部屋を準備していると言った」と。それから彼は腰を掛けると、静かに言ったよ、「分かった、賭場を開いていい、上納金を払えよ」と。それで俺は賭場を開いた。彼は俺が白人同様に稼いで奴に税金を納めて何年もの間働いたよ。で、サツと俺は間夫ダチだった。(自信ありげにクックと笑い)古き時代さね。多くの夜を俺は此処に来る。上等のウイスキー、此処は最上等の遊び場だよ、十五セントで賭け事も出来るし。俺は十五ドル札をまるで紙屑みたいに投げ出して言う、飲みなよ、餓鬼ども、釣りはいらないよ。そうだったな、ハリー。ホープ (辛辣な調子で)そうだ、が、もし君が十五ドル札をバーに投げ込むのを目にしたとしたらアルコール中毒症状を呈する事になるだろうさ。君はその話を百万遍も繰り返すことになるので、俺はもうアル中症状を逃れられないよ。ジョー (クックと笑って)二十年間飲み続けたら君は既にブルックリン男だよ。俺を恐れることはないよ。ルイス (突然に振向いて、輝かしく笑みを浮かべて)有難う、ハリー、旧友よ。一杯貰おうか、君の誕生日はもう目前だしなあ。 (他の者達は笑う)ホープ (耳に手を置いて)何だって、聞こえなかったんだ。ルイス (悲し気に)そうだろうと思ったよ。ホープ 聞く必要はないのだ。酒のことだけだ、君が口にするのは。ルイス (悲し気に)本当だ。でも俺の話がもっと意味深い場合もある。でも、年を重ねるのが重荷になるにつれて、酒以外の話題に触れるのが無意味になってしまうよ。ホープ 冗談を言ってる場合じゃない。部屋代はどのくらいになっているのだか、それを教えてくれないか。ルイス 済まない、加算するのがいつも俺を悩ませ続けている。引き算こそ俺の得意技なのさ。ホープ (つっけんどんに言う)あらら、おかしな奴だ、大尉。君の傷を隠せよ。服を着てくれ、頼むから。ここはトルコ風呂なんかじゃない。不潔な水兵さんよ。田舎出の田吾作を抜け出るのに何年もかけているなあ。ウエットジョーエン 違うよ、ハリー。地獄へ堕ちろ。ホープ 無駄口をやめろ。このインチキほうれん草め。へっぽこ将軍。救世軍、そこが君のいどころなのだ。自分の出自を自慢しているだけだ。君は彼を偲んでいる。彼の方でもそうしている。同じように良くないよ。そして今、二人ともに俺に寄宿している。(脅すように)でも、今回はラクダの背中を壊してしまったのだ。明日支払いを済ませるか、それとも出て行ってくれ。ルイス (熱心に)親愛なる友よ、君に俺の名誉ある者、紳士としての言葉を与えよう。明日には支払いを済ませるよ。ウエットジョーエン 誓うよ、ハリー。明日は、間違いなくそうする。マクグロイン (目を輝かせて)さあさあ、ハリー。きっと公平にするよ。モッシャー (マクグロインに目くばせして)そう、もうそれ以上は言わなくとも大丈夫だよ。約束は約束だからね、しばしば俺が思っているようにさ。ホープ (彼等の方を向き)君達二人ともだよ、老いぼれた収賄巡査とバンコ勝負のさくら役。俺にはうってつけの仲間だ。何時から俺の部屋に住んでいるか分からない変ちくりんな男達。豚みたいに太りやがった。俺を連れて上の部屋まで連れて行ってくれる親切ささえ持っちゃいない。怠け者みたいに椅子の上で寝させてくれ。ヒッキーが姿を現すまで俺が下にいて、君等に酒をふるまうだろうことを希望するのだよ。マクグロイン エドと俺は精一杯踏ん張って君を上に運び上げようと努力したんだ。モッシャー そうとも。でも君は言った、あの部屋には我慢がならない、何故なら、記憶が老いた哀れなベッシ―を君の所へ連れ戻す夜な夜なが来るからだと。ホープ (彼の顔は直ぐに長く、悲し気で、感傷的になり、物寂しげに)そう、言うとおりだよ。俺は今思い出している。俺はどの部屋でも在りし日の彼女を思い出すのだ、あれから二十年経過した…。(彼の喉と目が一杯に詰まって) (その場に相応しい感傷的な静寂が部屋を領有している)ラリー (冷笑的な囁き声でパリットに)昨日のパイプドリームは感動的じゃないかね。あらゆる事柄で、ベッシ―はホープに小言を言っていたのだよ。ジミー (ずっと夢見るようにしていたが、決意の表情を顔に浮かべて、自分自身に声に出して)こんな風に座って、ぶらぶらと時を過ごすのには飽き飽きした。時間が俺を離さない。明日の朝には靴の底と踵を張り替え、ピカピカに磨いて、全体に小ざっぱりして、全体をこざっぱりと整えてから…(声が小さく絞られて、前を見詰めている) (ラリーとパリット以外は誰も彼に注意を払わない)ラリー (前の様に、皮肉な調子で、横のパリットを見て)明日の催しは悲しくて美しいものなのだよ。マクグロイン (大きく感傷的な溜息をつき、そして計算するような目つきでホープを見て)可哀想な、老いたベッシ―。今日びには彼女みたいな女性はいないよ。あんな素敵な女性はもう出てこないだろうよ。モッシャー (同じ様な計算するような雰囲気で)善良な、老べス。男としてあんな妹を持つことは出来はしないのだよ。ホープ (悲しむように)二十年、彼女を埋葬してからこの家を一歩も出ていないのだ。心情などは持つな。一旦彼女が逝ってしまったら、俺には何も残っちゃいないのだ。全部の野心もなくしてしまったし。彼女無しでは何も手につかないよ。エド、覚えているかな、男の子達は俺を区長に推薦してくれようとしていた。それは固まっていたことだ。べシーがそれを望み、誇りに思っていた。しかし彼女がそれを引き受けた時、俺は少年たちに言った、いいや、子供達、私は出来ないよ。私には単純にその気がないのだよ、と。俺は選挙すれば選ばれていただろう。(彼は少し喧嘩腰で言う)少年たちはこの地区でその年には勝目がないと知っていたから俺を推薦したのだと言う嫉妬深い賢げな奴らが居たのだ。しかし、それは全くの嘘っぱちだった。俺はその地区のあらゆる男や女、子供を知っていた、大部分だがね。ベシーが俺をしてみんなと仲良くなるように仕向け、彼らの名前を全部覚える様に助けてくれたから、俺は容易に選ばれていたに相違ない。マグロイン そうだよ、ハリー。確実だったんだよ。モッシャー 全く簡単だったさ、ハリー。誰もがそれを知っている。ホープ その通りだ。でもべシーが死ぬと、俺はその気を失くした。それでも、彼女は俺が後半生をこの場所に閉じ込められて過ごすことを望んじゃいなかった。俺の悲しみを十分すぎるくらい理解していてくれたからなあ。それで俺は間もなく此処から出て行こうと心を決めたんだ。区内を歩き廻り、俺が昔から知っていた友達全員と会い、少年達と手を携えて、一緒にゲームをまた楽しもうと思うのだ。そうだ、もう決めたのだよ。俺の誕生日は、明日だ。それは新しい人生のページをめくるには相応しい時さ。六十歳、そんなに老人でもないよ。マグロイン (誉めそやすように)人生の最もいい時期だよ、ハリー。モッシャー 素晴らしい事じゃないか、ハリー、君は今まで以上に若いよ。ジミー (夢見心地で声を出して)洗濯やから衣類を持ってこよう。まだあそこに置いたままだからな。清潔なカラーとシャツ。一つを選択すると、後は無くなってしまう。靴下もだ。俺は見良い服装をしたのだ。
2024年02月20日
