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昨日、奥田建・国土交通副大臣より新高速乗合バス制度について記者発表が行なわれた。私自身にとっては、この制度改正の件が進んでいたからこそ、高速バス事業の将来性について確信を持つことができサラリーマンを辞める決心がついたという意味で、大げさに言えば人生をかけ制度づくりを手伝ってきたわけで、ついに正式にゴーサインが出たのは重要なニュースである。昨日、出張先で報を聞き、帰りの新幹線車内では一人でささやかながら缶ビールで祝杯となった。「バス事業のあり方検討会」では、激しく議論を戦わせた委員の方もいらっしゃるし、人事異動やご自身の体調の問題などにより途中で交代した行政委員もいらっしゃるが、全ての関係者の熱意と努力の結果としての新制度である。全員に心から感謝する。何よりもこの制度が実現した後であればあのような事故はおそらく発生しなかったであろうことを考えると、直前に悲惨な事故が発生したことは残念で、悔しくて仕方がない。それでも、我が国の高速バス事業にとって大きな大きな転換点となる制度改正に深くかかわることができたことは非常に誇らしい。報道などではどうしても「事故を受けて」と伝えられがちだし、事実そういう側面もなくはないが、実際には1年半前から様々な角度で議論を重ねてきた結果としての新制度の発表である。絶対に誤解しないでいただきたいのは、何も高速乗合バスと高速ツアーバスとを一本化することが、この制度改正の目的ではない、ということだ。公益性の大きい「平場」の路線バスと同じレギュレーションのもとで高速バス事業を運営するという高速乗合バスの制度にはそもそも矛盾があった。制度上、高速バス分野を事実上独り立ちさせたことで、特に既存の高速乗合バス事業者にとって大きなメリットが想定されている。今後、私は二つの立場から新制度の実現に向けお手伝いをしていくことになる。まず一つ目は、高速ツアーバス各社のお手伝いだ。高速ツアーバス連絡協議会顧問の立場から、制度の詳細のつめと、何よりもバス停の調整について支援を行なっていく(バス停調整の進捗についてはさすがにここでは書けない。完了を楽しみにお待ちいただきたい)。なお、制度上、彼らは旅行会社+貸切バス事業者から、乗合バス事業者(委託者)+貸切バス事業者(乗合バス事業の受託者)へと移行することになる。その移行には、書面上はともかく、実運用面ではかなり高いハードルが待ち構えている。そのハードルは、彼ら自身が、彼ら自身の事業の永続のために、歯を食いしばって乗り越えてもらうしかなく、私(あるいは協議会)は声援を送ることはできても、肩代わりすることはできない。また、移行が無事に完了したあかつきには、高速ツアーバスという事業モデルはなくなるわけで、そうなるとおそらく高速ツアーバス連絡協議会もなくなる(※)ことになるであろうから、高速ツアーバス(あるいはそこからの「移行組」高速乗合バス)全体を、私が薄く広くお手伝いするのはその移行完了時点まで、ということになろう(コンサルティング会社として個別の会社のお手伝いをすることは当然ありうる)。※よく新聞記者さんなどから、<新高速乗合バスに移行すれば、高速ツアーバス各社は日本バス協会に入会するのか?>とご質問をいただくが、いやいや、ウィラーも平成もキラキラも、それこそハーヴェストでさえ以前から日バスの会員であり、そもそも日本バス協会と高速ツアーバス連絡協議会は対立する組織でもなんでもない。さてもう一つの立場が、「既存組」の高速乗合バス事業者のコンサルタントとして、である。彼らは、制度上は大掛かりな手続きは必要ない。現在の事業の延長上で新制度を活用することができる。逆に言えば、何の変化をすることもなく、現在の事業を継続することも可能だということだ。だが、ここに落とし穴がある。今回の件で制度上の対応が求められるのは、明らかに高速ツアーバス各社である。だが、事業のあり方、取り組み方という点では、実は「既存組」高速乗合バス各社の方が圧倒的に大きな変革を望まれているのだ。そのことを見落としてはならない。幸い、少なくない事業者が、本気で新制度の活用の準備に入ってくれている。