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この今宮神社に来たら、かかせないものは、写真の「あぶり餅」だろう。串に小さな黄粉餅を刺して、炭火であぶり、独特のタレを塗ったものだ。このあぶり餅を食べさせる店が、今宮神社の参道に、2~3軒並んでいた。これだけで確か500円と、いかにも京都らしい価格だったが、話のタネに食べてみるのもいいだろう。 味は、なかなかいけるが、量が少ないので、少し物足りないかもしれない。○あぶり餅○ランキングの順位は? ○関連過去記事・今宮神社(京都旅情8)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 31, 2010
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上田秋成により、江戸時代末期に書かれた怪異物語の傑作である「雨月物語」(上田秋成/雨月洋:角川学芸出版 )。○「雨月物語」(上田秋成/雨月洋:角川学芸出版 ) この物語を構成する怪異話は次の9編。○白峯(しらみね)・西行法師が、讃岐の白峯稜で崇徳院の怨霊と出会った話。○菊花の約(ちぎり)・義兄弟との約束を霊魂になって果たした男の話。○浅茅が宿・戦乱のため家に帰れなかった夫が7年ぶりに帰ってみると、妻は・・・○夢応の鯉魚・夢の中で鯉になって、散々な目にあった僧の話○仏法僧・高野山で豊臣秀次一行の亡霊に出会った父子の話。○吉備津の釜・不誠実なため、ついには妻に呪い殺された男の話。○蛇性の婬・蛇神に付きまとわれた男の話。○青頭巾・禅の高僧が、寵愛していた美童の死が原因で鬼となった住職を教下した話。○貧福論・金を大事にしていた男が、金の精と金談義で盛り上がる話。 読んで感じたのは、まず、人の心と言うものは、時代が変わってもあまり変わらないものだということ。怨念を抱いたり、約束を守ることを何よりも大切だと考えたり、愛する者の死を悲しむあまり鬼となったり。前述したように、江戸時代に書かれた物語であるが、古臭さは感じない。もっとも、言葉自体は、現在とだいぶ変わっており、本の構成としては、まず前半に現代語訳が掲載され、後半に原文が載っているという形となっている。古文の素養のある人は、原文で読むのもいいだろうが、普通の人は現代語訳で楽しめば十分だと思う。もちろん私も、現代語訳で読んだ口である。 それほど怖くはないので、怪談と言うよりは怪異譚といったところだ。異色なのは最後の「貧福論」。「武士は食わねど高楊枝」と言う言葉もあるように、何かと武家社会では、金は卑しいものとされていたようだ。しかし、本来金は倫理とは無関係で大事にする人のところに集まってくるものだと、金の精と話が盛り上がっているのが何とも面白い。ちゃんと大事にするから、私のところにも集まって欲しいものだ(笑)。 表紙のイラストは、鏑木清方による「雨月物語 8.蛇身」。これがまた、すばらしく、読書心をくすぐる。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 30, 2010
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大徳寺を一通り観終わると、今度は「今宮神社」に向かう。大徳寺からそう遠くないところにある、かなり大きな神社だ。創建は994年(正暦5)、祭神は、大己貴命、事代主命、奇稲田姫命の3柱ということである。 ○今宮神社 ここにお参りしたとき、後から来た女性が、ぶつぶつと何かつぶやきだした。何だろうと思ったが、どうも祝詞をあげているようだ。お寺で、参拝者がお経をあげるているのは時折目にするが、普通の格好をした人が、神社で祝詞をあげている人は初めて見た。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・高桐院2(京都旅情7)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 29, 2010
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私が高校生の頃は、今と違って理科は4科目が必修で、文理に関わらず、「物理」、「化学」、「生物」、「地学」を学んでいた。私の場合も、理科好きだから工学部に進学したのだが、この4教科が同じだけ興味があった訳ではない。「地学」だけは、色々と覚えることが多いこともあって、少し敬遠気味だった。 これは、最近の高校生も同じような傾向にあるようで、理科4教科とも必修でなくなった現在では、地学の履修率は7%を切っているという。理工系の場合は、大学入試の選択科目は物理と化学が多いということもあり、この傾向はおそらく今後とも続いていくのだろう。 ところが、最近になって、昔はそれほど興味が無かった「地学」関係の本をよく読むようになった。今日取り上げる、「地学のツボ」(鎌田浩毅:筑摩書房)もそんな一冊である。地学のツボ(鎌田浩毅:筑摩書房) 著者の鎌田氏は、京都大学大学院人間・環境学研究科教授であり、この本は、京都大学での教養科目として、文科系の学生が受講者の大半を占める「地球科学入門」という講義をベースに作られたものだということだ。ページを開くとまず、ハワイのキラウェア火山から噴き出す真っ赤なマグマの写真に目を奪われる。大体の内容を想像できるよう、目次の章建てだけを紹介してみよう。第1章 地球は生きている - 地震と火山第2章 地球は動く! 地学におけるコペルニクス的転回第3章 地球の歴史第4章 地球変動による生物の大絶滅と変化第5章 大気と海洋の大循環第6章 地球の外はどうなっているか - 太陽系と地球第7章 進化し続ける宇宙への探求 地学の一番の魅力は、そのスケールの大きさだろう。空間的にも、時間的にも、普通の人には想像し難いような広く長い時空のレンジを取り扱う。社会科学や人文科学など、所詮は人間が出現してきて以降の、本の僅かな活動の結果を追っているに過ぎず、地学の扱うレンジに比べれば誤差のようなものだ。これほどのロマンあふれる学問が他にあるだろうか。 本書の中で、興味深かったものをいくつか紹介しよう。地震を起こすメカニズムとして、プレート・テクトニクスという理論は最近はよく知られているが、最近はこれに加えて、プルーム・テクトニクスと言う新しい考え方が出ているということだ。これは、地球内部のマントル内で、プルームと呼ばれる塊が、大規模に循環し、これが地球の変動と結びついているという考え方である。入門書ながら、このような新しい知見も入っていることが、地学の魅力である。また、海洋深層水の大循環は、最近話題の地球温暖化とも大きな関連があり、この方面に関心のある人は、ぜひともこの程度は知っておく必要があるだろう。 しかし、「地学」という名前はどう考えてもぱっとしない。以前ツイッターでもつぶやいたことがあるが、「地球科学」と言う名前に変えるだけでも、相当イメージが変わってくると思うのだが。 ○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 28, 2010
