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ホープ (のろくさく)幸運を祈るよ、ウイリー。 (ウイリーは外に出て、右に折れる、そうしている間にジミーは、病的な興奮状態で、バーに静かに近づき、こっそりとラリーのウイスキーグラスに手を伸ばした)ヒッキー そして今度は君の番だよ、ジミー、旧友。(ジミーが何をしているか見て取ると、酒を飲み干そうとしている腕を掴んだ)さあ、さあ、ジミー、自身の為にそれはいけないよ。二日酔の上にもう一杯、しかも空きっ腹だ、へべれけになってしまうさ。それから君は自分にチャンスを潰すと言うだろうさ、仮に酔を覚まして元の仕事に復帰したとしてもだ。ジミー (浅ましくも懇願して)明日だ、明日こそはだよ。明日はいい状態にもどるよ。(突如自分を制御して、震えながらも確固として)分かった、出ていこうよ、手を離してくれたまえ。ヒッキー それそれ、まさにそれだよ。全部終わってしまえば、君は俺に感謝するよ。ジミー (無駄な憤激を発して)小汚たねえ豚野郎め。(ヒッキーの顔にウイスキーをかけようと試みるが、腕の力は弱くて、僅かに相手のコートにかかった。ジミーは踵をかえしてドアーに突撃して右の窓の外へと姿を消した)ヒッキー (コートのウイスキーを払い、ひょうきんに)アルコール消毒は完了さ、でも、嫌な感じだけじゃあない、俺は本を書いた、俺はそんな日を見てきたんだ、誰かが俺に真実と向き合わせるようなことを強制したら、相手を銃で撃ち殺してやるのだと。(ホープの方を向き、力づけるように)さあてと、長官、ジミーは進級した、あとは君次第さ、彼がテストに合格したら次はきっと君が…。ラリー (叫ぶ)ハリーを一人にしてやれよ、こいつめ。ヒッキー (ニヤリとして)俺が君だったらもう既に覚悟を決めていただろう、ラリー。そして決してハリーの事を邪魔しないだろうよ。彼は大丈夫、やり遂げるさ、それを彼に約束した。彼は余計な同情などは必要としていない。どうなんだよ、長官。ホープ (くすぶっている自己主張を感情的に試みる)いいや、違うぞ。鼻を突っ込むなよ、ラリー、ヒッキーとどんな関係があると言うのだよ。この散歩は長い間続けているのんだぞ、君は俺を刑務所に入れておくみたいに、此処に閉じ込めておきたいわけか。俺は十分に耐えているぞ、俺は自由で、白人で二十一年、これからも好きなことをするつもりだ。ヒッキー、君も鼻を突っ込むのはやめろよ。君はこのゴミ溜めの親分だと思っているようだが、俺じゃあなくて、確かに俺は大丈夫だ。何故、俺じゃあいけないんだ、何だって恐れる必要があるんだ、この地域を歩いて回ることをだ。(話しながらドアーの方へ動き、そこへたどり着いて)なんという天候なんだ、外は、ロッキー。ロッキー 上天気です、ボス。ホープ それがどうした、聞こえるか、俺には良い天気とは見えないぞ。俺にはいつだって土砂降りの空模様に見えるんだ、俺のリュウマチ…、(身体を抱いて)いいや、俺の両目だ、半分は盲なんだよ、黒く見えるんだ、何もかもが。今は上天気だって分かるがな、散歩するには暑すぎるがな、君がそうしろと言っても。汗を止めるには酒を一杯引っ掛けるのがいい、だが、自動車に気をつけないといけないのだ、二十一年前には自動車などは一台も無かったが。窓から自動車が走っているのを眺めると直ぐにでも人を引くのじゃないかと心配だよ。いいや、あれが怖いのじゃないがね、自分で注意さえすれば大丈夫だから。(無造作にスイングドアーに手を置いた)その、詰まり…、(立ち止まって、振り返った、びっくりした短気さで)さてと、何処にいるんだ、ヒッキー。出発する時間だぞ。ヒッキー (にやりと笑い、頭を振る)いいや、ハリー。出来ないや、君一人で日にちを守ればいいさ。ホープ (無理にぷりぷりして)お前なんか、糞くらえだ。通り越しに俺を助けると思ったよ、俺が半分盲なのを知ってな。半分聾でもある。このクソ自動車なんてものには我慢が出来ない、糞くらえだ、俺はこれまで誰の手助けも必要とはしなかった。今もだぞ、(自分を扇動して)少し散歩の足を伸ばしてみようと思う、今出発したんだから。旧友達には全部会う、彼等は俺が死んだと思っているだろう、二十一年は長い年月だ。が、彼等は俺がべシーの死を悲しんでいるのを承知しているのだ。(手をドアーにかけた)直ぐに出発しよう。(それから手を落として、感傷的な暗鬱さで)分かるか、ヒッキー、何が俺をそうさせるのか。外出するのはべシーの葬式以来だって事を思わざるを得ないぞ。彼女が行ってしまったから、人生が生きるに価するなどは感じないよ、誓っていうが俺はもう二度と外出はしないだろうよ。(感情が激して)いずれにしても、行くのが正しいなんて感じられないや、ヒッキー、今でさえ。彼女の思い出には悪いことをしているようだ。ヒッキー さあ、長官、その一つを払いのけることはもう出来っこないのだよ。ホープ (両手で耳を覆って)何だって、聞こえないよ、(再び感傷的に、が絶望的に)俺は今鮮明に覚えているよ、彼女が最後の日に…、あれは素敵な日曜の朝だった。二人で教会へ一緒に出かけた。(声はすすり泣きになっている)ヒッキー (面白がって)そいつはスゴイや、長官。が、俺はもっとよく知っている、もっとも、君と同じくらいだが。君は彼女と一緒になんか教会には行かなかったし、ほかの場所にもだ。彼女はいつも君の首ったまにしがみついていた。彼女は君に外出して何かをさせようとの野心を抱いていたが、君が欲したのはせいぜい、平安に酔っ払うことだけだった。ホープ (よろめいて)君の言葉がまるで聞こえないよ、君はいずれにしても、嘘つきなんだ、(突然怒りを発して、憎悪で声が震えている)この、クソッタレが、もし外に狂犬がいたら俺はそいつと握手してやりたいよ、ここでお前なんかと一緒にいるくらいなら。(瞬間的な怒りの発作でそう言った、ドアーを押し開けると盲目的に大股で外に出て、通りを昼食窓の後ろの方へと盲目的に過ぎていく)ロッキー (うろたえて)ああっ、出て行っちまったぞ。どんなに掛率が高くたって、今のような行動に出るなんて、驚きだよ、賭けなかっただろうよ。(窓の所へ行って、見て、ムカつくような顔をして)ああ、彼は立ち止まったぞ、きっと戻ってくるだろう。ヒッキー 勿論さ、彼は戻ってくるさ。他のみんなも同様だよ。今夜までには彼等は全員又此処にいるよ。のろま君、それが肝心なところなのさ。ロッキー (興奮して)いいや、彼は違うぞ。彼はドンつきに消えた、上下を見ていたが。自動車に怯えながら。ああ、奴らは二時間以上通りを行ったり来たりを続けている。(彼は興奮して見守っている、彼が賭けたレースが進行でもしているように、明らかにバーで何かが起こることを期待している)ラリー (厳しい反抗の姿勢でヒッキーの方を向き)そして今度は俺の番なのだよ、そうだろう。君の祝福された平和を遂行する為に俺がしなければならないことは何だろうか。ヒッキー (にやりと笑いかけて)もう、十分に議論し尽くしているぞ、自分に嘘をつくのはやめろよ。ラリー 俺が人生を降りてしまった、バカバカしい人間曲芸の貪欲さを見物するのに飽きたって言うのを君は思っている、俺は長い死の眠りを両目を閉じながら歓迎する、君がそれは臆病者の嘘だって思う…。ヒッキー (クックと笑い)ああ、何を思うんだね、ラリー。ラリー (募ってくる激しさで、ヒッキーと戦っていると言うよりも、自身と戦っているかのように)俺は生きるのを恐れているさ、更には死ぬこともだ。それで俺は此処に座り、瓶の底までプライドを落として、酔っ払い続けて、恐怖で震えてすすり泣いたり祈ったりする自分を見たくないのだ、愛するキリストよ、どんな事でもするからもう少し生かしてください、それが数日でもいいし、数時間でもいい、救いを全能の神よ、俺の甘美な宝の弱っている心臓に貪欲に縋り付いて、この途方もなく大切な宝物、汚くて、嫌な臭いがする干乾びた肉、これが俺の美しい小さな人生だ。(彼は冷笑し、復讐的に己を呪い、軽蔑と憎悪で自身の内部を見詰めている。それから突然にヒッキーを敵対者にまたしている)君はそれを俺自身に認めさせようとしていると思うんだ。ヒッキー (クックと笑い)君はそれを自分に認めたんだろう。パリット (両腕から頭を挙げて、ラリーを見詰めて、冷笑するように)それが仕事だ、ヒッキー。年老いたイカサマ商人を磨けよ、僕にこんな嫌な真似をしないでくれよ。彼は僕を手助けするべきなんだ。ヒッキー そうだ、ラリー。彼とは決着をつけるべきだよ。俺は彼の手中に全面的に君を任せようよ。彼は良い仕事をするだろう、あの古いスタンドプレイ的なインチキをやめるように努力しよう。ラリー (怒って)最初に君等二人に地獄で会おうよ。ロッキー (バーの端から興奮して叫ぶ)おや、ハリーが通りを横切り始めたぞ、彼は君を馬鹿にし始めるだろうよ、ヒッキー、この間抜けさんよ。(息を継ぎ、見守っている、そして疲れたように)何だって彼は足を止めたんだ、通りのど真ん中でだ、彼は体が麻痺してしまったか何かだぞ。(ムカつくように)ああ、動かないぞ、戻ってきたぞ、なんだ、あの老人臭い振る舞いは、もう此処だぞ。ホープが足を引きずりながら窓の外を横切った、茫然自失の体で走り、盲目的によろめいてスイングドアーを抜けて、バーのラリーの右にたどり着いた)ホープ とにかく、一杯くれないか、一年分寿命が縮んだよ、ああ、あの男は首を絞めるべきだな。通りを歩くのは決して安全じゃないよ、あれで終わりだ、もう二度は行かないぞ、そのボトルをくれないか、(グラスにいっぱいの酒を注ぎ、飲み干して、もういっぱい継ぎ足した、軽蔑したように彼を見つめていたロッキーに、訴えるように)見てたんだろう、ロッキー。ロッキー 何をだい。ホープ あの自動車さ、愚鈍なイタリア移民くん、運転していた奴は酔っ払いか気違いだぜ。俺がジャンプしなければ俺を敷き殺しかねなかった、(迎合的に)さあ、ラリー、一杯飲もうや。みんなも飲めよ、タバコを吸え、ロッキー。今まで指を触れようとしなかったがなあ。ロッキー (拒絶して)そうだ、これが飲み時なんだよ。(酒を注ぐ)酔っ払うぞ、なあ。もしも好きでなかったら、何が出来るかを知っているだろう。とにかく、仕事を投げ出すいい根性を持っているのだ、(嫌悪して)おい、ハリー、君はいい度胸をしていると思うが、賭けてもいいが君は虚勢を張る。(ヒッキーに頷き、それから鼻を鳴らす)自動車、クソ。誰を君はからかっているんだよ、あれは自動車じゃないぞ、君は冷たさを手放したよ。
2024年04月26日
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マクゴロイン 彼は嘘つきだ、マック。君は俺が会いたかった正にその人なのだよ。君のケースを俺が取り扱うとすれば、別れる前に話し合いをしなければいけない。マクグロイン (侮辱するように)話さないだろう。この馬鹿野郎め、俺は君の父親の息子を俺の弁護士にしなければならないと君は思っている。彼等は君を一目見て怒鳴り散らすだろう。(ウイリーは怯んで椅子に沈み込んだ。マクグロインは第一列のテーブルのところに行き、バーを背にして坐る)いずれにしても、俺は弁護士は必要じゃないよ。法律なんか糞くらえだ、俺がしなければならない事の全ては正義の士を見つけて言葉を渡すことだ。彼等もそうする、彼等は俺が枠の中にいるのを知っている。一旦言葉を渡してしまえば、上々首尾なんだよ、法があろうとなかろうと。モッシャー 神よ、俺はこのキチガイ屋敷を出られるのが嬉しいのだよ。(鍵をポケットから引き出しバーの上にポンと置いた)此処に俺の鍵を置くよ、ロッキー。マクグロイン (自分の鍵をポケットから出して)これが俺のだ、(ロッキーに手渡した)あの間抜けのヒッキーと同じ屋根の下で眠るくらいならドブの中で寝たほうがましだ、あの曲芸師め。(暗く付け加えた)あの帽子がここの誰かに似合うなら、そいつにやってくれよ。 (モッシャーが憤激してマックに向き直ったが、ロッキーがバー越しに腕を掴んで制止した)ロッキー ニック、落ち着けよ。(モッシャーは収まった。ロッキーは鍵を棚の上に投げ上げた、うんざりとしたように)君は俺に苦痛を与えるのだ、俺が君達に今夜鍵を返さなかったら安心するだろうよ。(モッシャーとマクグロインの二人はロッキーを拒絶するように向きを変え、コーラに続いてチャックがホールから姿を現した時に間が空いた、コーラは酔っており彼女の一張羅を身に付け、ルージュとマスカラ、髪はボサボサ、とにかくも帽子は被っている)コーラ (バーの中に二三歩踏み込む、抑えたくすくす笑いをしながら)今日は、みなさん。私達来たわよ。ヒッキーが私等に言うの、そろそろ出ていく潮時じゃないのかってね、もし本気でそうしようと思っているのならね。それでも私達はインチキじゃないよ。あの人、ハリーとジミーと一緒に下りてくるわ。あのね、二人共にまるで電気椅子にでも掛けられるみたいな感じだよ。(びっくりた怒りで)もしこれ以上ヒッキーの与太話を聞かなければならないとしたら、私は脳みそをたたきつぶしてやるよ。(腕をチャックの腕に置いて)さあさあ、あんた。彼が下りてくる前に出発しようよ。チャック (不機嫌に)確かに、君が言うことは何でも聞くぞ、可愛こちゃん。コーラ (チャックの方を向き)ええっ、そう、私は此処をおさらばしようって言ったのよ、そして私にシェリー酒を何杯か、お別れにね、頂戴よ。チャック 君は今、絶好調だな。コーラ 優しくしてよ、けちんぼさん。そう、私のお金を使ってよ、ケチなんだから。あんたは式の後で全部使ってしまっわ、知ってるのよ、(スカートをまくりあげて、ストッキングの一番上まで見せて)此処よ、大きな浮浪者さん。チャック (彼女の腕を叩いて離し、怒って)お前の汚い金を貯めておけよ、そしてその足を人前で見せびらかすなよ、これから結婚するんだぞ。コーラ (喜んで、甘えるように)分かったわ、あんた。(馬鹿げた笑いで周囲を見回して)ねえ、あんた達バーの常連は結婚式には来てくれるの、(彼等はそれぞれの不安に夢中で、彼女を無視している。コーラは不安そうにたじろいている)でも、私等は出て行くわ、みんな。(何の言葉も聞かれない。彼女の目はロッキーに釘付けになり、絶望的に)ねえ、ロッキー、あんた耳が聞こえなくなってしまったの。私とチャックはさよならするって言ったのよ。ロッキー (バーを拭きながら)取り繕った無関心さで)それじゃ、さよならだ、ジョージーに宜しく伝えてくれよ。コーラ (涙ぐむ程に憤って)あんたは私等の幸せを祈ってはくれない、この汚らしい男。ロッキー そうだよ、来週までに再会するのを願っているさ。