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激動の2011年も秒読みになりました。 今年海外で聴いたオペラ公演の、勝手なベスト5を。 1 チューリッヒ歌劇場「オテロ」 2 グラインドボーン音楽祭「ドン・ジョヴァンニ」 3 エクサンプロヴァンス音楽祭「椿姫」 4 同「鼻」 5 パルマ、ヴェルディフェスティバル「イル・トロヴァトーレ」(演奏会形式) まあ、順番は不同ではあります。 こうやってみると、印象がいいのは、全体のバランスのとれた公演、ですね。とくに指揮者の役割は重要と思います。演出は、新制作ならいろいろ気にしますが、再演だと正直、まあこんなものだろうか、と思ってしまうのです。 歌手にしても、今年最高だったのは「椿姫」のデセイですが、ドライな指揮(ラングレ)とか、美声だけれど声量が大きすぎてバランスの悪いジェルモン役のテジエなどが気になってしまいました。 「オテロ」は、期待していなかったから、というのもあるかもしれません。けれど、総合的に見て、歌手も指揮も演出もバランスが取れていた、と思います。 「ドン・ジョヴァンニ」も、結局は指揮者の力が物を言ったように思いました(ティチアーティ)。 「鼻」は、大野さんの指揮と、ケントリッジの演出が齟齬なく、総合芸術としてとてもレベルの高い公演だったと思います。 「イル・トロヴァトーレ」。指揮(マリオッティ)は今年のベスト!ヴェルディが「ベルカント」であることを、これほど知らしめてくれた経験は初めてでした。けれど歌手たちが新人ばかりで、それは弱いです。なので総合的にはどうしても、ベストというわけにはいかないのが残念です。 オペラは本当になまもの、ですね。 今年いちばん多く聴いて印象に残っている歌手はデセイ(2月のメト「ルチア」、4月のパリ(シャンゼリゼ劇場)「ペレアスとメリザンド」、そして7月の「椿姫」)。4月も名演だったと思うのですが、こちらの体調が最悪で、中途で帰ったというていたらくでした。残念。 そうか、こちらの体調もあるのですよね。。。 そして、今年いちばん数多く聴いたオペラは「イル・トロヴァトーレ」。4月にボルドー(これは公演目当てではな、ボルドーにいったらたまたまやっていた) 、新国のシーズン初日、そしてパルマ。というわけです。 コンサートはあまり聴いていないのですが、一番印象に残ったのは、ドレスデンの国立歌劇場できいた、ティーレマン&ポリーニの、国立歌劇場管弦楽団演奏会でした。曲目はブラームスの1番で、これはCDになっています。 国内のオペラ、コンサートのベストは、今発売中の「モーストリークラシック」に書いていますので、ここでは書きませんが、そこにあげそびれた公演(12月だったので)が、実は今年のベストでした。 オランダ・バッハ協会の「ロ短調ミサ曲」です。 オペラのすばらしい公演にであうと、「生きててよかった」と思うのですが、バッハのすばらしい公演にであうと、「バッハがあれば生きていける」と思う。 それを実感した、ほんとうに素晴らしい公演でした。 災厄の年、2011年のしめくくりに、バッハほどふさわしいものはない。心の底から、そう思ったのでした。 来年は少しでも、心穏やかな年になりますように。みなさまに、世界に、日本に。ねがってやみません。
December 31, 2011
ここ数年、毎年12月23日は、熱海で花火を観ることになっています。 一年を通じて何度か開かれる熱海の花火大会ですが、12月23日はその最終日。海の海岸沿いのマンションに、住まい兼事務所を持っているある先生が、この日、花火を見ながらお酒を飲む、という粋な会を主催していらして、お招きにあずかっているのです。 サンビーチの真ん前に建つマンションのベランダから仰ぐ花火はもちろん迫力ですが、何より、冬の花火、というのが気に入っています。空気が澄み、夜空がクリアで、音も色もいちだんとあざやか。多少の寒さも、吹き飛びます。 今年も12月23日を楽しみにしていたのですが、暮れ近くなって、アメリカ西海岸に暮らしている妹が、娘、つまり私のめいを連れて10日ばかり里帰りすることになり、せっかくだからどこか行きたいね、という話になって、じゃ、みんなで熱海の花火を観に行こうよ、という話になりました。 妹母子が里帰りするのは、今年は初めて。例年6月には必ず帰ってくるのですが、今年は例の原発事故があったので、よしたほうがいい、ということになり、6月の里帰りは中止。年末の短い期間ならまあいいのでは、ということで皆了解したのでした。 めいは、今年6歳。