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前回、高桐院は、細川家の菩提寺であることを書いたが、そのために、境内には、細川家歴代之墓が並ぶ。○細川家歴代之墓 さて、細川家といえば、忘れてはならないのは細川ガラシャ夫人だろう。細川忠興の正室で本名は玉と言う。あの明智光秀の娘だ。戦国の過酷な運命に翻弄され、わずか38歳で事実上の自殺を遂げた悲劇の美女として有名である。本堂庭園にある春日灯籠が、忠興とガラシャ之墓だと伝えられている。 辞世の歌:「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」○細川ガラシャの墓 ○ランキングの順位は? ○関連過去記事・高桐院1(京都旅情6)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 27, 2010
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小学館の鉄ヲタ漫画と言えば、「鉄子の旅」が有名だが、これも同じ小学館から出ている一風変わった鉄ヲタ漫画、「鉄娘な3姉妹」の第2巻。鉄子の旅とまったく無関係と言う訳ではなく、「鉄子の旅」の初代編集者として有名な?イシカワさんが作者の松山氏のブログの鉄道関係の記事をみて、「やらないか?」と声をかけたのが誕生のきっかけだったようである。○「鉄娘な3姉妹 02」(松山せいじ:小学館 ) 「一風変わった」 というのは、主人公のことだ。何しろ、巨乳撮りテツの長女・美章(びしょう)、ゴスロリ・ツンデレ乗りテツの次女・美唄(びばい)そしてロリロリ模型テツの三女・備後(びんご)の萌え萌え3姉妹と言う設定なのだ。鉄道興味の方のみならず、他の方面の趣味の方も十分に楽しめるというお得な設定になっている(笑)。 彼女たちの父親は、伝説の鉄(テツ)と呼ばれる、福音寺国鐡と言う男。10年前に妻が無くなった時、姉妹をそれぞれ別の親戚に預けて、自分は鉄ヲタライフを満喫しているというかなり変わったおっさんだ。その姿は、上半身が異常にムキムキで、シルエットはかなり人間離れしている。 血は争えぬということで、見事に鉄ヲタに育った娘たちに、この父が謎のメッセージを送り、娘たちがそれを手がかりに、父を求めて、色々な地を旅するというのが基本的なストーリーである。しかし、なぜか、父親の鐡は、娘たちから逃げ回っているようで、何とも不思議な設定になっている。 今回出てくるのは、モグラ駅、廃線路など。3姉妹の案内で、鉄道の楽しみを満喫できる。最後の北陸鉄道石川線の鶴来~加賀一の宮間の廃線の話には少ししんみりする。地方に元気がないと、これからもローカル線の廃線は続くのだろう。なんとかこの流れを食い止めて欲しいものである。○ランキング今何位? ○関連過去記事・鉄娘な3姉妹01 ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 26, 2010
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写真は、やはり大徳寺の塔頭の一つである「高桐院」。細川忠興により、1602年(慶長7)に創建された寺ということで、細川家の菩提寺となっている。国宝の絹本墨画山水図 2幅 附:絹本墨画楊柳観音像の他多くの文化財が伝わる寺だ。 また庭園は、「楓の庭」と呼ばれ、紅葉の季節は美しいそうだ。○高桐院入口○高桐院庭園○ランキングの順位は? ○関連過去記事・大徳寺千体地蔵塚(京都旅情5)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 25, 2010
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「浅見光彦のミステリー紀行(第2集)」(内田康夫:光文社)、内田康夫による人気ミステリー「浅見光彦シリーズ」の作品ごとに、光彦が旅した場所の観光情報などとともに、あらすじ、取材や創作に関するエピソードなどを紀行文として取りまとめたもので、今回はその第2集目となる。収録されているのは、次の10作品に関することだ。なお、断りのない限り、各作品タイトルのリンクは、当ブログ内の該当作品レビューに貼ってある。○「漂泊の楽人」(テレビドラマの記事にリンク)○「鏡の女」(当ブログの記事なし)○「美濃路殺人事件」美濃路殺人事件(画像なし)○「長崎殺人事件」○「終幕のない殺人」○「竹人形殺人事件」竹人形殺人事件(画像なし)○「軽井沢殺人事件」○「佐用姫伝説殺人事件」○「恐山殺人事件」○日光殺人事件 時にはこんな、纏め記事のようなものを書いておかないと、自分でも、以前何を読んだか忘れてしまう。こうやってブログに書くと一種の備忘録の役目をしてくれるので役にたつ。○ランキング今何位? ○関連過去記事・浅見光彦のミステリー紀行 第1集○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 24, 2010