チャック (怒って)ああ、君、何だってあんな奴を気にかけるんだい。(ロッキーは威嚇するようにチャックを睨んだが、彼は誰かが階段を下りてくる気配を感じて、コーラの腕を掴んだ)さあ、ヒッキーが来るぞ。此処をずらかろう。(二人はホールへと急ぐ、通りへのドアがふたりの背後でバタンと閉まった)ロッキー (陰気に死亡告知を口にする)一人の常連と下等売春婦が地獄に堕ちた。(痛烈に)あの小汚いヒッキーも死ぬべきなんだ。 (一同の大半から賛同のブツブツ言う声が出た。そしてハリーホープがホールから入って来て、続いてジミートモローが、踵を接するようにしてヒッキーが続いた。ホープとジミーは共に自己顕示を全面に示しているし、コーラの二人に対する描写は適切だった。彼等が歩いて入って来る姿には絶望的な誇張があるが、それは有罪を宣告された死刑囚の最後の行進を暗示している。ホープは日曜日用の黒服を着用し、黒のネクタイ、靴、靴下なのは葬式に行く服装であるような印象を与えている。ジミーの服はアイロンがかけられ、靴は磨かれて、白いシャツは汚れが全くない。彼は二日酔いであり、その善良そうな犬目は血走っている。ヒッキーの顔は寝不足の為に少し引きつっているし、声はしゃべり続けのせいでしゃがれている。が、彼の大騒ぎするエネルギーは神経質な緊張にあらわれている。そして彼の輝く表情は勝利の完成の一つなのだった)ヒッキー さあ、此処に来たぞ。遂にここまで来たんだよ、(ジミーの背中を軽く叩いた)よくやったぞ、ジミー。君はそのふりをしている半分も病的じゃあないよ、どんなに遅らせても言い訳は無用だ。ジミー 君が俺から手を引いてくれたので感謝する。俺は明日もっと快適な状態でいると単に言っただけだ…。でも、今日も元気なんだ、そう思うよ。ヒッキー もうおしまいにしろ、だから、永久に御終いなんだよ、君は自由なんだ、(ジミーをホープが彼を力づけるようにと押しやる)元気出せよ、ハリー、気づいただろうが君のリュウマチは下の階に来る妨げをしなかった、そう言っていただろう。(周囲の者達にウインクする、ヒューゴとパリットを除いてはみんなの目はヒッキーに厳しい憎悪で釘付けになっている。彼はホープを悪戯っぽく軽く肘で小突いた)あんたにはアリバイは全くないのだよ、長官。ジミーと同様に悪いよ。ホープ (耳が聞こえないフリをして)えっ、聞こえないぞ。(挑戦的に)君は大嘘つきだ、俺は二十年もリュウマチに犯されたりそうでなかったりを続けているよ。べシーが死んで以来だよ。みんながそれを知っている。ヒッキー そうだ、君が一種のリューマチを発したり、そうでなかったりなのは我々は知っているさ。我々は君に期待してる、老ホラ吹きの君にだ。(クックと笑いながら又ホープの肩を軽く叩く)ホープ (傷つき、しょげて、一種の逃避を図るようにみんなを見回して)おいおい、何だって君らはそんな風に俺を睨みつけているんだよ、サーカスでも見物している気分なのかね。君等はどうして此処から厄払いして自分たちの仕事に戻らないのだ、ヒッキーが説得したようにだよ。(彼等はホープを非難するように見ているが、目は傷ついている。彼等はそわそわして動こうとしているようだ)ヒッキー そうだ、ハリー、俺は確かに思ったよ、今頃は奴らも根性があるから姿を消しているだろうって。(ニヤリと笑う)さもないと、多分俺には疑いがあるんだ、(突如彼は心底同情的で熱心になる)何故って、俺は君等が何に歯向かっているか正確に知っているんだよ、君達。自分を真実に向かわせた時に人はどんなにダメになってしまうか知っている。俺は骨身を削るような試練を経験して来ている、そして俺自身のより嫌な偽者性と直面しなければならなかった。君達の中の誰よりもだよ。知っているんだよ、自分のパイプドリームを消滅させて逃げ出すためにどんな汚らわしい口実だって手にしてしまう臆病者になってしまう事を。しかも、俺が繰り返し話したように、自分自身と折り合いを付け続ける為に、そうした無駄な明日の夢が正に必要なんだ。だから俺がそうしたように、君らも同じことをしてそんなムダを切り捨てないといけないよ。(一息つく、彼等はヒッキーを畏怖と憎悪の感情で見詰めている。彼を呪詛し、飛びかかろうとしているようだ。が、動かずに、黙っている。ヒッキーの態度が変わり、優しく威嚇する如くに)さあ、君達、動いたらどうだ、誰が先頭を切るんだ、君か、大尉、君か、将軍、ドアに一番近いからなあ。その他にも、君らは年老いた戦争の英雄だから。君達は惨めな希望を先導しなければいけないんだ。さあさあ、今だよ、あのモッダーリバー精神とやらを少しばかり俺たちに示してくれよ。もう聞き飽きる程に聞かされているんだ。君等は日永一日見物して、外の通りがまるで噛み付くように恐怖するには及ばないよ。ルイス (傷ついた怒りで振り向き、軽快な気安さで)正しいよ、君は。血だらけのノージーパーカー殿、時を押し出そう、たださよならを言うだけに待っているのだ、ハリー、老友よ。ホープ (反発して)さよならだ、大尉。幸運を祈るよ。ルイス おお、俺は運命に従うさ、御老人、同様に、幸運を祈ろう。(ルイスはスイングドアを押し開けて、勇敢に外へ出た。そして右に折れて行く)ウエットジョーエン やれやれ、ライミーに出来るなら、俺だって…。 (彼はドアを押し明け、牡牛が障害物に突進するかのように重々しく歩く。左に折れて姿を消す)ヒッキー (熱心に)お次は誰かな、どうだ、エド。素晴らしい夏の日だぞ、古いサーカスの魂が君のちの中で奮い立っちゃあいなかい。 (モッシャーはヒッキーを睨む、そしてドアに向かう。マクグロインは椅子を蹴って立ち上がり、ドアに向かって動き始めた。ヒッキーは彼が通り過ぎる際に軽く肩を叩いた)偉いぞ、マック。モッシャー さよならだ、ハリー。(外に出て、右に曲がった)マクグロイン (不機嫌に目でモッシャーを追ってから)あの唐変木が空元気を出せるのなら…。 (彼は外に出て、左に曲がった、ヒッキーはウイリーを睨んで、相手が話し始める前に、椅子からひょいと立ち上がった)ウイリー さよなら、ハリー。君の親切に大いに感謝する。ヒッキー (背中を軽く叩いて)それでいいんだよ、ウイリー。領事館の連中は忙しいからな、君を一日中待っているわけにはいかないや、そうだろう。 (ウイリーはドアへと急ぐ)
2024年04月24日
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ロッキー そう、この大馬鹿野郎。お前をからかっているだけだよ。ウエットジョーエン (怒って)そりゃあ嘘だ。今朝俺が仕事を手にするのを見るだろう、俺はそれを薄のろライミー紳士とあの嘘つきヒッキーに示してやるよ。俺が仕事をするのは仮住まいの家の為に金を貯めるしばらくの間だけだ。三等船室で旅しても恥ずかしくないからあんまりは金を必要とはしない。俺は上等な船客の風はしないよ、(嘲笑い)故郷の国にご帰還だよ。そこへ着きゃあ人々は歓迎してくれる。ルイス (身を固くして、抑えている怒りで声を震わせて)南アフリカには、ロッキー、こんな噂があるんだよ、或るボア人の将校、仮に烏合の衆のリーダーをそう呼ぶとして、現地人に退却するな留まって戦えと忠告している、と。ウエットジョーエン そう、俺は正しかった。正しかったんだよ。彼はポーデベルクで包囲されてしまった。降伏したんだよ。ルイス (彼を無視して)いい作戦、疑いもなく、だがボーアの確信に疑惑が生じたんだよ、その将校の警告は彼自身が逃亡を図る工作だとする。彼の同郷人は凶悪化した、そして家族は彼を見捨てたよ。そこで想像するんだが、被告席には好意的な委員などはいなかった、喜びを表明する親戚も傍聴席で幸せの声を上げなかったよ。ウエットジョーエン (罪を認めるような怒りを見せて)みんな嘘だ。この糞ライミーめ。(自制して、ルイスの真似をして)俺もライミー将校の噂を耳にしているぞ、彼は戦争の後で酔っ払ってギャンブルで有り金をすってんてんに失ってしまった。しかもその金というのが公金だったらしいや。ルイス (自制心を失い、彼の方にダツシュした)このインチキ野郎が。ロッキー (バーに寄りかかり、ルイスを腕で止めて、胸を強打した)もうやめろ。 (同時にチャックはウエットジョーエンをしっつかみ、ぐいと後ろに引き戻した)ウエットジョーエン (足をジタバタさせて)かかってこいや、俺は奴らが前に、モッダー河でマーガースフォンタイン、スピオン・コプジェの、剣を振り回していたが、自分達の勇敢さを誇示できなかったのを、知っているぞ。そして俺はその気になれば、ライフルで簡単に殺せるんだ。(復讐的に)俺の話をよく聞けよ、お前、セシル、俺が酔っ払ってからかっている時に、済まない、勘弁してくれよ、なんて時々言うが、今はしらふだし、冗談も言っちゃあいない、本気で言ったのさあ。ラリー (冷笑的なバカ笑いで、道化の気違いさを伴った、抑えたささやき声で)神よ、ヒッキーが奇跡の手で死人を蘇らせるなんて言ってはいけないよ、彼がボーア戦争を呼び戻そうとした時にだよ。 (この妨害はルイスとウエットジョーエンに冷水を浴びせかけたような効果を発揮した。二人は退き、ロッキーとチャックが中に割って入った。ルイスはバーに背中を向けた)ルイス (前の軽快な態度に戻ろうと試みて、何事も起こらなかったように)さてと、時間は俺が領事館の担当と会う陽気な道へ誘っているぞ、早起き鳥は餌にありつけるってね、さよなら、そして幸運を祈るよ、ロッキー、そしてみんな。(通りの方に向かう)ウエットジョーエン やっ、ライミーが行くのなら、俺だって行けるぞ。 (ルイスを追って急ぐ、がルイスはスイングドアを押し開けたが躊躇する、突然に意志の麻痺に襲われでもしたかのように、そいてウエットジョーエンは彼にぶつかるのを避けて飛び退いた、瞬間的にその場に立ってから、一人ずつドア越しに通りを見詰めている)ロッキー そう、何で決断できないんだよ。ルイス (悔いるように何気なく)えーっ、ああ、ちょっと考え事をしたんだよ、老ハリーにさよならを言わずに出て行くのは失礼だからな、最良の人の一人、ハリー。そして善良な老ジミーにも。彼等はいつ何時死んでしまうかも知れない、(はじめてウエットジョーエンに気づいたかのようにドアから離れて、見知らぬ人に対するように御辞儀をした)済まない、どうやら妨害をしてしまったようだ。ウエットジョーエン (ぎこちなく)いいや、俺もハリーやジミーに別れを言うために待っているんだよ。(昼食カウンターの後ろのドアーの右に行き、部屋に背を向けて窓を透かして見る。ルイスもドアーの左側で同様の立ち姿をする)チャック あの薄のろ二人を打ちのめしてやれ、(バーの端でコーラの飲み物を取り上げて)ありゃ、コーラの事を忘れていたぞ、怒っているだろうな。(飲み物を手にホールに入った)ロッキー (憤慨して彼を見送った)その通りだ、彼女に仕え、ダメにしてしまえ、哀れな馬鹿野郎め。(頭を振り、機械的にバーを拭き始めた)ウイリー (テーブル越しにパリットを一心に探るように見つめていたが、身を乗り出して低い確信ある声で)此処を見ろよ、パリット。君と話がしてみたいんだ。パリット (ビックリして、防御的に叫ぶ)何だって。ウイリー (その態度は犯罪者を裁く老獪な弁護士のようになり)君が陥っている厄介な事態についてだ。ああ、分かっているさ、君はそれを認めようとはしない。実に正しいさ、それが俺の忠告さ、全部を否定しろよ、口を完全に閉じてしまえよ、検事が何か質問するまでは発言などするな。パリット やいやい、何てことを言うんだ。ウイリー だが、君は俺を信じていいぞ、俺は弁護士だ。俺の頭に閃いたのは、君と俺とは手を組むべきだってことさ。勿論、俺は領事館に仕事の件で会いに行くさ、時間は取られるがね。法廷は直ぐには開かれないだろうよ、その間に、俺には自分の関わっている二三の案件が待っている、法律学校での輝かしい成績は線香花火的な輝きなんかじゃない。だから、俺を君の専任弁護人にするべきなんだよ。パリット 気違いだ、何で僕が弁護士を必要とするんだ。ウイリー その通り、何も認めるなよ。だが、君は俺を信頼していいぞ、そして矢鱈に事態を大袈裟にするな。君は西海岸で面倒を起こしたんだろう、えっ。そして今は身を隠そうとしている。どんな馬鹿でもそれにシミをつけられる。(更に声を潜めて)君は此処を安全だと感じている、しばらくの間は、多分そうだろう、でも、忘れるなよ、サツは最後に君を逮捕する。俺は自分の父親の経験から知っているんだ。俺の父親よりもっと安全を確保している人はいない。誰かが彼に法律の話をしたら、笑い転げて死んでしまうだろう。しかしだ…。パリット この気違い犬め。(ワザとらしく笑いながらラリーの方を向き)理解できますか、ラリー、この馬鹿野郎は警察が僕を追っているなんて思っている。ラリー (彼を無視する前に彼の真の感情をぶちまける)そうあって欲しいと願っているよ。君にシラミ程の名誉があるんだったら、そうあるべきなんだよ。 (パリットはラリーの目を悔いるよに一瞬無詰めて、冷笑する)パリット それであなたは例の運動を抜けてしまった男が自身をからかう様な事をしているのですね。老いた嘘つきの偽者、あんたはまだ運動を熱愛しているんだ。 (ラリーはパリットをまた無視している)ウイリー (ガッカリして)それじゃあ、君は問題を抱えちゃいないわけか、パリット。俺は希望するつもりだだったが、気にすることはないよ。攻撃など無い、忘れろよ。パリット (謙遜して、目をラリーに向け)確かに、それで大丈夫、ウイリー。僕はあなたに感情を害してはいない、僕の標的はあの老いた偽者なんだ。(椅子を抜け出して、前に座っていたラリーの側の椅子に静かに歩み寄って、低い、媚びるような、親しげな語調で)解ったと思うんですよ、ラリー。まだあなたが実際に愛しているのはマザーなんでしょう、あなたに仕掛けて汚い取引にも拘らずに。でもダメだ、あなたは何を期待しているのですか、彼女が真実だったのは自分自身と運動だけだった。でも、あなたが感じざるを得ない物が僕には分かるんですよ、何故なら僕も彼女を愛しているから。(わざとらしく、絶望のポーズで訴える)僕の気持がわかるでしょう、そうでなければならない、警察が彼女を逮捕するのを予期できなかったって解ってもらえるでしょう。僕の目的は売春婦に貢ぐお金を入手する事で、仲間を売ったんですよ。他の理由なんかない、正直のところ。どんな他の理由もあり得なかった。(この恥知らずの告白で自分の身の潔白を証する奇妙な態度をまた見せている)ラリー (耳を傾けまいとしながらも、緊張しながら傾聴している)キリストの愛でどうか俺を平安にしといてくれないか、君には俺を裁いたりする事は出来ないと話したはずだ。