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ウイリー (懐疑的に)壊れた。君は無一文のがっついた顔つきをしていない。俺は君を財閥だと半断するが君のポケットには びた銭が詰まっている。少なくとも二ドルか三ドル。我々は君にそれを何処で手に入れたかなぞとは質問しないよ。べスパジアンが喝破した如くに、ウイスキーは全部甘く匂う。パリット どういう意味ですか、僕がお金を何処で手に入れたか、とは。(ラリーに向けて、笑いを無理に作り)僕を財閥呼ばわりするなんて、御笑い草ですよ、ラリー。僕は生涯の全部をあの運動に献身したのですから。 (ラリーはパリットに不安で懐疑的な視線を送り、眼を逸らした。それはまるで何か嫌なものを見ないようにするかのようだ)ウイリー (吐き捨てる様に)ああ、あの連中の一人かい。俺は今君を信用しよう、大丈夫だ。あっちへ行って、怒りを爆発させな、よい子よ。ヒューゴはただ一人の免許を持った福音書の説教師だ。危険なテロリストの、ヒューゴ。彼は直ぐにビールの大コップを目の前で飲み干してしまうだろう、(ラリーに向いて)この無用な若者を無視しようや、ラリー。我々も祈りに参加しようや、偉大なるセールスマンのヒッキーが幸いなるブルジョワの札束をひっさげて到着するだろうからね。ヒッキーか死神がやって来るだろう。その間に俺は唄を歌う。美しくて古いニューイングランドのフォークバラードだが、教育の最中にハーバードで採取したものだ。(彼は荒々しいバリトンで、拳でテーブルを叩きながら、次に示す一節を歌う) ジャック、おお、ジャック、は若い船員だよ。そして彼は酒場にジンを飲みに来た。 そして口で トン トン トンと鳴らした。だが、決して魂は込めない。 (テーブル席の酔っぱらい達が動いた。ロッキーはバーの席から立ち上がり、裏部屋への入口へと後ずさりした。ホープは苛ついて眼鏡越しに片目を上に向けた。ジョー・モット―は両目を開き、ニヤリと笑う。ウイリーはラリーに酔っぱらい特有の気まぐれな説明を差し挟んだ)この美しい小唄の原曲は神秘に包まれている、ラリー。ケンブリッジ大の便所に書き伝えられている伝説があるが、ワルド・エマーソンが牧師として勤務した時期に作曲したものだそうだ。一方で彼は讃美歌を書こうとしていたのだ。俺の意見では、もっと遡ることになると思う。ジョナサン・エドワードが作詞し作曲したのだ。(彼は歌う) 彼は口ずさむ、ラップ ラップ そしてトン トン トン と。死者が起きるのに十分なまで。やがて乙女が、ラップ ラップ ラップ と口ずさむ、彼の頭上の窓辺で。 (酔っぱらい達は目をしょぼつかせ、ぶつくさ呟き、呪いの言葉の様な音を立てる。ロッキーが後ろのバーから姿を現し、欠伸をした)ホープ (イライラとして)ロッキー、その気違い歌をやめて静かにしろ。(ロッキーはウイリーの所に歩み寄り)ウイリー そして今、善き女性の影響は我々船員の生活に入って来る。そう、多分、善い ではなくて形容詞は 途轍もなく親切 が相応しい。(彼は歌う) まあ、いらっしゃいな、素敵な若い船乗りさん、と乙女は言う。あなたと私は意気投合し、最も可愛らしい物をお見せしましょうね。ラップ ラップ ラップ、今までに目にしたこともない最上の宝物を。(彼は話す)解るかい、ラリー。みだらな清教徒調さ、明らかに、そして更にその特徴が明瞭になるのだ。(歌う) ああ、若者は乙女の腰に手を回し、彼女の輝く青い瞳を見詰める、そしてそれから彼は…。(しかし此処でロッキーはウイリーの肩をゆすって)ロッキー ピアノだ。この屑溜まりを貴様はどう思っているのだ。ホープ 奴に上の階のくだらない物をやれ。奴を部屋に閉じ込めてしまえ。ロッキー (ウイリーの腕をぐいと引っ張る)さあ、飲んだくれ。ウイリー (憐れむべき恐怖に陥って)いやだ、頼むよ。ロッキー、一人であの部屋にいると気が狂ってしまう。幽霊が出るのだよ。俺は…。(ホープに声を掛ける)頼むよ、ハリー、此処に居させてくれ。静かにするから。ホープ (直ぐに優しくなり、しかし憤然として)彼に何をしようというのだい、ロッキー。この哀れな男を打ちのめせなどとは言わなかった。静かにしているのだったら、ほっといてやれ よ。 (ロッキーはウイリーを憤慨したように放し、バーの自分の席に戻った)ウイリー (しゃ枯れ声で)有難う、ハリー。君はいい男だよ。(目を閉じて疲れ果てたように椅子にもたれ、また体を引きつらせたりびくびくと痙攣させる)ホープ (朦朧としながら目覚めているマクグロインとモッシャーに話し掛けて、非難するように)いつも同じだ。誰も信じられない。秩序を保つのはあのダーゴに任せろ、兎に角大騒ぎしている、歌ったり、色んなことして。そして君ら二人はバーの大事な常連で途轍もなく俺の助けになっている。食べて、眠って、酔っぱらえ。全部がいい、この家には地獄が凍りついてしまうまで酒はないんだよ。(二人ともホープの侮辱と脅しには無関心で彼に二日酔いの笑みを向けて、互いにウインクし合った。ハリーはぷんぷんしている)笑え、ウインクしろ。此畜生め、二人して俺に目をつけてやがる。(二人を怒りきれずにぶつくさと小声で呟いている。一方、中央のテーブルではルイス大尉とウエットジョーエン将軍が重い二日酔いの許す範囲でぱっちりと目を覚ましている。ジミー・トモローが頷き、眼をしょぼつかせている。ルイスはテーブル越しにまだウイリーの唄でひとりクックと笑っているジョー・モットを凝視している。ルイスの顔の表情は自分の見ている対象を信じられないようだ)ルイス (自分に対して声を出して、酔った驚きで)やれやれ、俺は血なまぐさい事が好きなカルフィー族の奴と一緒のテーブルで酒を飲んでいたのか。ジョー (にやにやと笑って)やあ、大尉。御目覚めですかね。カルフィールだって。誰のことかね。ウエット・ジョーエン (目をしょぼつかせて)カルフィールとは黒人だよ、ジョー。(ジョーは身を固くして、眼を細める。ウエット・ジョーエンは大層な滑稽さを示して続ける)奴に冗談を言うなよ、ジョー。彼は君を知らない。彼はまだ酔っぱらっている。酔いどれ紳士って格さ。俺のライフルでライミ―将校を大勢撃ったのだが、彼を外してしまった。憐れんでくれよ。(彼はクックと笑い、ルイスの裸の肩を軽く叩いた)へい、目を覚ませ、セシル。おバカさんよ。お前は旧友のジョーを知らないのか。彼は黒人のカルフィールなんかじゃないさ。白人だ、ジョーは。ルイス (明るい兆しで、悔恨の情を見せて)俺の深甚なる悔恨をみせよう、ジョセフ、古き友よ。視界はぼんやりしている、と思うが、俺が知っているもっとも白人らしい黒人。我が友と呼ぶのを誇りにしている。優しい感情なのさ、ねえ。(彼は手を差し伸べた)ジョー (直ぐにニヤリとして善良な性格を示し、握手した)いいえ、大尉、それは間違いですよ。若い常備兵、水兵だとしても。(やがて彼の顔が固くなった)でも僕は誰からも黒人扱いされていない、断じて。昔、人々は僕を黒人と呼んだ、病院で目覚めると。僕は不潔なギャング団のリーダーだった。僕等六人の黒んぼは頑強だった、特に僕はね。ウエットジョーエン (自慢げな回顧癖に鼓舞されて)僕は古き時代にトランスバールであまりにも頑健で力持ちだったので、牛車に荷物を一杯に摘んで羽でもあるかのように曳いたのだ。ルイス (穏やかに笑いを浮かべて)君に関しては一廉の人間の様に歩く香しいボーア人として君を自由にしている外人政策の重大な失策と言うべきだ。