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写真は、大徳寺にある「千体地蔵塚」。地蔵とは地蔵菩薩のことである。仏教の教えでは、釈迦如来の入寂後、次の如来である弥勒が降臨するまでに、この世には仏が不在となる。弥勒は必ず如来すなわち仏になる菩薩として、兜率天で修行を続けているが、その期間がなんと56億7千万年という気の遠くなるような期間なのである。その仏の不在期に、仏に変わり、六道をめぐって衆生を救うのが地蔵菩薩である。 地蔵は、各地にいろいろな逸話が残されており、さ私たちにとってもとてもなじみの深い菩薩である。それでも、これだけ並んでいると一種独特の雰囲気がでる。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・芳春院(京都旅情4)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 23, 2010
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泉鏡花による戯曲の傑作、「夜叉ケ池・天守物語」(岩波書店)。泉鏡花は、明治後期から昭和初期にかけて活躍した小説家で、昔なら国語の授業で名前くらいは覚えたものだが、最近はどうなんだろう。鏡花と言う名前から女性を連想してはいけない。本名を鏡太郎というおじさんなので、念のため。夜叉ケ池・天守物語(泉鏡花:岩波書店) さて、この本には、表題から分かるように2つの話が収められている。簡単にどんな話か紹介しよう。 「夜叉ケ池」は、越前国の琴弾谷と言うところを舞台にしている。この地にある夜叉ヶ池には伝説があった。その昔越の大徳泰澄に封じられた龍神は、必ず麓にある鐘を、日に3度鳴らさなければ、契約から解放され、この地を水の底に沈めてしまうという。萩原晃は、伯爵の子息でありながら、数奇な運命のめぐり合わせで、美しい村娘百合を妻に、鐘楼守をしている。ところが、村人達は、百合を雨乞いの犠牲(にえ)にしようという暴挙にでる。 一方「天守物語」の方の舞台は、播州姫路の白鷺城(姫路城)だ。この城の天守閣の最上階には、「天守夫人」と呼ばれる亀姫という名の、美しい人外の者が住み着いていた。ある日、姫川図書之助という若き鷹匠が最上階に登ってくる。図書は、鷹を逃がしたことで罪を着せられ、切腹の代わりに、誰も上ろうとしない天守の様子を見に行かされただ。ところが無事に役目を果たした図書を、城主の播磨守は賊扱いして殺そうとする。 戯曲ゆえか書かれた時代のためか、言葉自体が、現在と違っているので、読んでいく上で多少の戸惑いはあるかもしれない。また、通常の小説と異なり、戯曲のため、ほとんどが、台詞のやりとりだけでストーリーが進んでいく。しかし、読み進めていくうちにそんなことは気にならなくなってくる。どちらも、登場するのは、美しい女性の妖異。そんな妖異の繰り広げる怪しくも美しい作品世界にどんどんと引き込まれていくだろう。 ○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 22, 2010
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これも大徳寺の塔頭の一つ「芳春院」。「芳春院」と聞いて、歴史に詳しい人は、大河ドラマにもなった、前田利家の賢夫人まつのことを連想するだろう。「芳春院」は彼女の出家後の名でもある。この塔頭は、1608年(慶長13)に彼女によって建立されたもので、加賀100万石前田家の菩提寺となっている。 ロマン溢れる歴史をもつ寺であるが、残念ながら非公開である。 ○芳春院○ランキングの順位は? ○関連過去記事・大仙院(京都旅情3)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 21, 2010
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人間の存在の力を喰らい、世界のバランスを乱す「紅世の徒」(ぐぜのともがら)と、それを阻止しようとするシャナ達フレイムヘイズとの戦いを描いた壮大なサーガ「灼眼のシャナ」( 高橋弥七郎:アスキー・メディアワークス)の第18巻。この世界では、「紅世の徒」に存在の力を喰われた人間は、最初からいなかったことになってしまう。フレイムヘイズとは、人間としての存在を捨て、「紅世の徒」と同族ではあるが、彼らの人間界への干渉を阻止しようとする「紅世の王」たちと契約して、強大な力を得た者たちである。○「灼眼のシャナ18」(高橋弥七郎 :アスキー・メディアワーク) 「紅世の王」の中でも、最強の存在の一人、「天壌の劫火」天罰神アラストールと契約した、「炎髪灼眼の討ち手」の名を持つフレイムヘイズの少女。彼女は、坂井悠二 という少年と知り合い、やがて二人はお互いに相手を意識しあうようになる。そして少女は、「シャナ」と呼ばれるようになった。シャナはフレームヘイズであったが、悠二もまた人間ではなかった。「紅世の徒」に人間としての存在の力を喰われた残りかすである「トーチ」と呼ばれる存在なのだ。「トーチ」はやがては存在の力を消耗して、最初から居なかったことになってしまう。ところが、彼は、「零時迷子」という宝具を体の中に宿していたため、毎日零時になると存在の力を回復できるというミステスと呼ばれる特別なトーチだったのである。 前巻までに、二人の運命は大きく分かれてしまった。悠二は、シャナたちの敵である「紅世の徒」の集団「仮装舞踏会」盟主・「祭礼の蛇」の代行体となってしまい、シャナ自身も囚われの身に。 だが、この18巻では物語は大きく展開を見せる。囚われの身のシャナは、力を封じられた姿ではなく、力を取り戻した本当の自分として、悠二に会って確かめたいと思う。 「会ってどうするべきなのか」 「会えばどうなってしまうのか」 「愛こそが最強の自在法、この愛で自分がどうするのか確かめたい」 彼女の思いに応えた、愛刀「贄殿遮那」の化身である伝説のミステス「天目一個」により自由を回復したシャナは、新たな力に目覚める。 しかし、悠二は、敵の盟主と精神が融合してしまっており、更に、彼がこの世に存在するのに不可欠な宝具である「零時迷子」は元々は、「約束の二人(エンゲージリンク)」の片割れであるヨーハンの持ち物である。どう考えても、悠二は圧倒的に分が悪い。まさか、某ミステリー作家のように、書きながら結末を考えているようなことは無いと思うが、作者は、この状況から、一体どんな結末に収束させようとしているのか非常に気がかりである。私としては、あまり哀しい結末ではあって欲しくないのだが。 ところで、この巻に久しぶりに登場するミステスの「天目一個」、相変わらず、掟破りの強さである。これだったら、シャナが自分で戦わなくても、「天目一個」に戦わせるようにすれば、もっと戦いは楽になるのにと思ってしまった。でもこの「天目一個」、かなり頑固そうなので、楽をしようとする者には味方してくれないのかもしれない。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・灼眼のシャナ17○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