でが君が静かにしていてくれなけらば、飲み下すのが難しい最下等酒みたいに自分の魂を吐き出させる作用をする事を直ぐに君は言い始めるだろうよ。(椅子を後ろにずらして、立ち上がった)地獄へ堕ちろろ、 (バーに行く)パリット (後を追おうと勢いよく立ち上がったが、絶望的に)行くな、ラリー。僕を助けなきゃダメだよ。 (だがラリーがバーにいる。後ろを向き、ロッキーは彼を睨みつけている。彼は立ち止まり、絶望的に尻込みして、向きをかえた。前にいたテーブルに行き、今度は前向きの椅子に坐る。テーブルに両肘をつき、ひどい頭痛を我慢するかのように両手で頭を抱えた)ラリー 落ち着け、ロッキー。ヒッキーに捧げる酒は飲まないと誓うよ、酒で死んでも、が、宗旨変えをした、神よ、彼は俺に責任を押し付ける、俺は世界に対して盲目だ、死神の氷屋が治療したところでだ。(話し止め、キックリして迷信的な畏怖が表情に表れている)何だってそんなことを口にしたんだろうか、(皮肉な笑いをして)ああ、神よ、ヒッキーが家に呼び込んだ死神が氷屋なんだよ。ロッキー ああ、その氷屋の冗談は忘れろよ。哀れなご婦人は死んだ。(ボトルとグラスをラリーの方に押しやる)完全に全身が麻痺してしまったぞ、怠け者がこのゴミ溜めで自然に行動するのを見ると嬉しいよ。 (ラリーは酒を飲み干すともう一杯注いだ、エドモッシャーがホールから姿を現した、他の連中と同じ態度や様子に明瞭な変化が彼にも見えている。彼は病身だし神経はボロボロ、目は不安そうだが、彼もまた誇大に自信有り気な身なりをしている。ぶらぶらあるいてバーに、ラリーと通りへの戸口の間に来た)モッシャー お早う、ロッキー。今日は、ラリー。ヒッキー兄が君らを禁酒主義に堕落させなかったので嬉しいや。俺は一杯引っ掛けるのを気にかけないぞ。(ロッキーが酒を彼に押しやると首を振る)俺はこのゴミ貯まりでの息抜きはコーヒー豆だけだって事を覚えている。あの上司はそれには騙されない。それが好きだからってコーヒー豆を噛む男を信じるとサーカスを上手く経営出来るのだよ。(ボトルを避ける)いいや、俺は地獄の夜を十分に味わい尽くしたよ。(顔を顰めて)あの金物屋の息子、俺は奴を締め出してやるよ。俺は壁越しに彼が誰かに一晩中喋っているのを聞いた、俺が此処へ降りてきた時には、まだジミーとハリーが聞いていたよ。一番難しいのはあのフランネル口で偏平足のミックが話そうと努めたのは、何処で俺が止めるかだ、俺も奴を締め出そうと思う。 (彼が話している間に、マクグロインがホールから戸口にやって来た。彼の外見や態度の変化はモッシャーや他の者達と同一である)
2024年04月22日
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ジョー (昼食用のカウンターの背後で、迷信担ぎの様に考え込んで)君はただしいよ、ラリー。悪運がヒッキーが来た時にドアから入ってきたんだよ、俺は賭博師だから感覚で悪運は分かるんだ。(それから反抗的に)でもそれは白人の悪運だ、彼は俺にケチをつけることはできない。(カカウンターから出て来て、バーに向かう、ぎこちなくロッキーに話しかける)パンは切ったから、俺の仕事は終了だ。稼いだだけ酔っ払おうかな。 (ロッキーは敵意のある視線を向けたが、ウイスキー瓶を押しやる。ジョーはなみなみとグラスに注ぐ、不機嫌そうに)俺はキープした分を全部飲んじまった。(鍵をポケットから取り出して、バーにポンと置いた)これが俺の部屋の鍵だ、もう戻らないよ、俺は黒人仲間に復帰するつもりだ。望まれてもいない場所にとどまりはしないよ。俺は反吐が出そうだし、白人と会食するのに疲れたよ、(ウイスキーをがぶ飲みすると周囲を反抗的に見回して、ゆっくりとウイスキーグラスを床に叩きつけて割り、コナゴナにした)ロッキー おい、貴様、何をするんだよ。ジョー (冷笑しても威厳を保ち)ただ問題を避けただけだよ、白人くん。もうあれを割る必要はない、直ぐに背中を向けるから、白人が同じグラスから酒を飲むことはない、(ぎこちなく通りへのドアに向かう。別れの一言の為に振り向き、自慢げに)俺はうすのろ共とのらくらして暮らすのに疲れてしまったよ、俺は勝負に生きる男だ、これから大勝負に出て、一山手に入れるつもりだよ。それからまた賭場を開設して黒人たちに娯楽を提供する。多分、時々は此処に戻ってきて、飲んべい共と会おう、多分だが、二十四ドル札をバーに投げ出して、こう言う、これを全部飲んじゃってくれ、そして彼等が俺の背中を叩いて言うのを聴く、ジョー、君は確かに黒人じゃないや、でも俺は言う、いいや、俺は黒人だ、これは黒人の銭だよ、俺と酒を飲むのを誇りにするか、酒を飲まないかだ。或いは単にこう言う、地獄に行きやがれ、と。俺は自分を切り下げて白人のクズ野郎となんか酒は飲まないぜ、と。(一旦はドアを開けて出て行こうとしたが、また向き直る)それはパイプドリームじゃないぞ、俺は金で運を占うんだ、何かで、何処かでだ。もし銃を借りて白人を脅す必要が生じたら、手に入れるよ。待っててくれよ。(スイングドアをふんぞり返って通り過ぎる)チャック (怒って)あいつを叩きのめしてられよ、ええっ、俺が洒落た服を着ていなかったなら、あの野郎を追いかけて、通りで叩きのめしてやるのだが。ロッキー ああ、あのままにしてやろうよ、憐れな老いぼれだ。彼とその賭場。彼は今夜戻って来てハリーに部屋をせびり、俺に酒をねだるさ。(執念深く」今度は俺がグラスを叩き割る番だ。俺は彼に場所を貸してやるよ。 (スイングドアが押し開けられて、ウイリーオーバンが通りから入って来た。ヒゲを剃って、高価で粋なスーツを着て、上等の靴と清潔なリネンシャツ。彼は完全にしらふであり、顔は蒼白だし、ショック状態の神経でいる)チャック 別の男がめかしこんでいるぞ。サリーの店で服を買ったのか、ウイリー。(嘲弄して)明日また彼の店へ売り戻せばいいさ。ウイリー (ぎこちなく)いいや、もう大丈夫なんだよ。本当さ。ロッキー (同情して)病気ではないのか、ウイリー。景気付けにいっぱいやれよ。(ボトルを彼に押してやる)ウイリー (ボトルをもの欲しげに目で追って、頭を振り、決然として)いいや、有難う。禁酒する唯一の道は禁酒することだ。もしも俺が禁酒協会の事務所に酒の匂いを嗅ぎに行ったら、もうおしまいだよ。チャック 君は本当にあそこへ行ったのか。ウイリー (ぎこちなく)そうだって言ったよ。俺は数分休みに此処へ来たんだ、酒が必要だったからじゃないよ。俺はあの安物の金物屋に虚勢を張る必要なんかないと見せてやるよ、(罪を感じながら)奴は俺に妙に親切だし寛大なんだよ、彼はあの無礼な態度を取らざるを得ないのだろうさ。(バーからそれて出て)足がすこし震えているんだ、まだ。すこし腰を掛けた方がいいようだ。(彼は後ろに行き、二列目のテーブルの左の椅子にパリトに向いて腰を下ろした。パリッとは顔を顰め、疑惑の視線をむけてから、彼を無視した。ロッキーはチャックを見て、嫌悪するように彼の頭を軽く叩いた。ルイス大尉がホールからドアの所に姿を現した)チャック (呟く)又、一人姿を現したぞ。 (ルイスは小奇麗にしてヒゲを剃っている。その古びた裏革のスーツはブラシがかけられて、ボロボロになったシャツは清潔である。彼の態度は横柄で無理に自信を誇示しているが、病気であり二日酔いなのだ)ルイス お早う、紳士諸君。(バーを通り過ぎて通りを見る)麗らかな天気だな、(バーの方を向いて)目覚ましかあ、いや、よそう、用事はないよ、ロッキー、老友よ。至極快適だよ、実際のところ。あまり眠ってはいないが、あの邪魔なとんまのヒッキーと無作法なボウア人の御蔭でな。(表情が硬くなる)あいつから得られる物は全部もらったよ、勿論俺の過失だが、あんな人非人の偽農夫と親しくなったのは。でも、いい潮時だったと、厄払いには。それで思い出したんだが、ここには俺の鍵がある、(鍵をバーに置いた)もう戻らないよ、済まないが善良な老ハリーと他のみんなに別れを告げようよ、勿論ながらね。でも、あいつとは同じ屋根の下には生活できないや。 (立ち止まり、ウエットジョーエンがホールから入ってきたので敵意の表情に硬化して彼にだけ背を向けた。ウエットジョーエンは冷笑してルイスを見詰める。彼もまた容姿を小奇麗にしている。彼の態度は無理に気取って意識して身体的な頑丈さを誇示している。その背後では病身であり弱々しい飲み疲れの消耗の翳りを垣間見せている)ロッキー (ルイスに、バーの薄ろの棚に鍵を忌々しげに置いてから)それでヒッキーは君からズボンをだまし取ったのか、此処を出て行くつもりなのかい。ウエットジョーエン (冷笑して)そうか、それで自分をからかっているんだな。ルイス (彼を無視して、軽快に)そう、俺はさよならする、ロッキー、だがあの頓馬のヒッキーは何も出来はしないよ。もうおしまいだって考えている、新しいページをめくれば、それだけの話しさ。ウエットジョーエン 彼は仕事を手にするつもりでいる、そう言っている。ロッキー それがどうしたんだよ。ルイス (軽快さを持続させて)ああ、何でもさ。つまり、手仕事じゃない、当然に、が頭脳や教育を必要とする仕事だ。どんなにみすぼらしくてもな。乞食には選ぶ事は許されないから。俺は領事館で友人に会うよ、彼は俺に元気が回復したら事務の仕事を与えてくれる約束をしている、事務所の役人か、何かそう言った役柄を。ウエットジョーエン そうか、領事館で彼が顔を出しさえすれば何でも役職が与えられるのか、領事館の連中は恐れをなして警察を呼び、彼を逮捕させるだろうよ、領事館でスキャンダルが起きて新聞が書き立てるだろうよ。ルイス 実際の話が、ロッキー、俺は一時的に職が得られればいいんだ。最終的にだよ、第一級の住まいが確保できるに十分な蓄えをするのにだ。素晴らしい考えだろう。ウエットジョーエン 彼は家庭に、甘美な家庭にクルーズして戻るのだと。それは最大のパイプドリームだよ。何て粗末な頭をしているんだ、憐れなライミーは。あれはウイスキーで酔っ払っているのではない、ヒッキーがキチガイにしたんだよ。 (ルイスは拳を固めたが、何とかこれを無視した)チャック (ルイスに済まないと思い、ウエットジョーエンの方を向く、嘲るように)ヒッキーは君を酔いどれにはしないよ、君は随分とずる賢い、君も外へ出て仕事にありつけるだろうよ。ウエットジョーエン (勇気を奮い起こして)そうだよ、俺にとってはいとも容易いや。俺は紳士風なぞはふかしてはいない。俺は自分の手で稼ぐのを恥ずかしいとは思わない。俺はケチなライミーが国を盗む前には農夫だった。(自慢げに)俺が仕事を依頼した相手はみんなひと目で俺が十人分の仕事をこなすことを見抜いていたよ。ルイス (冷笑して)そうだ、チャック、昨夜ヒッキーが異常な筋肉の強さを発揮してピアノをいどうさせたのを覚えているだろう。チャック 君はピアノの端っこさえ支持出来なかった。君の過失で危うく箱を落とすところだっじゃないか。ウエットジョーエン 汗で手が滑ったのだよ、でも危うく落下は食い止めた。俺ひとりでも全重量を保持出来たかもな、タランスバールでの古き時代には、俺は荷物を積んだ牛車を車軸で持ち上げたよ。それなのに、何で俺は仕事が入手出来ないのだよ、あの荷揚げ人足の頭が何時でも俺が好きな時に雇ってやると太鼓判を押してくれていたぞ。そして市場のベニーも同様の約束をしてくれた。ルイス 覚えているかい、ロッキー、ありゃ希なケースだったが人間みたいに歩くボーア人が二重のオーで呪いを掛けた時に、酒を喰らい、ダンとベニーは非情だったよ。彼等はドケチだったが彼に昼食を約束した。
2024年04月18日
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ロッキー (考えの続きに戻るように)そうだよ、もし彼女が自殺したとしたら、君はヒッキーに謝らなければいけないだろう、彼がガラクタ商売をして此処でキチガイ沙汰の振る舞いを演じているのを理解できるし、責任なんか感じる必要はないさ。(それから困ったように)ヒッキーが自分の妻が死んで嬉しいなどと言ったのを気の毒と思うのか、又本気だったのか分かるかね。(うんざりしながらも激昂して)いいや、違うんだ、奴のお遊びに付き合う義理はないよ。(表情が固くなり)でも知っちゃあいるよ、彼が俺や俺の仕事から手を引くべきなんだよ。(一息ついて、ため息をつく)あ、ラリー、あのふたりの娘っ子が何たる夜を演出したか。パーティーが果てて、ウイスキーの瓶を数本持って自分たちの部屋に戻り、しこたま聞し召したってわけさ。俺は一睡も出来なかった、ここの椅子で俺が眠りに落ちた時に、彼女たちは問題を探しに下へ降りて来た。そうでなければ上で笑ったり、歌ったりのバカ騒ぎをして、俺が怒って騒ぎをやめるように上の階に上って行くことになっただろうよ。そして毎回、俺の気持ちに取り入ろうと同じ古い話をした。二人は言う、それであなたはヒッキーに同意するわけ、この小汚いジニー。私らは売春婦さ、ヒッキーのあんたに関する意見に賛成する。あんたは小者の女衒だよ、って。俺は彼女等をぴしゃりと叩いてやった。そりゃああまり良くなかっよな、彼女らは繰り返して言いやがったよ、同じことを。それを思うだけで耳が痛くなるよ、彼女らは言うのさ、聴いてよ、私らは売春婦だから小汚い女衒じゃなくて、ちゃんとした場所がほしいよ。私達は二足わらじのバーテンダーのために道をそぞろ歩く商売なんかしたくはないよ、あいつが私らを見下しているのにさ。そのうちに私らを本当に必要としている男を見つけるよ、その人を大切にして、恥ずかしがったりしないよ。私らに今夜働くのを期待しないでおくれよ、働かないつもりだからね、通りが水兵たちで通行妨害されていなくとも。ストライキをする、あんたが好もうと我慢しようとね、と。(頭を振り)売春婦がストライキだと、拘束出来ないや、(話を続ける)彼女達は言う、休暇を取るだけよ、コニーアイランドまで繰り出して、落下傘に乗り、戻ってくる、戻らないかもしれないが。あんたなんかクソ喰らえだよ、と。それでケリをつけてしまい、大酒を喰らい始めたよ。(落胆のため息をつく、凌奪された家族の夫であるかのようにグロテスクに見える、嬶殿下の妻に顎で使われていたので。ラリーは厳しい忘我状態に深く沈潜して話を聞いてはいない。チャックが背後のホールから入って来る。派手な紐を手にして麦わら帽をかぶっている。丈の高い衿の日曜用の青いスーツを着ている。眠そうで、暑苦しそうで、不機嫌である)チャック (陰気に)やあ、ロッキー。コーラがチェリー酒を注文だよ、目覚ましにだとよ。ロッキー (憤然として振り向き)シェリー酒だあ、いまいましい、彼女は目覚ましなどは必要じゃない。