愛し愛されて生きるのさ。

愛し愛されて生きるのさ。

2003.07.18
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私は江戸川乱歩や横溝正史の小説が好きだった。といっても全巻読破しているほどのファンではないが。中学時代も図書室に置いてある「少年探偵団シリーズ」を横目に、乱歩なら「二銭銅貨」「鏡地獄」「D坂の殺人事件」、横溝なら「悪魔の手毬唄」などを読んでいた。乱歩の耽美的な世界と、横溝の土着的な泥臭い世界、どちらも好きだった。

さて、そこで『江戸川乱歩の陰獣』は探偵小説の映画化がブームになっていた1977年の松竹作品。「ああ、松竹が江戸川乱歩を作るとこうなるのね」という妙な感慨。

江戸川乱歩原作でありながら、画面から伝わってくる雰囲気は横溝正史の世界に近い。乱歩の世界は瀟洒な洋館が似合うのだが、ここに出てくるのは伝統的な日本家屋。横溝っぽい。主人公も、乱歩作品はスタイリッシュにスーツを着こなす名探偵が多いが、ここに出てくるのはもっさりしたとっちゃん坊やのようなあおい輝彦。横溝っぽい。やはり松竹の作風がそうさせるのであろうか。

こういう探偵映画は、死体の見せ方にも工夫が必要である。「犬神家の一族」の逆立ち死体や、「獄門島」の木にぶら下がった死体など、滑稽であるがどこか美しさが漂う。この映画ではベテラン俳優・大友柳太朗が便所の便器の下から発見される。しかもヅラを被って。滑稽すぎて悲しくなってくる。大御所俳優にこんなことやらせちゃっていいのだろうか?死体引き上げのシーンはあきらかに人形であったし、なんだかトホホである。

このストーリーには、謎の変態作家・大江春泥という人物が登場する。その正体はラストで明らかになる。私はこの大江春泥が乱歩自身を投影した人物のように思えた。乱歩の自虐的な一面が見えたような気がした。

得体のしれない大富豪夫人・小山田静子を演じるのは香山美子。確かに綺麗なのだが、顔立ちが和風過ぎてどうも江戸川乱歩の世界にはハマらない感じがした。若尾文子や江波杏子あたりに演ってほしかった。
あおい輝彦はなかなか良かった。風貌は横溝の金田一耕助っぽいのだが、人当たりの良さそうな雰囲気が、SMの世界に巻き込まれてしまう男の情けなさを上手く醸し出していた。

時代劇の大家・加藤泰の作品であるが、いまいちモダンさに欠けるので、独特の乱歩ワールドを活かしきれてない気がした。増村保造監督の『盲獣』くらいアバンギャルドにやってほしかった。期待していただけに残念。





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最終更新日  2003.07.18 13:35:43
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