一度君とクロンジェの義勇軍を取り押さえたのだ。我々はロンドン動物園に連れて行くべきだった。そして竹の檻に閉じ込めて、そして説明書きに「観覧者は彼の青い背中で本物のヒヒと区別して頂きたい」とつけて。ウエットジョーエン (にやりと笑う)南無さん、十人の勇敢な水兵を少なくとその額を射抜いて、スピオン・コプジェでね、俺は君を逃してしまった。俺は自分を決して許さないつもりだ。 (ジミー・トモローは一人ひとりに酔っぱらいらしい優しい微笑を示した)ジミー (感傷的な気分で)さあ、さあ、セシル、ピエット。我々は戦争を忘れるべきだよ。ボウアと英国は公平に戦い、よりよい方が勝利し、最後には握手した。我々は皆兄弟さ、帝国軍旗の下では太陽は決して沈まない。(涙が彼の目に溢れる。彼は非常な感傷を込めて引用した。まるで少しだけ勤勉さを示すように) 船でスエズの西の何処かへ連れて行ってくれないか……。ラリー (突然に冷笑的になって)もう君はそこにいるよ、ジミー。最悪こそ最善なのが此処さ。そして西は東で、明日は昨日なのだ。それ以上、何が欲しいんだよ。ジミー (少しだけ寛大さを見せて、やんわりと非難するように)いいや、ラリー、旧友よ。僕を騙すことなど出来はしない。君は辛辣で皮肉な哲学者を気取っているが、心の中では吾々の中で最も親切な人なんだ。ラリー (混乱して、苛つきながら)馬鹿を言うなよ。パリット (ラリーの方へ体を傾けて、確信ありげに)何たる馬鹿者達だ。ジミー (何かを思い出したように、どこか切迫した素早さを示し、もう滅茶苦茶を言う風ではなくて)明日だ、そう。俺が整理をして、仕事にまた取り掛かる潮時なんだ。(潔癖そうに袖を伸ばして)このスーツを洗濯してアイロンを掛けなけれなならない。俺は浮浪者みたいにみられてはだめなんだ、つまり…。
2024年02月15日
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ラリー (パリットを見つめて)それでどうなのだい。パリット (たじろいで、そして強調するように)確かに。僕は馬鹿じゃあない。僕は永遠に信じ続ける事など出来はしないあの連中が世界を変えるだろうなんて、粗末な演台上でするあのけけばけばしい戦略論や不潔なビルや橋を爆破する方法で。僕は賢く振る舞って、それが全部気違いじみたパイプドリームだと知ったのだ。(訴えるように)ラリー、あなたも同様の事をした。それが僕を此処へ来させたのです。あなたが理解するだろうと僕は知っている。僕を終わらせたのはこの最期の仕事、誰かが秘密取引で裏を掻く事なのだ。あんなことが起こってしまった後であなたは何を信じるられでしょうか。あれでなたは凍り付いてしまった。あなたは何が何だか分からなくなってしまった。あなたは終わってしまったのです。(訴えるように)僕の気持が解る筈ですよね、ラリー。 (ラリーはパリットを見詰め、同情して、思わず知らず憐みを感じ、混乱するのを拒絶するように自分がパリットに感じている何かに困惑して。しかし、彼が返答をする前にヒューゴが自分の腕から突然頭をもたげ、半分酩酊したまま喋り出した)ヒューゴ (ガラガラ声の熱弁調で自分に言い聞かせるように)日々は熱くなり、おー、バビロン。汝が柳の下は涼し。(パリットは吃驚したようにヒューゴの方を向く、パリットは酔眼朦朧とした彼を見ても識別できずに自動的に、威嚇する如くに叫ぶ)くたばれ、便所鳩め。パリット (ちじこまり、口ごもりながら)何だって。どういう意味なんだ。(やがて憤慨したように)薄汚い虫けらめ。そんな風に僕を呼ぶな。(拳を固める)ヒューゴ (これを無視し、パリットを認めて、子供じみたたらかい口調で)やあ、坊や。猿面冠者君。君だとは分からなかった。大きくなったなあ。御母ちゃんは元気かね。何処から来たのだ。(威嚇するような口調になって)馬鹿な真似はややめろよ、一ドル貸してくれ。酒を買ってくれ。(これで彼は消耗してしまった如くに、自分の言葉を忘れ再び腕の中に頭を落として再度眠り込んだ)パリット (ほっと吐息をついて)解った、君に酒をおごろう、ヒューゴ。僕は破産しているが、君に一杯の酒ぐらいは振る舞える。腹を立てたりして済まない。君は酔っぱらうと誰でも便所鳩呼ばわりすることを覚えておくべきだったんだ。でも,今の場合には冗談なんかじゃ済まされない。(不安げな表情で見ているラリーの方を向き、自分自身の考えに怯えたかのように、笑みをムリに見せて)ヒューゴはまた眠ってしまった。(防御するように身を固くして)その怖い目つきで僕に何を与えようとしているのだろうか。ああ、解った。僕が彼を打とうとしたと思ったのだ。僕はどんな風に見えるのだろうか。僕はいつでもヒューゴを大いに尊敬し続けて来た。例の運動の連中が老いた飲んだくれ野郎と爪弾きした時でも、僕は彼の味方に立った。ヒョーゴは自分の田舎で十年間勤勉に働き、一人で目を潰してしまった。僕は奴らの何人かがあれに拘泥しているのを見たいと思っている。そう、彼等は今やチャンスを掴もうとして、(急いで)いや、そういう意味じゃあない。でもそれは忘れよう。このゴミ捨て場についてもう少し話してくれないか。誰が此処に屯している。誰が急性の肺炎に罹ろうとしているのだ。(ルイスを指差している)ラリー (殆ど怯えたようにパリットを見詰めて、それから視線を逸らして、この機に熱心に話題を変える事に振り向てる。彼は寝ている者達を冷笑的に描写し、同時に彼等に対する愛情を示しながら)あれはルイス大尉、往年のイギリス陸軍の英雄。彼は土人の槍で受けた背中の傷を膏薬で塗り固めた時に、裸になってそれを見せようとする。彼に対抗する髭もじゃの男は将軍ウエット・ジョーエンだ。彼は義勇民軍を指揮した。二人ともこの地に来て、セントルイス市のボア戦争の見世物で働き、それ以来親友になっのだ。彼らは南アフリカで互いに殺し合いをした勇敢な時代を懐かしむ時間を楽しみにしている。二人の間に挟まっているちび助が、ある英字新聞の特派員だった。彼のここでのニッ久ネームはジミー・トモロー。彼は我らの明日運動のリーダーさ。パリット 彼らは暮らしの為に何をしているのです。ラリー 最小限の事さ。時たま彼等の一人が上手くどこかと接触して、何人かが家庭との接触で月に数ドル入手する。決して戻らないからという条件でだ。後の連中に関しは無料ランチと旧友のハリーホープの援助で生活している。ホープが好きな者なら働こうと働かまいとそうするのさ。パリット 大変な生活だね。ラリー そうでもないのさ。同情無用だ。彼等は感謝なんかはしない。彼等は何とかして酒を飲み、どんな手段を講じてでも自分たちのパイプドリームを持ち続ける。それが人生に連中が求めている物の全てなのだ。奴等程に満足している人間を見た事が無い。人が心の底から欲している目的を達するなんて、そうざらにあることじゃあない。それはハリー本人やテーブルの一番端にいる二人の旧友にも当てはまる事。ホープは今の生活にすっかり満足しきっているので、二十年前にかみさんが死んで以来、外の場所に足を踏み出すことをしようとしない。彼は完全に外の世界を必要としてはいない。この場所は通りを挟んだ市場の人間や河岸沿いの労働者と素晴らしい商売が出来るので、彼の渇望と善良な心にもかかわらず、外に出る事になる。