子供のいない私にとっては唯一のめい(甥もいません)なので、かわいくてしょうがない、のはおゆるしください。たまにしか会えないので、思い出が作りたくなってしまうのです。 花火というと、やはり現地に泊まるのが望ましい。11月も下旬になってから決めた話だったので、当然ながら旅館やホテルはどこもいっぱいです。何度かネットでトライしつづけ、ようやく、昔からある大旅館の1室が取れました。この時期、それも連休なのに2食付きでひとり10500円ですから格安です。期待はしないでいよう、と言い合ったのですが。 それが、コストパフォーマンス満点の宿だった。 熱海に泊まることなど初めての私でも名前を知っているくらい、老舗の大旅館だったので、建物など古いのだろうな、と覚悟していたのですが、たしかに古いものの、部屋は改装されているようできれいだし、お掃除もゆきとどいていて清潔。300人!が入れるという大浴場も、とてもきれいでした。こぎれいな露天(半露天?)もあり、温泉大好きな私にとっては天国。 食事も、値段を考えればまったく不満のない内容でした。 そして何より、花火鑑賞には絶好だったのです。 部屋からは、別棟の建物が邪魔して(だから宿代がお安いのだと思いました)ちょっと花火が見えにくそう。どこにいたら一番よく見えるかとフロントできいてみたら「屋上があります」というではありませんか。それはラッキー。宿泊客貸し切りですもんね。 花火開始の5分ほど前、屋上に出てみました。熱海といえばかつては「百万ドルの夜景」。さすがに今はそこまでとは思いませんが、それでもやはりなかなか美しい夜景です。山が控えている地形のせいもあるのでしょう。 頭上には、澄んだ、暗い夜空が広がっていました。寒さを覚悟してミニカイロを背中に張りつけていましたが、それでもさすがに寒い。夜気の冷たさに慣れた頃、 ドーン。 音がして、花火が始まりました。 菊の花。噴水。ハート。白。赤。オレンジ。橙。いろんなかたちや色が、夜空に散らばります。 めいは、本格的な花火を観るのははじめてのようでした。 ふだんは活発で、じっとしているたちではないのですが、さすがに黙って空を見上げています。 「きれい?」 ついつい何度もきいてしまうのは、大人の我、というものなのでしょう。 実は楽しんでいたのは、こちらの方なのかもしれません。 6歳の幼さで、そろそろ飽きてきたかな、という頃に、花火の終わりを告げる、夜空への大盤振る舞いがありました。 威勢のいい音に酔いながら、思い切ってきてよかったな、と、嬉しさをかみしめたのでした。 美しさは一瞬だけれど、その瞬間の記憶があざやかに残ることでは、花火は音楽にも勝るとも劣らないかもしれません。 めいと過ごせる時間も、私にとっては、冬の花火、のようなものなのです。
December 28, 2011
何度かこのブログにも書きましたが、私には吃音があります。親しいひとたちからは「そうなの?(わからないよ?)」と言われたりするのですが、やはり大勢の前で話す時には出ることがあります。あと、電話も吃音が出やすい。電話があまり好きでないのは、そのためでもあります(だからメールという通信手段ができて、ばんざいなのです)。「えーと」を連発することもありますが、これははやい話が吃音隠し、です。 とはいえ、図々しく講義や講座はさせていただいているわけですが、どうにも苦手なのが「放送」。 昨年の暮れ、初めてNHKFMの解説の話が舞い込んだのですが、編集しますからと言われて思わずOKしたものの、本番はさんざんで、担当の方を「緊張されるんですね~!」と悩ませてしまいました。感じのいい方だったので、申し訳なかったと思っています。編集、大変だっただろうな。 それから1年。ふたたび「放送」の話が舞い込みました。しかもこんどはテレビです。wowwowで放映している、メトライブビューイングの、「解説」をしてくれないか、というお話でした。 最初はもちろんためらいました。だって、下手すれば迷惑をかけてしまいますから。 けれど、とりあえず「打ち合わせにきてください」ということで、出かけて行き、担当の方達(大勢いました!)を相手に解説めいた話をしていたら、「それでいいから、出ませんか」といわれ、さらに「対談形式ですから、大丈夫」などなどと言われて、その気になってしまった、というわけです。 収録当日、指定された芝浦のスタジオへ。運河沿いの超高級マンション、とはいえオフィスばかりのような、の一室。 入ってびっくり、天井が高く、アンティークのシャンデリアや額縁、毛皮張りの椅子やソファなど、不思議な空間が展開していました。