彼女はそれをサラダか何かと思っているようだな。チャック そうだよ、俺は言ってやったさ、我々はシェリーを何のために使うのか、彼女が生まない限りは卵は一つもない。彼女は言う、外へ出てはいけない規則でもあるのかい、出来合いを買えばいいじゃないの、のろまさん、と。(喧嘩腰で麦わら帽をかぶった)彼女なんか糞くらえだ、大酒を喰らうか、素面かだよ。(バーの後ろに行き、樽からウイスキーグラスを引き出した)ロッキー (嘲るように)ああ、新郎は結婚式の日には花嫁が望むものは何でも与えなくてはだめだ、そう思うよ。 (チャックがバーの背後から来ると、ロッキーは嘲るように見渡して)新郎のパイプ、ラリー。全部は殺すためにめかし立てるんだ。 (ラリーは無視する)チャック ええいっ、黙れ。ロッキー ジャージーのあの農園の一周間、それを俺が君らにやる。君らは息咳きって走ってくる、或る晩、此処へ、酒を呉れって叫びながら、コオロギ共が追いかけてくるから。(憤激して)ええっ、あの薄汚いヒッキーが君らをのろま野郎にするのだよ。チャック (無防備に)そうだよ、一発殴ってやりたい、一発でいい。(それから怒って)ああ、出来る、それでどうなる、俺たちはいつもそうしてやるって言っているよ。そうだ、そうしてやる。俺に言いがかりは付けるなよ、(彼はロッキーを残忍な目で睨む、だがロッキーは単に肩をすくめうんざりした嫌悪を示したが、チャックは不平不満をぶつぶつと言い続ける)コーラが不満をぶつけるのを止めてくれさえすれば、彼女は一晩中俺に休息を与えてはくれない、同じ愚痴ばかり何度も繰り返して。俺が本当に彼女と結婚したいかって、俺は言う、そうだよ、君、結婚するさ、彼女は言う、でも一週間後には自分は何という馬鹿なんだって思い始めるわ、それを口実にして賭け事を始め、私は大酒浸しに半生を縛られて、あんたは自分の妻に偽物を掴ませようというのでしょうよ。それから彼女はワーッと泣き出して、俺は酔が覚めちまったよ。君は嘘つきだ、俺は言う、俺は君の銭をふんだくったりはしないよ、酔っ払っていて働かない時以外はね。そうよ、彼女は言う、あなたは素面でどのくらいいられるのってさ、あなたは私をあの屋台店でからかうことが出来るなんて思わないで、もう何度も聞いているわ、と。それで酔いが覚めた俺は言う、俺を嘘つき呼ばわりするな、今は酔っぱらっているが、君が徹夜で不平を言い続けるからなのだよ。もし君がお喋りを始めたら、叩きのめすかも知れないぞ、と。彼女は大声を上げたよ、あなたが結婚してやるなんて甘い態度で話すからいけないのよ。(排除するかのように)ああ、彼女は俺を縛り首にするような剣幕だった。(手に持ったウイスキーを恨めしげに見詰めて)ああ、俺はこれを腹の中に流し込みたいや。ロッキー そうすればいいじゃないか。チャック (即座に疑わしそうに、怒って)確かに、君好みだ。俺は君に対して賢くなろう。君は俺に結婚して欲しくないんだ、常連客として滞在してな。俺が全身麻痺でとどまっているのが望みなのさ、そうすれば君みたいに薄汚い女衒にもなるだろうから。ロッキー (立ち上がって、悪意ある顔に強ばらせて)聴けよ、俺は君からだってそんな事は聞きたくないよ。チャック (グラスをバーに置いて、拳を固めた)そうかい、それで何が望みなんだ、(嘲るように)笑わせるな、お前等が十人でも一発で打ち負かしてやるよ。ロッキー (尻のポケットに手をやって)貴様の腹に響かせようか。ジョー (喧嘩が始まった時に割って入って)おい、君達、ロッキーとチャック、止めろよ。旧友同士だろ、あのヒッキーの事で気違い沙汰は馬鹿げているぞ。チャック (彼に向かい)余計なお節介はするな、この黒ん坊め。ロッキー (チャック同様に、ジョーの方を向き、彼等の喧嘩は忘れられて二人はよそ者に対して自然に手を結んでいる)自分の立場をわきまえろ、このちっぽけなニグロ野郎。ジョー (怒りの唸り声を発して、昼食カウンターからパンナイフを手にして飛び出して来る)白人のクソ野郎ども、身体を切り裂いてやるぞ。 (チャックはバーからウイスキー瓶を素早く手にして、それを頭の上に翳してジョーを威嚇した。ロッキーはポケットからニッケル製のリボルバーを取り出している。この瞬間にラリーがテーブルを拳で叩き、冷笑的な笑いを発した)ラリー それだよ。お互いで殺し合いをしろ、このヤクザものめ、ヒッキーの祝福を込めてな。彼が死を道ずれにしてきたって、俺は言ったはずだぞ。 (彼の邪魔が三人を驚かせた。彼等は息を飲んで、ラリーを見詰め、喧嘩の怒りは瞬間で消えて、意気沮喪して羊のようにおとなしくなった)ロッキー (ジョーに)分かったよ、君。鉾を収めよう、この武器はしまうよ。 (ジョーはカウンターの後ろに行き、その上にナイフをぽんと置いた。ロッキーはリボルバーをポケットにしまう。チャックはボトルをバーに下ろした。ヒューゴはラリーがテーブルを音させた時に目を覚まして頭を挙げて、今やバカのように笑った) ヒューゴ 今日は、親愛なる人々、気にするな、間もなく君らはホットドックを柳の下で食べ、飲み放題のワインを飲む…、(突然に高慢ちきな難しい語調で)このシャンペンは適切に冷やされていないぞ。(怒りで喉をぜいぜいさせて)大嘘つきのヒッキーめ、それで俺が貴族だって分かったか、俺は労働者だけを愛している、俺は彼らを引き連れてやる、彼らにとって俺は神なんだ。彼等は俺の奴隷だ。(自分の言葉に驚いたように言葉を止めて、ラリーに哀願するように)俺は酩酊してしまっているんだ、違うか、ラリー。馬鹿を言った、俺はべろべろだ、ラリー、古き友よ、違うかい、俺は自分が言っていることが解らないんだよ。ラリー (哀れんで)君は泥酔してるよ、ヒューゴ。君のそれほどに麻痺している状態を見たことがない。頭を下げて、眠るがいいさ。ヒューゴ (感謝するように)そう、俺は眠らなきゃあ、もうぐでんぐでんに酔っ払ってしまったよ。(頭を両腕の上に載せて、目をつぶった)ジョー (昼食用のカウンターの後ろで、迷信的に考える)君は正しいよ、ラリー。ヒッキーが来た時に悪運がドアから入ってきたんだよ。俺は老賭け師だから、感覚で悪運が分かるんだ。(次に反抗的になって)でもそれは白人の悪運だ。彼には俺にケチをつけるわけにはいかないよ。(カウンターの後ろから出て、バーに行く、ぎこちなくロッキーに話しかける)パンは切ってしまったし仕事は完了した、稼いだだけは飲んでしまおう。 (ロッキーは彼に敵意ある視線を向けるが、ウイスキーのボトルとグラスを彼の方に押しやった。ジョーはなみなみと酒を注ぐ、不機嫌そうに)俺はキープしておいた酒を全部飲んでしまった。(ポケットから鍵を取り出して、バーの上にポンと置いた)これが俺の部屋の鍵だ、もう戻らないよ、俺は元の黒人仲間の所に戻る。望まれていない場所にとどまらないよ。白人たちと一緒に食事をするのにはうんざりだし、疲れてしまったよ。(酒を一気に飲み干して、辺りを反抗的に見回してからゆっくりとグラスを床に叩きつけて粉々に割ってしまった)
2024年04月18日
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ロッキー (考えの続きに戻るように)そうだよ、もし彼女が自殺したとしたら、君はヒッキーに謝らなければいけないだろう、彼がガラクタ商売をして此処でキチガイ沙汰の振る舞いを演じているのを理解できるし、責任なんか感じる必要はないさ。(それから困ったように)ヒッキーが自分の妻が死んで嬉しいなどと言ったのを気の毒と思うのか、又本気だったのか分かるかね。(うんざりしながらも激昂して)いいや、違うんだ、奴のお遊びに付き合う義理はないよ。(表情が固くなり)でも知っちゃあいるよ、彼が俺や俺の仕事から手を引くべきなんだよ。(一息ついて、ため息をつく)あ、ラリー、あのふたりの娘っ子が何たる夜を演出したか。パーティーが果てて、ウイスキーの瓶を数本持って自分たちの部屋に戻り、しこたま聞し召したってわけさ。俺は一睡も出来なかった、ここの椅子で俺が眠りに落ちた時に、彼女たちは問題を探しに下へ降りて来た。そうでなければ上で笑ったり、歌ったりのバカ騒ぎをして、俺が怒って騒ぎをやめるように上の階に上って行くことになっただろうよ。そして毎回、俺の気持ちに取り入ろうと同じ古い話をした。二人は言う、それであなたはヒッキーに同意するわけ、この小汚いジニー。私らは売春婦さ、ヒッキーのあんたに関する意見に賛成する。あんたは小者の女衒だよ、って。俺は彼女等をぴしゃりと叩いてやった。そりゃああまり良くなかっよな、彼女らは繰り返して言いやがったよ、同じことを。それを思うだけで耳が痛くなるよ、彼女らは言うのさ、聴いてよ、私らは売春婦だから小汚い女衒じゃなくて、ちゃんとした場所がほしいよ。私達は二足わらじのバーテンダーのために道をそぞろ歩く商売なんかしたくはないよ、あいつが私らを見下しているのにさ。そのうちに私らを本当に必要としている男を見つけるよ、その人を大切にして、恥ずかしがったりしないよ。私らに今夜働くのを期待しないでおくれよ、働かないつもりだからね、通りが水兵たちで通行妨害されていなくとも。ストライキをする、あんたが好もうと我慢しようとね、と。(頭を振り)売春婦がストライキだと、拘束出来ないや、(話を続ける)彼女達は言う、休暇を取るだけよ、コニーアイランドまで繰り出して、落下傘に乗り、戻ってくる、戻らないかもしれないが。あんたなんかクソ喰らえだよ、と。それでケリをつけてしまい、大酒を喰らい始めたよ。(落胆のため息をつく、凌奪された家族の夫であるかのようにグロテスクに見える、嬶殿下の妻に顎で使われていたので。ラリーは厳しい忘我状態に深く沈潜して話を聞いてはいない。チャックが背後のホールから入って来る。派手な紐を手にして麦わら帽をかぶっている。丈の高い衿の日曜用の青いスーツを着ている。眠そうで、暑苦しそうで、不機嫌である)チャック (陰気に)やあ、ロッキー。コーラがチェリー酒を注文だよ、目覚ましにだとよ。ロッキー (憤然として振り向き)シェリー酒だあ、いまいましい、彼女は目覚ましなどは必要じゃない。彼女はそれをサラダか何かと思っているようだな。チャック そうだよ、俺は言ってやったさ、我々はシェリーを何のために使うのか、彼女が生まない限りは卵は一つもない。彼女は言う、外へ出てはいけない規則でもあるのかい、出来合いを買えばいいじゃないの、のろまさん、と。(喧嘩腰で麦わら帽をかぶった)彼女なんか糞くらえだ、大酒を喰らうか、素面かだよ。(バーの後ろに行き、樽からウイスキーグラスを引き出した)ロッキー (嘲るように)ああ、新郎は結婚式の日には花嫁が望むものは何でも与えなくてはだめだ、そう思うよ。 (チャックがバーの背後から来ると、ロッキーは嘲るように見渡して)新郎のパイプ、ラリー。全部は殺すためにめかし立てるんだ。 (ラリーは無視する)チャック ええいっ、黙れ。ロッキー ジャージーのあの農園の一周間、それを俺が君らにやる。君らは息咳きって走ってくる、或る晩、此処へ、酒を呉れって叫びながら、コオロギ共が追いかけてくるから。(憤激して)ええっ、あの薄汚いヒッキーが君らをのろま野郎にするのだよ。チャック (無防備に)そうだよ、一発殴ってやりたい、一発でいい。(それから怒って)ああ、出来る、それでどうなる、俺たちはいつもそうしてやるって言っているよ。そうだ、そうしてやる。俺に言いがかりは付けるなよ、(彼はロッキーを残忍な目で睨む、だがロッキーは単に肩をすくめうんざりした嫌悪を示したが、チャックは不平不満をぶつぶつと言い続ける)コーラが不満をぶつけるのを止めてくれさえすれば、彼女は一晩中俺に休息を与えてはくれない、同じ愚痴ばかり何度も繰り返して。俺が本当に彼女と結婚したいかって、俺は言う、そうだよ、君、結婚するさ、彼女は言う、でも一週間後には自分は何という馬鹿なんだって思い始めるわ、それを口実にして賭け事を始め、私は大酒浸しに半生を縛られて、あんたは自分の妻に偽物を掴ませようというのでしょうよ。それから彼女はワーッと泣き出して、俺は酔が覚めちまったよ。君は嘘つきだ、俺は言う、俺は君の銭をふんだくったりはしないよ、酔っ払っていて働かない時以外はね。そうよ、彼女は言う、あなたは素面でどのくらいいられるのってさ、あなたは私をあの屋台店でからかうことが出来るなんて思わないで、もう何度も聞いているわ、と。それで酔いが覚めた俺は言う、俺を嘘つき呼ばわりするな、今は酔っぱらっているが、君が徹夜で不平を言い続けるからなのだよ。もし君がお喋りを始めたら、叩きのめすかも知れないぞ、と。彼女は大声を上げたよ、あなたが結婚してやるなんて甘い態度で話すからいけないのよ。(排除するかのように)ああ、彼女は俺を縛り首にするような剣幕だった。(手に持ったウイスキーを恨めしげに見詰めて)ああ、俺はこれを腹の中に流し込みたいや。ロッキー そうすればいいじゃないか。チャック (即座に疑わしそうに、怒って)確かに、君好みだ。俺は君に対して賢くなろう。君は俺に結婚して欲しくないんだ、常連客として滞在してな。俺が全身麻痺でとどまっているのが望みなのさ、そうすれば君みたいに薄汚い女衒にもなるだろうから。ロッキー (立ち上がって、悪意ある顔に強ばらせて)聴けよ、俺は君からだってそんな事は聞きたくないよ。チャック (グラスをバーに置いて、拳を固めた)そうかい、それで何が望みなんだ、(嘲るように)笑わせるな、お前等が十人でも一発で打ち負かしてやるよ。ロッキー (尻のポケットに手をやって)貴様の腹に響かせようか。ジョー (喧嘩が始まった時に割って入って)おい、君達、ロッキーとチャック、止めろよ。旧友同士だろ、あのヒッキーの事で気違い沙汰は馬鹿げているぞ。チャック (彼に向かい)余計なお節介はするな、この黒ん坊め。ロッキー (チャック同様に、ジョーの方を向き、彼等の喧嘩は忘れられて二人はよそ者に対して自然に手を結んでいる)自分の立場をわきまえろ、このちっぽけなニグロ野郎。ジョー (怒りの唸り声を発して、昼食カウンターからパンナイフを手にして飛び出して来る)白人のクソ野郎ども、身体を切り裂いてやるぞ。 (チャックはバーからウイスキー瓶を素早く手にして、それを頭の上に翳してジョーを威嚇した。ロッキーはポケットからニッケル製のリボルバーを取り出している。この瞬間にラリーがテーブルを拳で叩き、冷笑的な笑いを発した)ラリー それだよ。お互いで殺し合いをしろ、このヤクザものめ、ヒッキーの祝福を込めてな。彼が死を道ずれにしてきたって、俺は言っはずだぞ。 (彼の邪魔が三人を驚かせた。彼等は息を飲んで、ラリーを見詰め、喧嘩の怒りは瞬間で消えて、意気沮喪して羊のようにおとなしくなった)ロッキー (ジョーに)分かったよ、君。鉾を収めよう、この武器はしまうよ。 (ジョーはカウンターの後ろに行き、その上にナイフをぽんと置いた。ロッキーはリボルバーをポケットにしまう。チャックはボトルをバーに下ろした。ヒューゴはラリーがテーブルを音させた時に目を覚まして頭を挙げて、今やバカのように笑った) ヒューゴ 今日は、親愛なる人々、気にするな、間もなく君らはホットドックを柳の下で食べ、飲み放題のワインを飲む…、(突然に高慢ちきな難しい語調で)このシャンペンは適切に冷やされていないぞ。(怒りで喉をぜいぜいさせて)大嘘つきのヒッキーめ、それで俺が貴族だって分かったか、俺は労働者だけを愛している、俺は彼らを引き連れてやる、彼らにとって俺は神なんだ。彼等は俺の奴隷だ。(自分の言葉に驚いたように言葉を止めて、ラリーに哀願するように)俺は酩酊してしまっているんだ、違うか、ラリー。馬鹿を言った、俺はべろべろだ、ラリー、古き友よ、違うかい、俺は自分が言っていることが解らないんだよ。ラリー (哀れんで)君は泥酔してるよ、ヒューゴ。君のそれほどに麻痺している状態を見たことがない。頭を下げて、眠るがいいさ。ヒューゴ (感謝するように)そう、俺は眠らなきゃあ、もうぐでんぐでんに酔っ払ってしまったよ。(頭を両腕の上に載せて、目をつぶった)