彼がタマニー派の政治家だった頃の知り合いがいつもいるので、困難さを心配しないでいられるのだ。それに友好的な醸造所があってしのいでいるのだ。彼の二人の友がどう働いているかなんて訊かないでくれ。こには生涯を通じた客以外はいないのだ。此処に向いている一人は義理の兄弟、エド・モッシャー、彼は以前チケット売り場でサーカスの一員として働いていた。パット・マクグロインはもう一人で汚職が横行した時代に警官だった。が余りにも強欲だったので、粛清の査察で権力から追放された。(ジョーに頷いて)ここのジョーも同じく輝かしい時を持っていた。そして一頭の色付き馬を所有してどえらい博打打だった。そう、これで吾等の身内の全部で、あとは二人のバーテンダーとその娘達、三階に部屋を持つ路上の貴婦人方だ。パリット (厳しく)糞くらえだ。僕は二度と売春婦などとは関わりたくない。(ラリーが困惑して目くばせすると、彼は混乱して付け加えた)彼女達はいつも困らせるのだ。 (彼が話をしているとウイリー・オーバンが目を開けた。仲間の方へ身を傾けて、大酒を飲んでいたのでからかうような鄭重さで話す)ウイリー 何故に俺を君の人名録から外したのかね、ラリー。俺はこの仲間内では唯一血統書附きなのに。(パリットに向かって、散漫に)ハーバード大で教育を受けてもいる。君は此処の文化的な雰囲気に気づいているね。俺のささやかな貢献さ。そう、寛大なる他人。君が寛大なのを認めよう。俺は高貴な血筋に生まれたが残念ながら跡取りではなかった。故世界的に有名なビル・オーバン、バケット商会の総帥の息子だが。地方長官によって指揮された革命的な取り締まりで父親は廃位され、追放された。事実、ぶっちゃけた話が、彼を桶の中に閉じ込めてそのカギを捨ててしまった。彼の精神は幽閉された冒険心のそれだ。そうして父は死んだ。こんな回顧談を許してくれたまえ。疑いもなく、これは君がよく承知している事だし、世界中が知っている。パリット (居心地悪るそうに)不運だ。初耳ですよ。ウイリー (信じられないように目をしょぼつかせて)聞いた事がない。俺は世界中が…。そう、ハーバード大でさえ評判で俺の父親の事はよく知られていた。地方長官が悪い宣伝を彼に与える前だったけれども。新入生の頃から俺は有名だった。社会は温かい温情で迎えてくれたさ。あたかも、ヘンリー・ワーズワース・ロングヘローがブラットル通りでカンカン踊りを踊っていた黒人女性に示したであろう様なそれで。ハーバード大学は俺の父親の発想に依った。彼は野心家にして高慢だった。俺にとって何が最善かを常に知っていた。そして俺は自分でも輝かしい成績を獲得した。逆恨みした級友が汚い策略を仕掛けるのを俺は恐れた。(彼は引用する) ” 懐かしい学生生活、楽しき日々よ。人生の最高にして素晴らしき時代 “ それは勿論、イエール大のニュウヘイブンでの大学的な誇張に過ぎない。俺はロースクールでも抜群の成績だった。父親は一家に弁護士を擁したいと念願していた。彼は計算高い男だったから。完全な法律の知識は法網を潜り抜ける抜け道を探るのに便利な手段だった。しかし俺はウイスキーに抜け穴を見つけ、父親の支配を脱した。(突然パリットに向かい)ウイスキーと言えば、どうか思い出させてくれないか、そいて君も思い出してくれたまえ、皇子に出会ったら形式的な挨拶を、貴方は何を御望みですか、と。パリット (防御的な拒絶を示して)だめだ、あんた達は僕が金銭の塊だと思っているみたいだ。皆に御馳走する銭を何処から手に入れると思うのです。
2024年02月13日
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ラリー (困ったように彼を見詰めて)何を理解するって。パリット (性急に)そう、僕がこれまでにやって来たこと全て。(視線を逸らして)ああ、こいつは地獄の神経をもっていると、貴方が考えている事を僕は知っているよ。餓鬼の頃以来彼には会っていない。僕は彼が生きているのをすっかり忘れてしまっていた。でも僕はあなたを忘れた事は無いんだ、ラリー。あなたは僕に注意を払ってくれた、或いは僕が生きていると知っているマザーの唯一の友人だった。外のみんなは運動に夢中だったのだ。マザーでさえもが。そして僕にはオールドマンはいない。あなたは膝の上に僕を乗せて、話を聞かせ、冗談を飛ばして僕を笑わせてくれた。僕に質問をして僕が真面目に答えるのを受け止めてくれた。長年の間あなたは僕等と一緒に住み、僕のオールドマンの地位にいたように感じていたように思う。(困惑したように)しかし、畜生め、それは女々しい感傷過多さ。あなたはそんなことは何も覚えてはいないだろう。ラリー (思わず感動させられて)よく覚えているよ。君は生真面目な寂しい詐欺師だった。(やがて感動から冷めた後で、話題を変えて)警察が君の母親やその仲間を逮捕した時サツは君を逮捕しなかったのかい。パリット (声を低めて、しかし事情を告げたくていたように熱心に)僕は現場にはいなかった。その知らせを聞くや否や僕は隠れ家に潜伏した。あなたは僕が運のいい人間だと気づいていた。僕は警察に囲い込まれた。ある種、変装した者として。僕は溜まり場や賭け場、偽装ショップなどサツが決して探さない場所を転々としていたのだ。とにかく、警察は重要人物は逃さないでいて、後になるまで僕の事などは考えなかった。ラリー 新聞はバーンズと言う男が事前に情報をリークして運動家の内部情報は漏れてしまっていたらしいと書いていたよ。パリット (眼だけラリーに向けて、ゆっくりと)そう、それは本当だろうと思う。誰が犯人なのか分からないままだ。いずれ真相は解明されるだろう。バーンズ達をはじき出す取引はされた。警察は証拠など必要としていない。ラリー (緊張して)御蔭で、俺は有象無象の奴らを信じる気は全くない。奴等とはとっくの昔に縁を切ってしまっている。俺は奴らが大馬鹿野郎で、大部分が奴らが攻撃している最悪の資本家同様に権力をどん欲に欲しているのだ。俺は断言するが、奴らの中に平和主義者など一人もいない。パリット 確かに。僕も同様に宣誓するよ、ラリー。ラリー 誰であれ、地獄堕ちだよ。パリット 全く、同感だ。ラリー (少し間を置き、ぶっきら棒に)どうやって俺を見つけたのだ。俺の平和を乱しに誰もこの場所に来ない隠遁場所を此処に見つけたのだからな。パリット マザーを通じて発見したのさ。ラリー 彼女には誰にも教えるなと頼んでいたのだが。パリット 彼女は教えてはいない。が、彼女はあなたからの手紙を全部隠し持っていて、僕は彼女のアパートでそれを見つけて、彼女が逮捕された後で或る晩そこへ忍び込んだわけさ。ラリー 俺は彼女が手紙を貯めているなどとは考えもしなかった。パリット 僕もそう思った。マザーには柔らかさやセンチメンタルな要素はなにもなかったから。ラリー 彼女からの最期の手紙には返事を出さなかった。彼女にはここ数年手紙を書いていないし、外の誰にも書いてはいない。世界の誰とも交信しないように欲望を遮断してしまっている。さもないと、大切な点は、あのどん欲な狂気に邪魔されてしまうからね。パリット マザーがあんなに長くあなたと通信を続けていたのは奇妙なのだ。