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住宅の再生 新橋の駅から烏森方向へ5分ほど歩き、怪しげな路地を入ると「環境建築研究所」はある。研究所へ帰ったぼくは、新幹線のなかで作っておいた前橋の田村邸改修見積書を所長の杉山に提出し、田代邸の調査報告書と改善計画に取り掛かった。田代邸の問題はとても深刻だけれど、内容は単純な物件だった。まずは問題点を書き出してみる。■ 家具からホルムアルデヒドが気化している。(中国製か?)■ 床下が防蟻処理されている。(防蟻剤が何か分析中)■ 住宅内に閉鎖循環流が存在する。■ 家族3人とも化学物質化敏捷の可能性が高い。 あらためて書き出してみた僕は、少しホッとした。田代家の住宅再生はそれほど難しくないと思ったからだ。クライアントが賠償責任に固執していたのも改善策に多額の予算がかかってしまう事を懸念してのことだろう。自分で作り出してしまった危機とはいえ、住宅ユーザーは被害者意識を持ってしまうものなのだ。 程なく報告書をまとめ、改善案もできた。(何とかなるな、これならあまりお金をかけずに改修できそうだ。)僕は田代直美と琴美ちゃんの笑顔を思い出していた。まとめ<<家具の選定時には何らかの化学物質が使用されていないかを確認する。>>出来ればMSDS(安全データシート)の用意がある家具を購入するべき。<<防蟻処理はするべきではない。>>防蟻処理剤を塗布した構造材に虫害が発生しなかったとしても、それ以外の部位が被害にあう事例は無数にある。人体に無害とされる薬剤もあるが、MCS(化学物質過敏症)の患者は天然の木材からの気化物質でさえアレルギー症状が出る。安全とされる薬剤が安全でなかった事例がどれ程あったか。そもそも、シロアリは危険なのか?シロアリが居ることで人が病気になることはない。人が病気になるような環境にシロアリが多いことはある。正しい防蟻は、環境を整える事にある。防蟻剤や除草剤やその他の殺虫剤散布などによってシロアリが死に絶えることは無い。彼らは最も安全な基礎コンクリートの下に居るのだ。むしろ、それらの薬剤によってシロアリの天敵たちが駆逐され、生き残るのはシロアリだけという事態がもっとも恐ろしい状態であろう。シロアリの天敵、アリ、トカゲ、ヤモリ、ムカデ、ダンゴムシたちは、人間が撒く薬剤で死に絶え、生態系のバランスが崩れていく。生き残るのはシロアリだけなのだ。5年保障という甘い罠に騙されてはいけない。<<閉鎖循環流の無い住宅を構成する。>>循環という言葉は美しい。生命の再生を暗示しているからだ。循環は、地球規模で営まれる生命活動そのものなのだ。巨大な循環の輪の中にいる単一の生命が廃棄する環境負荷(たとえば糞やCO2)は、決して環境負荷ではなく循環の輪の、次の段階で待ち構える生命の栄養に他ならない。生命が生む迷惑は恩恵として受け取られる。まさに輪廻転生なのだ。しかし、住宅の中に循環を作ってはいけない。住宅は小さすぎて浄化が行われない。浄化が無ければ汚染が蓄積し続ける。空気が循環すればアレルギー物質も循環する。そしそそれらは、床下や天井裏に蓄積し続けるのだ。循環させてはいけない。空気は一方通行で流れ出ていかなければならない。づづく次回は解決策
2009.07.31
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「シードさん」 と、田代克也が話し始めた。「大体の事はわかりました。そこでお願いなのですが、これから賠償請求を出すに当たって、こちらが少しでも有利になるような調査報告書を作っていただきたいのです。」「あなた!」亭主の言葉をさえぎるように田代直美が言ったが、「お前は黙ってろ!」の一言で口をつぐんでしまった。(この男、僕の話を聞いていたのだろうか、大体の事は解ったと言いながら、いったい何が解ったのだろう。問題なのは家族の健康なのに・・)僕は自分の心境が顔に出ないように注意しながら、「もしも裁判という事になれば、僕の報告書は法的証拠物件として採用されるかもしれません。ですから、真実のみを記述しなければならず、そうしなければ田代さんのご家族が今後、健康にあの家に暮らしていくための解決策を示すことも出来なくなるでしょう。もちろん、真実と違う事を書けば、偽装として僕も田代さんも法的責任を問われることになります。今、大切なのは、誰かを訴えることではなく、あの家に田代さんご家族が健康に住めるような対策を立てることではないでしょうか。前向きに生きていくための助言であれば、全力で協力させていただきます。」「ありがとうございます。よろしくおねがいいたします。」田代直美がそう答え、間髪入れずに「おまえはだまってい」と言いかけた亭主を「あなたは黙っていて!」田代直美は毅然とした態度で制した。その顔には家族の健康を守る使命が自分にあるのだという強い意思が現れていた。金銭的な損得よりも、これからずっと家族が健康に楽しく暮らしていける事がどんなに大切なことか、彼女は理解していた。「シードさん。私たちはあの家に住めるようになるのですか?」彼女のほうが百万倍前向きだった。いざとなったときの決断力は男性より女性のほうが早いのかもしれない。いや、田代直美が特別なのか・・・「大丈夫です。何とかなるでしょう。せっかく作り上げたかわいらしい家があのまま住めなくなってしまったら田代さんご家族だけでなく、あの家もあの家を作った建築家も悲しむでしょう。改善案を含めた調査報告書をまとめますから、しばらく時間を下さい。」「ちょっと待ってくれよ、調査を依頼したのはオレなんだ。勝手な事を言ってるんじゃない!」田代克也は自制心を失いかけていた。こうなったら退散するしかない。夫婦で意見が違っていては、こちらの出る幕は無い。しばらく放置すれば意見を統一する事が出来るだろう。少し落ち着いて、普通の判断力を取り戻せば、正しい決定をする筈だ。なにしろ田代直美がいるのだ、大丈夫だろう。「調査報告書は後日、郵送させていただきます。美味しいカレー、ありがとうございました。」と言い捨て、僕は若い家族の住むアパートを脱出した。外は、驚くほど明るい月夜で、気持ちの良い海風が吹いていた。何処かで虫が鳴いている。(良いところだなー吉良は、こんなところに住みたいなー)とつぶやき、田村京子の顔を思い出しながら、海沿いの道を幽霊屋敷のような宿に向かってゆっくりと歩いたのだった。つづく
2009.07.30
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今日は家に帰る日です ちょっと時間に余裕があったので 網走駅から 女満別空港まで 歩いてみました 40000歩でした ウ~ン満足
2009.07.29
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室内空気には大量のアレルギー物質が含まれ浮遊している。どんな家でも。アレルギー物質の中には空気よりも軽い物質も稀にある。しかしこれらは微量であり、上昇することで自然換気によって排気されやすい。ほとんどのアレルギー物質は空気より重い。最も軽いものの一つにアスベストがあるが、アスベストでさえ、5時間で1メートルほど落下する。攪拌されなければ殆どのアレルギー物質は床上30センチメートル付近までに沈殿する。住宅は、24時間中かなり長い間、無人の無攪拌状態が続く。朝になれば居住者は出勤、登校してしまう。もしも専業主婦が一人残ったとしても主婦のいる部屋意外は無人である。夏であれば窓開けによって全換気状態が続き空気環境に問題は無い。しかし、冬は窓が閉じられ、自然換気は極端に減ってしまう。あるいは、就寝時、人体の体温による上昇気流で対流が起きるものの寝室のみのことだから、他の部屋ではやはり攪拌が起きない。というように、住宅内では、沈殿が起きる時間は十分にあるのだ。床上30センチメートル付近にアレルギー物質が沈殿していることは人間の目には見えないから、安心してそこに布団を敷き、就寝する。