2024年04月16日
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第三幕場面 ハリーホープが経営するバールーム、第一幕と二幕で使用された裏部屋の一部を含む。右の壁には二つの大きな窓、その間には通りに通じるスイングドアーがある。バーそのものは背後にある。その背後には鏡があり、ハエ除けの網があり、その上の棚には安物のウイスキーの樽が置かれ、瓶に入った品物などが一緒に並べてある。バーの左側はホールに通じる通路と仕切り戸がある。左側にはテーブルが一つ、バールーム専用の場所には椅子が四脚。右の手前には小さな昼食棚、左向きに販売人が立って昼の時間にスープを売るスペースが空けられている。バーの背後の鏡の上方にはリチャードクローカーとビッグ・トム・サリバンの枠付きの写真が掲げられている。ジョン・L・サリバンと紳士ジム・コルベットのリング姿の石版画が横に並んでいる。左には、裏部屋だったところがカーテンで仕切られて、第二幕の祝祭用のテーブルが片付けられてテーブルは第一幕のように窮屈に押し込まれている。 時刻はホープの誕生パーティーの朝の中頃で、暑い夏の日である。表の通りには太陽光が燦々と降り注いでいる。しかしその光は窓には届かず、裏部屋の光は薄暗い。 ジョーモットが動き回っている、彼の腕の下にはオガ屑の箱があり、それを床に撒いている。彼の態度は陰気だし、顔の表情は暗い。彼はみんなを無視している。場面が進むに従い、オガ屑撒きの仕事を終えて、昼食カウンターの後ろに行き、パンを切り分けている。 ロッキーはバーの背後にいて、カウンターを拭いたり、グラスを洗い、などをしている。彼は仕事着を着て、袖をまくりあげている。彼は眠く、苛立ち、疲れている。バールームのテーブルでは、前の方にラリーが椅子に座り、右前を向いている。彼の前には飲み物はない。前を見詰めて深い考えに耽っている模様。彼の右で右向きの椅子にヒューゴが座り、何時ものごとくにテーブルに腹ばい両腕と頭を載せている。その力の抜けた腕の横にはウイスキーのコップが置かれている。前列の背後にパリットが座っている。彼は前を凝視して、緊張し、ぎこちない不動の姿勢でいる。幕が上がると、ロッキーはバーでの仕事を終える。前に出てきて、ラリーのテーブルに精根尽きた様子で坐る。ロッキー 市場では昼時の忙しさまで何もできないぞ。俺はこれから休憩を取ろう。(イライラして)俺はバカじゃないからチャックに俺を騙して働かせるようにはしない、それで彼は朝の休憩をするだろう。彼と議論するのには飽き飽きしている。俺は言う、分かったよ、結婚しろよ、それが俺にとってなんだと言うのだ。ヒッキーはひどいものを手にしてしまったな。(厳しく)昨夜のパーティーかね。何たる葬式だ。のっけからケチが付いていたよ。でも、ヒッキーが妻のことを死んだと告げたのがあれにケリをつけてしまったな。ラリー そうだ、ありゃあ誕生パーティーじゃなくてお通夜だよ。ロッキー 彼はガラクタ物を平和に片付けて行くと約束していたが。あいつは喋りに喋って止まらないようだったな。みんなはこっそりと上の階に行ってしまった。酒や食物を毒のように後に残して。彼等が彼を揺すったって何の薬にもならない。ヒッキーは部屋から部屋へと歩き回っていたっけ。彼は止められないよ、彼は今朝も一流の 改革の波 を強めているよ。気づいたかい、奴がジミーを急き立てて衣類を洗濯させ、アイロンをかけさせていたのを。彼には口実などは要らないのだ。ウイリーには小銭をやってソリーの店からボロを買い戻させていた。残りの全部はブラシをかけたり大急ぎでヒゲを剃ったりすればいい。ラリー (喧嘩腰で)俺の部屋には来なかった。彼は俺が何か質問するのを恐れているのだ。ロッキー (嘲るように)そうなのか、彼は君を恐れているようには見えなかったが。君の方が彼を恐れているのだ。ラリー (刺々しく)嘘をついているんだ、それじゃあ。パリット (伸びをして、ラリーを見て、冷笑しながら)彼にからかわせないようにしなよ、ロッキー。彼は自分の戸をしっかり閉めてしまっている、僕だって中には入れない。ロッキー そうだ、君は誰をからかっているのだろうか、ラリー。彼は君にすっかり見せてしまった、大丈夫。彼が言うように、君が殺そうとしているならば、何故もっと前に火災報知機をとりはずさなかっのだ。ラリー (憤然として)臆病者の所業だからだ、それが理由さ。パリット 彼は全くの臆病者さ、ロッキー。ヒッキーは黄色の老いたいかさま師だよ。ラリー (パリットに正対して)この嘘つきめ、忘れるなよ、俺が君に警告したことを。ロッキー (パリットを詰る)そうだ、黙っておれよ、お前。口出しをする許可を何処で手にしたんだ。奴をとっちめてやってもいいかい、ラリー。君が奴にうろついて欲しくないなら、誰もがそう思っているんだよ。ラリー (無理に無関心を装い)いいや、彼にいさせろよ。気にしないからな。俺には奴は無にしとしいや。(ロッキーは肩をすくめ、眠そうに欠伸した)パリット そうですよ、僕には行くところがないのです。世界でたった一人当てにできる人があなたなのです。ロッキー (眠そうに)君はいい加減ヤワなバカだよ、ラリー。彼は嫌な虱さ、ヒッキーみたいな。属性がないんだ、(欠伸をして)疲れてよ、眠っていないからな、まぶたが開かないよ。(彼は目を閉じ、頭をこくりとさせる) (パリットはロッキーに一瞥をくれると立ち上がってラリーの左側に擦り寄り、彼とロッキーの間に来た。ラリーは退いて決然としてパリットを無視する)パリット (ラリーの方に身を屈めて、迎合的な、哀願するような語調で)あなたを悩ませたりして御免なさい、ラリー。でもあなたは僕に何が起きても意に介さないように振舞って僕を苦しめているのですよ。戸を締め切ってしまい、話ができないようにした、(次には希望を込めて)でもそれはヒッキーをはじき出すためなんでしょ、僕は非難なんかしません、僕は彼を嫌い始めているのです。ますます彼を畏怖しだしている、彼が自分の妻は死んだと話したあとでは殊に。何処かで彼と感情を交差させているような奇妙な気分がした。何故だかは分からないのですが、それが僕にマザーの事を思わせ始めたのですよ、マザーが死んだみたいに…、(彼の憐れな語調にはどこか満足気な奇妙な背後の感情が流れている)マザーは元気でしょう、心の中は、という意味ですがね。彼女が僕を思うと、死の苦しみが襲うでしょうよ、僕はそうなってほしくはないのですが、それは必然なのです。結局は僕は彼女のたった一人の子供なんですからね。彼女は僕をダメにして玩具にしていたのです。長い時間の間に一度だけという意味です。彼女が僕を思い出した時に。彼女が何かをしようと決断したみたいに、罪を自覚したごとくに、それで彼女は僕を少しだけ愛した、それでもそれが彼女の自由を侵害しないように、(不思議な切迫した悩みを示し)分かりますか、ラリー、僕はかつて密かな疑惑を抱いた、多分、真実が明かされたら、あなたは僕の父親ではないかと。ラリー (暴力的に)この愚か者め、誰がそんな狂気の考えをお前の頭に吹き込んだのだ。嘘なんだ、決まってる、西海岸の誰もが、お前が生まれた後まで、彼女に俺が目を付けなかったことを知っている。パリット でも、僕には訊くことなど不可能です、あなたは正しいのを知っています、母に聞いたことがあるのですよ、彼女は僕を率直であるように育て、何でも質問させた。そして彼女は何時でも本当の事を話してくれた。(唐突に)でも、彼女が今僕について感じているに相違ない事を話そうとしたのですよ、僕の例の運動体験、彼女は絶対にそれを許さないでしょう、運動は彼女の人生です。そして彼女を官憲に売ったのが僕だと知ったら、彼女は最終的に駄目になってしまうに違いないのです。ラリー だまれ、このガキが。パリット 僕は母を殺すでしょう。僕は確信があるのです、彼女は僕が下手人だと知っている。(突如、自暴自棄の性急さで)でも僕は警察が彼女を逮捕するなどとは思わなかった。信じてくださいよ、僕のたったひとつの正当性を、僕が昨夜話したことは嘘っぱちです、愛国者で、自国への義務だなどという、ダボラは。でも、本当の理由があるのですよ、ラリー、たった一つの理由が、それはまさにお金です、僕は売春婦にのめり込んで、金を相手に握らせていい思いがしたかった、それが全部なんですよ、お金です、正直、(真にグロテスクな風で、自分の徹底した卑しさを告白して、自分の真実の罪悪から無実の証を立てようと口実を与える者のように)ラリー (パリットの肩を掴み、揺する)こん畜生め、黙れ。それが何だって言うんだ。(ロッキーが目を覚ました)ロッキー 何が起きているんだい。ラリー (自制して)何も、このお喋りな若造が俺の耳をふさぐようにがなり立てている、それだけだ。奴はヒッキーより悪質な死病のペストだよ。ロッキー (眠そうに)そうさなあ、ヒッキー…、まあ、聞きなよ、彼に質問するのをヒッキーが恐れているって、どういうことなのさ。どんな質問なんだよ。ラリー そう、彼は何かを隠しているようだ。気づいたろうが、彼はどんな原因で妻が死んだのかを言わなかった。ロッキー (反駁するように)おい、止めないか。憐れな奴さ…、何がわかったんだい。あれは彼一流の冗談だったかもな。ラリー いいや、彼は此処に死を連れてやって来たんだよ、おれは死の凍えるような感触を感じたよ。ロッキー ああ、ダボラだよ。君は頭をガーガー言わせるぞ、古い墓地野郎。(突然彼の目が広がった)例えばだが、君は彼女が自殺したとでも言いたいのかい。彼の嘘つきグセとかで。ラリー (ニヤリとして)そうだとしても驚いたりはしないぞ。俺は彼女を責めたりはしないよ。ロッキー (嘲るように)が、キチガイじみてるよ。ああ、彼女がそうしたとして、ヒッキーはそれで喜んでいるなどとは言わないだろうよ、奴はそれ程の悪じゃあないよ。パリット (忘我の状態から強いて話す、奇妙な具合に)それよりも、もっとよく知っているはずです、ラリー。彼女は自殺なんかしないと、彼女はあなたと同じなのです。たとえ絶望の淵にたっても命に縋り付くでしょうからね。ラリー (傷ついて、意地悪そうにパリットに向き)それで、君はどうなんだね。神様、君に根性や上品さがあれば…、(罪ありげに止めた)パリット (冷笑して)あなたは余りにも臆病だから、僕は火災避難からアヘンを奪い取るでしょう。ラリー (自分に言うかのように)いや、俺に誰を判断できる、判断なんか、糞くらえだ。パリット (なじるように)そう、あなたはそれが好きなんだと思います、そうでしょ。ロッキー (イライラした神秘を秘めて)これが全部、何だというのかね。(パリットに)君はヒッキーの奥さんについてどう思うのか。どうして彼女のことが解るのだ。ラリー (出来る限り何気ない風を装って)わからないさ、ヒッキーは自分の持っている脳を腐らせてしまった。奴を自分のテーブルに戻らせろよ、ロッキー。反吐が出てしまうよ。ロッキー (パリットに向かい、脅すように)ラリーの言葉を聞いただろう、顔面にパンチを喰らわす口実が欲しかったんだ、だから早く動け。パリット (立ち上がり、ラリーに)別のテーブルに移ると僕を追い払うことになると思うのだっっらね、(移動して、そして厳しい批難を込めて)ねえ、ラリー、こんな目に合わせるなんて酷すぎるよ、僕があなたを信頼して、手助けを必要としているのに。(前の場所に座り、傷ついて、自分を憐れむ沈黙に沈むようにした)
2024年04月12日