彼女が誰とも終えてしまったのは、彼女の終わりなのさ。彼女はそれをいつも誇りにしていた。そしてあなたは彼女があの運動をどう感じていたかを知っている。信仰復興者の信仰への説教みたいに、信仰への信頼を失った者は彼女には死人以上の存在なのだ。それは油で煮られるべきユダなのだ。それでも彼女はあなたを許すでしょう。ラリー (皮肉に)いいや、許さないさ。気にするな。彼女は手紙で俺を非難し、罪人を悔悟へと誘い、再び唯一絶対への信仰へと導くだろう。パリット どうしてあなたは運動を捨てたのですか、ラリー。マザーの為にですか。ラリー (ぎょっとして)馬鹿野郎! どうしてそんな馬鹿々々しい事を考えるんだ。パリット いいえ、何でもありませんよ。ただ、あなたが去る前に彼女と喧嘩した事を覚えているのです。ラリー (拒絶するように)ああ、それなら別に構わない。それは十一年前の事だ。君はたったの十一歳だった。我々が喧嘩したとすれば、俺が運動は美しい単なるパイプ・ドリームなのだと信じる様になったと彼女に告げたからさ。パリット (奇妙な笑いを浮かべて)僕はそんな風には記憶してはいない。ラリー それじゃあ君は自分の想像力を侮蔑して、忘れてしまえよ。(急に話題を変えて)君は俺が何故運動を止めたのかと訊いたが、それには十分な理由があるのだ。一つは俺だから、もう一つは仲間だ。最後は一般には人間と呼ばれている豚野郎だからさ。俺自身は、俺は強制されて認めた崇高な理由に三十年間献身した挙句に、俺はそれ向きではなかったことを悟ったのだ。俺は問題のあらゆる側面を見なければいられない呪われた者として生まれついた。君がそんな風に呪われていたら、最後には問題が倍加されて膨れ上がり、終いには問題が山積して終わりが無くなる。歴史は証明している、何ごとでも成功するには、とりわけ革命は、馬の様に目隠しをして前だけを見る事になる。また、悟るのさ、全てが黒で、全てが白だと。偉大な目的に献身する仲間はホレイス・ウオルポールがイギリスでしたように、人民の為なのだと感じたよ。理想の自由社会を構成する材料は人間自身と泥と肥しから作る大理石の寺院などじゃあない。人間の魂は雌豚の耳なら、シルクの財布を夢見る時間はあるよ。(冷笑的に笑い、しゃべり過ぎたのを悔やむかのように慌てて)そう、だから俺は運動から足を洗った。それは君の母親とは何の関係もない。パリット (嘲る様に笑い)ああ、確かに。僕は賭けてもいいが、マザーは彼女が原因だと思っている。あなたは彼女を知っている、ラリー。時々彼女の行動を聞くと、彼女こそ運動そのものだとあなたは思っている。ラリー (彼を見詰め、困惑してそれを跳ね除ける様に、鋭く)話すのは君にとって地獄への道だよ、彼女に起こってしまった後ではね。パリット (困惑し罪悪感を感じながら)僕を悪く思わないでください。あなたを小馬鹿にしているのではないので。ただ、からかっているのです。僕は彼女をからかって同じような事を何度も言ったりしたものだ。しかしあなたは正しい。僕はそうするべきではなかった。僕は彼女が刑務所に居る事実を忘れ続けている。それは現実ではないようだ。実際信じられない。彼女はいつでも自由闊達だった。僕は……、そのことを考えたくはないのさ。(ラリーは止むをえずに同情的になっている。パリットは話題を変えて)あなたは西海岸を離れてからずっと何をして長い年月を過ごしていたのだろうか、ラリー。ラリー (冷笑的に)何もしちゃいないさ。俺は運動を信じてはいなかった。外の何も、とりわけ国家などはね。おれはその社会の一員になる事を拒否し、ずっと哲学的な飲んだくれだったしそれを自慢にしていた。(突然に彼の口調は鋭く拒絶的な警告調になり)聞けよ、よそ者への出しゃばった質問に答える独自の理由があると考えてくれ。今の俺と君との関係の様にだ。強い予感があった、君が俺に何かを期待してここにやって来る。最初に君に警告する、誤解が生じないように、君に与える物など何も残しちゃいない。俺は独りになりたい、君が君自身で生きて行くのに感謝しよう。君は何かに対して何かを捜しているようだと感じる。俺は誰かに与える答えなど持っちゃいない、俺自身に対してもだ。ハイネがモルヒネに捧げる詩に書いている事を君が想起しなければ…、(彼はその詩の最後の聯の翻訳を引用して、冷笑的に) 見よ、眠りは美味し、死は更に善し。慰めとして、最善の事はこの世に生まれない事だ!パリット (ぎょっとしたように怯んで)それは答えとしては最悪だ。(それから強がりの無理したにやりを示して)でも、その死が何時身近に来るかあなたには分からない。(目を逸らす) (ラリーは彼を戸惑いの目で見つめ、われ知らず興味をそそられて、同時にぼんやりと不安そうに)ラリー (無頓着な調子を無理に作って)君は母親が入獄して以来あまり彼女に関する情報を入手する機会がなかったのだと思う。パリット ええ、全く。(もじもじした後で、出し抜けに言う)いずれにしても、母は僕から何かの便りなど望んでいないでしょうよ。僕らはあの事件が起こる前に喧嘩したんです。母は僕が売春婦達と付き合っていると僕を怒鳴りつけたのです。僕は母から逃げて来たのだ。僕は母に言った、貴女はいつも自由な女を演じ、何物からも独立して…、(そこで自制してから急いで続けた)それが母の癪に触った。母は言った、僕のする事などに介入しない。僕が余計な事ばかりして肝心な運動から関心を失ってしまったのだと疑っている、と。
2024年02月09日
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ロッキー (頷き、それから考え深かそうにして)何故彼は母親に付き纏われて此処へやって来たのだい。ラリー (顔を顰めて)質問をしないでくれ。それには正当な理由があるのだ。ロッキー (彼を凝視して、何か納得したと言ったように)確かに。俺には分かっている。(やがて憂わしげに)しかし、どんな空元気があって自分の本名を晒しているのだ。ラリー (イライラして)俺は何も知らないと言っているんだ。それに知りたくもないのだ。運動なんか、それに関連した事などは糞くらえだ。俺はもう降りたんだ。その他の全部を喜んで捨てた。パリット (大人しく、札を出して)さあ、こうして見せているよ。僕がけちん坊だなんて思われたくはない。あなたが欲するなら一杯御馳走しようと思う。ジョー (元気づいて)もし、だって。もし俺が一杯の酒を欲しないならば、死体公示場の人間を呼んで、ジョーの体を持っていくように依頼する。彼は完全に死んでいるのだから。早くボトルをくれ、ロッキー。欲しいならおごるぜ、彼が気が変わらないうちにだ。(ロッキーはボトルとグラスを彼に渡した。彼はなみなみと酒を注ぎ、一気に喉に流し込んだ。そしてボトルとグラスをラリーに手渡した)ロッキー バーに行く前に煙草を貰いたい。どんな種類を持っているのかね。パリット 何も持ってはいないさ。僕はワゴンを運転しているからね。支払いはどのくらいなのだ。(彼はドル札を差し出した)ロッキー 十五セントだ。(彼はポケットから小銭を取り出した)パリット 酒のいくらかになるだろうな。ロッキー (肩を竦めて、無関心に)俺がパリットなんぞに興味を持っているなどと思うなよ。奴は俺には何でもないんだから。ジョー 俺もだよ。