今回、4月のパブコメ時点でいったん見えてきた制度の詳細を、事故を受けて修正し、再度パブコメが行なわれた。その修正点のうち、「既存組」実運用に事実上影響するのは2点。貸切バス型管理受委託の対象範囲が、200km以上の路線から50km以上の路線へと変更された(もともとは50kmという案だったのでそこに戻った)点と、幅運賃の割引率や届出方法が変わった点だ。さっそく、先週および昨日の各クライアント事業者との打ち合わせでは、それら修正点を踏まえての、営業戦略やシステム、オペレーション改修方針の再変更がテーマとなった。先へ先へと対応を進める各社の姿勢が頼もしい。これから、正式に省令が改正されるなどして、まずは「既存組」高速乗合バスから新制度の活用が行なわれていく。合わせてバス停調整などの環境整備を経て、高速ツアーバス各社が新制度に移行する。まずはその移行完了までが一つのヤマか。高速バス事業の新しい時代の姿がようやく形をあらわしてきた。それを苦境にあるバス産業全体を救うきっかけとするためにも、全社が最大限まで新制度を活用することができるよう、その支援に手を抜くわけには絶対にいかない。
2012.07.31
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山田英夫・早稲田大学ビジネススクール教授の新著『なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編』(日本経済新聞出版社)の中で、「ビジネスモデル・イノベーション」の事例の一つとして、ホテルで学んだレベニューマネジメント(RM)を高速バス業界に導入した私のケースをご紹介いただいた。同書は、その後文庫化もされた先生のヒット作『なぜ、あの会社は儲かるのか?』の続編。重要な著作に、しかもコマツ、スルガ銀行、星野リゾート、ブリジストンといった、ビジネスモデルの変革という点で定評ある有名企業と並んで紹介いただいたことを心より光栄に感じている。山田先生と、先生をご紹介いただいた友人のSさんには心から感謝しつつ、出版直前に例の高速ツアーバス事故もありご迷惑にならなかったかヒヤヒヤした。無事に書店に並び(それもビジネス書の目立つ棚に平積み!)ほっとしたところだ。ところで、「儲かる」とか「ビジネスモデル」とかいう言葉を、バスの世界では毛嫌いする人が少なからず存在する。ただ私は「ビジネスモデル・イノベーション」というのは、お金をうまく流す仕組みづくりのことだと考えている。懸命にバスを走らせながらなかなか利益が出なかったとして、もちろん輸送人員が増えることが理想的な結末なわけだが、バス利用者が急に何倍にも増加することなどまずありえない。しかし、渋滞する道路も信号サイクルを少し触るだけで流れ始めたりするように、ちょっとだけ、やり方をいじってあげることで利益が上がり始める。それでようやく、路線を維持し、よりよいサービス、より高い安全性への投資も可能になる。私がお手伝いしたいのはその部分だ。金儲けでバスを走らせているわけではないと言う人も多いが、かといって乗務員の給料も安全への投資も、誰かが費用を負担しなければならない。公的補助に頼るとしても、税金を湯水のごとく投入できる時代では既にない。今回はRMの件をご紹介いただいたが、引き続きそれに限らず、「やり方を少し変えることで、縮小基調だった事業が拡大を始める」ことをお手伝いしていきたい。もっとも同書に紹介された各ケースを拝見しても、けっきょく最も近道なのは、自らの顧客が誰で、その顧客が望んでいることは何かを理解することなのだと、あらためて気づかされる。さて話は変わって私の日常のご報告だが、まず、事故を受けての動きはひと段落した。高速ツアーバス連絡協議会の自主対策、国による一連の「緊急対策」の策定は一通り終わり、関係者の誰もがターゲットとしていた7月20日の運用開始に間に合わせることができた(新規制の解釈について宿題が若干残っていることと、一部、9月1日をターゲットとした規制もある)。その20日には、奥田建・国土交通副大臣による新宿地区(JR高速バスターミナル、ウィラーターミナル、スバルビル前)のご視察があり、案内役を仰せつかった。