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第三幕場面 ハリーホープが経営するバールーム、第一幕と二幕で使用された裏部屋の一部を含む。右の壁には二つの大きな窓、その間には通りに通じるスイングドアーがある。バーそのものは背後にある。その背後には鏡があり、ハエ除けの網があり、その上の棚には安物のウイスキーの樽が置かれ、瓶に入った品物などが一緒に並べてある。バーの左側はホールに通じる通路と仕切り戸がある。左側にはテーブルが一つ、バールーム専用の場所には椅子が四脚。右の手前には小さな昼食棚、左向きには販売人が立って昼の時間にスープを売るスペースが空けられている。バーの背後の鏡の上方にはリチャードクローカーとビッグ・トム・サリバンの枠付きの写真が掲げられている。ジョン・L・サリバンと紳士ジム・コルベットのリング姿の石版画が横に並んでいる。左には、裏部屋だったところがカーテンで仕切られて、第二幕の祝祭用のテーブルが片付けられてテーブルは第一幕のように窮屈に押し込まれている。 時刻はホープの誕生パーティーの朝の中頃で、暑い夏の日である。表の通りには太陽光が燦々と降り注いでいる。しかしその光は窓には届かず、裏部屋の光は薄暗い。 ジョーモットが動き回っている、彼の腕の下にはオガ屑の箱があり、それを床に撒いている。彼の態度は陰気だし、顔の表情は暗い。彼はみんなを無視している。場面が進むに従い、オガ屑撒きの仕事を終えて、昼食カウンターの後ろに行き、パンを切り分けている。 ロッキーはバーの背後にいて、カウンターを拭いたり、グラスを洗い、などをしている。彼は仕事着を着て、袖をまくりあげている。彼は眠く、苛立ち、疲れている。バールームのテーブルでは、前の方にラリーが椅子に座り、右前を向いている。彼の前には飲み物はない。前を見詰めて深い考えに耽っている模様。彼の右で右向きの椅子にヒューゴが座り、何時ものごとくにテーブルに腹ばい両腕と頭を載せている。その力の抜けた腕の横にはウイスキーのコップが置かれている。前列の背後にパリットが座っている。彼は前を凝視して、緊張し、ぎこちない不動の姿勢でいる。幕が上がると、ロッキーはバーでの仕事を終える。前に出てきて、ラリーのテーブルに精根尽きた様子で坐る。ロッキー 市場では昼時の忙しさまで何もできないぞ。俺はこれから休憩を取ろう。(イライラして)俺はバカじゃないからチャックに俺を騙して働かせるようにはしない、それで彼は朝の休憩をするだろう。彼と議論するのには飽き飽きしている。俺は言う、分かったよ、結婚しろよ、それが俺にとってなんだと言うのだ。ヒッキーはひどいものを手にしてしまったな。(厳しく)昨夜のパーティーかね。何たる葬式だ。のっけからケチが付いていたよ。でも、ヒッキーが妻のことを死んだと告げたのがあれにケリをつけてしまったな。ラリー そうだ、ありゃあ誕生パーティーじゃなくてお通夜だよ。ロッキー 彼はガラクタ物を平和に片付けて行くと約束していたが。あいつは喋りに喋って止まらないようだったな。みんなはこっそりと上の階に行ってしまった。酒や食物を毒のように後に残して。彼等が彼を揺すったって何の薬にもならない。ヒッキーは部屋から部屋へと歩き回っていたっけ。彼は止められないよ、彼は今朝も一流の 改革の波 を強めているよ。気づいたかい、奴がジミーを急き立てて衣類を洗濯させ、アイロンをかけさせていたのを。彼には口実などは要らないのだ。ウイリーには小銭をやってソリーの店からボロを買い戻させていた。残りの全部はブラシをかけたり大急ぎでヒゲを剃ったりすればいい。ラリー (喧嘩腰で)俺の部屋には来なかった。彼は俺が何か質問するのを恐れているのだ。ロッキー (嘲るように)そうなのか、彼は君を恐れているようには見えなかったが。君の方が彼を恐れているのだ。ラリー (刺々しく)嘘をついているんだ、それじゃあ。パリット (伸びをして、ラリーを見て、冷笑しながら)彼にからかわせないようにしなよ、ロッキー。彼は自分の戸をしっかり閉めてしまっている、僕だって中には入れない。ロッキー そうだ、君は誰をからかっているのだろうか、ラリー。彼は君にすっかり見せてしまった、大丈夫。彼が言うように、君が殺そうとしているならば、何故もっと前に火災報知機をとりはずさなかっのだ。ラリー (憤然として)臆病者の所業だからだ、それが理由さ。パリット 彼は全くの臆病者さ、ロッキー。ヒッキーは黄色の老いたいかさま師だよ。ラリー (パリットに正対して)この嘘つきめ、忘れるなよ、俺が君に警告したことを。ロッキー (パリットを詰る)そうだ、黙っておれよ、お前。口出しをする許可を何処で手にしたんだ。奴をとっちめてやってもいいかい、ラリー。君が奴にうろついて欲しくないなら、誰もがそう思っているんだよ。ラリー (無理に無関心を装い)いいや、彼にいさせろよ。気にしないからな。俺には奴は無にしとしいや。(ロッキーは肩をすくめ、眠そうに欠伸した)パリット そうですよ、僕には行くところがないのです。世界でたった一人当てにできる人があなたなのです。ロッキー (眠そうに)君はいい加減ヤワなバカだよ、ラリー。彼は嫌な虱さ、ヒッキーみたいな。属性がないんだ、(欠伸をして)疲れてよ、眠っていないからな、まぶたが開かないよ。(彼は目を閉じ、頭をこくりとさせる) (パリットはロッキーに一瞥をくれると立ち上がってラリーの左側に擦り寄り、彼とロッキーの間に来た。ラリーは退いて決然としてパリットを無視する)パリット (ラリーの方に身を屈めて、迎合的な、哀願するような語調で)あなたを悩ませたりして御免なさい、ラリー。でもあなたは僕に何が起きても意に介さないように振舞って僕を苦しめているのですよ。戸を締め切ってしまい、話ができないようにした、(次には希望を込めて)でもそれはヒッキーをはじき出すためなんでしょ、僕は非難なんかしません、僕は彼を嫌い始めているのです。ますます彼を畏怖しだしている、彼が自分の妻は死んだと話したあとでは殊に。何処かで彼と感情を交差させているような奇妙な気分がした。何故だかは分からないのですが、それが僕にマザーの事を思わせ始めたのですよ、マザーが死んだみたいに…、(彼の憐れな語調にはどこか満足気な奇妙な背後の感情が流れている)マザーは元気でしょう、心の中は、という意味ですがね。彼女が僕を思うと、死の苦しみが襲うでしょうよ、僕はそうなってほしくはないのですが、それは必然なのです。結局は僕は彼女のたった一人の子供なんですからね。彼女は僕をダメにして玩具にしていたのです。長い時間の間に一度だけという意味です。彼女が僕を思い出した時に。彼女が何かをしようと決断したみたいに、罪を自覚したごとくに、それで彼女は僕を少しだけ愛した、それでもそれが彼女の自由を侵害しないように、(不思議な切迫した悩みを示し)分かりますか、ラリー、僕はかつて密かな疑惑を抱いた、多分、真実が明かされたら、あなたは僕の父親ではないかと。ラリー (暴力的に)この愚か者め、誰がそんな狂気の考えをお前の頭に吹き込んだのだ。嘘なんだ、決まってる、西海岸の誰もが、お前が生まれた後まで、彼女に俺が目を付けなかったことを知っている。パリット でも、僕には訊くことなど不可能です、あなたは正しいのを知っています、母に聞いたことがあるのですよ、彼女は僕を率直であるように育て、何でも質問させた。そして彼女は何時でも本当の事を話してくれた。(唐突に)でも、彼女が今僕について感じているに相違ない事を話そうとしたのですよ、僕の例の運動体験、彼女は絶対にそれを許さないでしょう、運動は彼女の人生です。そして彼女を官憲に売ったのが僕だと知ったら、彼女は最終的に駄目になってしまうに違いないのです。ラリー だまれ、このガキが。パリット 僕は母を殺すでしょう。僕は確信があるのです、彼女は僕が下手人だと知っている。(突如、自暴自棄の性急さで)でも僕は警察が彼女を逮捕するなどとは思わなかった。信じてくださいよ、僕のたったひとつの正当性を、僕が昨夜話したことは嘘っぱちです、愛国者で、自国への義務だなどという、ダボラは。でも、本当の理由があるのですよ、ラリー、たった一つの理由が、それはまさにお金です、僕は売春婦にのめり込んで、金を相手に握らせていい思いがしたかった、それが全部なんですよ、お金です、正直、(真にグロテスクな風で、自分の徹底した卑しさを告白して、自分の真実の罪悪から無実の証を立てようと口実を与える者のように)ラリー (パリットの肩を掴み、揺する)こん畜生め、黙れ。それが何だって言うんだ。(ロッキーが目を覚ました)ロッキー 何が起きているんだい。ラリー (自制して)何も、このお喋りな若造が俺の耳をふさぐようにがなり立てている、それだけだ。奴はヒッキーより悪質な死病のペストだよ。ロッキー (眠そうに)そうさなあ、ヒッキー…、まあ、聞きなよ、彼に質問するのをヒッキーが恐れているって、どういうことなのさ。どんな質問なんだよ。ラリー そう、彼は何かを隠しているようだ。気づいたろうが、彼はどんな原因で妻が死んだのかを言わなかった。ロッキー (反駁するように)おい、止めないか。憐れな奴さ…、何がわかったんだい。あれは彼一流の冗談だったかもな。ラリー いいや、彼は此処に死を連れてやって来たんだよ、おれは死の凍えるような感触を感じたよ。ロッキー ああ、ダボラだよ。君は頭をガーガー言わせるぞ、古い墓地野郎。(突然彼の目が広がった)例えばだが、君は彼女が自殺したとでも言いたいのかい。彼の嘘つきグセとかで。ラリー (ニヤリとして)そうだとしても驚いたりはしないぞ。俺は彼女を責めたりはしないよ。ロッキー (嘲るように)が、キチガイじみてるよ。ああ、彼女がそうしたとして、ヒッキーはそれで喜んでいるなどとは言わないだろうよ、奴はそれ程の悪じゃあないよ。
2024年04月11日
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ヒッキー (再び立ち上がって、彼が純粋に恥じている事を単純に確信して、周囲に話しかけた)みんな、聴いてくれ、君らは俺の駄弁に辟易してるのを知っているのだが、此処で少しばかり説明をさせてもらいたい。俺が君らに押し付けた乱暴を詫びさせて貰いたいのだよ。君らにどんな風に感じられるかは承知している。まるで俺は君らの私的な仕事を邪魔しているだけのお邪魔虫なのさ。そして君らが相互に罵り合っているのを毛嫌いもしている。そう、それは確かなんだが、それも申し訳がないと思っている。でもそれは単になされてしまった。君らはそれを信じなければダメだ。老いたヒッキーを知っている。俺は問題をし始めたことはないが、今回はもしかしたら…。君等の為にだが、俺は君らがお互いに助け合うことをしてもらう必要を感じているんだ。俺はひとりきりになった後で出来ることは無いのを承知しているさ。譲渡の時でもないがね。俺はここへ来る時に君らとは長くはいられないだろうとは分かっていた。俺は旅行に出発する。俺は元気を出してどんな手でも使うつもりだ。(冗談で自慢する風で)そう、十分に時間があれば俺は一連の救済品を売り払って君らを相互に手助けさせるように俺の孤独を楽しみに変えてみせる。昔に楽しみだったように、家々を一軒ずつ訪ねて、俺に犬をけしかけるような婦人を説得して、彼女が新しい洗浄用の湯沸かし器を備えるように勧める。そして君らともうまくやるつもりでいるのさ。俺は君等の一人ひとりを知っている。何から何まで、諳んじているさ。以前は俺は此処で飲んだくれていたが、もう終わってしまった以上は老いた俺は素面でいるよ。つまり俺を除いてはな。そして結局、俺自身をすっかり見切ってしまうのだ。(一息ついて、周囲はヒッキーを見詰める、厳しく、不安げに、魅惑されたごとくに。ヒッキーの態度は非常な熱心さを示す)が、ここに重要な点がある。誓って言うが、俺は以前のようには行動しないよ、俺にはまるで確信が持てずにいる、結局のところそれが君らにとって価値が有ることなのか、君らが罪の意識を払拭し、明日へ向けての小汚いパイプドリームの蔭でいがみ合ったり隠れたりして自責の念に苛まれないように、だが。君らは今日、昨日でも明日でもない所で悩まないようにしてやりたい。君らはもう自分をくさすことはないのだよ。兄弟と姉妹の諸君、この平和は本当だ、事実なんだ、此処、今、君らの目の前だよ。俺が違ったのを理解できるかな、俺が以前どんなだったかを忘れるなよ。俺が腹の中に安酒をしこたま溜め込んで、冗談を言い、歌った、甘美なアデラインを、俺は今でも罪深い鼻つまみ者だと感じている。俺は今や何に対しても文句なんか言わない。そして約束するよ、今日が終わるまでには、ここにいるみんなが俺と同じようになることを。(一息つく。みんなは魅惑されたように彼を見詰める。ニヤリと笑って付け加えた)俺から言うことは以上だ、少年、少女、今のところは。だから、パーティーを続けようじゃないか。(腰を下ろし始めた)ラリー (鋭く)待てよ、(しつこく、冷笑して)われわれ哀れなパイプドリーマーを土埃だらけの救済に向けて、君が見つけた偉大なる平和に移行させる手助けをしてくれと俺は思う。(益々執拗になじるような叱責の調子で)俺は気づいたんだが、氷屋の話を持ち出したのを、君は否定しなかった。悪しき明日への夢に関するこの偉大な天啓は君の妻がひどく君を嫌っていることに気づいた後で、天から降りてきたのかね。 (ラリーが話をしている間に、一同の顔が復讐心に燃えるかのように明るくなり、自身に復讐する機会をたちまちに得たかのようだ。彼が話し終えると、冷笑の譴責の合唱が始まり、薄汚い冷笑の笑いで終わる)ホープ ああ、当たりだよ、ラリー。今回は彼は妻の写真を見せびらかしはしなかったのに気づいていた。モッシャー 彼はそれを持って来なかったんだ。あの氷屋が彼から奪いさったんだよ。マギー ねえ、ご覧よ。誰が彼女を批難出来るんだい。パール 彼女は氷屋に惚れ込んで困っているのに相違ないさ。コーラ 彼みたいなバカが私とチャックが結婚するのに助言すと言うのを想像してご覧よ。チャック そうなんだ、彼は上手くやったんだよな。ジミー 少なくとも、俺は言わなくちゃあ、マージョリーは将校や紳士を選んだってね。ルイス 自分を見てごらんよ、ヒッキー、ご老人、あんたは血だらけのカモシカみたいに角を生やしているよ。ウエットジョーエン 汚たねえ、めっちゃ汚たねや、水牛みたいだよ。ウイリー (若い水兵調で歌う) ” いらっしゃいな、彼女は叫んだ、若い氷屋さん。そして私とあんたは意気投合して… ” (一同は全員で冷笑的な合唱に加わり、拳やコップなどでテーブルを叩き、詞の暗示的な箇所を強調する) ” そしてもっとも可愛らしい物を見せましょうよ ラップ ラップ ラップ これまでにあなたが目にした ” (汚らしい、嘲笑の笑いの渦が起こる。ヒッキーはこの間ずっと動かずにいる。彼は人の良さっそうなニヤニヤ笑いで彼に対する嘲笑を冗談として受け止めて、一緒に笑っている)ヒッキー さあさあ、少年少女諸君、ハリーの誕生パーティーにみんなが元気いっぱいなのを見て嬉しい限りだ。冗談で俺をからかっているにしてもだよ。俺は昔、その氷屋の冗談をひっぱり出しては冗談にしてくれと頼んだことを認めるよ。だから、好きなだけ笑ってくれよ。(一息つく。もう誰も笑っていない。裏をかかれて不安なのだ。ヒッキーは話を続ける)そう、これは俺の腕を力ずくで働かせる、多分、君らはエブリンの話題を無理やり持ち込んだりしたから。俺はまだ話したくはない、まだその時じゃないからな、つまり、パーティーが終わらなくては。だが、君らはエブリンを誤解している、それで俺はそれを止めなければいけない。(又、一息する。部屋のは緊張感が走った。頭を下げて、急いで話す)残念ながら、俺の最愛の妻は死んでしまった。(あっけにとられている一同からうめき声が発せられた。彼等はヒッキーから目をそらし、衝撃を受け、惨めに自分たちを恥じている。じっとヒッキーを見つめ続けているラリーを除いては)ラリー (彼自身に声を出して迷信的な及び腰で)ああ神様、彼は自分に死を引き寄せるような仕草を見せたぞ、(それから突然、他の者より更に自身を恥じるように口ごもって)許してくれよ、ヒッキー、俺は自分の小汚い舌を切り落としたいよ。 (これは人々からももぐもぐ言う恥ずかしさの合唱を引き出した、御免よ、ヒッキー、済まなかった、ヒッキー、許してくれよ、などど、など、と)ヒッキー (彼らを見回して、親切な、元気づけるような調子で)さあ、見てくれよ、みんな。ハリーのパーティーに濡れたタオルを被せる必要などないぞ。君らは全員が俺を誤解してる。理由などはない…、詰まりは悲しみなどは感じちゃいないのさ。(みんなは驚いて彼を見つめるが、ヒッキーは説得力のある真剣さで話し続ける)俺は彼女のために嬉しささえ感じている。彼女は平和だからだ、彼女はついに俺を追い払った、ちくしょうめ、俺は君らに話したくはなかったんだ、俺がいまどんなかは今君らが見る通りだ、想像してくれないか、彼女が体験したことを、嘘つきの悪党で俺みたいな飲んだくれと結婚したんだよ。それもそれ以外には道がなかったんだ、彼女には、彼女は俺を愛していたからな。が、今は平和なんだよ、ずっと彼女が渇望して止まなかったようにな。だから、なんで俺が悲しむ必要があるんだ。彼女は俺が悲しむ事を欲してはいなかった、そうだよ、エブリンが人生から得たいと望んでいたことは俺が幸せになることだったんだ。 (彼は話を止めて、周囲を見回した、単純で、温和な率直さで) (人々は驚愕して、信じがたさの混乱状態で、ヒッキーを見詰めている) 幕が降りる。