もしもう一つあったとしても俺は何も気にはしない。お前とヒューゴが運動と称しているのは単なる乳児の御遊びだ。(彼はクックと笑う。昔を回顧する如くに)俺とモス・ポーターがした馬鹿な議論を思い出させる。奴は酔っぱらい、俺はもっと酩酊していた。彼は言うんだ、社会主義者や無政府主義者は殺してしまえ。奴らはみんな糞野郎の息子だ。俺は言う、やめろよ、お前は社会主義者も無政府主義者も同じだと言っているようだ。そうだ、と彼。奴らは同じ穴のムジナだ。いや、違うぞ、と俺は言う。違いを説明してやろう。アナーキストは決して働かない。奴は酒を喰らい、買う事も無い、ニッケルを手に入れれば爆弾を作り、お前には何も与えないのだ。だから行って銃で殺してしまえ。社会主義者は時々は仕事をする。そして奴が十ドルを手にすれば、その信条に従って半々に山分けする。君は言う、俺の分はどうするのだ、同士よ。そして君は五ドル手にする。だから、俺が生きている限りは君は社会主義者を銃殺しない。つまり、彼等は何も得ないのだ。勿論、彼等は暴発する、やはり奴らは糞なんだ。(彼は笑い、クックと際限もなく笑い続ける)ラリー (皮肉な理解を見せてニヤリと笑い)お願いだ、ジョー。お前は人間の美質とあの小さな寓話にある世界の実際的な知恵を全部身に備えている。ロッキー (ジョーにウインクして)確かに、ラリーはこの溜まり場でたった一人の賢人じゃあないよ、なあ、ジョー。 (ホールからの音で彼は振り向くとジョン・パリットがドアから姿を現した。ロッキーは口の端から言葉を発して)やって来たな。(パリットは前に進む。彼は十八で背が高くて肩幅の広い男だが痩せていて、ひょろ長い、ひ弱な感じである。顔はイケメンで、ブロンドの巻き毛、大きな標準的な特徴だが、彼の人格は不愉快なもの。挑戦的でありながら迎合するものが彼の明るいブルーの目には揺らめいて居り、彼の態度にはイライラとした攻撃性が見られる。彼の服と靴は新品で、比較的高価でスポーティだ。彼は防御するように辺りをチラッと見て、ラリーを見ると前に進んで来た)パリット 今日は、ラリー。(ロッキーとジョーに頷き)今日は。 (彼等は頷き、表情のない目で彼を捉えた)ラリー (無造作に)何か用かい。眠そうに見えるが。パリット そうでもないさ。横にっているに飽きてしまった。あなたがいるかどうか見に来たのですよ。ラリー (右のテーブルの椅子を示して)坐って、仲間に入れよ。(パリットは腰を下ろす。ラリーは意味ありげに頷き)この家の極まりは四六時中酒が提供されることだ。パリット (無理に笑いを作り)解りました。でも、僕は爆発寸前なんだ。(彼はロッキーとジョーの軽蔑的な眼付を捉えて、素早く)ああ、あんた達が僕をどう見ているか理解しているさ。僕は公文書を身に着けている。でも、みんなは誤解してるよ。みんなにに見ようか。(彼はドル札の束をpocketから取り出した。これで全部だ。職を得るまでこれで生活しなければならない。(それから防御的凶暴性を見せて)僕は偽札を準備していると思うかい。そんなことはないのだが。何処で僕が札束を手に入れたかって。僕が長い事していた事柄をみんなは理解できないのさ。ラリーに訊こう。あなたは十分幸運だった、もし食べるのに不足がなければね。(ラリーは困ったように彼を見つめた)ロッキー(冷たく) 歌は何で、どんな踊りをするか、我々は何も言わないよ。パリット (大人しく、宥め賺すように)ああ、僕はあなたを正しく理解する。僕がけちん坊だなんて誤解しないでもらいたい。もし、何なら一杯御馳走してもいいのだが。ジョー (元気づいて)もし、だって。俺が酒を一杯ほしがらないとしたら、死体公示場の業者を呼ぶがいいさ。ジョーの体を運んでくれっと言って。奴はもう完全に死んでしまっていると言って。ロッキー、早くボトルをくれ。彼の気が変わらないうちに。(ロッキーは彼にボトルとグラスを手渡す。彼はなみなみと酒を注いで、一気に飲み干した。そしてラリーにそのまま手渡した)ロッキー バーに戻る前に煙草を貰いたい。どんな奴を持っている。パリット 何も。僕はワゴンを運転している。損害はどのくらいなのだ。(彼はドル札を取り出した)ロッキー 十五セントだ。(彼はポケットから小銭を取り出した)パリット いくらかの酒代になるだろう。炭酸とシアン化物が甘い味を加えている。幸運に乾杯。(彼は飲む)ロッキー バーに戻って、少し仮眠をとって、店を開く段取りだ。(彼はテーブルの間を押しのけて右後ろのカーテンの中に姿を消した。右のバー区域に彼は進んでテーブルにどすんと腰かけ目を閉じて欠伸をした)ジョー (何か思い図る様にパリットを見詰めて、それから目をそらし、声に出して自分自身に哲学的に)呑み助野郎。ハリーの誕生日パーティまでは望みがない。ヒッキーは姿を現していない。(ラリーの方を向いて)ラリー、ヒッキーが来たら俺を椅子で叩いて起こしてくれよ。(姿勢を治すと、眠りに落ちた)パリット ヒッキーって誰です。ラリー 金属類の出張販売人だよ。ハリー・ホープや仲間の旧友だ。彼は大人物さ。彼は定期的に年に二回此処へ来る。大酒を喰らい全部散財してしまう。パリット (軽蔑したように辺りを見回して)宿泊するにはひどい所だ。ラリー 彼には良い所でもあるさ。彼は決して此処で商売する人間に介入しないのさ。パリット (声を低めて)そうだ、僕もそれがほしかった。僕は昨夜話したように覆いが欲しかったのだから、ラリー。ラリー 君はヒントだけは多く呉れたよ。何も話してはくれていないのさ。パリット 推測は出来るだろう。(突然、話題を変えて)僕は西海岸でいくつか隠れ場所を巡った。これがヒントだ。一体、どんな博打宿だろうか。ラリー (冷笑的な笑いを浮かべて)それは何なのだ。絶望酒場だろう。最低バー、ライン・カフェのどん詰まり、海岸ビヤホールの底だ。穏やかな雰囲気に気づかなかったかい。そこは最後の停泊場所だからなあ。此処の誰もが次に行く所なんか気にしない。何故なら彼らがもっと先になど行けないからだ。それが彼らの大なる慰めなのだ。此処でさえ彼らは幾つかの無害なパイププ・ドリームと共に生活の体面を保っている、つまり昨日や明日のだ。此処に長くいれば君自身で理解することになるよ。パリット (奇妙な好奇の目で彼を見て)あなたのパイプ・ドリームは何なのさ、ラリー。ラリー (敵意を隠しながら)ああ、俺は例外だよ。御蔭で俺には何もない。(ぶっきらぼうに)この場所の不平を言うな。身を隠すには絶好の場所だよ。パリット それは嬉しいよ、ラリー。僕はあんまり気分が良くない。僕は西海岸で完全にやられちゃっているので、田舎回りをしても面白くないのだ。ラリー (今は同情して)そうでもないぜ。此処は安全だから。サツも此処は無視する。奴等はここを墓場と同じ位無害だと思っている。(皮肉に笑って)どうやら、それは間違いじゃない。パリット 地獄みたいに寂しいし。(衝動的に)キリスト様よ。僕はあなたに会えて嬉しいよ、ラリー。僕は自分に言い続けている、ラリーを見つけ出せさえすれば大丈夫だ、彼は世界でただ一人理解してくれる人物だ、って…。(彼はもじもじして、ラリーに奇妙な訴えをするように見詰めて)
2024年02月07日