朝になってクシャミをして鼻をかむのは当然の成り行きなのだ。最も恐ろしい状況にさらされているのは幼児である。まさにアレルギー物質が最も濃い中をハイハイで運動する。自殺行為としか思えない。しかもこの事を、誰も知らない。人間は一日に、飲料水を含めて約2kgの食料を口にする。この中に多少の有害物質が含まれていても胃酸の強力な分解作用で事なきを得ている。食品に比べて、空気は、大人で一日になんと10kg以上を摂取する。しかも、空気は直接、肺胞に入りヘモグロビンと酸素と炭酸ガスの交換を行う。呼吸器官に胃酸のような防御機能はない。何が含まれていても吸収してしまい。体中を血液とともに駆け巡る。VOCに対して、人体はあまりにも無防備なのだ。子供は呼吸量が大人より少ないが、呼吸回数は、ずっと多い。体が小さい分、影響を受けやすいのだ。田代家では琴美ちゃんが最も重症の化学物質化敏捷である可能性が高い。次に母親の田代直美。この二人は室内にいる時間が長いのだ。父親の田代克也は、日中は出勤し夜遅くまで家には帰らないから、自宅の空気を数量も少ない。さらに喫煙者であるためにアレルギー物質に対して鈍感。そのために、事の重要性が理解できていないから、問題を賠償責任でしか考えられない。事は、人間の健康問題なのだ。しかも、自らの判断ミスで、自宅を居住不可能にしてしまっている。20年のローンを残したまま。若い父親は、この大問題を、いまだ自分のこととして実感できていなかった。自分は誰かに守られていて当然の存在であり、何か問題があれば何処かに自分以外の犯人がいて、責任を取ってもらうのが当然。とでも思っているかのようだった。MCS/化学物質過敏症について 非アレルギー性の過敏状態としてのMCS/化学物質過敏症 化学物質が生体に及ぼす影響には、これまで、中毒とアレルギー(免疫毒性)の2つの機序があると考えられてきた。これに対し、近年、微量化学物質暴露により、従来の毒性学の概念では説明不可能な機序によって生じる健康障害の病態が存在する可能性が指摘されてきた。当該病態については、様々な概念及び名称が提唱されているものの、国際的にはCullenが提唱した「MCS(Multiple Chemical Sensitivity:多種化学物質過敏状態)」の名称が、また、わが国では石川らが提唱した「化学物質過敏症」の名称が一般に使用されている。(厚生労働省報道発表資料・室内空気質健康影響研究会報告書の概要より転載)
2009.07.29
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今日はここで自分のお勉強です。つかれました昨夜から北海道ですがパソコンの充電器のコードを自宅に忘れてしまい有り合わせで、何とかしましたなせばなる充電器はもってきたのでコンビニでプラグコンセントとペーパークリップを買い接続コード完成です危険ですから良い子はまねしちゃダメよ
2009.07.28
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家のなかには、何種類かの安定した温度の分布が在り、それぞれが独自の環境を作り出している。それぞれの環境は曖昧な障壁で隔てられていて、非常にゆっくりとしたくうきの循環を作り出している。それが「閉鎖循環流」なのだ。たとえば、冬季。外気温は変化するが、愛知ではだいたい0℃~15℃。床下気温は、気密の、断熱された基礎の場合13℃~15℃で安定。室内気温は暖房時22℃程度で安定。上に行くほど高温になっているので循環が起こりにくい成層圏を作り出している。ところが、間歇的に温度が大きく変化する場所が存在する。たとえば、ユニットバス。バスタブに湯が張られると、それは200リットルにも登る40℃以上の蓄熱体だ。この熱のせいでユニットバスの周りの空気は上昇気流となり移動を開始する。上昇していく空気は、もともとは床下にあった13℃~15℃の、居室の空気より7~9℃も低温で安定した空気だ。この上昇流は1階の天井裏まで到達して、暖房された暖かい空気と交じり合う。この現象で失われる暖房熱は膨大なもので大きな暖房負荷となり家計を圧迫する。天井裏の空気は間仕切壁のなかを通って床下に戻ってくる。ここに、「閉鎖循環流」が生まれる。戻ってくる空気は暖房の影響で床下気温より暖かい。その温度差分をまた地熱に奪われるのだ。しかし、問題なのは暖房負荷ではない。「閉鎖循環流」は、循環する空気とともにアレルギー物質も循環させる。しかも、循環経路中の水平部分(天井裏や床下)に大量のアレルギー物質の蓄積を生む。ここに蓄積されるアレルギー物質はVOCではない。環境生物によるものだ。それは、ダニの糞やダニの死骸、花粉、カビの胞子などだ。「閉鎖循環流」のある家は、何年もかけてシックハウスへと変貌を遂げる。家のなかには、この「閉鎖循環流」がいたるところに存在する。外壁のなかには断熱材が充填されているから循環は起こさない。しかし、部屋と部屋を仕切る間仕切壁に断熱材を充填する建築家はいない。家中の間仕切壁は空洞であり、しかも天井空間と連続体なのだ。そして、間仕切壁にはコンセントやスイッチ類が取り付けられ隙間を作り出している。アレルギー物質やVOCは、この隙間から出たり入ったりしているのだ。主婦がどんなに懸命に掃除をしてもアレルギー物質は、掃除の出来ない閉鎖循環ゾーンに蓄積しつづける。田代家は、まさに「閉鎖循環流」によって、防蟻剤が室内に循環し、家具から気化したホルムアルデヒドも循環し続けていたのだ。しかもこの原因物質を家に持ち込んだのが居住者自身であり、不満の持って行き所も無い。まさに自殺住宅だった。(注、 外壁は断熱材が充填されているから「閉鎖循環流」は存在しないというのは、内断熱で、しかも壁の厚さいっぱいに断熱材が充填されている場合のみである。壁よりも薄い断熱材が詰められている場合や、外張り断熱で壁内が空洞では、残念ながら間仕切壁以上に「閉鎖循環流」が発生する事が考えられる。なぜならすぐそこに外気があるのだから。いずれにしても、天井裏の空気と壁内の空気は連続体ではないほうが良い。)
2009.07.28
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人は 生きながら 成長するね ある人は 経験を積み重ね 遊び心を積み重ね まるで ガウディーの作品のように 複雑な美しさを身に纏う ある人は 経験を積み重ね 必要なものと 不必要なものとを 見極め シンプルな姿を得る 前者は 共存を願いながら 自己を表現し 後者は 自己の成長のために 捨てるべきを 捨て 孤独を求める しかし 孤独は 前者を苛み 後者には 訪れず 求めるのが 成長か 捨てさるのが 成長か 与えることの出来るべきを 成長とするなら 選ぶべきは 然 さて 北見へ行ってまいります と 家を出て来ましたが 携帯の充電器を 忘れ パソコンの充電器も 忘れ 今日から三日間 どうやって仕事しようかしらん
2009.07.27