きけば収録する番組にあわせて、スタジオを選ぶそう。そんなところからの準備、大変です。 スタジオでは若いスタッフが大勢、きびきびと働いていました。そんな活気のなかにいるのは、とても気持ちがいいものです。カーテンで区切られたスペースでメイクをしてもらい、また気分が高揚。ふだん女優さんのメイクをしているメイクさんにしていただけるなんて、贅沢ですよね。 対談形式の解説の相手をしてくださるのは、八嶋智人さん。不勉強で知らなかったのですが、 「眼鏡王子」とあだ名されるくらい、眼鏡にこだわっていらっしゃるとか。なるほど素敵な眼鏡でした。 収録は3本。2月に放映される「カプリッチョ」、3月の「西部の娘」、4月の「オリー伯爵」、それぞれについての解説を、八嶋さんにリードしていただいてお話しする、という形式です。 解説といっても、見所聴き所に加えて、(興味をもっていただくために)エピソード的な話もいろいろ盛り込みました。 「カプリッチョ」の場合は、主役を歌うフレミングについて詳しく、ということでしたので、彼女の自伝「ルネ・フレミング 魂の声」(春秋社)も紹介。これは2006年に翻訳が出たものですが、たちまち3刷になったもので、たしかに面白い。歌手の本はあまたあれど、本人が書くことは珍しいし、どうやって歌手になったかにとどまらず、人間として、女性としての悩みとか、あるいはオペラ歌手という仕事の特殊性について、読者によくわかるように書いてくれています。売れたのももっともの、好著です。 「西部の娘」にかんしては、ちょうど今年公開された映画「プッチーニの恋人」で、作曲当時の彼の「恋人」が明らかになったというタイムリーな話題がありましたので、そちらに話をふりました。 「オリー伯爵」は、まずはフローレスがいかに凄い歌手か(彼を発掘したパラシオさんの話も交えて)、そして、「食通」ロッシーニのエピソードの数々を。フォアグラ、トリュフてんこもりのレシピから、特注の「銀の注入器」を使って作るマカロニの話など。この作品に関してはとくにお話しすることが多く、楽しんでいただけたのではないかと思います。 すっかり感服してしまったのは、八嶋さんのフォローの巧みさと回転の速さ、話題の幅の広さ。打ち合わせでは出てこなかった内容もどんどん出てくるし、私が言葉につまりそうになると、さりげなく私が言おうとしている言葉を重ねてフォローしてくださる。こんな経験は初めてでした。やはり司会などで活躍している方は、その辺りの読みも的確なのですね。 その後、もうひとり、八嶋さんと「対談」する役目の、宮本亜門さんが到着。私は打ち合わせだけ同席させていただきましたが、やはり宮本さんも「さすが」と思わされることの多い方でした。周囲への気配り、話題の豊富さ、オペラへの視点など、私にはないものをたくさん持っていらして、とても勉強になりました。やはり、活躍し続ける方は違うのかな、などと、勝手な感慨を抱いてしまいました。 ぎりぎりまで迷いつづけたお話でしたが、今回は、お受けしてよかった、という充実感を持つことができました。 推薦してくださった関係者の方や、現場のスタッフの方には、ほんとうに感謝しています。 放映予定、今のところ決まっているのは、2012年2月11日(土)、午後9時からの「カプリッチョ」です。 3月、4月の予定は改めてご報告させていただきます。
December 23, 2011
私の音楽ツアーの原点であり、2000年以来18回にわたって続いている「バッハへの旅」。 2012年の日程が発表になりました。 世界最大のバッハフェスティバル、ライプツィヒ、バッハフェスティバルのハイライトの鑑賞と、バッハゆかりの地をめぐる11日間のツアーです。 来年のバッハフェスティバルには、日本が誇る世界的バッハ演奏団体、バッハこコレギウムジャパンが出演、バッハゆかりの聖トーマス教会で「マタイ受難曲」を演奏するのが話題になっています。指揮はもちろん鈴木雅明氏。この公演をはじめ、オープニングコンサートなどハイライトを鑑賞します。 そして楽しいのが、バッハゆかりの教会での、ツアー貸し切りのパイプオルガンコンサート。この贅沢は、ツアーでなければできません。 詳細、お問い合わせはこちらから。 http://www.ytk.co.jp/music/kato_bach_festival_2012.html あるいは「郵船トラベル」で検索していただいて、「音楽・美術の旅」の「速報版」をご参照ください。
December 7, 2011
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