2024年04月09日
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ヒッキー (ホープを見てニヤリとし、面白がって)そう、我々みんなが君が彼女の世界を思っていると話すのを聞いたよ、長官。ホープ (吃驚した疑いの目を向けて)そう、そうしたよ。みんなが俺がそうしたのを聞いているよ。(威嚇するように)なあ、俺が何も言わなかったなんて君等が言ったら…。ヒッキー (宥めるように)さあさあ、長官。俺は何も言っていない。君はそれについての真実を知っているただひとりの人物だ。 (ホープは混乱してヒッキーを見詰める。コーラは曲を弾き続けている。一瞬、間があく。しかしそれはジミーの酔ってたわいない、自分を憐れむような憂鬱さ、感傷的な夢が話させる声で、破られる)ジミー マージョリーのお気に入りの歌は「ロッチ モンド」だ。彼女は美しく、ピアノを流麗に演奏したし、声も美しかった。(柔らかな悲しみを込めて)君は幸運だ、ハリー。ベシーは死んだ。死の手で愛した女性を失うよりももっと厳しい悲しみがあるんだよ。ヒッキー (面白そうにジミーにウインクして)さあ、聞きたまえ、ジミー、話を止めろよ。我々は全員が聞いているよ、その話、君がどうやってケイプタウンに戻り、彼女が干し草の中で将校と抱き合っているのを発見したかを。君が信じたがっているのを知ってもいる、それで君はのんだくれを始めたし、人生を破滅させたことを。ジミー (口ごもる)俺は、俺はハリーに話しかけているのだよ、少し黙っていてくれないか、(憐れみを乞う無視で)俺の人生は破滅などしていないさ。ヒッキー (これを無視して、小馬鹿にしたようにニヤリとして)俺は賭けてもいいが、君は自分に真実を認めるべきなんだよ、君がへべれけに酔っ払うのを嫌っていた彼女を反吐が出るくらいに嫌だったことを認めろよ。彼女がそんなよい口実を君に与えたのを知って随分と救われたのだ。 (ジミーは彼を驚愕して見つめ、ヒッキーはジミーの肩をまた軽く叩いた、真実の同情を見せて)俺は現実を承知してるぞ、ジミー、俺は…。(突然に言葉を切って、一瞬、自信を失ったようになり、混乱している)ラリー (この時を捉えて、報復的な気分で)ハッ、それが実際に君に起こったのだな。君の氷屋の冗談は遂には身から出た錆となった。(嘲り笑って)古い迷信にも真理があることを忘れずにいるべきなんだよ、遂には自分の所に帰ってくるのだから、用心するに越したことはないのだよ。ヒッキー (また自分を取り戻し、いたずらっぽくラリーに笑いかけた)事実なのか、ラリー。うん、うん、君が古い大きな眠りと呼び続けているものに気をつけろよ。(ラリーは驚いて暫時迷信顔でいる。突然に、ヒッキーは陽気で元気な司会者風の態度に変わり)しかし、我々は何を待っているのだろうか、諸君。パーティーの次第を始めよう。(バーに叫んだ)おい、チャックとロッキー、大きなサプライズを運び込んでくれないか。長官、このテーブルの先頭に座ってくださいな。 (彼は右のテーブルの端の椅子にハリーを座らせた。マギーとパールに向かって)さあ、娘達、座れよ。(二人はジミーの右に坐る。ヒッキーは左のテーブルの端に腰を掛ける)俺は末席の此処に座ろう。(彼はコーラを左に、その左がジョーで腰を下ろしている。ロッキーとチャックがバーから姿を現し、各自が大ジョッキとシャンペンを載せたお盆を運んでいる。それをパーティーメンバーの前に置く)ロッキー (無理に陽気に振る舞い)さあ、本物のシャンペンだぞ、元気をだせ、これは丸で葬式だぞ。ハリーの赤目と混ぜて君等をノックアウトしちまうだろう、まだ満足したことはないのだろう。 (ロッキーとチャックは大ジョッキを配り終えて、残りの二個を手にして、空いている椅子に座った。そのあとで、ヒッキーが立ち上がり、大ジョッキを手にして)ヒッキー (注文を催促するようにテーブルを軽くたたき、完全な静寂が支配している)注文、注文、紳士淑女諸君、(自分のグラスにラリーの目が写っているのを捉えて)そう、ラリー、今回は君と一緒に飲むつもりだ、俺が禁酒主義者ではないことを証明する為に、過度の飲酒が俺に秘密をゲロさせないようにしよう。(ラリーは神妙にしている。ヒッキーはクスクス笑って続ける)いいや、俺はそれについては単純な真実を君等に与えよう。俺はもう過度の飲酒も他の何も必要とはしていない。しかし俺は社交的ではありたいので、我らが古くからの友人のハリーの為に乾杯をしたいと思う。そしてみんなで酒を飲もう。(彼の視線はヒューゴに釘付けになるが、彼は意識のないように見える。ヒューゴの左のラリーに)その爆弾男を起こしてくれないか、チャック。この祝宴に死体などは欲しくないからな。チャック (ヒューゴを揺すって)へい、ヒューゴ、息を吸いに上がってこいよ。シャンペンが見えないか。 (ヒューゴは目をぱちくりさせ、バカのようにクックと笑った)ヒューゴ 誕生ケーキを食べて、柳の木の陰でシャンペンを飲もうぜ。(大ジョッキを手に取るとがぶ飲みした。それから不味そうなしかめ面でジョッキをテーブルに戻した。不思議な傲慢な態度で執事をたしなめるような口調で)このワインは飲むには不適だな。適切に冷やしてないじゃないか。ヒッキー (面白がって)いつも意気軒昂だな、えー、ヒューゴ。君が何処へ出かけるかを教えてくれれば神様が哀れな我らに救いを恵んでくれるだろう。君は柳の木の下で我々の生き血を飲んでいたのだよ。(クックと笑う。ヒューゴは椅子に縮こまり、彼を目をしばたたかせて見るが、ヒッキーはテーブルのホープを見上げている。彼は乾杯をするが、次第に感動を強め、明らかに真面目になっている)さあ、乾杯だ、紳士淑女諸君、我々の誰もが必要としているハリーホープの為に乾杯だよ。これは、老いた長官、最高の好人物、世界で一番親切で大きな心の持ち主、に向けて乾杯だ。君等全員の幸運を念願しようぜ、ハリー、長命と幸福とを祈念しよう、さあさあ、みんな。ハリーに祝福あれ、不幸などは飛んでいってしまえ。 (彼等は皆ヒッキーの真剣さを熱心な慰安で受け止めた。そして手にした大ジョッキを掲げて、熱烈な合唱で、ハリーの為に、ハリーに幸運を、などなどと声に出し、ワインを半分飲み干した、ヒッキーはこうして彼らを先導している)ホープ (深く感動して、声が掠れている)ああ、みんな、感謝するよ。あの、ヒッキー、老いた女神の息子よ、白人だ、そうだ、君の言わんとするのは分かるよ。ヒッキー (感動して)勿論、その通りだよ、ハリー、旧友だ。今日の誕生日が君の人生で最大の日になればいいと望んでいる。そして此処に列席している誰にとってもそうあって欲しいと。新しい平和と満足の人生の始まりで、パイプドリームが君等を苦しめないことを願うよ。ハリーにとってもだが。(残りの酒を一気に飲み干した。しかし今度は彼一人だけだ。次の瞬間にみんなの態度が落ち着かない、疑うような、防御の姿勢に変化した)ロッキー (がみがみと不平を鳴らした)しばらく駄弁るのをやめろよ、なあ。ヒッキー (腰をおろして、ご機嫌で)君は正しい、ロッキー、俺は喋りすぎたよ。ハリーの話を聞かなくてはいけなかっんだ。さあ、ハリー。(大ジョッキをテーブルの上にどんと置いた)演説、演説してくれよ。 (彼等は瞬間的な熱烈さを取り戻そうと試みてジョッキでテーブルを叩き、演説、と唱えたが何故か虚しい響きがこだました。ホープはいやいや立ち上がり、無理に笑顔を作り、内向する拒絶感がその態度に出始めている)ホープ (不承不承に)その、俺は話をするのが苦手なんだ。俺が言える全部の事はみんなが俺の誕生日を覚えていてくれたことに感謝するということだ。(ほろ苦さが滲み出る)ただ俺が六十歳だから前よりももっと大馬鹿になるなんて思わないでくれ。そうだよ、ヒッキーが言ったように新しい日が始まるのだ、この安酒場は他の安酒場同様に経営を続けるし、そして俺はなにがしかの金を手にする。人々は俺に支払う分だけ稼げばいい。俺は怠け者やのんだくれの為の孤児院を経営してるんじゃない。乞食小屋をやってもいないよ。刑務所にぶち込まれるような不潔な無政府主義者ルンペン用の老人ホームをやってもいないぞ。大酒くらいと遊ぶのには嫌気がさしてしまった。(彼等は肝を潰し、うろたえて傷ついている。ホープは絶望的な猛烈さで続ける。自分の発する一語一語を毛嫌いしながら、止めることができないみたいに)今、君等は俺がからかっているなどとは思わないでくれ。陰で俺を笑っているくらいのことは知ってるよ。心の中で思っているんだ、老いぼれの、嘘つき、パイプドリームのいかさま師だって、我々はホープが地域を何年も歩き回っていて、何も出来ないでいる、奴は腰抜けだし、根性なしだ、真実を知るのが怖いのだ、などと言って。(まるで彼らを憎悪するかのように見回して)だが、俺は見せてやるぞ、 (ヒッキーを睨みつけて)お前にも分からせてやる、このクソ野郎のフライパンめ。ヒッキー (心から力づけるように)それは戯言だよ、ハリー。勿論、君は俺に示しをつけるだろうよ。それこそは俺が君に望んでいることだよ。 (ハリーはヒッキーを救いのない恐怖で見詰め、それから視線を落とし、こっそりとテーブルの周りを見た。たちまちにして彼は惨めな悔恨の情を示している)ホープ (声をつまらせて)聴いてくれ、みんな。あの、許してくれ。気が動転してしまった。気分がすぐれないのだ、最悪なんだよ。此処では君等全員が歓迎すべき者達さ、五月の花さながらに。 (彼等は熱心な許しの表情でホープを見る。ロッキーが最初に声を発した))ロッキー ああ、確かに、親分、君はいつでも俺たちの人気者だぜ。
2024年04月05日
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モッシャー (無理して無頓着を装い)そう、結局はヒッキーが何処へ出て行こうと、行くまいと俺は関知しないよ。明日の朝には精算するつもりでいるよ、済まなかったな、マック。マクグロイン (拒絶するように)君はそんな必要はないよ、君に対して済まないと感じているだけだ。モッシャー 俺は覚悟を決めてしまった。ヒッキーは不潔な厄介なペストだし、俺達に絶対禁酒を迫っている。彼の脅しには何がしかの真実があるさ。此処をうろついちゃあ君に漆喰を塗り立てる、マックは、喜んでいるが、俺は否定はしないよ、仕舞いには昔ながらの飲酒癖が始まり、喜んで酒を飲み出すよ。俺はしばし此処を離れるよ、(無理に熱弁を振るうようにして)その上に俺の血管の中で無分別な曲芸人生が始まりそうだと告げている。俺は明日上司と会う。時期的には遅いが、彼は喜んで俺を迎え入れてくれるだろうよ。そして古い仲間は俺の姿を見て死のほうへと誘惑される事なのだ。マクグロイン 多分、彼等は手頃な綱を手にするだろう。モッシャー (マクグロインの方を向き、怒って)聴けよ、俺はその冗談が大嫌いなんだ。マクグロイン そうなのかい、俺の方はお前の軍隊に再編入されるという冗談に辟易してるよ。お前がどうであろうと、俺はここに座って人生を過ごすのだよ、安酒で胃袋をダメにしながら。俺は先細りだが、朝にはひなげしみたいに新鮮になる。俺は出かけて行って事務官と密談する。(無理に熱弁を奮って)生き生きした人間は、少年達が言ったように、この頃では沢山砂糖がある、そして俺は直ぐに大きな赤い自動車を乗り回すようになるぞ。モッシャー (嘲るように、想像上の中国人のように手真似して)さあさあ、ひとつまみのアヘンだ、ランプに新鮮なピーナッツ油をいれて、大尉殿にもうひとつ錠剤を調整してあげな。目出度い夜のために。マクグロイン (辛辣に、拳を脅すように引いて)あんな風にぴしゃりともう一回叩いて、そうすれば俺は…。モッシャー (両の拳を上にあげて)そうかね、始めろよ。 (チャックとロッキーが二人の間に分けて入った)ロッキー へいっツ、正気なのか。ハリーの誕生祝いなんだぞ。 (二人は気まずそにした)座って行儀よくしろ。モッシャー (ムッとして)分かった、俺をほっとけってあいつに言ってくれ。(ロッキーを背後の右端の椅子に押し込む)マクグロイン (ムッとして)奴に俺をほっとくように言ってくれよ。 (チャックをモッシャーの左の椅子に押し込む。この瞬間にヒッキーがホールから大騒ぎして、興奮のていで飛び込んできた)ヒッキー 準備万端が整ったかね、結構。(腕時計を見る)三十秒前だ、ハリーはジミーとおっぱじめた。二人を動かすのに往生したよ。二人はまだあっちで姿を隠している、互いに冗談を言い合ってね。(クックと笑う)ハリーは自分の誕生パーティーをすっかり忘れてしまったみたいだった。(彼は階段の所で物音を聞いた)彼等が来たぞ、(性急に)ロウソクに火をつけろ。曲を弾け、コーラ。さあ、皆立って。あのワインを準備しろ、チャックとロッキー。 (マギーとパールがケーキの上のローソクに火を灯した。コーラはピアノの鍵盤の上に手をかざして肩ごしに見ている。ロッキーとチャックはバーに入った。テーブルに着いていた皆は機械的に立ち上がった。ヒューが最後に立ち上がってろよめいた。ハリーホープとジミートモローがドアの外のホールに姿を現して、ヒッキーは腕時計を見た)時間通り、十二時だ。(応援団長の様に)さあ皆、ハッピーバースディーをハリーに。 (彼の声で一同が、誕生日おめでとう、ハリー!、と虚ろな合唱で叫んだ。ヒッキーがコーラに合図して、コーラは曲を弾きながらウイスキーソプラノで「彼女は天国の谷の日光」を歌う。ホープとジミーはドアの所に立っている。二人共にへべれけに酔っ払っている。