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「それじゃ、家具屋と防蟻業者を訴えてやる」田代克也はどうしても誰かを訴えないと気がすまないらしい。僕は誰にも瑕疵がないことを説明し、残念ながら自力で改善しなければならない事を伝えなければならなかった。 建築基準法は建材のホルムアルデヒド気化濃度を0.08ppm以下と定めている。しかし、家具店で販売する家具は建築物ではない。建築物でなければ建築基準法は適用されない。どんなにVOC(揮発性有機化合物)が溶出しようと基準そのものが無いのだ。仮に、近い将来、家具にも建築基準法が適用されるようになったとしても、建築基準法で規制した化学物質はホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質だけであり、他の化学物質は規制されていないから、田代家のような事例はまだまだ増える可能性が高い。 田代克也は建築家には相談せず、家具を選択購入してしまった。田代家を建築した業者は建物の引渡し前に、気密測定とVOCの室内濃度測定を客観的第三者の測定士に依頼し、安全を確認した上で引き渡している。これだけの事を自主的にしている建築業者はとても少ない。居住者の健康に留意した非常に良心的な業者だったといえる。建築業者が提出したVOC測定報告書の内容は、疑う余地の無いものだった。これほど良心的な建築業者が傍にいながら家具の購入を相談しなかったのは残念なことだった。防蟻処理にしても、防蟻剤の有害性を認識していた建築業者の考えを知っていながら、防蟻業者の口車に乗ってしまい、無用で有害な処置をしてしまったのは、田代克也本人だったのだ。 「もう一つ質問があります。」僕は今回の調査で一番気になっている事を聴く事にした。「僕が調査に入ったときに、あの家のスイッチがOFFになっていました。あれは、いつ頃OFFになったのでしょうか?」「24時間換気装置ですか? あの家にそんなものが付いているのですか?」田代克也は、そんなもの見たことも無いとでも言いたげにこたえたが、黙って聞いていた田代直美が始めて口をはさんだ。「24時間換気装置のスイッチを切ったのは私です。あの家の引渡し時に建築会社の方から、このスイッチは切らないでくださいと言われていたのだけれど、留守の時や、寝ている時も換気し続けるなんてもったいないと思って、入居してすぐに切ってしまいました。だって、換気し続けたら、冬は寒くなってしまうし、梅雨時は湿気が入るし、夏は暑くなってしまいますもの。それに、24時間換気装置なんてあまり効果が無いみたいなんですもの。」僕は共犯の夫婦を前に、自分のひたいに脂汗が出てくる感じがした。しかし、あえて彼らには罪は無いと思う事にした。彼らは建築に関しては素人なのだ。ましてやVOCの有害性や換気装置の有用性など知る好も無い。建築会社の人間も、引渡し時にきちんと説明をしているはずだけれど、あまりにもたくさんの取り扱い説明を、一度に伝えられても建築の素人であるユーザーが覚えきれる筈も無いのだ。「床下に塗った防蟻剤が有害なものだったとしても、健康被害が起きるほど床上の部屋まで流れ出してくるものなんですか?」田代克也は、そんなの信じられないといった顔つきで話し始めた。「この家は気密が高いから床下の空気が床上には流れないでしょう。それに、防蟻処理をしないわけにはいかないし、家具だってなくてはならない。知ったかぶりの建築屋になんか、相談する気にもならないし・・・」自分のした事を正当化したい気持ちがあるだけに、防蟻しなくてはならないという、防蟻業者の呪縛から未だに脱却できていない。田代克也のようなクライアントはよくいる。人は自分のミスを認めたくないものなのだ。家のなかには空気の流れる道がある。室内の空気の流れる道の事を(通風林道)という。誰が考え出した言葉かは知らない。通風林道は窓を開いたときに出来る空気の流れる道で、窓を閉め切ってしまうと消えてしまう。家のなかにはもう一つの別の空気の流れがある、その流れは窓を閉め切ったときにだけ現れる。閉鎖空間の空気の流れる道だ。僕はこの流れる道の事を「閉鎖循環流」と名付けた。
2009.07.27
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食事が終わると僕は聞き取り調査を開始した。田代家のホルム臭は建築物ではなく、家具から出ていると考えられた。とすれば居住者自身で購入・設置した可能性が高いからだ。 「幾つかお聞きしたい事が在ります。新居に置かれていた家具は何時ごろ購入されたものでしょうか?」質問には田代克也が答えた。「入居と同時です。新しい家ですから家具も新しくしようと直美と選びました。」僕は(やっぱりそうか)と自分の想像が間違っていなかったことを確認しメモをとる。■ ホルムアルデヒド発生源と考えられる家具は居住者自身で購入。「そうですか、現場を調査させていただいて幾つかの化学物質が体調を崩された原因となっているように感じました。その一つはホルムアルデヒドらしく、どうやら家具が発生源のようでした。」「えっ、家具? ホルムアルデヒドですか? 家が原因ではなかったのですか? じつは、シックハウスとして建築業者を訴えようと考えていたのです。もしも原因が家具だとするとどうなるのでしょう?」田代克也はやつぎばやに質問しながら自分の思惑とは、事実が違う事に困惑している様子だったが、それを無視して僕は聞き取りを続ける。「家具だけではなかったのです。床下には防蟻剤が大量に塗られていました。防蟻剤の成分は分析してみなければ解りませんが、これも少なからず影響しているようです。あの家の構造は基礎断熱で気密の高いものでしたから防蟻処理は必要ないはずです。プロの建築家なら絶対にしない処置なのです。家を作るときに防蟻処置のことで打ち合わせなどはしなかったでしょうか?」僕の話を聞きながら田代克也の表情は曇って行った。 防蟻処理は田代克也が防蟻業者に依頼したものだった。建築業者は、防蟻処理が必要ないことを説明し、田代克也も一時はそれで納得し防蟻処理をせずに建築したのだった。しかし建築中に防蟻の無いことをこっそり確認していた防蟻業者の営業マンが、完成後に田代家に現れ、「防蟻をしなければ大変な事になりますよ!最近は外来種の強力なシロアリが増えていますから!」などと強迫観念を煽る売込みをしたのだった。 その業者は悪質だった。防蟻剤の効果を5年程度と説明し、5年間の保証までつけていた。保障というのは麻薬のような効果がある。保障があるのならと、つい契約書にサインしてしまう。 保障があったとしても防蟻剤を塗っていない部分をシロアリに喰われても、何の保証も無い。しかも、5年保障の正体は、5年後にまた再契約をするために訪れる継続契約の暗示となっているのだ。非常に巧妙な強迫観念を利用した販売戦略といえる。
2009.07.25
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待望の本出来ましたさっそく御注文いただいたかたがたに発送開始します。しかし今日から出雲です住宅革命 少し休みます すみません
2009.07.24
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田代直美の作るカレーは絶品だった。琴美ちゃんのために甘口で、夏野菜と愛情がたっぷり入っていて。いくらでも食べられそうだった。「うっ、旨い!」思わず呟いた僕に、田代家のママは「子供向けに甘くしているので、お口に合うかどうか心配だったのですが、おかわり、たくさん在りますからね。」と言いながら、にっこり笑っている。「ありがとうございます。僕、カレーが大好物なんです。しかも、レストランで食べるより家庭で食べるカレーが何よりです。これ、すごく美味しいです。」心からそう思い、あつかましくも、おかわりまでしたのだった。僕につられたのか琴美ちゃんも「わたちもおかわりー」と、カレーで口のまわりをべたべたにしながら言っている。 一家の主、田代克也は、相槌を打つように「うん、今日のは美味しいじゃん。」と言ったが、(今日のは)という言葉に僕は納得がいかなかった。ひこんな美味しいカレーを作る人は、きっといつも美味しい料理を作っているのに違いない。(今日のは)なんて、自分の妻とはいえ、ぜんぜん褒め言葉になっていないじゃないかと思ったのだ。僕は、(この男、なんだか好きになれないな・・)と感じていた。でもそれは、美人で料理の上手な奥さんを持つ田代克也に、無意識のうちに焼もちを焼いたのかもしれない。 田代直美も僕と同じ反応をしたようだ。亭主の言葉に、「(今日は)じゃないでしょ!いつもでしょ!」と笑顔のまま言った。琴美ちゃんも続いて。「うん、いつもおいちい」楽しい食事だった。みんな笑顔でカレーを食べている。やはりカレーは、家庭料理の大様だ。僕もいつの日か、こんな家庭を持つ事が出来るのだろうか。頭のなかには、田村京子の顔が浮かんでいた。つづく
2009.07.22