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ラリー (内部に冷笑的な面白さを持って、追従的に) 狡賢いビジネスマン。世界で上手く遣って行くどんな機会も逃さない奴。そう俺が君を呼ぶのだ。ロッキー (喜んで)確かな事、それが俺だ。もう一杯ひったくろう。ラリー。 (ラリーはウイリーのテーブルからボトルを取ってグラスに注ぎ、一気に飲み干した。ロッキーは部屋を見廻して) ここの飲んだくれ全員が上の階で安眠できるなんて考えてはいけない。ヒッキーが姿を現して時に上手くやれるかどうかと怯えているのだ。彼らは酒を飲み損なう。それでお前は眠れないでいるのだろう。ラリー そうだよ。でも酒を飲む機会はそう多くはないさ、それを信じたとしてもだ。俺はブルースを貰ったし、ヒッキーは何でも冗談にしてしまう大人物で、お前を元気づけるのさ。ロッキー そう、冗談屋。彼が女房の事をギャグにしてしまったのを忘れるなよ。彼は女房の写真を斜めに見ながら泣いて、突然に氷屋と干し草の中に女房を残して出奔したのさ。(彼は笑うう) 彼に何が起こったのだろうか。この前に君は雑誌の側に時計を置くことは出来る。いつでも此処では何日かするとハリーの誕生パーティがあり、今彼は今夜にもそれを準備している。彼が直ぐに姿を現すといいのだが。このゴミ捨て場は死体置き場さながらで、酔っぱらいはみんな消えて行くのだ。 (ウイリ―・オーバンは眠りながら痙攣的に体を引きつらせ、口の中でぶつぶつと言う。周りの連中が彼を見つめる)ウイリー (出し抜けに声を発して)それは嘘だ。(惨めに) パパ、パパ…。ラリー 哀れな奴め。(それから自分自身に腹を立てて)だが、同情なんか糞くらえだ。良くないし、真っ平だよ。ロッキー 彼の老人を夢に見ているのだろうよ。老人たちが言うように、老人は安酒場から安酒を手に入れて飲むのだ。(彼はウイリーがしかめ面をしていると思う)彼がよくはないとは前に見て来たがこれ程ではなかった。あの起き方を見て見ろよ。昔の救いゲームをしているのだろうよ。二日前にソリーの店でスーツと靴を売ってしまったのだ。ソリーは彼に二束三文しかやらなかった。昨日も彼はソリーにボロを売って、小銭を受け取った。今彼は素寒貧なのだ。ソリーの最期の恵みは何もない。ウイリーは確実に底辺に堕ちた。俺はあれ程に悪い状態をヒッキーが突き当たった悪い状況以外には見た事が無いよ。ラリー (冷笑的に) それは偉大なゲームで、幸福の追求だ。ロッキー ハリーは彼をどうしたらよいのか解らないのだ。彼は老婦人の弁護士を訪ねてウイリーが行き詰った時にそうするように。彼等は私的なつまらない物を彼に送って、治療する為にそうしていたのだが、その弁護士はハリーにウイリーから手を引いて地獄にいかせるしかないと告げたのだ。ラリー (老犬の様に眠りながら体をゆすっているウイリーを見守り)彼がそれ以上行けないドン詰まりにいるのが慰めなんだよ。(これに答えでもするように、ウイリーは体を動かしてうめき声を出した。ラリーは滑稽な仕草を最高度に示しながら、狂的な囁きで)神様、彼はたった今ドアを叩いているのです。ウイリー (その悪夢の中で奇声を発して)大嘘だよ。(彼はすすり泣き始めている)オー、パパ。キリスト様。(その部屋にいる全員が椅子の中で身動きするが、ホープ以外は目を覚まさない)ロッキー (ウイリーの体を掴んで揺する)おい、貴様、音を立てるなよ。(ウイリーは目を開けて怯えたように周りを見つめた)ホープ (片目を開けて眼鏡越しに見て、酔った調子で)その声は誰なんだ。ロッキー ウイリー、親分。ブルックリン少年が追いかけているよ。ホープ (不平たらたらと)やい、何で奴に一杯飲ませて黙らせないのだよ。俺は自分の裏部屋で一寸眠る事も出来ないのか。ロッキー (ラリーに向かい憤然として)あのド目暗め。つんぼ野郎。彼は俺に厳命して言いやがった、ウイリーにはもう飲ませるな、どんなことがあってもと。ホープ (機械的に手を耳に当てて、つんぼを装って)あれは何だ。聞こえないぞ。(そして酔っぱらった怒り易さで)斜視の嘘つき。俺が生きているうちは飲みたい奴には飲ませろ。お前の判断を働かせろと言ったはずだ。それ以上知らなくていいのだ。君は俺をだまくらかそうとやっきなんだからな。俺はまだレジを見る事は出来るんだぞ。ロッキー (ニヤリと笑い、彼に愛情ある態度で、御世辞を言うように)はい、ボス。あんたを馬鹿にする絶好の機会だ。ホープ 俺はお前に対して賢いのだ、相棒君よ。君は夜盗でバーの経営者じゃないよ。めくらでつんぼの偽物が俺か。ああ、聞こえるよ。君は考えていない時にはしばしば聞こえるのだ。君は蔭で俺を笑っている。空中に銭を投げ上げ、天上に張り付いた分が俺の分け前だとか、人々に話している。君は死んだ御袋さんから小銭をくすねているのさ。ロッキー (ラリーにウインクして)ああ、俺とチャックとは冗談を言っているだけさ。ホープ (更に酔った調子で)俺は君ら二人からは自由なのだ。もし君が俺をおもちゃ扱いしているつもりなら、お門違いなのだよ。誰だってハリー・ホープを小ばかにして遊ぶのは許されはしない。ロッキー (ラリーに対して)誰もがしていることだよ。ホープ (目を再び閉じて、呟く)何もするな、静かにしていろ。(彼は眠る)ウイリー (哀願するように)一杯くれないか、ロッキー。ロッキー それを取れ。目の前にあるやつだ。ウイリー (貪るように)有難う。(彼は、痙攣している両手でボトルを取り、唇に持っていきがぶりと一気に飲み干した)ロッキー (鋭く) 何時、何時だ。(彼はボトルを手に取る)俺は風呂に入れなどとは言わない。(ラリーの前のボトルを示しながら、憤然として)見ろよ。ヤツはしこたま飲んじまったぜ。 (彼は怒ってウイリーの方を向くが、ウイリ―は目を閉じて静かに座り続け、身を震わせてアルコールの効果を待っている)ラリー (同情するように一瞥して)奴はほっとけよ。哀れな男だ。しこたま飲んだダイナマイトが一時は奴を落ち着かせるだろうからな。それでも死にはしないさ。ロッキー (肩を竦めて、再び腰を下ろして)俺は大丈夫だ。あれは俺の酒じゃあないよ。 (彼の後ろで、黒人のジョウ・モットが中央のテーブルの左側の椅子で目を覚ましていた)ジョー (目を眠むそうにしょぼつかせて)誰の酒だって。俺にもくれよ。だれのでもいいから。ヒッキーは何処だ。まだ来てはいないのか。ロッキー、今何時なんだ。 ロッキー そろそろ開店の時間だよ。バーを掃除し始める時間だぜ。ジョー (怠惰な動作で)時間なぞ、気にするな。ヒッキーが来なくとも、ジョーがまた眠り始めるだろうよ。俺はヒッキーがドアを入り、ドラム叩きの冗談をとばし、銀行口座の残高を振り廻しては我々は 二週間程は眠りこける。起きろ、馬鹿ども。(突然、彼の眼は大きく見開かれた)。ちょっと待ってくれ、想いついたことがある。なあ、ラリー、あの若造のパリットが昨夜お前に会いに来て部屋を借りただろう。奴は何処にいるのだ。ラリー 上の部屋で寝ているよ。絶望しているよ、とにかく、ジョー。壊れちまっている。ジョー 彼は何て言ったんだね。俺とロッキーでは受け取り方が違うんだ。君に部屋代を払う時に公文書を持っていたかい、ロッキー。俺は見たんだが。ロッキー ああ、彼はそれを閃かせて、それを忘れてしまったようにしてから急いで隠したよ。ラリー (吃驚して拒絶するような仕草で)そうだったのか。ロッキー うん、彼は組織を離れたが、君たちの一員だと言っていた。ラリー 奴は嘘つきだ。彼は自分の正体を告げようとはしなかった。俺と彼の母親は西海岸で友達だった、数年前には。(彼はもじもじしてから声を低めて)君は新聞で数名が死亡した爆発事 件について読んだだろうか。そう、警察は一人の女性、ローザ・パリットを追い詰めた。彼女はパリットの母親だ。検察は間もなく裁判にかけるだろうが、勝目はないだろうさ。彼女は命拾いするだろうと思う。俺がその話をしているのはドンが少しばかり奇妙な振る舞いをしてどうして彼に飛びかからないかを知るようにしているのだよ。彼にはひどい衝撃だ、彼女の一人息子だから。
