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「近代文学って…?」とおっしゃる20代の方がいらっしゃいます。 高校の国語の教科書 から 夏目漱石 とか 森鴎外 とかいう有名どころさえ姿を消しつつある昨今ですから、仕方がない疑問なのですが、長年 「羅生門」 で始まり、 「こころ」 と 「舞姫」 で三年間を終えるという 高校の国語科の教員稼業 で暮らしてきたゴジラ老人には、ちょっとさみしいわけで、思い出したのがこの本です。
吉本隆明って?まあ、そういう、シンプルな人達に
こういう人です。と紹介するにはちょうどいいかなと、ちょっと長いですが 「はじめに」 を引用します。
はじめに(P1~3) ボクは現在 71歳 です。この発言をしている 吉本隆明 は 76歳 くらいですね。 20代の頃 のボクにとって、はるか彼方に立っている存在として 吉本隆明 は登場しましたが、 2012年 に亡くなって13年、この本を書いている 吉本隆明 の 「老い」 を実感する場所まで、ボク自身がやってきていることに、何とも言えない切なさを感じますが、一人一人の作家や、作品について語る 批評の言葉 に籠っているのは、ボクが読んできた 吉本隆明らしい角度のついたぶあつさ です。やっぱり、読み応えありましたよ(笑)。
この本の成り立ちについて、大切なことを記しておきたいとおもう。日本の近代文学の名作について、わたしが語り、毎日新聞学芸部の大井さん、重里さんが、話の要約を構成するという形で、この本の内容は構成された。わたしの眼の視力がおぼつかないというのがこの形式をとった理由だ。俄かに視力が激減して、原稿用紙のマスメを埋める自信がなかったのでこの方式をとって頂いた。両氏にはたくさんの協力と労力をおかけしたので、この本は両氏とわたしの共著といった方がふさわしいとおもう。も一度わたしの方で、最小限の補筆をさせてもらった。わたし自身が書いた項目が二つくらい混っているが、できるかぎり両氏の構成文をこわさないようにというのは、わたしの両氏にたいする心構えだった。それ以外には両氏の協力と労力にたいする感謝をあらわす方法がなかったからだ。
俄かの視力減退はひどいもので、じぶん字句を訂正したのに、その字を問われるとじぶんでわからないで困ってしまう、という状態から出発して、両氏の手数をどれだけわずらわせたか測りしれない。そしてわたしも(たぶん両氏の方も)次第に要領をおぼえて、少しずつさぎょうがらくになっていった。
中略
名作の個々の作品と作者は両氏の選択されたもので、わたしのわがままで落としていただいた項目は一つある。また、わたしが面識があったり、親疎の感じがまだ生々しくて、とうてい公正を期することができないため、無用の気遣いをせざるをえない第一次戦後派以後の作家と作品については、両氏の許しを得て項目を変更させて頂き、太宰治のところから逆位折り返すことになった。ひと度死んだのち蘇った作家や作品でないと名作とか古典とか呼ぶことは、大へん難しい。また強いてそう決め込んでも著者(たち)の主題に左右されることになるのは確実だとおもう。それを避けたかった。そんな意味でも、この本に挙げた項目の作品と作者は、どんな立場の読者でも、近代日本の名作と呼んで肯定してもらえるとおもっている。
わたしごとを言わしてもらえれば、これほど啓蒙量が多い文章を数枚で書き、しかも自分らしさを失わないという課題に挑んでみたのは初めてで随分勉強になった。成功したとは言えないとしても、この程度に出来たのは両氏の協力と労力の賜(たまもの)だとおもう。
後略
二〇〇一年三月 吉本隆明
目次
夏目漱石『こころ』高村光太郎『道程』森鴎外『高瀬舟』芥川龍之介『玄鶴山房』宮沢賢治『銀河鉄道の夜』江戸川乱歩『陰獣』横光利一『機械』川端康成『雪国』保田與重郎『日本の橋』吉川英治『宮本武蔵』中野重治『歌の別れ』谷崎潤一郎『細雪』小林秀雄『無常ということ』坂口安吾『白痴』太宰治『斜陽』柳田國男『海上の道』折口信夫『日琉語族論』中原中也『在りし日の歌』萩原朔太郎『月に吠える』岡本かの子『花は勁し』志賀直哉『暗夜行路』田山花袋『田舎教師』島崎藤村『春』二葉亭四迷『平凡』
構成者後記
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