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中高年の山歩きが問題になっています一度に10名も死ねば当然ですねそれにしてもなぜあんな事が起きてしまうのでしょうそれは日本人の資質に在ります旅行者の企画した登山に参加するときお金を支払うプロのガイドが居るこの2点で参加者は既に思考停止状態です■山行計画を自分で立てない■プロがやってくれるから完璧で当然■お金払ったのだから、やってもらって当然■命を守ってもらって当然■フル装備だと重いから山小屋泊で軽装備で行きたいという、全く依存型の思考回路になってしまう欧米人ならこうはならない自分の命を自分で守るのは当然だからだもちろん企画した旅行社にも責任があるけれどそもそも、山は自己を律する場所なのです
2009.07.21
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自殺住宅田代克也は、自動車関連企業に勤めていた。愛知県といえばトヨサン自動車が在り、愛知県下のどんな企業も多かれ少なかれ、トヨサンの恩恵を受けている。愛知はトヨサン城下町といってよかった。克也の会社はトヨサン直系の子会社で、トヨサングループの中核をなし、意欲的な効率化を進めながら業績を向上している優良企業として認知されている。地元の若者は誰もがトヨサンを目指し憧れの存在であり、その憧れの企業の社員である田代克也は、サラリーマンとしてもエリートだった。しかし、巨大企業には一個人が目立ってはいけない構造的本能が存在する。アイデアを発信して、うまくいけば評価も高いが、失敗をしたときのバッシングを恐れて何もいえない社員が多い。保身に走る弱者は、会議という名の責任放棄システムの決定に従い、上司の命令に従うロボットと化す。(裏では、会社や上司の陰口を呟きながら) ロボットと化した人間はいつの間にか自己決定能力を失い、疑心暗鬼の世界でもがきながら生きるようになる。失敗を恐れ、成功を放棄する。成功は失敗の積み重ねでしか成立しないと言うのに・・・。田代克也はまさにそんな男だった。それに対して田代直美は積極的で知的な女性だった。結婚するまでは保母としてたくさんの子供たちの世話をしていた。小さな命を預かる職業がら、子供たちの微妙な変化にも注意を向ける事が自然にできるようになっていた。その能力のおかげで今回も住宅内の異常に気づき、思い切って住居を移り、家族の健康を守ったのだった。 僕は潮の香りを楽しみながら、海辺に向かってなだらかに下っていく道をのんびりと歩いていた。風呂上りの汗が徐々に乾いていくのが気持ち良い。すでに床下の調査で感じた頭の熱っぽさはもう消えて、快適な夕方の散歩を味わっていた。田代親子の暮らすアパートに着いたのは、午後7時を少し回った頃だった。 呼び鈴を押すとドアの向こうから「はーい、おまちしていました」と、田代直美の声が聞こえた。ドアはすぐに開き、アパートの狭い玄関の上り框から手を伸ばしてドアを開けてくれた田代直美の顔がすぐそこに在り、にっこりと笑っている。その笑顔の横をすり抜けるように流れるカレーの香りが、僕の鼻を捉えた。(やった!カレーだ!)僕はカレーが大好物なのだ。しかも家庭のカレーが一番だ!と思っている。カレーは家庭ごとに味が違うし、その家独特の世界がある。なにより家庭のカレーには母親の愛情を感じる。家族が健康で幸せに暮らしていきたいと願う愛を感じるのだ。他人の家庭を訪れたとき、もてなされる料理がカレーであったら、きっとそれは、訪れた人を家族と同等に受け入れるという意思表示であり、その家にしかない味の、最高のもてなしなのだと思う。 小さなLDKに入ると、意外にも田代克也はキッチンに立ってた。「いらっしゃい。お待ちしていました。どうぞお掛けになってください。すぐに行きますから。」と、左手でダイニングテーブルを指し示し、右手のタバコを口に運んだ。 彼がキッチンに立っていたのは、料理をするためではなく、レンジフードファンの下でタバコを吸うためだった。1歳半の琴美ちゃんのために換気しながらタバコを吸っていたのだった。僕は頭の中のメモ帳にメモを記入した。(■ クライアントのご主人は喫煙者)(もしも僕が喫煙者だったら、自分に子供が出来たら子供のためにタバコを止める。ファミリーレストランの喫煙席に子供連れの家族を見かけるたびにそう思っている。) 田代克也はタバコの火を水道の水で消し、吸殻を三角コーナーに放り込むとテーブルにやってきた。若い両親に挟まれて琴美ちゃんがチャイルドチェアに腰掛けている。僕は3人を相手に面談をする形になった。(これは早く聞き取りを終わらせてカレーをいただくとしよう。)と考えていると、「先にお食事にしましょうか」と田代直美が言う。(うひょー!本当はそう言ってほしかったのです。)何しろ、家中カレーの香りで、もうお腹がなりそうでこらえるのに苦労していたぼくは、「そうですか、お言葉に甘えちゃいます。」と、即座に答えたのだった。つづく
2009.07.21
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今夜の宿を決めるために僕は宮崎海岸に向かって歩いた。宮崎海岸は、吉良町の海水浴場があるところで、三河湾の穏やかな海の眺望がすばらしい。田舎町の海水浴場だけれど数件のホテルがあった。田代邸から2キロほどで、散歩には丁度良い。いかにも安そうな宿を選んで入り口を入る。その宿に決めた理由は、駐車場に車がなかったから。田舎町の宿とはいえ、真夏の海水浴場の宿だ。予約なしでは、そうそう空き部屋は無いだろうと思ったのだが・・・。「ごめんくださーい」帳場の前で叫んだが、返事が無い。照明も消えていて、なんだか怖い感じ。(他の宿にしようか・・)と思っていると僕の背後から声がした。「お泊りですか?」そこには長靴を履いた無精ひげの白髪親父が立っていた。予約してないが宿泊できるかとたずねると、「ああ、大丈夫だ。うちはいつでも空いてるもんで」と、三河なまりで宿泊許可が下りたのだった。(やっぱりやめようか)と頭の中では考えていたけれど、「こちらへどうぞ」と、客室のほうへ歩くはじめてしまった白髪頭の後ろを、僕はしかたなくついていった。部屋へ行く途中、白髪頭は「ここが風呂だ」、「朝食はここだ」と説明しながら進んでいく。僕は一番奥の小さな部屋をあてがわれたが、その部屋は意外ときれいで、臭いもなかった。しかもオーシャンビューだ。風呂は温泉で一晩中いつでも入れる。(もしかしたら、正解かも)お調子者の僕は、早速温泉に入る事にした。
2009.07.19
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床上に這い出し、汗で濡れたところへ匍匐前進で埃まみれになったツナギを脱ぎ、ホッと一息つく。屋根裏や床下には慣れているものの何度もぐりこんでも疲れる作業だ。よほど物好きでなければこの職業は続かない。 床下からは生還したが、防蟻剤のせいなのだろう、頭の一部が熱っぽく感じる。ひたいには脂汗がにじみ出ていて、呼吸数が増えている。頭痛や吐き気は無いが、正常な状態ではない。それでもまだ調べなければならない事がある。ホルム臭の出所を特定しなければならないのだ。もっとも、僕の頭の中では、すでに目星はつけてあり、もう少しだけがんばって現場調査を終わりにしようと自分に言い聞かせる。デイパックからタオルを取り出して汗を拭き、呼吸を整えるが、熱っぽい感じは消えない。しかし、かまわず作業を続ける。僕は、ホルム臭の出所を家具では無いかと考えていた。輸入品の家具には、大量のホルムアルデヒドが潜んでいることがあるのだ。これまでの経験で何度も家具による被害を確認している。家具の調査に取り掛かる。まずはリビングのダイニングテーブルの匂いを嗅いでみた。いきなりガツンと頭を殴られたようなアルデヒド臭に見舞われる。思わず鼻と口を塞ぐ。「なんじゃこりゃ」と思わず呟く。ものすごい濃度だ。ソファーセットも同じくらいひどい匂いがする。案の定、田代家の家具はほとんどがホルムアルデヒド漬けだった。家具がホルムアルデヒドで、床下は得体の知れない防蟻剤が大量に散布されている。これで体調を崩さない人は無いだろう。 この家が完成したときに渡されたVOC測定報告書の内容は、おそらく偽装などの問題は無いものだったろうと思う。クライアント自身が購入した家具と、防蟻剤によって、家族の健康状態が犯されたと考えられる。僕は聞き取り調査の必要性を感じ、田代家の家族がそろう時刻にアパートを訪ねることにした。 現場調査を撤収し、屋外に脱出した僕は、大きくしく呼吸をした。ああ、生き返る!ちょっと頭が重いけれど・・・「どうぞいらしてください。お待ちしています。夕食も御一緒にいかがですか?」と田代直美は言った。僕にとっては最高にうれしい申し出だった。(やった!家庭料理にありつけた)僕は心の中でガッツポーズを決めていた。つづくシード君の七つ道具上段中ほどにN95マスクと気象計
