愛し愛されて生きるのさ。

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2004.03.25
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○『花と蛇』


原作は団鬼六のSM文学の最高峰と名高い小説で、過去に5回も映画化されている。
監督は石井隆。私が好きな映画監督の1人である。
主演は杉本彩。



森田が遠山と静子を罠に嵌めておびき寄せたのは箱根山中で行われている仮面舞踏会。そこで森田は静子に目隠しと猿轡をはめ、拉致する。
目覚めた静子が目にしたのは、コロシアムのようなステージで政治家・医者・芸能人などのセレブが高額な会費でSM殺人ショーを楽しむ秘密パーティーだった。
静子はそこで、様々な責め苦を受けることになる…。


この映画はなんと言っても杉本彩の存在感である。
彼女はこの映画の中で、乳首に鍼・荒縄縛り・レイプ・レズ・強制放尿と、ありとあらゆる責め苦を受ける。
杉本彩はこのような内容を吹き替えなしで演じている。
だからここで彼女が見せる苦悶の表情は芝居という次元で語られるべきものではなく、本物の表情である。
この映画に出演するにあたって彼女は「石井隆なら全てを晒します」と言ったそうだ。


杉本彩の芝居を超越した芝居(矛盾してるが)を観るだけでも価値はある映画である。

しかしストーリーはというと、ちょっと陳腐である。
ストーリー性があるのは前半部分だけで、中盤からはひたすらSMシーンの連続となる。そのSMシーンの繋ぎ方もとってつけたようでちょっと愚直である。

石井隆という人は元々劇画家であったために、他人の原作を映画化するのは初めてかもしれない。
石井隆は今まで、暴力とセックスに満ち溢れている闇の中でも光を放っているヒロインを描き続けてきた。
あくまで暴力もセックスも人間を描くための手段でしかなかったのだ。

しかし今回の『花と蛇』はSM描写に重きを置きすぎてしまった感がある。
私はこの映画を観ながらも、目の前のスクリーンで繰り広げられているSM行為の表面的な部分を追うことしかできず、ヒロインに感情移入することも、ヒロインの人間性を追及することもできなかった。
このヒロインがSM行為を経験したことで何が変わったのか、といったような人間の内面をもっと深く描きこめばもっと味わい深い映画になったかもしれない。

そしてこの『花と蛇』は石井隆の映画の中では一番凶暴な映画である。
ヒロイン・静子は肉体的な暴力はもちろんのこと、言葉による暴力や視線による暴力など、さまざまな暴力によって痛めつけられる。

しかしこの『花と蛇』は徹底的に突き放した目線で作られている。
そこがこの映画が最も凶暴であると思える点である。

SMは痛みや恐怖という感情を徐々に増幅させるという点で、セックスよりもさらに死に近い行為である。
死に近い状況でしか快楽を得られない人もいる、ということをこの映画を観て感じた。
私にはまだまだ理解しづらい世界ではあるが。


だからこそヒロインがSM行為によって性的に開放される姿をもっと描きこんで欲しかったと残念に思う。

★★★☆☆

○『六月の蛇』

「蛇」つながりということと、性的に冷めた関係にある夫婦を描いたという点でどこかしら『花と蛇』と共通点がある『六月の蛇』をDVDで観直して見た。
詳しい内容は 過去の日記 で。

こちらのヒロインが受けるのはSMではなくてストーキング行為である。
見知らぬ男から、様々な脅迫を受けることで心の中で眠っていた蛇を呼び起こしてしまうストーリーである。

セックス描写で言えば、『花と蛇』よりもこちらのほうが若干控えめではある。
しかし登場人物の内面の描写は、こちらのほうがより深く描きこまれている。
登場人物の悶々とした気持ちや、心の葛藤などがしっかり描かれているのでより説得力を持っている。

映像センスもこちらのほうがスタイリッシュである。
全体的に青みがかったモノクロ映像は退廃的な空気を演出するのに成功しているし、塚本監督独特のカット割なども緊迫感を煽っている。

そして何より主演の黒沢あすかの表情が活きている。
もともと塚本監督は女性を撮るのが上手い監督だと言われているが、この『六月の蛇』は白眉である。
『花と蛇』の杉本彩のエロスは小学生でもわかるエロスであるが、『六月の蛇』の黒沢あすかのエロスはちょっと複雑なエロスであるように感じられた。

エロスを描いた作品でありながらも一抹の崇高さを持っているということで、『六月の蛇』のほうが一枚上手だと思った。

★★★★☆





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最終更新日  2004.03.28 08:48:00
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