余談だが、副大臣ご一行を先導してスバルビル前に到着したら、高速ツアーバスと並んで某乗合バス事業者の貸切車(しかも某方面への募集型企画旅行形式の直行バス)が止まっていて、なんとご説明していいか戸惑ったというのは後世まで残る?トピックになるはず。ともあれ、「信頼回復の夏」を迎え高速ツアーバス各社が守るべきルールははっきりした。一連の対策では「可視化(見える化)」がキーワードになった。具体的には、募集広告における表示(実車距離、交替運転者の有無など)や、車両内外の表示(企画実施会社名、行程など)である。それは短期的には規制の実効性を高める目的がある。もちろん、書けばさえ安全という気は一切ないが、<どうせバレないから>といい加減に運用する会社があり結果として規制が形骸化していたのではないかという危惧に対して、一定の答えになっているはずだ(中長期的には、安全への取組内容が、利用者による高速バス選定基準の一つとなってほしいという願いがあるが、その点については機会あればまたご説明したい)。今後、私の業務の中心はしたがって、「夏の多客期における緊急対策」から離れ、中長期的なバス事業のあり方へと戻ることになる(もちろん、上記緊急対策の実効性を高める役割も背負い続けるが)。具体的には、「新たな高速乗合バス」制度の早期実現である。今般の大事故の最も重要な背景は、企画実施会社が、法令遵守状況、安全確保状況が著しく悪い貸切バス事業者に対し(意図してかどうかは別として)運行を依頼した点である。新制度は正にそのような状況を排除することを想定して作られている。一刻も早く高速ツアーバス各社を同制度に移行(移行できない会社は高速バス分野から撤退)させることが必要だ。合わせて、同制度は既存の高速乗合バス各社にとっても大きなメリットが想定されている。既に新制度を念頭に取り組みを始めた事業者も多い。私としては、「本業」は既存の高速乗合バス(あるいはその事業者)の変革のお手伝いであり、当面は正に山田先生にご紹介いただいたRMを、既存の高速乗合バスにも導入することがその目玉になる。「新たな高速乗合バス」制度は、いったんパブリックコメント募集が終了していたわけだが(終了3日前に例の事故が発生)、事故を受けて多少の見直しを行ない、本日から再度、パブコメ募集が開始された。パブコメ締切は7月29日。特に大きな障害が無ければ、来週にも新制度が施行されることになる。既存の高速乗合バス各社に残されている時間は、実はあまり大きくない。次こそは、前向きな忙しさであって欲しい。
2012.07.24
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二週続けて、日経BP社の雑誌に、バス産業の今後について真剣に考えさせられる特集が掲載された。実は例の事故より前から私もご取材をお手伝いさせていただいていた特集達だ。まず7月4日に発売された『日経TRENDY』8月号の巻頭特集「格安エアライン、高速バス 安心&得な選び方」。同誌は、7月号で事故後の業界の対応を速報いただき、続けて今号では巻頭特集。私自身は、なぜか専門外である「日帰りバスツアー」のページにコメントを紹介いただいた。また、私が仕事で関わっている車両、人物を多く取り上げていただき感謝。ついでに言うと、仕事ではない関わりだが、第4セクター氏の「高速バス選びの必勝法」が紹介されたのは多くの方にとってサプライズだったはず。同誌では昨年9月号でもご紹介いただいたわけだが、今回の特集を受けて思い出したのは、2009年4月号の巻頭特集。その時私は本ブログにこう書いている。<これまで新幹線や航空機との比較対象として「高速バス」が紹介されることは何度かあったものの、座席のスペック等、高速バスそのもの同士が比較対象としてトレンディに取り上げられるのはおそらく初めてだ>。「紙の時刻表+電話予約」からウェブ予約へと利用者の購買行動が移り変わったことを機に、ウェブならではの「豊富な情報量」を活用しながら、座席スペックなどを利用者が見比べた上で予約する「バスを選んで予約する」時代が定着したことを示す、この特集はまさに象徴であった。