January 20, 2010
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高田崇史の蘊蓄系歴史ミステリーと言えば、桑畑崇と棚旗奈々のコンビが活躍する「QEDシリーズ」やその番外のような「毒草師シリーズ」が有名だが、この「カンナ」シリーズも同じ流れを汲むものと言っていいだろう。なにしろ、主人公の鴨志田甲斐は、QEDシリーズに登場した鴨志田翔一の弟と言う設定なのだ。○「天草の神兵」(高田崇史:講談社) しかし、「QEDシリーズ」や「毒草師シリーズ」の主人公と違うのは、甲斐が桑原崇や御名形史紋のような強烈な個性を持っていないというところだろう。 何しろ、忍者の子孫ながら、ほとんど技が身に付いていない甲斐(ただし、誰かが危ない時に一時的に忍者の技が出ることがある)を筆頭に、彼と行動を共にしているのは、死んだふりの得意な中村貴湖という現役女子東大生の巫女さんと、大事なことはすぐ忘れるくせにつまらないことはよく覚えているという特技を持つ甲斐の高校の同級生の柏木竜之介、そして犬のほうろくといった面々だ。ちなみに、貴湖も竜之介も忍者の子孫だが、今書いたこと以外には特技は無いようである。時折貴湖あたりが蘊蓄を語るが、まだまだ、崇や史紋には及ばない。そして、どう見ても、一番活躍しているのはミニチュアブルテリアながら忍者犬のほうろくなのだ。 今回甲斐たち一行は、失踪した早乙女諒司の手掛かりを求めて、熊本そして天草に飛ぶ。今回彼らが挑む謎は、天草で起こった児童養護施設ロザリオ園の延長殺害事件と天草四郎の謎。天草四郎の謎とは、なぜ四郎は長男なのに四郎と名付けられたかということとなぜ島原の乱では、原城に籠城していた人々を幕府軍が殲滅したのかということだ。 作品中で明かされる、四郎の名前に隠されていた秘密には驚いた。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・カンナ 飛鳥の光臨○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 19, 2010
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これも、大徳寺の塔頭のひとつである「大仙院」。大徳寺76世住職である古岳宗亘にょり、1509年(永正6)に創建された。室町時代を代表する枯山水庭園や国宝の本堂などで有名である。○大仙院○ランキングの順位は? ○関連過去記事・龍源院(京都旅情2)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 18, 2010
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お馴染みの美人女子大生会計士が、会計上の事件を解決するシリーズの4巻目「女子大生会計士の事件簿(DX.4)」( 山田真哉:角川書店)である。○「女子大生会計士の事件簿(DX.4)」( 山田真哉:角川書店) 今回収められているエピソードとそのポイントは以下の通り。1.<逆さまバレンタイン>事件 問屋の役割と、それを活かした超規模小売店の再建2.<渋滞とハイスクールララバイ>事件 隠し在庫のトリック3.<それいけ!萌ちゃん>事件 禁じ手の融通手形とそれに手を出した町工場の再建4.<企業買収ラプソディ!>事件・前編5.<企業買収ラプソディ!>事件・後編 企業消滅を目論んだ買収への対抗と取締役会の成立要件6.<幸せなブラックリスト>事件 カッキーあこがれの買い物依存症の人妻に対する萌ちゃんの荒療治7.<萌さんとメリー・クリスマス!>事件 「合コン無敵」の萌の妹登場!カッキ―は萌とめでたくメリークリスマス! ハチャメチャな萌ちゃんの活躍を通じて、楽しみながら会計のしくみを理解できる、なかなかお得な一冊である。しかし、萌ちゃん、ハチャメチャなんだけど、結構心根は優しくて人情味もあるようだ。カッキ―に対しても、心の中ではまんざらでもないようである。はたして、二人の関係は、これからどのように進展していくのだろうか。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・女子大生会計士の事件簿3○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 17, 2010
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高田崇史の歴史蘊蓄系のミステリーと言えば、桑畑崇と棚旗奈々のコンビが活躍するQEDシリーズが有名だが、この「カンナ」シリーズも、QEDシリーズの延長線上にあるものと言って良いだろう。○「カンナ 飛鳥の光臨」(高田崇史:講談社) この物語の主人公は、鴨志田甲斐。QEDシリーズに登場した鴨志田翔一の弟である。彼の実家は、伊賀の出賀茂神社という規模は小さいながらも歴史と格式のある神社なのだが、翔一が後継ぎとなるのを嫌い家を出ているため、甲斐が神社を継ぐことになっているようだ。QEDシリーズで翔一は忍者の子孫と言う設定だったが、当然甲斐の実家も伊賀流忍者の家系である。この甲斐とコンビを組むのが、中村貴湖という現役東大生だが休学中で、出賀茂神社の巫女のアルバイトをしているという口うるさいがかわいいという設定の女の子だ。彼女もまた伊勢服部流の忍者の家系である。そして、彼らと行動を共にしているのが、甲斐の高校の同級生で甲賀流の子孫である柏木竜之介とミニチュアブルテリアながら忍者犬のほうろく。このグループで事件を甲斐けるするというのが基本的な構成である。 今回彼らが遭遇する事件は竜之介の勤め先の出版社である「月刊歴史探究」で起こった密室殺人。これに、出賀茂神社で起こった社伝盗難事件、そして甲斐が兄ともしたる早乙女諒司失踪事件さらには歴史上の「大化の改新」と蘇我氏にまつわる謎が絡んで、事件は混迷していく。 読んだ感じは、「忍者がいっぱい」ということかな。しかし甲斐たち新世代は、その前の世代と比べて、ほとんど忍術は身についていないようなのが少しなさけない。例外が貴湖の代謝をコントロールをして、脈や呼吸を長い間止めるというもの。つまりは「死んだふり」だ。これが、作中では結構役立っているのだが、つい、「お前はダンゴ虫か?」と突っ込みそうになる。 密室殺人事件の方は、「QED 出雲神伝説」のトリックと似ていたが、蘇我氏に関する謎の方は何とも興味深い。しかし、歴史資料を素直に読めば、このような解釈になるんだろうな。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 16, 2010