2009.07.18
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僕は換気装置の熱交換器やダクト、フィルターと点検していったが目詰まりやダクトのつぶれなどは発見できなかった。これで換気不足になるということは、換気装置そのものが容量不足ということになってしまう。どの程度の機器が設置されているのかを確認する必要がある。が、その前にやらなければならない事がある。それは屋根裏と床下の点検だ。 デイパックからつなぎを取り出し、着込む。既に汗だくなのでとても着づらい。ホルムアルデヒドのせいで目がチカチカするからゴーグルも装着することにした。マスクをしてゴーグルをかけたツナギ男に変身していく様を田代母娘が庭から見ている。娘の琴美ちゃんは怖いものでも見るように母親の足にしがみつきながら僕を見ている。「ヘンシン!」なんて、仮面ライダーのまねでもすれば少しはウケるかもしれない。 手始めに屋根裏にもぐりこむ。(暑い!)気象計のディスプレーの数字はどんどん上昇してゆき、62℃で安定した。相対湿度は12%だった。外気温が32~33℃で相対湿度50%程度の筈だから、屋根裏としては妥当な数値だ。(相対湿度は、水蒸気量が一定ならば気温が高くなると湿度は下がる。) 高温乾燥だから、ダイエットには最適な環境ではあるけれど、体脂肪率11%の僕には、ダイエットの必要は無い。むしろもう少し太りたいくらいだ。N95マスクに汗がしみこんで息苦しい。ゴーグルも曇ってしまった。たまらず、マスクもゴーグルも外してお尻のポケットにねじ込む。とたんに高温の空気が僕の肺胞を加熱する。ジリジリと唇が乾く。汗が目に入って痛い。夏の屋根裏には慣れているが、辛い事に変わりは無い。速く切り上げるとしよう。屋根裏の環境■ 屋根形状寄せ棟■ 断熱材は高性能グラスウール16K(施工状態は良好)■ アルデヒド臭無し。■ その他のVOC臭を感じるが不明。■ 通気止め無し。ダウンライト無し。■ 屋根形状寄せ棟■ ダウンライト無し。■ 気温62℃■ 相対湿度12%これだけの情報をメモすると、僕は急いで屋根裏から脱出した。暑さでツナギは既にずぶ濡れの状態だったが、床下の調査を続ける。床下収納庫を取り外して、床下に潜り込む。(涼しい!)この涼しさを知っているから屋根裏の調査を先に済ませ、休まず床下に入ったのだ。しかし、田代家の床下は、涼しいけれど、到底人間の居られる環境ではなかった。得体の知れない匂いが鼻を突く。こめかみとひたいが急に熱っぽくなったように感じる。僕は慌ててN95マスクを装着した。(まさか、クロルピリホス?)床下には、明らかに防蟻剤を散布した形跡がある。しかも尋常な量ではない。ぼくは、防蟻剤が染み込んでいるであろう大引き材をナイフで削り取りジプロックにしまった。あまり長時間居たくないので、デジカメであたりを撮影し、早々に床下から脱出した。つづく注 クロルピリホス 有機リン系防蟻剤 吸入、経皮、経口により体内へ吸収。神経系への影響、痙攣、呼吸不全、コリンエステラーゼ阻害剤。吸入による痙攣・めまい・発汗・吐き気・意識喪失・嘔吐・縮瞳・筋痙直・唾液分泌過多・目のかすみ。経口摂取により、胃痙攣、下痢・吐き気・意識喪失・嘔吐。また、長期暴露により、コリンエステラーゼ阻害(影響が蓄積される可能性がある)アメリカ合衆国で、クロルピリホスによる防蟻処理をしたハイスクールで生徒による銃乱射事件が起き、多数の死者を出した。合衆国政府はクロルピリホスが脳の血流に影響をあたえた事によるものと、同薬剤の使用を禁止した。日本では2003年に使用禁止となった
2009.07.16
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田代直美は「私は中に入ることが出来ないので」と言いながら玄関の鍵を開け、「申し訳ないですが調査が終わるまで外で待っております。よろしくお願いいたします。」と本当に申し訳なさそうな顔で玄関から離れた。家の中に入るとすぐに、むっとした熱気とホルムアルデヒドの匂いが鼻を突いた。僕はデイパックからN95マスクと気象計を取り出し、N95を素早く装着した。(N95マスクとは、米国の NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)が定めた基準で、耐油性は無く試験粒子を95%以上捕集できるマスクのこと。)僕はこれの活性炭入りのタイプを使用している。完璧ではないが、かなり高いレベルで化学物質を除去してくれる。捕集率が高いので少し息苦しいけれど、これは仕方が無い。マスクの鼻と口周りの隙間のチェックしてから、気象計のスッチを入れる。(気象計とは気温、湿度、露天温度、風速、高度、などを測定する機器だ。僕は、ケストレル3500を使用している。小型だけれど精度が高い。)気温は38℃、湿度55%だった!「暑いはずだ」僕は換気装置のスイッチを探した。この家はまだ出来たばかりだから、2003年から建築基準法で設置を義務付けられた24時間換気装置が取り付けられているはずだ。これだけホルム臭がするということはスイッチが切られている可能性が高い。換気装置のスイッチは洗面所にあった。案の定スイッチはOFFだった。換気装置のスイッチをONにすると家の何処かでモーターの回り始める音が聞こえた。窓を開ければすぐに涼しくなるし、ホルム臭も消えるのだけれど換気装置の流量測定を正確にやるためにはまだ開くことはできない。田代家の換気装置は第1種(同時吸排気タイプ)の全熱交換型だった。吸気口も排気口も天井についていた。僕はデジカメを取り出し、吸気口と排気口を撮影しながら、「これじゃ無理だな・・」と独り言をもらした。メモを取る■吸気口と排気口の位置は天井だった。■吸気口6箇所、排気口6箇所、それぞれの通気量12m3 総換気量72m3/h(少なすぎる)吸気口と排気口の数は合計12箇所だけれどそれぞれがペアだから12X12ではなく12X6=72ということになる。それにしても換気量が少なすぎるから熱交換器が目詰まりしているのかもしれない。換気量の測定を終えて、やっと家中の窓を開き、N95マスクをしたまま大きく深呼吸をした。窓から流れ込む空気は、間違いなく30℃以上の気温の筈だが、僕にとっては、とても涼しいさわやかな空気だった。二階の窓を開いたとき、南側の小さな庭で草を刈っていた田代直美の姿が見えた。彼女もふりかえり、こちらをすまなそうに見ている。室内空気のVOC濃度は測定はするまでも無い。十分、殺人的な濃度のホルムアルデヒドがあり、その他のVOCの存在も感じさせる別の匂いがある。VOC測定報告書がもしも偽装でなかったとしたら、何をすればこんなにひどい状態になるのだろう?と僕は、今回の謎解きが早くもわくわくと楽しいものに感じ始めていた。(クライアントには申し訳ないが・・)
2009.07.15