2024年02月05日
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幕が開くと、夜のバーテンダーのロッキーがバーからカーテンを抜けてやって来て、裏部屋をみまわしながら立った。彼はナポリ出身のアメリカ人で二十代後半の年齢、ずんぐりした体形で筋肉質、扁平で浅黒い顔、ガラス玉のような眼をしている。無地のシャツの袖をまくり上げて厚くて力強い腕を見せている。薄汚れたエプロンをしている。タフガイだがセンチメンタルなしぐさをする気のいい男である。彼はラリーに「スット」と用心深いサインを送り、ホープが寝ているのか見てくれるよう身振りで合図した。ラリーは椅子から立ち上がり、ホープを見てからロッキーにうなずき返した。ロッキーはバーに戻ったが、直ぐにウイスキーとグラスを手に戻って来た。彼はテーブルの間を押しのけてラリーの所に行く。ロッキー (口の両脇から出す低い声で) 速くやれよ。 (ラリーは酒を注いで一息で飲み干した。ロッキーはボトルを持ってウイリー・オーバンのいるテーブルの上に置いた)ボスにけちん坊を忘れて賢くなってもらっちゃあまずいぜ。(ホープを横目で見ながらクスクスと笑う)あの古株の偽物が新しい事を始めるのは大ごとだぜ。この家で大酒を喰らっちゃあだめだぞ、って俺に言うのさ。ここの連中は部屋の料金を支払わなくては駄目なんだ。彼はそういう人なのさ。(ラリーの左側に座った)ラリー (ニヤニヤして)俺は明日、支払いをするつもりなのだ。そして俺の同宿者達も同様の事を約束しているよ。彼らは皆いじらしい程に馬鹿正直に明日を守ろうとしている。(半分酔っぱらった者の冷笑を目に浮かべて)明日は彼らにとっては偉大なる日なんだよ。全員バカの祭典さ、ブラスバンドの演奏がつくのだ。彼らの船が入港し、船端に荷積みして取り消した詫びや約束や清潔な石板や新しい花束を示すのだ。ロッキー (冷笑的に) そう、盛大な舞踏さ。ラリー (ロッキーの方に身を傾けて、その低い声に滑稽な強調を込めて) 信用をちゃかしては駄目だよ。信仰に敬意を持たないのかい、イタリア移民君。真実は彼らの好みの風にはその息には安ウイスキーの匂いがする。またその船は穴をあけられて底に沈んでから久しいのだ。真実なんてクソ喰らえだ。世界の歴史が証明しているようにそれは何物にも関係を持っちゃあいないのだよ。それは的外れで、実体の無い物と法律家も言っている。パイプドリームの嘘は全部の間違って生まれてしまった者達に、酔っていようと素面でも、命を与えるのさ。そして十分に哲学的な智恵なのだ、一杯の下等酒を飲めばね。ロッキー (からかうようにニッと笑って) 年老いた哲学者、ヒッキーが君をそう呼んでいるのだが。君はパイプドリームに耽る事はないのかな。ラリー (少し不自然な調子で) いいや。俺のはみんな死んだ、後ろで埋められてな。俺の前にあるのは慰めとなる事実、死は素晴らしい長い眠りなのだ。そしてひどく疲れてしまったが、死は遠からずやって来る。ロッキー 詰まりは、やがて死んでしまうってことなのか。そうだなあ、賭けてもいいが、君はそう直ぐには死なないよ。つまり、誰かが斧を持って君を殺しに来るまではだ。ラリー (にっと歯を出して笑い) 俺の鉄の体質が不運で、ハリーの大酒でも心を蝕むことは無理なのだよ。ロッキー あの老無政府主義者が全部の答えを知っているだろうさ。そうだろう。ラリー (眉をひそめて) その無政府主義の部分は忘れろ。俺はあの運動の事はだいぶ前に忘れてしまった。人と言うものは自分自身から救われようとは望まないのだ。つまり、人は強欲さを捨てる必要を感じないのだ。そして自由の為に対価を支払わない。そう俺は世界に言った。神の救いが此処にはあるのだ。最上の人間は暴食で死ぬのだ。そして俺は哲学的脱俗の特等席を取得して人々が死の舞踏を踊る祭りを見物しながら眠りにつく算段をしている。(彼は自身の幻想をくっくと笑い、手を伸ばしてヒューゴの肩を揺すった) 仲間のヒューゴ、俺は彼に真実を語ってしまわなかったかい。ロッキー 後生だから、飲んだくれ生活を始めるなよ。ヒューゴ (頭を挙げて、分厚い眼鏡越しにもうろうとしたロッキーの姿を覗き、ガラガラ声で気の抜けた調子で) 資本家の豚野郎。裕福家の鳩。奴隷は眠る事さえ許されないのか。(それから彼はニヤリと笑い、態度を一変させるとニヤニヤ笑いの甘言で相手を宥めるように、あたかも子供にでも語り掛けているように) やあ、ロッキー、猿面冠者君、君の奴隷の少女たちは何処にいるのかな。(突然に脅しつけるような調子に変わって) バカは止めろよ。一ドル貸してくれ。糞ブルジョワ野郎目、偉大なマラテスタは俺の良き友だ。酒を一杯おごって呉れよ。(彼はへとへとになって眠気に打ち負かされて様だ。彼の頭は再びテーブルの上に沈み、すぐさま眠りこけてしまう)ロッキー 彼はまた消えた。(怒り以上の憤懣さを込めて) 彼が幸運なのは誰も奴の与太をまじめに受け止めない事だ。さもなければ奴は毎朝気違い病院で目覚める事になるだろう。 ラリー (憐れむようにヒューゴを見て) そうだ、誰も彼を本気では受け止めやしないさ。それが彼の墓碑銘だ。仲間などはもういない。俺もとっくの昔に運動からは足を洗ったが、彼も同様だ。そして、ウイスキーの御蔭で、彼だけはそれを知らずにいるのだよ・ ロッキー 俺は彼をずいぶんと言い抜けさせている。そして彼の方では奴隷の少女達を俺に引っ張ってきてくれる。(彼の態度は防御的に変わり)畜生、俺は女郎屋の主人みたいな物か。誰もが俺がそうじゃないことを知っている。女郎屋の主は仕事を持っちゃいない。俺はバーテンダーだ。あの売春婦達、マギーとポイル、は副業の小使稼ぎの手助けをしている。彼女らのような仕事は闘士だし、俺は彼女らのマネージャーだ。俺が客を世話し、彼女らが困らないように手配しているのだ。畜生め、彼女らは俺がいなかったら大部分を島で暮らす羽目になっている。それも俺は女郎屋の経営者みたいには彼女達から搾り取ったりはしていない。俺は丁寧にもてなしている。彼女達は俺が好きだ。俺たちは仲間だから、彼女たちから銭をかすめとっちゃいない。彼女達は進んで支払っている。売春婦は小銭じゃ食えない。俺はバーテンダーとして懸命に仕事をしてこの店で働いている。あんたは知ってるよなあ、ラリー。
2024年02月01日
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