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「龍源院」は大徳寺の塔頭の一つである。大徳寺には多くの塔頭があるが、この龍源院のように見学できるところは限られており、残念なことだ。開山は、東渓宗牧(とうけいそうぼく)。1502年(文亀2)の創建だという。○龍源院入口 この龍源院には、素晴らしい庭がいくつかあり、庭を眺めながら、ずっと座っていても飽きない。癒しが必要な場合は、庭の前に座って瞑想に耽るのも良いだろう。○龍源院石庭・一枝坦(いっしだん) ○ランキングの順位は? ○関連過去記事・大徳寺三門(京都旅情1)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 15, 2010
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昭和58年雛見沢村を舞台に繰り広げられた惨劇を描くいた「ひぐらしのなく頃に 祭囃し編」(鈴羅木かりん/竜騎士07:スクウェア・エニックス)の第3巻。雛見沢村で祀られる神・オヤシロさまの生まれ変わりとも言われる少女・古手梨花は、惨劇が起こるたびに、彼女だけに見える守り神・羽入(オヤシロさま?)の力で、時を巻き戻し、少しずつ位相のずれた惨劇と絶望の世界を繰り返し体験してきた。○「ひぐらしのなく頃に 祭囃し編3」(鈴羅木かりん/竜騎士07:スクエア・エニックス) 登場人物が、主役を交代しながら、繰り変えさえる雛見沢村の惨劇。この「祭囃し編」では、他の編では真っ先に惨劇の犠牲となる役であった鷹野三四が主役を務めている。 老科学者の故鷹野一二三により、地獄のような境遇から救われた三四は、祖父のような一二三の研究を世に出そうとして努力する。しかし、いつの間にか三四は変わってしまった。この巻では、まさに目的のためには手段を選ばないという、悪魔に魂を売った鬼女となり果ててしまっている。これは、オヤシロさまよりずっと怖い。(もっとも、伝説では無い実際のオヤシロ様は萌え系のかわいい少女の姿をしているのだが)かっての高邁な志はどこに消えたのだろうか。 果たして三四は、どこまで暴走するのか。そしてどんな結末が訪れるのか。次が出るのは、2010年8月だそうだ。長いな。○ランキング今何位? ○関連過去記事・ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編1,2 ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
January 14, 2010
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以前、本ブログで、道尾秀介の「骸の爪」についての記事を書いた。順番が逆になってしまったが、この「背の眼」(道尾秀介:幻冬舎)は、それに先立つ霊現象探求家・真備庄介シリーズの第一弾に当たり、第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した作品である。○「背の眼」(道尾秀介:幻冬舎) 作家の道尾が旅行で、たまたま訪れた福島県の白峠村。そこでは、児童失踪事件が連続していた。彼はそこで不気味な呪文のような声を聞く。 「レエ・・・・・・オグロアラダ・・・・・・ロゴ・・・・・・」 東京に逃げ帰った道尾は、大学時代の友人で、霊現象探求家として名を成していた真備の許を訪ねたが、そこで、白峠村に関する不思議な事件について知る。真備の研究所に届いた4枚の白峠村周辺で撮影された写真。その被写体となった人物の背中に人の眼が写り込んでおり、その全員が自殺を遂げたというのだ。果たして、本当の心霊現象なのか?道尾は、真備とその助手の北見凛と共に、真相を探るために、再び白峠村を訪ねる。 「骸の爪」においては、色々な謎が提示されていたが、結局は、すべての謎には一応の理性的な説明が付けられている。しかし、この「背の眼」においては、どうしても心霊現象でしか説明できないものが取り入れられている。つまり、「骸の爪」は、ホラーテイストのミステリーなのだが、本作はミステリーテイストのホラーなのである。しかし、事件の核心にあたる部分については、オカルティックな見せ方をしながらも、きちんと理性的な説明が付けられ、ミステリーとしての体裁は保たれている。 人の心には「鬼」(この作品では「天狗」なのだが)が住み着くことがある。鬼に取りつかれた男の引き起こした凄惨な事件にオカルティックな味付けをし、人間の心の不思議さというものをうまく描き出している作品と言えるだろう。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・骸の爪○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 13, 2010
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未練を持って死んだ者が「屍」となって、生きた人間を襲う世界。この屍と戦う「屍姫」と光言宗の契約僧たち。そんな世界を描いたホラーアクション漫画の「屍姫」の11巻。やっと最新刊に追いついたと思ったら、もう12巻目が発売される。「屍姫11」(赤人義一:スクエア・エニックス) この巻では、いよいよ敵の屍集団である「大群(おおぜいのけがれ)」との全面対決が始まる。そのために各地から契約僧と屍姫が集められるのだが、この場面でちょっと笑ってしまった。契約僧は坊主の筈なのに、だれもツルツル頭がいない。それどころかモヒカン坊主までいる。「光言宗って、いったいどんな仏教宗派なんや!」と思わずつぶやいてしまった。屍姫たちの方は、そこそこかわいく描かれているので、男の方はちょっとばかり手を抜いたのかもしれない(笑)。 「王」と、光言宗側との直接対決も始まり、物語は大きく展開していきそうだ。○ランキング今何位? ○関連過去記事・屍姫10○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 12, 2010