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神戸に有る E-DEFENSEに来ました 合衆国領事館のInvitationをいただき なんと 実物大木造7階建てを震度7以上でゆさぶろうという試みを見るチャンスをいただいたのでした あ 携帯のバッテリーが 残り僅かです 実験の結果は 後日
2009.07.14
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普通の家グーグルマップをプリントしたA4の地図を片手に強い日差しの中を歩き始めた僕は、すぐに空腹感を覚えた。時計を見ると、正午になろうとしている。新幹線の中で食べた深川飯は少し固めの炊き込みご飯だから良くかんで食べる。そのせいか、すぐに腹が減る。なぜか腹が減るとちょっと嬉しい。何を食べようかと歩きながら思いをはせる。レストランでも無いかとあたりを見回すが、吉良はかなりの田舎町でそれらしき店は見当たらない。そのうちに何かみつかるだろうとしばらく歩いたとき、なにやら良い匂いが漂っていることに気がつき、ある店の前で立ち止まった。おいしそうな匂いだなーと感じたら、僕は迷わない。看板を見ると「ふくなが」と書いてある。暖簾をくぐり中に入るとひっそり涼しげな店内に客が3人程いる。こっそりと盗み見ると、みんな同じものを食べている。店の中は、甘くて、ショッパイ、懐かしい香りがあふれている。僕はあまり新しいとはいえないテーブルに陣取りメニューを開く。真っ先に写真入りで「味噌カツ定食」とあり、これこそ店内の客が食べているものに間違いなかった。注文を取りに来た女将らしき女性に「味噌カツ定食」を注文する。程なく、僕の前に運ばれた味噌カツ定食は、以前、名古屋で食べた味噌カツとはまるで次元の違うものだった。巨大な褐色のカツがキャベツの上に乗っている。味噌のソースをかけたと言うよりも、味噌で煮込んだカツという感じだった。この後のカツを食べている記憶は無い。カツは、一瞬で僕の目の前から姿を消していた。どうやら、僕の胃袋へワープしてしまったらしい。「旨いなんてもんじゃないな」と独り言をいい、勘定を済ませ「ふくなが」をでた。僕は、「記憶喪失になるほどのカツ!必ずまた食べるぞ」と心に誓い、膨れた腹をさすりながらクライアントの家に向かったのだった。しばらく歩き、たどり着いたその家は、みたところ何の変哲も無い普通の家のたたずまいであり、レンガを積んだ可愛らしい門柱に木製のモスグリーンに塗られた木戸が取り付けられていた。呼び鈴を押しても返事が無く、不在のようだった。しかたなく、電話をかける。家の中で一瞬、電話の呼び出し音が聞こえたように感じたが、すぐに消えた。たぶん何処かへ転送されたのだろう。「はい、田代でございます。」「もしもし、環境住宅研究所のシードと申します。お宅まで来たのですが・・」「あ、はい、お待ちしておりました。すぐに参ります。5分ほどお待ちください。」クライアントの田代直美はすぐにやってきた。撫で肩の華奢な感じの女性で、日本的な落ち着きのある身のこなしで車から降り、「こんにちは、遠いところへおいでいただいて、ありがとうございます。」と言った。車の後ろにはチャイルドシートが在り、かわいい女の子が乗っている。田代直美は少女を車から降ろし、「こんにちはをしましょうね」と、少女と手をつなぎ、あらためてお辞儀をした。1歳半の少女は、「こんにちは」と大きな声で言い、つぶらな瞳で僕を見ていた。田代家は、新居に入居してすぐに3人とも体調を崩し、以前から住んでいたアパートにもどり、暮らしていた。新居には30分も居られないのだと言う。この家を作った建築会社の提出した、VOC測定報告書は、8種類の化学物質の濃度測定をし、どれも厚生労働省の室内濃度指針値を下回っていて、問題はなかった。
2009.07.13
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昨夜から岐阜に来ています 東横イン名鉄駅前に宿泊 部屋は117 11階ではありません 1階です 1階は フロント階の下 ほぼ地下 薄暗く 寂しい感じ さて この状境をどう楽しむのか 無理矢理 良いところを探す 無い! 携帯も圏外! 仕方ない シャワーでも浴びよう おっ あった 良いところ! 地下は、 シャワーの水圧が高い! それも ハンパじゃない ウヒャー とか ウヒョーとか シャワールームで騒ぐ 寂しい
2009.07.08
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エントロビー が エンタルピーを 調整して 結構省エネになるという 熱力学第一法則を 無視してしまいそうなアイディアが空から降りて来ました 人類には まだまだ 余裕が有るのだなー って 気が付きました 未来は 明るい! 明るいけれど やらなければならないことがあります それは 頼らないこと 自分できめること 自分でやること 自分で確認すること そこに 自分の未来が 有る! 頼ったら すでに 自分の望む未来は 消失しているのだ
2009.07.08
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発注者が こんなの造ってください と簡単な絵を描いて来る 設計者は 何に使うのか聞き 使用目的に合わせて仕様を決めて設計する これではだめだ 既製に頼らず、わざわざ造るには理由があるはずだからだ 何らかの合理化がそこで行われるはずだ 設計者が聞かなければならないのは 今どんなことに困っていて 何をどれだけ合理化したいのか なのだ クライアントの描いたまま制作すればどんなクレームも言い逃れることが出来る しかしそれでは設計者のスキルは上がらない よくある 自由設計の家 客のいうままに作り クレームを受けないための商法 そこにはプロとしてのプライドは無い クレームを恐れて 発注者のいうままに造る設計者は 最低だ
2009.07.07
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読者の皆様住宅革命を御愛読ありがとうございます。群馬編「赤い十字架」をお読みいただいた方々からたくさんの御質問をいただきました。今日は、赤い十字架の正体(プリンツスミレモ)との出会いを書きたいと思います。「赤い十字架」の舞台は、群馬県前橋市でしたが、前橋市でスミレモを観測した事実はありません。僕が始めて赤い藻(スミレモ)を見たのは、まだ寒い今年の3月5日のことでした。場所は島根県雲南市のある家屋の外壁に不思議な赤い汚れが在ったのでした。僕が発見したのではなく、こげんぱさんの発見です。僕が雲南市を訪れたときに、こげんぱさんが、「ねえFS、前から気になっていたのだけれど、あの赤い汚れは何なのでしょうね?」と言うではありませんか。指差すほうを見ると、赤茶色のペンキでもかけたような汚れのついた家が在りました。その家に近づいて見ましたが、なんだか解りません。それまで、外壁の汚れは結露によるところが多く、水分が多いことから、苔だろうと言う見解を全国の工務店の皆さんに解説していたFSですから、そのときも「苔でしょう」といい加減なことを言ってしまいました。その後、赤い苔のことが僕の頭から離れず、気になっていたのです。何とかその正体を知りたいと、小説の中のシード君のようにいろいろな文献を調べました。苔だと思い込んでいましたから、なかなかその正体にたどり着けづにいたのですが、藻だと解ったのは、小説に書いたままのながれでした。藻といえば、池や川や海の中に生えるものだという先入観があったので、とてもびっくりしました。おかげで気生藻類の存在を知ったのでした。怪我の功名ですね今回のことで、結露の研究が一歩進むことが出来ました。結露だけでなく、バウビオロギーにまで発展する内容ですから、今後の研究が楽しみです。島根県は、ある意味、建築の問題点の宝庫でした。山陰の高湿度と寒さが作り出す環境が、結露や藻の発生を助長しているのだと思います。寒冷地型住宅の研究を北海道でしたように、無結露住宅の研究は、島根県が適しているのかもしれません。今後も、定期的に島根を訪れることが出来ますから、近い将来、新しい研究発表ができるかもしれません。さて、愛知へ行く仕度をしましょうか・・・