今回の特集では、タイトルに「安心」という単語が入っていることからわかるように、「乗合」「ツアー」といった業態の差に加え、個社ごとの安全への取り組みが比較されている。事故を受け国がまとめた「緊急対策」、および高速ツアーバスから「新たな高速乗合バス」への移行といった制度面からの安全性底上げが確実に実行されるべきなのは当然だが、合わせて、安全性という目に見えない部分についても「選んで予約する」際の基準としてもらえるよう、市場を導いていかねばならない。ここ5年で、ニーズに合致した商品(座席、ラウンジ等)を開発提供した会社に人気が集まり彼らが急成長できたように、安全面に十分な投資を行なっている事業者はその内容を「見える化」し、それが収益を呼ぶ構図が望まれる。本特集はその第一歩となるだろう。次に、本日発売されたのが『日経ビジネス』7月9日号の特集『「斜陽の半世紀」から未来産業へ バスは蘇るか』。こちらは高速バス事業というよりは、「平場」を中心に企業としての乗合バス事業者に注目した内容。何カ所か引用すると、<「縮小を続けてきたバス市場は、ほとんど思考停止状態だった。それだけに、改革すべき点はたくさんある。伸びしろが豊富で、再生できる可能性を秘めている」>(みちのりHD・松本社長のコメント)、<なぜ停留所がそこにあるのか――。バス業界の人にそう聞いても、こういう答えが返ってくるだろう。「昔からそこにあったから」。(中略)そして今、「動かない停留所」は、バス会社の衰退と思考停止の象徴になっている>(イーグルバス・谷島社長の記事より)。合わせて、高速ツアーバス連絡協議会・村瀬会長のインタビューも掲載されている。私は、編集部の皆様に「バス産業は日本の縮図」だとご説明を続けてきた。典型的な内需型産業で、かつ厳しい規制の下で「縄張り」が明確(公益性が大きい事業だからそのこと自体は当然で、別に非難しているわけではない)。そのような背景がある中で、戦後復興とともに一気に急成長を遂げ「黄金時代」を味わった後、バス産業は長い間、右肩下がりを続けてきた。だがしかし、縮小フェーズでは、その「縄張り」が逆に足かせとなって業界再編成は進まないし、縮小均衡に甘んじればさえ日銭は入るから危機意識は乏しく、改革意識が生まれない。その姿は、「失われた20年」の中で困惑する我が国の全産業の象徴だ。さらにバスに関しては、「モータリゼーションの進展」という外的環境変化が先に起こっており、結果として間もなく「失われた45年」になろうとしている。国全体の危機の「一歩先を行く」バス産業の危機を打ち破って見せることこそ、私が取り組みたかった課題である。本誌は定期購読が中心で書店での取扱は少ないが、バス関係者はぜひ手に入れて目を通していただきたい特集になっている。入手が困難な方は、しばらく私は現物を常時持ち歩くつもりなので、お会いした際に声をかけていただきたい。さて私自身は引き続きバタバタ状態。高速ツアーバスに限定した国の「緊急対策」は一通り出揃い、実行フェーズに移った。フォローのため各現場に顔を出しつつ、高速ツアーバスに留まらずバス全体の安全確保策について関係機関と調整が連日続く。もちろん、それらの業務で手を抜くわけにはいかないしそのつもりもないが、だがそれは、私が本来目指すべき「既存(乗合)事業者のあり方の変革」を後回しにすることを意味してはいない。独立して会社を作ってまだ1年と少し。事業の対象を高速乗合バス(あるいはその事業者)へと完全に軸足を移し終わった後に、高速ツアーバスのことで時間を取られることに無念な思いもなくはない。だが救いなのは、高速ツアーバスについては「新たな高速乗合バス」への完全移行という明確なゴールがあること。逆に、本来の役割である「既存(乗合)バス事業者のあり方の変革」については、ゴール設定から手を付け始めたばかりである。少なくない数の事業者の、自らを変革しようとする勇気と、その大きな実験の黒子役を引き受けるチャンスを与えて下さっていることの重大さを、手元に届いた二冊の雑誌があらためて認識させてくれてくれた気がする。
2012.07.09
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