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掲載がすっかりおそくなってしまったが、だいぶ前に行った京都の記事の掲載を始めよう。まず行ったのは、洛北にある「大徳寺」だ。運悪く、バスを降りたとたんにゲリラ豪雨に襲われ、どうなるかと思ったが、しばらく寺の入り口で雨宿りをしていたら、ウソのようにぴたりと雨があがったので助かった。 この大徳寺は、山号を龍寶山といい、臨済宗大徳寺派大本山である。多くの名僧を輩出したことでも知られているが、中でも頓知の一休さんこと一休宗純は有名だろう。 また、門前では、「大徳寺納豆」というちょっと変わった納豆が土産物として売られている。これも、一休さんが伝えたそうだ。○大徳寺三門 写真は、重文の「大徳寺三門」である。かって、千利休がこの三門に自分の像を安置したために、秀吉の怒りを買い、切腹を命じられたとのことだ。 そしてこれも重文の「勅使門」。元々は、御所の門だったものを下賜されて、移築したものだ。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
January 11, 2010
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昨日に引き続き、浅見光彦関係だが、フジテレビ系の金曜プレステージで放映された「浅見光彦シリーズ36 鐘」。内田康夫による同名小説を原作とした、四国高松と越中高岡を舞台に、名探偵浅見光彦が活躍する旅情サスペンスである。○原作「鐘」(内田康夫) 今回光彦は、浅見家代々の菩提寺である聖林寺の住職から、誰も付かない筈の寺の鐘が鳴り、撞き座から血が滴っていたという、ちょっと不気味な相談を受ける。 その1週間後に、隅田川から弓岡正と言う男の変死体が発見され、彼の顔面には、鐘の撞き座の模様がくっきりと付いていた。弓丘は、「カネのこと」で出かけると言い残し、そのポケットには、未使用の琴平電鉄の切符が残されていたのである。 その半月前、香川県の蔦島で、松川義雄という男が自殺しており、その際に彼を留めようとした畑谷昇と言う男が殴られた事件があった。その松川の遺書には、「カネのことで迷惑をかけて申し訳ありません」との言葉が残されていた。そして、正善寺と言う寺にも、聖林寺と同じ撞き座の模様を持った鐘が存在していたのだ。 光彦は、二つの鐘が、富山県高岡市で作られたことを知り、高岡と高松をまたにかけて事件の真相を追い求める。 最初は、無関係に見えた2つの事件はやがて、京都の寺にある国宝級の釣鐘の偽鐘事件にまで発展していき、更には12年前に立山の滝で起こった松川の恋人の転落死事件にまでが絡んでくる。光彦が、いかにこの複雑に絡まった糸を解きほぐし、事件を解明していくかと言うところが、今回の見どころだろう。 相変わらず、出てくる風景がいい。高松は、四国随一の都市で、何度も行ったことがあるので、出て来た栗林公園、琴平電鉄、金毘羅さんなどは、とても懐かしい。高岡は、行ったことはないが、高岡大仏や越中万葉の里で有名で、また釣鐘の産地としても知られているようだ。このドラマを観ていると、本当に行ってみたくなってくる。(原作)・内田康夫 「鐘」(出演)・中村俊介(浅見光彦)・高野志穂(松川慧美)・榎木孝明(浅見陽一郎)・野際陽子(浅見雪江)○ランキングの順位は? ○関連過去記事・鐘(内田康夫)・歌枕殺人事件 浅見光彦35○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 10, 2010
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内田康夫の「浅見光彦シリーズ」と言えば、警察庁刑事局長を兄に持つフリーのルポライターで名探偵の浅見光彦が活躍する旅情ミステリーとして有名だ。発表されたものは、既に100冊を優に超える、大人気シリーズであり、作中に、有名な観光地の風景や名物などが登場して、読者に旅情を呼び起こす。 光彦は、作品の中で日本国中を旅しているが、作品ごとに、あらすじ、取材や創作に関するエピソード、光彦が訪れた場所の観光情報などを紀行運としてまとめたのが「浅見光彦のミステリー紀行」(内田康夫:光文社)でありその第1集に収められているのは、以下の10作品である。なお、タイトルのリンクはつブログのレビュー記事に張ってある。1.後鳥羽伝説殺人事件2.平家伝説殺人事件3.赤い雲伝説殺人事件4.津和野殺人事件5.佐渡伝説殺人事件6.白鳥殺人事件7.天城峠殺人事件 8.小樽殺人事件9.高千穂伝説殺人事件(本作を原作とするテレビドラマのレビュー記事にリンク)10.「首の女」殺人事件(本作を原作とするテレビドラマのレビュー記事にリンク)・画像なし 読んでいると、自分が主人公になったような気分になり、作品の舞台となった地の風物が目に浮かんでくるようだ。この本を片手に、掲載されている場所を訪ねる旅というのも面白いだろう。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 9, 2010