2009.07.06
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忙しさにかまけてほったらかしだったアレカヤシ葉が枯れ始めてしまってかわいそうなので今日は日曜日で気持ちよく晴れた朝ですからアレカヤシ君を外に出し、植物の3大栄養素 窒素・リン酸・カリウムを与えようと屋外の園芸用具箱をガサゴソとやっていたら右足太ももに激痛「いてててて!」すぐ近くにあしなが蜂の巣が育ち始めていたのに気がつきませんでしたぼくは、蜂に何度か刺されていて既に抗体が出来てしまっていますからあわててカッターナイフで切開し太目のストローで血を吸出し後以前、皮膚科でもらった副腎皮質ホルモン製剤シフナールクリームで処置しばらく様子を見て以上が無ければ良しまだ、死にたくないですからね危険なのでかわいそうだけどあしなが蜂君たちは工事用のブロアで吸い取り処理完了!電気掃除機だと集じん袋の中で生きてますから注意ブロアだとシロッコを経由しますからねどうなるかはご想像・・・アレカヤシ君にも肥やしをやって水をたっぷりやりまして作業完了!ゴクロウ!さて週があけると火曜日から愛知と岐阜の百年projectの定例研究会が3日連荘です一泊の宿を吉良のマドンナに予約していただき一晩、ゆっくりと吉良を徘徊し「住宅革命」吉良編の取材をしてきますというわけで連載は5日ほどお休みですあしからず
2009.07.05
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指令 僕が乗った新幹線ひかり505号新大阪行きは、ゆっくりと東京駅から滑り出た。目の前の折りたたみテーブルには、ついさっきホームの売店で買った深川飯とお茶が乗っている。新幹線で午前中に東京駅から出発する時は、駅弁の深川飯が僕の朝食の定番となっている。 深川飯はアサリの炊き込みご飯の上に焼き海苔をしき、アナゴの蒲焼とハゼの甘露煮が乗っていて、小ナスの漬物が添えられている。決して豪華ではないが、たまらなく旨い。 本来の深川飯は、ご飯にアサリのたっぷり入った味噌汁をぶっかけて食べる。べらんめーの深川漁師が忙しく食べたのが始まりとされていて、まさに庶民の味なのだ。 深川飯をたいらげてお茶をすする頃にはもう新横浜を過ぎている。 目的地が大阪ならすぐに夢の中に突入するところだが、今日の行く先は、愛知県の吉良町。豊橋でひかり号を下車し、JRの在来線で蒲郡、名鉄蒲郡線で吉良吉田と乗り継ぐ。 居眠りなどしていたら一気に名古屋!いや僕のことだから京都まで在りうる。眠らないように田村邸の見積書をまとめる事にしよう。なにしろ昨日、環境建築研究所のドアを開けるなり、「シード!明日、吉良へ飛んでくれ!吉良!」所長の杉山が甲高い声でまくし立てた。(なんだかいつもより興奮気味だ。さては、ギャラの良い仕事が舞い込んできたか?)「吉良ですか?吉良ってあの吉良ですか?」僕も、とんちんかんな返事をしたものだ。あの吉良もこの吉良も無い。吉良といえば・・ええと、何県だったか?「所長、吉良って何県でしたっけ?」僕は地理は苦手ではないけれど、日本中の町名を覚えている筈も無い。妥当な質問だと思ったが杉山に一喝された。「バカヤロー!吉良も知らんのか愛知だよ、あ・い・ち!」 怒鳴られても一向にへこまない性格が災いして、上司のウケが悪いのは承知のうえだ。僕はとぼけたまま、「そうでした、そうでした、愛知県でした。」と知ったかぶった。どうやらこのへんが可愛くないらしい。「でも所長。田村邸の件ですが、改修工事と管理業務を依頼されたんです。早急に見積もらなければなりません。吉良の件は穴沢さんにでもまわ・・」「ばかやろー!見積もりなんぞ移動中にやるもんだ!しかし・・よくやった。」改修工事と管理業務を依頼されたと聞いて、杉山は急ににこやかになり、声が穏やかになった。(ゲンキンなんだからもう・・)それにしてもこの所長、部下が一仕事終えて帰ったばかりだというのに、楽はさせてくれない。休むまもなくの出張指令だった。 今回のクライアントは、若い夫婦で1歳半になる女児がいる3人家族で、新築したばかりの家に住んでいる。引渡し時には、第3者による気密測定とVOC測定(揮発性有機化合物の室内濃度測定の事)を実施しており、良好な結果だった。それなのに家族が3人とも入居後に体調を崩してしまったのだという。 一夜明け、僕は例の七つ道具の入ったデイパックを携えて、車中の人となった。目的地は吉良。吉良といえば吉良上野介義央(きらこうづけのすけよしひさ)。少し前までは(よしなか)と読んでいたらしいが、ある文献によしひさと在り現在ではよしひさが一般的らしい。『忠臣蔵』ではヒールに大抜擢されているが、史実とはいえ脚色された物語のことだから、事の顛末は想像の域を出ない。 ともあれ、電車を乗り継ぎ、到着した駅は、駅員がいるのかいないのか、めちゃくちゃローカルな駅だった。午前11時10分到着。雲ひとつ無い快晴!8月に入り本格的な夏になったけれど、不快な暑さではなかった。吉良は、気持ちの良いカラリとした暑さで僕を迎えてくれた。つづく
2009.07.04
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北朝鮮ミサイル発射 2009/07/04原子力発電所のリスク地球温暖化・CO2のはず無いでしょ温暖化を止めようとする無知によって環境破壊が加速する経済不況政治の混迷老人増加・福祉体制の不備失業者の増加農業の低迷林業の低迷その他製造業の低迷個人事業の減少巨大販売店の台頭・モータリゼーションのバックアップ大人たちの疲弊子供たちの怠惰情の希薄化テレビドラマに影響されすぎる日本人右へならへでなければ生きていけない・集団依存型判断力巨大資本を握る極少数派が世界を動かしているという錯覚地球全体があるから回っているということを知るべき騙されてはいけない・経済は庶民がまわしている資本家は何もしていない・マネーゲームが世界を動かしているという幻想愛は地球を救う。愛しか地球を救えない。 だとしたら、地球はすくえない。生命を含めた全てという意味での地球を愛でしか救えないのだとしたら、もう無理ということ。愛にお出まし願うまでも無く、環境保全できるシステムが必要そのためには、環境保全に経済効果を求めないという例外的措置を法制化する必要がある。経済が全てを生んできたが全てを破壊するのも経済のカタストロフィーなのだ。解りきったことを出来ずにいる物理学者・経済学者・政治家たち。どうしてそうなるかといえば、動力元が経済会だから。いつまでもおもちゃをほしがるガキのまま。大人になりたくない老けた子供たちを容認する人々。人間は大人になるものだ。
2009.07.04