ホープの方はその酒の効果が苛立ち、毛羽立って、イライラしている態度に明瞭なだけだ。それはいつもの彼が楽しんでいる苛立って不平をこぼす、誰も真面目には受け止めないが、のとは明らかに違っている。今は本当に喧嘩腰なのだった。ジミーの方は単純に酔っ払っている。が、望んでいた効果は得られてはいないで、紳士的であろうと焦っているが、明らかに怯えているし彼自身から腰が引けている。ヒッキーはホープの手を掴み、ポンプのハンドルのように動かしている。一瞬、彼はこの握手に気づかず、やがて怒った如くに振りほどいた)ホープ その手をどけてくれよ、ヒッキー。俺を舐めているのかい。君は狡辛い嘘つきの金物屋なんだ。(こみ上げてくる怒りを他の者に向けて)そして、このクズどもめ。いった全体何をしようと言うのだよ、喚いたりオダをあげたりして。サツにこの酒場を閉めさせたいのか、許可証を取り上げさせたいのかい。(彼はコーラに叫んだが、彼女は歌うのをやめて、機械的にピアノを弾き続け多くのミスを犯す)おい、クソ女、ピアノを叩くのを止めないか。もう曲なんか習わなくてもいいよ。コーラ (動きを止めて、深く傷ついている)ああ、ハリー…。(涙が目に溢れて来る)ホープ (他の娘達を睨んで)そして、二人の娘っ子、息が続く限りに叫び声を挙げろ。此処は一ドルの猫屋敷だよ、そこに君等は所属してるんだぞ。パール (惨めに)ああ、ハリー…。(泣き始める)マギー ねえ、ハリー、あんたがそれを言うなんて思ったことはないわ、それを。(パールを抱き抱えて、彼女自身も涙を目に浮かべている)ああ、泣かないでよ、パール。彼は悪気はないのよ。ヒッキー (咎めるように)さあ、ハリー。彼女達を責めるなよ、君自身が取り乱しているのだからな。とにかく、俺は約束した、君は大丈夫さ、やり遂げるよ。だからくよくよするな。(ホープの背中を軽くたたき、励ます。ホープはヒッキーに憎しみの一瞥をくれた)自分を取り戻せよ、長官。彼女達が君の誕生日を祝福してくれているというのに、何もわめきたてる事はないじゃないか。もう、やめときなよ。ホープ (反省するような、恥ずかしげな顔になり、強いて普段通りの声の調子を自然に出そうとして)まあ、彼女達は君のような唖じゃないや。俺が単なる冗談を言ったって知っているよ。彼女達は俺が感謝して祝福の言葉を受け止めていると分かっている。そうだろう、君達。 (順不同で声が起こった、そうよ、勿論だわよ、などなどと。彼は前に進み出て、二人の娘の所に来て、ジミーとヒッキーが後に続き、ぎこちなく軽く叩いた)その、俺は君等が好きだよ、分かってるだろうが、冗談だったよ。(直ぐに二人は彼を許し、愛情を込めて笑顔を見せた)マギー そう、知ってるわよ。パール そうよ。ヒッキー (ニヤニヤして)そうだよ、ハリーはここでの最大の冗談言いだからな。あれは言葉での挨拶だ。二十年間も彼は自分を冗談にしちゃったんだ。(ホープが厳しい、怒りの視線を向けると、肘で相手をいたずらっぽく軽く小突いた)俺は間違っちゃあいないよ、長官、俺はそう誓うよ。我々は間もなく知るだろう、あすの朝、いや、神掛けて、今朝、今だよ。ジミー (寝ぼけたような恐れを見せて)今朝、だって。ヒッキー そうだ、遂に今日なんだよ、ジミー。(彼の背中を叩き)そう怖がるなよ、俺は手助けするって約束しただろう。ジミー (自分の恐怖を酔っ払いの傷ついた威厳の背後に隠して)俺には理解できないのだ、俺は自分の事は自分で十分に始末できることを忘れないでくれよ。ヒッキー (熱心に)まさに、君にはそうしてもらいたいと俺は望んでいた。(ジミーの耳許で確信させるように話す)飲みすぎだけは気を付けなよ、ジミー。今からだよ、分るな。君は既に十分飲みすぎているのだ、動けないほどにへべれけに酔うのはこれっきりにしないとな、今度だけは。 (ジミーはバツの悪そうな、驚いた視線を向けて、それを逸らしてから、モッシャーの右にドスンと腰を下ろした)ホープ (マギーに、まだ済まない様子で)あのなあ、マギー、俺には悪気はなかったよ。あの不潔な金物屋が俺を挑発する傾向があるのだ。マギー 分かってるわ、(ホープを保護する如くに腕を回して、彼をテーブルの上のケーキとプレゼントの方に目をやるようにして)さあさあ、まだケーキに気付いてはいなかったでしょ、特大でしょ。ホープ (強いて嬉しげに)ああ、美くしいなあ、ベシーの時以来初めてだ。六個のロウソクだ、一本が十歳だったな。ああ、嬉しいよ、みんな。パール ヒッキーが買ったんだよ。ホープ (語調を強めて)ああ、彼に感謝しなくっちゃあ。いい奴なんだよ。(彼の目はケーキに釘付けになり怒りで厳しくなる)ケーキなんかクソだよ。(目をそらし始めた) (パールが彼の腕を掴んだ)パール 待って、ヒッキー。あんたはまだマギーや私、コーラ、チャック、ロッキーからのプレゼントを見ていないでしょ。そして名前と日付を彫り込んだ腕時計がヒッキーから贈られているわよ。ホープ そんなものはクソ喰らえだよ。奴が使えばいいよ。(今度は彼が視線を外した)パール あの人ったら私たちのプレゼントを見ようともしないよ。マギー (厳しく)全部が間違っている、私たちはこのパーティーに命を賭けた。でも私は馬鹿よ。ねえ、コーラ、あの箱はどうしたの。ハリーの為に演奏してよ。彼がからかったからって止めることはないのよ。ホープ (身を起こして、心を強めに込めて)そう、さあ、コーラ。君は素敵に演奏しているよ。 (コーラは半ばは呆然としながら、演奏する。ホープは突然に涙を流さんばかりに感傷的になる)それはべシーのお気に入りの曲だったよ。彼女はいつもそれを口ずさんでいたっけ。彼女を思い出すよ、俺は願うのだ…、(息を詰まらせる)
2024年04月03日
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ラリー (ぎょっとして)あぁ、君もそう感じるのか。パリット (哀願するように)でも、僕はこんな風には話を進められませんよ。僕は自分がしなければならない事を決めなければいけない。あなたに話さなければいけないのですよ、ラリー。ラリー (又、ギョッとして)聴かないよ。パリット (再び相手の腕を掴み)分かりました、行かないで下さいよ。 (ラリーは椅子に自分を投げ出すようにして坐る。パリットはラリーの顔をしげしげと見て侮辱するように冷笑する)あなたは誰をからかっていると思うのですか。僕はあなたが推測していることを十分に承知してます。ラリー 俺は何も推測などしていない。パリット でも、僕は今なたに推測してもらいたのですよ。僕は嬉しいのです、ヒッキーが僕の後を追いかけているので、最初からあなたに推測して貰わないといけないのですよ。それで此処に僕は来たのですからね。(もっともらしい率直な態度を装って急いで言うのは、二重の意味で嘘くささを露呈している)僕はあなたに条理を理解してもらいたいのです。さっきも言ったようにに、僕はアメリカの歴史を学び始めた。僕はワシントン、ジェファーソン、ジャクソン、リンカーンを尊敬し始めている。愛国者としてこの国を愛し始めている。アメリカは世界で一番すばらしい国だし、誰もが公平で平等な機会に恵まれている。例の運動の背後にある理念は、バクーニンやクロパトキンに由来し、欧州向けなんですよ。既に十分に自由を享受しているこの国民主主義の国では必要ないのですね。僕は自分の国を外国のパイプドリームで破滅させたくはない。結局のところ僕は古きアメリカ人の開拓者魂を受け継いでいるのです。この国を転覆しようと図っている大勢の破壊者やら自由を標榜する女性達を手助けする事で、僕は反逆者になったと感じ始めたのですよ。そしてそれから自分の国に対する義務だと思った…。ラリー (吐き気を起こさせるような顔で、パリットの方を向き)君のした事に唾をかけたりしないよ。それが何であれ、君の頭に関することなのだ。知りたくもないし、知らずにいるだろうよ。パリット (ラリーが何も喋らなかったように、口ごもりながら)でも、マザーが逮捕されたなんて考えたこともなかった。それを信じてください、ラリー。あなたは僕が決して…。ラリー (顔は憔悴し、深く息を吸い、目を閉じて、彼の脳の中にハンマーでも打ち込むように)俺が知っている事の全ては人生に飽き飽きしてるってことなんだよ。終わっちまったんだ、自分も完全に忘れてしまったよ。俺は溺れていて、瓶の底で満足している。名誉や不名誉、信と不信、などは俺には無意味だし、人生を支配し王座に君臨している同じ虚仮の裏と表にしか過ぎない。そしてとどのつまり、墓場の塵に化してしまう。全ての事が、俺には無意味な冗談なんだ。何故ってそれ等は死者の髑髏から俺を嘲笑っているんだ。だから行ってしまえよ、お前は無駄に息をしているだけだ、お前の母親のことはもう忘れてしまったよ。パリット (怒りでせせら笑う)この老いぼれバカ哲学者。(軽蔑したように唾をはく)この不潔な老いぼれ嘘つきめ。ラリー (ひどく心を取り乱して、弱々しく哀願する)神様、後生です、俺に残された僅かな時間を平和に過ごさせてくれ。パリット あぁ、そんなお為ごかしは僕には何も効き目を発揮しないよ。この老いぼれ野郎が。あなたは無料のウイスキーが飲める間は決して死なないでしょうよ。ラリー (苦悩して、憤激する)注意しろよ、君はまた俺を人生に引き戻すつもりなのか、警告する…。あそこで正義と呼んでいる物を覚えていて、懲罰を…、(自制して、憔悴からくる真の無関心で)俺は年老いて疲れた。この糞ったれ、お前はヒッキーと同じくらい気違いだし大嘘つきだよ。お前が言うことなどは一語だって信じやしないよ。パリット (脅すように)地獄は嫌いでしょうよ、ヒッキーがあなたと同様に終わってしまうまで待てば。 (パールとマギーがバーから入って来る。二人の姿を見ると、パリットは直ぐに興奮を収め、自分を取り戻して防御的になり、顔をしかめて急に視線をそらした)マギー (からかうようにパリットを見て)ねえ、その、けちんぼ少年。パーティーに加わりなさいよ。ねえ、この子、恥ずかしがり屋じゃない、パール。パール そうね、特にお金に関してはね。(パリットはこそこそと左のテーブルの端に歩いていき、ふたりの会話を聞かなかったふりをする。突然、ホールで怒りと罵りの声と乱闘が起こった。パールが喚いた)ねえ、ロッキー、ホールで喧嘩だよ。 (ロッキーとチャックがバーカーテンの後ろから走り出てホールに駆け込んだ。ロッキーの苛立った驚愕の声が聞こえる。「どうしたんだよ」、それから、乱闘は収まった。ロッキーがルイス大尉の腕を掴んで現れ、チャックが将軍ウエットジョーエンを同様の形で確保して続いた。このふたりはずっと酒をのみ続けていたが両者共に酩酊はしていない。二人の顔はムッとしたように怒り、彼等の着衣は格闘で乱れている)ロッキー (ルイスを前につれだして、びっくりし、面白がり、苛立って)叩けるかい。君達二人がお互いの名前を呼び合って、前に君等を見ていない…、(憤然として)良い具合にハリーの誕生パーティーに間に合うぞ。何であんな喧嘩を始めたんだ・ルイス (強いて普段の平静を示して)何でもないよ、ご老人。我々の問題だよ、あの血だらけのロバのヒッキーは俺の入会をしてくれて、あのブーアのボーア人がヒッキーと一緒に俺に無礼を働いたんだ。ウエットジョーエン そりゃ嘘だ。ヒッキーは俺をコケにしたし、このライミーがそうだといった、それが本当のところだ。ロッキー さあ、座れよ、二人共。喧嘩は吹っ切ってしまえ。 (彼とチャックは二人を左端の椅子に強引に座らせたが、ふたりはいたずら少年よろしく背中合わせになって、可能な限り離れて前を向いている)マギー (笑う)ねえ、二人を見てよ、敵対する少年みたいだ。キスして仲直りをしな、お願いだよ。ロッキー そうだ、ハリーの祝宴は直ぐに始まる、素面でいてもらっては迷惑なんだよ。ルイス (ぎこちなく)大変よろしい、この際に無関係に、無礼を謝ろう、ウエットジョーエン将軍。君もそうしてくれたまえ。ウエットジョーエン (ムッツリとして)謝るよ、ルイス大尉、ハリーは俺の親友だからな。ロッキー ええ、畜生。もし君らがもっと暴れたりしたら…、 (モッシャーとマクグロインがホールから一緒に入って来る。二人は酒を飲み続けていたが、酒に飲まれている状態ではない。パール ここに仰ぎ見るような立派な下宿人がいらっしゃるよ。 (彼等は前に進み出て、周囲のみんなと話を始めた)マクグロイン 話したいことがあるんだが、エド、今は真面目な時間だ。あのいかさま師のヒッキーがハリーを手玉にとったよ。 (彼が話している間に、マギー、パール、ロッキー、チャックが聞き耳を立てて集まっている。コーラがピアノの所で曲を調べ続け、静かにペダルを踏み息をひそめて歌を歌っている。ジョーはまだ彼女の誤りを正している。テーブルでは、ラリー、パリット、ウイリー、ウエットジョーエン、そしてルイスがじっと動かずに、前を見詰めている。ヒューゴは彼の習慣的な位置で眠っている模様) そして彼が明日ハリーを歩かせても我々に利益なんかないさ。モッシャー その通りだよ、ハリーは地域をぶらり歩きをして知り合いの家に立ち寄るのだ。(憤然として)人々はヒッキーに手厚い歓迎を示し、ヒッキーがどんなに騙されやすい人間かを上手に忠告してくれる。マクグロイン 彼はきっとベシーの親戚を訪ねて、親愛なるべシーの為に泣くだろうさ。あの女とその家族が俺をどう思うかについては分かるだろう。モッシャー (いつもの愉快な閃きを見せて、非難するように)忘れるなよ、大尉、君は今俺の妹の話をしているのだ。親愛なるベシーはメス犬なんかじゃないよ。彼女は性格のいい女だ。だが、もし俺の親戚が君と話し合いをするなら彼等は君を理解しない。彼等は非常に忙しいのでハリーに俺がどんな呑んだくれかを話し、俺を唱歌会に入れるように言うだろうさ。マクグロイン (落胆したように)そうだ、かつてベシーの親戚は彼とかかわり合いを持っていたが、それは彼女が死んでいないかのように我々には辛いことなんだよ。マッシャー (がっかりとして)そう、ハリーはずっと弱々しくて、直ぐに影響を受けるんだ。そして今老化と共に詐欺師仲間の目立つ存在になるだろうよ。(それから再確認するするように)ああ、ちくしょうめ、マック、心配だよ、ハリーはこの二十年間、誕生祝いの後の日に散歩して虚勢を張っていると聞いているが。マクグロイン (疑うように)だが、ヒッキーは最近は彼に嫌気を催していないよ。その反対だ。彼はハリーに訊いている、外出するのは何が目的なのかと、此処にはたっぷりとウイスキーがあると言うのに。
2024年04月01日
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