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誰が言った言葉か覚えていないが、「誰もが知っていて、誰も読んだことが無い本」を「古典」と呼ぶらしい。そうだとするとこの本など、まさに「古典」の要件を満たしているのではないだろうか。柳田国男の「遠野物語」である。以前から興味があったこともあり、最近出張先で立ち寄った書店で、「遠野物語新版」( 柳田国男:角川学芸出版)として平積みされていたのを見かけて購入してみた。○「遠野物語新版」( 柳田国男:角川学芸出版) 遠野は岩手県にある、妖怪の故郷として有名な街である。だから妖怪をテーマとした漫画などには、よく遠野が登場する。最近では「ぬらりひょんの孫」(椎橋寛:集英社) にも、遠野妖怪が登場している。○「ぬらりひょんの孫」(椎橋寛:集英社) これまでに遠野が有名になったのは、「遠野物語」が世に出たからであるが、元々は、地元に住む佐々木喜善から聞いた話を柳田が筆記・編纂したものだ。この新版には、本来の「遠野物語」とその続編に当たる「遠野物語拾遺」が収められているが、いずれも、河童、オシラサマ、天狗、座敷わらしなど、この世と異界との区別がまだ明確でない時代の不思議な言い伝えが多く収録されている。一つ一つの話は短く、関係する話が続くこともあるし、まったく別の話が続いている場合もある。特徴は、「遠野物語」が、少し古い文体で書かれているのに対して、「拾遺」の方は現代風の文体になっていることだろう。「古い文体」と書いたが、決して悪くはない。斎藤孝氏の著書に「声に出して読みたい日本語」というのがある。この「遠野物語」も声に出して読むとよい。非常にリズムとテンポの良い、古き良き日本語を味わうことができるだろう。○声に出して読みたい日本語(斎藤孝:草思社) この本には、多くの怪異談が収録されているが、特に心に残ったのは、第69段の「オシラサマ」の話だ。美しい娘が馬と恋をし夫婦となったが、娘の父の知るところになり、馬は殺された。娘が馬の首に取りすがって泣くのに怒った父親が、馬の首を切り落としたところ、娘はその首に乗って天に昇り、オシラサマと呼ばれる神になったという。文章が、そのまま映像化されて、目の前に見えてきそうな錯覚さえ覚えさせる。 かっては、おそらく日本の至る所に、このような物語があったのだろう。古き日本の暮らしや自然との関わり、日本人の考え方などを伝えてくれる、ぜひ一度は読んでおきたい書だろう。○ランキングの順位は? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 8, 2010
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昭和58年雛見沢村を舞台に繰り広げられた惨劇を描くいた「ひぐらしのなく頃に解 皆殺し編」(桃山ひなせ/竜騎士07:スクウェア・エニックス)の第4巻。雛見沢村で祀られる神・オヤシロさまの生まれ変わりとも言われる少女・古手梨花は、惨劇が起こるたびに、彼女だけに見える守り神・羽入(オヤシロさま?)の力で、時を巻き戻し、少しずつ位相のずれた惨劇と絶望の世界を繰り返し体験してきた。しかし、今度は、何かが違いそうだ。○「ひぐらしのなく頃に 皆殺し編4」(桃山ひなせ/竜騎士07:スクエア・エニックス) 今回の世界に現れた擾乱は、凶暴な沙都子の叔父が突然舞い戻って来たということ。これまでは擾乱が起きると、それが引き金になり、雛見沢は一気に惨劇の世界へと突き進んでいった。だが、圭一たちはあきらめない。遂には村の一番の権力者園崎家の当主お魎まで動かし、村は一丸となって沙都子の救出へ動き出した。この巻で伝わってくるのは、決してあきらめないことの大切さ。果たして「この世界に私の命をかけるわ!!!!」という梨花の悲壮な決意は報われるのか。 一件落着と思っていたら、鷹野三四がとんでもない動きをしている。最初の頃は、単なる脇役キャラの一人だと思っていたのだが、だんだんと存在感が大きくなってきている、事件のキーマンとなってきているようだ。 ○ランキング今何位? ○関連過去記事・ひぐらしのなく頃に 皆殺し編3○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
January 7, 2010
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写真は、やはり後楽園からほど近いところにある「夢二郷土美術館」。「夢二」といえば、もちろん「竹久夢二」、大正ロマンあふれるはかなげな美人画で有名な画家である。雑誌などの挿絵も多く書いており、生前は大衆人気に支えらていた画家であり、今で言えばイラストレーターに近い存在だったのかもしれない。 夢二は、邑久郡邑久町(現:瀬戸内市邑久町)に生まれ、以前は、夢二生家が整備されて博物館になっていたのだが、生誕100周年を記念して、1984年(昭和59)に岡山市に新本館として建設された。屋根の風見鶏が、なかなか風情がある建物だ。なお、夢二生家のある方は、今は分館となっている。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・岡山県立博物館(岡山市風景7)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 6, 2010
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「メディア良化法」という法律により、「公序良俗を見出し人権を侵害する表現を取り締まる」という美名のもとに、検閲押収が行われているという近未来。「メディア良化委員会」という国の武装検閲組織と戦う図書館員たちの戦いを描いた「図書館戦争」シリーズの第3弾、「図書館危機」。○「図書館危機」(有川浩:アスキー・メディアワーク) このシリーズの柱は二つ。言論統制の行われる世界への警告と主人公の図書隊員笠原郁とその上司にあたる堂上とのラブコメだろう。この一見余りにもかけ離れて見えるものが、同じ作品の中に同居しているというのは面白い。 さて、この巻のストーリーの方だが、全体はいくつかのエピソードで構成されている。郁が手塚の兄からの手紙のことで、動揺して、堂上を大外刈りでノックアウトした事件。郁たちの昇任試験。毬江が図書館内で痴漢に遭い、恋人の小牧がキレた事件。若手俳優香坂大地の特集本が発行中止になりかけた事件。そして、応援に行った茨城県立図書館でのメディア良化委員会との攻防事件。このような中に、更に、郁の「王子様卒業宣言」や郁が戦闘職であることが実家にばれたといったような細かなエピソードがちりばめられている。 堂上は、性格からか、郁に対しては、相変わらずぶっちょう面で、時には厳しい(的確な?)ツッコミも入れる。それに対して、郁の方も相変わらずキャンキャンと噛みついているているが、二人の中は次第に進展しているという、正にラブコメ度満点の展開となっている。また、小牧の毬江の間のラブラブボルテッジは一層上がり、おまけに手塚と柴崎の間も微妙に進展したようである。郁と堂上の夫婦漫才?などを楽しみながら、言論の自由と言ったことを考えさえてくれる作品だ。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・図書館戦争・図書館内乱○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)