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別れ 調査報告書と改善計画を渡してしまうと、僕の仕事は終わってしまう。そうなればもう、田村京子と会うことも無いだろう。<シード、それでいいのか?>(いいはずないじゃないか!)<なら、なんとかしろよ!「好きです!」とか、直球勝負が男らしいぞ!>(いやー、それはまだ) 頭の中では、自分と悪魔いや天使が終わりのないやり取りをしている。 ぼくは、仕事では、決断力のある男だと自覚しているが、こと人間関係となるとからっきしなのだ。 いつまで自問自答しても決着がつかないのは毎度のことだ。これは仕事なんだと、きっぱり決着をつけることにしよう。僕のように日本中の屋根裏や床下をホフクゼンシンしている男には、長距離恋愛を成就する自信など無いし、恋愛なんて幻想なのだ。いや、恋よりも怪奇現象に惹かれるオタクが人並みに恋などできるはずも無いのだ。(さみしい・・) 田村京子のことを、頭から無理やり切り捨てようとしている僕は、大脳の前頭葉が既にパニックで、扁桃体や視床下部が無意識に抵抗している。それでも、口からは、別れの挨拶が自動的に出るのだった。「みなさん、ありがとうございました。僕の仕事は、ここまでです。今回の仕事は調査していて、とても勉強になりました。これからの仕事に絶対生かします。本当にありが・・」「シードさん!」田村京子が僕の話をさえぎった。「シードさん、ここまで!なんて、無責任すぎます。最後まで見届けてください。」つぶらな目が少し涙ぐみ、抗議するように言った。そして、「この家の改修が終わるまでシードさんがきちんと管理してくれなかったら、誰にもチェックできないじゃないですか。業者の手配から現場監督まで、あなたがやってく・だ・さ・い・ね! まず手始めに、見積書を作ってください。そう簡単には逃がさないんだから!」 青天の霹靂だった。田村京子は、僕にとって一番嬉しい申し出をしてくれた。仕事までもらえて、またここに来ることができるのだ。(これが映画だったら、二人は見つめあって、そして抱き合うのだろうなあ)などと、僕は、妄想にとらわれながらも、体が本能の命ずる動きをすることを必死で抑えた。「京子さん本当ですか?改修工事まで僕が管理してもいいのですか?」田村京子は、こくりと頷きながら、「あなた以外にそれが出来る人を知りませんから。」と笑顔で言った。僕が生まれて始めて見る、究極の笑顔だ。男が動くためのエンジンは、信念や家族愛だと思っている。そしてエネルギーは、好きな人の笑顔だなと、たった今理解した。しかもこのエネルギーはエントロピーを消し去ってしまう。まさに究極の環境負荷ゼロエネルギーだ。「ありがとうございます。喜んでやらせていただきます。ぼくも、またこの家で働くことが出来てもう、めちゃくちゃ嬉しいです。」僕は少し、とり乱し気味に礼を言い、つづけて「それでは、お見積書は後日お届けします。工事のスタッフも最強のメンバーをそろえますからね。」と結んで、田村家を後にした。 駅に向かうプリウスの中で、田村京子はもう一つ嬉しい提案をしてくれた。「シードさん、お急ぎでなかったらこの間のイタリアンレストランでランチしていきません?」(もうなんて嬉しいことになっているんだろう)「はっ、はい!喜んで!」僕は、運転席の田村京子からは死角の左手でガッツポーズを決めた。明日は、愛知へ飛ばされ、世にも難解な調査が待っているとも知らずに・・・『赤い十字架』扁 おわり次回 愛知県 吉良町を舞台に展開する新シリーズに、請うご期待
2009.07.03
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まとめ<<熱排気型のダウンライトは使用するべきではない。>>照明器具とアレルギーは関連性がある。<<書架や収納は外壁面に設置してはいけない。>> 断熱性の高い収納物は置き位置を検討しなければならない。<<外壁北面の汚れは色に係わらず藻であることが多い。>>藻が生えている家は、壁の内部でも結露していると考えられる。<<陽の当たらない外壁を作ってはいけない。>> 南向きの家は北向きの家である<<近隣に河川がある場合は風通しと陽あたりを確保する。>> 定常的に湿度が高い環境を改善する。<<室内空気は、循環させてはいけない。1 >> 循環が許されるのは、地球規模のものだけであり、その輪廻の輪の 中には、浄化の循環が準備されている。しかも、それぞれの生物は、 浄化を負荷としてではなく栄養として受け入れていることが必要なの だ。環境共生とはまさにこのことなのだ。<<室内空気は、循環させてはいけない。2 >> 室内空気は、換気によって一方通行で排気されることが必要であ り、換気によって、室内環境は健全な状態に維持される。田村家の改善計画☆ ダウンライトの撤去とその穴を塞ぎ、照明器具を変更する。☆ 屋根裏の断熱改修と通気止め処置。 この2処置で、暖房の熱が屋根裏に逃げてしまうのを防ぐとともに、 結露を防止し、カビやダニの発生を抑え、アレルギー対策としても 効果が見込める。☆ 書架やその他の収納位置の変更し、外壁の内側に断熱力のあるもの を置かない。 この処置は、収納物が結露によって傷むのを防ぐことを目的として います。箪笥を外壁沿いにおいて、数年開かずにいたら、大事な着 物や洋服が傷んでいたなどの経験は、誰にでもあるものです。収納 物は、通気止め処置を施した間仕切壁側に置くことで、結露による シミなどを防ぐことが出来ます。☆ 裏庭の植栽を整理し、通風を確保する。 植栽は、夏を涼しくすごすためにとても効果的ですが、茂りすぎる と、藻が生えたり、風通しが悪くなるばかりでなく、落ち葉で雨樋 が詰ってしまったり、あまり歓迎できないことが起きるものです。 枝おろしなどで、風通しを良くして置きましょう。
2009.07.01
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赤い十字架に次ぐ住宅革命、新シリーズ執筆開始!するかも?構想1日舞台も怪現象も奇々怪々ヒロインは勿論、絶世の美女『衰弱殺人』ところで、写真は以前ご紹介した僕の本『必ずお読み下さい』です今月末に発売が決まりました表紙のデザインが決まったのでアップしましたよろしく(o^-')b
2009.07.01
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調査報告 赤い十字架は、(プリンツスミレモ)という気生藻類だった。一見乾いている場所でも、微量の水分があれば生育する。田村家のその場所は真北を向いた外壁であり、植栽もあることから、一年中、ほとんど陽が当たらない。陽の当たらない場所には藻が生育しやすい。北側には藤沢川が流れ、年間を通して相対湿度が高い。室内には、書架が設置され内部結露が発生していた。そのため、建物の断熱材は常時低温であった。低温域は結露しやすい。居室の天井には、ダウンライトが在り、点灯中はその熱で、居室の空気を屋根裏に排気していた。ダウンライトの排気に含まれる水蒸気は、冬の冷えたノジのほぼ全面で結露していた。天井の断熱と壁の断熱は、きちんと連続体となっていて、一見問題ないように見えたが、妻壁側の天井面より上で、屋根のラインと桁で作られる三角の外壁部分は断熱も気密も施されていない。しかしこれは、手抜き工事ではない。断熱する必要のない壁なのだ。しかし、通気止めは必要である。注 (通気止め) 通気止めは、間仕切壁や妻壁、ユニットバスの周りに存在するユ化した空間と連続の隙間などで空気が対流現象を起こさないための空気的遮蔽のこと。これらの空間で起きる対流は大量の熱を損失し、アレルゲンの蓄積を伴う。見落としがちなことだが、ダウンライトがその熱で排気した空気に含まれる水蒸気は、この三角部分から外壁の通気層へ入り、外気によって冷やされている外壁の内側を下降流となって降りていきながら、外壁の内側で結露する。この結露水が、藻の生育を助けたのだ。田村邸では、書架の部分が、最も低温で結露しやすかったために赤い十字架が表れたが、あと数年で北側の外壁には、全面に藻が生えてしまうと考えられる。通気止めがあればこれを防ぐことが出来たはずなのだ。また、健康被害も予想される。ダウンライトによって流れる排気流で、天井裏にはカビの胞子や花粉、ダニの死骸や糞が蓄積していく。これらは全て、アレルギーの原因物質であり、キッチンの換気扇が稼動するたびに室内に流出してくる。喘息や、花粉症などのアレルギーになりやすい住宅構造といえるのだ。最近では、地球温暖化を大気中のCO2量の問題に結びつけて、省エネルギーを推進しようとする動きが強い。住宅も省エネルギー化が求められ、暖房効率や冷房効率を上げる目的で、室内空気を循環させるシステムが取りざたされるようなってきている。しかし、空気を循環させるということは、アレルゲンなどの汚染物質も循環させるということに他ならず、室内環境そのものを汚染し続ける行為でしかないのだ。
2009.07.01
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