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是枝裕和「ベイビー・ブローカー」パルシネマ
先週から、 新開地
の パルシネマ
が 「ベイビー・ブローカー」
と 「三姉妹」
という、 韓国映画
の2本立てのプログラムです。2本とも封切の時から気になっていた映画でしたが、見ないまま終わってしまったのが、半年もしないうちに パル
に出てきたというのに、またもや、今日が最終日です。大慌てでやってきました。
まず1本目は、 是枝裕和監督
の 「ベイビー・ブローカー」
です。題名から想像すれば 「人身売買」
ものなわけで、例えば、わが家の同居人が、 「見に行かん?」
と誘っても、 「赤ちゃんを売り買いするような、そんな題の映画は見ません!」
と、けんもほろろだったように、ちょっと先入観を持ってしまいがちですが、どうなのでしょう。
マア、そういう心配も感じながらでしたが、実際に見終えてみると、ただの 是枝映画
というか、彼らしいヒューマン・ドラマでした。 「海街ダイアリィー」
の 広瀬すずちゃん
を見て以来、ぼくはこの監督が贔屓です。 「家族」
とか 「社会」
とかいうコンセプトが前面に出てきて論じられることが多いのですが、ぼくが気に入っているのは、今、ここにある 「命」
というか、人が 「生きていること」
というかを、いかに肯定できるのか、あるいは、人間にとって、その始まりである 「この世に生を受ける」
ということが、受動的だということが言われますが、その受動性をどうすれば能動性に転換することができるのかということを、この監督がかなり愚直に追っていると感じるところなのですが、この映画も、真っすぐその路線を突っ走っているという印象を受けました。
映画は、夜道を歩いてきた女が赤ん坊を捨てるというシーンから始まります。次いで、その赤ん坊を 「売る」
二人組が登場します。その二人組を見張っていて、一部始終を見ている二人組の女刑事がいることがわかります。赤ん坊を捨てた女が、買い手を探している二人組に加わります。なぜか、孤児院を逃げ出してきた少年が、その三人に加わって、赤ん坊を入れた五人組と、それを追う二人組という、七人の人間が、 「赤ん坊」
の、 「より良い買い手」
、つまりは、赤ん坊の生を肯定できる人間を探して旅する、ドタバタ、 ロード・ムービー
というわけでした。
はっきり言って、映画を作るためのご都合主義が見え見えの筋書きなのですが、その、まあ、 ベタ
な展開の中で、最も ベタ
なシーンが、この映画の肝だったと思います。
それは、映画の終盤、五人組が泊まっているホテルの部屋での出来事です。 赤ん坊を捨てた女
に 孤児院から逃げ出してきた少年
が、 「生まれてきてくれてありがとう」
といってほしいとねだります。で、 女
が、灯りを消した部屋の中で、そこにいる一人一人の名を呼び、その言葉を投げかけ、最後に 少年
が 女
にその言葉を返します。
このシーンを、あたかも、新しい形の 「家族」
の始まりのように受け取る見方もあると思いますが、そうでしょうか。
そこにいる 五人
は、 妻と娘に捨てられた洗濯屋のサンヒョン(ソン・ガンホ)
、生まれたばかりで捨てられて親の顔を知らない ドンス(カン・ドンウォン)
と少年 ヘジン(イム・スンス)
、生まれてきた赤ん坊の父親(?)を殺し、赤ん坊を捨て、母であることも捨てた ソヨン(イ・ジウン)
、そして、捨てられた赤ん坊の ウソン(パク・ジヨン)
です。 五人
が、 五人
とも、 是枝監督
の前前作(?) 「万引き家族」
の人々と同じで、寄る辺ない岸辺に打ち上げられた孤独の塊のような人たちではないでしょうか。
思うに、 是枝監督
にとって 「生を肯定する」
とは、 「個」
であり、だから、当然、 「弧」
である、 「家族」
から捨てられ、 「家族」
を捨てた人々相互の間でこそ成立するということなのではないでしょうか。
それは、 人間として
、互いの 「生を肯定する」
という理想を追っているのであって、 家族の理想
を描いているのではないのではないでしょうか。ぼくは、映画としての構成のかなりな部分を犠牲にしながら、この、ベタなシーンを撮った 是枝監督
に、こころから 拍手!
します。そこにこそ原点があると思うからです。
蛇足のようになりますが、 ソン・ガンホ
の飄々とした名演技とか、イケメンの カン・ドンウォン
、子役の イム・スンス
、元気そうな赤ん坊の パク・ジヨン
にも 拍手!
なのですが、記憶に残ったのは ソヨン
役の イ・ジウンさん
ですね。韓国の人気歌手だそうですが、きっといい女優さんになると思います。 拍手!(笑)
監督 是枝裕和
脚本 是枝裕和
撮影 ホン・ギョンピョ
美術 イ・モグォン
衣装 チェ・セヨン
編集 是枝裕和
音楽 チョン・ジェイル
キャスト
ソン・ガンホ(ハ・サンヒョン クリーニング屋・ブローカー)
カン・ドンウォン(ユン・ドンス サンヒョンの相棒・ブローカー)
イ・ジウン(ムン・ソヨン ウソンの母)
イム・スンス(ヘジン 同行する少年)
パク・ジヨン(ウソン 赤ん坊)
ペ・ドゥナ(アン・スジン 刑事)
イ・ジュヨン(イ刑事)イ・ジュヨン
2022年製作・130分・G・韓国
原題「Broker」
2022・11・25-no130・パルシネマno49
追記2023・03・02
この映画で張り込み捜査をしていた スジン刑事
役の ペ・ドゥナさん
の二十頃の姿を見かけました。 「子猫をお願い」
という20年前の映画の中でとてもいい感じの女子高生でした。
「ああ、この娘、結局、K察官になったんだ!」
と、まあ、訳のわからない感慨にふけりましたが、時がたつのは早いですね(笑)
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