January 5, 2010
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写真は、後楽園のすぐ隣にある、「岡山県立博物館」。岡山県は、古くは吉備の国とも呼ばれ、非常に文化の栄えたところだ。だから文化財の数も多く、展示は充実している。また本館は、文化財保護法に基づく公開承認施設となっており、国宝・重要文化財の展示が可能な施設となっている。後楽園に来たら、ぜひともこちらにも立ち寄るべきであろう。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・日本三名園のうち後楽園(岡山市風景6)○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
January 4, 2010
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写真に写っている建物、まるでマンションか何かのように思えるが、これは「広島都市学園大学」と言う大学の建物。 このとおり、ちゃんと、入口にも書いてある。この大学は、昨年の4月にオープンしたばかりで、できたてほやほやと言っても良い。4年生看護系の私立大学としては、広島市初になる。大学というと広大なキャンパスを思い浮かべるが、広島市はでは、平地が少ないためか、ほとんどの大学は、山にへばりつくように建っている。この大学は、広大なキャンパスはないものの、珍しく平地に建っており、すぐ向こうには「You Me タウンみゆき店」もあり、交通の便も良いので、至便性はすこぶる良い。○ランキング今何位? ○関連過去記事・ズッコケ三人組の故郷広島市己斐(広島市を歩く57)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 3, 2010
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椋本夏夜さんによる表紙のイラストが眼を引く、「アカイロ/ロマンス4 ― 白日ひそかに、忘却の ―」(藤原佑/椋本夏夜:アスキー・メディアワーク)。もちろん、描かれているのは、ヒロインの枯葉。とってもかわいらしい女子高生姿だが、実は「鈴鹿」という、女性しか生まれない、滅びかけた「妖」の一族の本家当主である。可憐な見かけにも関わらず、身体能力は人間より、はるかに高く、首だけになっても数日は生きていけるという強靭な生命力を備えている。「鈴鹿」の一族は、人間の男と結ばれることによって子孫を残してきたが、そのためには首から下を人間のものと取り替える必要があるのだ。 しかし、それにしても、表紙の枯葉はかわいく描かれている。イラストだけで思わず買ってしまったものもいるのではないだろうか。○「アカイロ/ロマンス4 ― 白日ひそかに、忘却の ―」(藤原佑/椋本夏夜:アスキー・メディアワーク) さて、物語の方だが、「鈴鹿」一族は、人間を種の保存の道具としか考えない「繁栄派」と名乗る一派と、人との共存を求める「本家」派が争っていた。白州学園に通う桐沢景介は、「繁栄派」に襲われ、学園に潜んでいた「本家」の生き残りである「妖」の少女「枯葉」と出会ったことから、彼女の婿候補として、「鈴鹿」の争いに巻き込まれていくというもの。 この巻では、意外な人物が活躍する。株式会社四方田製薬経理課長木陰野慎一42歳。有給を取って戦いに参加したそうだ。景介の仲間木陰野棗の父親で、妻の薊も娘の棗も「鈴鹿」一族なのだが、彼自身は普通の人間である。一見中年メタボサラリーマンにしか見えないが、中間管理職の底力?を見せ付け、あっさりと繁栄派の巳代という「鈴鹿」の少女を一蹴する。景介は、慎一から身体能力に劣る人間の「鈴鹿」との戦い方やこれまで鈴鹿一族から軽んじられていた蔵物「かみらの枝」の真の力を教えられる。どんなに不利な状況でも、努力と工夫さえあれば、それなりの戦い方ができるというのは、まさに中間管理職の知恵である。さすがは日本の中間管理職、下手なビジネス書より、ある意味役に立つかも。(違うかな?) 枯葉と共に闘うための新たな力を手にした景介。枯葉の婿候補としての心構えもだいぶできてきて、ますます物語は佳境に入っていくる。 ○ランキングの順位は? ○関連過去記事・アカイロ/ロマンス3 ― 薄闇さやかに、箱庭の ―○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」
January 2, 2010
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謹賀新年! 旧年中は、当ブログをご愛顧いただきありがとうございました。本ブログの姉妹ブログ共々、今後ともよろしくお願いいたします。 さて、日本三名園といえば、金沢の兼六園、水戸の偕楽園(茨城県水戸市)とここ岡山にある後楽園である。この後楽園は、岡山藩主・池田綱政により、江戸時代初期に造られた泉回遊式の庭園である。国の特別名勝にも指定されている、美しい庭園だ。 以下に紹介する写真は、もちろん今の季節のものではない。初夏のころ後楽園を訪れた折のものである。このころは、芝生の緑が美しく、また色とりどりの菖蒲が咲き乱れていて、見物には特にいい季節だろう。 上の写真では、上の方に、烏城とも呼ばれる岡山城が見える。 こちらは、行楽園内にある池に咲いている花菖蒲。6月ごろが見ごろだろう。○ランキングの順位は? ○関連過去記事・岡山市の母なる川旭川(岡山市風景5)○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)
January 1, 2010
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