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今週の始めだったでしょうか、 シェイクスピア
の 「ヘンリー5世」
を観て、ちょっとコケタ感があって、腰が重くなっていましたが、今日が、おそらく、上映最終日ということでやってきました。現代劇です。
予備知識はゼロです。 ジャスティン・マーティン
という 演出家
も スージー・ミラー
という 劇作家
も知りません。
題名は 「 Prima Facie」
、主演は ジョディ・カマー
という女優さんです。この人の名前にだけ、なんとなくな記憶がありました。 リドリー・スコット
の 「最期の決闘裁判」
という映画で、役名は忘れましたが、 マット・デイモンの妻
を演じて、 アダム・ドライバー
に凌辱される女性を演じた人です。
で、今回のお芝居は 2022年
にロンドンの ハロルド・ピンター劇場
で上演された演目だそうです。
「Prima Facie」
という題名は、法律用語らしいですね。 「証拠」
というのは反証されなければ正しい、あるいは事実として扱われるという意味だそうですが、ようするに、 「やっていない」
とか 「やった」
とかいうことについて加害者が出してきた証拠は、被害者が加害者に対して反証しなければ、加害者の主張が通るということらしいです。
「あれはレイプでがない、あなたはこうこうこういう合意のサインを出していた」
と加害者が状況証拠を主張した場合、反証できなければ 「被害」
は消えてしまうというわけです。
で、このお芝居の論旨というかテーマは 「レイプ被害者は合意を反証できるのか?」
だと思いました。現代という時代の悪しき男性性というか、ご都合主義の身体言語解釈というか、インチキな真実を巡るスリリングな法廷ドラマでした。
二人だけの、密室ともいうべき人間関係の場の出来事の 「反証不可能性」
をことば巧みに暴くことで、 プライマ・フェイシィ
という法理論を巧みに操り、 やり手の弁護士として名を成していく女性弁護士が、彼女自身が 「被害者になる」
という反転というか、劇中で起こる立場の変化をどう演じるかというのが、見どころでしたが、見事でしたね。
2時間の間、労働者階級からケンブリッジを出て階段を駆け上ってきた「エリート弁護士」、自分をエリートにしていった法という根拠によって「人間」であることを否定される「女性被害者」、誰もが疑わない法理論の非人間性に対して告発の戦いを挑む「孤独な人間」、ただ、ただ、語り続け、もちろん同一人物ですが、この三人の女性を演じ続ける ジョディ・カマー
に圧倒されました。
全くの一人舞台です。複数の登場人物を感じさせる演技が不自然でないことにはじまって、法廷、事務所、私室、トイレ、取調室、机と椅子の移動による、実に巧みな場面転換から、脱いだり着たりの衣装交換、素っ裸でレイプされているその場面まで、あたかもそこに男がいるかのように、全部、一人で演じ続ける演出の巧みさと演技の華麗さに、イヤ、ホント、感心しました。2時間ぶっ通しですよ。まあ、素っ裸にはなりませんが(笑)
実は、そっちの方は、あんまり関心がなかったことなのですが、ネット上で 香川某
という俳優のスキャンダルが燃え上っていますが、あの話題そのもののようなドラマで、 話題性
においても ど真ん中のストライク!
でした。
まあ、好みの問題はあると思いますが、動きの少ない一人芝居ではなくて、演技し続け、語り続ける、実にアグレッシブな舞台でした。
久しぶりに見ごたえのある舞台でした。まあ、やっぱり ジョディ・カマー
に尽きるのでしょうね。 拍手!拍手!
でした。
演出
ジャスティン・マーティン
原作
スージー・ミラー
音楽
レベッカ・ルーシー・テイラー
キャスト
ジョディ・カマー(テッサ)
2022年・122分・G・イギリス
原題National Theatre Live「 Prima Facie」
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